説明

標示杭、又は境界点表示品への表示プレート固定ピン

【課題】ハンマーを必要とすることなく、作業者が手で表示プレートを容易に、かつ確実に装着することができる安価な標示杭頭部への表示プレート固定ピンを提供する。
【解決手段】標示杭の頭部に被冠されたキャップ、又は境界点表示品に表示プレートを固定する、頭部と該頭部の周囲から等角度で外方に延びる複数の細長い板状体からなる表示プレート固定ピンであって、該板状体は頭部の外周囲から内側に折り返され、かつ頭部の中心部で垂直に折り曲げられ、該板状体の先端部が外側に鉤状に折り曲げられた係止部、又は中間部に外側に膨らんだ係止部を設けるとともに、該係止部が外方に付勢されてなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土地や道路の境界、又はケーブル、水道管、ガス管などの埋設位置等を表示するための標示杭、又は境界点表示品に識別番号等が付された表示プレートを固定するための表示プレート固定ピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
【0003】
従来、地籍調査などを行う場合に、位置表示部材としてプラスチック製の標示杭が使用されている。この標示杭は細長い棒状の杭本体の頭部に、着色されたキャップが取り付けられており、キャップが地盤から露出するように地盤に打ち込まれる。最近、地籍調査を円滑に行うために、地盤に打ち込まれた標示杭の頭部に被冠されたキャップに、識別番号や用途などの情報が付されたアルミニュウム製の表示プレートを取り付けた標示杭が注目されている。この標示杭に表示キャップを固定する方法として、地盤に打ち込まれた標示杭のキャップの上面に設けられた凹所に表示プレートを載置し、(1)釘をハンマーで表示キャップの中央の挿通孔から標示杭の頭部に打ち込んで固定する方法。(2)表示プレートの挿通孔をキャップの挿入孔に合致させ、該挿通孔にネジ状の係止部を有する止着部材を手で押し込んで表示プレートを固定する方法。等が提案されている。
【0004】
また標示杭が打ち込めない市街地の地籍調査には、表面に凹所が設けられた長方形の金属製の境界点表示品をコンクリートやアスファルトに貼着、又はアンカーボルトで固定した後、該凹所に表示プレートを載置し、次いで、表示プレートの挿通孔にピンを挿入してハンマーで打ちつけ、ピンを金属板にカシメることにより表示プレートを固定することが提案されている。
【特許文献1】 実用新案登録第2527607号
【特許文献2】 特開平7−279926号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示プレートを釘で固定する方法は、表示プレートを確実にキャップに固定できる利点がある。しかし重いハンマーを常に持ち運ぶ必要があり、また釘を打ち込む際に誤ってハンマーを表示プレートに打ち付け、これに付された情報を損なったり、釘を支える側の手を叩く恐れがある。ハンマーでピンを打ちつけて金属板にピン先端をカシメて固定する方法は、ピン先端の確実な板状体へのカシメに不安があるとともに、釘で固定する方法と同様にハンマー使用時の問題がある。
【0006】
一方止着部材を手で押し込んで表示プレートを固定する方法は、ハンマーを使用しない利点があるが、表示プレートを確実に固定するにはキャップの挿入孔から止着部材の離脱を阻止する係止部を、挿入孔の内壁、又は止着部材の外壁に設ける必要がある。しかし止着部材の外壁、又はキャップ挿入孔の内壁に係止部を設けるには金型が複雑となり、止着部材及びキャップのコストアップにつながり好ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、作業者がハンマーを使用せずに、手で押し込むだけで表示プレートを確実にキャップ、又は境界点表示品に固定することのできる安価な表示プレート固定ピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の標示杭、又は境界点表示品への表示プレート固定ピンは、標示杭の頭部に被冠されたキャップ、又は境界点表示品に表示プレートを固定する、頭部と該頭部の周囲から等角度で外方に延びる複数の細長い板状体からなる表示プレート固定ピンであって、該板状体は頭部の外周囲から内側に折り返され、かつ頭部の中心部で垂直に折り曲げられ、該板状体の先端部が外側に鉤状に折り曲げられた係止部、又は中間部に外側に膨らんだ係止部を設けるとともに、該係止部が外方に付勢されてなることを特徴としている。
