説明

標的装置

【課題】
標的装置に於いて、簡単な制御で標的の昇降、隠顕動作を行わせることができ、又迅速な隠顕動作が簡単に行える様にする。
【解決手段】
走行可能な移動台車13に第1ドラムユニット、第2ドラムユニットが設けられ、前記第1ドラムユニットより垂下された第1昇降ワイヤに吊りビーム41が支持され、該吊りビームに回転自在に標的45が設けられ、該標的と一体に回転するレバー46に前記第2ドラムユニットから垂下された第2昇降ワイヤ37が取付けられ、前記第1ドラムユニット、前記第2ドラムユニットの同期駆動で前記標的が上下動し、前記第2ドラムユニットの駆動で前記レバーを介して前記標的が回転し隠顕動作が行われる様構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射撃訓練に用いられる標的装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の標的装置としては、図7に示されるものがある。
【0003】
床、又は地面等に敷設された軌条2に移動台車3が走行自在に軌乗され、該移動台車3に標的4が設置されている。該標的4は走行方向と平行な軸心を中心に回転可能に支持され、駆動機構5によって倒伏、起立され、隠顕動作が行われる様になっている。
【0004】
前記標的4は、実弾又は模擬弾であるレーザビームが着弾した場合に着弾、及び着弾の位置を検出可能であり、射撃結果の評価が可能となっている。
【0005】
従来、標的装置1の前記標的4の動きとしては、前記移動台車3の走行による水平方向の移動、隠顕動作の2態様であり、上下方向の動きが欠けている。この為、実際に標的とする対象物の複雑な動きに比して動きが単純であり、臨場感に乏しく、又射撃訓練も平面的訓練に限られる等の問題があった。
【0006】
本出願人は特許文献1により、水平方向の移動のみでなく、上下方向の移動も可能とした標的装置を提案している。
【0007】
特許文献1に係る標的装置では、標的を隠顕動作可能に支持する矩形状の枠体を4本のロープにより吊下げ、4本のロープを同時に昇降させることで標的の昇降、2本2組として、1組のロープを他組のロープに対して上昇させ、前記枠体を傾斜又は垂直状態にすることで隠顕動作を行わせる様にしている。
【0008】
上記特許文献1に係る標的装置では、ロープの昇降動作について、標的の昇降動作、隠顕動作共に同期駆動が必要であり、複雑な制御が要求される。又、標的の隠顕動作ではロープの組間の昇降量差が大きくなり、迅速な隠顕動作を行うには高速の昇降動作が必要となっていた。
【0009】
【特許文献1】特開2006−292284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は斯かる実情に鑑み、簡単な制御で標的の昇降、隠顕動作を行わせることができ、又迅速な隠顕動作が簡単に行える様にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、走行可能な移動台車に第1ドラムユニット、第2ドラムユニットが設けられ、前記第1ドラムユニットより垂下された第1昇降ワイヤに吊りビームが支持され、該吊りビームに回転自在に標的が設けられ、該標的と一体に回転するレバーに前記第2ドラムユニットから垂下された第2昇降ワイヤが取付けられ、前記第1ドラムユニット、前記第2ドラムユニットの同期駆動で前記標的が上下動し、前記第2ドラムユニットの駆動で前記レバーを介して前記標的が回転し隠顕動作が行われる様構成した標的装置に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行可能な移動台車に第1ドラムユニット、第2ドラムユニットが設けられ、前記第1ドラムユニットより垂下された第1昇降ワイヤに吊りビームが支持され、該吊りビームに回転自在に標的が設けられ、該標的と一体に回転するレバーに前記第2ドラムユニットから垂下された第2昇降ワイヤが取付けられ、前記第1ドラムユニット、前記第2ドラムユニットの同期駆動で前記標的が上下動し、前記第2ドラムユニットの駆動で前記レバーを介して前記標的が回転し隠顕動作が行われる様構成したので、前記標的の上下動作、前記標的の隠顕動作を行わせる為の制御が簡単になり、上下動作、隠顕動作、走行動作を組合せることで、前記標的に多様な動きを与えることができ、臨場感に富む射撃訓練が可能となる等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0014】
