説明

標的化リガンドを固定化するための改良型リンカー

脂質ベースの粒子に結合するための疎水性アンカーと標的薬剤との間にキラル中心がない改良型リンカーが、生体内での使用に好適な疎水性/親水性の特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年10月24日出願の米国仮特許出願第60/853,824号及び2007年10月16日出願の米国特許出願第11/872,984号の利益を主張するものであり、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、標的化剤を脂質/界面活性剤ベースの組成物に固定化するための組成物及び方法に関する。一実施形態において、脂質/界面活性剤コーティング中に本発明の化合物を包埋することにより、脂質/界面活性剤層で覆われたフッ化炭素のナノ粒子は、標的化剤を用いて生体内の所望の目標箇所に標的化される。
【背景技術】
【0003】
国際公開第2003/062198号は、造影剤及び薬物担体であるインテグリン標的化ナノ粒子について記載しており、ここではペプチド模倣体に結合したリンカーが粒子を被膜する脂質/界面活性剤層に固定化されることによって、標的化部分が粒子と結合している。そのようなリンカーとしては、2つのキラル中心を有し、且つポリエチレングリコール(PEG)部分を含む長鎖ポリアミドが挙げられている。リンカーはエタノールアミンの窒素とアミド結合することにより、ホスファチジルエタノールアミン(PE)と結合している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、標的化剤を脂質/界面活性剤のアンカー部分に結合した改良型リンカーに関する。
【0005】
本発明は、標的化剤をアンカー部分に結合する連結部分における改良に関する。本改良型リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)のような親水性領域と、標的化剤に結合しているキラル中心のない伸張部とを有する。
従って、一態様において、本発明は式
【0006】
【化1】

で表わされる化合物に関し、
式中、各nは独立して1〜4であり、
xは20〜60の整数であり、
Zは=NH又は=Oであり、
フェニレンは必要に応じて、アルキル、アルケニル又はアルキニルによって置換されていてもよく、
標的化剤は、分子の残りの部分と結合するためのアミノ基又は水酸基を含有する部分であり、及び
アンカーは、化合物を脂質/界面活性剤ベースの粒子状組成物中に包埋するための親油性化合物であり、該アンカーも分子の残りの部分と結合するためのアミノ基又は水酸基を含有する。
【0007】
他の態様において、本発明は、式(1)の化合物を含む標的化された脂質/界面活性剤ベースの粒子及び、対象に式(1)の化合物を含む粒子を含有する組成物を投与することによって、式(1)の化合物を含む粒子を生体内の目標箇所に送達する方法に関する。標的化された粒子はまた、治療剤及び/又は造影剤若しくは他の造影用部分を含んでいてもよい。粒子はさらに、生体内の標的とされる目標箇所に関連する病態を診断又は治療するための放射性同位元素を含有してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、標的化剤をアンカーに結合する、式(1)の化合物の構造を含むものとして示される改良型リンカーを提供する。本リンカーは、生体内投与に適するような特徴を有し、キラル中心がないことからより効率的な合成及び送達を行うことができる。リンカー中のフェニレンスルホニル基(好ましくはパラ異性体である)は、標的化剤中に含まれるアミノ基又は水酸基と直ちに反応するカップリング剤を使用することで得られ、−OCZ−基は、リンカーをアンカー中に含まれるアミノ基又は水酸基と結合させることで得られる。利用しやすいアンカーの1つは、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、又はモノアシルグリセロール若しくは親油性を与えるのに適した長さの2つのアシル基を有するジアシルグリセロールである。典型的な鎖長は、12〜22個の炭素原子の範囲であり、鎖は飽和又は不飽和であってよい。ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールなどのホスファチジルエタノールアミン(PE)の類似体も使用することができるが、ホスファチジルエタノールアミン(PE)は一般的な天然物であり利用しやすい。その他、リンカーの残りの部分と結合するための水酸基又はアミノ基を含有するコレステロール及びコレステロールエステル又はその他の脂質相溶性の物質を含むことができる。
【0009】
標的化剤は抗体又はその一部分、又はアプタマー、ペプチド模倣体、受容体リガンドなどであってもよい。「抗体」は、一本鎖抗体及びFv断片などの免疫反応性断片及び誘導体を含む。本発明のいくつかの態様においては、αβなどのインテグリンを標的とする標的化剤が特に有用である。これらは、RGD配列を含有するペプチド、又は、例えば米国特許第6,153,628号;同第6,130,231号;若しくは同第6,322,770号に記載された模倣体を含んでいてもよく、ここで当該文献は全て、それらの好適な模倣体の開示について参照により本題に組み込まれる。
【0010】
上述のとおり、式(1)で示されたフェニレン部分は好ましくは、スルホニル基についてパラ異性体であり、水酸基鎖の残りの部分と結合している。フェニレン部分は、1つ又は複数のアルキル基、アルキレン基、又はアルキニレン基によって置換されていてもよい。典型的には、アルキル基は1〜8個の炭素原子か、または1〜4個の炭素原子を含有し、かつ不飽和型における炭素数は、当然ながら、最低でも2個である。これらの基は、直鎖、分枝、及び環状並びにこれらの組み合わせを含む。典型的な基は、メチル基、エチル基、イソブチル基、シクロヘキシルメチル基、及びシクロペンチルメチル基などである。メチル基、エチル基若しくはプロピル基、又は対応する不飽和型のメチル基若しくはプロピル基などのより短い置換基が好ましい。
【0011】
上述のポリエチレングリコール基は、20〜60個の単量体、好ましくは40〜50個の単量体を含有する。従って、xは、20、30、40、50若しくは60又はその間の整数であり得る。
【0012】
式(1)の化合物は典型的には、標的化剤を、アンカーからは遠位となる末端でリンカーの残りの部分の少なくとも一部分と結合しているベンゼンのスルホニルクロリド誘導体と結合させることによって作製することができる。リンカーそれ自体は、中間部分を、アンカーの誘導体化されたポリエチレングリコール誘導体と反応させることによって製造することができる。詳細な例示的説明は後述する。
特に好ましい本発明の化合物は、式(2)
【0013】
【化2】

