説明

標的物質の検出方法、混合粒子、および標的物質の検出試薬

【課題】高感度で測定範囲が広く、かつ、保存安定性に優れた標的物質の検出方法、該検出方法に使用することができる混合粒子、および該混合粒子を用いた標的物質の検出試薬を提供すること。
【解決手段】標的物質の検出方法は、着色粒子および無着色粒子を含む混合粒子分散液に検体を接触させる工程、および前記接触させる工程により生じた前記混合粒子の凝集を光学的に検出する工程を含み、前記着色粒子および前記無着色粒子はそれぞれ、所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、かつ、平均粒径が0.03−1μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質の検出方法、混合粒子、および標的物質の検出試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体または抗原などをラテックス粒子に担持させ、該ラテックス粒子の凝集により、対応する抗原または抗体などの被検査物質との特異的反応を検出する方法は一般に、ラテックス免疫診断法といわれ、臨床検査の重要な手段として利用されている(特開2006−266970号公報)。
【0003】
ラテックス免疫診断法はその簡便さで知られている。一般に、検体とラテックス粒子とを混合するだけで免疫反応(抗原抗体反応)が素早く進行する。免疫反応によってラテックス粒子が凝集し、免疫反応の進行度をラテックス粒子の凝集度として計測する。
【0004】
ラテックス免疫診断法は、酵素免疫法、化学発光免疫診断法、蛍光免疫診断法に代表される、検出に際してラベリング物質を使用する診断方法に比べて、反応物と未反応物との分離(いわゆるB/F分離)操作が必要ない分、短時間で簡便かつ廉価に診断できるという利点を有する。また、ラテックス免疫診断法専用の自動測定機器も市販されており、バッチ処理による大量検体の迅速診断に適する方法として普及している。
【0005】
しかしながら、一般に、ラテックス免疫診断法は他の診断方法と比較して検出感度が低いという欠点を有する。これは、ラテックス免疫診断法の検出がラテックス凝集による吸光度変化のみに頼っていることに起因する。これに対して、酵素免疫法や化学発光免疫診断法などの診断方法では、微小なシグナルを検出するために、酵素と基質との反応を利用してシグナルの増幅が行われる。したがって、ラテックス免疫診断法においては、検出感度を高めることが求められている。
【0006】
これに対して、近年、ラテックスメーカーの努力により、ラテックス粒子の粒径制御および表面改質によって、ラテックス免疫診断法の検出感度が確実に高められている。検出感度の向上および測定の迅速化を実現するために、現在の多くの測定システムでは、検査液を添加した後の濁度の変化速度を測定し、被検査物質の濃度に対する濁度の変化速度を示す検量線を用いて、測定された濁度の変化速度に基づいて被検査物質の定量が行われている。また、一部の測定システムでは、検査液を添加した後の濁度の一定時間経過後の準平衡値に基づいて検量線を作成する。また、迅速診断を実現するために使われるレートアッセイの場合、反応途中の吸光度を計測し検量線とする方式も採用されている。
【0007】
これらの検量線では通常、被検査物質の濃度が低い領域(低濃度域)では傾きが小さく(被検査物質の濃度の変化量に対する、濁度の変化速度の変化量が小さい領域:前期鈍感領域)、次第に傾きが一定勾配となり(被検査物質の濃度の変化量に対する、濁度の変化速度の変化量が一定である領域:比例領域)、さらに、被検査物質の濃度が高い領域(高濃度域)では傾きが小さくなり(被検査物質の濃度の変化量に対する、濁度の変化速度の変化量が小さい領域:後期鈍感領域)、場合によっては、さらに高い濃度域で傾きが逆勾配の領域(プロゾーン領域)が生じることがある。
【0008】
このような要求特性から、従来、被検査物質の濃度が低い場合の測定においては、僅かな免疫反応により生じた粒子凝集を敏感に検知するため、濁度変化に敏感に対応できる大きな粒子が使用される。
【0009】
一方、比例領域を利用する測定においては、比例領域を可能な限り広くするために、免疫反応に基づく粒子凝集に対して吸光度変化を小さく抑える必要がある。このため、多くの免疫反応が生じた場合、吸光度変化が少ない範囲に抑えるために、粒径の小さい粒子を使用する。
【0010】
このように、ラテックス免疫診断法においては、一般に、被検査物質の濃度に応じて大粒子と小粒子とを使い分ける大粒子小粒子併用系が使用されている。
【0011】
このような大粒子小粒子併用系においては、大粒子の重量比率は通常、全体粒子の2割未満である。大粒子の比率が多すぎると、抗原濃度が多い領域で吸光度変化が頭打ちになり、測定レンジが狭くなることがある。一方、大粒子の比率が少なすぎると、抗原濃度低値領域の測定感度が確保できない場合がある。
【0012】
しかし、大小2種類粒子を使っても、抗原濃度の少ない低値域では、大粒子が優先的に抗原と反応する保障はなく、結果的に大・小粒子の競合反応の結果として一部の大粒子が反応する。つまり大粒子の反応効率が粒子個数のゆえに高くない。標的物質としての数少ない抗原の多くは、個数で優位にある小粒子と反応し、吸光度変化へ大きく寄与しない。
