説明

横型ろ過装置

【課題】少量の逆洗浄用の処理水で効率良く繊維ろ材の洗浄再生処理を可能にするのみならず、簡単な構造で効率的なろ過が可能な横型ろ過装置を提供すること。
【解決手段】横型ろ過機本体1の一端側に原水入口10を備え他端側に処理水出口16を備えた横型ろ過機本体1を有し、該本体1内には繊維ろ材21を充填してなり、且つ該本体1の下方には該本体1内に空気を送り込む空気管18が接続されており、前記処理水出口16が前記本体1の下方に設けられることを特徴とする横型ろ過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型ろ過装置に関し、詳しくは少量の逆洗浄用の処理水で効率良く繊維ろ材の洗浄再生処理を可能にするのみならず、簡単な構造で効率的なろ過が可能な横型ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原油等を輸送する貨物用船舶には、航行時の船体の安定性を保つためにバラストタンクが設けられている。通常、原油等が積載されていないときには、バラストタンク内をバラスト水で満たし、原油等を積み込む際にバラスト水を排出することにより、船体の浮力を調整し、船体を安定化させている。
【0003】
このようにバラスト水は、船舶の安全な航行のために必要な水であり、通常、荷役を行う港湾の海水が利用される。その量は、世界的にみると年間100億トンを超えるといわれている。
【0004】
ところで、バラスト水中には、それを取水した港湾に生息する微生物や小型・大型生物の卵が混入しており、船舶の移動に伴い、これら微生物や小型・大型生物の卵が同時に異国に運ばれることになる。
【0005】
従って、もともとその海域には生息していなかった生物種が、既存生物種に取って代わるといった生態系の破壊が深刻化している。
【0006】
このような背景の中、国際海事機関(IMO)の外交会議において、バラスト水処理装置等に係る定期的検査の受検義務が採択され、2009年以降の建造船から適用される予定となっている。
【0007】
また、船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための条約(以下、条約という)により、バラスト水の排出基準は、以下の表1のようになる予定である。
【0008】
【表1】

【0009】
このためバラスト水の処理方法として、膜モジュールを用いる手法が検討されている。
【0010】
膜モジュールを用いた手法では、効果的な膜処理を実施する上では、膜孔径に適した原水となることが好ましい。例えば10μm以下の孔径の膜モジュールを使用する場合、大粒径の懸濁物質をろ過するのは非効率である。
【0011】
従来、バラスト水の膜モジュール処理ではストレーナーによって前処理していたが、処理量が多いために大口径のストレーナーを使用すると設置ストレーナーの数が増加し、ストレーナーが目詰まると配管から外して洗浄する必要があり、メンテナンスが大変であった。従って、膜モジュールの前処理として効果的な手法の確立が望まれていた。
【0012】
一方、水中の懸濁物質を分離除去する水処理技術として、ろ過操作が知られている。特許文献1には、繊維ろ材を用いたろ過装置が開示されている。特許文献1に記載のろ過装置は、密閉タンク内に、繊維ろ材を充填し、原水を、繊維ろ材層の上方から下方へ向けて圧送することによりろ過する竪型ろ過装置である。しかし、上述の竪型ろ過装置では、重力を利用して一定の厚さのろ層を形成することが容易であるが、繊維ろ材の洗浄再生処理の際に、逆洗浄用の処理水が多量に必要となる欠点がある。
【0013】
そこで、特許文献2には少量の逆洗浄用の処理水で効率良く繊維ろ材の洗浄再生処理を可能にする横型のろ過装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10−305204号公報
【特許文献2】特開2005−144230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献2に記載の横型のろ過装置では、繊維ろ材を一定の積層状態にするためのろ材操作部材や、摺動ガイド軸などを必要とし、コスト高となる欠点がある。
【0015】
そこで、本発明の課題は、少量の逆洗浄用の処理水で効率良く繊維ろ材の洗浄再生処理を可能にするのみならず、簡単な構造で効率的なろ過が可能な横型ろ過装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0018】
(請求項1)
横型ろ過機本体の一端側に原水入口を備え他端側に処理水出口を備えた横型ろ過機本体を有し、該本体内には繊維ろ材を充填してなり、且つ該本体の下方には該本体内に空気を送り込む空気管が接続されており、前記処理水出口が前記本体の下方に設けられることを特徴とする横型ろ過装置。
【0019】
(請求項2)
横型ろ過機本体の一端中央近傍と他端中央近傍に電磁弁付の接続管を各々備え、
該本体の一端下方と他端下方に電磁弁付の接続管を各々備え、