で表わされる化合物である。
【0014】
上述のとおり、本発明の化合物は、そのアンカー部分によって脂質ベースの粒子状担体と結合する。一実施形態において、アンカーは、フッ化炭素若しくは油又はその両方の適したナノ粒子化合物の脂質界面活性剤層中に包埋される。液体フッ化炭素脂質/界面活性剤で被覆されたナノ粒子に加え、アンカーを受け入れ得る脂質ベースの粒子状担体は、リポソーム、ミセル、及び油性乳剤を含む。こうした実施形態の本質は、当該技術分野において周知である。
【0015】
従って、粒子状の脂質ベース搬送媒介物は、リポソーム、脂質ミセル、リポタンパク質ミセル、脂質安定化乳剤、及びフッ化炭素/油ナノ粒子などを含んでいてもよい。リポソームは、「Liposomes:Rational Design」(A.S.ジャノフ編、マルセル・デッカー社、N.Y.)に記載されるとおり、又は当業者に周知の別の技法によって調製することができる。リポソームは、「コレステロール欠損型」のものを含む。リポソームに関連して本明細書で使用される用語「コレステロール欠損型」は、コレステロールを使用しないか、リポソームの相転移特性を大きく変えるには不十分な量のコレステロール(典型的には20mol%未満のコレステロール)を使用してリポソームが調製されたことを意味する。リポソームはまた治療効果を有する脂質を含んでもよく、当該脂質には、エーテル脂質、ホスファチジン酸、ホスホン酸塩、セラミド及びセラミド類似体、スフィンゴシン及びスフィンゴシン類似体並びにセリン含有脂質が含まれる。リポソームはまた、循環している時期を増加させるためポリエチレングリコール−DSPEなどの表面を安定化させる親水性ポリマー−脂質複合体を使用して調製してもよい。ホスファチジルグリセロール(PG)及びホスファチジルイノシトール(PI)などの負に帯電した脂質もまた、担体の循環時間を延長させるためリポソーム製剤に添加してもよい。これらの脂質を表面安定化剤として親水性ポリマー−脂質コンジュゲート又はコレステロールの代わりに用いてもよい。本発明の実施形態においては、凝集を防止し、担体の血中滞留時間を延長させるためPG又はPIを含有するコレステロール欠損型リポソームを利用してもよい。
【0016】
ミセルは、両親媒性の脂質又はポリマー成分からなる自己組織化粒子であり、疎水性コアに存在する難溶性薬剤の送達に利用される。ミセル送達媒体の調製のための様々な手段が利用可能であり、当業者が容易に実施することができる。例えば、脂質ミセルは、パーキンズら、Int.J.Pharm.(2000年)200(1):27−39頁に記載されたとおりに調製してもよい。リポタンパク質ミセルは、低比重及び高比重リポタンパク質並びにカイロミクロンを含む天然又は人工のリポタンパク質から調製することができる。脂質安定化乳剤は、単層又は二重層の脂質などの乳化成分によって安定化された油充填コアを含むように調製されたミセルである。コアは、トリアシルグリセロール(トウモロコシ油)などの脂肪酸エステルを含んでいてもよい。単層又は二重層は、DSPE−PEGなどの親水性ポリマー脂質コンジュゲートを含んでいてもよい。こうした送達媒介物は、ポリマー脂質複合体の存在下で油をホモジナイズすることによって調製することができる。脂質安定化乳剤の中に組み込まれる薬剤は、一般に水溶性が低い。ステアリン酸エステル、又は、ポリ(エチレンオキシド)ブロック−ポリ(ヒドロキシエチル−L−アスパルタミド)及びポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(ヒドロキシヘキシル−L−アスパルタミド)のミセルなどのリポタンパク質と同様の特性を呈する合成ポリマー類似体もまた、本発明の実施において用いることができる(ラバサニファーら、J.Biomed.Mater.Res.(2000年)52:831−835頁)。
【0017】
本発明において有用な、脂質/界面活性剤で被覆されたフッ化炭素コアを含有する好適なナノ粒子を調製する技法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,186,399号及び同第6,676,963号に記載されている。
【0018】
一例示的実施形態の乳剤を調製するための典型的な方法では、フッ化化合物溶液及び脂質/界面活性剤コーティング成分を水性媒質中で流動化させて乳剤を形成する。表面層の機能成分は元の乳剤が含んでいてもよく、又は後にナノ粒子乳剤を形成してから表面層と共有結合させてもよい。式(1)の化合物による標的化剤の粒子1個当たりの数は、典型的には数百個程度である。
【0019】
適切に調製された脂質ベースの粒子は、補助的薬剤を含んでいてもよい。このような補助的薬剤は、治療剤、放射性核種、MRI用の造影剤をもたらすキレート、又は標的に送る他の物質であり得る。一般に、補助的薬剤が存在する場合、粒子は多数の該薬剤をその外表面に含有するか又はその内部に含む。このような場合、脂質ベースの粒子は典型的には、数百個又は数千個の生物学的に活性な薬剤、放射性核種及び/又はMRI造影剤の分子を含有する。MRI造影剤では、脂質ベースの粒子に結合すべき一構成物質の個数は、典型的には粒子1個当たり5,000個を上回り、より好ましくは粒子1個当たり10,000個、さらにより好ましくは30,000個、及びさらにより好ましくは粒子1個当たり50,000〜100,000個以上である。蛍光色素分子、放射性核種、及び生物学的に活性な薬剤の個数は様々である。
【0020】
脂質ベースの粒子は補助的薬剤を含有することを要するものではない。一般に、標的化リガンドと直接結合した標的化粒子は、それ自体が超音波造影剤として有用である。また、粒子がフッ化炭素コアを有する場合、上記の追加的な機能と共に19F磁気共鳴画像法を用いて粒子の位置を追跡することができる。しかし、他の成分を複数包含することで、粒子は他の点で有用にもなる。例えば、常磁性イオンを含有するキレート剤を包含する場合、乳剤は磁気共鳴画像法の造影剤として使用することができる。生物学的に活性な物質を包含する場合、薬物送達系として使用することができる。放射性核種を包含すると、それらは放射線療法用の治療剤としても、又は造影用の診断剤としても有用になる。他の造影剤としては、フルオレセイン又はダンシルなどの蛍光色素分子が挙げられる。粒子状担体が造影剤を含んでいる場合、生物学的に活性な薬剤もまた含まれ得る。多数のかかる活性が含まれてもよく、従って、活性物質を標的組織に送達すると同時に標的組織の画像を得ることができる。
【0021】
脂質/界面活性剤層を伴う粒子状担体を含有する乳剤は、その性質に応じた様々な方法により調製することができる。例示目的で用いられるに過ぎないが、一つの方法として、薬物を含有する乳剤について以下の方法が挙げられる:界面活性剤共混合物(2.0%w/v)及びグリセリン(1.7%w/v)を調製する。ここで界面活性剤共混合物は、クロロホルム中に溶解した64モル%のレシチン(ファーマシア社)、35モル%のコレステロール(シグマケミカル社)、及び1モル%の式(1)の化合物を含む。薬物はメタノール(〜25μg/20μl)中に懸濁させ、2%界面活性剤層に対する滴定量で0.01〜5.0モル%、好ましくは0.2〜2.0モル%を添加する。クロロホルム−脂質混合物を減圧下で濃縮し、50℃の真空オーブンで一晩乾燥させ、超音波処理によって水中に分散させる。懸濁液を蒸留水又は脱イオン水中のパーフルオロオクチルブロミド(PFOB)と共にブレンダーカップ(ダイナミックス・コーポレーション・オブ・アメリカ)に移し、30〜60秒間乳化させる。乳化させた混合物をマイクロフルイディクス乳化装置(マイクロフルイディクス社)に移し、20,000PSIで3分間、連続的に処理する。完成した乳剤をバイアルにとり、使用するまで窒素雰囲気とし、栓をしてクリンプシールで密封する。対照乳剤は、界面活性剤共混合物から薬物を除いて同じように調製することができる。粒度は、レーザー光散乱サブミクロン粒度分析器(Malvern Zetasizer 4、マルバーン・インストルメンツ社、マサチューセッツ州サウスボロウ)によって37℃で3回測定し、平均直径が400nm未満の密で高度に再現性のある粒度分布を確認する。組み込まれなかった薬物は、透析又は限外ろ過によって除去することができる。