【0013】
一方、試薬検量線の滑らかさを維持させるためには、大粒子と小粒子との粒径差を大きく変えることができない。片方の粒子の粒径を変える場合には、必然的にもう片方の粒子の粒径も連動して変える必要がある。したがって、所定の要求項目に適切な粒子を選定する際に、粒子の選定幅が狭い。結果的に高感度ラテックス試薬の限界となる。
【0014】
また、大粒子小粒子併用系においては、試薬の保管期間中に大粒子が自重のため沈降する結果、粒子が均一な分散状態を維持することができない場合がある。この現象は、時として測定値の飛び値として現れる。測定結果の信憑性を直接影響ため排除する必要がある。加えて、このような大粒子小粒子併用系の試薬は一般に、試薬の長期保管が困難であるため、保存安定性が低い場合がある。
【特許文献1】特開2006−266970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、高感度で測定範囲が広く、かつ、測定再現性の優れた標的物質の検出方法、該検出方法に使用することができる混合粒子、および該混合粒子を用いた標的物質の検出試薬を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様に係る標的物質の検出方法は、
着色粒子および無着色粒子を含む混合粒子分散液に検体を接触させる工程、および
前記接触させる工程により生じた前記混合粒子の凝集を光学的に検出する工程を含み、
前記着色粒子および前記無着色粒子はそれぞれ、所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、かつ、平均粒径が0.03−1μmである。
【0017】
上記標的物質の検出方法では、前記検出する工程において、前記混合粒子の凝集を波長400−900nmの光で検出することができる。
【0018】
上記標的物質の検出方法において、前記混合粒子に占める前記着色粒子の含有量が3−95質量%であることができる。
【0019】
上記標的物質の検出方法において、前記着色粒子の粒径の変動係数および前記無着色粒子の粒径の変動係数がそれぞれ20%以下であることができる。
【0020】
上記標的物質の検出方法において、前記無着色粒子の平均粒径に対する前記着色粒子の平均粒径の比が0.2−5であることができる。
【0021】
本発明の一態様に係る混合粒子は、
所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、平均粒径が0.03−1μmである、着色粒子および無着色粒子を含有する。
【0022】
上記混合粒子は、上記標的物質の検出方法に使用されることができる。
【0023】
本発明の一態様に係る標的物質の検出試薬は、上記混合粒子を含有する。
【発明の効果】
【0024】
上記標的物質の検出方法によれば、着色粒子および無着色粒子を含む混合粒子分散液に検体を接触させる工程、および前記接触させる工程により生じた前記混合粒子の凝集を光学的に検出する工程を含み、前記着色粒子および前記無着色粒子はそれぞれ、所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、かつ、平均粒径が0.03−1μmであることにより、高感度で測定範囲が広く、かつ、長期保存中の粒子の凝集が少ないため、保存安定性に優れている。
【0025】
また、上記混合粒子および上記標的物質の検出試薬によれば、上記着色粒子および無着色粒子を含むことにより、該粒子が沈降しにくいため、臨床検査機器のメンテナンスを減らすことができ、その結果、臨床検査試薬のコスト削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る標的物質の検出方法、混合粒子、および標的物質の検出試薬について、具体的に説明する。
【0027】
1.混合粒子
1.1.混合粒子の構成
本発明の一実施形態に係る混合粒子は、所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、平均粒径が0.03−1μmである、着色粒子および無着色粒子を含有する。
【0028】
本実施形態に係る混合粒子は、平均粒径が0.03−1μmである着色粒子を3−95質量%含有することができる。ここで、着色粒子の割合が3質量%未満であると、着色粒子の吸光度増幅効果が小さく、実質的な効果が期待できない場合がある。本実施形態に係る混合粒子における着色粒子の割合は5−70質量%であることがより好ましく、7−40質量%がさらに好ましい。一方、着色粒子の割合が95%以上になると、混合粒子の機能がなくなり、無着色粒子の広いレンジ効果がなくなる場合がある。
【0029】
無着色粒子は、通常の乳化重合、分散重合、懸濁重合、シード重合、ソープフリー重合などの水溶液系で調製されるラテックス粒子であって、通常は乳白色を呈し、明瞭な色彩は有さない。無着色粒子に対する可視域の吸光度測定により得られた吸光スペクトルでは、特定波長域での吸収が確認されない。
【0030】
