説明

標的部位への薬剤アプリケータのための可鍛性チップ

可鍛性チップを備える、薬剤を標的部位に塗布するためのアプリケータデバイスであって、可鍛性チップは、看護包帯剪刀または同様の種類の剪刀で、ある長さに切断することができ、看護包帯剪刀または同様の種類の剪刀で、ある長さに切断することができる変形可能な管を備える、アプリケータデバイス。可鍛性チップは、流体が通過するように構成され、可鍛性部材を含む。可鍛性部材は、ある構成に曲げられた後、チップの形状を維持する程度の強度があるが、看護包帯剪刀または同等物で容易に切断される程度の軟質で弱い軟質金属でできている。手術中または手術前に薬剤を標的部位に塗布するために好適である、アプリケータデバイスを準備するための方法は、アプリケータデバイスに変形可能なチップを提供することと、該チップを所望の形状に変形することと、看護包帯剪刀または同様の種類の剪刀で、該変形可能なチップを所望の長さに切断することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療流体を標的部位に塗布するためのデバイスおよびシステムに関する。より具体的には、本開示は、所望の形状に曲げる、および維持することができる、可鍛性部分を含む、外科用または止血剤用アプリケータに関する。
【背景】
【0002】
Ferrosan (登録商標)によるSURGIFLO(登録商標)は、使用される食塩水またはトロンビンの量を制御することによって整合性をカスタマイズできる事前充填された外科用止血剤アプリケータであり、注射器内に事前充填された流動性の止血剤を含む。流動性の止血剤は、無菌で、吸収性のブタゼラチンである、止血用マトリクス、または他の抗出血剤である。アプリケータチップは、ルアーロックを介して、注射器に固着される。流動性の止血剤製品は、アプリケータチップの自由端を、標的部位の近傍に位置付け、次いで、ある量の流動性の止血剤を吐出することによって、標的領域に塗布される。外科用または止血剤用アプリケータには、流動性の製品を的確に配置するために、2つのアプリケータチップが提供される。1つは、より容易なアクセスと正確な製品配置のために、最適な角度で確実に留まるようにする「記憶」を有する可撓性・可鍛性アプリケータチップであり、もう1つは、必要とされる貫通深度を提供するために、所望の長さに、看護包帯剪刀で切断することができる、非可鍛性チップである。外科医はこれらのアプリケータチップを選択することができる。
【0003】
SURGIFLO(登録商標)外科用または止血用アプリケータは、複数のデバイスが、小さな切開を通して身体に導入されるように、低侵襲性外科技術に関連して、特に有用である。一般的な低侵襲性外科手術の一例として腹腔鏡外科手術がある。腹腔鏡手術は、ヘルニア、結腸機能障害、胃食道逆流性疾患、および胆嚢疾患の治療で行われる。これらの手術は、低侵襲性であると見なされており、典型的には、これらの手術の何れかを受ける患者は、術後数時間で帰宅することができる。一般的に、腹腔鏡手術は、関心対象領域の近傍に、患者の身体における少なくとも1つの小さな切開を行うことを必要とする。カニューレまたはトロカールが、適切な器具アクセスのために、切開の中に挿入される。その後、種々の外科器具が、切開(複数を含む)を通して、患者の身体に挿入される。一般的に、これらの器具によって、外科医は患者の身体の内部を視認でき、患者の臓器にアクセスすることが可能となる。現在の腹腔鏡外科器具には、カメラ、剪刀、切開具、把持具、および開創具が含まれる。低侵襲性外科手術を行う時に提起される問題のうちの1つとして、止血剤の標的領域への塗布がある。止血剤を出血部位に塗布することは、その部位が、身体内でいくらか距離があり、アクセスが制限されるため、困難である場合がある。さらに身体の他の部分が、これらの比較的遠隔の部位に到達するために伸長したカテーテルの操作を妨げる場合がある。この問題は、既知の変形可能な、または可鍛性チップを使用することによって軽減することができる。
【0004】
既知の可鍛性チップは、異なる形状に再変形されるまで、所望の形状を維持し、典型的に手動で曲げることによって、所望の形状に変形される。
【0005】
既知の可鍛性/変形可能なチップは、注射器から流動性のものを受容するように構成される、大きな管腔を備える管を含む。スチールワイヤ形態の可鍛性挿入物は、可鍛性チップにおける第2のより小さな管腔内に位置付けられる。可鍛性挿入物は、変形可能なチップを所望の形状に維持するのに役立つ。
