説明

横抱き動作の体感装置およびゲーム機

【課題】安全に、かつ、楽しみながら横抱きの練習(シミュレーション)をすることができる体感型装置を提供することを課題とする。また、介護等の現場において、人形を用いた安全なトレーニング手段を提供すること。
【解決手段】人形部と、人形部の傾斜を測定する傾斜測定器と、人形部を上下方向に可動に支持し、人形部を横抱きしたユーザーに所定の重さを体感させるためのトルクを付与する負荷装置と、負荷装置と人形部とを連結する連結具と、体重値を含む設定情報を入力するための入力部と、表示部と、音声出力部と、制御部と、を備えた横抱き動作体感装置であって、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする横抱き動作体感装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実質的に等身大の人形を用いた横抱き動作の体感装置に関し、例えば、女性を模した人形を横抱きするゲーム機に関する。
本明細書において「横抱き」とは、人形の頭部と足部が水平を含む所定の角度となる状態で人形を抱くこと(持ち上げること)をいう。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なタイプの体感型ゲーム機が開発されており、汎用的なコントローラ(入力装置)により操作を行うものだけでなく、人形や実際の器具を模したコントローラを用いて操作を行うゲーム機も開発されている。
例えば、特許文献1には、正逆方向に回動可能に設けられた回動腕と、その回動腕に正方向の回動トルクを付与するためのトルク発生手段と、その回動腕に付与された正方向の回動トルクに抗する逆方向の回動トルクが回動腕に加えられたとき、回動腕の逆方向の回動速度を検出する速度検出手段と、前記速度検出手段の検出した前記逆方向の回動速度の大きさが所定値以上の場合には、前記トルク発生手段の出力を所定値まで減少させる出力制御手段とを備えたことを特徴とする腕相撲遊技機が開示されている。
特許文献2には、プレイヤに新たな操作感を提供することにより、プレイヤの興味を惹き付けることができるゲーム装置用の操作入力装置を提供することを目的とし、弓形状に形成された把持部と、その把持部の両端に掛け渡された弦と、その弦の張力を検知する張力検知手段とを有することを特徴とする操作入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−315544号公報
【特許文献2】特開2000−189670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者が知る限りにおいては、ほぼ等身大の人形を用いて横抱き動作を体感可能とする装置は存在しなかった。
我々4名の女性発明者が、横抱き動作の体感装置の必要性を思いついたのは、「王子様にお姫様だっこ(横抱き)をしてほしい。」という乙女の夢を実現したいとの考えによる。
実際の人間を横抱きをする際に問題となるのが、持ち上げる人(男性)の腕力と持ち上げられる人(女性)の体重がマッチしているかどうかだ。また、横抱きをするためには、筋力、バランス力、保持力、心遣い等、たくさんの能力を必要とする。
一方、生身の人間で横抱き(お姫様だっこ)の練習をするのは、持ち上げる側も持ち上げられる側も危険である。かかる問題は、人間と同じ重さの人形を用いて練習する場合にも存在する。
そこで、本発明は、安全に、かつ、楽しみながら横抱きの練習(シミュレーション)をすることができる体感型装置を提供することを課題とする。
また、別の観点からは、本発明は、介護等の現場において、人形を用いた安全なトレーニング手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、人形を横抱きする練習に際し、万が一ユーザーが人形を落下させてしまっても、人形に与えるトルクを制御すれば、人形がユーザーの足の上に落下しないため安全であると考えた。
また、横抱きの練習を楽しく行うためには、横抱きしている最中の揺れや傾きを測定し、ユーザーが荷重のかかった人形を左右のバランスよく保持できているかを自動判定できるようにするのが好ましいと考えた。
さらには、人形を一定時間、丁寧に横抱きすると、ディスプレイ上に女性を横抱きしてバージンロードを歩く男性がグラフィック的に表示され、ユーザーの動作と連動してディスプレイに表示される映像が変化する、新感覚の体感型ゲームを考えた。
【0006】
本発明は、以下の技術手段から構成される。
[1]実質的に等身大の人形部(1)と、人形部の傾斜を測定する傾斜測定器と、人形部を上下方向に可動に支持し、人形部を横抱きしたユーザーに所定の重さを体感させるためのトルクを付与する負荷装置と、負荷装置と人形部とを連結する連結具と、体重値を含む設定情報を入力するための入力部と、表示部と、音声出力部と、制御部と、を備えた横抱き動作体感装置であって、
