説明

標的物質捕捉分子

【課題】生産性を改善し、かつ標的物質への結合特性が向上した標的物質捕捉分子を提供すること。
【解決手段】標的物質の異なる部位のそれぞれに特異的に結合する2以上のドメインを有する捕捉分子を、前記2以上のドメインが、(1)前記標的物質との結合部位にハイパーバリアブルループ構造を有する第一のドメイン、及び(2)前記標的物質との結合部位にハイパーバリアブルループ構造を持たない第二のドメイン、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質の単離や検出に有用な標的物質捕捉分子、それを用いた標的物質検出方法及びそのためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
標的物質と特異的に結合する生体高分子、または生体分子を標的物質とする低分子化合物は、標的物質と特異的に結合し生体内に有効な生理活性を発揮する医薬品候補物質としての利用が期待されている。また、前記と同様な標的物質に対して特異的な結合能を利用したバイオセンサの標的物質捕捉分子として、これら化合物の利用も期待されている。
【0003】
上記のような生体高分子の一例として抗体を挙げることができる。抗体は、動物が自らの体液中に侵入する様々な異物に対して、その異物表面の種々の構造を認識して特異的に結合させ、その免疫系により無毒化させる自己防御機構の中で機能するタンパク質の一つである。その機構を効果的に発揮する為に、抗体は分子多様性(様様な異物に結合する為の違ったアミノ酸配列を持つ抗体数)を有しており、その抗体数は、動物個体あたり107乃至108種と見積もられている。このような抗原認識性の特異性及び高い結合能、また分子多様性が前記医薬候補物質または標的物質捕捉分子として、これらの化合物の利用が期待される所以となっている。 一般的に、抗体は、重鎖と呼ばれる約50kDaのポリペプチド鎖と、軽鎖と呼ばれる約25kDaのポリペプチド鎖との各二本ずつから形成される約150kDaのタンパク質である。
【0004】
重鎖及び軽鎖はそれぞれ可変領域と定常領域を有している。軽鎖は、一つの可変領域(軽鎖可変領域:VL)および一つの定常領域(CL)の二ドメインから構成されるポリペプチド鎖である。一方、重鎖は一つの可変領域(重鎖可変領域:VH)と三つの定常領域(CH1乃至CH3)の四ドメインから構成されるポリペプチド鎖である。各々のドメインは、アミノ酸約110個からなり筒状の構造をとり、逆平行の向きに配置されたβ−シート群による層状構造が形成され、この層状構造をひとつのSS結合により結合し、非常に安定した構造体を形成している。
【0005】
抗体分子群の特徴である多様な抗原種に対する結合多様性は、可変領域(VHまたはVL)がそれぞれ有する三つの相補的決定領域(complementarity determining region:CDR)と呼ばれるループ構造を取ったアミノ酸配列の多様性に起因する。CDRは、超可変領域とも呼ばれ、VHまたはVLと各ドメインにそれぞれ3つある。これらCDRは、VH、VLドメイン間で比較的に共通のアミノ酸配列を持つフレームワークと呼ばれる領域により分離されて抗体分子表面に配置される。そして、結合対象である標的物質の認識部位(抗原決定部位:エピトープ)の官能基の空間配置を認識することにより、より高度な特異的な分子認識を可能としている。このCDRにより抗体のハイパーバリアブルループ構造が形成される。
【0006】
上記のような抗体作製には、目的の抗原物質をアジュバンドと共に被免疫動物(ウサギ、ヤギ、マウス等)に一定間隔で免疫し、その血清中に存在する抗体群を回収する方法がある。その他、被免疫動物から抗体を産出するB細胞を取得、株化した腫瘍細胞と融合したハイブリドーマ細胞に抗体を産出させ、精製することにより抗体を作製する方法等がある。
【0007】
前者のようにして得られた抗体は、免疫に用いた抗原物質の表面には様々な構造を認識する複数の抗体の混合物である。このようにひとつの抗原に結合する複数の抗体を含む血清はポリクローナル抗体と呼ばれる。後者はモノクローナル抗体と呼ばれる。これは、抗体を産生するB細胞は、一種類の抗体のみを産出することができ、故に上記のようなハイブリドーマ細胞の一細胞から産出される抗体は、一種類の単一抗体である為である。
【0008】
いずれの方法においても、動物に対して標的物質である抗原を免疫しなければならず、更には目的である標的物質を捕捉する捕捉分子としての抗体が得れるか否かは、抗体または血清を取得し、それらの抗体価(結合力)を確認するまでわからない。つまり、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れにおいても、得られる抗体の特性は被免疫動物の免疫システムに依存するものである。また、標的物質と結合特性を示すモノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を得ることができたとしても、得られる抗体の結合特性を改善する為の遺伝子工学的な手段で効率的な方法は未だ見出されていないのが現状である。また、一般に、被免疫動物の生体構成要素に対して類似構造を持つ糖、脂質に代表される標的物質に対しては、これらが非自己物質であったとしてもその個体の生体防御として機能する免疫システム上で特異的な結合をする抗体の産生は期待できない。
【0009】
一方で、抗原に対する抗体の結合部であるVH、VLの少なくとも一部含む抗体断片(例えば、Fab、scFv:single chain Fv)を用い、コンビナトリアルな方法により標的物質に結合する捕捉分子を得る方法が開示されている。一例として、米国特許第5969108号明細書においては、上記のような抗体断片をファージ、特に繊維状ファージのコートタンパク質に融合し、表面に提示したファージ抗体として利用する技術が開示されている。また、抗体をコートタンパク質表面に提示したファージに関しては、国際公開第88/06630号パンフレット、国際公開第9215606号パンフレットにも、抗体断片クローンを選択する方法でこのようなファージが使用されることが開示されている。これらの方法によれば、従来の免疫による抗体取得方法に比べ、簡便に標的物質に結合するクローンを得ることが可能である。抗体を断片化し、低分子量化することにより、従来動物細胞でしか発現することが難しいと言われていた抗体生産方法を改良することが可能となった。
【0010】
上記の方法に代表される抗体提示方法により、まず、ある選択条件圧にて標的物質に結合するリード抗体断片を取得し、遺伝子工学的な手法により変異を加える。次いで、結合実験/選択を繰り返すことで標的物質に対してより結合特性の高い抗体断片を取得することが可能となっている。また、これらの特徴として、標的物質に結合する抗体の選択において生体内の複雑な免疫システムを使用しないため、標的物質が自己/非自己であることにとらわれない。更には、抗体断片のCDR部をコードする遺伝子部を化学合成で作製することによりその遺伝子ライブラリーサイズを拡大することも可能である。
【0011】
また、J.Mol.Biol.、1995、246、367-373には、標的物質であるHELに対する結合特性を向上させるための一本鎖scFvダイマーの利用について開示されている。このダイマーは、HELに結合するscFv(D1.3及びHyHEL10由来)を遺伝子工学的に融合したものであり、同文献は、このダイマー化によりHELに対する結合性を向上させることを開示している。また、国際公開第04/3019号パンフレットにおいても同様に同一の標的物質分子表面上の異なる二つのエピトープを認識する標的物質捕捉分子に関する技術が示唆されているが具体的な技術例については触れられていない。
【0012】
しかしながら、上記のようなコンビナトリアルな方法及び遺伝子工学的な手法を用いても抗体及び抗体分子においても糖、脂質のような物質に対して結合特性の高いクローンを得ることは難しいのが現状である。
【0013】
一方、生体内の脂質の挙動やタンパク質の翻訳後修飾が生物学的に大きな意味があることが示唆されており、糖や脂質などのような物質に対して結合性の高い捕捉分子は、生化学、医療分野のみならず、幅広い分野で応用が期待されている。
【0014】
近年においては、抗体もしくは抗体断片以外のオリゴペプチドやタンパク質分子を用いて捕捉分子を創製とする試みが行われている。新しい捕捉分子候補となるタンパク質は、安定な分子構造を利用して(J.Mol.Recognit.,2000,13,167-187)、遺伝子工学的に分子多様性を作り出した分子ライブラリーとして、コンビナトリアルな方法により選択できることが知られている。これらの多くの分子には、それら分子が持つβ−シート構造を利用し、分子全体の構造安定化への寄与が少ないと考えられる二以上のストランド間のループ構造を遺伝子工学的に操作することにより、多様性が付加されている。この点は、上記抗体の多様性創出と同じである。また前記複数のループ部分において標的物質を認識するその機構においても抗体と類似していると言える。その代表的な分子を挙げると次のものがある。即ち、anticolin(Review in Molecular Biotechnology、74:p257、2001)、フィブロネクチン タイプIIIドメイン(J.Mol.Biol、284:p1141、1998)等である。
【0015】
最近、抗体に代表されるβ−シート構造体の標的物質認識と異なる分子認識を有すると考えられるα−へリックスを基本構造とした分子が提案されている。この提案は、Nature Biotechnol. 15: 772777、Nature Biotecnol,2004,22,575-582、国際公開第0220565号パンフレットに見られる。これらには、α−へリックスの溶媒接触面(接液面、あるいは外表面ともいう)に露出したアミノ酸残基、またはα−へリックス間を繋ぐペプチド部分のアミノ酸を介して標的物質と結合することを示唆する結果が開示されている。
【0016】
また、抗体と同じくβ−シート構造を有するタンパク質においても抗体のようなループ構造による分子認識と異なり、β−シート構造を形成するβ−ストランドの側鎖が形成する凹部構造に結合するものが知られている。すなわち、Biochem.J.,2004,382,769-781にかかる結合機能を有するものが開示されている。このようなものの例として、Carbohydrate Binding Moduleに分類されるCBM4−2がある。 上記技術に示されるように抗体の分子認識と異なる分子認識により、従来抗体が認識し難い物質を認識できる可能性が示唆されている。
【特許文献1】米国特許第5969108号明細書
【特許文献2】国際公開第88/06630号パンフレット
【特許文献3】国際公開第92/15606号パンフレット
【特許文献4】国際公開第04/3019号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/20565号パンフレット
【非特許文献1】J. Mol. Biol., 1995, 246, 367-373
【非特許文献2】J. Mol. Recognit., 2000, 13, 167-187
【非特許文献3】Review in Molecular Biotechnology, 74: p257, 2001
【非特許文献4】J.Mol.Biol., 284: p1141, 1998
【非特許文献5】Nature Biotechnol. 15: 772-777, 1997
【非特許文献6】Nature Biotecnol, 2004, 22, 575-582
【非特許文献7】Biochem. J., 2004, 382, 769-781
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記に示されるような抗体代替分子の標的物質に対する結合特性は、抗体−抗原複合体を形成する際の抗原の抗体に対する結合特性に比べて一般的に低い。例えば、Lipocalin、Fibronectinにおいては、対標的物質に対するKDが数乃至数十nMのものが開示されおり、前記CBMに関してはKDが数乃至数十μMであるのが一般的である。このような結合特性の程度では、これらの抗体代替分子を利用した標的物質捕捉用の製品に目的とする十分な捕捉機能を得ることができないことが予想される。例えば、センサ応用を考えた場合、センサ感度という点においてタンパク質間の非特異的な相互作用に起因するSN比が大きくなることが予想される。上記のような抗体の結合特異性が低いような物質に対する新しい捕捉分子であってもその結合特異性は製品応用を考える上では未だ十分といえず、技術的な課題が残る。