【0022】
或いは、乳剤は、MRI用キレートである補助的薬剤が含まれる以下の例示的な方法によって調製してもよい。
【0023】
所望のpH範囲に適し、且つ乳剤の保存期間中pHを維持するために十分な緩衝能を有するEDTA塩(USP)を加え、続いてグリセリンを添加することによって緩衝水(WFI)を調製する。緩衝水を混合タンクに加え、続いて式(1)の化合物、Gd−アミドキレート及び上記のPFOBと界面活性剤との混合物を加える。
【0024】
混合物を周囲温度で高剪断ミキサに循環させた後、cGMP製造用として認可されているMueller製のタンクを備えたマイクロフルイダイザ(マイクロフルイディクス社)に連続的に循環させて、動作圧を15,000psiに維持する。プロセス流の温度は、プロセス流体熱交換器に接続した加熱/冷却循環機によって制御される。温度はインラインで監視する。
【0025】
得られた乳剤のpHを計測してからバイアルに充填する。清浄な血清バイアルに管理された容量(重量基準)まで充填し、ヘッドスペースを不活性ガスで押し出した後、栓をしてキャップを取り付ける。
【0026】
最終滅菌は、cGMP合成用として認可されているオートクレーブを用いて清浄な蒸気により121℃で行われる。
【0027】
所望の到達部位に標的化されたこれらの粒子状送達媒介物は、超音波造影用、MRI造影用、薬物送達用、放射性核種を用いる診断及び/又は治療用の造影剤として使用することができる。粒子状送達媒介物は一般に乳剤の形態で供給され、組織の造影及び/又は薬物送達を含む本発明の方法において有用である。
【0028】
キット
本発明の乳剤は、本発明の方法において直接調製及び使用してもよく、又は乳剤の成分がキットの形態で供給されてもよい。キットは、全ての所望の補助的物質を緩衝液中に又は凍結乾燥の状態で含有する予め調製された標的化組成物を含んでいてもよい。或いはキットは、別個に供給される、標的リガンドを含まない乳剤を含んでいてもよい。これらの場合、典型的には乳剤はマレイミド基などの反応基をリンカーのうちアンカーの遠位にある末端に有し、それにより乳剤が標的化剤と混合された時に、乳剤自体と標的化剤とを結合させる。結合を生じさせるのに有用な追加的な試薬を別個の容器として提供してもよい。或いは、別個に供給される、反応基を有する所望の成分に結合したリンカーと結合する反応基を乳剤が有していてもよい。適したキットを作成するための、様々な手法を想定することができる。従って、最終的な乳剤を構成する個々の成分は個別の容器で供給されてもよく、又はキットは単に、キットそれ自体とは別個に提供される他の材料と組み合わせるための試薬を含むだけでもよい。
【0029】
網羅するものではないが組み合わせとしては、蛍光色素分子又はキレート剤などの補助成分とアンカーの遠位にあるリンカー末端で標的化剤に結合するための反応部分を脂質−界面活性剤層中に有する乳剤調製物;逆に、乳剤が標的化剤と結合した式(1)の化合物を有し、且つ補助的物質と結合する反応基を有する;式(1)の化合物及びキレート剤の双方を含有する乳剤だが、但しキレート化されるべき金属はキットで供給されるか、又は使用者によって個別に提供されるかのいずれかであるものを挙げることができる。
【0030】
利用
乳剤及びその調製用キットは、高発現レベルの標的を含有する組織の造影、及び、かかる発現レベルの組織が望ましくない場合はその治療を含む、本発明の方法において有用である。
【0031】
診断用放射性医薬品が、通常生理食塩水で懸濁された乳剤として、静脈注射によって投与される場合、体重70kg当たり1〜100mCiの用量、又は好ましくは5〜50mCiの用量で投与される。造影は公知の方法によって行う。
【0032】
治療用放射性医薬品が、通常生理食塩水で懸濁された乳剤として、静脈注射によって投与される場合、体重1kg当たり0.01〜5mCiの用量、又は好ましくは体重1kg当たり0.1〜4mCiの用量で投与される。現在の臨床では、同等の治療用放射性医薬品について、Zevalin(商標)の0.3〜0.4mCi/kgから、標識化ソマトスタチンペプチドであるOctreoTher(商標)の1〜2mCi/kgまでの範囲の投与量を設定している。このような治療用放射性医薬品については、腫瘍細胞死滅と、それに対する正常臓器毒性、特に放射線腎炎との間で均衡がとられている。前記レベルでは、均衡は一般に、腫瘍細胞への効果が優先されている。これらの投与量は、対応する造影用の同位元素の場合よりも多い。
【0033】
磁気共鳴画像法の造影剤は、米国特許第5,155,215号;米国特許第5,087,440号;マーゲルシュタットら、Magn.Reson.Med.(1986年)3:808頁;ルンゲら、Radiology(1988年)166:835頁;及びブスケットら、Radiology(1988年)166:693頁に記載されているような他のMRI剤と同様の方法で使用することができる。使用できる他の薬剤としては、米国特許出願公開第2002/0127182号に記載された、pH感受性で、パルスに応じてコントラスト特性が変化し得るものである。一般に、造影剤の滅菌水溶液は、患者に対し体重1kg当たり0.01〜1.0ミリモルの範囲の投与量で静脈内投与される。
【0034】
MRIキレート剤の特に好ましいセットは、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)及びその誘導体を含み、特に、その後ホスファチジルエタノールアミンのアミノ基又はそのペプチド誘導体と結合可能な、イソチオシアネート官能基を含むメトキシベンジル誘導体(DOTA−NCS)を含む。このタイプの誘導体は、参照により本明細書に援用される米国特許第5,573,752号明細書に記載される。他の好適なキレート剤は、同様に参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,056,939号に開示されている。
【0035】
DOTAイソシアネート誘導体はまた、脂質/界面活性剤に直接、又はペプチドスペーサーを介して結合させることができる。gly−gly−glyをスペーサーとして使用する場合を、以下の反応スキームに示す。直接的な結合の場合、DOTA−NCSを単にPEと反応させるだけで、結合した生成物を得ることができる。ペプチド、例えばトリグリシル結合の場合、ホスホエタノールアミン(PE)はまず初めに、t−boc保護トリグリシンと結合する。標準的なカップリング法、例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(又はその等価物)をN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)のいずれかと共に用いてt−boc−トリグリシンの遊離酸の活性化エステルを形成させる方法を用い、t−boc−トリグリシン−PEを精製する。
【0036】
t−boc−トリグリシン−PEをトリフルオロ酢酸により処理するとトリグリシン−PEが生じ、次にこれをDMF/CHCl中50℃で過剰量のDOTA−NCSと反応させる。最終生成物は溶媒を除去することによって単離され、続いて残留固形物を過剰量の水で洗浄し、過剰な溶媒及び未反応の、又は加水分解されたDOTA−NCSを全て除去する。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は本発明の例示を意図しており、限定を意図するものではない。
実施例1
式(2)の化合物の調製
【0038】
【化3】