一端中央近傍の接続管の電磁弁が開となって原水入口から原水を導入する場合は、他端中央近傍の接続管の電磁弁と本体の一端下方の接続管の電磁弁は閉となり、前記他端下方の接続管の電磁弁が開となって処理水を排出する制御を行うことを特徴とする横型ろ過装置。
【0020】
(請求項3)
膜モジュールによる膜処理の前処理手段として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の横型ろ過装置。
【0021】
(請求項4)
原水が、海水又は淡水であり、処理水がバラスト水として利用されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の横型ろ過装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、少量の逆洗浄用の処理水で効率良く繊維ろ材の洗浄再生処理を可能にするのみならず、簡単な構造で効率的なろ過が可能な横型ろ過装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る横型ろ過装置の一例を示す概略断面説明図である。同図において、1は密閉容器である横型ろ過機本体であり、本体断面が筒型であれば、断面円形、断面楕円形、断面多角形等でも良い。なお、本体1には図示しないが、充填材装填、内部点検などのためのヒンジ付マンホールや覗き窓、あるいは圧力検知手段などが設けられている。
【0025】
本体1には、その一端中央近傍(図面上左側)に接続管10が取り付けられている。この接続管10は本実施の形態では、原水入口管に相当する。接続管10には自動開閉可能な電磁弁11が設けられている。一方、本体1の他端中央近傍(図面上右側)には、接続管12が取り付けられている。この接続管12には自動開閉可能な電磁弁13が設けられている。本実施の形態では電磁弁13は閉状態にある。
【0026】
本体1の一端(図面上左側)下方には接続管14が設けられ、接続管14には電磁弁15が設けられている。また本体1の他端(図面上右側)下方には接続管16が設けられ、接続管16には電磁弁17が設けられている。本実施の形態では電磁弁15は閉で、電磁弁17は開になっており、接続管16が処理水出口になっている。
【0027】
なお、接続管14、16には後述する繊維ろ材21を通過させないようなパンチングプレート、スクリーン等を設けることが好ましい。
【0028】
本体1の下方には、本体1内に空気を送り込む空気管18が複数接続されている。各空気管18には各々電磁弁19が設けられている。なお、電磁弁19は、各空気管18毎に設けずに複数の空気管18、18・・・の集合管であるヘッダー管に一つだけ設けることもできる。
【0029】
20は本体1から空気を排出する空気排出弁で、本体1内の圧力上昇に応じて自動的に開閉するようにすることもできる。
【0030】
本発明に用いる好適な繊維ろ材21としては、ボール状に形成された樹脂製繊維ろ材が好ましく、好ましくは熱可塑性繊維の短繊維が絡み合い一部が融着した集束体(棒状の集束体)の中心をリング状部材で絞めて外形がボール状になるように形成したものである。
ボール状の繊維ろ材21の外径は、12mm〜50mmの範囲のものが好ましい。12mm以下では圧力損失が大きくなるという問題があり、50mmを越えると空隙率が高くなり、除去率が低下することとなり好ましくない。
【0031】
ろ過装置本体1内に充填する繊維ろ材21の数は、15,000〜300,000個/mの範囲が好ましく、より好ましくは20,000〜100,000個/mの範囲である。
【0032】
なお、繊維ろ材21の重量は、100〜140kg/mの範囲が好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂の素材としては、ポリエステル、ポリプリロピレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル等が挙げられ、これらは単独でも2種以上の繊維を混合して用いてもよい。また、短繊維は、通常の繊維形状であっても、中空繊維、繊維表面に凹凸を有するものなどいずれでもよい。
【0034】
図1のろ過装置を用いてろ過するには、バラスト水として利用できる原水(淡水又は海水)を接続管10に導入する。電磁弁11を開にして原水を本体1内に導入する。
【0035】
接続管16の電磁弁17を開にし、電磁弁13、15は閉にした状態で、処理水を接続管16から排出する。
【0036】
本体内に原水が導入され、処理水出口で接続管16に向かって流体の流れ方向が形成される。その過程で原水圧力によって繊維ろ材21は接続管16側の方に移動し、図示のような圧縮された傾斜積層状態が形成され、接続管16の出口近傍付近に集まるようになる。このような傾斜積層状態が形成されるのは、接続管16の設置位置が本体1の他端下方であるからである。このような傾斜積層状態は格別部材を必要とせずに形成される点が本発明の特徴である。傾斜積層状態が形成されると原水がショートパスすることがなくろ過が可能となる。
【0037】