図1、図2により、本発明に係る標的装置1について説明する。
【0015】
天井(図示せず)に支柱11を介して軌条12が設けられ、該軌条12に移動台車13が車輪14を介して軌乗され、前記軌条12に沿って前記移動台車13が走行可能となっている。
【0016】
前記移動台車13からは複数のワイヤからなるワイヤ群15によって標的ユニット16が垂下され、前記移動台車13の内部には前記ワイヤ群15を巻上げ下げする為のドラム装置17(後述)が設けられている。又、前記移動台車13の上面には前記ドラム装置17を制御する為の制御装置18、走行駆動部19が設けられている。
【0017】
図3、図4により、前記移動台車13について説明する。図3、図4は、前記移動台車13の内部を示しており、図中20は台車フレームを示し、該台車フレーム20を貫通して第1車軸21、第2車軸22が設けられ、前記第1車軸21、前記第2車軸22はそれぞれ軸受部23を介して回転自在に支持され、前記第1車軸21、前記第2車軸22の両端に前記車輪14,14が固着されている。尚、図示していないが、前記第1車軸21、前記第2車軸22の両方、或はいずれか一方に前記走行駆動部19が連結され、該走行駆動部19により前記第1車軸21、前記第2車軸22が回転、停止されることで、前記移動台車13が走行、停止する様になっている。
【0018】
前記ドラム装置17は、更に第1ドラムユニット24、第2ドラムユニット25を具備している。
【0019】
先ず、前記第1ドラムユニット24について説明する。
【0020】
前記第1車軸21に、第1ドラム26が回転自在に設けられ、該第1ドラム26に第1被動ギア27が固着される。又、前記台車フレーム20には第1ドラムモータ28が設けられ、該第1ドラムモータ28の出力軸には第1駆動ギア29が嵌着され、該第1駆動ギア29は前記第1被動ギア27に噛合する。
【0021】
前記第1ドラム26には2本の第1昇降ワイヤ31,31が巻設され、前記第1ドラム26より垂下した前記第1昇降ワイヤ31,31は前記標的ユニット16に連結されている。
【0022】
前記第1ドラムモータ28が駆動され、前記第1駆動ギア29、前記第1被動ギア27を介して前記第1ドラム26が正逆回転されることで、該第1ドラム26から前記第1昇降ワイヤ31,31が繰出され、又巻取られる様になっている。
【0023】
前記第2ドラムユニット25について説明する。
【0024】
前記第2車軸22に、第2ドラム33が回転自在に設けられ、該第2ドラム33に第2被動ギア34が固着される。又、前記台車フレーム20には第2ドラムモータ35が設けられ、該第2ドラムモータ35の出力軸には第2駆動ギア36が嵌着され、該第2駆動ギア36は前記第2被動ギア34に噛合する。
【0025】
前記第2ドラム33には第2昇降ワイヤ37が巻設され、前記第2ドラム33より垂下した前記第2昇降ワイヤ37は前記標的ユニット16に連結されている。
【0026】
前記第2ドラムモータ35が駆動され、前記第2駆動ギア36、前記第2被動ギア34を介して前記第2ドラム33が正逆回転されることで、該第2ドラム33から前記第2昇降ワイヤ37が繰出され、又巻取られる様になっている。
【0027】
前記走行駆動部19の駆動停止、前記第1ドラムモータ28、前記第2ドラムモータ35の駆動停止、速度制御は前記制御装置18によって行われる。
【0028】
前記標的ユニット16について説明する。
【0029】
水平方向に延びる吊りビーム41に前記第1昇降ワイヤ31,31が係着され、前記吊りビーム41にはカウンタウエイト42が取付けられる。前記吊りビーム41には回転軸43が回転自在に設けられ、該回転軸43に標的取付けフレーム44が固着され、該標的取付けフレーム44に標的45が取付けられる。
【0030】
前記回転軸43にはレバー46が固着され、該レバー46と前記標的取付けフレーム44とは前記回転軸43を介して一体に回転可能となっている。前記レバー46にはカウンタウエイト47が取付けられ、前記レバー46の自由端には前記第2昇降ワイヤ37が係着されている。
【0031】
該第2昇降ワイヤ37が上昇、下降されることで、前記レバー46が回転する。該レバー46の回転により前記回転軸43を介して前記標的取付けフレーム44、前記標的45が一体に回転する。
【0032】
前記標的45はセンサを具備し、該センサは実弾、又はレーザビームが着弾したことを検出し、電気信号を出力できる様になっている。
【0033】