【0039】
以下のスキームは、合成方法の全体像を示す:
αβ標的化リガンド中間体12の合成経路:
【0040】
【化4】

【0041】
αβ標的化リガンド中間体22の合成経路:
【0042】
【化5】

【0043】
αβ標的化リガンド29の合成経路:
【0044】
【化6】

【0045】
さらに詳細には、ステップは以下のとおり行われる。
【0046】
【化7】

【0047】
2−[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノイミダゾール(2):
2−アミノイミダゾールヘミスルフェート(化合物1、30g、227mmol)(アルドリッチ)を水(216mL)に溶解し、炭酸ナトリウム(24.1g、227mmol)を添加した。溶液を室温で15分間撹拌した。水を真空中で除去し、残留物を無水エタノール(85mL)中で粉砕し、混合物をろ過して溶媒を真空中で除去した。残留物を直ちに使用した。
【0048】
粗製2−アミノイミダゾール(18.2g)にジメチルホルムアミドジメチルアセタール(145mL)(アルドリッチ)を添加し、室温で一晩撹拌した。試薬を真空中で除去して粗製の2(32.66g)を得、これをそれ以上精製することなく、次のステップ(トリチル化)で用いた。
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0049】
【化8】

【0050】
1−トリチル−2−[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノイミダゾール(3):
粗製2−[(ジメチルアミノ)メチレン]アミノイミダゾール(2)に塩化メチレン(750mL)、トリエチルアミン(98mL、700mmol)及び塩化トリチル(62.98g、226mmol)(アルドリッチ)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗製の化合物3をメタノールから結晶化させた。
【0051】
粗製の化合物3を熱メタノール(450mL)から再結晶化させて溶液を室温まで放冷させ、淡黄色の固体として純生成物(化合物3)を得た。これをろ過し、100mLのMTBEで洗浄して真空下で1時間乾燥させた(37グラム)。
【0052】
母液を濃縮し、精製された化合物3を加え撹拌し、2回目の回収物として7.64gの化合物3を単離した。合計収率は44.64g(52%、2ステップ)であった。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0053】
【化9】

