説明

標尺用保持部材

【課題】標尺を様々な態様で保持可能な標尺用保持部材を提供する。
【解決手段】長尺板状の標尺を保持可能な標尺用保持部材1は、第1の標尺を保持可能な第1の保持部2と、第2の標尺を保持可能な第2の保持部3と、前記第1の保持部2と前記第2の保持部3とを連結するための連結部4を備え、前記連結部4は、前記第1の保持部2と前記第2の保持部3との間の角度を変更可能に連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量作業で使用する標尺などの長尺状測量部材を保持するための標尺用保持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、標尺を用いて基準面からの距離を測量する場合、ある作業者が長尺状の標尺を基準面に対して垂直に立設させてその垂直状態を確認しながら、別の作業者が測量作業を行っていた。この測量作業で用いられる標尺としては、例えば、特許文献1、2に記載されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−14457号公報。
【特許文献2】特開2005−241460号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらいずれの特許文献に記載の標尺も、長尺板状の標尺自体は自立させることができないため、測量作業中、常に作業者が標尺を保持し続ける必要がある。したがって、標尺が所望の位置から位置ずれしてしまったり、標尺を保持するための作業者を測量作業とは別に確保する必要があったりするため、測量作業の効率の向上が難しい。
【0005】
また、測量作業では、鉛直方向を測量する場合のみならず、例えば道路幅を測量する場合のように、水平方向に亘る長い距離を測量する場合もある。通常の測量作業では、長手方向の長さが最大長で200cmの標尺が使用されているが、長い距離を測定する場合を想定して、最大長の標尺を常に携行したり、或いは長さの異なる複数の標尺を常に携行したりする必要があり、その持ち運びが不便である。
【0006】
さらに、例えばコンクリート壁の製造現場における測量作業においては、コンクリート壁の強度を確保するため、コンクリート壁内に配設する鉄筋のピッチを正確に測量する必要がある。このような場合、従来では、作業者が鉄筋に標尺を当接させて測量するといったことが行われていた。しかし、作業者は、測量作業中、鉄筋の所望の位置に対して標尺を当接保持させ続ける必要があり、その測量作業の効率の向上は難しい。
【0007】
本発明は、このような従来技術の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、標尺を様々な態様で保持可能な標尺用保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、長尺板状の標尺を保持するための標尺用保持部材であって、第1の標尺を保持可能な第1の保持部と、第2の標尺を保持可能な第2の保持部と、前記第1の保持部と前記第2の保持部とを連結するための連結部を備え、前記連結部は、前記第1の保持部と前記第2の保持部との間の角度を変更可能に連結していることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、連結部の角度を適宜変更することで、第1の保持部及び第2の保持部に保持された一対の標尺の保持方向を適宜変更することができる。複数の標尺を様々な態様で保持可能な標尺用保持部材を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の標尺用保持部材において、前記連結部は、前記第1の保持部及び前記第2の保持部に保持される標尺の幅方向を中心軸として回動可能に連結していることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、前記第1の保持部と第2の保持部は、前記連結部を回動中心軸として回動し、両保持部を角度変更可能に連結することができる。第1の保持部に保持された標尺と、第2の保持部に保持された標尺との保持角度を自在に変更することができるため、これら一対の標尺同士を自立させたり、或いは、標尺を連結させて長尺化させたりすることが可能となる。また、第1の保持部のみに標尺を保持させ、第2の保持部を所定箇所に引っ掛けてぶら下げた状態で保持することもできる。標尺を様々な態様で保持可能な標尺用保持部材を提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の標尺用保持部材において、前記第1の保持部及び前記第2の保持部は、前記長尺板状の標尺の幅より長い幅に形成された板状部と、前記標尺を、該標尺の厚み方向に前記板状部とともに挟持する挟持部と、前記板状部と前記挟持部とを結合する結合部と、をそれぞれ備えていることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、保持部に挿入された標尺の外側面は、板状部の内側面と挟持部の内側面とによって挟持される。