【0018】
本発明の目的は、生産性を改善し、かつ標的物質への結合特性が向上した標的物質捕捉分子を提供することにある。本発明においては、抗体分子を用いたドメイン、または抗体と同様の結合様式をとる標的物質と結合するドメインに、抗体と異なる様式で標的物質と結合するドメインを組み合わせることを用いる。本発明の他の目的は、上記の異なる様式で標的物質に結合するドメインの組み合わせを有する捕捉分子を用いた標的物質の検出方法及びそのためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の標的物質捕捉分子は、
標的物質の異なる部位のそれぞれに特異的に結合する2以上のドメインを有する捕捉分子において、
前記2以上のドメインが、
(1)前記標的物質との結合部位にハイパーバリアブルループ構造を有する第一のドメイン、及び
(2)前記標的物質との結合部位にハイパーバリアブルループ構造を持たない第二のドメイン
からなることを特徴とする捕捉分子である。 本発明の標的物質の検出方法は、上記構成の捕捉分子と試料を反応させる工程と、前記試料に標的物質が含まれている場合における該標的物質と前記捕捉分子との結合を検出する工程と、を有することを特徴とする標的物質の検出方法である。
【0020】
本発明の標的物質の検出装置は、標的物質と結合する前記捕捉分子と、前記捕捉分子を少なくとも表面の一部に設けた検出用素子と、前記素子を保持するための保持手段と、該素子による前記標的物質を検出するための検出手段と、を有することを特徴とする標的物質の検出装置である。
【0021】
本発明の標的物質検出用のキットは、上記構成の捕捉分子と、この捕捉分子と標的物質との結合を検出するための試薬と、を有することを特徴とする標的物質検出用のキットである。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、標的物質上の異なる部位(エピトープ)を特異的に認識し結合する二以上のドメインを、標的物質との結合部位がハイパーバリアブルループ構造をとる第一のドメインと、ハイパーバリアブルループ構造をとらない第二のドメインから構成する。これにより標的物質表面上の一つの抗原決定部位(エピトープ)にて結合する抗体もしくは抗体断片よりも高い親和性を標的物質捕捉分子に付与することができる。特に、ハイパーバリアブルループ構造をとらないドメインを用いたことにより、抗体もしくは抗体断片では特異的な結合をし難いような表面アミノ酸残基部との結合も可能となる。そして、捕捉分子に、抗体や抗体断片のみでは得られない標的物質との結合特性(avidity)を得ることが可能となる。 さらに、本発明の捕捉分子を、一つのポリペプチド鎖で構成した場合には、各種溶液中での分子安定性が向上を図ることができる。また、本発明の捕捉分子を二以上の異なるポリペプチド鎖から構成した場合には、個々のポリペプチド鎖の生産及び精製工程において収率の向上を図ることができる。また、ハイパーバリアブルループ構造をとるドメインとして重鎖抗体可変領域を選択することにより分子安定性の更なる向上を図ることができる。また、ハイパーバリアブルループ構造をとらないドメインをアンキリン構造とすることにより分子認識機構の更なる多様化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明の捕捉分子は、標的物質との結合部位として、少なくとも第一のドメインと、第二のドメインを有する。第一のドメインは、標的物質の結合部位(第一のエピトープ)と特異的に結合するハイパーバリアブルループ構造を有する。このハイパーバリアブルループ構造を有する結合部位は、標的物質の一部を特異的に認識してそこに結合する。一方、第二のドメインは上記のようなハイパーバリアブルループ構造以外の構造によって標的物質の第二のエピトープにて特異的に結合する。第二のドメインの標的物質との結合部位も、標的物質の一部(第二のドメインによる認識部位)を特異的に認識し、そこに結合する。また、これらの第一及び第二のドメインからなる複数のドメインのそれぞれにより認識される標的物質の部位(認識部位)は異なり、標的物質と捕捉分子とが結合した複合体では、各ドメインが異なる部位で標的物質と結合した状態が得られる。
【0024】
以下、本発明の捕捉分子の構成成分として使用できる各物質やその製造方法等について更に説明する。
【0025】
(第一のドメイン)
第一のドメインは、標的物質の第一のエピトープとの結合部位にハイパーバリアブルループ構造を有する。
(ループ構造)
ループ構造は、一般的に、ポリペプチド鎖の離れた位置にある複数のループ形成部位が、ポリペプチド鎖が二次構造をとったときに近接して立体的に配置されることで、標的物質の標的部位を特異的に認識してそこに結合できる部分を形成している状態の構造をいう。このようなループ構造をもつものとしてはkunitz構造が挙げられる。ポリペプチド鎖中の適切な位置にCysをニ導入することにより酸化環境下においてループ構造を形成することも可能である。
【0026】
(ハイパーバリアブルループ構造)
ハイパーバリアブルループ構造は、一般的に、以下の状態の構造を意味する。
【0027】
即ち、ポリペプチド鎖の離れた位置にある複数のループ形成部位が、ポリペプチド鎖が二次構造をとったときに近接して立体的に配置されることで、標的物質の標的部位を特異的に認識してそこに結合できる部分を形成した状態の構造をいう。
【0028】
このような、ハイパーバリアブルループ構造としては、抗体のCDR領域を含む部分から形成されるハイパーバリアブルループ構造(3個のループの複合構造)、フィブロネクチンIII(2〜3個のループの複合構造)、を挙げることができる。また、リポカリン(4個のループの複合構造)等を挙げることができる。抗体のCDR領域を含む部分から形成されるハイパーバリアブルループ構造は、イムノグロブリンスパーファミリーに分類されるタンパク質から得ることができる。
【0029】
抗体のVH、VLの各ドメインは二つの逆並行のβ−シートのサンドイッチ構造からなる共通のフレークワークであり、β−シートサンドイッチ構造末端に位置するループ構造がその認識部位、CDRとして機能する。抗体の各ドメインには3つのループが存在し、ループを形成するアミノ酸残基の特性、残基数、そしてその立体的な配置が各抗体ドメインの標的物質に対する結合性を決定するものである。このループ構造のアミノ酸配列の多様性が、抗体分子群の結合多様性となる。この領域を抗体におけるハイパーバリアブルループ構造という。
【0030】
(イムノグロブリンスーパーファミリー)
イムノグロブリンスーパーファミリーは、抗体、およびこれと構造上、機能上の類似したタンパク質を指すものであり、魚類から哺乳類の体液中に存在し、リンパ系細胞により産出されるものである。第一のドメインの有するハイパーバリアブルループ構造としては、イムノグロブリンスーパーファミリー抗体由来のものを用いることがより好ましい。抗体断片を扱う遺伝子工学的技術は長年に亘り検討が重ねられており、所望の捕捉分子を得ることが比較的容易である。抗体断片とは、モノクローナル抗体の一部分の領域を意味する。
【0031】
本発明の抗体断片として具体的には、以下のものを挙げることができる。
【0032】
即ち、重鎖可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)からなる単ドメインdAb(single domain antibody)、VHとVLから構成されるFv(variable fragment of antibody)である。また、前記Fvを一本のポリペプチド鎖としたscFv(single chainFv)である。更にVHとVL間にジスルフィド結合を形成するような変異をVH、VLに導入し作製したdsFv(disulphide stabilised Fv)である。更に、VHと抗体定常領域1であるCH1からなるFd、Fab'、Fab等が挙げられる。
【0033】
「Fab'」とは、抗体を、タンパク分解酵素であるパパイン等で処理することにより得ることもできる断片である。抗体のヒンジ領域で2本の重鎖(H鎖)間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されて軽鎖(L鎖)、及び重鎖(H鎖)フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つのフラグメントが得られる。これら2つの相同な抗体フラグメントを各々Fab'という。本発明に用いられる抗体断片は、これらの中から標的物質への結合性捕捉分子としての生産性、安定性を鑑みて選択することが可能である。
【0034】
更には、第一のドメインとして、VH及びVLの何れかを単ドメイン抗体(dAb)として用いることも可能である。これらのVH及びVLは抗体が抗原と結合する結合ドメインである。VH、VLの各ドメインは二つの逆並行のβ−シートのサンドイッチ構造からなる共通のフレークワークである。
【0035】
第一のドメインに抗体または抗体断片に由来するハイパーバリアブルループ構造を用いる場合には、標的物質の有するエピトープを認識し、そこに結合し得るハイパーバリアブルループ構造が好適に利用できる。このハイパーバリアブルループ構造を得るためのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、免疫系を利用した方法などにより特定できる。更にこのアミノ酸配列の特定されたポリペプチド鎖に対して、標的物質の有するエピトープを認識してそこに結合する機能が損なわれない範囲、すなわちハイパーバリアブルループ構造が損なわれない範囲での修飾を加えたものを用いることもできる。
【0036】
(第一のドメインの好ましい態様)
本発明の捕捉分子の有する第一のドメインは、ハイパーバリアブル構造を有する。このハイパーバリアブル構造を有する構成は、標的物質の第一のエピトープに対する抗体の可変領域を少なくとも1つを用いて得ることができる。また、第一のドメインは、標的物質の第一のエピトープに対する抗体のハイパーバリアブル構造またはその一部の1以上のループ構造とすることもできる。なかでも、ハイパーバリアブルループ構造を結有するVHまたはVL単体の分子安定性が高いクローンであることが好ましい。ヒト抗体断片の場合、既に種々の研究により、フレームワークとよばれる比較的に共通な領域のアミノ酸配列でサブファミリー分類がされており、サブファミリー間において様々な特徴の違いが開示されている。
【0037】
それら知見を踏まえて、例えば、最も安定した分子種が多いとされるVH3等の安定なフレームワークのみからDNAライブラリー集合体の作製が可能である。そして安定な抗体可変領域フレームワークを有する抗体断片DNAライブラリーを作製し、CDR部をコードする遺伝子を化学合成し前記フレームワーク部に導入する手法も採用可能である。この手法は、天然に存在しないCDR配列を創造できる可能性もあり、ライブラリーのバラエティ拡大を考えると好ましい。また、分子不安定要素となる残基、例えば、VH/VL界面等分子表面に存在する疎水性アミノ酸残基等を改良することで安定性を向上させて用いることも可能である。前記単ドメイン構造は一般的に不安定であることが多いので、そのような場合にはPEG修飾等の化学修飾による安定化を施しても良い。更に、dAbとしては、重鎖抗体としてin vivoにおいても存在し、機能するラクダ重鎖抗体の可変領域VHH(J.Mol.Biol、311:p123、2001)や、Nurse sharkのイムノグロブリン様分子の可変領域IgNAR(Molecular Immunology,2001,38,313-326)であっても構わない。特に、ラクダ重鎖抗体可変領域であるVHHは分子安定性が高いことが知られており、生産/精製工程に安定に存在し、産業上において問題ない程度の収率が期待できる。このような重鎖抗体可変領域が示す分子安定性の要因のひとつは、重鎖/軽鎖からなる抗体の可変領域に存在する重鎖/軽鎖界面に露出する疎水性部分が減少していることが挙げられる。例えば、Biochemistry 2002,41,3628-3636において、ラクダ重鎖抗体可変領域は、加熱(80℃)後においても常温に冷却することによりその結合活性が70〜90%回復することが示されている。その一方で比較となるヒト抗体重鎖可変領域では同操作により凝集することが同文文献に開示されている。このように幾つかのラクダ重鎖抗体可変領域は非常に安定な分子構造を有することが推察される。また、ラクダ重鎖抗体断片の特徴の一つとして、3つのCDRのひとつであるCDR3を構成するアミノ酸が長いことが挙げられる。マウスH鎖CDR3の平均は約9アミノ酸、ヒトH鎖CDR3が約12アミノ酸であるのに対して、ラクダのそれは約18アミノ酸であることが知られている。ラクダH鎖CDR3は、軽鎖欠如によるバラエティの減少をアミノ酸残基増加により補うものであることが示唆されている。また、ラクダH鎖CDRは、前述の抗体の重鎖/軽鎖界面に相当するラクダ抗体部位を覆うことに疎水領域の接液面積を小さくすることで分子安定化にも寄与するものである。更に、長いCDR3により酵素活性中心にある谷間に結合する例や低分子化合物に対する結合も示唆されており、単体として抗体断片を捕捉分子とする場合、有用な候補となる。上記のようなラクダ重鎖抗体の安定構造を付与する為に、構造安定化にかかわるアミノ酸変異をマウス、ヒトの抗体断片に導入し、分子安定化を行っても構わない。また、所望の選択圧により選ばれたリードドメインを進化工学的な変異導入により所望の性能を改善することも可能である。このようなラクダ重鎖抗体可変領域の構造的な特徴を重鎖/軽鎖からなるマウス、ヒト抗体可変部領域に採用することも可能である。具体的には、前述したVH/VL界面への変異導入である。例えば、Val37Phe、Gly44Glu、Leu45Arg、Trp47Glyのいずれかの変異を導入することが挙げられる(数値はKabat Numbering、Sequence of Protein Immunological Interest、5th、edit、1991に記載)。