【0054】
1−トリチル−2−アミノイミダゾール(4):
化合物3(44.64g、117mmol)に、試薬級エタノール(1200mL)、氷酢酸(20.65mL)及びヒドラジン(26mL)を添加した。反応混合物を50℃で5時間撹拌した。溶媒を除去し、粗生成物に塩化メチレン(1,500ml)及び1Nの水酸化ナトリウム(67ml)を室温で15分間撹拌しながら添加した。得られた2つの層を分離して有機層をブライン(2×300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過し、溶媒を真空中で除去して、1−トリチル−2−アミノイミダゾール、化合物4(37.2g、97%)を得た。融点196〜199℃。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR及びLC/MS
【0055】
【化10】

【0056】
ジエチル(((3−(1,3−ジオキソラン−2−イル)フェニル)アミノ)メチレン)マロネート(7):
化合物5(アルファ・エイサー)と化合物6(アルドリッチ)との混合物を、ディーンスタークトラップが取り付けられた100mLの一口丸底フラスコ中で115℃まで一晩加熱し、その後室温まで放冷した。回転蒸発(1時間/40℃)により残留エタノールのほとんどを除去した。生成物7(20.30g、定量的収率)は濃厚な油であり、これは時間が経ったり、フリーザーに入れたり、又は乳鉢で激しく破砕したりすることで凝固する。分析(H NMR)により、そのまま次のステップで使用するために十分純度が高いことが確認される。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR
【0057】
【化11】

【0058】
エチル7−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート(8):
化合物7を、1Lの三口丸底フラスコ中の250℃に予熱された300mLのジフェニルエーテル(アルドリッチ)に添加した。温度を少しの間(1〜2分間)約240℃まで下げ、その後257℃まで上げて255〜260℃で15分間維持し、色が暗くなること、エタノール蒸気の発生を確認した。室温に冷却すると、いくらかの沈殿物が分離したが、混合物は極めて濃かった。混合物をヘキサンで1:4希釈し、さらに沈殿物を分離した。沈殿物をろ過し、ヘキサンで3回洗浄して乾燥させ、19.02gの生成物8(84%)を得た。分析(H NMR)により、この生成物の純度がそのまま次のステップで使用するのに十分な高さであることが示された。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0059】
【化12】

【0060】
エチル7−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−1−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート(9):
化合物8を、500mLの一口丸底フラスコ中の無水DMF(アルドリッチ)に溶解した。無水炭酸カリウム(EMサイエンス)を添加し、混合物を15分間撹拌した。ヨードメタン(アルドリッチ)を添加した後、混合物を室温で一晩撹拌し、その後濃縮してCHClと含水チオ硫酸ナトリウムとに分離した。CHCl層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮し、19.30gの粗製物9(褐色様の固体)を得た。H NMRスペクトルは十分なものであったが、TLC(MeOH:DCM 1:9)は、少量のより極性の低い不純物と、いくらかの極性の高い不純物(おそらくは大部分が無機物)を示した。THF/水又はCHCl/ヘキサンからの再沈殿により精製しようとしたが、不十分であった。シリカゲルプラグ(勾配はCHCl中1〜2〜4〜6〜10%メタノール)でのクロマトグラフィーによって精製された生成物(17.93g、収率95%)を得た。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0061】
【化13】

【0062】
エチル7−ホルミル−1−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート(10):
化合物9を1Lの一口丸底フラスコ中でアセトン(EMCO)に60℃で溶解した。予め洗浄したアンバーライトIR−120樹脂(アルドリッチ)を水と共に添加し、混合物を60℃で40分間撹拌し、20分(MCLS0995−078−1)及び40分の時点で一定量を取り出した。取り出した部分のHPLC分析から、アルデヒドの脱保護が20分で完了していたことが明らかとなった。混合物を熱浴槽から取り出してろ過し、初期量の約40%になるまで回転蒸発下で濃縮した(アセトンの除去)。得られた含水懸濁液をCHClと飽和含水重炭酸ナトリウムで分離した。水層を2×CHClで抽出した。集めた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮し、生成物10(4.20g、収率81%)を得た。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0063】
【化14】

【0064】
【化15】

【0065】
エチル7−(1−(トリフェニルメチル−1H−イミダゾール−2−イルアミノ)メチル)−1−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシレート(11):
トルエン中の化合物4及び化合物10を、復水器及びディーンスタークトラップが取り付けられた1Lの一口丸底フラスコ中、窒素下110℃で一晩撹拌した。室温に冷却した後、中間体であるイミン(11)を含有する混合物を濃縮し、分析した(H NMR、FT−IR、UV)。
【0066】
混合物を250mLのCHClに再溶解した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(6等量)(アルドリッチ)を添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。一定量を取り出し、以下のとおり処理した:溶媒を蒸発させ;残留物を酢酸エチル(EA)と含水炭酸カリウム/ブライン混合物で分離した。水層をEAで再抽出した。集めたEA層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮し、化合物12を得た。分析結果(HNMR;その他:IR、UV)から、還元の完了を確認した。H NMRがいくらかのAcOHの痕跡を示すため、水層のpHを再び確認すると、約5〜6であることが分かった(AcOH/AcO対の緩衝作用を上回るために、より多くの過剰カーボネートが必要であったかもしれない)。
【0067】
混合物のバルクを、確実に塩基性pH(8〜9)とするのに十分な炭酸カリウム溶液を用いる点を変更したうえで前記取り出した場合と同様に処理した。この際、分離はより困難であり、さらに時間が必要であった。
【0068】
粗混合物をシリカゲル(CHCl中1〜10%勾配のメタノール)のクロマトグラフィーにかけた。画分7〜10が生成物を含有していた(12、5g、収率67.1%)。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、13C NMR、FT−IR、LC/MS、残留溶媒分析、元素分析、乾燥減量
この中間体について作成されたCofA
【0069】
【化16】

