説明

標示具

【課題】所定の標示内容を標示する標示具において、被標示物に所定の標示内容を標示する際における作業性が優れると共に、テープを用いないためテープを用いたことに起因する各種不具合を防止することができる標示具を提供すること。
【解決手段】所定の標示内容21が付された標示シート2と、標示シート2を着脱自在に保持すると共に被標示物に着脱自在に固定される保持具3と、からなる標示具1であって、保持具3は、標示シート2を挟持する挟持口41を備えた中空状の挟持本体4と、挟持本体4の内部に配された梃子部材5と、梃子部材5を押圧可能な開放ボタン6と、を備え、開放ボタン6を介して梃子部材5が押圧されると、挟持本体4における挟持口41が広がるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の標示内容を標示する標示具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブル相互間や光ファイバケーブルと伝送装置との間を接続可能に成端する装置として、一般的に、光配線盤(光ファイバケーブル配線盤)が使用されている。このような光配線盤においては、その収容架体に、引き出し式のコネクタトレイ及び融着トレイが多段に積層して設けられている(例えば、下記特許文献1参照)。また、コネクタトレイの内部には、多数のコネクタが設けられている。
【0003】
光配線盤における回線構成作業などにおいて、作業対象ではないトレイを標示したり、作業対象ではないコネクタ(このような作業対象ではない箇所を、以下「非作業対象箇所」という)を標示する場合には、非作業対象箇所に、例えば、赤色ビニールテープ等のテープを貼り付けて、非作業対象箇所と作業対象箇所(作業対象の箇所)との区画標示を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−227041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したテープを用いた区画表示によれば、区画標示作業の度にテープを貼り、作業後にテープを除去する必要があり、作業性に劣る。また、作業終了後、テープを除去する際に、ケーブル等の機器類をテープの粘着面に貼り付けた状態で引っ張り、誤って引き抜いてしまい、回線障害などを発生させる虞がある。また、機器類の表面にテープの粘着剤が付着し、汚れが発生して、美観上の見苦しさが残る。更に、区画標示を行う都度、テープのゴミが発生する。
このような問題点は、光配線盤の収容架体以外の被標示物に、区画標示以外の標示を行う際にも生じ得る。
【0006】
従って、本発明は、所定の標示内容を標示する標示具において、被標示物に所定の標示内容を標示する際における作業性が優れると共に、テープを用いないためテープを用いたことに起因する各種不具合を防止することができる標示具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の標示具は、所定の標示内容が付された標示シートと、該標示シートを着脱自在に保持すると共に被標示物に着脱自在に固定される保持具と、からなる標示具であって、前記保持具は、前記標示シートを挟持する挟持口を備えた中空状の挟持本体と、該挟持本体の内部に配された梃子部材と、該梃子部材を押圧可能な開放ボタンと、を備え、該開放ボタンを介して該梃子部材が押圧されると、該挟持本体における前記挟持口が広がるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
(2) 前記挟持本体は、前記挟持口が開口した略C字形状の断面を有することが好ましい。
【0009】
(3) 前記挟持本体は、前記挟持口の延びる方向に伸縮自在に構成されていることが好ましい。
【0010】
(4) 前記保持具は、磁石を備え、該磁石の磁力により被標示物に固定されることが好ましい。
【0011】
(5) 前記梃子部材は、一端部、屈曲部及び他端部を有する屈曲した部材からなり、該一端部が前記開放ボタンにより押圧され、該屈曲部が前記挟持本体の内面に当接し、前記他端部が該挟持本体の内面における前記挟持口近傍に当接するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の標示内容を標示する標示具において、被標示物に所定の標示内容を標示する際における作業性が優れると共に、テープを用いないためテープを用いたことに起因する各種不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の標示具の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の標示具の一実施形態を示す正面図である。図2は、図1に示す標示具における標示シートを示す斜視図である。図3は、図2に示す標示シートを示す斜視図で、(a)は四方に展開した状態を示す図、(b)は(a)に示す状態の標示シートを左右方向に折り畳んだ状態を示す図、(c)は(b)に示す状態の標示シートを上下方向に折り畳んだ状態を示す図である。