【0006】
変形可能な部分によって、デバイスの使用者は最小限の操作でアプリケータデバイスを正確に位置付けることが可能となる。
【摘要】
【0007】
この背景において、本発明者は、可鍛性であり、かつ看護包帯剪刀で、所望の長さに切断することができるチップを提供することが有利であろうという見識に至った。かかるチップは、外科医が、手術台上での実際の状況で必要とされるように、所望の形状および長さで利用可能なチップを有するように、外科医、看護士、または他の医療従事者によって、その場で変形および整えられてもよい。
【0008】
しかしながら、変形可能なチップを所望の形状に維持する際に、必要とされる程度に頑丈であるスチールワイヤは、看護包帯剪刀で切断することができない。
【0009】
一実施形態において、流動性の薬剤を、標的部位に塗布するためのアプリケータデバイスが提供される。前記アプリケータデバイスは、薬剤送達装置に固着するための近接端と、自由遠位端とを備え、チップを含む。チップは、可鍛性または変形可能である。チップは、一般的な看護包帯剪刀で、ある長さに切断することができる。チップが所望の形状に変形され、所望の長さに切断して調整できることによって、デバイスの使用者は最小限の操作でアプリケータデバイスを正確に位置付けることが可能となる。
【0010】
別の実施形態において、薬剤を、標的部位に塗布するためのアプリケータデバイスが提供される。前記アプリケータデバイスは、流体が通過するように構成される変形可能なチップを含み、変形可能なチップは、近位端部分と、遠位端部分とを有し、近位端部分は、少なくとも1つの流体リザーバと連通するように構成され、変形可能なチップは、所望の形状に変形されるように構成され、変形可能なチップは、一般的な看護包帯剪刀で、所望の長さに切断されうるように構成される。
【0011】
別の実施形態において、薬剤を、標的部位に塗布するためのチップが提供される。前記チップは、流体が通過するように構成される変形可能な管を含み、前記変形可能な管は、看護包帯剪刀または同様の種類の剪刀で、変形可能な管を切断することによって、ある長さに整えることができるように構成される。
【0012】
別の実施形態において、手術前または手術中に、薬剤を標的部位に塗布するために適した、アプリケータデバイスを準備するための方法が提供される。前記方法は、アプリケータデバイスに、変形可能なチップを提供することと、前記チップを所望の形状に変形することと、前記変形可能なチップを、看護包帯剪刀または同様の種類の剪刀で、所望の長さに切断することとを含む。
【0013】
したがって、看護包帯剪刀で、ある長さに切断することができる、および手動の力をある位置に加えることによって曲げ、医療流体の塗布の間、その位置を維持することができる、医療流体塗布チップを提供することが、本開示の利点である。
【0014】
その場で、包帯剪刀を用いて、ある長さに切断することができる、および必要とされる時に、塗布位置に曲げることができる、医療流体塗布管またはチップを提供することが、本開示の別の利点である。
【0015】
その場で、包帯剪刀を用いて、ある長さに切断することができる、およびチップが曲げられる時に、チップの圧潰の危険性をほとんど、または全く伴わずに、必要とされる時に、塗布位置に曲げることができる、医療流体塗布管またはチップを提供することが、本開示の別の利点である。
【0016】
使用者によって調整することができる、および塗布位置に曲げ、変更されるまで、その位置にそれ自身を維持することができる、医療流体塗布管またはチップを提供することが、本開示のさらなる利点である。
【0017】
追加の特徴および利点は、本明細書において説明され、以下の発明を実施するための形態および図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本説明の以下の詳細な部分において、本文献の教示は、図面に示される例示的な実施形態を参照して、より詳細に説明されるであろう。
【図1】外科用または止血剤用塗布システムの一実施形態の図である。
【図2】直線構成にある図1に示される管またはチップの立面図である。
【図3】剪刀が、チップをある長さに切断するように定位置にある状態の、材料アプリケータに接続される直線チップの立面図である。