標尺の外側面と、板状部の内側面及び挟持部の内側面との間の摩擦抵抗により、標尺が標尺用保持部材から抜け落ちることが好適に抑制される。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の標尺用保持部材において、前記結合部は、前記保持部に保持される標尺の長手方向の両側部に位置するように一対形成され、前記一対の結合部のうちの少なくとも一方の結合部の内側面には、前記保持部に保持される標尺を、他方の結合部の内側面に向かって付勢する付勢部材が取着されていることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、保持部に挿入された標尺は、少なくとも一方の結合部に取着された付勢部材によって、他方の結合部側に付勢される。一対の結合部間に挿入された標尺は、長手方向両側部に位置する結合部との間で強力に保持されて、標尺用保持部材から抜け落ちることがより好適に抑制される。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の標尺用保持部材において、前記第1の保持部及び前記第2の保持部の少なくとも一方は、前記連結部に接続された支持板に対して、前記保持部に保持された標尺の厚さ方向を軸として回動可能に支持されていることを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、第1の標尺と第2の標尺の保持方向を、より自在に変更することが可能となる。連結部を回動中心軸として角度変更する態様に加え、保持部を支持板に対して回動させることができるため、一対の標尺の保持態様を様々に変更可能とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、標尺を様々な態様で保持し得る標尺用保持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の標尺用保持部材の全体斜視図。
【図2】第1の実施形態の標尺用保持部材の連結部の保持角度を180゜としたときの裏側からみた斜視図。
【図3】第1の実施形態の標尺用保持部材の分解斜視図。
【図4】図1で示した標尺用保持部材のIV−IV線での断面図。
【図5】第1の実施形態の第1の連結部と第2の連結部の分解斜視図。
【図6】図2で示した標尺用保持部材のVI−VI線での断面図。
【図7】第2の実施形態の標尺用保持部材の分解斜視図。
【図8】第2の実施形態の標尺用保持部材の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した標尺用保持部材1の第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0021】
図1、図2に示すように、標尺用保持部材1は、第1の保持部2と第2の保持部3が連結部4を介して連結されて形成されている。第1の保持部2と第2の保持部3は同一の構成となっていることから、以下、第1の保持部2について主に説明する。以下の説明において、標尺6の長手方向を標尺6の挿入方向と規定するとともに、標尺6の標尺面における挿入方向に直交する方向を標尺6の幅、標尺6の標尺面の挿入方向両側部を標尺6の厚みと規定する。また、第1の保持部2及び第2の保持部3において、標尺6を挿入する方向を挿入方向と規定するとともに、標尺6の挿入方向と直交する方向を、第1の保持部2及び第2の保持部3の幅と規定する。
【0022】
第1の保持部2、第2の保持部3は、主に屋外での測量作業に用いられることから、その材質は、長尺状の標尺6を保持するための十分な強度を備えるとともに、太陽光や雨露などの湿気に対する耐候性に優れたものが好ましい。具体的には、クロム鋼、ステンレス鋼、ニッケル鋼、銅合金、アルミニウム合金、ニッケル合金等、或いは、エンジニアリングプラスチック等の合成樹脂材が挙げられるが、強度と耐候性の観点からステンレス鋼が好ましい。
【0023】
第1の保持部2は、正方形状の板状部21と、板状部21の対向する側辺のうち、標尺6の挿入方向に沿った側に位置する一対の側辺から立設される一対の結合部23、23と、一対の結合部23、23から延びる一対の挟持部22、22とから構成されている。結合部23、挟持部22は、板状部21からカギ状に延びて、板状部21の対向する前記側辺から断面L字状となるように立設されている。これにより、一対の挟持部22、22は、板状部21に対して平行となっている。一対の挟持部22、22及び一対の結合部23、23は、それぞれ長尺の矩形状に形成されている。