一方、着色粒子は白色以外の色彩を有する。着色粒子に対する可視域の吸光度測定により得られた吸光スペクトルでは、特定波長域での吸収が確認される。
【0031】
1.1.1.着色粒子および無着色粒子の平均粒径および粒径分布
本実施形態に係る混合粒子において、着色粒子および無着色粒子の平均粒径はそれぞれ、通常0.03−1μmであり、0.05−0.6μmであることが好ましい。上記平均粒径が0.03μm未満である場合、粒子凝集による吸光度変化が小さすぎるため、免疫反応が起きても、反応を実質的に追跡できない場合がある。さらに、上記平均粒径が0.03μm未満である場合、粒子表面エネルギーが高くなり、粒子がコロイド的に不安定になるため、臨床検査試薬の製造段階における粒子の遠心分離工程に多くの時間がかかるため製造効率が低く、その結果、製造コストが高くなるうえに、品質保証が困難になる場合がある。
【0032】
一方、上記平均粒径が1μmを超える場合、ラテックス凝集を測定原理とする自動臨床検査機器を使用した測定において、粒子凝集による吸光度(濁度)変化が大きすぎる。特に、被測定物質の濃度が高い場合、粒子凝集による吸光度(濁度)の変化量が測定可能領域を超えてしまい、高濃度領域では被測定物質の濃度に応じた吸光度(濁度)変化量が得られず、定量的な測定ができなくなる。その結果、実質的に免疫反応のごく初期の段階しか追跡できない場合がある。
【0033】
着色粒子および無着色粒子の好適な粒径分布はそれぞれ、下記式で定義される変動係数(CV値)が20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下である。上記変動係数が20%を超える場合、該粒子を用いた標的物質の検出結果の再現性が低下する場合がある。
[変動係数]
変動係数(CV値)(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒径)×100(%)
【0034】
着色粒子および無着色粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡で測定することができる。また、電子線による粒子の縮小率を補正するため、粒子の平均粒径の値として、電子線照射時間と粒子縮小率との相関図から、照射時間ゼロのポイントを外挿した値を使用する。
【0035】
具体的には、撮影された粒子写真を画像解析装置により粒子200個を計測して、その平均粒径および標準偏差を算出する。この場合、粒径の標準として、JQAの標準物質およびトレーサビリティーが得られる標準解析格子を用いる。
【0036】
1.1.2.着色粒子および無着色粒子の組成
着色粒子および無着色粒子は、フェニル基を有する重合性単量体を含有するモノマー部を重合して得られたポリマー部から構成される表面を有するラテックス粒子であることが好ましい。
【0037】
また、粒子の沈降速度をより遅くできる点で、ポリマー部は水よりも比重が小さいことが好ましい。水よりも比重が小さいポリマー部を製造するためには、例えば、ポリマー部がポリスチレン部位を含むことが挙げられる。
【0038】
フェニル基を有する重合性単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中では、スチレンが好ましく用いられる。
【0039】
モノマー部で使用する重合性単量体の総量における、フェニル基を有する重合性単量体の含有率は50%以上であるのが好ましく、65%以上がより好ましい。上記含有率が50%未満であると、免疫診断用途において、抗体または抗原の結合量が少なくなるおそれがある。また、上記含有率は、粒子製造時の重合性単量体の添加量によって制御することができる。なお、重合性単量体の添加量は、重合性単量体の実導入量ではない。重合性単量体の実導入量は例えば、熱分解ガスクロマススペクトルのような分析機器で定量することができる。
【0040】
モノマー部で使用する重合性単量体として、必要に応じて、アクリレートおよびメタクリレートをさらに使用することもできる。アクリレートおよびメタクリレートの具体例としては、例えば、メチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tーブチルアクリレート、tーブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレートなどの鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルジプロピレングリコールメタクリレートなどの環状脂肪族基を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート、メチル置換シクロヘキシルアクリレートなどのシクロヘキシル基の水素原子の一部が炭素数1−4のアルキル基で置換された置換シクロヘキシルアクリレート、置換シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキセンジメタクリレートなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて、上記フェニル基を有する重合性単量体の1種または2種以上と共重合することができる。