【図4】ある長さに切断された後の、図3のチップを示す。
【図5】ある形状に曲げられた後の、図4のチップを示す。
【図6】図1の抗凝固剤塗布システム、および看護包帯剪刀の立面図であり、チップまたは管が、看護包帯剪刀で、ある長さに切断されようとしている。
【図7】図1に示される管またはチップ、および看護包帯剪刀の立面図であり、チップまたは管が、看護包帯剪刀で、ある長さに切断されようとしている。
【図8】図1に示される管またはチップの詳細な、かつ部分的に切断された開放図である。
【図9】図9a:図1から8に示されるチップにおいて使用される、可鍛性部材の片上の分離図である。図9b:図1から8に示されるチップにおいて使用される、可鍛性部材の片の別の実施形態の分離図である。
【図10】図1に示される管またはチップの断面図である。
【図11】図1に示される管またはチップの詳細な断面図である。
【図12】チップまたは管の別の例示的な実施形態の断面図である。
【詳細な説明】
【0019】
以下の発明を実施するための形態において、本開示によるアプリケータデバイスは、例示的な実施形態によって説明される。
【0020】
ここで、図面、特に、図1を参照すると、システム1は、概して、止血剤または組織封止剤といった薬剤を、身体内の標的部位に塗布するためのシステムの1つの例示的な実施形態を例解する。止血剤は、例えば、トロンビンを含む(含まなくてもよい)生体吸収性ゼラチンマトリクスであることが可能である。
【0021】
1つの好適な止血剤は、本開示の譲受人によって製造される、SURGIFLO(登録商標)止血用マトリクスであることが可能である。
【0022】
アプリケータデバイスは、手動で動作される注射器材料アプリケータ5に接続される。注射器材料アプリケータ5には雄型ルアーロックコネクタ7が備えられており、プランジャ6と、薬剤または医療流体を含有するリザーバ8とを備える。
【0023】
材料アプリケータ5は、薬剤または医療流体を、アプリケータデバイスに供給する。材料アプリケータ5の実施形態は、一例として示され、限定ではないことを理解されたい。さらに、材料アプリケータは、複数のリザーバといった、代替構造を採用してもよい。
【0024】
一般的に、アプリケータデバイスは、チップまたは送達シャフト10を含む。チップ10は、近接端および遠位端18を備え、管12を含む。ルアーアンカ14は、近接端に固着される。遠位端18は、チップ10の自由端である。
【0025】
一実施形態において、チップ10は、自由端18を、標的部位に、または標的部位に隣接して、位置付けるように、小さな外科的切開を通して挿入される。自由端18が、所望の位置にある時に、止血剤は、材料アプリケータ5から伝送され、管12を通って、標的部位、自由端18に塗布することができる。この実施形態において、チップ18の自由端は円錐遠位部分を備える。この円錐部分18は、不可欠ではなく、チップ10の最端は、円錐部分を備えずに、管12によって変形されてもよい。
【0026】
図1で分かるように、管12は、変形可能な部分を曲げるように、典型的に手で、力を加えることによって、所望の形状もしくは構成に変形することができる。管12は、管を異なる形状に変形するように、力が再び管に加えられるまで、その構成を維持する。この実施例において、変形可能な管12は、およそ90度をいくらか下回る角度、および90度をいくらか上回る角度で曲げられる。変形可能な管12は、複数の角度を含む、種々の角度で曲げられ、特定の手術または標的部位の位置に依存して、種々のカスタム構成に変形されてもよいことを理解されたい。変形可能な管12の曲げおよび形状維持は、以降でより詳細に論述される。
【0027】
図2は、直線構成にあり、別のデバイスに接続されていない、即ち、典型的に、それがパッケージ化される時に、有する構成にある、チップ10を示す。ある実施形態において、アプリケータチップ10は、注射器といった、少なくとも1つの材料アプリケータ5と、ブリスタパックといった、無菌パッケージ(図示せず)中の1つ以上の変形可能なアプリケータチップ10とを含む、キットの一部である。
【0028】