【0014】
図4は、図1に示す標示具における保持具を示す斜視図である。図5は、図4に示す保持具を縮めた状態を示す斜視図である。図6(a)は、図4におけるVI−VI線断面図で、図6(b)は、図6(a)の部分拡大図である。図7(a)は、開放ボタンを押圧した状態におけるVI−VI線断面図で、図7(b)は、図7(a)の部分拡大図である。図8は、図1に示す標示具の第1使用態様を示す正面図である。図9は、図1に示す標示具の第2使用態様を示す正面図である。図10は、図1に示す標示具の第3使用態様を示す正面図である。
【0015】
本発明の標示具1は、図1及び図2に示すように、所定の標示内容21が付された標示シート2と、標示シート2を着脱自在に保持すると共に被標示物(図8における扉P1、図9におけるコネクタトレイP2など。詳細は後述)に着脱自在に固定される保持具3と、からなる。本実施形態の標示具1は、長方形の標示シート2における一方の対辺にそれぞれ保持具3,3が取り付けられて構成される。
【0016】
まず、標示シート2について説明する。本実施形態における標示シート2は、図3に示すように、長方形状であり、長辺方向である長手方向及び短辺方向である短手方向に折り畳むことが可能である。標示シート2は、例えば、図3(b)に示すように、図3(a)に示す状態から短手方向に3つ折りされ、また、図3(c)に示すように、図3(b)に示す状態から長手方向に6つ折りされる。つまり、標示シート2の長さは、本実施形態の標示具1の使用態様によって、長手方向に6段階、短手方向に3段階に変更することができる。最も折り畳んだ状態における標示シート2の面積は、例えばA5サイズ(148mm×210mm)程度である。
【0017】
図2に示すように、標示シート2には所定の標示内容21が付されている。標示内容21は、区画標示の内容や方法などによって適宜選定される。本実施形態における標示内容21は、本実施形態の標示具1によって区画される非作業対象箇所(作業対象ではない箇所)において作業を行うと、何らかの危険を伴う虞があることから、黄色及び黒のゼブラ模様21a、黒地に黄色文字の「危険」の文字21b及び黒地に黄色文字の「DANGER」の文字21cとなっている。
【0018】
ゼブラ模様21aは、長方形の標示シート2における他方の対辺(保持具3が取り付けられていない対辺)に沿って帯状に配されている。「危険」の文字21b及び「DANGER」の文字21cは、ゼブラ模様21aの内側に隣接して、帯状のゼブラ模様21aが延びる方向に交互に配されている。
【0019】
標示シート2の素材は特に制限されないが、標示具1の使用時において標示シート2の裏側に位置する部材などを視認できるように、標示シート2は、透明な樹脂シートから形成されていることが好ましい。標示シート2の素材としては、例えばポリエチレンが挙げられる。標示シート2の裏側に位置する回線名称などの文字を読み取れるように、標示シート2は、透明なピンク色を有していることが好ましい。
【0020】
次に保持具3について説明する。保持具3は、図4〜図6に示すように、標示シート2を挟持する挟持口41を備えた中空状の挟持本体4と、挟持本体4の内部に配された梃子部材5と、梃子部材5を押圧可能な開放ボタン6と、を備える。また、保持具3は、図7に示すように、開放ボタン6を介して梃子部材5が押圧されると、挟持本体4における挟持口41が広がるように構成されている。
【0021】
挟持本体4は、挟持口41が開口した略C字形状の断面を有する管状部材を主体として構成されている。挟持口41は、標示シート2を挟持する口部であり、挟持本体4の長手方向に延びている。挟持口41は、標示シート2を挟持していない状態において閉じていることが好ましいが、標示シート2を挟持し得る範囲で開いていてもよい。挟持本体4においては、挟持口41を開く方向に力を付与すると、挟持口41を閉じる方向の反力が発生する。このような構成を実現するために、挟持本体4は、剛性の高い合成樹脂(例えば硬質ポリエチレン)や金属を素材として形成されていることが好ましい。挟持本体4は、弾性を有していてもよい。