制御部が、人形部の姿勢を制御すると共に入力された体重値に基づき負荷装置に負荷を発生させ、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき音声出力部から所定の音声を出力させ、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする横抱き動作体感装置。
[2]人形部(1)が、加速度測定器を備え、制御部が、傾斜測定器からの傾斜情報および加速度測定器からの加速度情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする[1]の横抱き動作体感装置。
[3]人形部(1)が、水平方向に揺動自在であり、制御部が、傾斜測定器からの傾斜情報並びに加速度測定器からの上下方向および水平方向の加速度情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする[2]の横抱き動作体感装置。
[4]人形部(1)の下方に位置する立ち位置(6)が設けられたステージ部(4)を備え、立ち位置(6)には、加重センサが設けられており、制御部が、立ち位置(6)にユーザーの重みが加わっているときだけ負荷装置により人形部に所定の重さを付与することを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかの横抱き動作体感装置。
[5]人形部(1)の移動速度検出し、人形部(1)が所定の速度以上で下方に移動した際に、人形部(1)の下方への移動を停止させる落下防止機構を備えることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかの横抱き動作体感装置。
[6]持ち上げる者および持ち上げられる者の性別を含むキャラクター設定情報を入力することができ、入力されたキャラクター設定情報に基づき表示部に持ち上げる者および持ち上げられる者のシミュレーション画像が表示されることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかの横抱き動作体感装置。
[7]人形の傾斜を測定する傾斜測定器と、性別を含むキャラクター設定情報を入力するための入力部と、表示部と、音声出力部と、制御部と、を備え、実質的に等身大の人形に取り付けて使用される横抱き動作体感装置であって、制御部が、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき音声出力部から所定の音声を出力させると共に表示部にキャラクターの表情を動的に表示させ、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする横抱き動作体感装置。
[8]制御部が、赤ちゃんの横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする[7]の横抱き動作体感装置。
【0007】
[9]女性を模した人形部(1)と、演算処理したデータをグラフィカルに表示するディスプレイ(2)を含む本体部(3)と、ユーザーの足場となるステージ部(4)と、負荷装置と、を備えたゲーム機であって、女性を模した人形部は、加速度センサ(7〜10)、加重センサ(11)、通信用ケーブル(12)、スピーカー(13)を装備しており、人形部は中央に油圧シリンダーを備えた伸縮自在な頑丈な筒(5)で本体部と連結しており、本体部に含まれるコンピュータで測定したデータを演算処理し、演算処理したデータをグラフィック的にディスプレイに表示し、ユーザーが女性を模した人形を横抱きしている最中は、ディスプレイ上に女性を横抱きしながら歩く男性の映像が表示され(23)、横抱きしている最中のユーザーの腕の揺れや傾き等を各センサで測定し、ディスプレイ上に表示される男性の動作を実際のユーザーの動作に連動し、異常な揺れを測定したときは(24)のような映像が表示されるゲーム機。
[10]「お姫様だっこ」を連想させるために、女性を模した人形にドレスを着せ、お姫様をイメージさせた[9]のゲーム機。
[11]ユーザーの首に手をかけることができるように、女性を模した人形の腕で輪をつくり、ユーザーがこの腕の輪に頭を通して人形を抱きやすいように設計し、人形の両肩の部分に回転軸を組み込み、上下に腕の輪を移動可能とした[9]または[10]のゲーム機。