【0041】
着色粒子および無着色粒子の表面に、抗体または抗原と反応しうる基を導入するために、ラジカル重合性の不飽和結合を有する基および抗体または抗原と反応しうる基(例えばカルボキシル基)を分子中に有する重合性酸モノマーとの共重合も可能である。具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボン酸モノマーを挙げることができる。また、粒子表面に親水性を殖やす目的で、グリシジルメタアクリレートと共重合してもよい。これらは単独または組み合わせて使うことができる。これらの重合性酸モノマーは、上記フェニル基を有する重合性単量体の1種または2種以上、または、アクリレートおよびメタクリレートモノマーの1種または2種以上と共重合してもよい。モノマー部で使用する重合性単量体の総量における、重合性酸モノマーの添加量は、好ましくは0−10質量%、より好ましくは0−5質量%である。モノマー部で使用する重合性単量体の総量における重合性酸モノマーの添加量が0−0.5質量%である着色粒子および無着色粒子は、表面に存在するカルボキシル基の量が少ないため、化学結合によって抗体または抗原を固定化する方法のみならず、物理吸着によって抗体または抗原を固定化する方法にも使用できる。
【0042】
1.1.3.着色粒子の色彩
着色粒子は、乳白色の無着色ラテックス粒子を、染料または顔料などを用いて染色または着色することにより製造することができる。染料としては、例えば、スダンオレンジR、スダンブルーなどの油性染料、あるいは、オレンジII、コンゴーレッド、アントラゾールO、アリザリンレッドS、スピリットブルーなどの水溶性あるいはアルコール可溶性の染料を用いることができる。
【0043】
着色粒子としては、具体的には、例えば、赤、青、紫のような可視領域に吸収を有する着色粒子が挙げられる。例えば、染料または顔料をラテックスに含芯させることにより、着色粒子を調製することができる。また、同一粒径の粒子において、吸光度の効果を最大に発揮させるために、利用する検出光の波長に合わせて吸収最大の色彩を有する着色粒子を使用することが好ましい。
【0044】
例えば、ラテックス免疫診断法に適用可能な測定装置として、日立7070、7150、7170、LPIA−A700、S500他多数の自動分析機が市販されている。これらの分析機は、抗体または抗原を固定化させたラテックスの免疫血清学的凝集反応による反応系の吸光強度、散乱光強度等の光学的特性の変化を測定することによって被測定物質を定量的に検出するものであり、これらの自動分析機の多くが、検出光の波長を660nmに設定することができる。
【0045】
検出光の波長を660nmに設定することができる自動分析機を用いて免疫反応を検出する場合、660nm近傍に最大吸収を有する赤色ラテックス粒子を使用することが好ましい。660nmの波長においては、赤色ラテックス粒子の吸収は無着色粒子の吸収の約2倍以上であるため、赤色ラテックス粒子の使用は、無着色粒子の粒径を2倍大きくした場合と同等の光吸収効果が期待できる。
【0046】
着色粒子は例えば、特開2004−143218号公報、特開2004−184295号公報、特開平4−363331号公報、特公平6−034014号公報、特許第3637692号に開示された方法により調製することができる。
【0047】
1.1.4.着色粒子と無着色粒子の平均粒径の比
本実施形態に係る混合粒子において、無着色粒子の平均粒径に対する着色粒子の平均粒径(無着色粒子の平均粒径/着色粒子の平均粒径)は0.2−5であることが好ましく、0.7−1.3であることがより好ましい。上記平均粒径の比が0.2−5であることにより、粒径の選択の幅が広く、粒子が沈降しにくいため、保存安定性に優れている。
【0048】
本実施形態に係る混合粒子において、着色粒子の平均粒径と、無着色粒子の平均粒径とを等しくすることができる。この場合、着色粒子の持つ特定波長光の吸収増加分が実質的に大粒子の役割を果たす。この場合は、大・小2粒子混合系から来る諸問題を自然にと解決される。
【0049】
上記平均粒径の比が0.2−5の範囲外である場合、一般に用いられている大粒子小粒子併用系と近い混合形態になり、大粒子小粒子併用系において生じる諸問題と同様の問題(例えば、大粒子の沈降による分散性の低下や、大粒子および小粒子の粒径の選択範囲が狭くなること)が生じる欠点がある。
【0050】
本実施形態に係る混合粒子において、粒子の表面に抗体または抗原を固定化する前に着色粒子と無着色粒子とを混合してもよいし、あるいは、着色粒子および無着色粒子各々の表面に抗体または抗原を固定化してから両粒子を混合してもよい。粒子の免疫反応性を重視する用途においては、抗体または抗原の量を調製しやすい点で、各々の粒子の表面に抗体または抗原を固定化してから両粒子を混合するのが好ましい。
【0051】
製造コストを重視する場合に、一工程で固定化を完了したい場合は、着色粒子と無着色粒子とを混合してから抗体または抗原を固定化してもよい。固定化の方法は用途に応じて選択することができる。
【0052】