また、挟持本体4の外面の全面又は一部には、黄色及び黒のゼブラ模様(図示せず)が付されていてもよい。
【0022】
挟持本体4は、挟持口41の延びる方向(つまり、挟持本体4の長手方向)に伸縮自在に構成されている。詳細には、挟持本体4は、筒状の第1本体4a、及び第1本体4aの内側に摺動自在に配設された筒状の第2本体4bを主体として構成されている。図4に示す挟持本体4を最も伸ばした状態においては、第1本体4aと第2本体4bとが重なる範囲は最も小さく、一方、図5に示す挟持本体4を最も縮めた状態においては、第1本体4aと第2本体4bとが重なる範囲は最も大きい。
【0023】
第1本体4aにおける挟持口41aの位置と、第2本体4bにおける挟持口41bの位置とは重なっており、そのため、挟持本体4の伸縮状態に拘わらず、挟持本体4の挟持口41は、標示シート2を挟持可能である。伸縮自在な挟持本体4は、標示シート2の幅に応じて、挟持本体4の長さを伸縮して用いることができる。挟持本体4の長さ及び標示シート2の幅によっては、1個の挟持本体4に複数枚の標示シート2を保持することもできる。
【0024】
挟持本体4の全体の長さ(最も伸ばした状態における長さ)は、例えば250〜350cmであり、好ましくは280〜320cmである。最も縮めた状態における挟持本体4の長さは、例えば150〜250cmであり、好ましくは200〜220cmである。
【0025】
図6(a)に示すように、挟持本体4を短手方向に切断した断面視において、挟持本体4における挟持口41とは約90度ずれた位置には、被標示物(図示せず)と当接する当接台部42が形成されている。当接台部42は、挟持本体4の肉厚が部分的に厚くなることで形成されている。当接台部42における当接面42aは平面状になっている。
当接台部42における挟持口41とは反対側の端部43は凹んでいる。そのため、保持具3を被標示物から取り外す際に、作業者の指先を被標示物と保持具3との間に挿入しやすい。
【0026】
保持具3は、磁石31を備え、磁石31の磁力により被標示物に固定されるようになっている。本実施形態においては、磁石31は、当接台部42の当接面42aと面一(ツライチ)となるように当接台部42に設けられている。磁石31は、第1本体4aの当接台部42における両端部近傍にそれぞれ(計2個)設けられていると共に、第2本体4bの当接台部42における外端部(第1本体4a側とは反対側)近傍に1個設けられている。尚、保持具3を磁力により被標示物を固定することができれば、磁石31の個数、位置などは制限されない。
【0027】
挟持本体4の第1本体4aにおける、挟持口41とは反対側の内面には、第1ガイド凸部46aが設けられている。ガイド凸部46aは、管状の挟持本体4における厚み方向内側に突出していると共に、挟持本体4の長手方向に延びている。ガイド凸部46aは、第1本体4aの内面における第2本体4bと重なる位置に設けられている。
【0028】
また、挟持本体4の第2本体4bにおける、挟持口41とは反対側の外面には、第1ガイド凹部46bが設けられている。第1ガイド凹部46bは、管状の挟持本体4における厚み方向内側に凹んでいると共に、挟持本体4の長手方向に延びている。第1ガイド凹部46bは、第2本体4bの外面における第1本体4aと重なる位置に設けられている。
そして、第1ガイド凸部46a及び第1ガイド凹部46bは、嵌合し、第1本体4aの内側を第2本体4bが摺動する際における摺動ガイドして機能する。
【0029】
挟持本体4の第1本体4aにおける当接台部42側の内面には、第2ガイド凸部47aが設けられている。第2ガイド凸部47aは、管状の挟持本体4における厚み方向内側に突出していると共に、挟持本体4の長手方向に延びている。第2ガイド凸部47aは、第1本体4aの内面における第2本体4bと重なる位置に設けられている。
【0030】
また、挟持本体4の第2本体4bにおける当接台部42側には、第2ガイド孔部47bが設けられている。第2ガイド孔部47bは、管状の挟持本体4をその厚み方向に貫通していると共に、挟持本体4の長手方向に延びている。第2ガイド孔部47bは、第2本体4bの内面における第1本体4aと重なる位置に設けられている。
そして、第2ガイド凸部47a及び第2ガイド孔部47bは、嵌合し、第1本体4aの内側を第2本体4bが摺動する際における摺動ガイドして機能する。
【0031】