外科的状況下では、典型的に、患者組織を切断するために利用可能な種々の種類の剪刀、ならびに包帯、およびある形状または長さに切断されることが必要である他のアイテムを切断するための剪刀などがある。後者は、メイヨー剪刀とも呼ばれる、いわゆる包帯剪刀または看護包帯剪刀であり、これらの剪刀は、患者には使用されない。以下、「看護包帯剪刀」という用語を使用するが、この用語は、「メイヨー剪刀」として示される剪刀を、同等に網羅することに留意されたい。包帯剪刀は、世界中で比較的標準化されており、標準は、約12.5cmから約17.5cm(約5から約7インチ)の長さのステンレススチール剪刀である。
【0029】
本実施形態による変形可能なチップは、看護士または外科医のような平均的なオペレータにとって、適度な範囲内、即ち、80Nm未満である力を、剪刀に加えることによって、標準的な包帯剪刀で切断することができる。
【0030】
本実施形態による変形可能なチップ10上での、17cm長の看護包帯剪刀によるテストでは、管12を切断するために、ハンドル/指穴32に加えるべき力が、30Nから60Nの間であったことが示された。
【0031】
図3は、ルアーロックを介して、材料アプリケータ5に接続され、図2と同じ直線構成にある、アプリケータチップ10を示す。看護包帯剪刀30は、チップ10を所望の長さに切断するための位置にある。剪刀30は、手術床上で、外科医、看護士、または他の医療従事者によって動作されてもよい。チップ10は、剪刀を取り扱う平均的なオペレータによる適度な範囲内の力を、ハンドル/指穴32に加えることによって、一般的な看護包帯剪刀30で、それを切断することができるように、構成されている。
【0032】
図4は、所望の長さの切断された後の、図3のアプリケータチップ10を示す。
【0033】
図5は、所望の形状に曲げられた後の、図4のアプリケータチップ10を示す。
【0034】
図6は、ルアーロックを介して、材料アプリケータ5に接続され、図1と同じ二重曲げ構成にある、アプリケータチップ10を示す。看護包帯剪刀30は、チップ10を所望の長さに切断するための位置にある。剪刀30は、手術床上で、外科医、看護士、または他の 医療従事者によって動作されてもよい。チップ10は、剪刀を取り扱う平均的なオペレータによる適度な範囲内の力を、ハンドル/指穴32に加えることによって、一般的な看護包帯剪刀30で、それを切断することができるように、構成されている。
【0035】
例示的な実施形態によると、本開示による手順は、アプリケータデバイスを、その実際の展開の前に、準備することを含む。材料アプリケータ5は、アプリケータチップ10が、材料アプリケータ5に接続された状態で、好適な薬剤(止血用マトリクスであってもよい)で充填される。次に、外科医または他の医療従事者は、チップ10を所望の形状に変形し、所望の長さを決定する。所望の長さが、実際の長さ未満である場合、外科医または他の医療従事者は、チップ10を所望の長さに切断するように、看護包帯剪刀30を使用する。代替として、アプリケータチップ10を切断するように、看護包帯剪刀と同様の別の通常の剪刀が使用されてもよい。好ましくは、切断は、チップ10の角度付けられた、かつ鋭利な自由端の創出を回避するように、管の(局所)軸方向延伸に対して、約90度の角度で行われる。これにより、アプリケータデバイス1の準備が完了する。
【0036】
その後、例えば、外科医が、チップ10の自由端を、標的部位の近位に配置することによって、アプリケータデバイス1の実際の展開が開始し、薬剤が、材料アプリケータ5のプランジャ6を手動で押圧することによって塗布される。
【0037】
切断後、チップ10が、所望されるものよりも依然として長い場合、上の手順に従って、それを再び切断することができる。
【0038】
図7に示される実施形態によると、アプリケータチップ10は、それが、材料アプリケータ5に接続されていない間に切断される。本実施形態において、アプリケータチップ10は、それが、材料アプリケータ5に取り付けられる前に、所望の長さに切断することができる。アプリケータチップ10が切断された後、それは、材料アプリケータ5に取り付けられ、上に説明されるように、薬剤が、標的領域に塗布される。
【0039】
チップ10は、それをある形状に曲げる前に、またはそれをある形状に曲げた後に、ある長さに切断することができる。
【0040】
図8から11を参照すると、可鍛性もしくは変形可能にすることを可能にする、ならびに看護包帯剪刀30または同様の剪刀で切断されることが可能である、特徴を含む、変形可能なアプリケータチップ10の構造が、詳細に説明されている。
