説明

標本保持部材、顕微鏡ステージおよび顕微鏡ステージユニット

【課題】精度および強度を確保しつつ、比較的容易かつ安価に製造可能にする。
【解決手段】対物レンズの光軸上に配置される貫通孔を有するステージに装着可能に設けられ、標本を保持可能に板状に形成され、ステージに装着された状態で対物レンズの光軸上に配置される板厚方向に貫通する光通過孔13を有し、光通過孔13の開口を跨ぐように標本を載置可能な中央平面部15と、中央平面部15の外縁に沿って全周に設けられ、中央平面部15の板厚方向に張り出してステージに接触し中央平面部15を支持する外縁壁部17とを備え、これら中央平面部15および外縁壁部17が同一の金属製薄板により形成されている中座11を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本保持部材、顕微鏡ステージおよび顕微鏡ステージユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照明光や観察光を通過させる貫通孔が形成された顕微鏡装置ステージが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の顕微鏡ステージは、中央部に比較的大きな開口の貫通孔を有しており、貫通孔の開口よりも小さな標本を観察する場合は、標本の大きさや形状に合わせて比較的小さな貫通孔が形成された板状の中座(標本保持部材)を装着し、中座により標本を保持することができるようになっている。
【0003】
このような従来の顕微鏡ステージの中座は、貫通孔の周辺部を構成する非常に薄い板状の金属材料からなる小径の環状部材と、この環状部材の周囲を構成する比較的厚い板状の金属材料からなる大径の環状部材とを精度よく嵌め合わせて形成することにより、レボルバに装着された対物レンズと中座の貫通孔周辺との間にスペースを確保し、対物レンズの回動軌跡との干渉を回避することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−207175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の顕微鏡ステージの中座のように、径寸法が異なる2つの薄板状の環状部材を重ね合わせて形成するのでは、2部品の精度が累積するため個々の環状部材はさらに精度が要求されることになり、非常に高価になるという不都合がある。また、このように高精度に形成された2つの環状部材の端部どうしを板厚方向に精度よく重ね合わせるのは、作業が困難で時間もかかるという不都合がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、精度および強度を確保しつつ、比較的簡易かつ安価に製造することができる標本保持部材、顕微鏡ステージおよび顕微鏡ステージユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、対物レンズの光軸上に配置される貫通孔を有する顕微鏡ステージに装着可能に設けられ、標本を保持する板状の標本保持部材であって、前記顕微鏡ステージに装着された状態で前記対物レンズの光軸上に配置される板厚方向に貫通する光通過孔を有し、該光通過孔の開口を跨ぐように前記標本を載置可能な中央平面部と、該中央平面部の外縁に沿って全周に設けられ、該中央平面部の板厚方向に張り出して前記顕微鏡ステージに接触し前記中央平面部を支持する外縁壁部とを備え、これら中央平面部および外縁壁部が同一の薄板部材により形成されている標本保持部材を提供する。
【0008】
本発明によれば、顕微鏡ステージに装着されて、中央平面部上に光通過孔の開口を跨ぐように標本が載置されることにより、標本に照射される光が中央平面部の光通過孔を介してステージの貫通孔を通過させられる。これにより、顕微鏡ステージの貫通孔よりも小さい標本を保持して、透過照明による観察を行うことができる。
【0009】
この場合において、中央平面部の全周にわたり外縁壁部が板厚方向に張り出すことにより、中央平面部を補強して剛性を確保することができる。これにより、中央平面部の変形を防止し、高精度に維持することができる。また、光通過孔から半径方向に十分に離れた位置に外縁壁部を配置でき、顕微鏡ステージの直下に対物レンズが配置される顕微鏡装置に用いたとしても、外縁壁部が対物レンズの回動軌跡に干渉するのを防ぐことができる。さらに、中央平面部と外縁壁部とを同一の薄板部材により形成することで、異なる薄板部材どうしを精度よく重ね合わせて形成する場合と比較して、簡易かつ安価に製造することができる。