【0070】
7−(1−(トリフェニルメチル−1H−イミダゾール−2−イルアミノ)メチル)−1−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(13):
化合物12をTHFに溶解した。含水LiOHを添加し、混合物を室温で3時間撹拌し、その後水で希釈して、THFが除去されるまで(起泡及び沈殿物の出現)濃縮し、HClでpH4まで酸性化させた(激しい起泡;より多くの沈殿物)。沈殿物を分離し、水で洗浄して乾燥させ、化合物13(生成物、3.40g、HPLC、LC−MSによって純度96.5%、収率81.7%)を得た。H NMR分析から、遊離アミン型より、過度にプロトン化された種であるTr−Im−N(H−CH−Arとの整合性が高い。元素分析から、アミン部位のいくつかにおける塩化アルキルアンモニウム塩の部分的な形成が確認される。(材料はステップ17でそのまま使用した)
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0071】
【化17】

【0072】
3,5−ジメチルフェノキシブタン酸(17):
500mLの三口フラスコに化合物14及びNaOHを窒素パージ下で充填した。機械で撹拌しながら混合物を加熱してフェノールを融解させ、次に100mLのDMSOを添加した。溶液を125℃に加熱し、次に100℃に冷却した。100℃で化合物15(アルドリッチ)を3分間かけて添加し(8℃の発熱)、次に温度を30分間で125℃まで上昇させた。反応物を90℃まで放冷し、100mLのHOを添加した。混合物を60℃まで放冷し、18mLの50%NaOH(含水)を70℃まで発熱させながら添加し、その温度で反応物を15分間保持した。反応物を40℃に冷却し、250mLの水を添加した後、pHが8に達するまで濃HClを添加した。反応物を周囲温度まで冷却し、次に4×50mLのMTBEで抽出した。濃HCl(約20mL)を用いて水層を結晶化が始まるpH1まで酸性化させた。
【0073】
ろ過によって固体を回収し、その固体を10mLのシクロヘキサンで洗浄した。次に残留物を80mLのシクロヘキサンから再結晶化させた。回収された生成物を15mLのシクロヘキサンで洗浄し、真空オーブン中30℃で乾燥させ、26.3gの化合物17(HPLCで純度99.7%が62%)を得た。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0074】
【化18】

【0075】
4−(クロロスルホニル)−3,5−ジメチルフェノキシブタン酸(18):
500mLの三口フラスコに、3,5−ジメチルフェノキシブタン酸(17)(25g、120mmol)及びCHCl(100mL)を充填した。この溶液を機械により撹拌しながら−27℃まで冷却し、次にクロロスルホン酸(42g、360mmol)を30分間かけて滴下により添加した(温度は最高で−20℃に達した)。材料をさらに1時間、−25℃で撹拌し、次にNaHCO(20g、238mmol)を反応混合物に添加した。次に反応混合物を150gの氷に添加した。次に反応混合物をEtOAc(750mL)で抽出し、NaSO(10g)で乾燥させてろ過し、次に真空中で濃縮した。粗生成物を5℃で2回、MTBEと共に(50mL、次に25mL)粉砕し、20.0gの化合物18(収率54%)を得た。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS
【0076】
【化19】

【0077】
4−(4−(((2−((tert−ブトキシ)カルボニルアミノ)−1−(メトキシカルボニル)エチル)アミノ)スルホニル)−3,5−ジメチルフェノキシ)ブタン酸(20):
4−(クロロスルホニル)−3,5−ジメチルフェノキシブタン酸、化合物18(2.50g、8.1mmol)のジオキサン(60.0g)溶液を、室温で水(20.0g)中のH−Dap(Boc)−OMe・HCl(化合物19)(1.66g、6.5mmol)(バケム社)とNaHCO(8.21g、97.7mmol)の混合物に約45分間の時間をかけて滴下により加えた。添加完了2時間後、反応混合物を真空中で濃縮し、次に水及びクエン酸(12.50g、10.0等量)を添加した。粗生成物をEtOAcで抽出し、EtOAc層を水で1回洗浄した。EtOAc層を濃縮し、2.75gの化合物20(化合物19を基準として収率87%、化合物18を基準として収率69%)を得た。
【0078】
スケールアップの改良
140mLのジオキサン/28mLのHO中のH−Dap(Boc)−OMe・HCl(化合物19)(8.0g、31.4mmol)とNaHCO(38.6g、460mmol)とのスラリーを氷浴で5℃まで冷却した。このスラリーに、4−(クロロスルホニル)−3,5−ジメチルフェノキシブタン酸、化合物18(14.0g、46mmol)のジオキサン(140mL)溶液を、75分間の時間をかけて滴下により加えた。さらに2時間後、反応混合物をろ過し、ろ液を真空中で濃縮した。残留物に水を添加し(総量420mL)、次にこれを75mLのMTBEで抽出した。水相を3NのHCl(含水)を用いて酸性(pH=4)にし、次にEtOAc(300mL)で抽出した。EtOAc抽出物をNaSOで乾燥させ、ろ過して真空中で濃縮し、10.2gの所望の生成物20(20.9mmol、化合物19を基準として66.5%、化合物18を基準として45%)が残った。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、FT−IR、LC/MS、旋光度、キラルHPLC
【0079】
【化20】

