説明

標的因子の特異的食作用のための多機能複合体

本発明は、少なくとも1つの標的病気因子に対して特異的な免疫促進反応(好ましくは食作用)を誘発するための多機能標的複合体でに関するものである。本発明に係る複合体は、(a)目的とする標的因子と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)免疫促進因子を含んでいる免疫活性成分、及び(c)随意的に、前記標的成分と前記免疫活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。本発明に係る複合体は、様々な病的疾患(例えばウシの乳房炎や水産物の潰瘍性疾患など)の有効な治療的予防及び治療を提供する。さらに、本発明は、標的複合体を含んでいる組成物、治療方法、及びそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに結合する(随意的に結合成分を介して結合する)標的成分と免疫促進活性成分とを含む標的複合体であって、種々の病原性疾患の効果的な治療的予防及び治療を提供する標的複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、ウイルスや細菌などの病原体によって引き起こされる病気を予防するための最も効果的な方法である。ワクチンは、免疫系の抗体及び特定細胞を刺激することによって、動物に防御機構を与える。能動免疫においては、ヒト又は動物に、病原性を弱めたワクチン、病原体を不活化したワクチン、又は毒性を処理したワクチンを接種する。それを受けて、防御機能をそれぞれ短期間又は長期間与えるような抗体及び記憶細胞が作られる。有効なワクチンがなければ無防備な動物は病気に感染する可能性があり、感染した動物は種々の薬物によって、例えば細菌の場合には抗生物質によって、治療する必要がある。これを解決する方法の1つは、受動免疫である。このアプローチでは、特定病原体に対する抗体が1つの動物において産出され、これが別の動物に投与されてその別の動物が同じ病原体に感染する。その一例が母子免疫である。例えば、大腸菌K99は、若い仔ウシに感染して下痢を引き起こす。感染した仔ウシは、細菌に対する移行抗体によって防御能を発揮することができるが、そのような移行抗体は初乳によって与えられる。哺乳類は初乳を介して抗体を移行するが、雌鶏は、卵黄又は血液を介して子孫即ち成長中の雛に抗体を受動的に移行する(Hanson et al., Science and Medicine 4:12-21, 1997)。
【0003】
数多くの出版物(Brunser, et. al., 1992; Campbell and Petersen, Immune Milk. Journal of Immune Milk 1:3-28, 1964、Davidson, et. al., The Lancet 2:709-712, 1989、Ebina, et. al., Medical Microbiology and Immunology 174:177-185, 1985、Fayer, W. et. al., 1989, Golay, et. al., 1990、Mietens and Keinhorst, 1979、Ormrod and Miller, 1991, 1993、Owens and Nickerson, 1988、Sharpe, et. al., 1994、Smith, C. M. ,1964)によれば、雌鶏又は乳牛に長期間にわたり抗原を複数回接種すると(即ち過剰免疫)、結果として「免疫」卵又は「免疫」ミルクが産出されることが報告されている。これらの産物は、特異性ワクチン接種抗原に対して抗体を有する。
【0004】
哺乳類において子宮内移行免疫防御機構が観察されるのと同様に、雌鶏は、卵に抗体を分泌することによって受動的に防御能を子孫に移行する。ニワトリ抗体が雌鶏の血清から卵黄へ移行し、雛によって吸収されることは、IgGが哺乳動物の母から子孫へ経胎盤的に移行するのに類似している(Kowalczyk, et al., Transport in the Chicken Immunology 54:755-762, 1985、Rose, et al., European Journal of Immunology 4:521-523, 1974)。
【0005】
免疫グロブリンは卵において自然発生し、卵製品はヒトの食事の一般的なタンパク源であるので、免疫卵は便利で経済的な特異性抗体源である(Hamada, et al., Infection and Immunity 59:4161-4167, 1991、Polson, et al., Immunological Investigations 14:323-327, 1985)。免疫卵は、従って、外見上凝縮された抗体源として働く。
【0006】
従って、卵において産出された抗体(IgY)を本発明の標的複合体において標的成分として用いることは、本発明の目的の1つである。これらの標的成分(IgY)は、特定の病気因子に対する免疫促進反応に対して特異的に作られる。
【0007】
本発明に係る標的複合体の免疫活性成分は、Fcフラグメントによってオプソニン化を誘発するような、補体、細菌性抗体、IgGなどの食作用誘発因子を含む。両成分即ち本発明の標的複合体の標的成分及び免疫成分は、好適にはマイクロキャリア/ナノキャリアに結合し得る。
【0008】
免疫促進細胞表面ポリペプチド及びそのレセプターは、哺乳動物細胞又は細菌を含む異物の排除及び分解に重要である。免疫促進細胞表面ポリペプチド及びそのレセプターは、食作用及びADCCを活性化する。プロセスは、異物のオプソニン化から始まる。オプソニンは、細胞又は微生物を食細胞によって捕らえられ易くするような物質であり、通常は抗体又は補体成分である。オプソニン化は、細胞をオプソニンでコーティングするプロセスである。食細胞は、異物を取り込んで吸収する細胞であり、取り込み及び吸収のプロセスが食作用である。とりわけ本発明の目的のために重要な食細胞は、マクロファージや単球などの白血球である。
【0009】
本発明は、従って、それを必要とする被検哺乳動物において、悪性疾患のみならず病原体(細菌、ウイルス)、毒素及び他の抗生物質抵抗性病原体によって引き起こされる種々の病的疾患を予防及び治療するための標的化免疫促進複合体を提供する。
【0010】
標的化免疫促進の特定の例において、本発明は更に、ウシ乳房炎の予防及び/又は治療のための方法及び標的化複合体医薬品成分を提供する。標的化複合体は、活性免疫促進成分と標的成分とを含み、後者は乳房炎病原体に特異的なIgY抗体である。両成分は、好適にはマイクロキャリア/ナノキャリアビーズに付着され得る。
【0011】
ウシの乳房炎は、乳管の炎症性変化に関与し、通常は管又は乳頭槽に侵入する微生物又はその増殖によるコロニー形成の結果としての乳管系又は乳房組織の炎症を指す。乳合成機能はそれ故に損なわれ、乳汁分泌細胞壁の過剰浸透は、体細胞、特に白血球の数の増加を伴って、異常乳の分泌を引き起こす。更に、乳汁分泌細胞の障害及び萎縮、結合組織の増殖なども乳汁分泌量の減少又は欠如につながることがある。
【0012】
主な乳房炎病原体には、ブドウ球菌、連鎖球菌、放射菌、大腸菌、シュードモナス、クロストリジウム、菌類がある。
【0013】
乳房炎感染又は発病のメカニズムは複雑であり、(細菌に関して)病原体の細菌性浸潤、乳腺上皮上での病原体のコロニー形成、及び引き続き起こる病原体の増殖又は組織侵入に関与する。疾病素質には、遺伝的特質、体質、気候、家畜設備、環境、飼育動物の数、餌付け、搾乳法、乳頭外傷などを挙げることができるが、実際上、最も重要なのは、ミルカーによる適切な取扱いを含む搾乳衛生である。
【0014】
乳房炎による実際的な損害は、乳量が減少する、乳質が低下する、乳が無駄になる、乳が出なくなる、動物の耐用年数が短くなる、治療費用がかさむ、健康牛への潜在的な感染源となる、などであるが、これらは全て深刻な経済的損失を表している。従って、乳房炎は過去200年にわたり多くの国々でかなりの調査の対象となってきた。大部分の結果が病気そのものの治療及び予防に供されてきたが、その発生率は低下しておらず、地域によっては増加すらしているところもある。乳房炎は、微生物感染に起因する乳腺の炎症性変化に関連があるので、反応は通常、抗生物質及び合成抗菌物質の乳腺内投与を含む。抗生物質製剤及び合成抗菌物質が投与されるのは、ヒトである消費者の健康への影響を考慮して、乳が利用できない期間が経過した後である。その期間に絞り取った乳には商業的価値がないので、これは大きな経済的損失を意味する。更に、薬剤の投与量及び投与はもちろん治療が行われる場所で監視されなければならないが、薬剤は時にそれに対する病原体の感受性をテストすることなく選択される。多くの病原体はそれ故に複数の抵抗性を獲得してきたが、これによって効果的な治療計画の決定がしばしば妨げられる。
【0015】
従って、本発明の別の目的は、乳に薬剤を残すことなく或いは薬剤抵抗性菌種を産出することなく乳房炎を予防及び治療するための単純で更に実用的かつ経済的な方法及び標的複合体を提供して上述の問題を解決することである。
【0016】
本発明の上記及び他の目的は、後述の記載によって明らかになるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの標的因子(好ましくは病気因子)に対して特異的な免疫促進反応を誘発するための多機能標的複合体に関する。本発明に係る標的複合体は、(a)前記標的因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)免疫促進因子を含んでいる少なくとも1つの免疫活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの免疫活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。そして、前記標的成分及び前記活性成分は、両成分の独立した生物学的機能が保持されるように、適切な構造で結合される(随意的には前記結合成分を介して結合される)。
【0018】
ある実施形態では、本発明に係る標的複合体は、食作用、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)、補体活性化、及び特異的T細胞及びB細胞の刺激から成る群より選択される特異的な免疫促進反応を誘発する。この特異的な免疫促進反応は、少なくとも1つの病気因子に対して、本発明に係る標的複合体により標的にされる。
【0019】
特に好適な実施形態では、本発明に係る標的複合体は、少なくとも1つの標的因子を標的にした、白血球(例えばマクロファージや単球)による特異的な食作用を誘発する。
【0020】
別の実施例によれば、本発明に係る標的複合体は、細菌、ウイルス、菌類、悪性細胞、毒素、毒液、ハプテン、及び不要なタンパク質などの標的病気因子を標的にする。より好ましくは、標的病的因子は、乳房炎病原細菌、腸病原細菌、及び病原性フルンケル症細菌から成る群より選択された細菌である。最も好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体は、放射菌、大腸菌、シュードモナス、クロストリジウム、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス−アガラクティエ、ストレプトコッカス−ジスガラクティア、コリネバクテリウム−ピオゲネス、エンテロコッカス−フェカーリス、ウシコリネバクテリウム、ノカルジア−アステロイデス(又はfarcinica)、及びストレプトコッカス−ウベリスから成る群より選択された、少なくとも1つの乳房炎病原細菌を標的にする。
【0021】
また、前記複合体の標的病的因子は、アエロモナス属細菌、特に、魚類に潰瘍性疾患を引き起こすアエロモナス・サルモニサイダ(Aeromonas salmonicida)を標的にする。
【0022】
さらに、他の特別な実施形態では、本発明に係る標的複合体内に含まれている標的認識成分は、抗体又はその機能的断片、リガンド、及び前記病気因子又はその機能的断片に対して特異的なレセプターの内のいずれか1つを含んでいる。特に好ましい実施形態では、前記標的認識成分は、抗体又はその機能的断片を含んでいる。そのような抗体は、前記病気因子又はその機能的断片、及びおそらくは例えばIgG、IgY、又はIgMに対して(好ましくはIgYに対して)特異的である。
【0023】
特定の実施形態では、本発明に係る標的複合体は、活性成分として、免疫促進活性成分を含んでいる。より詳しくは、この免疫促進因子は、食作用を誘発する。活性成分として本発明に係る標的複合体内に含まれている食作用誘発因子は、IgGやC3bのいずれかのオプソニン、IgG及びC3b、食細胞のマンノース−フコース・レセプターと相互作用する炭水化物残基を有するタンパク分子、スカベンジャー・マクロファージ上でレセプターによって認識されるリガンドタンパク分子、食細胞によって発現されるインテグリンのリガンド、糖タンパク、及びフコシル・トランスフェラーゼから成る群より選択される(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0024】
特定の実施形態では、本発明で使用する好ましい免疫促進活性成分は、免疫グロブリンG(IgG)である。
【0025】
他の好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体に含まれている随意的な結合成分は、固形担体、化学リンカー、アミノ酸残基、ペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチド・リンカー、糖類、オリゴ糖又は多糖類リンカー、ポリアミン及び脂質リンカー、及びタンパク質(特に骨格タンパク質)の内のいずれか1つである。
【0026】
他の好ましい実施形態では、本発明に係る複合体は、結合成分なしで直接的に付着する標的成分及び活性成分から成る。このような実施形態では、標的成分は標的因子を標的にする抗体(例えばIgY抗体)であり、活性成分はIgG抗IgY抗体である。両成分の結合は、適切な立体構造(IgG分子遊離のFcを有する)を保持する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は、乳房炎病原細菌に感染したウシにおいて、少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌対して特異的な食作用を誘発するための多機能標的複合体に関する。この特異的複合体は、(a)乳房炎病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)食作用誘発因子を含んでいる少なくとも1つの活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。前記標的成分及び前記活性成分は、両成分の独立した生物学的機能が保持されるように、適切な構造で結合される(随意的には前記結合成分を介して結合される)。
【0028】
この特定の実施形態の標的複合体は、標的認識成分として、乳房炎病原細菌に対して特異的なIgY抗体を含んでいる。より詳しくは、本発明に係る標的複合体は、少なくとも1つの乳房炎病原細菌に対して特異的な少なくとも1つのIgY抗体を含んでいる。前記乳房炎病原細菌は、放射菌、大腸菌、シュードモナス、クロストリジウム、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス−アガラクティエ、ストレプトコッカス−ジスガラクティア、コリネバクテリウム−ピオゲネス、エンテロコッカス−フェカーリス、ウシコリネバクテリウム、ノカルジア−アステロイデス(又はfarcinica)、及びストレプトコッカス−ウベリスから成る群より選択される細菌である。
【0029】
特定の好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体は、食作用誘発因子として、IgG分子を含んでいる。特に好ましい実施形態では、前記IgG分子は、ウシから生成されたものである。