原水中の懸濁物質は、繊維ろ材21に捕捉され、特に圧縮された傾斜積層状態にあるために、懸濁物質が捕捉しやすい状態となっており浄化率をより向上させることができる。
【0038】
なお、圧縮する圧力は、原水流入圧力で決まる。
【0039】
ろ過された処理水は、図示しない船舶内のバラストタンクに送ってもよいが、更に高次の処理を行うために図示しない膜モジュールを用いた膜処理手段に送ることが好ましい。本発明のろ過装置がかかる膜処理の前処理として効果的処理手段である。
【0040】
ろ過処理を一定時間行って繊維ろ材21が目詰りしてきた場合には、一旦ろ過処理を停止し、繊維ろ材の洗浄処理を行う。
【0041】
繊維ろ材21の目詰まりを検出する方法としては、本体1の入口と出口の流体の圧力を検出し、その差圧を検出するなどの方法、タイマーによる方法などがあるが格別限定されない。
【0042】
図2に示すように、所定液面まで本体1内の液面を下げて、空気管18から空気を送り込む(電磁弁19を開)。空気を送り込んでいる最中は、電磁弁11、13、15、17は閉とする。この空気曝気を所定時間行い、繊維ろ材21に付着した懸濁物質が分離したら、電磁弁17と電磁弁11を開にして、清浄な水を接続管16から導入し、懸濁物質を含む洗浄排水を接続管10から排出する。排出口は接続管14であってもよい。洗浄用の清澄な水は、ろ過処理水を用いることが好ましい。空気洗浄中に接続管16から清浄な水を供給することで、洗浄効果を高めることができる。
【0043】
この洗浄方法では曝気を併用しているので、少量の処理水で洗浄が可能になる。
【0044】
図3は、本発明の他の好ましい実施の形態を示す概略断面説明図である。この形態は図1の形態において、原水の入口方向と処理水出口方向を逆にしたものである。
【0045】
原水を接続管12に導入する。電磁弁13を開にして原水を図面上右側から本体1内に導入する。
【0046】
接続管14の電磁弁15を開にし、電磁弁11、17は閉にした状態で、処理水を接続管14から排出する。
【0047】
本体内に原水が導入され、処理水出口で接続管14に向かって流体の流れ方向が形成される。その過程で原水圧力によって繊維ろ材21は接続管14側の方に移動し、図示のような圧縮された傾斜積層状態が形成され、接続管14の出口近傍付近に集まるようになる。この傾斜積層状態は図1の形状と対称となっているが、作用効果は全く同じである。
【0048】
このように本発明では、原水と処理水の入口と出口を逆にしても同様にろ過処理が可能になる。従って、ろ過、洗浄工程の切替時間を短縮できるという効果があり、またバラスト水処理においては、処理水を再度ろ過できるため、微生物のリグロース対策としても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る横型ろ過装置の一例を示す概略断面説明図
【図2】空気曝気状態を示す概略断面説明図
【図3】原水導入を図1の例と逆方向から実施した例を示す概略断面説明図
【符号の説明】
【0050】
1:横型ろ過機本体
10,12,14,16:接続管
11,13,15,17:電磁弁
18:空気管
19:電磁弁
20:空気排出弁
21:繊維ろ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型ろ過機本体の一端側に原水入口を備え他端側に処理水出口を備えた横型ろ過機本体を有し、該本体内には繊維ろ材を充填してなり、且つ該本体の下方には該本体内に空気を送り込む空気管が接続されており、前記処理水出口が前記本体の下方に設けられることを特徴とする横型ろ過装置。
【請求項2】
横型ろ過機本体の一端中央近傍と他端中央近傍に電磁弁付の接続管を各々備え、
該本体の一端下方と他端下方に電磁弁付の接続管を各々備え、
一端中央近傍の接続管の電磁弁が開となって原水入口から原水を導入する場合は、他端中央近傍の接続管の電磁弁と本体の一端下方の接続管の電磁弁は閉となり、前記他端下方の接続管の電磁弁が開となって処理水を排出する制御を行うことを特徴とする横型ろ過装置。
【請求項3】
膜モジュールによる膜処理の前処理手段として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の横型ろ過装置。
【請求項4】
原水が、海水又は淡水であり、処理水がバラスト水として利用されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の横型ろ過装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−136309(P2007−136309A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332049(P2005−332049)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(504118807)三井造船アクアペックス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】