次に、梃子部材5について説明する。梃子部材5は、挟持本体4における第1本体4aの内部及び第2本体4bの内部にそれぞれ(計2個)配されている。梃子部材5は、一端部51、屈曲部52及び他端部53を有する屈曲した部材からなる。梃子部材5は、帯状の金属板を屈曲させて形成することができ、その剛性が高いことが好ましい。
【0032】
梃子部材5は、全体視で1個の屈曲部52を有する「く」の字形状を有しており、一端部51と屈曲部52との間が第1腕部54となっており、他端部53と屈曲部52との間が第2腕部55となっている。
第1本体4a側の梃子部材5aは、その全体が第1本体4aの内部に配されている。梃子部材5aの一部は、第1本体4aと第2本体4bとが重なる位置に配されている。第2本体4b側の梃子部材5bは、その全体が第2本体4bの内部に配されている。
【0033】
次に、開放ボタン6について説明する。図6に示すように、開放ボタン6は、挟持本体4に設けられており、梃子部材5を押圧可能となっている。開放ボタン6は、当接台部42とは反対側で且つ挟持口41とも反対側に設けられている。開放ボタン6は、ボタン部61、挿通棒部62、ストッパ部63及び付勢バネ64を主体として構成されている。
【0034】
ボタン部61は、開放ボタン6における挟持本体4の外面側の部位で、指などによって押される部分である。ボタン部61は、挿通棒部62の一端部に連結されており、挿通棒部62の断面方向外側に延出する円盤状の部分である。ボタン部61の外面は、挟持本体4の外面とほぼ面一(ツライチ)になっている。
【0035】
挿通棒部62は、ボタン部61の内側から延びる棒状の部分である。ストッパ部63は、挿通棒部62の内端部(ボタン部61とは反対側の端部)に設けられており、挿通棒部62の断面方向外側に延出する円盤状の部分である。つまり、ボタン部61、挿通棒部62及びストッパ部63の三者で、ダンベル形状を有している。
付勢バネ64は、コイルバネなどからなり、挿通棒部62に挿通されており、そのため、ボタン部61を挟持本体4の外側方向に押し出す方向に付勢している。
【0036】
また、挟持本体4の第1本体4aには、開放ボタン6におけるボタン部61、挿通棒部62及び付勢バネ64を収納し得る収納孔部44が設けられている。収納孔部44の外側部分44aは、その内周縁がボタン部61の外周縁よりも僅かに大きくなっている。収納孔部44における内側部分44bは、その内周縁が挿通棒部62の外周縁よりも僅かに大きくなっている。つまり、収納孔部44は、外側部分44aが大きく、内側部分44bが小さい段付き孔となっている。
収納孔部44の外側部分44aにおいては、ボタン部61によって封鎖される形で、付勢バネ64が収納されている。
【0037】
挟持本体4の第2本体4bには、第1本体4aの収納孔部44の内側部分44bと対応する位置に、挿通孔部45が設けられている。挿通孔部45は、その内周縁が挿通棒部62の外周縁よりも僅かに大きくなっている。つまり、収納孔部44における内側部分44bの内周縁と挿通孔部45の内周縁とはほぼ同じ大きさを有している。
【0038】
また、挿通孔部45は、図4及び図5に示すように、挟持本体4の長手方向に延びる長孔となっている。そのため、挟持本体4を伸縮させる際に、つまり第1本体4aに対して第2本体4bを摺動させる際に、開放ボタン6の挿通棒部62が挿通孔部45に引っ掛からないようになっている。
開放ボタン6のストッパ部63は、その外周縁が挿通孔部45の外周縁よりも大きくなっており、開放ボタン6の抜け止めとして機能する。
【0039】
このように、開放ボタン6は、挿通棒部62が収納孔部44の内側部分44b及び挿通孔部45に挿通され、ボタン部61が収納孔部44の外側部分44aに収納され、ストッパ部63が挿通孔部45の内側(管状の挟持本体4における厚み方向内側)に配置されている。そして、開放ボタン6においては、ボタン部61は、付勢バネ64によって、挟持本体4の厚み方向外側に付勢されており、そのため、ストッパ部63は、第2本体4bの内面における挿通孔部45の周囲に当接している。
【0040】
また、本実施形態においては、図7に示すように、開放ボタン6のボタン部61は、押圧されると、付勢バネ64を縮めながら内側に向けて移動する。そのため、挿通棒部62を介してボタン部61と連結されたストッパ部63が、第2本体4bの内面から離反する。
【0041】
梃子部材5について再度説明する。梃子部材5は、一端部51が開放ボタン6により押圧され、屈曲部52が挟持本体4の内面に当接し、他端部53が挟持本体4の内面における挟持口41近傍に当接するように構成されている。