【0030】
この特定の標的複合体は、随意的に、結合成分として、固形担体、化学リンカー、ペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチド・リンカー、糖類、オリゴ糖又は多糖類リンカー、ポリアミン及び脂質リンカーの内のいずれか1つをさらに含んでいる(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0031】
本発明は、潰瘍性疾患を引き起こす標的病原細菌に感染した魚類において、少なくとも1つの標的病原細菌の特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体をさらに提供する。この特定の複合体は、(a)魚類において潰瘍性疾患を誘発するアエロモナス属病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されている。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、病的疾患を治療するための組成物に関する。本発明に係る組成物は、活性成分として、少なくとも1つの標的病気因子に対して特異的な免疫促進反応を誘発する誘発する本発明に係る多機能標的複合体を含んでいる。
【0033】
本発明は、病的疾患に冒されている治療対象体において、前記病的疾患と関係している少なくとも1つの標的病気因子を標的にして特異的な食作用を誘発するための組成物に関する。ある実施形態では、この組成物は、活性成分として、本発明に係る多機能標的複合体を含んでいる。また、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。本発明に係る組成物に含まれている複合体は、(a)前記病気因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)免疫促進因子を含んでいる活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。
【0034】
本発明に係る組成物は、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0035】
ある実施形態では、本発明に係る組成物は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染、及び悪性疾患の内のいずれか1つの病的疾患の治療を対象としたものである。
【0036】
好ましい実施形態における治療対象体は、ヒト、国内の哺乳動物、国内の鳥類、国内の水産養殖物、及び国外の水産養殖物である。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明に係る組成物は、国内の哺乳動物、好ましくはウシ、より好ましくは乳牛、を治療するためのものである。
【0038】
特定の実施形態では、本発明に係る組成物により治療される前記病的疾患は、細菌性感染症である。より好ましくは、前記細菌性感染症は、ウシの乳房炎である。
【0039】
そのため、本発明は、ウシの乳房炎を治療するための組成物をさらに提供する。そのような特定の組成物は、活性成分として、乳房炎病原細菌に感染したウシにおいて少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌に対して特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体を含んでいる。より詳しくは、この乳房炎を対象とした特定の組成物に含まれている複合体は、(a)前記乳房炎病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と、前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。
【0040】
特定の好ましい実施形態では、本発明に係る組成物は、活性成分として、複合体を含んでいる。前記複合体は、結合成分としてアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズ、標的認識成分として乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体、及び抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシから生成されたもの)を含んでいる。
【0041】
他の実施形態では、本発明は、国内の魚類及びペット/鑑賞用/外国の魚類のアエロモナス属細菌により引き起こされる潰瘍性疾患を治療するための組成物をさらに提供する。そのような特定の組成物は、活性成分として、アエロモナス属病原細菌に感染した魚類において、少なくとも1つの標的アエロモナス属病原細菌に対して特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体を含んでいる。前記複合体は、(a)前記アエロモナス属病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分(好ましくは、アエロモナス属病原細菌に対して特異的なIgY抗体である)、(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分(好ましくは、魚類から生成されたIgG分子)、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されている。
【0042】
本発明は、病的疾患に冒されている治療対象体において、前記病的疾患と関係している少なくとも1つの標的病気因子を標的にして特異的な食作用を誘発するための組成物に関する。ある実施形態では、この組成物は、活性成分として、本発明に係る多機能標的複合体を含んでいる。また、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0043】
特定の実施形態では、本発明は、乳房炎を患っているウシにおいて、少なくとも1つの標的乳房炎細菌性病原体に対して特異的な食作用を誘発するための組成物に関する。この組成物は、活性成分として本発明に係る特定の複合体を含んでいる。また、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0044】
他の特定の実施形態は、潰瘍性疾患を患っている魚類において、少なくとも1つの標的アエロモナス属細菌に対して特異的な食作用を誘発するための組成物に関する。この組成物は、活性成分として、本発明に係る多機能標的複合体を含んでいる。また、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0045】
第3の態様では、本発明は、治療対象体の病的疾患を治療するための方法に関する。本発明に係る方法は、前記治療対象体に治療的に有効な量の標的複合体又はそれを含む医薬組成物を投与する過程を含んでいる。前記複合体は、(a)病気因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)免疫促進因子を含んでいる活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。前記標的成分及び前記活性成分は、両成分の独立した生物学的機能が保持されるように、適切な構造で結合される(随意的には前記結合成分を介して結合される)。
【0046】
ある実施形態では、本発明に係る方法は、本発明に係る組成物のいずれか1つを使用する。より好ましくは、それらの組成物は、有効成分として、本発明に係る標的複合体のいずれか1つを含んでいる
他の実施形態では、本発明に係る方法は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つの病的疾患を治療するためのものである。特定の好ましい実施形態では、前記病的疾患は、細菌感染症である。
【0047】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、ウシの乳房炎を治療するための方法に関する。この特定の方法は、ウシに対して、少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌を標的にして特異的食作用を誘発することができる治療的に有効な量の標的複合体、又はその標的複合体を含んでいる医薬組成物を投与する過程を含む。
【0048】
また、他の特定の好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、本発明に係る特定の組成物を使用する。この実施形態では、この組成物は、活性成分として複合体を含んでいる。前記複合体は、結合成分としてアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズ、標的認識成分として乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体、及び抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシから生成されたもの)を含んでいる。また、この特定の組成物は、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0049】
本発明は、魚類の潰瘍性疾患を治療するための方法であって、前記魚類に対して、少なくとも1つの標的アエロモナス属病原細菌を標的にして特異的食作用を誘発することができる治療的に有効な量の標的複合体、又はその標的複合体を含んでいる医薬組成物を投与する過程を含む方法をさらに提供する。
【0050】
さらに、本発明は、治療対象体の病的疾患を治療するための医薬組成物の調製に、本発明に係る多機能標的複合体を使用することに関する。
【0051】
前記病的疾患は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つである。好ましくは、前記病的疾患は、細菌性感染症である。
【0052】
他の特定の好ましい実施形態では、本発明は、ウシの乳房炎を治療するための医薬組成物の調製に、多機能標的複合体を使用することに関する。この特定の複合体は、結合成分としてアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズ、標的認識成分として乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体、及び抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシから生成されたもの)を含んでいる。
【0053】
また、さらに、本発明は、魚類の潰瘍性疾患を治療するための医薬組成物の調製に、他の多機能標的複合体を使用することに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
分子生物学の分野における数々の手法は、当業者に周知なので、ここでは詳細に説明しない。なお、前記手法は、cDNAの発現、組み換えタンパク又はペプチドの測定、細胞のトランスフォーメーション、哺乳類細胞のトランスフェクションなどである。それらの手法を記述している教科書としては、例えば、「Molecular Cloning A Laboratory Manual(Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory, ISBN:0879693096, 1989)」、「Current Protocols in Molecular Biology(F. M. Ausubel, ISBN:047150338X、John Wiley & Sons, Inc., 1988)」、及び「Short Protocols in Molecular Biology(F. M. Ausubel et al. (eds.) 3rd ed., John Wiley & Sons, ISBN:0471137812, 1995)」がある。これらの出版物は、引用することをもってここに含まれるものとする。さらに、数々の免疫学的手法は、当業者に周知なので、ここでは詳細に説明しない。これについては、例えば、「Current Protocols in Immunology(Coligan et al. (eds), John Wiley & Sons. Inc., New York, NY.)」を参照されたい。
【0055】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの標的因子(好ましくは病気因子)に対して特異的な免疫促進反応を誘発するための多機能標的複合体に関する。本発明に係る標的複合体は、(a)前記標的因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)免疫促進因子を含んでいる少なくとも1つの免疫活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの免疫活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。そして、前記標的成分及び前記活性成分は、両成分の独立した生物学的機能が保持されるように、適切な構造で結合される(随意的には前記結合成分を介して結合される)。
【0056】
ある実施形態では、本発明に係る標的複合体は、食作用、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)、補体活性化、及び特異的T細胞及びB細胞の刺激から成る群より選択される特異的な免疫促進反応を誘発する。この特異的な免疫促進反応は、少なくとも1つの病気因子に対して、本発明に係る標的複合体により標的にされる。
【0057】
上記したように、ホスト免疫系の様々な要素は、本発明に係る標的複合体により特異的に誘発されることである。ある要素は、食細胞は、標的病的因子(例えば、細菌細胞、悪性細胞、不要なタンパク質、ウイルス感染細胞など)を除去する。特に、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)は、マクロファージによる多くの標的細胞(癌細胞を含む)の破壊において、重要な役割を果たす。例えば、免疫グロブリンG(IgG)による標的細胞の食作用は、ホストからのそれらの物質の除去を促進する。特異的な抗体の存在下でのADCCによる標的細胞の破壊におけるマクロファージの役割は、よく知られている。また、マクロファージの標的選択性は抗体の特異性に基づいており、標的細胞への溶解攻撃は、Fcレセプターを介したADCCにより引き起こされる。
【0058】
免疫系の他の要素は、補体系の活性化である。2つの補体活性化経路(古典経路と補体活性化第2経路)は、両方とも補体活性化の主要ステップであるC3分裂を目的としている。シングル・ターミナル経路は、細胞膜傷害複合体(MAC)の形成である。古典経路は、通常、いくつかの抗体が補体結合した抗原抗体複合体により活性化される(古典経路の活性化を引き起こすために、補体に結合することができる)。古典経路の活性化は、免疫グロブリンのFc領域に対する補体カスケードの第1の因子であるC1qの結合により開始される。そして、タンパク質分解作用のカスケードは、結果的に、C5をC5bとC5aに分裂させるC5コンバターゼの活性化をもたらす。C5bはその後、C6,C7,C8をC5b−8複合体に結合させる。C9分子のC5b−8への結合により、脂質二重層内に貫通し、イオン及び高分子の二方向の流れを可能にする膜貫通型経路を形成するC5b−9(MAC)が形成される。このメカニズムにより、補体は標的病的因子(例えば細胞)の溶解を引き起こす。
【0059】
本発明に係る標的複合体は、T及びBリンパ球の両方を調節するために作用する食細胞(特にマクロファージ)の活性化により、病気因子に対する免疫反応を促進する。マクロファージは、本発明に係る複合体と結合した標的病的因子を取り込み、免疫反応(Th1及びTh2反応)を促進するT細胞に対する標的因子の抗原決定基をもたらす。前記Th1反応は、結果的に、B細胞を活性し前記標的因子に対しての抗体を生成する。