【0024】
図2に示すように、板状部21の幅Lは、標尺6の幅aより若干長くなるように形成されている。また、結合部23の挿入方向に直交する方向の長さMは、標尺6の厚みbより僅かに長くなるように形成されている。
【0025】
図3、図4に示すように、一対の結合部23、23のうち一方の結合部23には、付勢部材としての板バネ5が取着されている。長尺薄板矩形状に形成された金属製の板バネ5は、中央の平板状の平板部52の両側に、隆起した形状の隆起部51が一体的に形成されている。平板部52の中央には、板バネ5を結合部23に取着するネジ53が挿通するための挿通孔54が貫設されている。
【0026】
また、板バネ5が取着される結合部23の中央部には、ネジ53を取着するための取着孔23bが貫設されている。板バネ5は、挿通孔54と取着孔23bとが合致するようにして、板バネ5の平板部52を結合部23の内側面23aに当接させた状態で、ネジ53をねじ込み或いはプレスすることにより取着される。
【0027】
次に、連結部4について説明する。連結部4は、第1の保持部2と第2の保持部3とを当該連結部4を回動中心軸として回動可能に連結している。図3、図5に示すように、連結部4は、第1の保持部2側に取着された第1の連結部42と、第2の保持部3側に取着された第2の連結部43とを備えている。ここでも、第1の連結部42と第2の連結部43はほぼ同一の構成となっていることから、以下、第1の連結部42について主に説明する。図3では、第1の連結部42が第1の保持部2から分離しているとともに、第2の連結部43が第2の保持部3に取着された状態を図示している。
【0028】
第1の連結部42及び第2の連結部43を分解して図示した図5によれば、第1の連結部42は、中空円筒状の連結筒部42aと、矩形薄板状の連結板部42bとが一体的に結合して形成されている。以下、連結部4に関しては、標尺6の挿入方向と直交する方向を、連結部4を構成する各部材の長手方向として規定する。
【0029】
中空円筒状に形成された連結筒部42aは、図5、図6に示すように、後述するボルト44を挿入するための挿入部42dを内部に有し、連結板部42bの長手方向に対向する側辺のうちの一方の側辺に一体的に結合されている。本実施形態では、連結筒部42aは、連結板部42bの長手方向の側辺の一部が矩形状に一体的に延設されて、その延設された部分が円筒状に丸められるようにして形成されている。図6に示すように、連結筒部42a、43aは、第1の連結部42及び第2の連結部43の保持角度を180゜としたとき、連結筒部42a、43aの外周面が第1の板状部21及び第2の板状部31の内側面より、両保持部2、3の内方へ突出しないように形成されている。
【0030】
連結板部42bの短手方向の長さは、板状部21の挿入方向の長さの約4分の1程度に形成されているとともに、その短手方向の略中央部分には、長手方向に複数の連結穴部42cが直線状に並んで貫設されている。そして、第1の連結部42は、連結穴部42cで第1の保持部2の板状部21に溶接されている。
【0031】
図3、図5に示すように、第1の連結部42の連結筒部42aと、第2の連結部43の連結筒部43aとの軸線位置を合致させて、挿入部42d、43dにボルト44を挿入すると、連結筒部42aと連結筒部43aとは、長手方向に相互にほぼ隙間なく並ぶように形成されている。ボルト44は、挿入部42d、43dの内径と略同一の直径を有する中実円筒状の軸部44cと、軸部44cの基端側に形成される頭部44aとから構成されている。そして、軸部44cの先端側には雄ネジ44bが形成されている。
【0032】
図3に示すように、連結筒部42aの挿入部42d及び連結筒部43aの挿入部43dにボルト44が挿通された状態で、ボルト44の先端部の雄ネジ44bには、当接部材46、回動阻止部材47を介して蝶ナット45が取着されている。蝶ナット45は、従来周知の形状の蝶ナットが使用される。蝶ナット45の内周面には、雄ネジ44bと螺合可能に雌ネジが螺設されている。
【0033】
回動阻止部材47は、円筒状を呈し、内径がボルト44の雄ネジ44bの外径と略同一に形成されるとともに、外径が連結筒部42a、43aの外径と略同一に形成されて、その内部にボルト44の雄ネジ44bが挿通される。回動阻止部材47は、合成樹脂やゴム等の弾力性を有する部材で形成されている。
【0034】
当接部材46は、ボルト44の雄ネジ44bに回動阻止部材47が挿通された状態で、その両側で回動阻止部材47に当接して配設されている。当接部材46は、薄板の円環状に形成され、その内径がボルト44の雄ネジ44bの外径と略同一に形成されるとともに、外径が連結筒部42a、43aの外径と略同一に形成されている。
【0035】