【0010】
上記発明においては、前記中央平面部と前記外縁壁部とが、プレス加工により一体成形され、該中央平面部を構成する前記薄板部材の外縁が折り曲げられることにより前記外縁壁部が形成されていることとしてもよい。
【0011】
このように構成することで、異なる薄板部材どうしを精度よく重ね合わせて形成する場合と比較して、部品点数を少なくし製造の簡易化および精度の向上を図ることができる。また、中央平面部と外縁壁部との間に接合部分がなく、中央平面部の歪みに対する強度を向上することができる。さらに、中央平面部と外縁壁部との境目を滑らかな表面形状にすることができ、見た目の品位を高めるとともに、その境目にスライドガラスや標本などが引っかかるのを防ぐことができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記外縁壁部が、前記中央平面部の外縁寸法よりも僅かに大きい内縁寸法を有する枠形状を有し、該中央平面部の外縁を嵌合させて接合されていることとしてもよい。
このように構成することで、特別な加工を施すことなく、同一の薄板部材を用いて精度および強度を確保しつつ、比較的容易かつ安価に製造することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記中央平面部が、板厚方向に湾曲して窪む複数の凹部を有することとしてもよい。
このように構成することで、凹部により中央平面部の機械的剛性の向上を図ることができる。また、中央平面部に載置されるスライドガラスや標本を凹部上で板厚方向に押して傾けることにより、中央平面部から簡易に取り上げることができる。
【0014】
本発明は、上記いずれかの標本保持部材を収容可能な板厚方向に窪む段差部と、該段差部の板厚方向に貫通する前記貫通孔とを有する顕微鏡ステージを提供する。
本発明によれば、標本に合わせた形状や大きさの光透過孔を有する標本保持部材を選択的に段差部に装着し、標本保持部により標本を保持させて、透過照明により標本の観察を行うことができる。
【0015】
本発明は、上記いずれかの標本保持部材と、該標本保持部材が着脱可能に装着される上記顕微鏡ステージとを備える顕微鏡ステージユニットを提供する。
本発明によれば、標本保持部により標本を保持させることにより、顕微鏡ステージの貫通孔よりも小さい標本の透過照明による観察を行うことができる。
【0016】
上記発明においては、前記標本保持部材および段差部が環状形状を有し、前記標本保持部材が、前記段差部に前記対物レンズの光軸回りに回転可能に装着されることとしてもよい。
このように構成することで、標本保持部材により保持した標本を直接動かすことなく、標本保持部材を対物レンズの光軸回りに回転させるだけで、標本の向きを変更することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、精度および強度を確保しつつ、比較的容易かつ安価に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るステージユニットが用いられる倒立顕微鏡を示す概略構成図である。
【図2】(a)は図1のステージユニットを照明光の光軸方向から見た平面図であり、(b)は(a)を照明光の光軸方向に直交する方向から見た平面図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態に係る中座を照明光の光軸方向から見た平面図であり、(b)は(a)を照明光の光軸方向に直交する方向から見た平面図であり、(c)は(b)の中座の外縁壁部周辺を拡大した拡大図である。
【図4】(a)は本発明の一実施形態の第2変形例に係る中座を照明光の光軸方向から見た平面図であり、(b)は(a)を照明光の光軸方向に直交する方向から見た平面図である。
【図5】本発明の一実施形態の第2変形例に係る他の中座を照明光の光軸方向から見た平面図である。
【図6】(a)は本発明の一実施形態の第2変形例に係るさらに他の中座を照明光の光軸方向から見た平面図であり、(b)は(a)を照明光の光軸方向に直交する方向から見た平面図である。