【0041】
管12は、好適なプラスチックまたはポリマー材料でできている。ポリマーまたはプラスチック材料は、以下の特性のうちの1つ以上を有するべきである:変形および伸張させる容易性、管の圧潰を防ぐ程度の安定性、10%超の破断伸び、低い弾性率、特に低温での良好な接着特性、低いメルトフロー粘度、ねじれ抵抗、放射線滅菌後の安定した材料特性。
【0042】
以下は、管材料に対して好適な材料の非包括的な列記である:ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、剛性ポリアミドを含むポリエーテル、PVC、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)。これらの材料の混合物もまた、好適である。好ましくは、プラスチック材料は、比較的軟質であり、好ましくは、プラスチック材料の硬度は、A型ショアデュロメータで、60から95の範囲内、好ましくは、約85である。
【0043】
ある実施形態において、管12のためのプラスチック(ポリマー)材料は、医療用ポリマー材料である。別の実施形態において、管12のためのプラスチック(ポリマー)材料は、押出用であり、なお別の実施形態において、管のためのプラスチック(ポリマー)材料は、医療用および押出用ポリマー、好ましくは、熱可塑性ポリオレフィン系ポリマーである。
【0044】
管材料は、射出成形または押出プロセスにおいて使用されるのに適していることが好ましい。
【0045】
管12は、薬剤の輸送のための大きな管腔11と、可鍛性部材16が受容される、より小さな管腔とを有する。例示的な本実施形態において、管12は、円形断面外形を有する。しかしながら、管12は、楕円形、六角形、五角形、または他の多角形形状といった、別の断面外形を有してもよい。
【0046】
可鍛性部材16は、曲げた後、所望の形状を維持する程度の強度があり、同時に、通常の看護包帯剪刀30または同等物で切断される程度の軟質で弱い軟質金属または他の好適な材料でできている。比較的純粋なアルミニウム(約99.00から99.99%)は、好適な材料であることが見出されている。しかしながら、アルミニウム合金、および亜鉛、スズ、金、銀、チタン、銅、鉛、またはその合金といった、他の軟質金属、ならびにPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)およびHDPE(高密度ポリエチレン)といった生体適合性プラスチックもまた、好適な材料の例である。
【0047】
可鍛性部材のための好適な材料は、ブリネル硬度が10HBから50HBnの範囲、ヤング率が50GPaから120GPaの範囲、および剪断率が10GPaから50GPaを有する。
【0048】
好ましくは、アルミニウムは、医療用アルミニウムまたは食品用アルミニウムである。好適なアルミニウムの例は、製品仕様により、99.9%純アルミニウムEN AW−1090である。
【0049】
可鍛性部材16は、管12の全長に延在する。可鍛性部材16は、遠位端18に延在しない。
【0050】
例示的な本実施形態において、可鍛性部材16は直径約1.3mmの円形断面形状を備え、アルミニウムワイヤである。可鍛性部材16のための好適な直径は、単一の可鍛性部材を伴うチップのために使用される、金属または合金の特性に依存して、約0.8から2.0mmである。
【0051】
可鍛性部材16の断面は、楕円形、正方形、または他の多角形形状といった、他の形状を有することができる。
【0052】
管12の直径は、約2.5mmから約7.0mmの間で変化することができ、好ましくは約4mmである。管12の壁厚は、0.25から0.65mmの間、好ましくは約0.4mmである。プラスチックまたはポリマー材料、および管の寸法の選択肢の組み合わせによって、曲がる際の管の圧潰の危険性が最小化されるような構造が可能となる。
【0053】
可鍛性部材16は、管12のプラスチックまたはポリマー材料との接着を改善する表面を備える。
【0054】
図9bに示される、一実施形態において、可鍛性部材のための可鍛性部材16のワイヤは、押出アルミニウムワイヤであり、ワイヤの外面は、押出プロセスによって取得されたままの平滑な表面であり、外面上に、押出プロセスのために使用される潤滑油の残留物がないことを確実とするように、押出プロセス後に完全に清浄される。