図5、図6を参照して上記標的装置1の作動について説明する。
【0034】
前記標的45を水平方向に移動させる場合は、前記走行駆動部19により前記車輪14を回転駆動して前記軌条12に沿って走行させる。
【0035】
次に、前記標的45を上下動させる場合は、前記第1ドラムユニット24、前記第2ドラムユニット25を同期駆動して、前記第1昇降ワイヤ31、前記第2昇降ワイヤ37を同じ速度で巻取り、繰出す。前記第1昇降ワイヤ31、前記第2昇降ワイヤ37が同じ速度で巻取り、繰出されることで、前記標的45は姿勢を変えることなく、上下動する(図5参照)。
【0036】
又、前記標的45の隠顕動作を行う場合は、前記第1ドラムユニット24は停止状態とし、前記第2昇降ワイヤ37を駆動する。例えば、図4、図6に示す姿勢から隠動作させる場合は、前記第2ドラムユニット25を巻取り方向に駆動する。
【0037】
前記第2昇降ワイヤ37が巻取られることで、前記レバー46が引上げられ、前記回転軸43を介して前記標的取付けフレーム44が回転される。
【0038】
該標的取付けフレーム44の回転で前記標的45が一体に回転され、該標的45が水平状態となった位置が隠れ位置である。尚、前記レバー46の位置を、隠顕動作の前後で水平線に対して同角度とすれば、前記標的45の水平位置の変化はない。
【0039】
本発明では、隠顕動作は前記第2ドラムユニット25の駆動のみで実行でき、前記第1ドラムユニット24との同期駆動は必要なく、制御が簡単である。又、前記第2ドラムユニット25による前記レバー46の回転で、前記標的45に対する水平方向の変位は生じないので、前記レバー46の水平方向の揺れも生じることがなく安定した隠顕動作を行える。
【0040】
尚、隠顕動作と同時に前記標的45の上下を行わせる場合は、前記第1ドラムユニット24と前記第2ドラムユニット25とを同期駆動し、隠顕動作に必要な前記第2昇降ワイヤ37の巻取り、或は繰出し量に、前記第1ドラムユニット24による前記第1昇降ワイヤ31の巻取り、或は繰出し量を加える様に制御すればよい。
【0041】
尚、前記レバー46の長さを選択することで、前記標的45の隠顕動作に必要な、前記第2昇降ワイヤ37の巻取り、繰出し量を変えることができ、又動作速度も変えることができる。
【0042】
又、前記標的45が上下動しながら、接近し、或は遠ざかり、又横行できるので、臨場感が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る標的装置の斜視図である。
【図2】該標的装置の移動台車、標的ユニット部分の斜視図である。
【図3】前記移動台車の内部平面図である。
【図4】該移動台車の側面図である。
【図5】前記標的装置に於ける標的ユニットの上下動作についての作動説明図である。
【図6】前記標的装置に於ける標的ユニットの隠顕動作についての作動説明図である。
【図7】従来の標的装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
12 軌条
13 移動台車
15 ワイヤ群
16 標的ユニット
18 制御装置
19 走行駆動部
20 台車フレーム
24 第1ドラムユニット
25 第2ドラムユニット
28 第1ドラムモータ
31 第1昇降ワイヤ
35 第2ドラムモータ
37 第2昇降ワイヤ
41 吊りビーム
43 回転軸
44 標的取付けフレーム
45 標的
46 レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な移動台車に第1ドラムユニット、第2ドラムユニットが設けられ、前記第1ドラムユニットより垂下された第1昇降ワイヤに吊りビームが支持され、該吊りビームに回転自在に標的が設けられ、該標的と一体に回転するレバーに前記第2ドラムユニットから垂下された第2昇降ワイヤが取付けられ、前記第1ドラムユニット、前記第2ドラムユニットの同期駆動で前記標的が上下動し、前記第2ドラムユニットの駆動で前記レバーを介して前記標的が回転し隠顕動作が行われる様構成したことを特徴とする標的装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−19834(P2009−19834A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183807(P2007−183807)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】