【図7】(a)は本発明の一実施形態の第3変形例に係るさらに他の中座を照明光の光軸方向から見た平面図であり、(b)は(a)を照明光の光軸方向に直交する方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る標本保持部材、顕微鏡ステージおよび顕微鏡ステージユニットについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るステージユニット(顕微鏡ステージユニット)10は、例えば、図1に示すように、倒立顕微鏡100に用いることができる。倒立顕微鏡100は、顕微鏡本体51と、標本(図示略)が載置されるステージユニット10と、照明光を発する透過照明用のハロゲンランプや水銀ランプのような光源53と、光源53の照明光路上に配置され、光源53からの照明光をステージユニット10上の標本に照射するコンデンサ55と、標本を透過した透過光を集光する対物レンズ57と、対物レンズ57を保持するレボルバ59とを備えている。図1において、符合Sは、標本を支持するスライドガラスを示している。
【0020】
レボルバ59は、所定の回転軸回りに回転可能に設けられ、複数の対物レンズ57を保持することができるようになっている。図1では、レボルバ59により対物レンズ57が1つ保持されている。このレボルバ59は、回転軸回りに回転することにより、ステージユニット10上に載置された標本上、すなわち、照明光の光路上に複数の対物レンズ57を択一的に配置することができるようになっている。
【0021】
また、倒立顕微鏡100は、対物レンズ57により集光された透過光を反射する反射ミラー(図示略)と、反射ミラーにより反射された透過光が入射される、標本の観察像を目視観察するための接眼レンズ61と、レボルバ59を照明光の光軸方向に沿って上下動させる焦準ハンドル63とを備えている。
焦準ハンドル63は、レボルバ59を上下動させることにより、ステージユニット10と対物レンズ57との相対距離を変化させ、標本のピント合わせを行うことができるようになっている。
【0022】
ステージユニット10は、顕微鏡本体51に固定され、レボルバ59の上方に水平に配置されたステージ(顕微鏡ステージ)1と、ステージ1に着脱可能に設けられ、スライドガラスSにより支持された標本を載置可能な円環形状の中座(標本保持部材)11と、中座11上でスライドガラスSを位置決め固定するクランプ3とを備えている。
【0023】
ステージ1は、図2(a),(b)に示すように、その中央部に板厚方向に貫通する比較的大きな円形の貫通孔5を有している。ステージ1の貫通孔5は、レボルバ59により照明光の光路上に配置される対物レンズ57の光軸上に配置されている。また、ステージ1は、貫通孔5の周囲に沿って、ステージ1の表面から板厚方向に窪んだ円環形状の段差部7を備えている。段差部7は、貫通孔5の半径外方に若干広がる幅を有し、中座11を収容することができるようになっている。
【0024】
中座11は、図3(a)〜(c)に示すように、ステージ1の貫通孔5の外形寸法よりも大きく、ステージ1の段差部7の外径寸法よりも僅かに小さい円環形状を有している。図3(c)は図3(b)の中座11の周縁部を拡大した図である。この中座11は、その中央に板厚方向に貫通する光通過孔13を有する中央平面部15と、中央平面部15の外縁に沿って全周に設けられた外縁壁部17とを備えている。これら中央平面部15および外縁壁部17は、同一の金属製薄板(薄板部材)により形成されている。
【0025】
中央平面部15は、ほぼ平坦な表面(以下、中平面部15の表面を載置面15aという。)を有しており、培養細胞などの標本をスライドガラスSにより支持して、光通過孔13の開口を跨ぐように載置面15a上に載置することができるようになっている。中座11がステージ1の段差部7に収容されると、ステージ1の表面と中央平面部15の載置面15aとが略面一になるようになっている。
【0026】
光通過孔13は、ステージ1の貫通孔5と比較して小さな径寸法を有する略円形に形成されており、周方向の一部が部分的に半径方向外方に広がった形状を有している。この貫通孔13は、中座11がステージ1に装着された状態で、照明光の光路上に配置されるようになっている。
【0027】
外縁壁部17は、光通過孔13から半径方向に十分に離れた位置に配置され、中央平面部15の全周にわたりその板厚方向に張り出して、円環形状の壁面を形成するようになっている。この外縁壁部17は、周方向に延びる端部17aをステージ1の段差部7に接触させて、中央平面部15を支持するようになっている。外縁壁部17が中央平面部15の全周にわたり板厚方向に張り出すことにより、中央平面部15を補強して剛性を確保することができる。
【0028】
これら中央平面部15と外縁壁部17は、プレス加工によって一体成形されており、中央平面部15を構成する金属製薄板の外縁が折り曲げられることにより外縁壁部17が形成されている。また、中央平面部15と外縁壁部17は、互いに同一の厚さ寸法を有し、中央平面部15の載置面15aと外縁壁部17の端部17aとが、互いに平行になるように形成されている。