[12]女性を模した人形に水平方向に並ぶ長円穴を二つ設けて、二つの長円穴を棒で連結し、頑丈な筒と二つの長円穴を連結している棒を連結して、長円穴のあそび部分を利用して人形を横方向(水平方向)にスライドさせることが可能な[9]ないし[11]のいずれかのゲーム機。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安全に、かつ、楽しみながら横抱きの練習(シミュレーション)をすることができる装置を提供することが可能となる。
また、介護等の現場において、人形を用いた安全なトレーニング法を提供することが可能となる。
また、本発明では、横抱きを測定データに基づいて点数で表すことにより、彼女が彼氏の挑戦を見て楽しんだり、友達同士で誰が一番上手く横抱きできるかを点数で競い合うことができる。また、ユーザーの動きに応じて女性を模した人形の口元に装備してあるスピーカーから音声を出すことにより、ユーザーは「お姫様だっこ」をしているような感覚を味わうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に係る女性を模した人形を横抱きするゲームの全体構成図である。
【図2】実施例1に係る人形の構成図である。
【図3】実施例1に係る負荷装置の構成を示す側面図である。
【図4】実施例1に係るディスプレイに表示する画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、ゲーム機の例で説明する。
本発明は、女性を模した人形部(1)と、演算処理したデータをグラフィック的に表示するディスプレイ(2)を含む本体部(3)と、ユーザーの足場となるステージ部(4)と、負荷装置と、を備えたゲーム機であって、女性を模した人形部は、加速度センサ(7〜10)、加重センサ(11)、通信用ケーブル(12)、スピーカー(13)を装備しており、人形部は中央に油圧シリンダーを備えた伸縮自在な頑丈な筒(5)で本体部と連結しており、本体部に含まれるコンピュータで測定したデータを演算処理し、演算処理したデータをグラフィック的にディスプレイに表示し、ユーザーが女性を模した人形を横抱きしている最中は、ディスプレイ上に女性を横抱きしながら歩く男性の映像が表示され(23)、横抱きしている最中のユーザーの腕の揺れや傾き等を各センサで測定し、ディスプレイ上に表示される男性の動作を実際のユーザーの動作に連動し、異常な揺れを測定したときは(24)のような映像が表示されるゲーム機に関する。
上記ゲーム機は、「お姫様だっこ」を連想させるために、女性を模した人形にドレスを着せ、お姫様をイメージさせている。人形に着せる服は着せ替え可能としてもよい。また、人形の顔をディスプレイ表示とし、場面に応じて様々な表情をさせるようにしてもよい。
また、ユーザーの首に手をかけることができるように、女性を模した人形の腕で輪をつくり、ユーザーがこの腕の輪に頭を通して人形を抱きやすいように設計し、人形の両肩の部に回転軸を組み込み、上下に腕の輪を移動可能としてもよい。
また、女性を模した人形に水平方向に並ぶ長円穴を二つ設けて、二つの長円穴を棒で連結し、頑丈な筒と二つの長円穴を連結している棒を連結して、長円穴のあそび部分を利用して人形を横方向(水平方向)にスライドさせることが可能である。
【0011】
加速度センサで、女性を模した人形を持ち上げるときの速さ、横抱きを保持している最中のユーザーの腕の揺れ、女性を模した人形の傾き、重心の位置を測定する。
加重センサは、男性の筋力が不足している場合、女性が自分自身の腕力で男性にしがみつき、自分の上半身を支えなければならないため、女性を模した人形の腕の部分に加重センサを装備し、女性を模した人形の上半身にかかっている負荷をユーザーがどれだけ支えているかを測定する。
【0012】
負荷装置は、例えば、油圧シリンダやトルクモータなどの負荷手段により構成することができるが、以下ではトルクモータの例で説明する。トルクモータ(14)を利用してワイヤー(15)を巻き取り、負荷を制御する。人形部(1)の重さを、例えば20kg重程度とし、トルクモータ(14)により落下方向の力を与え、人形部(1)の重さを可変とすることが開示される。万が一ユーザーがゲームの最中に人形を落下させてしまった場合、トルクモータ(14)により、人形の落下速度を制御し、人形がユーザーに向かって急速落下してけがをすることがないよう安全面を考慮した。
トルクモータの巻き取り部に回転センサ(16)を装備しており、巻き取りの変化分を測定する。横抱きをしている最中の負荷装置のトルクモータの巻き取りの変化分が少ない場合、横抱きが安定していると判断し、変化分が一定にならない場合、横抱きが不安定であると判断する。女性を模した人形は、ユーザーがあらかじめ自分の身長を入力し、設定した人形の初期の高さに合わせてトルクモータでワイヤーを巻き取り、ユーザーの横抱きしやすい位置に調整することができる。
【0013】
