説明

模擬建物セット及びこれを用いた建物構造の決定方法

【課題】 顧客の要望を満足させる建物の構築を実現する。
【解決手段】 予め製作された間取り図に合わせて標準的寸法の建物の外壁3及び仕切り壁5により模擬建物1を構築し、この中に模擬設備7や模擬家具8等を配置して建物の構造の実感を出すようにした模擬建物セットを構築する。外壁3、仕切り壁5は、これらの横幅の異なる模型壁を選択して多数並立することにより模擬建物1としてある。顧客がこの模擬建物セット内に入り、実際の生活をシミュレーションし、不都合な点をチェックして寸法や配置の変更要望を出し、建物業者側はこれを承けて設計変更し、顧客の要望に応じた建物を提供可能とする。このセットは、顧客の要望に応じた変更が容易であり、変更した壁長や設備や家具等の配置に基づいて実際の建物を構築可能となることから、入居後の不満が出ない建物の提供が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の間取り図に基づいて模擬建物を製作し、更に建物内に家具等を配置して実際に使用勝手をシミュレーションし、顧客の体感により建物内部の空間の大きさや家具の配置を変更可能にした模擬建物セット及びこれを用いた建物構造の決定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
戸建てや中高層建物の住居やオフィスを購入するに当たり、一般的に建て主である顧客は概略の建物構造等を設計者に提示して、建築の設計依頼をしている。顧客は出来上がった間取り図に基づいて使用状態をイメージし、手直しの必要な個所はその変更を要請し、最終的に設計図が出来上がる。建築業者によっては、住宅展示場やモデルルーム等を設け、顧客に実際に使い勝手を体験させるなどして、その要望を採用するようにしていることは多く行われていることである。しかし、図面やモデルルーム等によるイメージだけでは、実際に出来上がる建物の使い勝手について、顧客の要求を十分に満たすことができないため、後になって顧客から不満が出てくることが往々にしてある。
【0003】
そこで、少しでも顧客の要望に沿うべく建築業者は種々の試みを行っている。その1として、様々な使用要求に対応するとともに「田」字形状の間取りを維持することができて空間を有効に利用出来るようにした建物の設計方法が提示されている。これは建物の内部に平面視で十文字に交差する帯状の境界帯を設定し、区切られた各領域の空間の有効利用を可能にしたものである(特許文献1)。その2として、建築の設計資料に基づいて建物の立体模型の組立セットを容易かつ安価に提供し、立体模型によって建物の構造を正確に認識出来るようにする建物設計支援システムが提案されている(特許文献2)。
【0004】
その3として、設計の際にプランニングのバリエーションを多くした建物の設計方法及びそれを実現する建物が提案されている(特許文献3)。これは建物の敷地に基本領域を並べて配置し、各領域に各種設備を配置することで正確な建物の設計を行うようにするものである。その4として、不動産物件の評価を行い、不動産物件を利用する場合のシミュレーションを行う不動産情報管理システムが提示されている(特許文献4)。これは、コンピュータ上で利用シミュレーションを行うことが出来るため、住みやすい住居の設計に有効なものとなる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−265569号公報
【特許文献2】特開2002−312419号公報
【特許文献3】特開2003−105982号公報
【特許文献4】特開2001−175715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術のその1は、「田」字形状の間取りを維持することを前提とするもので、プレハブ住宅固有の課題解決に資するもので、在来工法など複雑な形状の住宅を対象外とするものである。その2は、いわゆる壁工法における住宅の立体模型の組立セットにより建物の認識を高めようとするもので、模型自体が高価なものとなるために、顧客の多様なニーズに対応することが困難であるという問題がある。また、建物内外の寸法や配置の変更が簡単ではないため、顧客が満足するモデルを提供することが困難であるという問題がある。その3は、設計方法に関するものであって、顧客は見馴れない図面により居住感をイメージするほかはないので、実際の建物完成後に不都合を生じることが起きやすい問題が生じる。その4は、コンピュータにより建物の利用目的に応じた利用シミュレーションを行うものであるが、顧客等はスクリーン上だけでは実体感を伴わないので、建物の完成後に不満が出るおそれがある。本発明の目的は顧客に実際の建物の大きさや構造などを体感させ、顧客の要望を十分にくみ上げることにより納得の行く建物の構造を提供可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用することにより、以下の作用効果を奏するようにしたものである。