【0038】
(第二ドメイン)
第二ドメインは、先に説明したハイパーバリアブルループ構造以外の構造によって標的物質の第二のエピトープと結合する結合部位を有するものである。例えば、イムノグロブリンスーパーファミリーに分類されないオリゴペプチド、タンパク質分子から選択される標的物質結合ドメインであってもよい。標的物質の第二エピトープに結合しうる第二ドメインとしては、標的物質の第一のエピトープとは異なる部位に特異的に結合する既知の抗体代替候補分子群の中から標的物質に対する所望の結合性により選択して用いることが可能である。例えば、Journal of Immunological Method,2004,290,3-28において紹介されているものが採用できる。ここでいう結合性とは、標的物質との複合体形成時のKD等の指標で表される親和性のみならず、標的物質がタンパク質またはペプチドである場合ファミリーやバリアントを区別できる特異性をも含めている。このような結合結合性を本発明の標的物質捕捉分子に付与できる結合ドメインとしては、抗体可変領域の分子認識機構と異なる形態の分子認識機能を有する結合ドメインが挙げられる。そのような分子認識機構としては、分子内ジスルフィド結合などにより形成されるループ上のアミノ基酸残基を介したものやα−ヘリックスまたはβ−シート等のタンパク質が有する二次構造表面上の不連続領域に点在するアミノ酸残基を介したものが挙げられる。
【0039】
第二のドメインとしては、標的物質との結合特性に加えて、生産性、分子安定性を付与された分子種であることが好ましい。このような点を考慮に入れた場合、低分子量、フォールディングしやすさ、フォールディング後の堅牢さ等を兼ね揃えた構造体であることが好ましい。更には、前記構造を維持する為のscaffold部(基部あるいは足場部)と変異導入が可能な可変領域を有することで可変領域をコードする遺伝子群を多様化させることができる。これにより同構造タンパク質またはこれらをコードするDNAのライブラリーを構築することが可能となる。これらを用いることにより前述したようなコンビナトリアルな手法により標的物質に結合する結合種を選択することも可能である。
【0040】
上記条件を満たし、イムノグロブリンスーパーファミリ以外の結合ドメインとして好ましいものの例としては、以下を挙げることができる。
【0041】
即ち、α−ヘリックスからなる分子認識部位を有するプロテインA/Zドメイン、天然に存在するアンキリン、ロイシンリッチリピート、アルマジロ構造、テトラトリコペプチド構造、HEAT構造(J.Mol.Biol.、2001、309、1-18)である。更にこれらの基本構造をモチーフとした構造タンパク質、Zincフィンガー、knottin構造等が挙げられる。アンキリンやロイシンリッチリピートから構成される捕捉分子は、前述の引例などにより捕捉対しての構造とその機能について種々の解析が行われている。特に、アンキリンにおける標的相互作用残基は、主にβ−ヘアピンおよび第一のα−ヘリックスにおいて外面に露出した一部にあることが報告されている。これらの標的相互作用残基は、アンキリン基本構造の繰り返しにより形成される捕捉体としてのアンキリン分子と標的分子の相互作用の為に大きい接触表面を形成することが可能であることが示されている。このような結合様式は、捕捉分子及び標的分子間の相互作用に係わるアミノ酸残基と構造相補性が伴わなくても一方のその周辺アミノ残基を他方が覆うことによって表面安定化を促すことが開示されている。これによれば更なる相乗効果が期待できる。このような結合様式は、抗体/抗原による免疫複合体形成には見ることができず、従来の抗体との結合親和性が低い標的物質に対しても抗体以上の結合親和性を有することが期待できる点で好ましい。このような繰り返し構造からなる組換えタンパク質は分子安定性に関しても、その単位構造の繰り返し回数により、分子安定性を制御することが可能であることから分子設計という点で優れた材料と言える。
【0042】
また、アンキリン構造を有する組換えタンパク質は、一般的な大腸菌を宿主細胞とした培養において御、数十mg乃至数百mg/Lで生産されることから、生産性という点においても有用な組換えタンパク質と言える。
【0043】
更に、第二ドメインの標的物質との結合部位は、イムノグロブリンスーパーファミリと同様なβ−シート構造を有する構造体でβ−ストランド間のループ構造ではなくストランドを構成するアミノ酸側鎖が形成する"溝"部にて糖鎖分子認識するCBM等であってもよい。また、糖や脂質に結合することが知られているknottin構造ファミリーから選択される分子であっても良い。
【0044】
更には、標的物質との結合部位が二次構造の溶媒接触面を介して行われる場合、その結合点の一部が前記二次構造間を繋ぐループ上に存在しても構わない。
【0045】
(標的物質捕捉分子による標的物質捕捉形態)
本発明の標的物質捕捉分子は、上記のように、標的物質との結合部位が、少なくとも1つの第一のドメインと、少なくとも1つの第二のドメインとからなる構造を有する。このように2以上の結合のためのドメインを有し、かつ異なる結合様式のドメインの組合せ(第一のドメインと第二のドメイン)を有することで、一つの捕捉分子に複数のドメインに由来する複数の結合機能を付与することができる。
【0046】
本発明の捕捉分子の複数のドメインに由来する結合機能の1つを単一で利用してもよいし、2以上を同時に利用しても良い。
【0047】
複数のドメインの結合機能を同時に利用する場合は、捕捉分子は、複数のドメインが標的物質の異なる部位に非競合的に略同時に結合し、標的捕捉分子−標的物質からなる複合体を形成可能なものであることが好ましい。複数のドメインがともに標的物質と結合した状態の複合体の形成が可能となることにより、個々の結合部位でのKDのみならずそれらの相乗効果により捕捉分子として対標的物質に対する複合体形成能(avidity)をより向上させることが可能である。更に、第一のドメインと異なる第二のドメインの結合特異性が追加されていることにより、従来の抗体/抗体断片では安定な抗原−抗体複合体の形成が難しかった標的物質に対しても安定な複合体を形成することが可能となる。
【0048】
複数のドメインのそれぞれが標的物質の異なる部位に結合した状態の複合体を形成するには、この複合体の形成に必要な立体配置をこれらの複数のドメインが形成することが可能な構造を、捕捉分子が有していることが必要である。
【0049】
そのような構造をとるものであれば、複数のドメイン間を直接した結合した構成であっても、ポリペプチドからなるリンカーで結合させる構成である一本鎖ポリペプチド鎖からなるものであっても良い。リンカーには、従来公知のアミノ酸構成を用いることが可能である。一例としては、scFv等でよく使用される繊維状ファージ由来のGGGGSの繰り返し配列を挙げることができる。繰り返し数は、結合ドメイン間または標的物質と結合ドメイン間の配位関係により決めることが好ましい。同様に、上記配置関係が満たされ、結合性、生産性、安定性に富むことが好ましい。また、1つのドメインを1つのポリペプチド鎖に配置して分子構成として、この分子構成を有するポリペプチド鎖の複数を会合させて捕捉分子を構成することも可能である。この場合、各ポリペプチド鎖間にポリペプチド鎖で会合するポリペプチド会合部が必要となる。本発明に好適な会合部について、以下に詳細に説明する。
【0050】
(ポリペプチド会合部)
本発明の標的物質捕捉分子が、各々が1つの標的物質結合用のドメインを有するポリペプチド鎖の2本以上で構成される場合、各ポリペプチド鎖は各ポリペプチド鎖を会合させる為のポリペプチド会合部を有する。ポリペプチド会合部は、それらが構成する捕捉分子と標的物質の結合を妨げない上においてはどのような位置にあっても構わない。例えば、各結合ドメインにおいて標的結合部位と異なる位置が前記ポリペプチド会合部位であっても構わない。また、各ポリペプチド鎖において、標的物質と結合する結合ドメインと上述したようなポリペプチド会合部を分離した部位として有しても良い。
【0051】
このようなポリペプチド会合部の会合は、共有結合、非共有結合のいずれであってもよい。本発明でいうところの非共有結合とは、ファン・デル・ワールスカ、水素結合、イオン結合、疎水相互作用を含み、これらは前記ポリペプチド会合部、特に会合部分のアミノ酸残基に起因するものである。
【0052】
好ましくは、相補的な相互作用を有するペプチドとして配置する。相補的な相互作用を有するものであれば、本発明のポリペプチド会合部はオリゴペプチドであっても、複数のドメインから形成されるタンパク質であってもどちらでもよい。具体的には、β−ガラクトシダーゼのα−ドメイン、オメガドメイン等の利用も挙げられる。前記抗体断片VH、VLを使用しても会合部としても使用することも可能である。また、天然のタンパク質構造にも多く見られるα−ヘリカルコイルドコイル構造を利用することも可能である。α−ヘリカルコイルドコイル構造は数本のα−ヘリックスが相互作用(会合)しながら巻き付き合った構造である。7残基のアミノ酸がへリックス2回転に対応し、7つの位置は図1で示すようにa、b、c、d、e、f、gで表記されることが多い。a、dはヘリックス間の会合に重要な疎水アミノ酸(Val、Ile、)やGlu、Lys、Gln、Argが挙げられる。取り分けVal、Ileであるでことが望ましい。これら会合面のアミノ酸の選択によっては複数のα−ヘリックスから構成されるコイルドコイルを作ることも可能である。また、a、dの位置にHisを導入することにより共存する金属イオンCo(II)、Ni(II)によりコイルドコイル構造形成を誘導することも可能である。
【0053】
このようなポリペプチド会合部のモデル構造としては、いくつかの反復アミノ酸を有するペプチドからなる転写因子GCN4、癌遺伝子Fos、Jun等のロイシンジッパ−が挙げられる。本発明の捕捉分子は、少なくとも第一の結合ドメインと第二の結合ドメインは異なる標的物質の異なる部位に結合するものあるので第一の結合ドメインと第二の結合ドメインに融合するα−ヘリカルコイルドコイルはホモダイマーを形成し難いことが望ましい。このような意味においては、Jun、Fos等のヘテロダイマー、ヘテロ多量体を形成することが望ましい。また、第一の結合ドメインと融合するα−ヘリカルコイルドコイルのe、gの位置をがGlu、第二のそれらをLysとすることで安定なヘテロコイルドコイル構造を作ることが知られている。
【0054】
また、相反した荷電を有するポリペプチド鎖からなるポリペプチド会合部とすることも可能である。このようなポリペプチド会合部には、各ポリペプチド鎖の生産性や結合ドメインの標的物質との結合に必要な構造形成を妨げないサイズがあることが必要である。具体的には、50アミノ酸以下あり、より好ましくは15乃至35アミノ酸である。また、後述する表面プラズモン共鳴法、特に局在表面プラズモン共鳴法を用いた検出を行う場合、検出素子上に生じる空間的な電場の分布、強度に対応しうる最適な範囲にポリペプチド会合部の分子長を設計し、検出素子の感度を向上させることも可能である。
【0055】