ユーザーの立ち位置(6)に加重センサを設けており、センサに重さが感知されるとゲームがスタートする。ユーザーが所定の立ち位置以外ではゲームをプレイできないようにすることで安全性を高めている。
また、回転センサ(16)により急な落下が検出された場合には、トルクモータ(14)によるトルクを発生させて人形部(1)の落下を停止させる安全機構を別途に設けてもよい。
また、回転センサ(16)とは別に、連結棒(5)の位置を検知する光電センサを垂直方向に複数設け、急な落下が検出するようにしてもよい。
さらには、連結棒(5)が所定の高さ以下に下降することを物理的に阻止するストッパー機構を別途に設けてもよい。
上記で説明した実施の形態では、本体部(3)に負荷装置を設け連結棒(5)により人形部(1)と連結したが、負荷装置をステージ部(4)に設け連結棒(5)を立ち位置から垂直方向に延伸するように配設したり、ステージ部の上方に負荷装置が配設された天井部を設け連結棒(5)を天井部から垂直方向に延伸するように配設してもよい。
【0014】
頑丈な筒の支点に方位センサ(17)を装備しており、女性を模した人形を持ち上げる速さ、横抱きしている最中に女性を模した人形を引く力の向きを測定する。負荷装置が張力を利用して支えている棒(18)と、女性を模した人形の中心部を頑丈な筒で連結する。この頑丈な筒には中央に油圧シリンダーが備わっているので、伸縮自在である。本体部には長方形の穴を設けており、負荷装置が支えている棒と頑丈な筒はこの長方形の穴を通して連結しているため、女性を模した人形の上下運動に対応する。負荷装置と頑丈な筒の接続部分にはボールベアリング(19)を装備し、女性を模した人形の回転や往復運動に対応する。
【0015】
女性を模した人形部と本体部を連結している頑丈な筒の中に通信用のケーブルを通し、女性を模した人形に装備されている各センサと、本体部のコンピュータを接続する。各センサは通信用ケーブルで本体部のコンピュータと接続しており、女性を模した人形からは、各センサの測定データを送信する。本体部のコンピュータからは、横抱きが非常に丁寧にできている場合や、異常な揺れを検出した場合等、演算結果に応じて女性を模した人形の口元に装備してあるスピーカーが動作するよう信号を送信する。
【0016】
以下では、本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
実施例1は、ゲームセンター等のアミューズメントパークで利用できるゲーム機に関する。
[装置構成]
本実施例のゲーム機は、図1に示すように、人形1と、ディスプレイ2と、本体部3と、ステージ部4と、連結棒5と、ユーザーの立ち位置6とを、主要な構成要素とする。
人形1は、等身大であり、プラスチック製で、トルクモータにより人に働く重力と同程度の力を付与されており、連結棒5により本体部3に接続されている。後述する加速度センサ7〜10を設けることにより、人形の傾斜を測定することができる。ゲーム開始後は、人形1はユーザーの入力した体重値に基づき、体重値と同じ重さの人形になるようにトルクが付与される。なお、人形の姿勢は、横抱きがし易いように膝を屈曲させているが、この姿勢に限定されず、任意の姿勢とすることができる。また、本実施例では腕部分を固定しているが、両肩に回動軸を設け、腕部分を上下に移動できるようにしてもよい。
【0018】
ディスプレイ2は、タッチパネル液晶ディスプレイでありユーザーの動作に応じて演算処理したデータをグラフィカルに表示する。ディスプレイ上に表示される男性の動作は実際のユーザーの動作に連動し、ユーザーが人形を横抱きしている最中は、ディスプレイ上に男性が女性を横抱きしながらスムーズに歩く映像23が表示され、異常な揺れを測定したときはふらついて女性が落ちそうな映像24のような映像が表示される。また、タッチパネルとなっているのでデータの入力が必要な時は入力装置としてディスプレイを使用する。ディスプレイ2に表示される男性は、様々なタイプの男性を選択することができる。一例を挙げると、人種、年齢、体型(細身、筋肉質、高身長)等である。ユーザーが自分の好みの顔写真を外部から入力できるようにしてもよい。例えば、携帯電話から赤外線でゲーム装置に画像データを送信できるようにしてもよい。また、SDカード等のメディア読み取り装置を設け、そこから画像データを読み込むようにしてもよい。
【0019】
本体部3には、図示しないコンピュータが設置されており、演算処理と記録を行う。コンピュータが備える主記憶装置には、ゲームプログラムが格納されている。人形1に設けられた各センサの測定データを、通信ケーブルを通してコンピュータに送信し、演算処理することによりユーザーの横抱きを採点することもできる。コンピュータはユーザーの横抱き動作を判定し、横抱きが非常に丁寧にできている場合(例えば、加速度がほぼ一定かつ傾斜がほぼ一定の場合)や、異常な揺れを検出した場合等、判定結果に応じて人形の口元に装備してあるスピーカー13を動作させたり、ディスプレイ2にユーザーの横抱きを採点した点数や映像を表示させたりするよう信号を送信する。本体部3にデジタルカメラを設けてユーザーの横抱き動作を撮影し、ディスプレイ2に表示させるようにしてもよい。