請求項1に記載した発明の模擬建物セットは、通常の組立家屋用パネル壁よりも簡単な構造かつ実物と同様の寸法に構成してあるとともに、複数通りの横幅を有する複数の模型壁の中から選択した複数の模型壁を組合せて構築した模擬建物と、この模擬建物内に設置及び配置変更容易な模擬設備と、同じくこの模擬建物内に配置可能な家具又は通常の家具よりも簡単な構成かつ実物と同様の寸法にしてある模型家具とにより構成してある。この模擬建物は選択した複数の模型壁を並立した状態における一連の壁の壁長を任意に変更容易であるとともに、模擬設備及び家具又は模型家具を配置容易及び配置変更を容易にしてあるところに特徴がある。
【0008】
ここで模擬建物とは、実物の壁と同様の寸法に構成してある模型壁を並立することにより構成される壁構造物を指す。この模擬建物は外壁及び仕切り壁によりより構成され、実物と同様の寸法に構築される。次に模型壁とは模擬建物を構築する場合に、並立した壁全体の長さとしての間口や奥行きに対応する壁長とすることができるように複数通りの幅とし、簡単な構成かつ並立した壁が実物と同様の寸法になるように作られた個々の壁をいう。また、組立家屋用パネル壁とは、いわゆるプレハブ建築物などに使用する量産壁パネルを指す。上述の壁長とは、間口や奥行きなど複数の模型壁を組み合わせて並立することにより構成した1連の模型壁における一端から他端までの距離を指す。また、通常の家具とは普通一般に家庭やオフィスで使用されている家具を指す。さらに顧客には、体感によるシミュレーションは、建築関係者の誰にとっても重要な事項であるため顧客以外の関係者にとっても重要な資料提供を可能とするものであることから建物等の注文者の他に設計者、開発者、施工者等も含まれる。
【0009】
請求項1に記載した発明に係る模擬建物セットは、複数通りの横幅を有する複数の模型壁を組み合わせて所望の建物構造に、かつ実物と同様の構造及び寸法の模擬建物を形成可能となる。この模擬建物セットを構築し、顧客が実際にシミュレーションして体感することにより建物の諸構成をチェック可能であるため、詳細な間取りや建物構造の使用勝手を体感したデータに基づいて設計の資料とすることが可能となる。また、このようなチェックによる建物内空間の大きさについては、模型壁を交換することにより所望の壁長が得られることから、これを繰り返して満足がゆくまで繰り返すことが出来る。さらにまた、配置する建物設備や家具等も配置や大きさについても、模擬建物の内部の大きさと関連して決めることが出来る。最終的にできあがった模擬建物セットから得たデータを基に建物の内外の構造や寸法設計変更が行われる。こうして出来上がる実際の建物は、顧客の要望をきめ細かくかつ最大限に活かしたものとすることができることから、入居後の不満を少なくすることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載した発明は、上記の模型壁に壁長調整手段を備えているところに特徴がある。壁長調整手段は、各模型壁の一側部又は両側部に、並立状態において隣接する模型壁と部分的に嵌合して連結可能であり、両者を相対移動させて連結部分の幅を調整することにより、これらの模型壁を連結してなる連結壁の壁長を変更可能にするものである。ここで連結壁とは、並立した模型壁同士を連結して外壁や仕切り壁としたときにおける一連の壁構造物を指す。この発明の特徴は、上記した連結壁の壁長の変更を、壁長調整手段を備えた模型壁の採用により容易化したところにある。この壁長調整手段の採用により、組み合わせてなる1対の模型壁が壁長の僅少調整に対応可能となることから、1枚の模型壁で複数通りの横幅の異なる模型壁を交換せずに壁長の調整に対応可能となる。したがって、必要な壁長を得るために準備しておかなければならない模型壁の数を少なくすることができる。また、壁長調整手段により、1対の又は複数対の模型壁の調整で対応可能となるので、壁長の変更毎に模型壁の交換を要しなくなることからセット構築の手間を省ける。さらに準備しておく模型壁の数を少なくできることから、模型壁の保管場所も節減出来るので管理コストの低減が可能となる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した模擬建物セットを用いた建物構造の決定方法である。この発明は、次のステップで実行される。
(1)請求項1又は請求項2に記載した模型壁を用いて顧客の要望する建物構造に沿って実物と同様の大きさ及び構造の模擬建物を構築する。
(2)この模擬建物内に実物と同様の大きさの模擬設備と家具又は実物と同様の大きさの模型家具とを配置して請求項1又は請求項2に記載した模擬建物セットを設置する。