【0080】
メチル(2S)−3−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−2−[({2,6−ジメチル−4−[3−(N−{2−[(フェニルメトキシ)カルボニルアミノ]エチル}カルバモイル)プロポキシ]フェニル}スルホニル)アミノ]プロパノエート(22):
氷水浴で冷却したCHCl(150mL)に溶解させた前記反応物からの粗フェノキシブタン酸(化合物20)(2.75g)溶液に、4−メチルモルホリン(0.89g、8.8mmol)を加え、次にトリメチルアセチルクロリド(1.06g、8.8mmol)を添加した。反応混合物を室温まで温めた。1時間後、反応混合物を真空中で濃縮し、DMF(100mL)を添加して、さらにこれを真空中で除去した(反応しなかった一切のトリメチルアセチルクロリド(沸点105〜106℃)を除去するため)。粗生成物をCHCl(150mL)中に再溶解し、DMF中のベンジルN−(2−アミノエチル)カルバメートヒドロクロリド、化合物21(1.52g、6.6mmol)及び4−メチルモルホリン(1.11g、11.0mmol)の溶液を加えた。1時間後、反応混合物を真空中で濃縮し、EtOAcと水で分離した。層の分離後、EtOAc溶液を希NaHCO及び水で洗浄した。EtOAc溶液を真空中で濃縮し、粗生成物を得た。この物質をクロマトグラフィー(97:3 EtOAc/MeOH)により精製し、2.80gの生成物22を得た。
【0081】
この物質にエーテルを添加し、油を結晶化させた。得られた固体をろ過し、2.44gの精製された化合物22を得た(65.5%)。
【0082】
より大きいスケールで用いられる代替的方法
化合物20(8.20g、16.8mmol)をDMF(70mL、3A分子篩で乾燥)に溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(8.68g、67.1mmol)を添加し、混合物を窒素下で撹拌した。混合物を冷水浴中で冷却し、次にHBTU、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(7.64g、20.1mmol)を17℃未満の温度で少しずつ添加した。混合物をさらに20分間撹拌した。DMF(21mL、3A分子篩で乾燥)中のベンジルN−(2−アミノエチル)カルバメートヒドロクロリド、化合物21(4.65g、20.1mmol)の溶液を17℃未満の温度で滴下により添加した。溶液をさらに30分間撹拌し、周囲温度まで温めた。次に反応溶液を60℃、10mbarで蒸発させた。これにより、33.8gの残留物を得た。この残留物をジクロロメタン(120mL)に溶解した。混合物を0.1MのHCl(含水)各20mLで2回洗浄した。次に混合物を10%NaHCO各20mLで3回洗浄した。50℃、10mbarで蒸発させ、13.8gの残留物を得た。
【0083】
残留物を塩化メチレン(15mL)に溶解し、シリカゲル60(100g、粒径0.015〜0.040mm、メルク社)に通してろ過した。ドライカラムバキュームクロマトグラフィーを使用した。純粋酢酸エチルから混合酢酸エチルに、5%メタノールを少量ずつ増やした溶離液でシリカを溶出させた。各50mlの分量であった。画分7〜11はTLC分析から純粋であると判断されたため、これらを合わせた。蒸発させ、6.3gの起泡性油を得た。これは冷却すると凝固した(56%)。HPLC254nmで純度97.7%であった。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、13C NMR、FT−IR、LC/MS、残留溶媒分析、元素分析、乾燥減量、旋光度
この中間体について作成されたCofA
【0084】
【化21】

【0085】
メチル(2S)−3−アミノ−2−[({2,6−ジメチル−4−[3−(N−{2−[(フェニルメトキシ)カルボニルアミノ]エチル}カルバモイル)プロポキシ]フェニル}スルホニル)アミノ]プロパノエートトリフルオロアセテート(23):
化合物22をCHCl:トリフルオロ酢酸に溶解し、室温、窒素下で30分間撹拌し、その後濃縮して6のCHClを蒸発させ、高真空下で乾燥させて、化合物23(薄黄色の油、3.14g)を得た。これはそのままステップ17で使用した。
プロセス中のアッセイ:HPLC
生成物I.D.:H NMR、LC/MS、旋光度
【0086】
【化22】

【0087】
手順:
ガラス器具を110℃のオーブンで乾燥させて、加熱、窒素下で組み立てた。
窒素雰囲気下、磁気攪拌した、無水N−メチルピロリジノン(50mL)中のジイソプロピルエチルアミン(16.5mL;94.7mmol)中の酸性のスラリー13(5.15g;9.5mmol)をO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N−N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(3.65g;11.4mmol)の1分量で処理し、続いて無水NMP(15mL)で処理した。スラリーを窒素下、周囲温度(25℃)で15分間撹拌した。無水NMP(100mL)中、いくらかの残留トリフルオロ酢酸(計算上、約21.9mmol)を含有したアミン23(8.9g;72%アッセイ;9.5mmol)の粗トリフルオロ酢酸塩の溶液を62分間かけて滴下により添加した。このとき温度が25℃から28℃に上昇する少しの発熱を伴った。添加用漏斗を無水NMP(10mL)で洗浄し、反応混合物に添加した。透明で明るい琥珀色の溶液を周囲温度、窒素下(3:55pm)で一晩撹拌した。pH紙を反応混合物に浸漬し、次に水に浸漬すると、pH≧8を示した。
【0088】
室温、窒素下で16時間後、反応混合物の一定量(3滴)を10mLの50%含水アセトニトリルで希釈した。LC/MSから、1087.4m/zにおけるM+1イオンを示す所望の生成物を確認した。出発アミン23はLC−MSトレースでは検出されず、2〜3の未知の不純物が検出された。透明で明るい琥珀色の溶液に添加用漏斗を加え、窒素下で保置した。この溶液を、1Mの含水HCl(30mL;30mmol)を含有する磁気撹拌した水(1,400mL)中に45分間の時間をかけて滴下により添加した。水溶液のpHをpH電極でモニタし、1Mの含水HCl(28.5mL;28.5mmol)を一定間隔で添加してpHを3〜3.5に保った。最終pHは3.1であった。得られたクリーム状スラリーを焼結漏斗で吸引ろ過した。時々、漏斗の焼結表面をスパチュラで擦り付けてろ過を促進し、湿ったクリーム状の固体を得た。この固体を十分に洗浄し、バキュームなしにスパチュラを用いて漏斗中で水(200mL×5)と混合した。
【0089】
数回の洗浄後、ろ過は比較的行い易くなり、ケーキは水中によく懸濁した。ケーキを最終的に上記のとおり水(200mL×3)で洗浄してNMPを除去した。ケーキをフィルターで吸引乾燥させ、次に自由流動するクリーム状固体として蒸発皿に移した;25.9g。固体を真空オーブン中45℃(11:40am)で5時間乾燥させ、ほぼ乾燥したクリーム状固体を得た;9.75g。この物質を一晩、加熱なしに乾燥させた。
量=9.6g。≧94% アッセイでほんの痕跡量の不純物。
収率=92.9%
【0090】
【化23】