【0060】
特に好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体は、少なくとも1つの標的因子を標的にする白血球(マクロファージや単球)による特異的な食作用を誘発する。食細胞は、他を取り込む又は食する細胞である。また、その取り込む又は食するプロセスが、食作用である。本発明での重要な食細胞は、マクロファージと単球である。単球は、大型の白血球であり、血液中を移動することができる。また、血流から出て細胞に入り、マクロファージに分化することができる。マクロファージは、壊死組織片と異質細胞を消化する。単球は、一般に、CD14の細胞表面発現性質を有している。
【0061】
他の実施形態では、本発明に係る標的複合体は、細菌、ウイルス、菌類、悪性細胞、毒素、毒液、ハプテン、及び不要なタンパク質などの標的病気因子を標的にする。細菌標的の例としては、本発明に係る複合体は、シュードモナス、ブドウ球菌、サルモネラ菌、腸管毒素原性大腸菌、ネズミチフス菌、アエロモナス菌、炭疽菌、及び多糖類細菌(より好ましくはリポ多糖類細菌)などの細菌を標的にする(ただし、これらに限定されるものではない)。ウイルス標的の例としては、犬ジステンパー・ウイルス、ヒトの肝炎(特にB型肝炎表面抗原)、ウシの口及び足の病気、ニワトリのニューカッスル病ウイルス、及びジャガイモ・ウイルスがある。毒液としては、ガラガラヘビとサソリの毒液がある。本発明に係る複合体は、トランスフェリン、ヒト原形質、血小板フォン・ヴィレブランド因子などの様々なタンパク質、beta-Casokinin-10などの小生物活性ペプチド、又は1,25−ジヒドロキシ・ビタミンDなどのハプテンを標的にする。また、環境汚染物質も標的にする。より好ましくは、標的病的因子は、乳房炎病原細菌、腸病原細菌、及び病原性フルンケル症細菌(魚類中のアエロモナス・サルモニサイダ:Aeromonas salmonicida)から成る群より選択された細菌である。
【0062】
最も好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体は、放射菌、大腸菌、シュードモナス、クロストリジウム、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス−アガラクティエ、ストレプトコッカス−ジスガラクティア、コリネバクテリウム−ピオゲネス、エンテロコッカス−フェカーリス、ウシコリネバクテリウム、ノカルジア−アステロイデス(又はfarcinica)、及びストレプトコッカス−ウベリスから成る群より選択された、少なくとも1つの乳房炎病原細菌を標的にする。
【0063】
さらに、他の特に好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体は、少なくとも1つのアエロモナス属の病原細菌に対して標的化される、アエロモナス属は、魚類(特に外国の魚類)において潰瘍性疾患を引き起こす。
【0064】
さらに、他の特別な実施形態では、本発明に係る標的複合体内に含まれている標的認識成分は、抗体又はその機能的断片、リガンド、及び前記病気因子又はその機能的断片に対して特異的なレセプターの内のいずれか1つを含んでいる。
【0065】
特に好ましい実施形態では、前記標的認識成分は、抗体又はその機能的断片を含んでいる。そのような抗体は、前記病気因子又はその機能的断片、及びおそらくは例えばIgG、IgY、又はIgMに対して特異的に認識することができる。好ましくは、前記認識成分はIgY抗体又はその機能的断片を含んでおり、病気因子又はその機能的断片に対して特異的である。
【0066】
「抗体」という用語は、抗原と結合することができる無傷の分子及びその断片(例えば、FabやF(ab’)など)の両方を含んでいる。無傷の抗体のFc断片を欠いているFab及びF(ab’)断片は、血液の循環からより速やかに取り除く。また、無傷の抗体よりも、非特異的な組織結合が少ない(Wahl etal., J. Nucl. Med. 24: 316-325, 1983)。当然のことながら。抗体のFab及びF(ab’)及び他の断片は、特にScFvは、本発明では有用であり、ここに開示した無傷の抗体分子と同様の方法により、複合体の標的成分として使用することができる。そのような断片は、一般に、パパイン(Fab断片の生成時)又はペプシン(F(ab’)断片の生成時)などの酵素を使用したタンパク質分解分裂又は分子法により生成することができる。
【0067】
抗体は、抗原と特異的に反応することができれば、標的細胞(細菌細胞又は悪性又はウイルス感染した真核細胞)に対して、「特異的に認識することができる」又は「特異的である」と考えられている。前記抗原は、この特別な例では、前記分子を前記抗体と結合させるために、前記細胞により発現した細胞外マーカー分子である。
【0068】
「抗原」は、抗体と結合することができる、及びさらに動物がその抗原のエピトープと結合することができる抗体を生成するのを誘発することができる分子又は分子の一部である。抗原は、1つ又はそれ以上のエピトープを有している。「エピトープ」という用語は、抗体と結合することができる、及びその抗体により認識することができる分子の一部を意味する。エピトープ又は「抗原決定基」は、通常は、アミノ酸又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面基から成り、特有の三次元構造特性及び特有の電荷特性を有している。
【0069】
前記標的の機能的断片は、どの断片でも、本発明に係る複合体の標的成分により認識することができるというのは明らかなことである。好ましい実施形態では、標的成分が抗体の場合、前記断片は前記標的成分により認識されるエピトープであってもよい。
【0070】
特定の実施形態では、本発明に係る標的複合体は、活性成分として、免疫促進活性成分を含んでいる。より詳しくは、この免疫促進因子は、食作用を誘発する。そのため、標的成分の標的病的因子への結合と、前記活性成分による食作用活性化は、結果として、不要な標的の選択的な食細胞を介した除去をもたらす。
【0071】
活性成分として本発明に係る標的複合体内に含まれている食作用誘発因子(特定の実施形態ではポリペプチドである)は、ホスト内の細胞に対して免疫反応を促進することができる細胞表面において自然発現する。細胞表面免疫促進ポリペプチドとして使用するのに適しているポリペプチドは、次のa〜fである(ただし、これらに限定されるものではない)。
(a)IgGやC3bのようなオプソニン;
(b)食細胞のマンノース・フコースレセプターと相互作用する炭水化物残基を有するタンパク質;
(c)スカベンジャー・マクロファージのレセプターにより認識されるタンパク質;
(d)食細胞により発現されるインテグリンのリガンド;
(e)インテグリンやセレクチンのような糖タンパク;
(f)マクロファージにより認識されるGa1−Ga1エピトープを生成するフコシル・トランスフェラーゼ。
【0072】
特定の実施形態では、本発明で使用する好ましい免疫促進活性成分は、免疫グロブリンG(IgG)である。IgGタンパク質は、(1)Fab領域(VH、VL及びCH1領域を含む)、(2)ヒンジ領域、及び(3)Fc領域(CH及びCH領域を含む)を含んでいる。Fab領域は、抗体タンパクの領域であり、抗原結合部位を含んでいる。ヒンジ領域は、免疫グロブリン・ポリペプチドにおける可動領域であり、アミノ酸プロリン残基を数多く含んでいる。また、ヒンジ領域は、Fc断片が2つのFab断片の内の1つと結合する部分である。Fc領域は、免疫グロブリンポリペプチドにおける定常領域である。また、Fc領域は、免疫グロブリン重鎖に位置し、抗原との結合には関与しない。Fc領域は、食細胞のFcレセプターと結合することができる。CH領域のアミノ近接端部(特にアミノ酸234〜237)は、Fc領域のFcレセプターへの結合にとって重要である。Fc RIのようなFcレセプターは、マクロファージのような食作用を有する白血球に位置している膜内在性タンパクである。ヒンジ領域は、ポリペプチドに対する柔軟性、及びスペーサとしての機能を提供するFc−Fcレセプターの相互作用を調節するのに重要である。
【0073】
免疫促進成分に使用される免疫グロブリンは、ヒトやマウスのような脊椎動物から得ることができる。好ましくは、免疫グロブリンをコード化しているポリヌクレオチドは、ホストと基原が同じである相当数の配列を有している。例えば、本発明に係る複合体によりヒトを治療する場合は、好ましい免疫グロブリンはヒト起原のものである。
【0074】
そのため、当然のことながら、IgGは、病気因子に冒された治療対象体と同じ種から生成することが好ましい。
【0075】
固形担体と逆方向(reverse orientation)に結合するIgG Fc(又は他の随意的な結合成分)は、マクロファージ活性を仲介するためにFcレセプターと結合するIgG Fcの生物学的機能を保持する。そのため、IgG Fcは本発明に係る複合体の結合成分から離れて逆方向性で突出する、また、食作用中にIgGの形態を模倣する活性成分として作用するということに注意すべきである。IgGは、食細胞(例えばマクロファージ)を活性化させるためにFcレセプターと結合する。また、補体カスケード(補体結合)を活性化させる。
【0076】
食細胞は、細胞骨格タンパク質を集合させる、プロテイン・チロジン・キナーゼの活性化により集合した細胞骨格タンパク質にシグナル伝達する、及び免疫グロブリンで皮膜された細胞を食作用することによりFcレセプターからの信号に対応する。IgG−Fc RIの相互作用は、食作用、飲食作用、ADCC、炎症媒介物の放出、及びスーパーオキシド・アニオンの生成などの様々な生物学的機能を活性化させる。マクロファージは、マクロファージからのアニオン物質の流入を促進する有機アニオン輸送タンパクを有している。したがって、Fc RIは、マクロファージによりADCCを仲介し、食作用及びスーパーオキシドの生成をトリガーする。そういう訳で、本発明に係るIgGのFc領域が活性成分として結合した複合体は食細胞Fcレセプターと相互作用し、食細胞と、ADCCを誘発する病気因子と結合した複合体とを結合させる(その標的成分を介して)。マクロファージの高親和性レセプターFc RIと相互作用するIgG及びIgGアイソタイプは、本発明に係る複合体及び方法にとって好ましい。
【0077】
マクロファージ、樹状細胞、及びB細胞は、すべてT細胞に抗原を提示することができる抗原提示細胞(APC)である。このように、APCは、体液性免疫反応(抗体産生)や細胞性免疫反応などの免疫反応における他の要素に関与する。したがって、本発明に係るFcレセプターを介した病原体の結合及び進入を促進する本発明に係る複合体を取り込むAPCは、T細胞に対する標的因子の抗原決定基を提示し、標的因子に対して特異的な細胞及び体液性免疫反応を促進する。この特定の可能性は、利用できる効果的な治療法が存在しないウイルス感染症において、特に有利である。そのため、本発明に係る複合体は、ウイルス感染症における、特異的な治療として使用することができる。
【0078】
他の好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体に含まれている随意的な結合成分は、固形担体(ポリスチレン・ビーズ、セファロース・ビーズ、アガロース・ビーズ、セルロース・ビーズなど)、化学リンカー、ペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチド・リンカー、糖類、オリゴ糖又は多糖類リンカー、ポリアミン及び脂質リンカー、及びタンパク質(特に骨格タンパク質)の内のいずれか1つである。
【0079】
前述したように、活性成分及び標的成分の両成分は、化学リンカーにより随意的な結合成分と結合される。又は、化学リンカー自体が、結合成分として機能する。架橋タンパクは、当業者に周知である。詳しくは、「Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking(Shan S. Wong, CRC Press, 1991)」を参照されたい。タンパク質は、その官能基により架橋結合される。通常は、タンパク質のSH又はNH基がその目的に使用される。SH基と反応する化学基としては、例えば、ジチオ基(ピリジルジチオ基を含む)、ハロアセトアミド基(ヨードアセトアミド基を含む)、マレイミド基(アルキルマレイミド基を含む)、及び当業者に知られている同様な基がある。アミノ基は、随意的に、スルホン化N−ヒドロキシスクシニミド・エステル基、イミドエステル基(methyl pimelimidate基、及びmethyl suberimidate基を含む)、又はカルボジイミド基を使用して結合させることができる。また、タンパク質の遊離カルボキシル基も、例えばアミノ基(アルキルアミノ基など)を使用して、架橋結合に使用することができる。また、反応において脱水剤を提供する。
【0080】
両複合体成分の適切な結合に使用される架橋剤は、ホモ二価性又はヘテロ二価性のものである。ホモ二価性架橋剤としては、DSS(disuccinimidyl suberate)、DSG(disuccinimidyl glutarate)、及びDMS(dimethyl suberimidate)などがある。また、ヘテロ二価性架橋剤としては、MBS(m-maleimideobenzoyl-N-hydroxysuccinimide ester)とGMBS(N-gamma-maleimidobutyryloxy-succinimide ester)などがある。また、他の実施形態では、架橋剤は、例えば光活性化により、タンパク質と非特異的に反応することができる。光活性基としては、アジドベンゾイル、アジド−ニトロベンゾイル、アジド−ヒドロベンゾイル、又はアジドクマリン基などがある。また、光活性架橋剤としては、PNP−DTP(p-nitrophenyl-2-diazo-3,3,3-trifluoropropionate)とアジドベンゾイル・ヒドラジドなどがある。
【0081】
また、炭水化物反応型の架橋剤を使用することもできる。炭水化物反応基としては、アルデヒド基、グリオキサール基、又はスルホン基などがある。炭水化物と反応する架橋剤としては、上記のアジドベンゾイル・ヒドラジド、MH(4-[m-maleimidomethyl]-cyclohexane-1-carboxyl-hydrazide)、又はMPBH(4-(4-N-maleimidophenyl)-butyric acid hydrazide)などがある。複合体成分(活性、標的、及び随意的に結合成分)の内のいずれかがシステイン残基を含んでいない場合は、上記のMH又はMPBHの活性化したヒドロキシ・スクシニミド派生物(例えば、4-(4-(succinimido-N-oxo)-phenyl)-butyric acid hydrazide)のような、光活性架橋剤又はアミノ反応型架橋剤を使用することができる。また、上記の炭水化物及びスルフヒドリル反応型架橋剤を使用することが望ましい場合は、第1の架橋剤のスルフヒドリル反応部分と結合する第2の架橋剤を使用することができる。タンパク質は、前記第2の架橋剤の第2官能基を介して結合される。前記第2官能基は、活性化N−ヒドロキシル・スクシニミド・エステル基などのアミノ基との基反応が有利である。
【0082】
上記した架橋剤は、PIERCE, Rockford, IL 61105 USA(PIERCEのライフサイエンス製品カタログ及びハンドブック:1994のp.O-90〜0-104に記載されている)、又は他の有機化学分野のサプライヤー(例えば、Sigma, St. Louis, USA)から市販されている。
【0083】