無着色粒子の表面状態と着色粒子の表面状態とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、着色粒子および無着色粒子の一方に物理吸着により抗体または抗原を固定化し、もう一方に化学結合により抗体または抗原を固定化してもよい。実際の診断用途に応じて適切に選択されるこれらの様式はすべて本発明の範疇に含まれる。
【0053】
2.標的物質の検出方法
本実施形態に係る標的物質の検出方法は、所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、平均粒径が0.03−1μmである、着色粒子および無着色粒子を含む混合粒子分散液に検体を接触させる工程、および前記接触させる工程により生じた前記混合粒子の凝集を光学的に検出する工程を含む。
【0054】
本実施形態に係る標的物質の検出方法によれば、免疫反応に基づく粒子の凝集を光学的に検出することができる。
【0055】
一般的な着色粒子の診断方法においては、クロマトグラフのような粒子と検体とをろ紙上に展開し、免疫反応を目視で判定している。この場合、目視判定しやすいように、着色粒子が一般に使用されている。
【0056】
これに対して、本実施形態に係る標的物質の検出方法においては、着色粒子および無着色粒子を含む混合粒子分散液に検体を接触させる工程、および前記接触させる工程により生じた前記混合粒子の凝集を光学的に検出する工程を含むことにより、光学的に最大の吸光度変化を得ることができるため、高感度でかつ広範囲の測定が可能になる。
【0057】
この場合、混合粒子の凝集を波長400−900nmの光で検出するのが好ましい。ここで、波長400nm未満の光を用いて検出を行うと、粒子による吸光度のベースラインが高くなり、有限な測定範囲がベースラインとして無駄に使用され、十分な測定範囲が得られない場合がある。一方、波長900nmを超える光を用いて検出を行うと、ラテックス凝集による吸光度変化が鈍くなり、高感度検出を行うことができない場合がある。
【0058】
波長400−900nmの光を用いて検出を行うことができる多くの装置が市販されている。波長400−900nmの光を用いて検出を行う装置は信頼性が高く、コストも低いため、好ましい。
【0059】
2.1.抗原または抗体の固定化
着色粒子および無着色粒子の表面に抗原または抗体を固定化する工程は特に限定されないが、例えば、蛋白質の疎水部分と粒子表面のポリマー部に存在する疎水性部位との物理吸着により達成してもよいし、あるいは、抗原または抗体中の反応性基(限定されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基)と、抗原または抗体と反応しうる基との反応による化学結合により達成してもよい。化学結合により着色粒子および無着色粒子の表面に抗原または抗体を固定化する場合、使用する反応基にあわせて適切な触媒、カップリング剤を添加してもよい。例えば、カルボキシル基とアミノ基との反応においては、水溶性カルボジイミド、ハイドロサクシイミドなどを用いてもよい。
【0060】
物理吸着により抗原または抗体を固定化する方法と、化学結合により抗原または抗体を固定化する方法とは、実際の用途に応じて選択することができる。
【0061】
着色粒子および無着色粒子の表面に固定化する抗原または抗体は、標的物質と特異的に結合する物質である。
【0062】
抗原または抗体としては、例えば、C反応性蛋白抗体(抗CRP抗体)、B型肝炎表面抗原(HBs抗原)、抗HBs抗体、人絨毛性ゴナドトロピン(HCG抗体)、β2マイクログロブリン、抗HCG抗体、ヒトフィブリノーゲン、フェリチン、イムノグロブリンG、リウマチ因子(RA)、α−フェトプロテイン(AFP)、マイコプラズマ抗原、マイコプラズマ抗原、エストロゲン、抗エストロゲン抗体等の免疫学的反応性を有する物質が挙げられる。
【0063】
また、抗体としては、免疫グロブリン分子自体の他、例えば、F(ab’)2のような免疫グロブリン分子の断片であってもよい。
【0064】
2.2.標的物質
標的物質としては、例えば、蛋白質、各種抗原または抗体、核酸、核蛋白質、エストロゲン脂質、レセプター、酵素等が挙げられる。酵素としては、例えば、グリコースイソメラーゼ、グリコースオキシターゼ、α−アミラーゼ、パパイン、アミノアシラーゼなどが挙げられる。
【0065】
その他の標的物質としては、例えば、胎児肺細胞、腎細胞、繊維芽細胞等の育成に固体表面を必要とする細胞、DNA,RNAのような核酸またはこれらの一部または断片、核蛋白があげられるが、目的に応じて、これらの物質を修飾したり、その一部に色相、酵素、蛍光体などの標識物質を導入したりすることができる。
【0066】
抗原または抗体を固定化した着色粒子および無着色粒子を、目的反応系に適する緩衝液に分散し、検体と接触させ、免疫反応(抗原抗体反応)による粒子凝集を検出することにより、目的の診断を行うことができる。この場合の検体は例えば、血清、血漿、唾液、粘膜、尿、糞など生体から採集できるものであってもよい。
【0067】
3.標的物質の検出試薬
本発明の一実施形態に係る標的物質の検出試薬は、上記混合粒子を含む。本実施形態に係る標的物質の検出試薬は、適当な検体希釈液で希釈されてもよい。上記検体希釈液としては、pH5.0−9.0の緩衝液であれば特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられる。