(3)上記の模擬建物について建築しようとする建物の使用勝手をシミュレーションして実際の体感に基づくデータを採取する。
(4)顧客の要望に応じて模擬建物の寸法調節及び模擬設備及び家具又は模型家具の配置を変化させ、これらのデータを採取する。
(5)上記の採取データに基づいて建築しようとする建物の間取りや建物設備及び家具の配置を決定する。
【0012】
建物構造には、顧客が間取り図などを作成して提示するもの、建築業者の推奨するもの、他の建物等を参考にした間取りなどを含む。また、建物の間取りや建物設備及び家具の配置を決定するステップには、再度壁長の変更や家具等の配置変更後に行う再シミュレーションを含むものとする。この発明は、建築しようとする建物の使用勝手をシミュレーションしてから寸法や配置の手直しを行い、ここから得られたデータに基づいて設計するので、建物の完成後における不満を生じさせないようにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建てようとする建物の構造について、実物大の建物空間と家具等の配置を模擬建物セットとして容易に提供できるので、建物注文者等は実際にシミュレーションにより使用勝手を体感し、内部空間の広さや行動パターンをイメージできる。この結果、現在の建物構造や設備等の配置の不適切さを指摘可能となる。従ってこのような体感に基づく手直しを経たデータにより設計された建物は、入居後の不満が少なくなる。また、壁長調整手段を備えた模型壁で模擬建物セットを構築すれば、壁長の変更範囲が広範になるため、準備しておかなければならない模型壁の数を少なくすることが出来るとともに、僅少な壁長の変更は模型壁の交換をしなくても可能となるので、模擬建物セット構築のコストを低廉なものとすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態として、2階建ての1階部分をオフィスとする戸建て建物を設計するために構築する模擬建物セットを取り上げて説明する。この模擬建物セットを構築する敷地には、予め床面はモルタル仕上げなどを施して平坦となし、模型壁を整然と並立することにより内外を仕切ってなる模擬建物を構築容易とする状態を作っておくことが望ましい。ここで取り上げる基本間取りは、図1に示すように、建物設備や家具の配置を含む間取り図に基づいて構築された模擬建物1を基本として用いることとする。この模擬建物1に後述の模型設備や家具等を配置して模擬建物セットを構成してある。この模擬建物セットに対して顧客等がシミュレーションを行った後に間取り等種々の変更を行うようにしてある。
【0015】
模擬建物1は、図1に示すように、選択された多数の模型壁2を並立したものにより構築してある。すなわち、模擬建物1は、図2に示すような複数通りの横幅(X)を有する模型壁2を用い、図3に示すように、並立することにより構築する。模擬建物1は、模型壁2によって外周を長方形に囲ってなる外壁3と、建物の内部を仕切っている模型壁2によって区分してある仕切り壁5とにより内外を区分してある。この模擬建物1の内部に厨房、階段、便所等の種々の建物設備7と、書棚、机、椅子などの家具又は模型家具8を配置することにより模擬建物セットを構成している。因みにこの模擬建物1内には、ロビー6a、応接間6b、執務室6c、6d,6e及び水回り6fなどに区分することが出来る。
【0016】
こうして出来上がった模擬建物セット内に顧客が立ち入り、仕様勝手をシミュレーションすることにより実際の大きさや居心地などを体感する。顧客は仕切り壁の位置、部屋の広さ、家具等の配置やそれらの変更などを検討し、それに基づく要望を建築業者等に出す。建築業者等はこれらの要望に基づき仕切り壁の位置や家具等の配置、あるいは必要な家具や設備を調達する。場合によっては、外壁の壁長を変更して間口や奥行きの大きさ、さらには模擬建物1の形状を変更する。こうして建物の構造が決まった段階で、最終的な設計の手直しをして施工に移る。設計が完了すればこの模擬建物セットは不要となるので、適時に解体して模型壁や模擬建物設備や家具等を倉庫等に保管しておく。
【実施例1】
【0017】
図1に示すように、実施例1の模擬建物セットは、入れ物となる模擬建物1を、図2に示すような厚み及び高さをいずれも同じものとしてあるが、横幅(X)(図2参照)を段階的に変化するように揃えられた横幅が複数通りの複数の模型壁2によって、外壁3及び仕切り壁5を構成している。外壁3は予め準備された複数通りの多数の模型壁の中から、選択された模型壁の横幅の組合せにより、所定の壁長になるように並立してなる多数枚の模型壁2,…で構築されている。仕切り壁5も同様に多数枚の模型壁2,…で構成されている。模型壁2の横幅(X)は、例えば500mm〜200mmの範囲で200mm間隔のものを準備しておくとよい。特に基準寸法が900mm、1350mm、1800mmなどの使用頻度の高いものは品不足を防ぐために多数準備しておくとよい。模型壁2の厚みは200mm前後とし、高さは実際の壁高に近い2000〜2500mmのなかから統一したもので揃えるとよい。