【0009】
本発明の他の標示杭、又は境界点表示品への表示プレート固定ピンは、標示杭の頭部に被冠されたキャップ、又は境界点表示品に表示プレートを固定する表示プレート固定ピンであって、該固定ピンは頭部と先端部が外側に鉤状に折り曲げられた係止部、又は中間部に外側に膨らんだ係止部を有する複数の細長い板状体からなり、該係止部が外方に付勢されるよう複数の細長い板状体が頭部の中心部に等角度で溶着されてなることを特徴としている。
【0010】
表示プレートを標示杭の頭部に被冠されたキャップ、又は境界点表示品に設けられた凹所に取り付けるときには、まず、表示プレートをその挿通孔とキャップに設けられた挿入孔が合致するように凹所に載置する。次いで、固定ピンを表示プレートの挿通孔からキャップの挿入孔に入れ、ピンの頭部を親指で押しつけて、挿入孔に押し込む。この状態で外方に付勢された係止部が挿入孔の内壁に係止するため、固定ピンの挿入孔からの離脱が防止される。こうして、標示杭の頭部に被冠されたキャップに表示プレートを確実に固定される。このため表示プレートを取り付けるためのハンマーを持ち運ぶ必要がなく作業性が高められる。また誤ってハンマーなどを表示プレートに打ち付けて、これに付された情報を損なったり、ハンマーで手を叩くこともなくなる。
【0011】
本発明の表示プレート固定ピンの加工法は、ステンレスなどの耐食性に優れた金属板から固定ピンの頭部と細長い板状体を一体にプレス取りし、折り曲げ加工のみで固定ピンを製造する方法と、頭部と細長い板状体を別々にプレス取りし、該頭部に曲げ加工された板状体を溶着一体化する方法がある。後者は頭部の形状変更への対応が容易である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表示プレート固定ピンによれば、ハンマーを必要とすることなく、手で押し込むだけで表示プレートを標示杭、又は境界点表示品に容易に固定することができる。しかも係止部が外方に付勢されているためキャップの挿入孔からの離脱が確実に阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる表示プレート固定ピンの一実施態様を図面に基づいて説明する。図1は本発明の表示プレート固定ピンAの全体を示す一部断面図であり、この固定ピンAは、ドーム状の頭部1の中心から左右対称方向に延びる2枚の細長い板状体2が、頭部の外周囲aで内側に折り返され、次いで頭部の中心部bで垂直、又は内方に傾斜して折り曲げられている。また先端部cで先端を外側に鉤状に折り曲げて係止部Bを設けている。表示プレート固定ピンを挿入孔に垂直に押し込むためにはピンの先端部cを先細り形状にして、挿入孔内壁との接触面積を減少させておくのが好ましい。また頭部の中心には測量用のポール、又は光波反射鏡を立てるための凹部が設けられテいる。
【0014】
図2は平板状の頭部を有する表示プレート固定ピンの加工工程の一例を説明する図である。まず平面図で示すように、円盤状の頭部1と、その周囲の対称な位置に外方に延びる2枚の板状体2の形がプレス取りされる。次の工程以降は断面図で示すように、板状体2は頭部1の端aで垂直に折り曲げられ、更に板状体の先端部cが鉤状に折り曲げられて係止部Bを形成する。次いで板状体は頭部の中心部までの長さの位置bで外側に70〜90度折り曲げられる。最後に頭部の端aで90度内側に折り曲げられて表示プレート固定ピンAが完成する。2枚の板状体の先端部を折り曲げ部bを支点として外側に拡張させることで、鉤状の係止部Bを外方に付勢させることができる。