米国特許第5,399,501号では、免疫活性化タンパク質の結合(例えば、異なる3つの分子の多少複雑なセットを介しての、抗体の固相への結合)について記載している。第1の分子は、固相の表面でアミノ、カルボキシル、又はチオール基と結合し、チオール(例えばマレイミド)と反応可能な基を提供する架橋剤である。第2の分子は、チオールと複合すべくタンパク質のNH基と結合し、チオール(例えばマレイミド)と反応可能な基を提供する基架橋剤である。第3の分子は、チオール反応基と結合した固相と、チオール反応基と結合したタンパク質とを結合させることが可能なジチオール試薬である。この架橋剤のセットは、本発明では、標的成分(例えば、IgY)と活性成分(IgG)とを一緒にする架橋結合の目的、又は両成分を結合成分(例えば、固形担体、ビーズなど)に結合させる目的で使用される。
【0084】
他の実施形態では、活性成分又は標的成分は、結合成分(例えば、炭水化物を含んでいる固形担体)に対して直接的に架橋結合される。これは、例えば、一方で炭水化物、他方でタンパク質と反応可能な二価性架橋剤を使用することにより達成することができる。例えば、活性又は標的成分と非特異的結合するために、架橋剤であるアジドベンゾイル・ヒドラジド(ABH)は、架橋剤の光活性アジド基を使用することにより、活性又は標的成分と結合することができる。第2のステップでは、この“活性”成分は、その後、炭水化物のグルコース群と結合した架橋剤の炭水化物反応性ヒドラジド基により、固形担体と反応することができる。この非共有結合は、その後、塩分濃度、腐食性溶液の存在、反応時間などの反応条件に応じて、望ましい複合体を形成する。
【0085】
両成分の結合は、例えば、結合成分としてペプチド・リンカーを使用することにより行われる。前記ペプチド・リンカーは、両成分の二次構造及び三次構造を妨げるおそれのない適切なアミノ酸配列のペプチドである。リンカー・ペプチドは、タンパク質の結合で上記したように、タンパク質と結合するために、架橋剤により、活性成分又は標的成分と結合することができる。架橋結合にとって必要な官能基は、アミノ酸の選択によりリンカー・ペプチド内に提供される。例えば、架橋結合にアミノ基を使用するのが好ましい場合は、リジン又はアルギニンが選択される。また、架橋結合にスルフヒドリル基を使用するのが好ましい場合は、システイン残基が選択される。また、架橋結合にカルボキシル基を使用するのが好ましい場合は、グルタミン酸又はアスパラギン酸が選択される。反応することが望ましくない基は、当技術分野で周知のアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル基に対して適切な保護基により保護する。
【0086】
好ましくは、リンカーは、全長に10から150の間のアミノ酸を含んでいる。さらに好ましくは、リンカーは、グリシン、アラニン、バリン、セリン、又はトレオニンなどの、小さくて、荷電されていないアミノ酸を含んでいる。また、リンカーは、好ましくは、グリシン及びセリン残基を含んでいる。グリシンとセリン残基の割合は、好ましくは、約3:1から4:1である。17アミノ酸グリシン/セリン・リンカーの一例は、GGGGSGGGGSGGGGSGGである。また、両成分は、組み換えDNA技術を使用して、ペプチドを介して結合される。
【0087】
ある好ましい実施形態では、両成分(活性成分と標的成分)の固形担体を介した結合は、数多くの刊行物に記載されているように、アビジン−ビオチン・システムにより行われる。アビジン分子は、もともとニワトリの卵のタンパク質から単離されたタンパク質である。このタンパク質は複合体成分の1つと共に融合タンパク質として発現する。又は、好ましくは、結合成分(ビーズのような固形担体)と架橋結合する。他の成分は、その後、小さなビタミン分子であるビオチンと架橋結合する。ビオチンをタンパク質に架橋結合させる方法は、当業者に周知であり、多くの論文及び教科書に記載されている。他の方法では、結合成分としてアビジン分子又はその断片を用いることができる。その場合は、標的成分はビオチン化し、免疫活性成分としては抗アビジンIgG抗体を用いる。当然のことながら、本発明に係る複合体を結合するのに、他の高親和性システムを使用することができる。そのようなシステムとしては、GST−グルタチオン・システム、及びCBD−セルロース・システムがある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0088】
他の好ましい実施形態では、本発明に係る複合体は、標的成分と活性成分のみから成り、両成分は、結合成分なしで直接的に付着する。この特別な実施形態では、標的成分は標的因子を標的にする抗体(例えばIgY抗体)であり、活性成分はIgG抗IgY抗体である。両成分の結合は、適切な立体構造(IgG分子遊離のFcを有する)を保持する。
【0089】
当然のことながら、本発明に係る標的複合体は、種々な標的病原体の断片又は種々の病原体を標的にする、種々の標的成分から成る。
【0090】
特定の実施形態では、本発明は、乳房炎病原細菌に感染したウシにおいて、少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌対して特異的な食作用を誘発するための多機能標的複合体に関する。この特異的複合体は、(a)乳房炎病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)食作用誘発因子を含んでいる少なくとも1つの活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。前記標的成分及び前記活性成分は、両成分の独立した生物学的機能が保持されるように、適切な構造で結合される(随意的には前記結合成分を介して結合される)。
【0091】
この標的複合体は、標的認識成分として、乳房炎病原細菌に対して特異的なIgY抗体を含んでいる。より詳しくは、本発明に係る標的複合体は、少なくとも1つの乳房炎病原細菌に対して特異的な少なくとも1つのIgY抗体を含んでいる。前記乳房炎病原細菌は、例えば、放射菌、大腸菌、シュードモナス、クロストリジウム、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス−アガラクティエ、ストレプトコッカス−ジスガラクティア、コリネバクテリウム−ピオゲネス、エンテロコッカス−フェカーリス、ウシコリネバクテリウム、ノカルジア−アステロイデス(又はfarcinica)、及びストレプトコッカス−ウベリス,マイコプラズマ,ウイルス及びエンドトクシンなどである(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0092】
随意的に、前記複合体は、それぞれが異なる乳房炎病原細菌を標的にする様々なIgY抗体を含む。
【0093】
特定の好ましい実施形態では、本発明に係る標的複合体は、食作用誘発因子として、IgG分子(好ましくはウシから生成されたもの)を含んでいる。
【0094】
他の特定の実施形態では、本発明は、潰瘍性疾患を引き起こす標的病原細菌に感染した魚類において、少なくとも1つの標的病原細菌の特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体に関する。この複合体は、(a)魚類において潰瘍性疾患を誘発するアエロモナス属病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されている。
【0095】
本発明に係る特定の標的複合体は、随意的に、結合成分として、固形担体、化学リンカー、ポリペプチド・リンカー、タンパク質、多糖類リンカー、及び脂質リンカーの内のいずれか1つをさらに含んでいる(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0096】
そのような固形担体としては、例えば、ポリスチレン・ミクロスフィア・ビーズ、より詳しくはアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズがある。この特別の場合は、標的認識成分としては、乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体を用いる。さらに、この特定の標的複合体は、好ましくは、食作用誘発因子として、抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシから生成されたもの)を含んでいる。
【0097】
さらなる態様では、本発明は、病的疾患を治療するための組成物に関する。本発明に係る組成物は、活性成分として、本発明に係る多機能標的複合体を含んでいる。
【0098】
前記組成物は、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0099】
ある実施形態では、本発明に係る組成物は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つの病的疾患の治療を対象としたものである。
【0100】
前記病的疾患は、例えば、インフルエンザ・ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、EBウイルス、サイトメガロ・ウイルス、ワクシニア・ウイルス、肝炎ウイルス、口及び足の病気、ニューカッスル病ウイルス、及びヘルペス・ウイルスなどの様々なウイルスのウイルス感染により引き起こされたもの、又はメラノーマ、上皮性悪性腫瘍、リンパ腫、非上皮性悪性腫瘍などの悪性疾患である。
【0101】
好ましい実施形態における治療対象体は、ヒト、国内及び非国内の哺乳動物、国内の鳥類、水産養殖物(好ましくは魚類及び外国産の観賞魚)。当然のことながら、治療対象体は、は虫類や動物園の動物であってもよい。より好ましくは、本発明に係る組成物は、国内の哺乳動物を対象としている。“哺乳類の治療対象体”は、目的とする治療を希望するすべての動物を意味する。前記動物としては、ヒト、ウマ、イヌ、ネコがあり、より好ましくは、ウシ(特に、ウシ(cow)、ヤギ、ヒツジなどのウシ亜科の動物)である。他の特定の実施形態では、本発明に係る複合体及び組成物は、例えば、コイ(Koi fish)やコイ(carp)などの、国内の魚類及び外国の魚類を対象とする。特定の実施形態では、本発明に係る組成物により治療される病的疾患は、細菌感染症である。より詳しくは、前記細菌感染症は、ウシの乳房炎である。
【0102】
そのため、本発明は、ウシ亜科の動物の乳房炎を治療するための組成物をさらに提供する。そのような特定の組成物は、活性成分として、乳房炎病原細菌に感染したウシにおいて少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌に対して特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体を含んでいる。より詳しくは、この乳房炎を対象とした特定の組成物に含まれている複合体は、(a)前記乳房炎病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と、前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。両成分の結合(随意的には結合成分による)により、前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されているということに注意すべきである。
【0103】
特定の好ましい実施形態では、本発明に係る組成物は、活性成分として、複合体を含んでいる。前記複合体は、結合成分としてアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズ、標的認識成分として乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体、及び抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシ亜科の動物から生成されたもの)を含んでいる。
【0104】
本発明は、魚類の潰瘍性疾患を治療するための組成物をさらに提供する。そのような特定の組成物は、活性成分として、アエロモナス属病原細菌に感染した魚類において、少なくとも1つの標的アエロモナス属病原細菌に対して特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体を含んでいる。前記複合体は、(a)前記アエロモナス属病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分(好ましくは、そのような成分は、前記細菌の抗原決定基を特異的に認識するIgY抗体である)、(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分(好ましくは、魚類から生成された免疫グロブリン分子)、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されている。
【0105】
本発明は、病的疾患に冒されている治療対象体において、前記病的疾患と関係している少なくとも1つの標的病気因子を標的にして特異的な食作用を誘発するための組成物に関する。ある実施形態では、この組成物は、活性成分として、本発明に係る多機能標的複合体を含んでいる。また、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0106】
特定の実施形態では、本発明は、乳房炎を患っているウシにおいて、少なくとも1つの標的乳房炎細菌性病原体に対して特異的な食作用を誘発するための組成物に関する。この組成物は、活性成分として複合体を含んでいる。前記複合体は、結合成分としてアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズ、標的認識成分として乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体、及び抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシから生成されたもの)を含んでいる。また、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0107】
また、他の特定の実施形態では、本発明は、潰瘍性疾患を患っている魚類において、少なくとも1つの標的アエロモナス属細菌性病原体に対して特異的な食作用を誘発するための組成物をさらに提供する。そのような特定の組成物は、活性成分として、本発明に係る多機能標的複合体を含んでいる。また、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0108】
第3の態様では、本発明は、治療対象体の病的疾患を治療するための方法に関する。本発明に係る方法は、前記治療対象体に治療的に有効な量の本発明に係る標的複合体又はそれを含む医薬組成物を投与する過程を含む。
【0109】
ここで使用される「有効な量」とは、選択された結果を達成するのに必要な量のことを意味する。例えば、本発明に係る組成物の有効な量は、標的の免疫促進効果(好ましくは標的病気因子を標的にした食作用)を誘発するのに役立つ。
【0110】
本発明に係る複合体は、治療対象体に直接的に投与する、又は前記標的複合体を含んでいる対象組成物に投与するのが好ましい。また、投与前に、前記組成物に、容認されるキャリア、補助剤、希釈剤を加えることが望ましい。治療製剤は、一般的な投薬形態により投与される。製剤は、一般に、上に定義したように、少なくとも1つの活性成分を、その1つ又はそれ以上の容認できるキャルアと共に含んでいる。
【0111】
各キャリアは、他の成分と適合するという意味で、薬学的及び生理的に容認される必要があり、治療対象体に有害であってはいけない。製剤は、経口、経直腸、経鼻、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、乳房内、及び皮内をなど)の投与に適したものを用いる。前記製剤は、一般に、ユニット投薬形態であり、薬学の分野で周知の方法により作製される。治療対象体に対して望ましい効果をもたらすための効果的な量を含んでいる、それらの組成物の性質、可用性、供給源、及び投与(は、当技術分野では周知なので、ここでは説明する必要はない。