詳述すると、第1本体4a側の梃子部材5aにおける一端部51aと、第2本体4b側の梃子部材5bにおける一端部51bとは重なっており、この重なっている部分が開放ボタン6におけるストッパ部63により押圧される。
【0042】
第1本体4a側の梃子部材5a及び第2本体4b側の梃子部材5bは、それぞれの他端部53a及び53bが離反するように配置している。屈曲部52(52a,52b)及び他端部53(53a,53b)は、面状に形成されている。
屈曲部52は、第1本体4aにおける第2ガイド凸部47aの内面に当接している。第1本体4a側の梃子部材5aにおける屈曲部52a及び他端部53aは、第1本体4aの内面に、付勢力をもって当接している。第2本体4b側の梃子部材5bにおける屈曲部52b及び他端部53bは、第2本体4bの内面における挟持口41近傍に、付勢力をもって当接している。ここで、「挟持口41近傍」とは、挟持口41から10mm以内の範囲をいう。
梃子部材5は、図示しない保持手段によって挟持本体4の内部に保持されている。
【0043】
本実施形態の標示具1においては、標示シート2は、被標示物の形状、大きさなどに応じて、展開状態で又は折り畳まれた状態で使用される。保持具3の挟持本体4は、被標示物の形状、大きさや標示シート2の幅などに応じて、適宜伸縮されて使用される。
【0044】
また、本実施形態の標示具1においては、図6及び図7に示すように、開放ボタン6を介して梃子部材5が押圧されると、挟持本体4における挟持口41が広がる。詳細には、開放ボタン6のストッパ部63を介して梃子部材5の一端部51が押圧されると、挟持本体4の内面に対する反力によって、屈曲部52を支点として、他端部53が持ち上がる。持ち上がった他端部53は、挟持本体4の内面における挟持口41近傍を押圧する。そのため、挟持本体4の挟持口41が容易に広がる。そして、広がった挟持口41に標示シート2を容易に挟持することができる。
【0045】
次に、本実施形態の標示具1における各種使用態様について説明する。
第1使用態様は、図8に示すように、図1に示す標示具1を、左右に開閉する一対の扉P1,P1を有する光配線盤の収容架体Pに固定する使用態様である。つまり、第1使用態様は、作業対象ではない光配線盤の収容架体Pを区画標示する使用態様である。
【0046】
第1使用態様においては、長手方向に展開した標示シート2における一対の短辺を、それぞれ図3に示す保持具3における挟持本体4の挟持口41によって挟持する。そして、挟持本体4の磁石31による磁力を利用して、左右に開閉する一対の扉P1,P1を有する光配線盤の収容架体Pにおいて、閉じられた一対の扉P1,P1における突き合わせ線を隠すように、保持具3を収容架体Pに固定する。
【0047】
第1使用態様においては、作業対象ではない光配線盤の収容架体Pを容易に区画標示することができる。
尚、光配線盤の収容架体Pが扉P1を有していない場合(図示せず)には、収容架体Pの開口部などに保持具3を固定すればよい。
【0048】
第2使用態様は、図9に示すように、図1に示す標示具1を、左右に開閉する一対の扉P1,P1を有する光配線盤の収容架体PにおけるコネクタトレイP2に固定する使用態様である。つまり、第2使用態様は、作業対象ではないコネクタトレイP2を区画標示する使用態様である。
【0049】
第2使用態様においては、長手方向に展開した標示シート2における一対の短辺を、それぞれ図3に示す保持具3における挟持本体4の挟持口41によって挟持する。このような標示具1を2組用意する。
光配線盤の収容架体Pには、複数枚のコネクタトレイP2が多段に積層されて設けられている。その内の1枚が作業対象のコネクタトレイP2’である。つまり、作業対象のコネクタトレイP2’よりも上方及び下方に位置するコネクタトレイP2が、作業対象ではない(非作業対象の)コネクタトレイとなり、本実施形態の標示具1によって区画標示される。
尚、積層されたコネクタトレイP2の下方には、複数枚の融着トレイP3が多段に積層されて設けられている。
【0050】
第2使用態様においては、2組の標示具1の一方を作業対象のコネクタトレイP2’よりも上方に位置するコネクタトレイP2を隠すように、コネクタトレイP2に固定する。また、2組の標示具1の他方を作業対象のコネクタトレイP2’よりも下方に位置するコネクタトレイP2を隠すように、コネクタトレイP2に固定する。このようにして、作業対象以外のコネクタトレイP2を隠し、作業対象のコネクタトレイP2’のみを隠さないように(表出させるように)区画標示する。