【0091】
手順:
2.5LのParrボトル中、Degussa E101 NE/W 10%パラジウム炭素(2.0g)を含有する905mLメタノール中のN−カルボベンゾキシ中間体24(9.05g;8.3mmol)の溶液を水素で6回、加圧及び減圧して、大きいParrシェーカーの残留空気を除去した。ボトルを水素で44.5psigに加圧し、Parr水素化反応器で振盪した。
【0092】
水素圧力下で20.5時間後、一定量(0.3mL)を15mLの33%含水アセトニトリルに溶解し、Whatman mini−uniprep(0.45μPFTEフィルター)でろ過した。LC/MS分析から所望の生成物を確認し、検出可能な出発物質は確認されなかった。触媒スラリーを、上面に1枚のフィルター紙を備え、事前に湿潤させて固めたセリット545のパッド(41.2g)を通じて吸引ろ過した。触媒及びセリットパッドをメタノール(100mL×3)で洗浄した。淡黄色のろ液をロータリーエバポレータにより35℃で濃縮し、ベージュ色の固体を得た;8.2g。この固体を真空デシケータ中、室温、0.15torrで一晩、乾燥させた。
量=7.75g。≧94% DADによるアッセイ。
収率=97.3%
【0093】
【化24】

【0094】
手順:
化合物25、210mg(0.22mmol)を6mLの5:1(v:v)THF/HOに溶解した。この溶液に200μLの3N LiOH(含水)を添加し、得られた2相系をアルゴン下、周囲温度で3.5時間撹拌した。3.5時間後、反応混合物のpHを1N HCl(含水)を用いて約6に調整した。反応混合物をアルゴンでパージすることによってTHFを除去し、白色のスラリーを得た(真空中で除去しようとすると、激しく起泡した)。このスラリーに5mLのHOを添加し、得られたスラリーを、高純度焼結ガラス漏斗を通じてろ過した(緩速ろ過)。固体を10mLのHOで洗浄して空気乾燥させ、134mg(0.14mmol、65%)の化合物26が得られた。
【0095】
【化25】

【0096】
手順:
化合物26(132mg、0.14mmol)を5mLのTFA(シグマ−アルドリッチ)に溶解した。この溶液に、アルゴン下、0.5mLのEtSiH(アルファ・エイサー)を添加した。反応混合物をアルゴン下1時間、70℃に加熱した。次に反応物を周囲温度まで放冷した(反応物から白色固体の沈殿物)。粗反応混合物を0.45ミクロンのシリンジフィルタを通じてろ過した。ろ液に25mLのCHClを添加し、得られた溶液を真空中35℃で濃縮した。得られた油に2回目の25mLのCHClを添加し、この溶液を真空中35℃で濃縮した。残留物に25mLのヘキサンを添加し、40℃に加温し、得られた液体層をデカンテーションして取り除き、残留物が残った。2回目の25mLのヘキサンを添加し、上記の手順を繰り返した。残った残留物を真空中40℃で乾燥させ、117mgの化合物27(bis−TFA塩としての生成物を基準に90%)を得た。
【0097】
【化26】

【0098】
100mLのRBフラスコに、0.508gの化合物28(84%純度を基準として0.144mmol)、bis−TFA塩として142mgの化合物27(0.154mmol)、3mLの無水DMF及び最後に60μLのi−PrNEtを充填した。均質な反応物を周囲条件で48時間撹拌した。粗反応物を真空中45℃で濃縮した。
【0099】
残留物を、以下のとおりの段階的な勾配を用いて25gのシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。
1)CHCl:MeOH 3:1(v:v)−3カラム容量
2)CHCl:MeOH:HO 75:24:1(v:v:v)−4カラム容量
3)CHCl:MeOH:HO 75:23:2(v:v:v)−4カラム容量
4)CHCl:MeOH:HO 75:22:3(v:v:v)−4カラム容量
【0100】
所望の生成物を最終勾配の画分から回収した。化合物29を含有する画分を濃縮し、透明でガラス質の固体を得た。これを50:50のCHCN:HOに溶解し、等容量のHOで希釈し、次に凍結乾燥させ、スポンジ状の白色固体を得た(145.5mg、28.5%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
【化1】

で表わされる化合物
[式中、各nは独立して1〜4であり、xは20〜60の整数であり、Zは=NH又は=Oであり、標的化剤は、分子の残部と結合するためのアミノ基又はヒドロキシル基を含有する部分であり、及び、アンカーは、前記化合物を脂質ベースの粒子中に包埋するための親油性部分である]。
【請求項2】
前記標的化剤がインテグリンを標的とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記標的化剤が抗体又はその免疫反応性断片であるか、又は、前記標的化剤が受容体のリガンドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記アンカーがホスファチジル脂質の残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記アンカーがホスファチジルエタノールアミン基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
xが40〜50の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
多数の請求項1に記載の化合物の分子を含む、脂質ベースの粒子製剤。
【請求項8】
前記粒子が治療剤又は診断剤をさらに含んでなる、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記治療剤が医薬であり、及び/又は
前記診断剤がMRI造影用のキレート化金属であり、又は
前記治療剤若しくは診断剤が放射性核種である、請求項8に記載の粒子製剤。
【請求項10】
前記脂質ベースの粒子が、リポソーム、ミセル、又は脂質/界面活性剤で被膜された液体フッ化炭素からなるコアを含有するナノ粒子である、請求項8に記載の粒子製剤。
【請求項11】
前記脂質ベースの粒子が、脂質/界面活性剤で被膜された液体フッ化炭素からなるコアを含有するナノ粒子である、請求項10に記載の粒子製剤。
【請求項12】
対象における所望の目標箇所を標的化する方法であって、請求項8に記載の製剤を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
対象における所望の目標箇所を標的化する方法における請求項8に記載の製剤の使用。

【公表番号】特表2010−507722(P2010−507722A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534770(P2009−534770)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/081540
【国際公開番号】WO2008/070291
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(506410316)ケレオス インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】