また、上記ポリペプチド会合部またはその周辺において共有結合を形成させることも本発明の捕捉分子の安定化という点において有効な手段である。例えば、ある特定位置にCysを導入することにより分子間シスフィルド結合を形成させることも可能である。そうした位置は、上記ポリペプチド会合間のペプチド鎖内の会合部であるa、dの位置にあるアミノ酸、またはg、eであることが好ましい。少なくともいずれか一方に分子間ジスフィルド結合が形成される場合、結合ドメインの標的物質との結合を妨げず、また、ポリペプチド会合に影響がない位置であるアミノ酸位置であることが好ましい。例えば、二本鎖からなるα−ヘリカルコイルドコイルの場合、a−a'位置のジスルフィド結合よりもd'−d位置のジスルフィド結合を形成させる方がエネルギー的に安定であることが知られている。三以上である場合においても適宜選択して導入することが可能である。また、上記と同様な考え方において光架橋基修飾や光架橋基を導入した非天然アミノ酸を導入してもよい。この場合、係わる全てのポリペプチドに各一つの光官能基等を導入することはなく、少なくとも二本のポリペプチド鎖に対して会合部及びその周辺に一つの光官能基等が導入されていることが望ましい。三以上のポリペプチド鎖による多量体を形成する場合、それらの導入位置は配置を踏まえた上で適宜検討することが好ましい。
【0056】
ポリペプチド会合部は、結合ドメインと標的物質の結合を妨げないような配置になるように設計されることが好ましく、一例として、前記抗体断片を結合ドメインとする場合、一般的に抗体断片C末に融合され融合タンパク質として発現することが好ましい。前記結合ドメインと前記ポリペプチド会合部を直接連結することも可能であるが、ポリペプチド鎖からなるリンカーを挿入してもよい。リンカーとしては、ヒトに代表される抗体のヒンジ領域や前述したようにファージが有するGGGGS配列を繰り返し単位または少なくとも含むペプチド配列を利用することも可能である。
【0057】
(捕捉分子作製方法)
次に、本発明の捕捉分子の作製方法について、説明する。本発明の捕捉分子、またはその構成要素となる各々のポリペプチド鎖は、次のようにして合成できる。
【0058】
つまり、既知のタンパク発現用の宿主細胞を、宿主細胞に応じて設計した目的タンパク質の発現用のベクターにて形質転換し、宿主細胞内のタンパク合成システムを用いて、宿主細胞内で目的とするタンパク質を合成することができる。その後、宿主細胞内に合成された、または細胞質外に分泌された目的タンパク質をそれぞれ細胞内部画分または細胞培養上清から精製することにより回収する。分泌型の発現系を用いた場合、培養上清またはペリプラズムから目的タンパク質を取得することになり、精製工程を簡素化することが可能である。
【0059】
また、細胞内の還元状態下では安定した活性型フォールディングを形成しにくい場合が多いが、分泌型の発現系を用いることで、安定した活性型フォールディングを形成した目的タンパク質を細胞外(培養上清中)やペリプラズム中に得ることができる。従って、分泌型発現系は、例えば、分子内ジスルフィド結合を有するタンパク質の発現において活性型タンパク質を安定して得る方法として好ましい。更には、細胞質内にて活性型の組換えタンパク質を高いレベルで発現させた場合、組換えタンパク質が、細胞内で不溶性顆粒(インクルージョンボディ)化する恐れもある為、速やかに細胞外に分泌させ、凝集しない濃度にすることが好ましい。
【0060】
例えば、大腸菌を宿主細胞として用いる場合、目的タンパク質をコードする核酸の5’側にpelBに代表される従来既知のシグナルペプチドをコードする核酸を配する。このことにより、細胞外分泌の為のSec系を介して細胞質外に目的タンパク質の分泌発現を図ることができる。また、一つの発現用ベクター中に、本発明の捕捉分子の構成要素となる複数のポリペプチド鎖をコードした部分を配置することも可能である。その場合、構成要素となる各ポリペプチド鎖をコードする核酸の5'側にpelBをコードする核酸を配置し、発現時に細胞質外への分泌を促すことができる。
【0061】
このようにシグナルペプチドをN末端に融合した本発明のポリペプチド鎖は、ペリプラズマ画分及び培地上清画分から精製することができる。
【0062】
同様に菌体外分泌を行う方法としては、上記Sac分泌系とは異なるTwin−Arginine−Translocation(TAT)Systemを利用する方法がある。この方法は、細胞質においても活性型としてフォールディングされるタンパク質には有用な方法になり得る。シグナルペプチドとしては二つのArgが含まれる従来公知のシグナルペプチドを利用することが可能である。この他、従来公知であるペリプラズム局在タンパク質Dsb系などと融合して用いる方法を用いてもよい。
【0063】
この場合の精製方法としては以下を挙げることができる。即ち、上記培養上清及びペリプラズム画分からタンパク質成分を濃縮した後に再度適当なバッファーに懸濁させる。そして、例えば、既知の組換えタンパク質精製タグであるHis−タグを目的のタンパク質のNまたはC末に挿入して、ニッケル等の金属キレートカラム等を使用することにより目的のタンパク質を精製することができる。
【0064】
また、菌体内で、目的とする活性型タンパク質を高濃度発現することが可能な場合は、菌体内でタンパク質を発現させ、細胞を破壊し、細胞質可溶画分より目的タンパク質を得ることも可能である。精製方法としては、前記His−タグの以外にGST−タグ等従来既知の組換え精製用精製タグを利用することができる。GSTは、単体でも非常に可溶性の高いタンパク質であり、これと融合した目的タンパク質の可溶化においても効果が期待できる。菌体内に発現した本発明のポリペプチド鎖が不溶性顆粒で得ることも可能である。この場合、培養液から得られた菌体をフレンチプレスや超音波により破砕した細胞破砕液から前記不溶性顆粒を遠心分離することができる。得られた不溶性顆粒画分を尿素、塩酸グアニジン塩を含むの従来既知の変性剤を含んだ緩衝溶液で可溶化した後に、変性条件下で前記と同様にカラム精製をすることができる。得られたカラム溶出画分に対するリフォールディング作業によって、変性剤除去と活性構造再構築を行うことができる。リフォールディング方法としては、従来既知の方法から適宜用いることも可能である。例えば、段階透析法や希釈法など従来既知の方法を目的のタンパクに応じて用いることが可能である。
【0065】
その他の作製方法としては、細胞抽出液を用いて生体外での目的のタンパク質発現をすることも可能であることが知られている。好適に用いられる細胞としては、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等が挙げられる。しかしながら、上記無細胞抽出液によるタンパク合成は還元条件下で行われることが一般的である。必要に応じて、分子内のジスルフィド結合を形成させるために何らかの処理を行う方がより好ましい。
【0066】
複数のポリペプチド鎖を会合させて捕捉分子を形成する場合には、各ポリペプチド鎖は、同一宿主細胞内で発現させることも可能であるし、別の宿主細胞を使用して発現した後に共存させて、会合させて複合体化させることも可能である。
【0067】
更に、本発明には、本発明の捕捉分子であるポリペプチド鎖をコードする核酸及びそれを含む上記タンパク質発現用プラスミドを含む。
【0068】
(標的物質)
本発明の捕捉分子における捕捉対象としての標的物質は、非生体物質と生体物質に大別される。
【0069】
非生体物質として産業上利用価値の大きいものを以下、列記する。
【0070】
即ち、環境汚染物質としての塩素置換数/位置の異なるPCB類、同じく塩素置換数/位置の異なるダイオキシン類、いわゆる環境ホルモンと呼ばれる内分泌撹乱物質(例:ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、アミトロール、アトラジン、アラクロール、ヘキサクロロシクロヘキサン、エチルパラチオン、クロルデン、オキシクロルデン、ノナクロル、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン、DDT、ケルセン、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、エンドスルファン(ベンゾエピン)、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキサイド、マラチオン、メソミル、メトキシクロル、マイレックス、ニトロフェン、トキサフェン、トリフルラリン、アルキルフェノール(炭素数5〜9)、ノニルフェノール、オクチノニルフェノール、4−オクチルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、ベンゾ(a)ピレン、2,4−ジクロロフェノール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ベンゾフェノン、4−ニトロトルエン、オクタクロロスチレン、アルディカーブ、ベノミル、キーポン(クロルデコン)、マンゼブ(マンコゼブ)、マンネブ、メチラム、メトリブジン、シペルメトリン、エスフェンバレレート、フェンバレレート、ペルメトリン、ビンクロゾリン、ジネブ、ジラム、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジプロピル)等である。
【0071】
生体物質として適用できるものを以下列記する。
【0072】
即ち、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体から選択される生体物質が挙げられる。更には、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質から選択される生体分子を含んでなるものが挙げられる。具体的には、DNA、RNA、アプタマー、遺伝子、染色体、細胞膜、ウイルス、抗原、抗体、レクチン、ハプテン、ホルモン、レセプタ、酵素、ペプチド、スフィンゴ糖、スフィンゴ脂質の何れかから選択された物質を含むものであれば良い。更には、前記の「生体物質」を産生する細菌や細胞そのものも、本発明が対象とする「生体物質」として標的物質となり得る。
【0073】
具体的なタンパク質としては、いわゆる疾病マーカーが挙げられる。
【0074】
具体例を以下列記する。
【0075】
即ち、胎児期に肝細胞で産生され胎児血中に存在する酸性糖蛋白であり、肝細胞癌(原発性肝癌)、肝芽腫、転移性肝癌、ヨークサック腫瘍のマーカーとなるα−フェトプロテイン(AFP)、肝実質障害時に出現する異常プロトロンビンであり、肝細胞癌で特異的に出現することが確認されるPIVKA−II、免疫組織化学的に乳癌特異抗原である糖蛋白で、原発性進行乳癌、再発・転移乳癌のマーカーとなるBCA225、ヒト胎児の血清、腸および脳組織抽出液に発見された塩基性胎児蛋白であり、卵巣癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、膵癌、胆道癌、肝細胞癌、腎臓癌、肺癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌のマーカーである塩基性フェトプロテイン(BFP)、進行乳癌、再発乳癌、原発性乳癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA15−3、膵癌、胆道癌、胃癌、肝癌、大腸癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA19−9、卵巣癌、乳癌、結腸・直腸癌、胃癌、膵癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA72−4、卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、卵管癌、子宮頸部腺癌、膵癌、肺癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA125、上皮性卵巣癌、卵管癌、肺癌、肝細胞癌、膵癌マーカーとなる糖蛋白であるCA130、卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、子宮頸部腺癌のマーカーとなるコア蛋白抗原であるCA602、卵巣癌(特に粘液性嚢胞腺癌)、子宮頸部腺癌、子宮体部腺癌のマーカーとなる母核糖鎖関連抗原であるCA54/61(CA546)、大腸癌、胃癌、直腸癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、子宮癌、尿路系癌等の腫瘍関連のマーカー抗原として現在、癌診断の補助に最も広く利用されている癌胎児性抗原(CEA)、膵癌、胆道癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるDUPAN−2、膵臓に存在し、結合組織の弾性線維エラスチン(