【0029】
このような中座11は、例えば、以下のようにして形成することができる。
まず、中央平面部15の外形寸法よりも外縁壁部17の高さ分だけ半径寸法が大きい円形の金属製薄板を用意し、プレス加工により、金属製薄板の中心部分に板厚方向に貫通する光通過孔13を加工する。プレス加工の金型を用いることにより、容易かつ安価に大量に作成することができる。
【0030】
次に、プレス加工の絞り型を用いて、金属製薄板の外縁壁部17に相当する部分を全周にわたり折り曲げ、中央平面部15の板厚方向に湾曲した形状に成形する。外縁壁部17を折り曲げる角度は、例えば、絞り型から外しやすいように、90°よりも広い角度、すなわち、外縁壁部17の端部17aが半径方向外方に若干広がるような角度にすることとしてもよい。絞り型の圧力のかけ方を最適化することで、中央平面部15の載置面15aと外縁壁部17の端部17aとの平行度を精度よく保つことができ、中座11としての機能を損なうことがない。
【0031】
中座11をプレス加工により一体成形することで、異なる金属製薄板どうしを精度よく重ね合わせて中座を形成する場合と比較して、部品点数を少なくし製造の簡易化および精度の向上を図ることができる。また、中央平面部15と外縁壁部17との間に接合部分がなく、中央平面部15のゆがみに対する強度を向上することができる。さらに、中央平面部15と外縁壁部17との境目を滑らかな表面形状にすることができ、見た目の品位を高めるとともに、その境目にスライドガラスSや標本が引っかかるのを防ぐことができる。
【0032】
次に、このように構成された中座11、ステージ1およびステージユニット10の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るステージユニット10を用いて、倒立顕微鏡100により標本を観察するには、まず、ステージ1の段差部7に中座11を装着する。そして、中座11の中央平面部15上に、スライドガラスSにより支持した標本を光通過孔13の開口を跨ぐように載置し、クランプ3により位置決め固定する。
【0033】
この場合において、中座11および段差部7を円環形状にすることで、中座11により保持した標本を直接動かすことなく、中座11を対物レンズ57の光軸回りに回転させるだけで、標本の向きを変更することができる。なお、段差部7に収容した中座11を位置決め固定する位置決め部材をステージ1に設けることとしてもよい。位置決め部材としては、例えば、上方から中座11をステージ1に押し付けるバネ板等を用いることとしてもよい。
【0034】
次いで、レボルバ59により、所望の対物レンズ57を照明光の光路上に択一的に配置する。この場合において、中座11の外縁壁部17が光通過孔13から半径方向に十分に離れた位置に配置されているので、レボルバ59を回転させても、ステージ1の直下に配置される対物レンズ57の回動軌跡に外縁壁部17が干渉するのを防ぐことができる。
【0035】
次いで、光源53から照明光を発生させ、コンデンサ55により標本に照明光を照射する。照明光が照射されることにより標本を透過した透過光は、中座11の中央平面部15の光通過孔13を介してステージ1の貫通孔5を通過する。ステージ1の貫通孔5を通過した透過光は、照明光の光路上に配置された対物レンズ57により集光され、反射ミラーにより反射されて接眼レンズ61に入射される。
【0036】
焦準ハンドル63により、ステージ1と対物レンズ57との相対距離を調整し、標本のピントを合わせることにより、接眼レンズ61を介して標本の観察像を観察することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る中座11、ステージ1およびステージユニット10によれば、中座11によりステージ1の貫通孔5よりも小さい標本を保持して、透過照明による観察を行うことができる。また、外縁壁部17により中央平面部15の変形を防止し、中座11を高精度に維持することができる。また、ステージ1の直下に対物レンズ57が配置される倒立顕微鏡100に用いても、対物レンズ57の回動軌跡に外縁壁部17が干渉するのを防ぐことができる。さらに、中央平面部15と外縁壁部17とを同一の金属製薄板により形成することにより、比較的簡易かつ安価に製造することができる。
【0038】