【0112】
本発明に係る組成物は、薬学的に容認されるキャリア、添加剤、希釈剤、又は賦形剤をさらに含んでいる。適したキャリアとしては、リン酸緩衝生理食塩水、及び5%のHSA又はPPFを含む生理食塩水がある。他の適したキャリアは当業者に周知であり、本発明を限定するものではない。同様に、当業者は、本発明に係る医薬組成物に加える成分を容易に選択することができる(それらの成分は、本発明を限定するものではない)。
【0113】
本発明に係る医薬組成物は、一般に、当技術分野で周知の、緩衝剤、浸透圧調整剤、随意的に1つ又はそれ以上の薬学的に容認されるキャリア、賦形剤、及び/又は添加剤をさらに含んでいる。前記組成物に、補助的活性成分をさらに組み込むこともできる。キャリアとしては、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレン・グリコール、及び液体ポリエチレン・グリコールなど)などの溶媒又は分散媒、それらの適切な混合物、及び植物性油脂を用いることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの皮膜の使用、要求される粒径の管理(分散媒の場合)、及び界面活性剤の使用により保つことができる。
【0114】
本発明に係る組成物は、動物のために、栄養供給材料又は水と混合することもできる。効果的な組成物は、動物にエサとして与えるために、栄養供給材料又は水と混合することができる。効果的な組成物は、標的の免疫促進反応(好ましくは、病気因子に対しての食作用)を促進するのに効果的な量を提供しなければならない。
【0115】
より好ましくは、本発明に係る複合体又は組成物は、経口、静脈内、非経口、皮下、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、及び直腸投与、及びそれらの組み合わせから選択される経路により投与される。乳房炎の治療には、局所的な乳房内投与が好ましい。潰瘍性疾患の治療には、特に魚類のfurculosisの場合は、局所的又は腹腔内投与が好ましい。注目すべきは、魚類の好ましい局所治療は、魚類を、本発明に係る特定の複合体を含んでいる水の中に浸した状態で行うということである。
【0116】
注射の使用に適した薬学的な製剤としては、殺菌水溶液又は分散、及び殺菌溶液又は分散の即時調合のための殺菌粉剤がある。すべての場合において、前記製剤は殺菌されなければならない。また、容易な注射針通過性が得られるような範囲で流動性的である必要がある。そして、製造及び保存の状態下で安定しなければならない。また、微生物(細菌や菌類)に汚染されないように保存する必要がある。
【0117】
微生物の作用に対する予防は、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌及び抗真菌薬により行われる。多くの場合は、例えば砂糖や塩化ナトリウムなどの等浸透圧因子を含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期に渡る吸収作用は、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収遅延剤を使用することにより実現することができる。
【0118】
殺菌した注射剤は、要求される量の活性化合物を、上記に列挙した様々な他の成分と共に、適切な溶媒に組み込むことにより作製される。また、必要に応じて、その後、フィルター処理により殺菌する。一般に、分散は、様々な殺菌された活性成分を、殺菌した賦形剤(基礎的な分散媒と要求される上記に列挙した他の成分を含んでいる)に組み込むことにより作製される。
【0119】
殺菌注射剤の作製に殺菌粉剤を使用する場合は、好ましい作製方法は、活性成分に加えて、予めフィルター処理により殺菌された溶液からさらなる望ましい成分を生じる真空乾燥及び凍結手法である。
【0120】
ある実施形態では、本発明に係る方法は、本発明に係る組成物のいずれか1つを使用する。より好ましくは、それらの組成物は、有効成分として、本発明に係る標的複合体のいずれか1つを含んでいる
他の実施形態では、本発明に係る方法は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つの病的疾患を治療するためのものである。
【0121】
特定の好ましい実施形態では、前記病的疾患は、細菌感染症である。
【0122】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、ウシの乳房炎を治療するための方法に関する。この特定の方法は、乳房炎病原細菌に感染したウシに対して、少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌を標的にして特異的食作用を誘発することができる治療的に有効な量の標的複合体、又はその標的複合体を含んでいる医薬組成物を投与する過程を含む。前記複合体は、(a)前記病気因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでいる。両成分の結合(随意的には結合成分による)は、前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能を保持する。
【0123】
本発明は、特異的食細胞の活性を促進する方法をさらに提供する。IgGを含んでいる標的複合体は、マクロファージ又はAPCのような食細胞と接触する。その接触により、食細胞により増加した食細胞活性を促進する。食細胞は、標的因子と結合した複合体を取り込み、ホストから前記病気因子を迅速に除去することができる。
【0124】
また、他の特定の好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、本発明に係る特定の組成物を使用する。この実施形態では、この組成物は、活性成分として複合体を含んでいる。前記複合体は、結合成分としてアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズ、標的認識成分として乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体、及び抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシから生成されたもの)を含んでいる。また、この特定の組成物は、随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいる。
【0125】
さらに、本発明は、魚類の潰瘍性疾患を治療するための方法であって、前記魚類に対して、少なくとも1つの標的アエロモナス属病原細菌を標的にして特異的食作用を誘発することができる治療的に有効な量の標的複合体、又はその標的複合体を含んでいる医薬組成物を投与する過程を含む。
【0126】
さらに、本発明は、治療対象体の病的疾患を治療するための医薬組成物の調製に、本発明に係る多機能標的複合体を使用することに関する。
【0127】
前記病的疾患は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つである。好ましくは、前記病的疾患は、細菌性感染症である。
【0128】
他の特定の好ましい実施形態では、本発明は、ウシの乳房炎を治療するための医薬組成物の調製に、多機能標的複合体を使用することに関する。この特定の複合体は、結合成分としてアビジン皮膜されたポリスチレン・ビーズ、標的認識成分として乳房炎病原細菌に対して特異的なビオチン化IgY抗体、及び抗アビジンIgG分子(もっとも好ましくは、ウシから生成されたもの)を含んでいる。
【0129】
また、他の実施形態では、本発明は、魚類の潰瘍性疾患を治療するための医薬組成物の調製に、他の多機能標的複合体を使用することに関する。そのような複合体は、標的成分及び免疫活性成分を含んでおり、両成分は、結合成分なしで直接的に付着している。そのような実施形態では、標的成分としては乳房炎病原細菌に対するIgY抗体、免疫活性成分としてはIgG抗IgY抗体を用いることができる。両成分の結合は、適切な立体構造(IgG分子遊離のFcを有する)を保持する。
【0130】
特に定義されない限り、ここで使用した技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者が普通に理解しているのと同じ意味である。本明細書中に引用された全ての特許及び刊行物は、引用することをもって本発明に含まれるものとする。当然のことながら、本発明は、ここに開示された特定の実施例、処理方法、及び物質に限定されるものではない。例えば、前記方法及び物質は、多少変更してもよい。また、当然のことながら、ここで使用した専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけに使用したのであり、本発明を限定するものではない。
【0131】
以下、本発明の好適な実施形態の実施についての理解をさらに容易にするために、好適な実施形態の模範的な実施例を説明する。
【実施例】
【0132】
[実験手順]
〈細菌〉
特異的な乳房炎病原体(黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス‐アガラクティエ、ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ、ストレプトコッカス−ウベリス、及び大腸菌)は、次の受入番号即ち黄色ブドウ球菌、2449/1;大腸菌、Ein Hashofet169、ATCC:ストレプトコッカス‐アガラクティエ ATCC 27956、ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ ATCC 27957、ストレプトコッカス−ウベリス ATCC 27958にしたがって、ATCC(Hy Lab, Rehovot, IL)から購入したか或いはイスラエル獣医学会(Israeli Veterinary Authorities(Beit Dagan, IL))の在庫から入手したかのいずれかである。
【0133】
〈抗原調整〉
特異IgYの産出のための抗原として、細菌及び精製タンパクが用いられた。細菌は、以下に示すように特定の培地中で培養され、ワクチン接種のために次のように調製された。凍結乾燥された細菌(黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス‐アガラクティエ、ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ及びストレプトコッカス−ウベリス)は解凍され[1mlの普通ブロス(NB)(Difco, Detroit, MI)]、血液寒天培地上で植菌され、37℃で24時間インキュベートされたが、これは活力及び純度を確認するためである。3〜4個のコロニーが選択され、1リットルの三角フラスコ(Ehrlenmeyer)内で0.1%のD−グルコース、酵母エキス、及び0.5%のNaClを追加された250mlの37℃コロンビアブロス(CB)(Difco, Detroit, MI)中で植菌され(37℃で12〜24時間)、37℃で10時間インキュベートされた。ストレプトコッカスは、250mlのNB中で37℃で植菌された。細菌は、遠心(1000×g、15分)により分離され、ペレットは洗浄され(×3)、マックファーランド等価濁度規準液4(1.2×10細胞/ml)(remal, 12076 Santa Fe, Lenexa, Ks)によって示されるように約1.2×10個の細胞になるまで非発熱性PBS(pH7.6;0.01M)に再懸濁された。純度を確認するために、血液寒天平板は植菌及びインキュベートされた。ペレットは、細胞ホモジナイザー(Braun Melsungen AG, Germany)によってガラスビーズで機械撹拌された。ガラスビーズ及び無傷細菌の除去後、ホモジネートは0.2μmの孔径の膜によってろ過され、タンパクアッセイキット(Bio-Rad, UK)を用いてタンパク濃度が決定され、−20℃で保存された。無菌性を確認するために、血液寒天平板は、適切な条件下で植菌及びインキュベートされた。
【0134】
別法では、細菌は植菌されて上述のように成長することが可能であった。インキュベーション後、細菌は10,000×gで20分間遠心されることによって収集され、その後50mMのPBS(pH7.0)で懸濁された。そして、細菌は、次のプロセスのために、即ち(1)ホルムアルデヒド(0.05%)での不活化、(2)熱(100℃で10分間)による不活化、(3)超音波処理のために、3つの群に分けられた。処置済みの画分の混合物は、ワクチン接種に用いられた。
【0135】
〈大腸菌抗原の調製〉
大腸菌は、1リットルの三角フラスコ内で250mlのNB(Difco, Detroit, MI)で培養され、37℃で24時間インキュベートされた。細菌ペレットは、上述のようにガラスビーズで超音波処理された。
【0136】
《標的成分の調製》
〈IgYの産出〉
1群当たり3〜6羽の35〜50週齢の市販の白色レグホン雌鶏が、乳房筋の2つの部位に0.05〜0.5mgの抗原をフロイント不完全アジュバントと共に筋肉内注射されることによって免疫化された。全量はニワトリ1羽当たり0.8〜1.0mlであり、アジュバントは注射された量の半分を含んでいた。その後2〜3週間して、フロイント不完全アジュバントで乳化された同量の追加注射が筋肉内に打たれた。血液サンプルは、最初の注射の後、翅脈から毎週回収された。卵は毎日回収され、分析されるまで20℃以下で保存された。
【0137】
〈卵黄からのIgYの単離〉
IgYは以下の過程によって単離された。
【0138】
1.卵白から卵黄を分離し、
2.卵黄を水に希釈し(100mlの水に対して10mlの卵黄)、pH=6.8、電気撹拌器を用いて20℃以下の温度で4〜6時間撹拌し、
3.真空下でろ紙(1574 Runfilter, Schleicher & Schuell GmbH, Germany)によって水可溶性画分をろ過することにより脱脂し、
4.硫酸アンモニウム(60%;w/v)によって可溶性ろ過タンパクを沈殿させ、
5.遠心(10000g、20分)し、沈殿物を4℃で硫酸アンモニウム(60%w/v)培地で再懸濁し、
6.T−ゲル(Pierce, USA)、陰イオン交換(DEAE-Sephacel)及びゲルろ過(Ultrogel AcA 22)技術を用いて、ゲルろ過によってIgYを単離し、
7.使用前に粗(5)または精製(6)IgYを、PBSを希釈剤として、連続10倍希釈オーダーで希釈した。
【0139】
〈IgY特異性〉
ほとんどの市販の鳥はNDV(ニューカッスル病)に対してルーチン的にワクチン接種されているので、抗NDV抗体を用いてIgY単離の効率を検査した。これは、血球凝集阻害テストによって行われた。
【0140】
〈無傷細菌のためのELISA〉
特異抗細菌IgY濃度及び基準IgYを測定するための定量ELISA:プレートの穴は100μlのポリリジン(10μl/ml)で一晩コートされ、その後200μlの特異細菌がブロス(0.3OD)に添加された。24時間後、100μlのグルタルアルデヒド(gluataraldehyde)(0.07%)が15分間加えられ、PBSで洗浄された。穴は、100μlの2%粉乳及び100mMのグリシンでブロックされた。IgYの粗サンプルはPBSを希釈剤として連続希釈され(Akita and Nakai, 1992)、100μlの連続10倍希釈がデュプリケート(duplicate)で穴に塗布された。プレートは37℃で2時間インキュベートされ、PBS−T(リン酸緩衝生理食塩水−トウィーン20(登録商標))で洗浄され、その後、100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ニワトリIgY(PBSで10000倍希釈)でインキュベートされた。37℃で1時間インキュベート後、プレートはPBS−T(リン酸緩衝生理食塩水−トウィーン20)で3回洗浄され、続いて0.05Mのリン酸−クエン酸緩衝液(pH5.0)に100μlの調製したての基質溶液、2−2アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)が加えられた。そして、450nmでの吸光度が記録された。