これら、第1の連結部42、第2の連結部43、及び、ネジ部材としてのボルト44、蝶ナット45、当接部材46、回動阻止部材47とから、連結部4が構成されている。
なお、回動阻止部材47を除く連結部4は、主に屋外での測量作業に用いられることから、その材質は、長尺状の標尺を保持するための十分な強度を備えるとともに、太陽光や雨露などの湿気に対する耐候性に優れたものが好ましい。具体的には、クロム鋼、ステンレス鋼、ニッケル鋼、銅合金、アルミニウム合金、ニッケル合金等、或いは、エンジニアリングプラスチック等の合成樹脂材が挙げられるが、強度と耐候性の観点からステンレス鋼が好ましい。
【0036】
以上詳述した本実施形態の標尺用保持部材1の作用について以下に説明する。
第1の保持部2或いは第2の保持部3の挿入方向に標尺6を挿入すると、板状部21、31と挟持部22、32とが標尺6の厚み方向を挟持する。これにより、第1の保持部2或いは第2の保持部3に保持された標尺6の標尺面には、板状部21、31の内側面及び挟持部22、32の内側面からの摩擦力が作用することとなる。標尺6と第1の保持部2或いは第2の保持部3との間の摩擦抵抗により標尺6が第1の保持部2或いは第2の保持部3内に保持される。
【0037】
また、結合部23、33の内側面23a、33aに取着された板バネ5は、隆起部51が第1の保持部2の内方に隆起した状態で取着されていることから、第1の保持部2或いは第2の保持部3内に挿入された標尺6は、板バネ5の隆起部51を押圧し、板バネ5には、その押圧力に抗した付勢力が付与されて付勢部材として作用する。板バネ5が結合部23、33の内側面23a、33aに取着されていることから、標尺6が他方の結合部23、33側に押圧されて、第1の保持部2或いは第2の保持部3から脱落することなく強固に保持される。標尺6には、板状部21、31及び挟持部22、32からの摩擦力と、結合部23、33に取着された板バネ5からの付勢力とが作用して、標尺用保持部材1内に強固に保持される。
【0038】
第1の保持部2と第2の保持部3を連結する連結部4では、第1の連結部42及び第2の連結部43の保持角度を180゜としたとき、第1の保持部2に保持された標尺6と第2の保持部3に保持された標尺6とが、標尺用保持部材1内でその端部同士を接触させて保持されるようになる。
【0039】
第1の連結部42、第2の連結部43、及び、ネジ部材としてのボルト44、蝶ナット45、当接部材46、回動阻止部材47で構成される連結部4は、蝶ナット45を締め付けたり緩めたりすることで、第1の保持部2と第2の保持部3との角度を容易に変更可能になる。また、挿入部42d、43d内では、ボルト44の軸部44cがほぼ隙間なく摺接保持され、蝶ナット45を緩めたときに、挿入部42d、43d内でボルト44ががたつくことなくスムーズに回動する。そして、蝶ナット45を締めたとき、回動阻止部材47が弾性変形することにより、蝶ナット45とボルト44の頭部44aとの間の締結力が、より強固に連結部42、43に作用する。さらに、回動阻止部材47の両側に当接配置された当接部材46は、蝶ナット45から回動阻止部材47に掛かる押圧力を回動阻止部材47の全体に分散するように作用している。
【0040】
ボルト44の頭部44a、回動阻止部材47、及び当接部材46はいずれもその外径が連結筒部42a及び連結筒部43aの外径と略同一に形成されている。よって、ボルト44を連結筒部42a及び連結筒部43a内に挿入して、当接部材46、回動阻止部材47を介して蝶ナット45により締付固定したとき、連結部4の一端部に位置するボルト44の頭部44aから連結部4の他端部に位置する蝶ナット45に至るまで、その外周面がほぼ面一となっている。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)保持部2、3の板状部21、31と挟持部22、32とで標尺6を挟持しているため、標尺6は保持部2、3内から脱落することなく保持可能となる。さらに、保持部2、3の結合部23、33の内側面23a、33aには、付勢部材としての板バネ5が取着され、標尺6は、板バネ5によりその両側部が押圧されて保持される。このように、板状部21、31及び挟持部22、32と標尺6との間の摩擦力、結合部23、33間での標尺6への付勢力により、標尺6は保持部2、3内で強固に保持されることができる。
【0042】
(2)保持部2、3内で標尺6を保持した標尺用保持部材1は、連結部4により、保持部2、3の保持角度を連結部4の軸線方向を回動中心として回動可能かつ角度変更可能に連結している。これにより、第1の保持部2に第1の標尺6を保持させるとともに第2の保持部3に第2の標尺6を保持させ、連結部4の角度を適宜変更させることで、これら一対の標尺6、6同士を所定角度で基準面に対して容易に自立させることが可能となる。一対の標尺6、6が保持された標尺用保持部材1を三角形の頂点とし、一対の標尺6、6をそれぞれ三角形の斜辺となるようにすれば、基準面に対して一対の標尺6、6を安定して自立可能とすることができる。