動脈壁や腱などを構成する)を特異的に加水分解する膵外分泌蛋白分解酵素であり、膵癌、膵嚢癌、胆道癌のマーカーとなるエラスターゼ1、ヒト癌患者の腹水や血清中に高濃度に存在する糖蛋白であり、肺癌、白血病、食道癌、膵癌、卵巣癌、腎癌、胆管癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、甲状腺癌、悪性リンパ腫のマーカーとなる免疫抑制酸性蛋白(IAP)、膵癌、胆道癌、乳癌、大腸癌、肝細胞癌、肺腺癌、胃癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるNCC−ST−439、前立腺癌のマーカーとなる糖蛋白質であるγ−セミノプロテイン(γ−Sm)、ヒト前立腺組織から抽出された糖蛋白であり、前立腺組織のみに存在し、それゆえ前立腺癌のマーカーとなる前立腺特異抗原(PSA)、前立腺から分泌される酸性pH下でリン酸エステルを水解する酵素であり、前立腺癌の腫瘍マーカーとして用いられる前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、神経組織及び神経内分泌細胞に特異的に存在する解糖系酵素であり、肺癌(特に肺小細胞癌)、神経芽細胞腫、神経系腫瘍、膵小島癌、食道小細胞癌、胃癌、腎臓癌、乳癌のマーカーとなる神経特異エノラーゼ(NSE)、子宮頸部扁平上皮癌の肝転移巣から抽出・精製された蛋白質であり、子宮癌(頸部扁平上皮癌)、肺癌、食道癌、頭頸部癌、皮膚癌のマーカーとなる扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)、肺腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、膵癌、卵巣癌、子宮癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるシアリルLeX−i抗原(SLX)、膵癌、胆道癌、肝癌、胃癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるSPan−1、食道癌、胃癌、直腸・結腸癌、乳癌、肝細胞癌、胆道癌、膵癌、肺癌、子宮癌のマーカーであり、特に他の腫瘍マーカーと組み合わせて進行癌を推測し、再発予知・治療経過観察として有用である単鎖ポリペプチドである組織ポリペプタイド抗原(TPA)、卵巣癌、転移性卵巣癌、胃癌、大腸癌、胆道系癌、膵癌、肺癌のマーカーとなる母核糖鎖抗原であるシアリルTn抗原(STN)、肺の非小細胞癌、特に肺の扁平上皮癌の検出に有効な腫瘍マーカーであるシフラ(cytokeratin;CYFRA)、胃液中に分泌される蛋白消化酵素であるペプシンの2種(PG I・PG II )の不活性型前駆体であり、胃潰瘍(特に低位胃潰瘍)、十二指腸潰瘍(特に再発、難治例)、ブルンネル腺腫、ゾーリンガーエリソン症候群、急性胃炎のマーカーとなるペプシノゲン(PG)、組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白であり、急性心筋梗塞等により心筋に壊死が起こると、高値を示すC−反応性蛋白(CRP)、組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白である血清アミロイドA蛋白(SAA)、主に心筋や骨格筋に存在する分子量約17500のヘム蛋白であり、急性心筋梗塞、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎のマーカーとなるミオグロビン、骨格筋、心筋の可溶性分画を中心に存在し、細胞の損傷によって血液中に遊出する酵素であって、急性心筋梗塞、甲状腺機能低下症、進行性筋ジストロフィー症、多発性筋炎のマーカーとなるクレアチンキナーゼ(CK)(骨格筋由来のCK−MM型,脳,平滑筋由来のCK−BB型、心筋由来のCK−MB型の3種のアイソザイム及びミトコンドリア・アイソザイムや免疫グロブリンとの結合型CK(マクロCK))、横紋筋の薄いフィラメント上でトロポニンI、Cとともにトロポニン複合体を形成し、筋収縮の調節に関与している分子量39,000の蛋白であり、横紋筋融解症、心筋炎、心筋梗塞、腎不全のマーカーとなるトロポニンT、骨格筋、心筋いずれの細胞にも含まれる蛋白であり,測定結果の上昇は骨格筋、心筋の障害や壊死を意味するため、急性心筋梗塞症、筋ジストロフィー、腎不全のマーカーとなる心室筋ミオシン軽鎖I、また、近年ストレスマーカーとして注目されてきているクロモグラニンA、チオレドキシン、8−OhdG、等が挙げられる。
【0076】
本発明の捕捉分子を利用した標的物質の検出方法は、捕捉分子と試料を反応させる工程と、試料に標的物質が含まれている場合における標的物質と捕捉分子との結合を検出する工程と、を有する。
【0077】
また、本発明の標的物質検出用のキットは、捕捉分子と、捕捉分子と標的物質との結合を検出するための試薬とを有する。標的物質検出用のキットは、必要に応じて、捕捉分子と標的物質との反応のための試薬や装置、捕捉分子と標的物質の結合を検出するための装置などを更に有することができる。以下、標的物質の検出方法およびそれに用いる装置及び試薬などの一例について述べる。
【0078】
(検出用キット)
本発明の捕捉分子は、標的物質の捕捉用として用いることができ、この標的物質の捕捉工程を利用した種々の用途に適用可能である。特に、本発明の捕捉分子は、標的物質の検出方法及びそのためのキットに好適に利用できる。
【0079】
(センサ素子)
本発明のセンサ素子には既知の種々のセンサ素子の構造を用いることができる。しかし蛍光色素などの標識分子を必要としない、更には標的物質と捕捉分子の結合反応の過程をリアルタイムでモニタリングできることから表面プラズモン共鳴法、局在表面プラズモン共鳴法を用いるセンサ素子が好ましい。特に、局在表面プラズモン共鳴法による検出は金属微粒子を基板表面に固定した簡単な検出用素子構成にて実施することが可能である。このようなセンサ素子装置においては、前記金属微粒子表面近傍の物質の脱吸着変化を誘電率変化として光学特性変化(特定波長での吸収変化または吸収ピークシフト)にて観察することが可能である。
【0080】
前記局在表面プラズモンセンサに用いる好適な検出用素子としては、基板と、該基板の表面に設けられた局在表面プラズモン共鳴発生用の金属構造体からなるセンサ素子と、前記金属構造体上に配置された標的物質捕捉体と、を有する標的物質検出用素子である。
【0081】
(金属構造体)
金属構造体としては、局在表面プラズモン共鳴を発生するものから適宜選択して用いることができる。金属構造体例としては、基板上に配置された金属微粒子または基板上に形成される金属薄膜パターン等が挙げられる。これらは、基板上の金属構造体の形状等を制御することが比較的に容易であり、これらを用いたセンサ素子の測定バラツキを抑える点においても好ましい。
【0082】
(金属微粒子)
金属微粒子の好ましい材料としては、プラズモン共鳴現象を生じうる金属が含まれていればよく、このような金属としては、金、銀、銅が好ましい。特に銀は、耐食性が弱いものの、感度が高く、好適に用いられる。また、金は、耐食性が高く安定な検出素子を作製することができる、チオールやアミノ基等用いた表面修飾や固定化が容易であるといった利点を有し、好適に用いられる。表面をアミノ基もしくはチオールにて処理した基板を用いることで金属微粒子を固定することができる。固定密度等は処理する金属微粒子溶液の金属微粒子含有量により調整することが可能である。金属微粒子の大きさは、所望の検出を可能とする範囲から選択すればよい。
【0083】
(金属薄膜パターン)
また、金属薄膜パターン形成に用いる材料としては、金、銀、銅及びアルミニウムのいずれかの金属、もしくはそれらの合金を用いることができる。金属薄膜パターン形状は、金属が基板に対して凸型であるドット形状が配列したものや金属薄膜パターンに凹型の孔形状を配列したもの等が挙げられる。形状としては、丸、正方形、三角、長方形のドット、孔の両パターン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
金属薄膜パターンは、基板との密着性の観点から、基板との間にクロムあるいはチタンなどの薄膜を介して、基板上に形成されていてもよい。
【0085】
金属薄膜パターン形状は、10nmから200nm程度の膜厚で形成されることが好ましい。
【0086】
金属薄膜パターン形状の平面における大きさ、すなわち、外周部における任意の一点から他の点までの距離は、10nm〜1450nmの範囲内にあることが好ましい。更には、50nm〜450nmの範囲内にあることが好ましい。この場合、任意の2点間の最大距離がこの範囲に入っていればよい。
【0087】
金属薄膜パターンは、必要に応じて基板上に1個以上を設ける。複数個設ける場合には、各金属薄膜パターンの間隔は、好ましくは50nm〜2000nm、より好ましくは150nm〜1000nmの範囲から選択した距離とすることが好ましい。これは、金属薄膜パターン同士のプラズモンによる相互作用により空間的な電場の分布、強度に影響があるためである。また、間隔が大きくなると、金属構造体の密度が下がり、信号強度が弱くなってしまうため、特殊な光学系を適用する必要性が出てくるので、上記範囲にあることが好ましい。
【0088】
基板上に複数の金属薄膜パターンを設ける場合には、平面形状及びその大きさの少なくとも1つにおいて異なる複数種類の金属薄膜パターンを基板上に設けることができる。
【0089】
(基板)
本発明に用いる基板としては、金属構造体の形成が可能で、且つ、プラズモン共鳴法による検出を可能とするような光学特性を有する材料から選択することができる。具体的にはガラス基板、石英基板、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料基板等が挙げられる。
【0090】
(センサ素子製造方法)
本発明にかかる金属薄膜パターン形状のセンサ素子の製造方法の一例を示す。まず、基板上に金属薄膜をスパッタ法あるいは蒸着法により成膜する。その上に電子線レジストをスピンコートにより成膜し、電子線描画装置で露光し、現像後レジストパターンを得る。その後、不要な金属薄膜をエッチングし、レジストを除去して、所望の形状のアレイ状に配置した金属構造体を形成する。電子線描画装置の他、集束イオンビーム加工装置、X線露光装置、EUV露光装置によるパターニングで作製することもできる。更には、モールド法により作製した微細な凹凸の基板を用いた作製方法も可能である。この場合、基板上に金属薄膜をスパッタ法あるいは蒸着法により成膜する。次に表面の金属膜を研磨し、所望の金属構造体を基板上に形成する。
【0091】
(捕捉分子の固定方法)
固定方法としては、従来既知の物理吸着法、化学架橋法から選択して用いることが可能であるが、素子上の捕捉分子を有効に利用する上では配向性を持たせる固定法が好ましい。一例として、本発明の捕捉分子を構成するポリペプチド鎖C末端にCysを導入することが挙げられる。センサ素子表面が金(Au)である場合であれば金−チオールの配位による配向を得ることができる。また、センサ素子表面にタンパク質非特異吸着防止を目的とした何らかのコーティングを行う際もコーティング表面にマレイミド基が配位されるような加工を施すことにより、捕捉分子の固定化が可能である。
【0092】
C末端に導入したCys残基を利用して捕捉分子の固定化を行う場合、標的物質との結合部位を有するドメインやポリペプチド鎖会合部がCys残基を有さないか、または導入した基板結合用Cys残基による影響が少ないように分子設計を行うことがより好ましい。これらのドメンイン等がCysを有することにより、酸性環境下においては誤った位置でのジスルフィド形成がされる可能があり、生産量、収量において問題となることも懸念される。
【0093】
一方、表面材料親和性ペプチドや抗体断片を本発明の捕捉分子のN末端またはC末端に融合することも可能である。親和性ペプチドとしては、従来既知の種々のペプチド(例えば、Nature Materials、Vol.2、pp577、2003)に記載されるペプチドを融合することができる。融合する方法としては、捕捉分子を構成するポリペプチド鎖をコードする核酸の5'末端または3'末端に前記親和性ペプチドをコードする核酸を挿入し、種々の発現ベクターに導入することにより融合タンパクを得る方法を挙げることができる。抗体断片を介する方法としては、固定用タグとして用いる抗体の抗原を予めセンサ素子上に固定しても構わない。
【0094】