【0015】
頭部1の形状は四角形、多角形、円形とすることができるが、通常円形である。頭部は平板状でもドーム形状であっても良いが、ドーム形状は手で押し込み易く好ましい。図3は標示杭Cの頭部に被冠されたキャップDに表示プレートEを固定ピンAで固定した状態を示す断面図である。表示プレートEの挿通孔3とキャップDの挿入孔4が合致するように表示プレートを凹所5に載置し、表示プレート固定ピンAを表示プレートEの挿通孔3を介してキャップDに設けられた挿入孔4に、頭部1が表示プレートEの上面に当たるまで手で押し込む。
【0016】
板状体の先端部の係止部Bをキャップに設けられた挿入孔4の内壁に確実に係止させるには、固定ピンの先端cまでの垂直長さをキャップの挿入孔の深さよりも短く、かつ折り曲げられた係止部の先端がキャップの挿入孔の内壁に係止する長さに設定する。また板状体の幅が大きいほどキャップの挿入孔の内壁への接触面積が増加して固定ピンが挿入孔からの抜けが阻止できて好ましいが、キャップに設けられた挿入孔に押し込める程度の幅にする必要がある。挿入孔への押し込みを容易に、かつ垂直に押し込むにはピンの先端cの領域を先細り形状にしておくのが好ましい。
標示杭の頭部に被冠されるキャップは通常ポリエチレン等の樹脂製、境界点表示品はアルミニューム製であるため、樹脂やアルミニュームより剛性があるステンレス等の金属製の係止部を外方に付勢させておくと、ピンを抜こうとするときに係止部が挿入孔の内壁に食い込むため固定ピンが外れることはない。
【0017】
図4は本発明の他の表示プレート固定ピンAの全体を示す斜視図であり、この固定ピンは図2と同じ形状で、平盤状の頭部1と、その周囲の対称な位置に外方に延びる2枚の板状体2の形でプレス取りされている。頭部の中心部で垂直に折り曲げられた板状体の先端部を、鉤状に折り曲げるのではなく、板状体の中間部を外側に膨らませ、この膨らみ部が係止部Bを形成する。2枚の板状体の先端部を折り曲げ部bを支点として外側に拡張させることで、係止部Bを外方に付勢させることができる。板状体の中間部を外側に膨らませる際に、鋭角状に膨らませると鋭角の頂部が挿入孔の内壁に食い込むため好ましい。
【0018】
図5(a)は本発明の表示プレート固定ピンの他の例を示す断面図であり、固定ピンAは頭部1と細長い板状体2を別々にプレス取りしている。長い板状体は二つに折り曲げられ、更に両側の先端部を鉤状に外方に折り曲げて係止部Bとしている。板状体を二つに折り曲げたときに、板状体を外側に拡張させる状態で折り曲げると係止部Bが外方に付勢されるため好ましい。この二つに折り曲げられた板状体の折り曲げ部dを頭部1の中心に溶着すると表示プレート固定ピンが完成する。長い板状体を二つに折り曲げるのでなく、図5(b)に示すように先端に鉤状の係止部Bを有する二枚の板状体2の他端部eを頭部1の中心の対称位置に溶着しても良い。
【0019】
図6は本発明の表示プレート固定ピンAを用いて、標示杭の頭部に被冠されたキャップDに表示プレートEが固定された標示杭の全体を示す斜視図である。この標示杭は、細長い杭本体の先端側に先鋭部11を、基端側に四角柱形状とされた頭部10をそれぞれ形成して、この頭部にキャップDが被冠されている。杭本体およびキャップの横断面形状は、三角形、四角形以上の多角形、円形などの種々の形状とすることができる。杭本体の材料は、主に樹脂製品の成型時に発生する樹脂屑や樹脂製品の廃物などを原料とする廃棄樹脂が用いられる。キャップ材料は主にポリオレフィン樹脂が用いられ、一部廃棄樹脂が用いられる。
【0020】
キャップの頂面には凹所5が形成され、ここに表示プレートEが取り付けられる。この表示プレートの表面には、標示杭の識別番号や用途、土地の境界表示や区画番号、基準点からの距離、地下埋設物の情報などが付されている。図では「地籍調査」の文字と標示杭の識別番号「1903」とブロック番号「05」を付している。前記表示プレートはアルミニューム、ステンレスなどの耐腐食性を有する金属、または耐食性に優れた樹脂が用いられ、円形、多角形などの任意の形状のものが使用できる。通常円盤状のものを用い、前記凹所5に収容される。