【0018】
また、模擬建物をなるべく実物に近いものにするために、図2(d)に示すような両開き扉付き、又は同図(e)に示すような片開き扉付きの模型壁なども用意しておくことが望ましい。なお、これらの模型壁2は、構築や解体などの作業の容易化を図るためになるべく軽量化を図ることが望ましい。図面では内側を窓状に切欠して軽量化を図ったものとしてあるが、この他、全面を壁面とし、建物の内側になる方の面を塗り壁やクロス張りとし、仕切り壁については両面に塗り壁やクロス張りとしたものを採用してもよい。これらの各模型壁は、素材についての制限はないが、ここでは角材で骨組みを組み、両面に薄板を貼り付けてなる木製の模型壁を採用してある。この他、模型壁の構成材としては、アルミニウム合金製の外枠に発砲スチロールを嵌め込んだものや、複合木材を用いたもの、あるいはこれらの材料を適宜組み合わせたものを採用してもよい。
【0019】
図4は、模型壁の具体的な構造の例を示したものである。図示してあるように、模型壁12に、並立した状態で隣接壁との連結を確実に行うために、一側部には係合凹部12aを他側部には係合突部12bを設けたものを採用してある。係合凹部12a及び係合突部12bは、並立状態で連結したときに隣接壁との連結を確実に行うためのものである。これにより1対の模型壁を並立させた時、凹部12aと突部12bとの係合により両者の継ぎ目に隙間のないものとすることが可能となる。各模型壁12の下端部には、キャスター12c,12cが設けてある。これらのキャスターは、模型壁12の移動を容易とするとともに、風や地震などにより壁が倒れることを防ぐための倒伏防止手段を兼ねるものとなる。なお、キャスター12cとしては、模型壁に対して着脱容易としたものを採用すれば、模型壁の保管時に倉庫などの省スペースを図ることが出来る利点がある。
【0020】
並立された外壁3や仕切り壁5は、そのキャスターだけでは倒れるおそれがあるので、倒伏防止手段を必要とすることがある。ここでは、図5に示すように、両端を外部構造物(図示略)に支持された溝形部材の開口面を下向きにして各模型壁12の上端部を支持するようにしたものを倒伏防止手段17として採用してある。この倒伏防止手段17は、外壁の一方の方向に沿って架設された第1の溝形部材17aと、これに交差するように架設された第2の溝形部材17bとを組み合わせたものにより構成してある。第1の溝形部材17aが前後の模型壁を支持するのに対し、第2の溝形部材17bは図面には表れていないが図示の模型壁と直交するように並立してある模型壁の上端部を支持するようにしてある。これらの溝形部材17a,17bは、任意の位置に設置可能かつ移動自在とすることにより外壁の変形に対応可能としてある。
【0021】
なお、この実施例で採用してある模型壁は、並立時に隣接壁同士を密着させることを前提としたものであるが、必ずしも隣接壁同士を密着させなければならないものではなく、場合によっては隣接壁間に隙間を生じたものであってもよい。さらに側部に設けてある突部や凹部を設けていないものとしてもよい。
【実施例2】
【0022】
実施例2は、複数通りの横幅を有する複数の模型壁によって外壁及び仕切り壁を構成する点において実施例1と同様であるが、模擬建物の間口や奥行き等の壁長の変更を容易にするために、壁長調整手段を備えたものを採用してあるところに特徴がある。図6に示すように、この壁長調整手段24は、隣接する模型壁同士を部分的に嵌合可能とし、両者を相対移動させることにより嵌合の範囲を調節可能としてある。こうして、嵌合する部分の長さを変化させれば、間口や奥行き等を構成するように並立させた一連の模型壁(連結壁)の壁長を、一定の範囲内で模型壁の交換なしに調整可能となる。この壁長調整手段24の具体的な構成は、隣接する1対の模型壁22の一端に係合凹部221a、他端に係合突部222bを備え、模型壁を並立した状態で係合凹部221aと係合突部222bとが所定の範囲内で係合可能としてある。図6ではたとえば、左側の模型壁221の右端部は約400mmの範囲に凹部221aが設けてあり、右側の模型壁222の左端部から約400mmの範囲が突部222bになっている。各端部が対向するように配置された1対の模型壁221,222は、互いに接近させた後、凹部221aと突部222bとを所望の範囲で係合させることにより連結可能である。
【0023】
各模型壁の高さの中央部に設けてある横板22d,…には、複数個ずつの位置決め孔22h,…が設けてある。これらの位置決め孔22hは、例えば図示のごとく4個ずつ設けてある孔の端部から2番目の孔同士を一致させた状態が定寸となるようにしてある。孔同士の各間隔を例えば100mmとすれば、100mm間隔で300mmの範囲で壁長の調整が可能となる。一致させたこれらの孔にボルトなどの固定手段を差し込んでおけば、後になってずれるようなことがなくなるので安定した調整壁長が得られる。