また、センサ素子表面を認識する抗体断片であっても構わない。この抗体断片を、捕捉分子の標的物質との結合を妨げない位置に配置することでセンサ素子表面への捕捉分子の固定化が可能となる。この抗体断片としては、センサ素子表面を認識する抗体のVHやVLを用いることができる。捕捉分子が複数のポリペプチド鎖を会合させた構成を有する場合には、次のようにすることもできる。即ち、1つのポリペプチド鎖の会合部となる側の末端にセンサ素子表面に対して親和性のあるVHを配置する。そして、これに会合させるポリペプチド鎖の会合部に、このVHに対して相補性を有し、かつセンサ素子表面に対して親和性のあるVLを、直接またはリンカーとなるペプチドを介して設ける。これにより、複数のポリペプチド鎖を会合させて捕捉分子とするととともに、センシグ素子表面にこれを固定することができる。また、後述する表面プラズモン共鳴法、特に局在表面プラズモン共鳴法を用いた検出を行う場合、検出素子上に生じる空間的な電場の分布、強度に対応しうる最適な範囲において、本発明の捕捉分子が標的分子を捕捉できるように上記基板固定部位を設計することがより望ましい。
【0095】
また、検出用素子の表面は、いわゆる非特異吸着による共雑物の吸着によるシグナルを防止するために、以下のコーティングを行うことができる。即ち、本発明の捕捉分子の結合部位の露出や自由度が妨げられない程度に、スキムミルクやカゼイン、ウシ血清アルブミン、リン脂質、ポリエチレングリコールなどによるコーティングである。
【0096】
(検出装置)
標的物質の検出装置としては、捕捉分子と標的物質との結合の検出方式に応じた構成を有するものが使用される。例えば、上述した検出素子を金コロイドを用いた素子とした場合、検出装置は、金属の構造体を持つ検出素子と検出素子からの信号を検出するための検出手段を有する構成とすることができる。検出手段は、光源と分光器、レンズ類から構成される光学検出系と、検体(試料)を検出素子まで移動させ素子との反応を起こさせるための、反応用ウェル、流路、送液機構等からなる送液系とを有することができる。光源としては、可視領域から近赤外領域までの波長領域をカバーできるものを用いることができる。光学測定には、吸収スペクトル、透過スペクトル、散乱スペクトル、反射スペクトルを用いることができる。最も好ましくは、吸収スペクトルのピーク波長あるいは、ピークの吸収強度を利用する。金属の構造体による検出素子は、これが標的物質を特異的に結合すると、吸収スペクトルのピーク波長は、長波長側にシフトし、吸収強度は増大する。そのシフト量の程度によって、あらかじめ作製しておいた標的物資に対する検量線から標的物質の量を定量することができる。本発明の検出素子が局在プラズモン共鳴を利用している場合は、金属の構造体近傍では、局所的な電場増強が起こる。この現象は、表面増強ラマン分光法(SERS)や表面プラズモン蛍光分光法(SPFS)などの測定法にも応用でき、これらの方法による標的物質の定量も可能である。
【0097】
反応用ウェルや流路は、いわゆるμTAS(Micro Total Analysis System)型の装置で用いられているポリジメチルシロキサン(PDMS)基板によって、作製されるのが容易である。このPDMS基板を、検出素子を作製してある基板と貼りあわせて図2のような形状にて使用するものとする。送液機構としては、マイクロピストンポンプやシリンジポンプなどを用いる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)Maltose−Binding−Protein(MBP)結合VHHコードDNA断片作製
MBP結合VHHの配列(配列番号:1、配列番号:2)を参照しover−lap PCRにて合成DNAとして作製する。PCRは、pfu−turbo kit(Stratagene社製)を用いて業者推奨の方法にて行う。5末端にNcoI、'3末端にはEcoRIの制限酵素サイトを設計する。得られるPCR断片をMVHHとする。(配列番号:3、配列番号:4)
配列番号2:
Q V Q L Q E S G P G L L K P S E T L F L T C T V S G F S I S G G Y Y W G W F R Q P P G K E R E W I G S V Y H S G S T YY N K S L E S R V T I S I H T S E S Q I S LK L N S V T A A D T A V Y S C A R Y R T A H P L W G Q G T M V T V S S
配列番号4:
P W Q V Q L Q E S G P G L L K P S E T L F L T C T V S G F S I S G G Y Y W G W F R Q P P G K E R E W I G S V Y H S G S T Y Y N K S L E S R V T I S I H T S E S Q I S L K L N S V T A A D T A V Y S C A R Y R T A H P L W G Q G T M V T V S S E F
(実施例2)MBP結合アンキリンコードDNA断片作製
MBP結合アンキリンはDDBJ accession No,AY326424の配列(配列番号:5、配列番号:6)を参照し従来公知のover−lap PCRにて合成DNAとして作製する。PCRは、pfu−turbo kit(Stratagene社製)を用いて業者推奨の方法にて行う。'5末端にEcoRI、'3末端にはHindIIIの制限酵素サイトを設けるようにプライマーを設計する。また、MBP結合アンキリン遺伝子配列5末端側にGGGGS配列の3回繰り返しからなるリンカー配列を設けるようにする。(配列番号:7、配列番号:8)
配列番号:6
N A A D N T G T T P L H L A A Y S G H L E I V E V L L K H G A D V D A S D V F G Y T P L H L A A Y W G H L E I V E V L L K N G A D V N A M D S D G M T P L H L A A K W G Y L E I V E V L L K H G A D V N A Q D K F G K T A F D I S I D N G N E D L A E I L Q
配列番号:8
E F G G G G S G G G G S G G G G S N A A D N T G T T P L H L A A Y S G H L E I V E V L L K H G A D V D A S D V F G Y T P L H L A A Y W G H L E I V E V L L K N G A D V N A M D S D G M T P L H L A A K W G Y L E I V E V L L K H G A D V N A Q D K F G K T A F D I S I D N G N E D L A E I L Q R L
得られるPCR断片をG3−ankとする。
【0100】
(実施例3)MBP結合VHH−アンキリン融合タンパク質発現プラスミドの作製
実施例1及び実施例2で得られるPCR断片を用いてVHH−アンキリン 融合タンパク質発現プラスミドを作製する。ここで用いるベクターとしては、pET−24d(Novagen社)とする。
(1)実施例1で得られるMVHH及びpET−24dをNcoI及びEcoRI(ともにNew Egland Biolabs社製)にてTechnical Bulliten記載の業者推奨の方法にて制限酵素による切断反応を行う。
(2)上記の結果得られる酵素反応溶液をアガロースゲル電気泳動を行う。
(3)MVHH反応液の約0.4kbp及びpET−24d反応液の5.3kbpを切り出し、精製キット(Promega社製:商品名Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System)にて精製する。
(4)次、上記にて得られたDNA断片をT4−Ligase(Roche社製)にて業者推奨の方法にて2時間ライゲーションを行う。
(5)得られるライゲーション溶液を用いて、JM109コンピテントセル(Promega社)をヒートショック法(氷中→42℃×90sec→氷中)により形質転換を行う。ヒートショック後の溶液にLB培地(トリプトン10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム 10g/L)750μLを添加し、37℃にて1時間振盪培養する。得られる培養液を6000rpmにて5分間遠心し、上清を700μL廃棄する。
(6)残りの培養液と沈殿を攪拌し、LB/アンピシリン(100μg/mL)寒天プレートに展開し、37℃にて16時間静置する。
(7)得られるコロニーを液体LB/アンピシリン培地にて一晩培養する。
(8)得られる菌体からMinipreps SV plus DNA Purification system(promega社)を用い、業者推奨の方法にてプラスミドを回収する。
(9)得られるプラスミドのシークエンス解析を行い、目的のDNA断片が挿入されていることを確認する。ここで得られるプラスミドをpET−MVHHとする。
(10)得られるpET−MVHH及び合成DNA断片であるG3ankをEcoRI及びHindIII(ともにNEB社製)で業者推奨の方法により制限酵素反応を行う。
(11)上記の結果得られる酵素反応溶液をアガロースゲル電気泳動を行う。
(12)G3ank反応液の約0.5kbp及びpET−MVHH反応液の5.7kbpを切り出し、精製キット(Promega社製:商品名Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System)にて精製する。以下の上記(4)−(8)と同様の作業を行う。
(13)得られるプラスミドのシークエンス解析を行い、目的のDNA断片(配列番号:15、配列番号:16)が挿入されていることを確認する。ここで得られるプラスミドをpET−scVAとする。
配列番号16:
P W Q V Q L Q E S G P G L L K P S E T L F L T C T V S G F S I S G G Y Y W G W F R Q P P G K E R E W I G S V Y H S G S T Y Y N K S L E S R V T I S I H T S E S Q I S L K L N S V T A A D T A V Y S C A R Y R T A H P L W G Q G T M V T V S S E F G G G G S G G G G S G G G G S N A A D N T G T T P L H L A A Y S G H L E I V E V L L K H G A D V D A S D V F G Y T P L H L A A Y W G H L E I V E V L L K N G A D V N A M D S D G M T P L H L A A K W G Y L E I V E V L L K H G A D V N A Q D K F G K T A F D I S I D N G N E D L A E I L Q R L 。
【0101】
(実施例4)MBP結合VHH−アンキリン融合タンパク質発現
(1)形質転換
実施例3で得られるpET−scVAにてBL21(DE3)の形質転換を行う。形質転換方法は、実施例3に用いたヒートショック法により行う。同様にLB/アンピシリン寒天プレートに展開し、28℃にて16時間静置する。
(2)予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて28℃にて一晩振盪培養を行なう。
(3)本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750MLに植え継ぎ、更に培養を28℃にて継続する。OD600が0.8を越えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に28℃にて終夜培養を行なう。
(4)精製
(4−1)細胞質画分の取得
得られる培養液を6000rpm、30分間、4℃にて遠心する。培養上清を廃棄した後、菌体画分を得る。得られる菌体画分を20mM Tris/500mM NaCl(pH7.9)、以下 Tris溶液、15mLを加え、十分に再懸濁させ、更にフレンチプレスにより菌体破砕を行う。菌体破砕溶液として細胞質画分を得る。
(4−2)金属キレートカラム
目的タンパク質のC末端に融合されたHisタグにより細胞質画分より目的タンパク質を精製する。金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いる。カラム調整やサンプル負荷、及び洗浄工程は、前記業者の推奨方法に準拠し、4℃にて行った。目的であるHisタグ融合タンパク質の溶出は500mMイミダゾール/Tris溶液にて行なう。