【0141】
〈IgY及び細菌成長パターン凝集テスト〉
IgYによる外膜抗原認識の程度及び細菌成長に対するその阻害効果を評価するために、種々の細菌性病原体[10CFU/ml(コロニー形成単位)のE培地ブロス(E-media broth)]は、特異及び非特異対照IgYの存在下でトリプティケース・ソイ・ブロス(tripticase soy broth:TSB)中で培養された。250〜500g/mlの濃度範囲のIgYは、37℃で1〜3時間インキュベートされた。細菌成長曲線は、590nmでの吸光度測定を用いて計算された。
【0142】
〈抗原抗体結合及び病原体成長パターン〉
種々の乳房炎病原細菌を結合または中和するか或いはその増殖を低減するためのIgYの有効性が、別法で調べられた。乳房炎病原体(10CFU/mlのE培地ブロス)はTSB中で特異及び非特異対照IgY(250〜500μg/ml)を用いて培養され、0〜4℃で30分の遮断が可能になった。その後、培養液は無菌TSBで連続希釈まで希釈され、10μlの(トリプリケート(triplicate)で)希釈培地が適切なプレート上で植菌され、37℃で24時間インキュベートされた。各処置のコロニーの数が数えられ、そのサイズが測定された。
【0143】
〈マイクロ/ナノキャリア調製〉
市販のカルボキシル化されたマイクロビーズは、アビジンの存在下で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)塩酸カルボジイミド(EDC)を用いることによって活性化される。EDCは、カルボキシル基を活性化し、アビジン中のアミン基とカルボキシル基の効率的な結合を可能にする。これは、結果として、アビジン分子を各マイクロビーズに結合するアミド結合を形成する。
【0144】
〈活性化ビーズへの標的成分の付着〉
第1段階では、IgY抗体(例えば特異抗大腸菌IgY)は、通常のビオチン化方法を用いて、スルホ−NHS−ビオチン試薬を用いてビオチン化される。結果として得られるビオチン化抗大腸菌IgYは、室温で1時間、種々の比でアビジン−マイクロビーズと混合される。この過程の後に、マイクロビーズ−アビジン−ビオチン化IgYとの反応が可能なウシ抗アビジン抗体が添加される。このような状況において、アビジンで免疫化された仔ウシにおいて抗体が産出された。
【0145】
〈食作用のためのin-vitroアッセイの開発〉
この手順は、ポリサイエンス社(PolySciences Inc(PA, USA))の技術データシート(TECHNICAL DATA SHEET 430(2001))を基にしたものである。
【0146】
食作用の研究のためにポリスチレン微小粒子(1、2、3μm)が用いられてきた。この反応を誘発するため、上述のように粒子は先ずアビジンでコートされ、次に乳房炎病原体に対して産出された特異ウシIgG抗アビジンと特異IgYが結合された。マイクロビーズ(1um、1群当たり1×10)は、種々の比のIgG:IgY(0.6〜0.7μg/ml、60分、37℃)でコートされた。オプソニン化の後、100万個のマイクロビーズコートされた成分が10個の大腸菌細菌を用いてまたは用いないでインキュベートされ、ウシ血液食細胞(顆粒球、単球、マクロファージ)にさらされた。細胞は、37℃で60分間連続して混合されたが、その間には食作用が発生する。反応は、氷のように冷たいPBSを加えることによって停止され、1000×gで5分間遠心され、CFUの決定のために、10倍のオーダーに希釈された10μlのサンプルがTSA(tryptic soy agar)平板に与えられた。その後、細胞は、培地における自由粒子を取り除くために洗浄され、冷たい脱イオン化されたHO中に再懸濁されて、細菌数を調べるために分析された。この手順は、前述の複合体を有する既知の数の細菌でのインキュベーション後に培地に残された細菌数を測定することによって食細胞作用の決定を可能にする。
【0147】
〈多機能標的複合体(マイクロビーズコートされた成分)を用いた食作用アッセイ〉
(1)ポリプロピレンチューブに200μlの抗凝固全血を加えた。
(2)チューブに10μlのマイクロビーズコートされた成分(108粒子/ml)を加え、37℃で30〜60分間穏やかに振とうすることによりインキュベートした。
(3)インキュベーションの終わりに2mlの氷のように冷たいPBSを加えて混合することによって食作用を終了させる。
(4)細胞ペレットを、3mlの無菌水中に再懸濁し、20〜30秒間穏やかに混合する。懸濁液を等張にするために1mlの3.5%NaClを加え、細胞を5分間500×gで遠心することによってペレット化する。
(5)細胞を500μlの冷たいPBS中で再懸濁し、サンプルを4℃で維持してできるだけ早く分析した。
【0148】
〈SCC(体細胞数)〉
SCCは、コールター・エレクトロニクス社(Coulter Electronics Limited, Luton, UK)のコールター細胞カウンタ(CC)、Z1モデルによって決定された。
【0149】
〈N−アセチル−D−グルコサミニダーゼ(NAGase)〉
乳中NAGase濃度は、コンピュータ処理されたマイクロプレート設定を用いてADLMILK NAGaseテスト(ADC Applied Diagnostics Corporation, Helsinki, Finland)に基づき蛍光定量的に決定された。100ユニットの値は、25℃で約5μmol/min/Lの産物の放出に相当する。
【0150】
〈乳中のIgYを測定するためのELISA手順〉
乳中の特異抗細菌IgY濃度を測定するための定量ELISA:ELISAプレートの穴は100μlのウサギ抗IgY−Fcで一晩コートされ、その後200ulの2%乳緩衝液を用いて37℃で1時間ブロックされた。100μlの量の被験液または市販のIgY(標準曲線のために使用)がELISAプレートに加えられ、37℃で1時間インキュベートされ、続いてPBS+トウィーン20(0.1%)で5回洗浄された。プレートは、その後、100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ニワトリIgY(PBSで10000倍希釈)でインキュベートされた。37℃で1時間インキュベート後、プレートはPBS−T(リン酸緩衝生理食塩水−トウィーン20)で5回洗浄され、続いて0.05Mのリン酸−クエン酸緩衝液(pH5.0)に100μlの調製したての基質溶液及び2−2アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)が加えられた。
【0151】
[実施例1]
《ウシ乳房炎細菌性病原体に対して標的化された標的成分の調製》
〈ウシ乳房炎大腸菌に対する免疫応答〉
ウシ乳房炎大腸菌に特異的なIgY抗体は、実験手順に詳述されているように調製された。次に、ウシ乳房炎の予防または治療における特異抗病原体IgYの有効性について調べられた。
【0152】
乳房炎無傷大腸菌に対する抗体(1000倍に希釈された粗硫酸ナトリウム卵黄沈殿物のOD)の活性は、図1に示されるように産卵鶏からの卵黄製剤を用いてELISAによって決定された。免疫前抗体活性は0.2OD以下であったが、3週間後に急速に増加し、その後プラトーに達した。
【0153】
〈ウシ乳房炎黄色ブドウ球菌に対する免疫応答〉
実験手順に基づき準備された乳房炎無傷黄色ブドウ球菌に対する抗体(1000倍に希釈)の活性は、上述のようにELISAによって決定された。
【0154】
図2に示されるように、抗体活性は、免疫後1週間で顕著に増加し、それから約半分まで減少し、その後プラトーに達した。しかし、タイターは、大腸菌に対するものより低かった。
【0155】
〈ウシ乳房炎ストレプトコッカス−ウベリスに対する免疫応答〉
乳房炎無傷ストレプトコッカス−ウベリスに対する抗体(1000倍に希釈)の活性は、上述のELISAによって決定された。抗体活性は、図3に示されるように、免疫後2週間で顕著に増加し、その後プラトーに達した。
【0156】
[実施例2]
《IgY特異抗体を用いた乳房炎病原体成長の凝集》
〈乳房炎大腸菌の凝集アッセイ〉
IgYによる外膜抗原認識の程度及び細菌成長に対するその阻害効果を評価するために、特異及び非特異対照IgYの存在下で種々の細菌性病原体(10CFU/mlのE培地ブロス)がTSBで培養され、37℃で1〜3時間インキュベートされた。IgYの濃度範囲は、250〜500μg/mlである。細菌の成長曲線は、590nmにおける培養液中の生存可能な細菌の吸光度測定によって計算された。
【0157】
図4に示されるように、TSB中の大腸菌(10CFU/ml)培養液は、436ug/mlの抗大腸菌IgY(白抜きの三角形)と、436μg/mlの非特異IgY(アステリスク)と、対照IgY(黒塗りのダイヤ形)の存在下で、37℃でインキュベートされ、インキュベーション後6時間にわたり590nmにおいて培養液の吸光度が測定された。結果は、大腸菌に対して抽出された特異IgYの存在下で培養液のインキュベーションが約20%の成長阻害に結び付くことを示した。非特異IgYは、成長パターンに与える影響が小さい。
【0158】
細菌成長阻害のための最適条件のために、本発明の標的成分によって、特異抗大腸菌IgYの濃度が増加する中で培養液がインキュベートされた。図5に示されるように、TSB中の大腸菌培養液(1×10CFU/ml)は、650μg/mlの0.5U(ユニット)のろ過された抗大腸菌IgY(白抜きの三角形)と、650μg/mlの非特異IgY(アステリスク)と、対照IgY(黒塗りのダイヤ形)とを用いて37℃でインキュベートされ、インキュベーション後6時間にわたり590nmにおいて培養液の吸光度が測定された。
【0159】
結果は、特異IgYが大腸菌の成長を完全に阻害することを示した。非特異対照IgYは、細菌凝集及び成長に僅かな影響しか与えなかった。これらの結果は、発達したIgY抗大腸菌が、大腸菌によって引き起こされる乳房炎の予防のための便利なツールとして役立つことを示す。
【0160】
〈抗原抗体結合及び病原体成長パターン〉
大腸菌を結合または中和するか或いはその増殖を低減するためのIgYの有効性が、更に調べられた。乳房炎大腸菌(10CFU/mlのE培地ブロス)のスタータ培養液は、(a)対照TSB培地+PBS、(b)対照TSB培地+免疫前の非特異IgY、(c)対照TSB培地+最初の追加免疫から8週間後に収集された特異IgY、及び(d)対照TSB培地+最初の追加免疫から10週間後に収集された特異IgYを用いて4〜8℃で30分培養された。
【0161】
表1に要約された結果は、陰性対照大腸菌の成長が約5×10CFU/ml−E培地ブロスを産出し、非特異IgYの対照では約6×10CFUであることを実証した。特異抗大腸菌IgYで予備培養された処置(c)及び(d)は、結果的に対照の約90%の成長阻害をもたらした。これらの結果は、発達したIgYが乳房炎大腸菌をよく認識し、その結合及びその成長パターンの阻害を可能にすることを示す。
【0162】
【表1】

【0163】
更なる実験において、抗体レベルのみならず、大腸菌の結合及び中和に対する異なる免疫バッチからのIgYの有効性が調べられた。スタータ乳房炎大腸菌(10CFU/ml−E培地ブロス)は、
(a)対照TSB培地+PBS、
(b)処置(a)+免疫前の非特異IgY、
(c)処置(a)+免疫から2週間後に収集された特異IgY、
(d)処置(a)+免疫から4週間後に収集された特異IgY、
(e)処置(a)+免疫から5週間後に収集された特異IgY、
(f)免疫から5週間後に収集された特異IgYが2倍の量である処置(e)、及び
(g)処置(a)+免疫から7週間後に収集された特異IgY
を用いて4〜8℃で30分培養された。表2に示されるように、IgYは、卵回収の異なるバッチにおいてと同様に、大腸菌成長の結合及び阻害が可能であり、高まるIgYレベルが細菌成長を更に阻害することがわかった(e対f)。
【0164】
【表2】

【0165】
[実施例3]
《マイクロ/ナノキャリアビーズへの標的成分の付着》
次に、異なる乳房炎細菌性病原体のために特別に、例1で述べたように調整された異なる標的成分が、マイクロビーズに付着された。市販のカルボキシル化されたマイクロビーズは、アビジンの存在下で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)塩酸カルボジイミド(EDC)によって活性化される。EDCは、アビジンの第1アミン残基にカルボキシル基を結合し、結果的にアミド結合を形成し、アビジン分子を活性化マイクロビーズに結合させる。
【0166】
IgY抗体(特異抗乳房炎病原細菌IgY、抗大腸菌)は、通常のビオチン化方法を用いてスルホ−NHS−ビオチン試薬を用いてビオチン化される。
【0167】
ビオチン化された抗大腸菌IgYは、室温で1時間、種々の比でアビジン−マイクロビーズと混合される。
【0168】
本発明の複合体に主薬を付着するために、アビジンで免疫化された仔ウシにおいて産出されたウシ抗アビジン抗体は、マイクロビーズ−アビジン−ビオチン化されたIgYと反応させられた。結合は、アビジンへのウシ抗体の親和性に因る。アビジンで覆われたビーズへの抗アビジン抗体の結合は抗体のFabフラグメントによって行われ、したがって分子のこの部分はビーズに向かって突出している。一方で、Fcフラグメントはビーズ表面から離れる方向に突出しているが、これは効率的なオプソニン化のために必要なことである。
【0169】
[実施例4]
《本発明の多機能標的複合体(マイクロビーズコートされた成分)を用いた食作用アッセイ》
次に、直接的な病原性標的に対する食作用を誘導する本発明の標的複合体の能力が調べられた。第1の研究では、新鮮な(2〜3時間)ウシ血液食細胞と、種々の比のIgY(抗異種(anti different)乳房炎細菌、標的成分として)及びIgG(免疫活性成分として)成分でコートされたマイクロビーズとを用いて、約6.5×10個の大腸菌乳房炎細菌が、37℃で60分インキュベートされた。
【0170】
ほとんどの細菌は60分間のインキュベーション期間中に取り込まれたが、食作用を逃れた細菌の数は、IgY:IgGの比に関連していた。最も高い食作用比は、IgY対IgGの比がそれぞれ0.9:0.1で観察された。
【0171】
表3の結果は、マクロファージによる細菌の促進取り込みを確認する。
【0172】
【表3】

【0173】
更なる研究において、新鮮な血液食細胞で、及び種々の比のIgY:IgG成分でコートされたマイクロビーズで、37℃で60分間、約3×10個の大腸菌乳房炎細菌がインキュベートされた。
【0174】
細菌のおよそ70%が60分間のインキュベーション期間中に取り込まれたが、食作用を逃れた細菌の数は、この場合もやはりIgY:IgGの比に関連していた。最も高い食作用比は、マイクロビーズにおけるIgYの比を増加させた場合に観察された。
【0175】
本発明の複合体の存在下での細菌の生存度への食細胞の効果も調べられた。
【0176】
生存可能な細菌を検査するため、細胞は遠心され(1000×g)、洗浄され、その後希釈を増した適切な平板培地上に載置された。生存可能なコロニーの数が数えられた。表4に示されるように、本発明の標的複合体の存在下で、食作用を生き延びた細菌はほとんどなかった(1300〜16000)。一方で、本発明の標的複合体にさらされなかった培養液中では、1.5×10個の細菌細胞が数えられた。
【0177】
【表4】

【0178】
[実施例5]
《本発明の標的複合体を用いた、ストレプトコッカス‐ディスガラクティエの感染により引き起こされる乳房炎のin vivo治療》
技術背景に示されているように、ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ、グラム陽性菌は、乳房炎を引き起こす細菌の1つである。これらの細菌は、20〜30日の間乳房に存在することができ、臨床的または準臨床的乳房炎を引き起こしかねない。そうなれば、搾乳量の減少、SCC(体細胞数)の増加による乳質の低下、及び乳成分の変化によって、経済的損失が生じる。多くの乳房炎病原体(ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ及び黄色ブドウ球菌)は最近イスラエルの牛群から排除されているが、他の非アガラクティエ種の発生の増加が注目された。