【0051】
第2使用態様においては、作業対象ではないコネクタトレイP2を容易に区画標示することができる。
【0052】
第3使用態様は、図10に示すように、図1に示す標示具1をコネクタトレイP2の内部に固定する使用態様である。つまり、第3使用態様は、コネクタトレイP2に設けられた複数個のコネクタP4のうち、作業対象ではないコネクタP4を区画標示する使用態様である。
【0053】
第3使用態様においては、長方形状の標示シート2における一辺のみを、図3に示す保持具3における挟持本体4の挟持口41によって挟持する。このような標示具1を2組用意する。
コネクタトレイP2には、複数個のコネクタP4が左右方向に配列して設けられており、その内の1個が作業対象のコネクタP4’である。つまり、作業対象のコネクタP4’よりも左方及び右方に位置するコネクタP4が、作業対象ではない(非作業対象の)コネクタP4となり、標示具1によって区画標示される。
【0054】
第3使用態様においては、2組の標示具1の一方を作業対象のコネクタP4’よりも左方に位置するコネクタP4を隠すように固定する。また、2組の標示具1の他方を作業対象のコネクタP4よりも右方に位置するコネクタP4を隠すように固定する。このようにして非作業対象のコネクタP4を隠し、作業対象のコネクタP4’のみを隠さないように(表出させるように)区画標示する。
【0055】
第3使用態様においては、作業対象ではないコネクタP4を容易に区画標示することができる。
尚、標示シート2がコネクタトレイP2の左右方向に延びるように、保持具3をコネクタトレイP2に固定することもできる。
【0056】
前述した構成を有する本実施形態の標示具1によれば、以下の各効果が奏される。
本実施形態の標示具1においては、保持具3は、標示シート2を挟持する挟持口41を備えた中空状の挟持本体4と、挟持本体4の内部に配された梃子部材5と、梃子部材5を押圧可能な開放ボタン6と、を備え、開放ボタン6を介して梃子部材5が押圧されると、挟持本体4における挟持口41が広がるように構成されている。そのため、被標示物に所定の標示内容21を標示する際における作業性が優れると共に、テープを用いないためテープを用いたことに起因する各種不具合を防止することができる。
【0057】
また、本実施形態の標示具1は、標示シート2及び保持具3の両方を繰り返し使用することができるため、繰り返し使用した場合のトータルコストが低い。
また、様々な長さ及び幅を有する標示シート2を展開状態で又は適宜折り畳んだ状態で、1個又は複数個の保持具3に保持することによって、様々な態様の区画標示を行うことができる。
【0058】
特に、各級局舎には多数の光配線盤が設置されており、これらの光配線盤は、そのメーカーを問わず、その形状が類似しているところ、本実施形態の標示具1を用いることにより、作業者の思い込み等の作業ミス(作業対象ではない光配線盤への接触など)に起因する回線障害事故の未然防止を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態においては、挟持本体4は、挟持口41の延びる方向に伸縮自在に構成されているため、挟持口41に挟持される標示シート2の幅(挟持本体4の長手方向の幅)に応じて、挟持本体4の長さを適宜変更することができる。また、非使用時において、挟持本体4を縮めて保持具3をコンパクトに収納することができると共に、保持具3の持ち運びも容易である。
【0060】
また、本実施形態においては、保持具3は、磁石31を備え、磁石31の磁力により被標示物に固定されるため、被標示物が鉄などから構成されている場合に、磁石31の磁力を利用して保持具3を容易に被標示物に着脱することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、梃子部材5は、一端部51、屈曲部52及び他端部53を有する屈曲した部材からなり、一端部51が開放ボタン6により押圧され、屈曲部52が挟持本体4の内面に当接し、他端部53が挟持本体4の内面における挟持口41近傍に当接するように構成されている。そのため、開放ボタン6を押すと、梃子部材5の一端部51が開放ボタン6により押圧され、挟持本体4の内面に当接した屈曲部52が支点となり、他端部53が挟持本体4の内面における挟持口41近傍を押圧し、挟持口41が容易に広がる。このような機構が簡易な構造で実現される。
【0062】
本発明は、前述した実施形態に制限されることなく、適宜変更が可能である。