(4−3)ゲルクロマトグラフィー
続いて、Sephadex75(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて、ゲルろ過による精製(バッファー条件:50mM Tris−HCl、200mM NaCl、1mMEDTA、pH8.0、流速:0.7mL/min)を4℃にて行う。約29kDaの単量体タンパク質であることを示唆するピークを分取し、以下の評価を行う。上記溶出液に対して、外液をTris溶液として再び透析を行い、溶出液中のイミダゾールの除去を行なう。更に、外液をリン酸バッファー(以下、PBS)に替え、バッファー置換を行い、SPR評価用溶液とする。
【0102】
(実施例5)MBP結合アンキリンコードDNA断片作製(2)
MBP結合アンキリンはDDBJ accession No,AY326424の配列(配列番号:5、配列番号:6)を参照し従来公知のover−lap PCRにて合成DNAとして作製する。PCRは、pfu−turbo kit(Stratagene社製)を用いて業者推奨の方法にて行う。得られるPCR断片をank2とする。G3−ankの'5末端にNcoI、'3末端にEcoRIの制限酵素サイトを設けるようにプライマーを設計する。(配列番号:9、配列番号:10)
配列番号:10
PL N A A D N T G T T P L H L A A Y S G H L E I V E V L L K H G A D V D A S D V F G Y T P L H L A A Y W G H L E I V E V L L K N G A D V N A M D S D G M T P L H L A A K W G Y L E I V E V L L K H G A D V N A Q D K F G K T A F D I S I D N G N E D L A E I L Q R L 。
【0103】
(実施例6)α−ヘリカルコイルドコイルDNA断片の作製
Science,1992,254,539−544に示されているJunタンパク質ジッパー配列を参照してそれらをコードする合成DNAをover−lap PCRにて作製する。作製される合成DNAの'5末端にEcoRI、'3末端にはHindIIIの制限酵素サイトを挿入する。(配列番号:11、配列番号:12)同様にして、Cell,1992,68,699−708に示されたFosタンパク質に対しても同様な合成DNAを作製する。作製される合成DNAの'5末端にEcoRI、'3末端にはHindIIIの制限酵素サイトを挿入する。(配列番号:13、配列番号:14)それぞれの合成DNA断片をG3jun、G3fosとする。
配列番号:12
E F G G G G S G G G G S G G G G S R I A R L E E K V K T L K A Q N S E L A S T A N M L R E Q V A Q L K Q K V M N Y R L C
配列番号:14
E F G G G G S G G G G S G G G G S L T D T L Q A E T D Q L E D K K S A L Q T E I A N L L K E K E K L E F I L A A Y R L C 。
【0104】
(実施例7)MBP結合VHH−Jun融合タンパク質発現プラスミドの作製
実施例3で得られるpET−scVAに実施例6で得られるPCR断片を挿入してMBP結合VHH−Jun 融合タンパク質発現プラスミドを作製する。
(1)実施例3で得られるpET−scVA及び実施例6で得られる合成DNA G3junをEcoRI及びHindIII(ともにNew Egland Biolabs社製)にてTechnical Bulliten記載の業者推奨の方法にて制限酵素による切断反応を行う。
(2)上記の結果得られる酵素反応溶液をアガロースゲル電気泳動を行う。
(3)G3−jun反応液の約0.5kbp及びpET−scVA反応液の5.7kbpを切り出し、精製キット(Promega社製:商品名Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System)にて精製する。
(4)次、上記にて得られたDNA断片をT4−Ligase(Roche社製)にて業者推奨の方法にて2時間ライゲーションを行う。
(5)得られるライゲーション溶液を用いて、JM109コンピテントセル(Promega社)をヒートショック法(氷中→42℃×90sec→氷中)により形質転換を行う。ヒートショック後の溶液にLB培地(トリプトン10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム 10g/L)750μLを添加し、37℃にて1時間振盪培養する。得られる培養液を6000rpmにて5分間遠心し、上清を700μL廃棄する。
(6)残りの培養液と沈殿を攪拌し、LB/アンピシリン(100μg/mL)寒天プレートに展開し、37℃にて16時間静置する。
(7)得られるコロニーを液体LB/アンピシリン培地にて一晩培養する。
(8)得られる菌体からMinipreps SV plus DNA Purification system(promega社)を用い、業者推奨の方法にてプラスミドを回収する。
(9)得られるプラスミドのシークエンス解析を行い、目的のDNA断片(配列番号:17、配列番号:18)が挿入されていることを確認する。ここで得られるプラスミドをpET−VJとする。
配列番号:18
P W Q V Q L Q E S G P G L L K P S E T L F L T C T V S G F S I S G G Y Y W G W F R Q P P G K E R E W I G S V Y H S G S T Y Y N K S L E S R V T I S I H T S E S Q I S L K L N S V T A A D T A V Y S C A R Y R T A H P L W G Q G T M V T V S S E F G G G G S G G G G S G G G G S R I A R L E E K V K T L K A Q N S E L A S T A N M L R E Q V A Q L K Q K V M N Y F G C 。
【0105】
(実施例8)MBP結合VHH−Jun融合タンパク質/MBP結合アンキリン−Fos融合タンパク質共発現プラスミドの作製
実施例5及び実施例6で得られるPCR断片を用いてMBP結合アンキリン−Fos 融合タンパク質発現プラスミドを作製する。ここで用いるベクターとしては、pET−24d(Novagen社)とする。
(1)実施例5で得られる合成DNA ank2及びpET−24dをNcoI及びEcoRI(ともにNew Egland Biolabs社製)にてTechnical Bulliten記載の業者推奨の方法にて制限酵素による切断反応を行う。
(2)上記の結果得られる酵素反応溶液をアガロースゲル電気泳動を行う。
(3)ank2反応液の約0.6kbp及びpET−24d反応液の5.3kbpを切り出し、精製キット(Promega社製:商品名Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System)にて精製する。
(4)次、上記にて得られたDNA断片をT4−Ligase(Roche社製)にて業者推奨の方法にて2時間ライゲーションを行う。
(5)得られるライゲーション溶液を用いて、JM109コンピテントセル(Promega社)をヒートショック法(氷中→42℃×90sec→氷中)により形質転換を行う。ヒートショック後の溶液にLB培地(トリプトン10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム 10g/L)750μLを添加し、37℃にて1時間振盪培養する。得られる培養液を6000rpmにて5分間遠心し、上清を700μL廃棄する。
(6)残りの培養液と沈殿を攪拌し、LB/アンピシリン(100μg/mL)寒天プレートに展開し、37℃にて16時間静置する。
(7)得られるコロニーを液体LB/アンピシリン培地にて一晩培養する。
(8)得られる菌体からMinipreps SV plus DNA Purification system(promega社)を用い、業者推奨の方法にてプラスミドを回収する。
(9)得られるプラスミドのシークエンス解析を行い、目的のDNA断片が挿入されていることを確認する。ここで得られるプラスミドをpET−ank2とする。
(10)得られるpET−ank2及び実施例6で得られる合成DNA断片であるG3fosをEcoRI及びHindIII(ともにNEB社製)で業者推奨の方法により制限酵素反応を行う。
(11)上記の結果得られる酵素反応溶液をアガロースゲル電気泳動を行う。
(12)G3−fos反応液の約0.5kbp及びpET−ank2反応液の5.9kbpを切り出し、精製キット(Promega社製:商品名Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System)にて精製する。以下の上記(4)−(8)と同様の作業を行う。
(13)得られるプラスミドのシークエンス解析を行い、目的のDNA断片(配列番号:19、配列番号:20)が挿入されていることを確認する。
配列番号:20
P W N A A D N T G T T P L H L A A Y S G H L E I V E V L L K H G A D V D A S D V F G Y T P L H L A A Y W G H L E I V E V L L K N G A D V N A M D S D G M T P L H L A A K W G Y L E I V E V L L K H G A D V N A Q D K F G K T A F D I S I D N G N E D L A E I L Q E F G G G G S G G G G S G G G G S L T D T L Q A E T D Q L E D K K S A L Q C
ここで得られるプラスミドをpET−AFとする。
(14)pET−AFを鋳型としてプライマーAF−fw(配列番号:21)、AF−bk(配列番号:22)を用いて、pfu−turbo kit(Stratagene社製)を用いて業者推奨の方法にてPCRを行い、約0.9kbpの断片dna_afを得る。
(15)実施例7で得られるpET−VJ及び(14)で得られる合成DNA断片であるdna_afをSphI及びBghI(ともにNEB社製)で業者推奨の方法により制限酵素反応を行う。
(16)上記の結果得られる酵素反応溶液をアガロースゲル電気泳動を行う。
(17)dna_af反応液の約0.9kbp及びpET−VJ反応液の6.3kbpを切り出し、精製キット(Promega社製:商品名Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System)にて精製する。以下の上記(4)−(8)と同様の作業を行う。
(18)得られるプラスミドのシークエンス解析を行い、目的のDNA断片が挿入されていることを確認する。ここでMBP結合VHH−JUN融合タンパク質とMBP結合アンキリン−Fos融合タンパク質を共発現系で得られるプラスミドをpET−AFVJとする。
【0106】
(実施例9)MBP結合VHH−Jun融合タンパク質及びMBP結合アンキリン−Fos融合タンパク質発現
(1)形質転換
実施例8で得られるpET−AFVJにてBL21(DE3)の形質転換を行う。形質転換方法は、実施例3に用いたヒートショック法により行う。同様にLB/アンピシリン寒天プレートに展開し、28℃にて16時間静置する。
(2)予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて28℃にて一晩振盪培養を行う。
(3)本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750MLに植え継ぎ、更に培養を28℃にて継続する。OD600が0.8を越えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に28℃にて終夜培養を行う。
(4)精製
(4−1)細胞質画分の取得