【0179】
それゆえに、本願発明者は次に、ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ感染のin vivo治療における本発明の標的複合体の有効性を調べた。これらのin vivo研究は、イスラエル国ベイト・ダガン(Beit-Dagan)の獣医学研究所(Veterinary Institute)で行われた。4頭のホルスタイン種の中程度に乳を出す乳用牛(25L/d)の2つの分房には、乳房内にストレプトコッカス‐ディスガラクティア(1分房当たり5mlの体積中1750CFUのSTRPVL1860)を注射された。乳牛は、次のパラメータ即ち乳中のフレークまたは血餅;熱く、腫脹した分房または乳房;発熱;速脈;食欲不振を用いて、植菌の3日前及び後に、乳房炎に対して臨床的に評価された。臨床評価に加えて、アフィファーム(Afifarm)v 2.03システムを用いて、乳の産出、活性、及び乳伝導度が測定され、採取された乳サンプルは、細菌、定量SCC及びNAGase活性を分析された。表5に示されるように、全ての測定されたパラメータは、感染した供試牛が乳房炎に罹患していることを示した。
【0180】
細菌に感染してから48時間後、全ての注射された分房において陽性細菌培養液(ストレプトコッカス‐ディスガラクティア)が見られた(表5)。SCC及びNAGase活性のレベルの増加も注目された(緩やかな増加しか示さなかった乳牛265[B/R]を除く)。
【0181】
【表5】

【0182】

【0183】

【0184】
ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ植菌から74時間後、4頭の供試牛各々の左分房が、ストレプトコッカス‐ディスガラクティエに特異的なIgY抗体を含む標的認識成分を有する本発明の標的複合体で処置された[分房の半分が、5mlの発熱物質なしの生理食塩水において各々2000万(乳牛1989、2226)または5000万(乳牛265、2119)ユニット/分房の注射によって処置された]。4頭の供試牛各々の処置された分房において2回の乳房内注射が行われた(朝の搾乳後に1回注射及び24時間後に第2の注射)。右分房は未処置であり、対照として働く。乳サンプルは、試験期間中(3週間)監視された。
【0185】
供試牛の4つの未処置分房のうち3つにおいて、20日の実験の間中、乳サンプルにストレプトコッカス−ジスガラクティア細菌が見つかったが、これは感染が慢性期へ進行していることを示している。SCCレベル及びNAGase活性は3つの分房で非常に高いが、乳牛265においてはこれらのパラメータのレベルは乳中に細菌がない最初のレベルに戻った(表6)。
【0186】
表6及び図7に示されるように、投与量にかかわらず、処置分房の半分への本発明の抗ストレプトコッカス−ジスガラクティア特異複合体の注射は、4頭の乳牛のうち3頭において細菌数の著しい減少を招いた(表6)。一方で、対照においては、20日の研究の間中分房が感染した。
【0187】
この研究の結果は、本発明の抗ストレプトコッカス−ジスガラクティア特異複合体が、感染牛の乳中の細菌数を効果的に減少させることを明確に示している。更に、4頭の乳牛のうち少なくとも3頭において、24〜48時間後にSCC及びNAGase活性が著しく減少した(表6及び図7)。処置後1週間で、対照分房が高度に感染していたのに対し、処置分房が乳房炎から完全に回復したことがわかる(表6)。
【0188】
【表6】

【0189】

【0190】

【0191】
本発明の抗ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ特異IgY複合体の毒性試験
次に、異なる量の本発明の複合体を注射された市販の健康なホルスタイン種乳牛を用いて、抗ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ特異IgY複合体の毒性が調査された。目視検査後に炎症性分房のために4頭の授乳牛が選択され、乳(細菌なし、NAGase<30;SCC<150,000)中の細菌学プロフィールが監視された。
【0192】
5mlの発熱物質なしの無菌生理食塩水溶液中の300万から1000万ユニットの抗ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ特異IgY複合体が、無菌プラスチックシリンジを用いて、供試分房に乳房内注射された。
【0193】
注射後3日間にサンプリングされた乳における化学測定の他に、処置乳牛における臨床検査(乳中のフレークまたは血餅;感染分房の僅かな腫脹;熱く、腫脹した分房または乳房;発熱;速脈;食欲不振)がその後行われた。
【0194】
処置分房を有する乳牛には、臨床的な病状または行動の変化は観察されなかった。
【0195】
表7に示されるように、乳分析は、1分房当たり3×10ユニットのレベルでの本発明の抗ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ特異IgY複合体の注射がSCCのレベルに劇的に影響しないことを示した。SCCは24時間経過して僅かに増加したが、24時間後に正常なレベルに戻った。NAGase活性が300万または1000万ユニットの抗ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ特異IgY複合体のレベルであるときにも同様の結果が得られた。これらの結果は、注射に反応して本発明の複合体が乳房組織及び乳に与える影響が小さいことを示す。
【0196】
【表7】

【0197】
乳中の抗ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ特異IgY複合体の残留物
発明の特異ストレプトコッカス‐ディスガラクティエ複合体を用いることの安全性を更に調べるために、処置乳牛から得られた乳サンプルは、この複合体の痕跡の存在に対して監視された。複合体の注射後、0分、10分、5時間、24時間、48時間、及び72時間で採取された乳サンプルは、実験手順で述べたように特定のELISAによってIgYのレベルが決定された。図8に示されるように、乳(遊離及び小球体ビーズに結合)におけるIgYのレベルは、注射後に急に低下する。注射から10分後、1mlの乳当たり約0.5〜0.6μgのIgYしか検出されなかった。これらのレベルは急速に低下し、注射から24時間後にIgYは検出されなかった。最小検出レベルが6.25ng/mlであったことに注目されたい。
【0198】
同様に、注射後8時間までに採取されたサンプルの分析は、注射から5時間後及び1回の搾乳後にIgYの濃度が80%減少したことを明確に示した(図9)。
【0199】
[実施例6]
《本発明の標的複合体を用いた、大腸菌の感染により引き起こされる乳房炎のin vivo治療》
本願発明者は次に、別の乳房炎を引き起こす細菌即ち大腸菌のin-vivo治療における本発明の標的複合体の有効性を調べた。これらのin vivo研究もまた、イスラエル国ベイト・ダガンの獣医学研究所で行われた。
【0200】
第1から第4の泌乳中期にある4頭の非妊娠イスラエルホルスタイン種乳牛が、2回連続試験に含まれていた(それぞれ2頭の乳牛)。乳牛は、分房乳サンプルの3回連続の細菌学的及び体細胞数(SCC)検査によって確認されるように、乳房状態に基づいて実験のために選択された。乳牛は、乳房感染がなく、120×10細胞/ml以下のSCCを有していた。乳牛は毎日3回搾乳され、乳の産出は25〜35kg/日であった。飼料は、フリーストールバーンに配置された飼葉桶に供給された。
【0201】
大腸菌株(P4)は、普通ブロス(Difco, Detroit, MI)にて37℃で24時間成長させられ、40℃で15分、3000×gで遠心されることによって収集された。ペレットは、非発熱性PBS(pH7.6;0.01M)に再懸濁され、洗浄され、細胞濃度が血液寒天平板上での連続希釈によって決定された。オリジナルのペレットは、氷上に16時間保存された。各乳牛は、500コロニー形成単位(CFU)を含む5mlの懸濁液を乳腺槽への線状管(streak canal)を介して2分房(前または後)に注射によって投与された。
【0202】
国際酪農連盟(International Dairy Federation(IDF))(1985)手順に基づいてデュプリケート分房乳サンプルが得られ、1時間以内に検査室に送られた。合格基準に基づいて細菌学的分析が行われた。各乳サンプルの0.01mlの一定分量が、5%羊赤血球を含む血液寒天平板(Bacto-Agar; Difco Laboratory)全体に塗布された。全てのプレートは37℃でインキュベートされ、18時間及び42時間で成長を検査された。API20EまたはAPI NEキット(bioMerieux S.A., 69280 Marcy-l'Etoile, France)を用いて、グラム陰性コロニーが同定された。
【0203】
このアッセイに先立ち、供試牛は連続した3日間に、細菌学的状態、NAGase活性及びSCCを検査された。乳牛は搾乳から1〜2時間後にストールに連れて行かれ、乳頭を温水で洗浄され、乾燥させられ、クロルヘキシジン、セトリマイド及びエタノールで湿らされた個別の不織布ペーパータオル(Medi-Wipes, AL Baad, Massuot Itzhak, Israel)で消毒された。最初の3回の乳汁は廃棄され、細菌の様子、SCC、及びNAGase活性を調べるためにサンプル(50ml/分房)が無菌チューブに採取された。各乳牛は、朝の搾乳後すぐに前または後の2分房において乳房内に500cfu/分房を接種された。投与期間から48時間、乳牛は、病気の兆候(直腸温、心拍数、呼吸数、消化管活性(ルーメン収縮)及び乳房温度、疼痛、浮腫及び乳房サイズ)を厳重に監視された。投与から6時間、30時間及び54時間後(試験1においてのみ)、分房がサンプリングされ、乳牛は搾乳され、各乳牛の投与された左分房が処置された。乳牛は次の搾乳(夜)では搾乳されず、後になって(朝)搾乳計画に戻った。分房は、投与後最大15日まで24〜48時間毎にサンプリングされ続けた。乳牛は、5mlの非発熱性PBSでの懸濁液と共に与えられた40×10ユニットの複合体(抗大腸菌)で乳房内に処置された。
【0204】
図10Aに示されるように、15日の実験の間中、乳サンプルに大腸菌細菌が見つかったが、これは感染の慢性期への進行を示している。しかしながら、処置分房から得られた乳サンプルにおいて、細菌感染の明らかな増加が示された。SGCレベル及びNAGase活性が調べられたとき、大腸菌特異複合体の重要な保護も観察された(それぞれ図10B、図10C)。
【0205】
これらの結果は、本発明の抗大腸菌特異複合体が、感染牛の乳における細菌数及びSCCを効率的に減少させ、感染分房を効率的に回復させ、乳房炎から乳牛を保護することを明確に示す。
【0206】
[実施例7]
《本発明の標的複合体を用いた、アエロモナス‐サルモニシダの感染によって引き起こされる潰瘍に罹患したコイのin vivo治療》
哺乳動物の病気例えばウシの乳房炎の治療において本発明の異なる標的複合体が効果的に使用されたので、本願発明者は、本発明の複合体を用いて、哺乳動物以外の動物特に魚を治療する可能性を調べた。したがって、本願発明者は、飼育魚コイのフルンケル多発症を引き起こすようなアエロモナス‐サルモニシダに対して標的化された特異複合体を開発した。
【0207】
アエロモナス‐サルモニシダは、水産養殖において生じる消耗性、致死性の疾患であるようなサケ科の魚におけるフルンケル多発症の病因であるグラム陰性菌性病原体である。現行のワクチン接種が与える有効性は限定的であり、動物間流行病は養殖魚によく起こることである。広範に有効な対照基準の開発は、病状の原因となるような宿主因子と病原体間の相互作用のより完全な理解を必要とする。
【0208】
モデル系としてアエロモナス‐サルモニシダに感染したコイを用いて以下の実験を行った。実験には、実験の間中淡水が供給される(流動系)4つの水槽(それぞれ0.5m)が用いられた。各水槽には30匹の健康なコイ(1匹30グラム)と5匹の潰瘍の魚(コイ)が含まれ、これらは28日一緒にされていた(同居)。その後潰瘍コイは取り除かれ、同居から10〜14日後に、標的成分としてアエロモナス‐サルモニシダに対する特異IgY抗体を含むような本発明のアエロモナス‐サルモニシダ特異複合体を用いて、感染コイが処置された。検査処置群として用いられた4つの水槽のうちの2つにおける30匹の魚はそれぞれ、生理食塩水を希釈剤として5倍に希釈された本発明の複合体[3mg IgY/kg体重(BW)または4億5000万の複合体ユニット/kg/BW]を含む0.5mlの溶液を2回(10〜14及び17〜19日に)腹腔内に注射される。コイの潰瘍性疾患に関連する臨床的徴候の発生のために、2つの対照水槽の魚は生理食塩水で処置され、2つの検査水槽と同様に監視される。
【0209】
上記した研究の最後に、対照群の魚は2つの群に分けられた。標的成分としてアエロモナスに対する特異IgY抗体を含む本発明の複合体(45000万U/kg BW)は、処置群の水に加えられた。他の群は未処置であった。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】ELISA(450nmでのO.D)によって測定された免疫後の時間に対する粗卵黄抗大腸菌IgY可溶性エキス(1:1000)の抗体活性を示すグラフである。
【図2】ELISA(450nmでのO.D)によって測定された免疫後の時間に対する粗卵黄抗黄色ブドウ球菌IgY可溶性エキス(1:100)の抗体活性を示すグラフである。
【図3】ELISA(450nmでのO.D)によって測定された免疫後の時間に対する粗卵黄抗ストレプトコッカス−ウベリスIgY可溶性エキス(1:1000)の抗体活性を示すグラフである。
【図4】ウシ大腸菌の成長パターンへの抗大腸菌IgYの効果を示すグラフである。
【図5】ウシ大腸菌の成長への抗大腸菌IgYの効果を示すグラフである。
【図6】標的複合体作用:2つの主成分が固体担体(マイクロビーズ=mic. b.)の表面に結合される:(i)標的(病原体又は他の標的分子)(例えば、ホルモン、腫瘍特異性抗原、ウイルスタンパク質)を特異的に認識する抗体(IgY、レセプター、IgG)を含む標的成分(tar. comp.)と、(ii)食作用(IgG、補体)を誘発する免疫賦活性特性を有する成分。標的成分は、成分が非特異宿主免疫応答を誘発するような特異標的(例えば食細胞)に結合する。食作用のこの標的刺激は、処置された被検哺乳動物から望ましくない標的を特異的に排除することを可能にする。
【図7】ストレプトコッカス−ジスガラクティアに標的化された本発明の複合体を2回連続して注入した処置されたウシ(左4分の1)又は無処置のウシ(右4分の1)の乳におけるSCC。
【図8】注入後72時間までの3頭のウシの乳中のストレプトコッカス−ジスガラクティア特異複合体のレベル。
【図9】乳腺内注入後最初の6時間までの3頭のウシの乳中のストレプトコッカス−ジスガラクティア特異複合体のレベル(平均SD)。5時間の時点は搾乳前の状態、6時間は搾乳後の状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの標的病気因子に対して特異的な免疫促進反応を誘発するための多機能標的複合体であって、
(a)前記標的因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)免疫促進因子を含んでいる免疫活性成分、及び
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの免疫活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする標的複合体。