金属製薄板は強度や防錆性に優れるステンレスをはじめ、用途に応じて選ぶことができ、表面処理を施すことも可能なので、2部品を接合後では表面処理ができないなどの制約がある従来の中座に対して、自由度を広げることができる。また、あらかじめ梨地やヘアライン加工の施された金属製薄板を用いれば、絞り加工後、すぐに製品を完成させることができ、より安く中座11を提供することができる。また、絞り型の圧力の調整により、必ず中凹になるように中座11を成形することができ、なおかつ、外縁壁部17の高さも自在にコントロールすることができる。したがって、公差内で中凹という理想的な状態の中座11を安定して製造することができる。
【0039】
本実施形態においては、プレス加工により金属製薄板を用いて中座11を一体成形することとしたが、これに代えて、プラスチック材料を用いてモールド一体成形により、中座を成形することとしてもよい。その場合、外縁壁部17と中央平面部15の間にリブを複数設けて強度を増すことが望ましい。このようにすることで、プラスチックの強度不足を補うことができる。
【0040】
また、本実施形態においては、標本保持部材として、円環形状の中座11を例示して説明したが、円環形状に代えて、例えば、光通過孔13を有する楕円形状、長円形状または多角形状にすることとしてもよい。
また、本実施形態においては、略円形の光通過孔13を例示して説明したが、略円形に代えて、楕円形、長円形または多角形にすることとしてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、ステージ1が顕微鏡本体51に固定されていることとしたが、これに代えて、ステージ1が照明光の光軸方向や、照明光の光軸方向に直交する水平方向に移動可能に設けられることとしてもよい。
また、本実施形態においては、倒立顕微鏡100を例示して説明したが、これに代えて、正立顕微鏡にステージユニット10を用いることとしてもよい。
【0042】
本実施形態は、以下のように変形することができる。
本実施形態においては、中央平面部15と外縁壁部17とをプレス加工により一体成形した中座11を例示して説明したが、第1変形例としては、例えば、中央平面部15と外縁壁部17とを別体の薄板部材により形成することとしてもよい。
【0043】
この場合、外縁壁部17が、中央平面部15の外縁寸法よりも僅かに大きい内縁寸法を有する枠形状を有することとし、中央平面部15の外縁を外縁壁部17に嵌合させて、これらを全周にわたり接着または溶接して接合することとすればよい。中央平面部15と外縁壁部17との接合部分は、磨いて品位よく仕上げることが望ましい。このようにすることで、特別な加工を施すことなく、同一の薄板部材を用いて精度および強度を確保しつつ、比較的容易かつ安価に中座11を製造することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、中座11の中央平面部15がほぼ平坦な載置面15aを有することとしたが、第2変形例としては、例えば、図4(a),(b)に示すように、中座11の中央平面部15が、板厚方向に湾曲して窪む複数の凹部115bが形成された載置面115aを有することとしてもよい。凹部115bは、中座11の中央平面部15の裏面側、すなわち、外縁壁部17が張り出す側に湾曲して突出する凸形状を有し、中央平面部15における載置面115aと凹部115bとが略同一の厚さを有していることが望ましい。
【0045】
また、複数の凹部115bは、互いに径寸法が異なる円環形状に形成され、それぞれ一定の幅を有し、光通過孔13と同心円状にそれぞれ配列されることとすればよい。また、凹部115bは、中央平面部15の精度に影響を及ぼさない程度の深さにすることとすればよい。また、中央平面部15の載置面115aと凹部115bとの境目はなだらかなR形状によって繋げ、スライドガラスSや標本が境目に引っかかるのを防ぐとともに、中央平面部15の精度に影響するのを抑制することとすればよい。
【0046】
また、凹部115bは、プレス加工により中座11を成形する絞り型に、凹部115bが形成されるような凹凸形状の加工を施しておくこととすればよい。このようにすることで、コストをかけずに簡易に凹部115bを形成することができる。
【0047】
中座11の中央平面部15に複数の凹部115bを設けることで、中央平面部15の面積が大きくし、中央平面部15の上からの力に対する強度、もしくは、中座11全体の強度を向上することができる。また、スライドガラスSの端が凹部115b上に配置されている状態で、スライドガラスSを上から少し押すことで、スライドガラスSを傾かせて、中座11からスライドガラスSを容易に取り上げることができる。