【0043】
(3)保持部2、3で保持される標尺6、6の位置を適宜変更することで、基準面に対して一方の標尺6を垂直状態に保持することが可能である。一方の標尺6を基準面に対して鉛直とし、これに対して他方の標尺6を斜めに立設させた状態で連結部4を固定すれば、標尺6を垂直状態にして容易に自立させることができる。
【0044】
(4)連結部4での連結状態を、第1の保持部2と第2の保持部3との間の角度が180゜となるように設定すれば、一対の標尺6、6を直線状に保持することができる。第1の標尺6の端部と第2の標尺6の端部とが標尺用保持部材1内で接するように保持するようにすれば、第1の標尺6と第2の標尺6とからなる長尺化された標尺を容易に形成することができる。これにより、標尺の長さより長い距離を測量する場合であっても、標尺用保持部材1により連結された複数の標尺6を一体的に接地することで容易に測量することが可能である。したがって、複数の標尺6のそれぞれが位置ずれしたりすることなく、正確に且つ迅速に測量作業を行うことができる。複数の標尺用保持部材1を使用すれば、標尺6をさらに長尺化することが可能であり、測量対象に応じて、適宜標尺の長さを長尺化することができる。
【0045】
(5)保持部2に標尺6を摺動保持させ、保持部3には標尺6が存在しないようにすれば、コンクリート壁内に配設される鉄筋のピッチ間に保持部3側から容易に挿入して鉄筋にぶら下げた状態で標尺6を当接保持させることが可能である。従来のように、測量作業に従事する作業者が鉄筋に標尺6を当接保持し続ける必要がない。これにより、標尺6が測量作業中にずれてしまうといった事態を抑制できるとともに、標尺6を当接保持するための作業者を専用に配置する必要がなく、その測量作業の効率が飛躍的に向上する。
【0046】
(6)連結部4は、ボルト44と蝶ナット45との螺合により締結状態を変更することができる。そして、連結部4を緩めることにより、保持部2、3間の角度を適宜設定変更することができる。ボルト44と蝶ナット45の螺合という簡単な構成で、保持部2、3の角度調整を容易に行うことが可能である。
【0047】
(7)第1の保持部2と第2の保持部3との角度調整は、蝶ナット45により連結部4を緩めた状態で、連結筒部42a、43aをボルト44に対して摺動させて行っている。したがって、角度調整が一定の角度に限定されることなく、連続的な角度範囲での角度調整が可能である。一対の標尺6、6間の所望の角度を適宜選択することができる。
【0048】
(8)連結部4には、弾性変形可能な回動阻止部材47が取着されている。蝶ナット45を締め付ける際の回動阻止部材47の弾性変形により、ボルト44の頭部44aと蝶ナット45との間の締付状態が強固になり、連結部4での保持部2、3の回動を好適に阻止することができる。第1の保持部2と第2の保持部3とは、所定角度を保持した状態で強固に連結されることになる。
【0049】
(9)弾性変形可能な回動阻止部材47の両側に、金属製の当接部材46が配設されている。これにより、蝶ナット45の螺合による押圧力が当接部材46を介して回動阻止部材47に伝達されるため、蝶ナット45の螺合による締め付け時の回転力が、直接回動阻止部材47に伝達されることを抑制できる。したがって、蝶ナット45の回転による回動阻止部材47の磨耗、損傷を抑制して、回動阻止部材47の耐久性を向上させることができる。
【0050】
(10)ボルト44の軸部44cは、連結筒部42a、43aの内周面と略同一の径に形成されているとともに、蝶ナット45と螺合する雄ネジ44bは、軸部44cの先端に形成されている。したがって、軸部44cは連結筒部42a、43a内で滑らかに摺動することが可能であり、蝶ナット45を緩めた状態では、保持部2、3の角度調節を軽い力でスムーズに行うことができる。
【0051】
(11)連結筒部42aと連結筒部43aとは、相互に隙間なく並ぶように形成されている。これにより、ボルト44を蝶ナット45で締結した時に、その締結状態を強固に保持することができる。
【0052】
(12)第1の連結部42及び第2の連結部43は、ともに連結板部42b、43bを介して板状部21、31に溶接して連結されている。そして、連結板部42b、43bの短手方向の長さは、板状部21、31の挿入方向の長さの約4分の1の長さに形成されているとともに、連結板部42b、43bは複数の連結穴部42cで板状部21、31に溶接されている。所定長の長さを備えた連結板部42b、43bが、板状部21、31と複数個所で溶接されていることにより、強固な連結が達成できる。保持部2、3の間の角度調整を多数回、長期間に亘って行い得る充分な耐久性を付与することができる。
【0053】