例えば、挟持本体4は伸縮不能な構成を有していてもよい。保持具3を被標示物に固定させる構成は、保持具3に磁石31を備えた構成に制限されず、例えば、保持具3に被標示物と機械的に固定する手段を設けた構成でもよい。
【0063】
1個の保持具3における挟持口41に複数枚の標示シート2を挟持することができる。反対に、複数枚の標示シート2を、1個の保持具3における挟持口41に挟持することができる。
保持具3の挟持本体4の挟持口41に挟持された状態における、標示シート2の折り畳み回数及び折りたたみ方向は、特に制限されない。標示シート2は展開状態で使用することができる。
【0064】
本発明の標示具は、光配線盤以外の被標示物に標示を行う場合にも用いることができ、例えば、各級局舎に多数設置されている通信架(外観が類似している通信機器類を収納している架)に標示を行う場合に用いることができる。
本発明の標示具の使用態様は、前述した各使用態様のような作業対象と非作業対象との区画標示に用いる態様に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の標示具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す標示具における標示シートを示す斜視図である。
【図3】図2に示す標示シートを示す斜視図で、(a)は四方に展開した状態を示す図、(b)は(a)に示す状態の標示シートを左右方向に折り畳んだ状態を示す図、(c)は(b)に示す状態の標示シートを上下方向に折り畳んだ状態を示す図である。
【図4】図1に示す標示具における保持具を示す斜視図である。
【図5】図4に示す保持具を縮めた状態を示す斜視図である。
【図6】(a)は、図4におけるVI−VI線断面図で、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【図7】(a)は、開放ボタンを押圧した状態におけるVI−VI線断面図で、(b)は、(a)の部分拡大図である。
【図8】図1に示す標示具の第1使用態様を示す正面図である。
【図9】図1に示す標示具の第2使用態様を示す正面図である。
【図10】図1に示す標示具の第3使用態様を示す正面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 標示具
2 標示シート
21 標示内容
3 保持具
31 磁石
4 挟持本体
41 挟持口
42 内部空間
5 梃子部材
51 一端部
52 屈曲部
53 他端部
6 開放ボタン
P 被標示物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の標示内容が付された標示シートと、該標示シートを着脱自在に保持すると共に被標示物に着脱自在に固定される保持具と、からなる標示具であって、
前記保持具は、前記標示シートを挟持する挟持口を備えた中空状の挟持本体と、該挟持本体の内部に配された梃子部材と、該梃子部材を押圧可能な開放ボタンと、を備え、該開放ボタンを介して該梃子部材が押圧されると、該挟持本体における前記挟持口が広がるように構成されていることを特徴とする標示具。
【請求項2】
前記挟持本体は、前記挟持口が開口した略C字形状の断面を有することを特徴とする請求項1に記載の標示具。
【請求項3】
前記挟持本体は、前記挟持口の延びる方向に伸縮自在に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の標示具。
【請求項4】
前記保持具は、磁石を備え、該磁石の磁力により被標示物に固定されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の標示具。
【請求項5】
前記梃子部材は、一端部、屈曲部及び他端部を有する屈曲した部材からなり、該一端部が前記開放ボタンにより押圧され、該屈曲部が前記挟持本体の内面に当接し、前記他端部が該挟持本体の内面における前記挟持口近傍に当接するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の標示具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−198924(P2009−198924A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42206(P2008−42206)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【Fターム(参考)】