【0048】
本変形例においては、円環形状の凹部115bを例示して説明したが、例えば、図5に示すように、光通過孔13を長円形状にした場合は、光通過孔13の周囲を覆う環状や、略直線状に形成することとしてもよい。また、図6に示すように、凹部115bを略直線形状に形成して、光通過孔13を中心にして放射状に配置することとしてもよい。また、凹部115bを略円形に形成し、中央平面部15全体に所定の間隔をあけて点在させることとしてもよい。本変形例は、プレス加工に限らず、モールド成形など他の方法においても有効である。
【0049】
また、第3変形例としては、図7に示すように、中座11の中央平面部15の裏側に、金属材料からなる重り部材121を設けることとしてもよい。重り部材121は、例えば、対物レンズ57の回動軌跡に影響ない範囲に貼り付けることとすればよい。また、重り部材121は、全周一体となる円環形状に形成することとしてもよいし、円環形状を4等分して4個貼り付けるなど、円環形状を複数に分割した形状に形成することとしてもよい。図7は、中央平面部15の裏側に、円環形状を3/4と1/4に分割した重り部材121を貼り付けた状態を示している。また、重り部材121は、ステージ1に中座11を装着した際に支障がないように、外縁壁部17の高さよりも薄い厚さ寸法を有することとすればよい。
【0050】
中座11の中央平面部15に重り部材121を設けることで、中座11の重量が軽い場合に、中座11の全体重量を上げて安定感を確保することができる。特に、中座11をプラスチックで成型した場合は重量が軽いため、重り部材121を設けることで、重り部材121がない場合と比較して、より効果的に安定性を確保することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ステージ(顕微鏡ステージ)
5 貫通孔
7 段差部
10 ステージユニット(顕微鏡ステージユニット)
11 中座(標本保持部材)
13 光通過孔
15 中央平面部
17 外縁壁部
57 対物レンズ
115b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズの光軸上に配置される貫通孔を有する顕微鏡ステージに装着可能に設けられ、標本を保持する板状の標本保持部材であって、
前記顕微鏡ステージに装着された状態で前記対物レンズの光軸上に配置される板厚方向に貫通する光通過孔を有し、該光通過孔の開口を跨ぐように前記標本を載置可能な中央平面部と、
該中央平面部の外縁に沿って全周に設けられ、該中央平面部の板厚方向に張り出して前記顕微鏡ステージに接触し前記中央平面部を支持する外縁壁部とを備え、
これら中央平面部および外縁壁部が同一の薄板部材により形成されている標本保持部材。
【請求項2】
前記中央平面部と前記外縁壁部とが、プレス加工により一体成形され、該中央平面部を構成する前記薄板部材の外縁が折り曲げられることにより前記外縁壁部が形成されている請求項1に記載の標本保持部材。
【請求項3】
前記外縁壁部が、前記中央平面部の外縁寸法よりも僅かに大きい内縁寸法を有する枠形状を有し、該中央平面部の外縁を嵌合させて接合されている請求項1に記載の標本保持部材。
【請求項4】
前記中央平面部が、板厚方向に湾曲して窪む複数の凹部を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載の標本保持部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の標本保持部材を収容可能な板厚方向に窪む段差部と、
該段差部の板厚方向に貫通する前記貫通孔とを有する顕微鏡ステージ。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の標本保持部材と、
該標本保持部材が着脱可能に装着される請求項5に記載の顕微鏡ステージとを備える顕微鏡ステージユニット。
【請求項7】
前記標本保持部材および段差部が環状形状を有し、
前記標本保持部材が、前記段差部に前記対物レンズの光軸回りに回転可能に装着される請求項6に記載の顕微鏡ステージユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−25047(P2013−25047A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159302(P2011−159302)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】