【0055】
図9aに示される、別の実施形態において、可鍛性部材16のワイヤの表面上には鋸歯または溝17が設けられる。鋸歯17は、ワイヤ16の周囲で、実質的に円周方向に向けられた溝であることが可能であるが、別の方向、または他の形状もしくはパターンを有することもできる。ある実施形態において、管材料は、可鍛性部材16の周囲で成形され、管材料は、それによって、鋸歯を充填し、可鍛性部材16を包み、可鍛性部材16および管材料の強力な結合および/または係合を創出する。
【0056】
管12が曲げられる時、ワイヤ16は、管材料に対して縦方向に移動する傾向がある。
【0057】
可鍛性部材16と管材料との間の移動により、チップ10が剪刀30で切断された後に、可鍛性部材16のワイヤ材料が、管材料から突出する可能性がある。ワイヤの突出部分は、ワイヤ端部が鋭利で患者組織への損傷を引き起こす可能性があるため、望ましくない。管材料と可鍛性部材16との間の良好な接着を確保することによって、管材料が、可鍛性部材16とともに留まるように付勢されるため、管材料からの可鍛性部材の一部分の突出は防止される。
【0058】
表面粗度および/もしくは鋸歯、または平滑な表面からの他の逸脱は、管材料と可鍛性部材16との間の接着を改善するために使用することができる。
【0059】
管材料と可鍛性部材16との間の接着は、剪刀30での切断後、変形可能なチップ10の自由端での平滑な表面を確実とする。
【0060】
ある実施形態において、可鍛性部材16および管12は、押出プロセスにおいて突出される。可鍛性部材12のために事前生成されたワイヤは、押出鋳型を有する押出機械に送給され、ワイヤが、その中で統合されるワイヤとともに管12を変形する、押出プロセスに導入される位置で、約180〜230℃に加熱される。管のためのプラスチック材料もまた、押出プロセス前および押出プロセス中に、80〜120℃に加熱される。
【0061】
ワイヤおよびプラスチック材料の両方の温度上昇によって、平滑面、粗面、および鋸歯または溝のあるワイヤに対しても、ワイヤとプラスチック材料とは良好で確実に接着される。このため、その中に組み込まれたワイヤを備える押出管12が周辺温度に冷却される時、ワイヤの外面と管材料とは良好に結合され、管材料はワイヤ表面に接着する。この良好な結合によって、管が曲げられる際の管の圧潰を防止し、管が剪刀で切断された後に、可鍛性部材材料の一部分が、管材料から突出することを予防する。
【0062】
ある実施形態において、ルアーアンカ14は、管12と同じプラスチックまたはポリマー材料からできている。
【0063】
図10は、ある長さに切断された後のチップ10の自由端を示す。
【0064】
図12は、可鍛性または変形可能な管12の別の実施形態を、断面図で示す。本実施形態による管12は、上で説明されるアプリケータデバイスとともに使用することができる。立面図において、本実施形態による管は、図2の管12のように見える。
【0065】
管12は、上の実施形態による管と同じ特性および材料を有する、プラスチックまたはポリマー材料でできている。
【0066】
管12は、薬剤の輸送のための大きな管腔11と、各々において可鍛性部材16が受容される、5つのより小さい管腔とを有する。例示的な本実施形態において、管は、円形断面外形を有する。しかしながら、管12は、楕円形、六角形、五角形、または他の多角形形状といった、別の断面外形を有してもよい。
【0067】
可鍛性部材16は、上の実施形態における可鍛性部材16と同じ種類の金属、即ち、曲げた後、所望の形状を維持する程度の強度があり、同時に、通常の看護包帯剪刀30または同様の剪刀で切断される程度の軟質で弱い軟質金属でできている。
【0068】
例示的な本実施形態において、可鍛性部材16は直径0.8mmの円形断面形状を備えるアルミニウムワイヤであるが、直径は約0.4mmから約1.0mmまで変化してもよい。
【0069】
可鍛性部材の断面は、楕円形、正方形、または多角形といった、他の形状を有することができる。
【0070】
可鍛性部材16は、管12のプラスチックまたはポリマー材料との接着を改善するような表面を備える。一実施形態において、表面は、溝または鋸歯17を備える。鋸歯17は、ワイヤ16上の実質的に円周方向に向けられた溝であることが可能であるが、他の形状の鋸歯であることも可能である。管材料は、ワイヤの周囲で成形され、2つの材料間の最適な接着のために、ワイヤおよび鋸歯を完全に包む。