(13)ボルト44の頭部44a、回動阻止部材47、及び当接部材46はいずれもその外径が連結筒部42a及び連結筒部43aの外径と略同一に形成されていることから、連結部4の一端部に位置するボルト44の頭部44aから連結部4の他端部に位置する蝶ナット45に至るまで、その外周面が面一となる。これにより、連結部4の外周面に凹凸形状が生じず、滑らかな外周面を呈するため、その外観形状が向上し、ひいては、標尺用保持部材1全体の外観形状が向上する。
【0054】
(14)標尺用保持部材1は、ステンレス鋼で成形されているため、標尺6を強固に保持するための充分な強度を備えるとともに、雨露、気温の変動等に対する耐候性に優れ、屋外で行われる長時間の測量作業においても高い耐久性が維持できる。
【0055】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した標尺用保持部材1の第2の実施形態を図7、図8に基づいて説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成には同一の番号を付して説明する。
【0056】
第2の実施形態の標尺用保持部材1は、第1の保持部2と第2の保持部3とが、支持板7を介して連結部4により回動可能に連結されている。
図7に示すように、支持板7は、第1の保持部2の板状部21と同一形状かつ同一の大きさに形成されている。つまり、支持板7は、第1の保持部2の挟持部22及び結合部23を省略した板状部21に相当する。
【0057】
支持板7には、当該支持板7の2つの対角線の交点を中心として円環状に起立された係合突条71が1箇所形成されている。また、支持板7の2つの対角線の交点を中心とする同心円上に円形状の係止穴72が4箇所貫設されている。各係止穴72は、支持板7の各側辺に対して中央位置に形成されている。つまり、各係止穴72は、支持板7の各側辺近傍の中央に形成されるとともに、支持板7の2つの対角線の交点を中心とする同心円上で90゜ずつずらした位置に形成されている。
【0058】
図7、図8に示すように、連結部4の第1の連結部42は、支持板7の一側部に取着されている。
第1の保持部2の板状部21には、当該板状部21の2つの対角線の交点を中心とする円形状に、回動穴24が1箇所貫設されている。回動穴24と支持板7の係合突条71とは、支持板7と第1の板状部21との間にバネ材73を介在させてプレス加工することにより、第1の保持部2の板状部21が支持板7に対して回動可能に取着されている。
【0059】
また、板状部21の2つの対角線の交点を中心とする同心円上に円形状の凸部25が4箇所形成されている。各凸部25は、板状部21の各側辺に対して中央位置に形成されている。つまり、各凸部25は、板状部21の各側辺近傍の中央に形成されるとともに、板状部21の2つの対角線の交点を中心とする同心円上で90゜ずつずらした位置に形成されている。各凸部25の形成位置は、板状部21と支持板7とを重ね合わせたときに、支持板7の係止穴72に合致する位置となっている。
【0060】
以上詳述した本実施形態の作用について以下に説明する。
第1の保持部2は、その板状部21と同一形状の支持板7に対して、板状部21の厚さ方向を軸として90゜毎に回動される。そして、90゜回動される毎に板状部21に形成された凸部25は、支持板7に形成された係止穴72に係止されて、第1の保持部2が支持板7に対して位置固定される。
【0061】
以上詳述した本実施形態によれば、第1の実施形態で述べた効果に加えて、次のような効果を奏することができる。
(15)第1の保持部2と第2の保持部3とを、支持板7を介して連結することで、第1の保持部2と第2の保持部3との連結態様をさらに多彩に変更することが可能になる。第1の保持部2と第2の保持部3の間の角度を連結部4により調整した後、第1の保持部2を支持板7に対して90゜回動させて固定することで、第1の保持部2に保持された標尺6と第2の保持部3に保持された標尺6とをその長手方向がそれぞれ直交するように保持することができる。例えば、一方の標尺6を基準面に水平に保持した状態で、他方の標尺6を自立させたり、或いは、他方の標尺6を基準面から下垂させて保持したり、といった態様も可能である。一方の標尺6を基準面に水平状態で保持させる場合には、他方の標尺6の自立をより安定して維持できる。
【0062】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよく、また、以下の変更例を組み合わせて適用しても良い。