【0024】
図7は、上記の模型壁を連結して並立させた状態を示したものである。左の模型壁221の端部と中央の模型壁222とは壁長が標準長になるように連結してあるのに対し、中央の模型壁222と右の模型壁223とは標準よりも所定間隔分だけ長くなるように連結した例を示している。なお、倒伏防止手段17は、キャスターや溝形部材を用いることについては実施例1と同様である。
【0025】
以上の説明においては、戸建てオフィスの1階の部分を取り上げて説明してあるが、本発明はこの他、一般住宅やリフォーム計画の実施についてももちろん適用可能であり、さらには中・高層住宅の内部構造や家具等の配置の設計についても適用可能である。また、顧客の要望によっては、床材を敷設し、壁にクロス等を貼り付け、又は天井を設け、あるいは窓ガラスを取り付けるようにすることも可能である。床面には模型壁を保持するための溝を設け、キャスター無しで模型壁を並立可能とし、あるいは模型壁の配置予定位置に線引きをして模型壁の配置を容易にするなど場合に応じて工夫するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、建築しようとする建物の構造を決める場合に、顧客の要望に対して少しでも沿えるようにするための手段を提供するものであり、建築の需要促進を図る上で有用なものであり、産業上の利用可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】模擬建物セットの構築例を示す間取り図である。
【図2】実施例1における横幅の変化による模型壁の種類を示す正面図である。
【図3】実施例1における外壁の組立状態を示す斜視図である。
【図4】模型壁の形状を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図である。
【図5】実施例1における外壁を並立した状態を示す斜視図である。
【図6】実施例2の模型壁の構造を示す一部切欠斜視図である。
【図7】実施例2における外壁の組立状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 模擬建物
2、12,22 模型壁
3、13,23 外壁
5,15,25 仕切り壁
7 建物設備
8 家具又は模型家具
24 壁長調整手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の組立家屋用パネル壁よりも簡単な構造かつ実物と同様の寸法に構成してあるとともに、複数通りの横幅を有する複数の模型壁の中から選択した複数の模型壁を組合せて構築した模擬建物と、
上記模擬建物内に設置及び配置変更容易な模擬設備と、
上記模擬建物内に配置可能な家具又は通常の家具よりも簡単な構成かつ実物と同様の寸法に構成してある模型家具と
により構成され、
上記模擬建物は選択した複数の上記模型壁を並立した状態における一連の壁の壁長を任意に変更容易であるとともに、上記模擬設備及び上記家具又は上記模型家具を配置容易及び配置変更を容易にしてある
ことを特徴とする模擬建物セット。
【請求項2】
請求項1において、上記模型壁は一側部又は両側部に、並立状態において隣接する上記模型壁と部分的に嵌合することにより連結可能であり、連結部分の幅を調整することにより上記模型壁を連結してなる連結壁の壁長を変更可能にする壁長調整手段を備えていることを特徴とする模擬建物セット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した模型壁を用いて顧客の要望する建物構造に沿って実物と同様の大きさの上記模擬建物を構築し、
上記模擬建物内に模擬設備と家具又は実物と同様の大きさの模型家具とを配置して請求項1又は請求項2に記載した模擬建物セットを設置し、
上記模擬建物対して構築しようとする建物の使用勝手をシミュレーションして実際の体感に基づくデータを採取し、
上記顧客の要望に応じて上記模擬建物の寸法調節及び上記模擬設備及び上記家具又は上記模型家具の配置を変化させ、
上記データに基づいて構築しようとする建物の間取りや建物設備及び家具の配置を決定する
ことを特徴とする模擬建物セットを用いた建物構造の決定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−171874(P2007−171874A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373153(P2005−373153)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(505477305)
【Fターム(参考)】