【0071】
管12が曲げられる時、ワイヤ16は、管材料に対して縦方向に移動する傾向があってもよい。
【0072】
可鍛性部材16と管材料との間の移動は、チップ10が剪刀30で切断された後に、ワイヤ16のうちの1つ以上が、管材料から突出することをもたらす可能性がある。ワイヤの突出する部分は、ワイヤ端部が、鋭利であり、かつ患者組織への損傷を引き起こす可能性があるため、望ましくない。管材料と可鍛性部材16との間の良好な接着を確保することによって、管材料からの可鍛性部材16の一部分の突出が防止される。
【0073】
粗面や鋸歯、または平滑でない表面によって、管材料と可鍛性部材16との間の接着は改善され得る。
【0074】
管材料と可鍛性部材16との間の接着は、剪刀30での切断後、変形可能なチップ10の自由端での平滑な表面を確実とする。
【0075】
他の実施形態(図示せず)によると、変形可能な管12内の可鍛性部材(1つまたは複数)は、管12の縦延在と平行な構成以外の構成に配設することができる。可鍛性部材(1つまたは複数)は、例えば、らせん構成に、またはメッシュとして配設されてもよい。メッシュは、複数の平行なワイヤおよび環状管から成ることができる。
【0076】
さらに、変形可能なチップは、流体輸送のための単一の管腔を備えて示されている。しかしながら、変形可能なチップが、通常の看護包帯剪刀で、ある長さに切断することができる、流体輸送のための複数の管腔を備える変形可能なチップもまた、本開示の一部である。
【0077】
可鍛性部材は、固体部材として説明されているが、細繊維束、もしくは上で言及される材料のうちのいずれかのロッド、またはこれらの材料の組み合わせといった、異なる材料または同一の材料による、複合構造を有することもまた可能である。代替として、可鍛性部材は、エラストマー構築物内部に含有される、複数の剛性片からできることも可能である。可鍛性部分に加えられる曲げモーメントは、特定の角度である新たな状態への、剛性片の再積層をもたらす。エラストマー構築物は、システムの剛性に寄与する。
【0078】
本開示に示される看護包帯剪刀は先端の丸い両刃を有する。鋭利な先端の両刃や、鋭利な先端と丸い先端と片刃ずつ有する看護包帯剪刀が同等に使用されてもよいことに留意されたい。本出願における「剪刀で切断することができる」という表現は、オペレータの極度の努力を伴うことなく、もしくは剪刀を実質的に損傷することなく、またはその両方で切断を行うことができることを示す。
【0079】
本明細書において説明される、好ましい本実施形態への種々の変更および修正が、当業者には明らかであろうことを理解されたい。かかる変更および修正は、本主題の精神および範囲から逸脱することなく、かつその意図される利点を損失することなく、行うことができる。したがって、かかる変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を標的部位に塗布するためのアプリケータデバイスであって、流体が通過するように構成される変形可能なチップを備え、前記変形可能なチップは、近位端部分と遠位端部分とを有し、前記近位端部分は、少なくとも1つの流体リザーバと連通するように構成され、前記変形可能なチップは、所望の形状に変形され、一般的な看護包帯剪刀で所望の長さに切断されうるように構成される、アプリケータデバイス。
【請求項2】
前記変形可能なチップは、前記薬剤の輸送のための管腔と、可鍛性部材が受容される、少なくとも1つの管腔とが提供される、変形可能な、または可鍛性の管を備える、請求項1に記載のアプリケータデバイス。
【請求項3】
前記可鍛性部材は、曲げた後、前記所望の形状を維持する程度の強度があり、同時に、看護包帯剪刀または同様の剪刀で切断される程度の軟質で弱い軟質金属でできている、請求項2に記載のアプリケータデバイス。
【請求項4】
前記可鍛性部材は、ほぼ純粋なアルミニウムでできている、請求項3に記載のアプリケータデバイス。
【請求項5】
前記可鍛性部材は、実質的に前記管部材の全長に亘って延在する、アルミニウムワイヤである、請求項3に記載のアプリケータデバイス。
【請求項6】
前記可鍛性部材は、前記管材料との接着を改善する表面を備える、請求項2から5のうちのいずれかに記載のアプリケータデバイス。
【請求項7】