・ 本実施形態では、第1の保持部2と第2の保持部3とを、標尺6の挿入方向の端部で連結部4により連結するように構成したが、この構成に限定されない。第1の保持部2の挿入方向に沿った側に位置する側辺と、第2の保持部3の挿入方向と直交する方向に位置する側辺とを連結するように構成してもよい。つまり、第1の保持部2の挿入方向の端部の側辺と、第2の保持部3の結合部33側の端部の側辺とを連結部4で連結するようにしてもよい。このようにすれば、例えば、第1の保持部2と第2の保持部3とを180゜の角度で連結させることにより、平面上で互いに直交する距離を測量することも可能となる。また、第1の保持部2と第2の保持部3とを90゜の角度で連結させれば、平面上で第1の保持部2に挿入した標尺6をその標尺面が接地するように保持し、第2の保持部3に挿入した標尺6を鉛直に立設したり、或いは、垂直方向に垂下させたりすることも可能となる。標尺6の多様な保持態様を提供することができる。
【0063】
・ 本実施形態では、標尺用保持部材1は、第1の保持部2と第2の保持部3の2つの保持部を連結部4で連結するように構成したが、保持部は2つに限定されない。第1の保持部2、第2の保持部3以外に、第3の保持部をさらに同一の連結部4により連結する構成としてもよい。このように構成すれば、例えば、第1の保持部2に保持された標尺6と第2の保持部3に保持された標尺6とを自立させた状態で、第3の保持部に保持された標尺6で測量地点の測量を安定して行うことができる。つまり、地面から離間した位置に基準面が存在していたとしても、標尺を安定させて基準面に立設させることができる。
【0064】
・ 板状部21、31の幅Lを標尺6の幅aより長くなるように形成したが、その長さは特に限定されない。板状部21、31と、挟持部22、32とで挟持可能であれば、標尺6の抜け落ちを抑制できる。或いは、一方の結合部23、33に取着された板バネ5の付勢力で他方の結合部23、33側へ押圧可能な長さであれば、なおその効果を確実にすることができる。
【0065】
・ 挟持部22、32は省略してもよい。或いは、挟持部22、32を板状部21、31と同様に正方形状に形成して、第1の保持部2及び第2の保持部3を筒状に形成してもよい。
【0066】
・ 板状部21、31は、正方形状に限定されない。長方形状、台形状、五角形状、六角形状等多角形状であってもよく、或いは、円形状、楕円形状であってもよい。挟持部22、32で標尺6を挟持可能であるか、結合部23、33が標尺6の両側に形成可能であれば、その形状は特に限定されない。
【0067】
・ 板バネ5は省略することができる。この場合、板状部21、31及び挟持部22、32とにより標尺6を挟持して保持することが可能である。また、一対の結合部23、23、33、33の双方に板バネ(付勢部材)を配設してもよい。
【0068】
・ 本実施形態では、付勢部材の板バネ5の形状を、中央部に平板部52が形成されるとともに、その両側部に隆起部51が形成される形状としたが、このような形状に限定されない。中央部が隆起した隆起部51となり、その両側部に平板状の平板部52が形成されて、片止め状態で結合部23、33に取着されていてもよい。
【0069】
・ 付勢部材はバネ部材に限定されない。ネジ部材、偏心レバー、或いは、楔作用により付勢する構成としてもよい。例えば、ネジ部材の場合、当該ネジ部材を結合部23、33にネジ止めすることにより標尺6を押圧して付勢するように構成してもよい。また、偏心レバーの場合、結合部23、33に取着した偏心レバーの回動により標尺6を押圧して付勢してもよい。或いは、楔作用を利用する場合、結合部23、33に楔を挿入することにより標尺6を押圧して付勢するようにしてもよい。
【0070】
・ バネ部材に代えて、結合部23、33の内側面に弾性変形可能なゴム部材を取着してもよく、或いは、発泡樹脂等の弾性変形可能な合成樹脂部材を取着してもよい。
・ 付勢部材は、弾性変形可能な部材に限定されない。摩擦係数の大きな部材により標尺6の抜け落ちを抑制するような構成としてもよい。
【0071】
・ 本実施形態では、連結筒部42a、43aをそれぞれ2箇所ずつに形成する構成としたが、このような構成に限定されない。1箇所ずつとしてもよく、3箇所以上としてもよい。
【0072】
・ 本実施形態では、連結筒部42a、43aは、連結板部42b、43bを介して板状部21、31に連結されている構成としたが、板状部21、31から連結筒部42a、43aが一体的に延設されている構成としてもよい。また、第2の実施形態において、支持板7から連結筒部42aが一体的に延設されている構成としてもよい。
【0073】
・ 蝶ナット45と連結筒部42a、43aとの間には、当接部材46、回動阻止部材47を挟持する構成としたが、これら部材のいずれか、或いはすべてを省略してもよい。
・ ボルト44の先端部に螺合固定されるナットとして蝶ナット45を採用したが、この構成に限定されない。六角ナット、四角ナット、或いは、アイナット等を使用してもよい。
【0074】
・ ボルト44には、その先端部のみに雄ネジ44bを形成したが、軸部44c全体に雄ネジを形成してもよい。