【0068】
本実施形態に係る標的物質の検出試薬は、例えば、測定感度の向上や、抗原抗体反応の促進のために種々の増感剤を用いてもよい。上記増感剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキル化多糖類;プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0069】
本実施形態に係る標的物質の検出試薬は、検体中に存在する他の物質により起こる非特異的凝集反応を抑制するため、または、試薬の安定性を高めるために、アルブミン(牛血清アルブミン、卵性アルブミン)、カゼイン、ブロックエース、ゼラチン等の蛋白質、蛋白質分解物、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、界面活性剤等を含有してもよい。特に、界面活性剤として抗体にダメージを与えないノニオン系界面活性剤、または蛋白質酵素消化促進剤として市販品のRapigest SF(Waters社)などが好ましい。Rapigest SFの使用により、酵素消化促進のみならず、抗体・抗原反応効率を高め、かつ、非特異反応を抑える効果が得られる。この他に、BSAと同様の機能を有する合成ポリマー(特にエチレングリコール単位の繰り返し構造単位を有する合成ポリマーなど)を使用してもよい。これらの添加剤の添加濃度は、通常0.01−10%である。
【0070】
本実施形態に係る標的物質の検出試薬を用いた免疫診断測定においては、従来の濁度を計測する検査機を用いることができる。ラテックス凝集を自動的に追跡できる装置としては、散乱光強度、透過光強度、吸光度等を検出できる光学機器が挙げられる。上記凝集の度合いを光学的に測定する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、凝集の形成を濁度の増加としてとらえる比濁法、凝集の形成を粒度分布または平均粒径の変化としてとらえる方法、凝集の形成による前方散乱光の変化を積分球を用いて測定し、透過光強度との比を比較する積分球濁度法等が挙げられる。上記の測定法においては、異なる時点で少なくとも2つの測定値を得、これらの時点間における測定値の増加分、すなわち、増加速度に基づき凝集の程度を求める速度試験(レートアッセイ)、および、通常は反応の終点と考えられるある時点で1つの測定値を得、この測定値に基づき凝集の程度を求める終点試験(エンドポイントアッセイ)を利用できるが、測定の簡便性、迅速性の点から、比濁法による速度試験が好ましい。
【0071】
本実施形態に係る標的物質の検出試薬を用いた免疫診断測定に適する臨床検査自動機としては、例えば、日立7070、7150、7170、LPIA−A700、S500などの市販の自動分析機が挙げられる。
【0072】
本実施形態に係る標的物質の検出試薬によれば、上記混合粒子を含有することにより、濁度または吸光度の計測において、検量線の比例領域が広い。
【0073】
また、本実施形態に係る標的物質の検出試薬は長期間保存しても、上記混合粒子を再分散させずに、そのまま使用できる。具体的には、実際の臨床診断において、自動測定器の試薬保管庫に試薬を設置してから長期間経過した後であっても、粒子を再分散する必要がない。これにより、臨床診断現場のメンテナンスの手間を省くことができ、結果的にコスト削減を図ることができる。また、本実施形態に係る標的物質の検出試薬中の粒子の分散性が良好であるため、再現性のよい評価結果が得られ、再検率を低下させることができる。
【0074】
4.実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、%および部は、重量基準である。
【0075】
4.1.実施例1
4.1.1.無着色粒子の調製
2Lの攪拌機つきガラスフラスコに、イオン交換水1800ml、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1g(水中濃度55ppm)、カルボン酸モノマーとしてアクリル酸1g、およびスチレンモノマー200gを入れ、120rpmで攪拌しながら窒素置換をして80℃に昇温した。80℃に達した時点で、開始剤(3%過硫酸カリウム水溶液16g)を添加し、80℃で5時間の重合を行い、無着色粒子(粒子A白)を得た。
【0076】
重合開始から5時間後に固形分濃度を測定して重合転化率を測定したところ、重合転化率98.5%であり、重合液は乳無着色であった。
【0077】
また、カルボン酸モノマー、開始剤、および乳化剤の濃度を表1のように変量した以外は、上述した方法と同様の方法により、表1に示す無着色粒子(粒子B−F白)を得た。
【0078】
上記工程で得られた粒子A−F白の粒径を透過型電子顕微鏡(日本電子社製)JEM−2010F(型名)で計測した。粒径参照標準は、回折格子レプリカ(回折格子:1mm/2160本型、ボシュロム社製)を使用した。また、表面負荷電量を「ポテンショグラフ794basic型」(メトラー社製)により測定した。
【0079】