【0021】
図7は本発明の表示プレート固定ピンAを用いて、標示杭が打ち込めない市街地の地籍調査等に使用されるアルミニューム等の金属製あるいは樹脂性の境界点表示品Fに表示プレートEを固定した例を示す斜視図であり、図8はコンクリートに貼着した状態を示す断面図である。境界点表示品Fは通常長方形であり、中央に表示プレートを収容する凹所5と、その中心に挿通孔6が設けられている。この凹所に中心に挿通孔3を有する表示プレートが収容され、表示プレート固定ピンAで境界点表示品に固定される。また図では境界点表示品の表面に境界方向を示す「矢印」と「地籍調査」の文字が付されている。
【0022】
境界点表示品の挿通孔6の長さは、少なくとも表示プレート固定ピンの折り曲げられた係止部が挿入孔に確実に係止できる長さにする必要がある。固定ピンが抜けるのを防止するために、境界点表示品の挿通孔の内壁に係止部の先端を係止させる突出体を設けることが好ましい。固定ピンの先端cが境界点表示品の底面から突出する場合は、予めその位置のコンクリートに穴を掘っておくと、固定ピンの係止部Bを境界点表示品の底面に係止させることができる。
コンクリートに貼着された境界点表示品では、表示プレート固定ピンAを表示プレートEの挿通孔3を介して境界点表示品に設けられた挿入孔に、頭部1が表示プレートEの上面に当たるまで手で押し込むことにより確実に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】表示プレート固定ピンの斜視図である。
【図2】表示プレート固定ピンの加工工程を示す説明図である。
【図3】標示杭頭部に表示プレートを固定した状態を示す断面図である。
【図4】他の表示プレート固定ピンの全体を示す斜視図である。
【図5】表示プレート固定ピンの他の例を示す斜視図である。
【図6】表示プレートが固定された標示杭の斜視図である。
【図7】境界点表示品に表示プレートを固定した斜視図である。
【図8】境界点表示品をコンクリートに貼着した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
A・・・表示プレート固定ピン
B・・・係止部
C・・・標示杭
D・・・キャップ
E・・・表示プレート
1・・・頭部
2・・・細長い板状体
3・・・挿通孔
4・・・挿入孔
5・・・凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標示杭の頭部に被冠されたキャップ、又は境界点表示品に表示プレートを固定する、頭部と該頭部の周囲から等角度で外方に延びる複数の細長い板状体からなる表示プレート固定ピンであって、該板状体は頭部の外周囲から内側に折り返され、かつ頭部の中心部で垂直に折り曲げられ、該板状体の先端部が外側に鉤状に折り曲げられた係止部、又は中間部に外側に膨らんだ係止部を設けるとともに、該係止部が外方に付勢されてなることを特徴とする標示杭、又は境界点表示品への表示プレート固定ピン。
【請求項2】
標示杭の頭部に被冠されたキャップ、又は境界点表示品に表示プレートを固定する表示プレート固定ピンであって、該固定ピンは頭部と先端部が外側に鉤状に折り曲げられた係止部、又は中間部に外側に膨らんだ係止部を有する複数の細長い板状体からなり、該係止部が外方に付勢されるよう複数の細長い板状体が頭部の中心部に等角度で溶着されてなることを特徴とする標示杭、又は境界点表示品への表示プレート固定ピン。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−292710(P2007−292710A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145903(P2006−145903)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(591034017)株式会社リプロ (15)