・ 第1の実施形態の第1の保持部2、第2の保持部3では、回動穴24及び凸部25が形成されていない構成としたが、形成されていてもよい。このように構成すれば、第1の実施形態での保持部2、3、及び第2の実施形態での保持部2、3を共通して使用することができる。
【0075】
・ 第2の実施形態では、支持板7の各係止穴72及び板状部21の各凸部25をそれぞれ同心円上で90゜ずつずらした位置に4箇所形成したが、このような形状に限定されない。同心円上に形成されていれば、角度、個数は特に限定されない。或いは、係止穴72と凸部25との係合ではなく、各係止穴72に代えて環状溝を形成するとともに、各凸部25に代えて環状凸部を形成して、環状溝と環状凸部との任意の位置での係合により連続的に角度変更可能としてもよい。
【0076】
・ 第2の実施形態では、支持板7の各係止穴72と板状部21の各凸部25との係合により支持板7が第1の保持部2に係止されて位置固定されるように構成されているが、このような構成に限定されない。支持板7に凸部25が形成されるとともに、板状部21の係止穴72が形成されていてもよい。或いは、係止穴72に代えて凹部が形成されてもいてもよい。
【0077】
・ 標尺用保持部材1には、第1の保持部2と第2の保持部3との間の角度を測定可能な角度計を取着してもよい。
・ 標尺用保持部材1には、水平状態を視認可能な水準計を取着してもよい。
【0078】
上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
前記連結部は、前記第1の保持部と前記第2の保持部を連結する連結筒部と、前記連結筒部内に挿入され、基端部が前記連結筒部の一端で係止されるとともに、先端部が前記連結筒部の他端から外へ突出するボルトと、前記ボルトの先端部に螺合固定されるナットを備えている標尺用保持部材。
【0079】
この構成によれば、連結部の連結筒部内に挿入されてその基端部が係止されたボルトと、当該ボルト先端部でのナットとの螺合により、第1の保持部と第2の保持部とを角度変更可能に連結することができる。ボルトの基端部が連結筒部の一端で係止されているため、ボルトの先端部をナットで締結固定すれば、ボルトを連結筒部の両端部で固定することが可能となる。これにより、第1の保持部と第2の保持部とを、連結部を介して角度を固定した状態で連結させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…標尺用保持部材、2…第1の保持部、3…第2の保持部、4…連結部、5…付勢部材、6…標尺、7…支持板、21、31…板状部、22、32…挟持部、23、33…結合部、23a、33a…内側面、42a、43a…連結筒部、44…ボルト、45…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺板状の標尺を保持するための標尺用保持部材であって、
第1の標尺を保持可能な第1の保持部と、
第2の標尺を保持可能な第2の保持部と、
前記第1の保持部と前記第2の保持部とを連結するための連結部を備え、
前記連結部は、前記第1の保持部と前記第2の保持部との間の角度を変更可能に連結している標尺用保持部材。
【請求項2】
前記連結部は、前記第1の保持部及び前記第2の保持部に保持される標尺の幅方向を中心軸として回動可能に連結している請求項1に記載の標尺用保持部材。
【請求項3】
前記第1の保持部及び前記第2の保持部は、
前記長尺板状の標尺の幅より長い幅に形成された板状部と、
前記標尺を、該標尺の厚み方向に前記板状部とともに挟持する挟持部と、
前記板状部と前記挟持部とを結合する結合部と、
をそれぞれ備えている請求項1又は請求項2に記載の標尺用保持部材。
【請求項4】
前記結合部は、前記保持部に保持される標尺の長手方向の両側部に位置するように一対形成され、
前記一対の結合部のうちの少なくとも一方の結合部の内側面には、前記保持部に保持される標尺を、他方の結合部の内側面に向かって付勢する付勢部材が取着されている請求項3に記載の標尺用保持部材。
【請求項5】
前記第1の保持部及び前記第2の保持部の少なくとも一方は、前記連結部に接続された支持板に対して、前記保持部に保持された標尺の厚さ方向を軸として回動可能に支持されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の標尺用保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7611(P2013−7611A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139489(P2011−139489)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(392023485)株式会社大平産業 (7)