各粒子を調製するために使用したモノマー、重合開始剤および乳化剤の組成および各粒子の物性を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
4.1.2.着色粒子の調製
赤色の油溶性染料「ソルベントレッド27」(20℃におけるトルエンへの溶解度8.5g/100ml)の濃度2.5質量%のトルエン溶液よりなる染料溶液1質量部に、濃度0.25質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液5質量部を加え、超音波分散機「US300型」(日本精機製作所社製)を用いて染料溶液を分散させて、赤色染料エマルジョンを調製した。
【0082】
また、青色の油溶性染料「ソルベントブルー111」(20℃におけるトルエンへの溶解度6.1g/100ml)を用いて上記と同様の操作により、青色染料エマルジョンを調製した。
【0083】
次に、赤色染料エマルジョンの42gを、固形分10質量%の粒子A白の分散液200ml相当と混合し、100rpmで室温にて8時間穏やかに攪拌した。その後、水蒸気蒸留によってトルエンを除去し、蒸留水を用いて遠心沈降で5回洗浄することにより、溶解性ドデシル硫酸ナトリウムおよび過剰の染料を除去して、赤で染色された着色粒子A(以下、「粒子A赤」という。)を調製した。また、青色染料エマルジョンを用いて同様の操作を行い、青で染色された着色粒子A(以下、「粒子A青」という。)を調製した。
【0084】
また、同様の操作を粒子B−F白についても実施して、赤で染色された着色粒子B−F赤および青で染色された着色粒子B−F青を調製した。
【0085】
これらの操作によって得られた各粒子の粒径および表面負荷電を、上記4.1.1.に記載された方法にて測定した。また、色彩値を色彩色差計「CR−221型」(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定した。得られた粒子の物性および色彩値を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
4.1.3.ラテックス粒子の調製
上記4.1.1.で調製された無着色粒子と、上記4.1.2.で調製された着色粒子とを表3に示す混合比で調製し、試験例1−5に係るラテックス粒子を得た。得られたラテックス粒子の物性を表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
4.1.4.化学結合による、ラテックス粒子への抗体の固定化
上記表3に示す試験例1−5に係るラテックス粒子をそれぞれ、1/15Mリン酸塩緩衝液(pH7.2)10mlおよび生理食塩水10mlの混合液(以下PBSと記す)に、該粒子の濃度が1質量%になるように分散させた。
【0090】
次に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(同仁化学)を、最終濃度が0.05%となるように添加した。これらの粒子分散液に抗CRP(C反応性蛋白)抗体(ウサギ)の1mg/ml液をそれぞれ等量加え、56℃で3時間ゆっくり回転しながら、抗体(抗CRP抗体)を粒子表面に固定化した。その後、それぞれの粒子分散液に1%BSA/0.05%Rapigest SF 0.5mlを加え、室温で10時間ゆっくり回転攪拌した。これらの操作後、粒子分散液を遠心管に移し替え、10,000rpmにて20分間遠心分離して、粒子を沈殿として回収し、未反応の抗体およびWSC等が含まれる上澄を除去した。続いて、pH7.4の50mMのトリス緩衝液に該粒子を再懸濁させ、超音波で10分間分散させた。この操作を2回繰り返し、最終的に粒子を超音波分散させ、0.8μmディスクフィルターに通してから、10mM PBS緩衝液/0.02%BSA/0.01%ポリビニルピロリドン(分子量36万)溶液で粒子固形分が0.05%となるように調製し、それぞれの粒子を用いて抗CRP抗体固定化ラテックス分散液を得た。
【0091】
これらのラテックス分散液につき、CRP抗原標準液を用いて検量線を作成して、ラテックス診断薬としての性能を評価した。
装置:日立 7020型自動分析装置
使用波長:570nm、または660nm、測定温度37℃
被検査物質(0−100mg/dlのCRP標準液):3μl
第1試薬(牛血清アルブミン0.1%を含むPBS):200μl
第2試薬(ラテックス分散液):200μl
【0092】
測定には、被検査物質、第1試薬、第2試薬を混合攪拌した後、50秒経過時と200秒経過時の濁度の差(変化量)を計測するレートアッセイ法にて検量線を作成した。化学結合により抗体が固定化されたラテックス粒子を表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
粒子B赤または粒子B青ならびに粒子C赤または粒子C青についても、上記粒子A赤または粒子A青を用いた場合と同様の操作を実施した。その結果、粒子B赤または粒子B青を用いたラテックス混合粒子ならびに粒子C赤または粒子C青を用いたラテックス混合粒子は、粒子A赤または粒子A青を用いたラテックス混合粒子と同様に、粒子B白のみまたは粒子C白のみを使用したラテックス粒子と比較して、少なくとも倍以上の低値感度が得られた。