得られる培養液を6000rpm、30分間、4℃にて遠心する。培養上清を廃棄した後、菌体画分を得る。得られる菌体画分を20mM Tris/500mM NaCl(pH7.9)、以下 Tris溶液、15mLを加え、十分に再懸濁させ、更にフレンチプレスにより菌体破砕を行う。菌体破砕溶液として細胞質画分を得る。
(4−2)金属キレートカラム
目的タンパク質のC末端に融合されたHisタグにより細胞質画分より目的タンパク質を精製する。金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いる。カラム調整やサンプル負荷、及び洗浄工程は、前記業者の推奨方法に準拠し、4℃にて行った。目的であるHisタグ融合タンパク質の溶出は500mMイミダゾール/Tris溶液にて行なう。
(4−3)ゲルクロマトグラフィー
続いて、Sephadex75(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて、ゲルろ過による精製(バッファー条件:50mM Tris−HCl、200mM NaCl、1mMEDTA、pH8.0、流速:0.7mL/min)を4℃にて行う。約36kDaの単量体タンパク質であることを示唆するピークを分取し、次の評価を行う。上記溶出液に対して、外液をTris溶液として再び透析を行い、溶出液中のイミダゾールの除去を行なう。更に、外液をリン酸バッファー(以下、PBS)に替え、バッファー置換を行い、SPR評価用溶液とする。
【0107】
(実施例10)SPR評価
実施例4で得られる一本鎖MBP結合VHH−MBP結合アンキリン融合タンパク質、実施例9で得られるMBP結合VHH−Jun/MBP結合アンキリン−Fos ヘテロダイマ−と比較としてMBPに結合する単ドメインタンパク質として配列番号2のMBP結合抗体ドメイン(VHH)、配列番号6で表されるMBP結合アンキリンについてSPR(BIAcore社製)にて評価した。基板としてはCM5(ビアコア社製)を用いて、業者推奨の方法にてMBPを固定してMBP固定化チップとして評価に用いる。条件は以下の通り、RunningBuffer:0.1%Tween20/PBS、流速:20uL/min、温度25℃とする。SPRにて解離定数を評価した結果、MBP結合VHH:10-6M、MBP結合アンキリン:10-8M、一本鎖MBP結合VHH−MBP結合アンキリン融合タンパク質:10-9M、MBP結合VHH−Jun/MBP結合アンキリン−Fos:10-9Mとなり、本発明に基づく捕捉分子は標的物質を1エピトープ(もしくは一箇所)で結合する従来の捕捉分子に比べ、結合性が高いことが示される。
【0108】
(実施例11)
LSPRセンサ素子作製(1)センサ素子として、アミノ処理したタイタープレート(住友ベークライド社製)の各ウェルに金コロイド溶液(40nmφ、田中貴金属社製)200μLを添加し、室温にて24時間静置する。次に、各ウェルから金コロイド溶液を取り除き、純水に200μLを加え、10分間振盪し、加えた純水を取り除く。この操作を三回繰り返す。その後、窒素ガスにて乾燥させる。上記作業により、各ウェル底面積の20−25%が金微粒子により被覆されていることを確認する。また、本実施例のセンサ素子の各wellにPBS溶液を200μL添加後の吸収スペクトルは、510nm近傍にピーク波長を持っている。
【0109】
(実施例12)LSPR検出用素子作製(1)
実施例11により作製されるセンサ素子に標的物質捕捉能を付与するため、本実施例では標的物質捕捉体として実施例9で得られるタンパク質を用いる。以下に、金の構造体表面に固定する方法を示す。本実施例の構造体の材質である金と親和性の高いチオール基をカルボキシ末端に持つ本実施例9で得られるタンパク質を1μMとなるように0.05%Tween20/PBS溶液を調整する。得られるタンパク質溶液を実施例11で得られる検出用素子の各ウェルに200μLずつ分注し、室温にて二時間静置した後に、各ウェルから溶液を取り除く。続いて、0.05%Tween20/PBS溶液 200μLを各ウェルに10分間振盪し、加えた0.05%Tween20/PBS溶液を取り除く。この操作を三回繰り返す。上記作業により、検出用素子の各wellにPBS溶液を200μL添加後の吸収スペクトルのピークは、530nm近傍にシフトする。
【0110】
本実施例で得られる検出用素子を以下の操作により、特異的に検体中のMBP濃度を測定することができる。
【0111】
本実施例の検出用素子の各ウェルに標的物質であるMBPを含んだ検体を添加し、2時間静置し、MBPを捕捉させる。検体を各ウェルから取り除き、0.05%Tween20/PBS溶液 200μLを各ウェルに5分間振盪し、加えた0.05%Tween20/PBS溶液を取り除く。この操作を三回繰り返し、更に、溶液をPBS溶液として同様の作業を3回繰り返し、洗浄工程とする。最後にPBS溶液をウェルに添加して、吸収スペクトルを測定する。吸収スペクトルは、反応前と反応後を比較すると、特異的な抗原体反応によって、標的物質が検出素子表面に結合することでシフトする。ここで、吸収スペクトルのピーク強度、あるいはピーク波長のシフト量とMBP濃度の相関は、あらかじめ既知のMBPコントロール溶液により求められており、濃度未知の検体の微量MBP濃度を求めることができる。
【0112】
(実施例13) MBP結合VHH−Jun融合タンパク質/MBP結合ペプチド−Fos融合タンパク質共発現プラスミドの作製
実施例8得られるプラスミドをpET−AFVJにおいて、アンキリンコード塩基配列部をMBP結合ペプチド(配列番号:24:T P I H R R R Q F N T G)コード塩基配列(配列番号:23)に変更した以外、全く同様な方法にてMBP結合VHH−Jun融合タンパク質/MBP結合ペプチド−Fos融合タンパク質共発現プラスミドを作製する。得られるプラスミドをpET−PFVJとする。
【0113】
(実施例14)MBP結合VHH−Jun融合タンパク質及びMBP結合ペプチド−Fos融合タンパク質発現
実施例9においてタンパク質発現用プラスミドpET−AFVJを実施例13で得られるタンパク質発現用pET−PFVJとした以外は同様な方法にてMBP結合VHH−Jun融合タンパク質及びMBP結合アンキリン−Fos融合タンパク質を得る。
【0114】
(実施例15)SPR評価(2)
実施例14で得られるMBP結合VHH−Jun融合タンパク質及びMBP結合ペプチド−Fos融合タンパク質 ヘテロダイマ−について実施例10と同様にしてSPR(BIAcore社製)にて評価した。SPRにて解離定数を評価した結果、MBP結合VHH−Jun/MBP結合ペプチド−Fos:10-8Mとなり、本発明に基づく捕捉分子は標的物質を1エピトープ(もしくは一箇所)で結合する従来の捕捉分子に比べ、結合性が高いことが示される。
【0115】
(実施例16)LSPRセンサ素子作製(2)
図2に本実施例で用いた検出装置の概略の構造を示す。検出素子4は、膜厚20nmの金薄膜を625μm厚の石英基板上に形成し、これを所定のパターンに電子線描画装置を用いてパターニングすることで製作した。図3の走査型電子顕微鏡(SEM)画像にあるように、金属構造体の平面形状の外形は200nm×200nmの正方形状である。解像性の高低により、内側の開口部の形状は、外形とは必ずしも同じに作製できるとは限らない。各パターンは、250nmのスペースを開けてアレイ状に3mm×3mmの領域に配置されている。本実施例の構造体の吸収スペクトルは、800nm近傍にピーク波長を持っている。
【0116】
(実施例17)LSPR検出用素子作製(2)
次に、実施例12と同様な手法により金属構造体の表面に本発明実施例9の捕捉分子を固定する。以下に、金の構造体表面に固定する方法を示す。実施例16の構造体の材質である金と親和性の高いチオール基をカルボキシ末端に持つ本実施例9で得られるタンパク質を1μMとなるように0.05%Tween20/PBS溶液を調整する。得られるタンパク質溶液を実施例16で得られる検出用素子のアレイに200μLずつ分注し、室温にて二時間静置した後に、アレイから溶液を取り除く。続いて、0.05%Tween20/PBS溶液 200μLをアレイに10分間振盪し、加えた0.05%Tween20/PBS溶液を取り除く。この操作を三回繰り返す。これにより、構造体表面が本実施例9の捕捉分子で修飾される。
【0117】
(実施例18)LSPR評価(2)
以下の操作により、特異的に検体中のMBPの濃度を測定することができる。
(1)作製した素子に標的物質であるMBPを含んだ検体をインレット8より導入し、MBPを構造体上に捕捉させる。
(2)検体を排出し、リン酸緩衝液をインレット8より導入し、反応ウェル7内部を洗浄する。
(3)最後にリン酸緩衝液を充填して、金の構造体の吸収スペクトルを測定する。
【0118】
吸収スペクトルについて反応前と反応後を比較すると、特異的な抗原体反応によって標的物質が検出素子表面に結合することで吸収スペクトルがシフトする。ここで、吸収スペクトルのピーク強度、あるいはピーク波長のシフト量とMBP濃度の相関は、あらかじめ既知のMBPコントロール溶液により求められており、濃度未知の検体の微量MBP濃度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】α−ヘリカルコイルドコイル構造を説明するための図である。
【図2】本実施例17乃至18に用いられる検出装置の概略模式図である。
【図3】実施例16のセンサ素子のSEM写真である。
【符号の説明】
【0120】
1 基板
2 インレット
3 アウトレット
4 素子
5 反応ウエル
6 タングステンランプ
7 コリメートレンズ
8 分光光度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質の異なる部位のそれぞれに特異的に結合する2以上のドメインを有する捕捉分子において、
前記2以上のドメインが、
(1)前記標的物質との結合部位にハイパーバリアブルループ構造を有する第一のドメイン、及び
(2)前記標的物質との結合部位にハイパーバリアブルループ構造を持たない第二のドメイン
からなることを特徴とする捕捉分子。
【請求項2】
前記第一第一のドメインが、前記標的物質の第一のエピトープに対する抗体の少なくとも1つの可変領域を有する請求項1に記載の捕捉分子。
【請求項3】
前記第一第一のドメインが、前記標的物質の第一のエピトープに対する抗体のハイパーバリアブルループ構造またはその一部からなる1以上のループ構造を有する請求項1に記載の捕捉分子。
【請求項4】
前記第一第一のドメインが、ラクダ重鎖抗体可変領域である請求項2に記載の捕捉分子。
【請求項5】
前記第二第二のドメインが前記標的物質の第二のエピトープと結合する結合部位が、二次構造をとるポリペプチド鎖の外表面である請求項1乃至4のいずれかに記載の捕捉分子。
【請求項6】
前記二次構造が、α−へリックス構造を含む請求項5に記載の捕捉分子。
【請求項7】
前記第二第二のドメインの結合部位が、ポリペプチド鎖の二次構造からなる基本構造の繰り返しを少なくとも含む請求項5に記載の捕捉分子。
【請求項8】
前記2以上のドメインが、同一ポリペプチド鎖上に配置されている請求項1乃至7のいずれかに記載の捕捉分子。
【請求項9】
前記2以上のドメインのそれぞれが異なるポリペプチド鎖上に配置され、各ポリペプチド鎖の少なくとも一部が会合してドメイン複合体を構成している請求項1乃至8のいずれかに記載の捕捉分子。
【請求項10】
標的物質の検出方法であって、
請求項1乃至9のいずれかに記載の捕捉分子と試料を反応させる工程と、
前記試料に標的物質が含まれている場合における該標的物質と前記捕捉分子との結合を検出する工程と、
を有することを特徴とする標的物質の検出方法。
【請求項11】
標的物質を検出するための装置であって、
標的物質と結合する請求項1乃至9のいずれかに記載の捕捉分子と、前記捕捉分子を少なくとも表面の一部に設けた検出用素子と、前記素子を保持するための保持手段と、該素子による前記標的物質を検出するための検出手段と、を有することを特徴とする標的物質の検出装置。
【請求項12】
標的物質検出用のキットにおいて、
請求項1乃至9のいずれかに記載の捕捉分子と、
前記捕捉分子と標的物質との結合を検出するための試薬と
を有することを特徴とする標的物質検出用のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−8926(P2007−8926A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152828(P2006−152828)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】