前記可鍛性部材の前記表面は鋸歯を備え、好ましくは、前記鋸歯は、実質的に円周方向に向けられた溝である、請求項6に記載のアプリケータデバイス。
【請求項8】
前記可鍛性部材は、円形断面形状と、1つの可鍛性部材が存在する場合、約0.8から約2.0mmの間の直径とを有し、前記可鍛性部材は、前記チップが2つ以上の可鍛性部材を備える時に、約0.3mmと1.0mmとの間の直径を有する、請求項2から7のうちのいずれかに記載のアプリケータデバイス。
【請求項9】
前記変形可能なチップは、ハンドルまたは指穴に、80ニュートンを超過しない力を加えることによって、看護包帯剪刀または同様の剪刀で切断することができる、請求項1から8のうちのいずれかに記載のアプリケータデバイス。
【請求項10】
前記管材料は、前記可鍛性部材の前記表面に接着する、請求項1から8のうちのいずれかに記載のアプリケータデバイス。
【請求項11】
薬剤を標的部位に塗布するためのアプリケータデバイスとともに使用するためのチップであって、前記チップは、流体が通過するように構成される変形可能な管を備え、前記変形可能な管は、看護包帯剪刀または同様の種類の剪刀で、前記変形可能な管を切断することによって、ある長さに調整することができるように構成される、チップ。
【請求項12】
前記変形可能な、または可鍛性の管は、流体通過のための管腔と、可鍛性部材が受容される、少なくとも1つの管腔とを備える、請求項11に記載のチップ。
【請求項13】
前記可鍛性部材は、曲げた後、所望の形状を維持する程度の強度があり、同時に、看護包帯剪刀または同様の剪刀で切断される程度の軟質で弱い軟質金属でできている、請求項12に記載のチップ。
【請求項14】
前記可鍛性部材は、ほぼ純粋なアルミニウムでできている、請求項13に記載のチップ。
【請求項15】
前記可鍛性部材は、実質的に前記管部材の全長に亘って延在する、アルミニウムワイヤである、請求項11に記載のチップ。
【請求項16】
前記可鍛性部材は、前記管材料との接着を改善する表面を備える、請求項12のうちのいずれかに記載のチップ。
【請求項17】
前記可鍛性部材の前記表面は、鋸歯を備え、好ましくは、前記鋸歯は、実質的に円周方向に向けられた溝である、請求項16に記載のチップ。
【請求項18】
前記可鍛性部材(1つまたは複数)は、円形断面形状と、約0.3mmから約2.0mmの間の直径とを有する、請求項12のうちのいずれかに記載のチップ。
【請求項19】
前記変形可能なチップは、ハンドルまたは指穴に、80ニュートンを超過しない力を加えることによって、看護包帯剪刀または同様の剪刀で切断することができる、請求項11のうちのいずれかに記載のチップ。
【請求項20】
手術前または手術中に薬剤を標的部位に塗布するために好適である、アプリケータデバイスを準備するための方法であって、アプリケータデバイスに変形可能なチップを備えることと、前記チップを所望の形状に変形することと、看護包帯剪刀または同様の種類の剪刀で、前記変形可能なチップを所望の長さに切断することと、を含む、方法。
【請求項21】
前記チップをある長さに切断する前に、前記チップを前記アプリケータデバイスに取り付けることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記チップをある長さに切断した後に、前記チップを前記アプリケータデバイスに取り付けることをさらに含む、請求項20に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−507994(P2013−507994A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533498(P2012−533498)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005598
【国際公開番号】WO2011/047753
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(510205342)フェロサン メディカル デバイセズ アー/エス (1)
【氏名又は名称原語表記】Ferrosan Medical Devices A/S
【住所又は居所原語表記】Postbox 131, Sydmarken 5, DK−Soeborg 2860, Denmark
【Fターム(参考)】