【0095】
4.1.5.物理結合による、ラテックス粒子への抗体の固定化
表2に示す粒子D青および粒子D赤についても、上記4.1.3と同様の方法にて、試験例6−8に係るラテックス粒子をそれぞれ調製した。得られたラテックス粒子の物性を表5に示す。
【0096】
【表5】

【0097】
得られた粒子を1/15Mリン酸塩緩衝液(pH7.2)10mlと生理食塩水10mlの混合液(以下PBSと記す)に、粒子の濃度が1質量%になるように分散させた。次に、抗CRP抗体(ウサギ)の1mg/ml液をそれぞれ等量加え、56℃で3時間ゆっくり回転しながら、抗体(抗CRP抗体)を粒子表面に固定化した。その後、それぞれの粒子分散液に1%BSA/0.05%Rapigest SF 0.5mlを加え、室温で10時間ゆっくり回転攪拌した。これらの操作後、粒子分散液を遠心管に移し替え、10,000rpmにて20分間遠心分離し、粒子を沈殿として回収し、未反応の抗体およびWSC等が含まれる上澄を除去した。続いて、pH7.4の50mMのトリス緩衝液に該粒子を再懸濁させ、超音波で10分間分散させた。この操作を2回繰り返し、最終的に粒子を超音波分散させ、0.8μmディスクフィルターに通してから、10mM PBS緩衝液/0.02%BSA/0.01%ポリビニルピロリドン(分子量36万)溶液において粒子固形分が0.05%となるように調製することにより、物理結合により固定化された抗CRP抗体固定化ラテックス粒子の分散液を得た。
【0098】
これらのラテックス粒子の分散液につき、CRP抗原標準液を用いて検量線を作成して、免疫診断用試薬としての性能を評価した。その結果を表6に示す。
【0099】
また、粒子E赤または粒子E青ならびに粒子F赤または粒子F青についても同様に行った結果、表6に示す結果と同様の結果が得られた。
【0100】
【表6】

【0101】
4.1.6.抗体固定化粒子の調製
試験例1のラテックス粒子(無着色:表1の粒子A白)および試験例4のラテックス混合粒子(赤色)についてそれぞれ、上記4.1.4に記載された方法によって抗体を固定化して、抗体固定化ラテックス粒子を調製した。
【0102】
次に、上記各粒子の1質量%分散液を1:1で混合して、試験例9に係るラテックス混合粒子(粒子A白:粒子A赤=9:1)を得た。試験例9に係るラテックス混合粒子について、上記4.1.4に記載された方法と同様の方法にて評価を行い、表7に示す結果を得た。
【0103】
【表7】

【0104】
表1−表7に示すように、本実施例に係るラテックス混合粒子によれば、所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、平均粒径が0.03−1μmである、着色粒子および無着色粒子を含有することにより、高感度で測定範囲が広く、かつ、長期保存中の粒子の凝集が少ないことが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色粒子および無着色粒子を含む混合粒子分散液に検体を接触させる工程、および
前記接触させる工程により生じた前記混合粒子の凝集を光学的に検出する工程を含み、
前記着色粒子および前記無着色粒子はそれぞれ、所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、かつ、平均粒径が0.03−1μmである、標的物質の検出方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記検出する工程において、前記混合粒子の凝集を波長400−900nmの光で検出する、標的物質の検出方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記混合粒子に占める前記着色粒子の含有量が3−95質量%である、標的物質の検出方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記着色粒子の粒径の変動係数および前記無着色粒子の粒径の変動係数がそれぞれ20%以下である、標的物質の検出方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記無着色粒子の平均粒径に対する前記着色粒子の平均粒径の比が0.2−5である、標的物質の検出方法。
【請求項6】
所定の標的物質に対する抗体または抗原が固定化され、平均粒径が0.03−1μmである、着色粒子および無着色粒子を含有する、混合粒子。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の標的物質の検出方法に使用される、請求項6に記載の混合粒子。
【請求項8】
請求項6または7に記載の混合粒子を含有する、標的物質の検出試薬。

【公開番号】特開2008−298505(P2008−298505A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143016(P2007−143016)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】