【請求項2】
前記免疫促進反応は、食作用、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)、補体活性化、及び特異的T細胞及びB細胞の刺激から成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の標的複合体。
【請求項3】
前記免疫促進反応は、前記白血球による食作用であることを特徴とする請求項2に記載の標的複合体。
【請求項4】
前記標的病気因子は、細菌、ウイルス、菌類、悪性細胞、毒素、毒液、ハプテン、環境汚染物質及び不要なタンパク質から成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の標的複合体。
【請求項5】
前記標的病気因子は、乳房炎病原細菌、腸病原細菌、及び病原性フルンケル症細菌、及び潰瘍性疾患誘発細菌から成る群より選択される細菌であることを特徴とする請求項4に記載の標的複合体。
【請求項6】
前記細菌は、放射菌、大腸菌、シュードモナス、クロストリジウム、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス−アガラクティエ、ストレプトコッカス−ジスガラクティア、コリネバクテリウム−ピオゲネス、エンテロコッカス−フェカーリス、ウシコリネバクテリウム、ノカルジア−アステロイデス、及びストレプトコッカス−ウベリスから成る群より選択される少なくとも1つの乳房炎病原細菌であることを特徴とする請求項5に記載の標的複合体。
【請求項7】
前記潰瘍性疾患誘発細菌は、魚類の潰瘍性疾患を誘発するアエロモナス属であることを特徴とする請求項5に記載の標的複合体。
【請求項8】
前記標的認識成分は、抗体又はその機能的断片、リガンド、及び前記病気因子又はその機能的断片に対して特異的なレセプターの内のいずれか1つを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の標的複合体。
【請求項9】
前記標的認識成分は、前記病気因子又はその機能的断片に対して特異的である抗体又はその機能的断片を含んでおり、
前記抗体は、IgG、IgY、及びIgMから成る群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の標的複合体。
【請求項10】
前記認識成分は、前記病気因子又はその機能的断片に対して特異的であるIgY抗体又はその機能的断片を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の標的複合体。
【請求項11】
前記免疫活性成分は、食作用を誘発する免疫促進因子を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の標的複合体。
【請求項12】
前記食作用誘発因子は、IgG及びC3bのいずれかのオプソニン、食細胞のマンノース−フコースレセプターと相互作用する炭水化物残基を有するタンパク分子、スカベンジャー・マクロファージにおいてレセプターによって認識されるリガンドタンパク分子、食細胞によって発現するインテグリンのリガンド、糖タンパク質、及びフコシル・トランスフェラーゼから成る群より選択されることを特徴とする請求項11に記載の標的複合体。
【請求項13】
前記食作用誘発因子はIgGであることを特徴とする請求項12に記載の標的複合体。
【請求項14】
前記結合成分は、固体担体、化学リンカー、ポリペプチド・リンカー、多糖類リンカー、及び脂質リンカーの内のいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の標的複合体。
【請求項15】
乳房炎病原細菌に感染したウシにおいて、少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌に対して特異的な食作用を誘発するための多機能標的複合体であって、
(a)前記乳房炎病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする標的複合体。
【請求項16】
前記標的認識成分は、少なくとも1つの乳房炎病原細菌に対して特異的であるIgY抗体であることを特徴とする請求項15に記載の標的複合体。
【請求項17】
前記乳房炎病原細菌は、放射菌、大腸菌、シュードモナス、クロストリジウム、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス−アガラクティエ、ストレプトコッカス−ジスガラクティア、コリネバクテリウム−ピオゲネス、エンテロコッカス−フェカーリス、ウシコリネバクテリウム、ノカルジア−アステロイデス、及びストレプトコッカス−ウベリスから成る群より選択される少なくとも1つの細菌であることを特徴とする請求項16に記載の標的複合体。
【請求項18】
前記食作用誘発因子は、ウシから生成されたIgG細胞であることを特徴とする請求項17に記載の標的複合体。
【請求項19】
前記結合成分は、固体担体、化学リンカー、ポリペプチド・リンカー、多糖類リンカー、及び脂質リンカーの内のいずれか1つであることを特徴とする請求項18に記載の標的複合体。
【請求項20】
潰瘍性疾患に感染した魚類において、少なくとも1つの標的潰瘍性疾患病原細菌に対して特異的な食作用を誘発するための多機能標的複合体であって、
(a)魚類において潰瘍性疾患を誘発するアエロモナス・サルモニサイダ病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする標的複合体。
【請求項21】
治療対象体の病的疾患を治療するための組成物であって、
活性成分として、治療対象体において少なくとも1つの標的病気因子に対して特異的な免疫促進反応を誘発する多機能標的複合体を含んでおり、
前記複合体は、
(a)前記病気因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)免疫促進因子を含んでいる活性成分、及び
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする組成物。
【請求項22】
随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる、希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記病的疾患は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つであることを特徴とする請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記複合体は、請求項2から請求項19のいずれか一項に記載の複合体であることを特徴とする請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記病的因子に冒された治療対象体は、ヒト、国内の哺乳類、国内の鳥類、国内の魚類、ペット、及び外国の魚類の内のいずれか1つであることを特徴とする請求項19から請求項22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記国内の哺乳類は、ウシであることを特徴とする請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記病的疾患は、細菌性感染症であることを特徴とする請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記細菌性感染症は、乳房炎であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ウシの乳房炎を治療するための組成物であって、
活性成分として、乳房炎病原細菌に感染したウシにおいて少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌に対して特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体を含んでおり、
前記複合体は、
(a)前記乳房炎病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする組成物。
【請求項30】
前記複合体は、請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の複合体であることを特徴とする請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記治療対象体は、国内の魚類、ペット、及び外国の魚類の内のいずれか1つであることを特徴とする請求項25に記載の組成物。
【請求項32】
前記細菌性感染症は、前記魚類において潰瘍性疾患を引き起こすアエロモナス属の細菌性感染症であることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
魚類における潰瘍性疾患を治療するための組成物であって、
活性成分として、アエロモナス属病原細菌に感染した魚類において少なくとも1つの標的アエロモナス属病原細菌に対して特異的な食作用を誘発する多機能標的複合体を含んでおり、
前記複合体は、
(a)前記アエロモナス属病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、及び
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする組成物。
【請求項34】
病的疾患に冒されている治療対象体において、前記病的疾患と関係している少なくとも1つの標的病気因子を標的にして特異的な食作用を誘発するための組成物であって、
活性成分として、請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の多機能標的複合体を含んでおり、
随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいることを特徴とする組成物。
【請求項35】
乳房炎を患っているウシにおいて、少なくとも1つの標的乳房炎細菌性病原体に対して特異的な食作用を誘発するための組成物であって、
活性成分として、請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の多機能標的複合体を含んでおり、
随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいることを特徴とする組成物。
【請求項36】
潰瘍性疾患を患っている魚類において、少なくとも1つの標的アエロモナス属細菌性病原体に対して特異的食作用を誘発するための組成物であって
活性成分として、請求項20に記載の多機能標的複合体を含んでおり、
随意的に、薬学的及び/又は獣医学的に容認できる希釈剤、賦形剤及び/又は添加剤をさらに含んでいることを特徴とする組成物。
【請求項37】
治療対象体の病的疾患を治療するための方法であって、
前記治療対象体に治療的に有効な量の標的複合体又はその標的複合体を含む医薬組成物を投与する過程を含んでおり、
前記複合体は、
(a)病気因子又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)免疫促進因子を含んでいる活性成分、及び
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする方法。
【請求項38】
前記組成物は、請求項21から請求項23、請求項25から請求項29、及び請求項31から33の内のいずれか一項に記載の組成物であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記複合体は、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の複合体であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記病的因子に冒されている治療対象体は、ヒト、国内の哺乳類、国内の鳥類、国内の魚類、ペット、及び外国の魚類の内のいずれか1つであることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記病的疾患は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つであることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記病的疾患は細菌性感染症であることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ウシの乳房炎を治療するための方法であって、
前記ウシに対して、少なくとも1つの標的乳房炎病原細菌を標的にして特異的食作用を誘発することができる治療的に有効な量の標的複合体、又はその標的複合体を含んでいる医薬組成物を投与する過程を含んでおり、
前記複合体は、
(a)前記乳房炎病原細菌又はその機能的断片と特異的に結合する分子を含んでいる少なくとも1つの標的認識成分、
(b)食作用誘発因子を含んでいる活性成分、
(c)随意的に、前記少なくとも1つの標的成分と前記少なくとも1つの活性成分とを結合させる結合成分を含んでおり、
前記標的成分及び前記活性成分の独立した生物学的機能は保持されていることを特徴とする方法。
【請求項44】
前記複合体は、請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の複合体であることを特徴とする方法。
【請求項45】
魚類の潰瘍性疾患を治療するための方法であって、
前記魚類に対して、請求項20に記載の潰瘍性疾患に感染した魚類において少なくとも1つの標的アエロモナス属病原細菌を標的にして特異的食作用を誘発することができる治療的に有効な量の標的複合体、又はその標的複合体を含んでいる医薬組成物を投与する過程を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項46】
治療対象体の病的疾患を治療するための医薬組成物の調製に、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の多機能標的複合体を使用することを特徴とする多機能標的複合体の使用。
【請求項47】
前記病的疾患は、免疫性疾患、ウイルス性、真菌性又は細菌性感染症、及び悪性疾患の内のいずれか1つであることを特徴とする請求項46に記載の多機能標的複合体の使用。
【請求項48】
前記病的疾患は、細菌性感染症であることを特徴とする請求項47に記載の多機能標的複合体の使用。
【請求項49】
ウシの乳房炎を治療するための医薬組成物の調製に、請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の多機能標的複合体を使用することを特徴とする多機能標的複合体の使用。
【請求項50】
魚類の潰瘍性疾患を治療するための医薬組成物の調製に、請求項20に記載の多機能標的複合体を使用することを特徴とする多機能標的複合体の使用。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−504619(P2006−504619A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−574686(P2003−574686)
【出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000196
【国際公開番号】WO2003/076471
【国際公開日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【出願人】(504342929)ヤミット・バイオテクノロジーズ・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】YAMIT BIOTECHNOLOGIES LTD.
【Fターム(参考)】