【0020】
ステージ部4は、本体部3と固定されており、上面にユーザーの立ち位置6が設けられている。ステージ部4の内部空間に主記憶装置等を配置してもよい。
連結棒5は、中央に油圧シリンダーを備えており、伸縮自在であって、人形と本体部を連結している。また、連結棒の中に通信用のケーブルを通し、人形に装備されている各センサと、本体部3のコンピュータを接続する
【0021】
ユーザーの立ち位置6は、加重センサを設けており、センサに重さが感知されるとゲームがスタートし、ユーザーが所定の立ち位置以外ではゲームをプレイできない。すなわち、立ち位置6の外にユーザーが踏み出した場合には危険動作と判定されてゲームオーバーとなり、安全のために人形に付与するトルクを制御するプログラムが実行される。
【0022】
図2は、本実施例の人形の構成図である。図2に示すように、人形1には加速度センサ7〜10と、加重センサ11と、スピーカー13が設けられている。
加速度センサ7〜10は、人形を持ち上げるときの速さ、横抱きを保持している最中のユーザーの腕の揺れ、人形の傾き、重心の位置を測定する。
横抱きをする際、横抱きをする人の筋力が不足していると、横抱きをされる人が横抱きをする人にしがみつき、自分の上半身を支えなければならない。そのため人形の腕の部分に加重センサ11を装備し、人形の腕にかかる力を測定して、ユーザーが人形の上半身を実際にどれだけ支えているか測定できるようにした。
本体部3のコンピュータは、加速度センサ7〜10と加重センサ11の測定結果により横抱きの良し悪しを判定する。
スピーカー13は、ゲームの進行と連動して所定のメッセージを発声するためのものである。本体部3からメッセージの発声信号が出されると、通信用ケーブル12を介してスピーカー13に発声信号が伝達され、所定のメッセージが発声される。
【0023】
図3は、負荷装置の構成を示す側面図である。図3に示すように、本体部3の中には付加装置が配置されている。
連結棒5は、一方の端部が人形1に接続されており、他方の端部が連結具18に接続されている。本実施例では、連結棒5は上下方向に垂直移動できるのみであるが、応用として、水平方向に揺動自在に構成してもよい。例えば、女性を模した人形に水平方向に並ぶ長円穴を二つ設けて、二つの長円穴を棒で連結してもよい。頑丈な筒と二つの長円穴を連結している棒の部分とを連結することにより、長円穴のあそび部分を利用して人形が水平方向の揺動自在となるので、人形を横方向(水平方向)にスライドさせることができる。
【0024】
連結棒の端部に設けられた回転センサ16は、トルクモータ14の巻き取り部に装備し、巻き取りの変化分を測定するためのものである。上記のコンピュータは、横抱きをしている最中の負荷装置のトルクモータ14の巻き取りの変化分が少ない場合、横抱きが安定していると判断し、変化分が一定にならない場合、横抱きが不安定であると判断する。また、人形の初期位置は、ユーザーが最初に自分の身長を入力し設定した人形の初期高さに合わせてトルクモータ14でワイヤーを巻き取り、ユーザーの横抱きしやすい位置に調整することができる。方位センサ17は、頑丈な筒の支点に配置されており、人形を持ち上げる速さ、横抱きしている最中に人形を引っ張る力の向きを測定するためのものである。負荷装置が支えている棒と頑丈な筒の接続部分にはボールベアリング19を装備し、女性を模した人形の回転や往復運動に対応する。
トルクモータ14は、トルクを発生させるためのものであり、ワイヤー巻取り、負荷を制御する。万が一ユーザーがゲームの最中に女性を模した人形を落下させてしまった場合、トルクを発生させて、人形がユーザーの足の上に落下しないよう考慮した。
【0025】
[操作方法]
アミューズメントパークに設置された本発明のコイン投入口にユーザーがコインを投入するとゲームが開始する。まず、ユーザーは自分の身長をディスプレイ(タッチパネル)から入力し、人形を自分の横抱きしやすい位置に設定する。次に、ゲームのレベルを選択する。レベルが高いほど、負荷装置が動作し人形の負荷が増す。設定が終わると、ユーザーは人形を横抱きする。このとき、ディスプレイ上にはグラフィック的に男性が女性を横抱きしている映像が表示される。表示される男性の画像は、ユーザーが入力した設定情報に基づき決定される。横抱きしている最中、人形の傾きや揺れを加速度センサで測定し、本体のコンピュータに測定データを送信する。測定データは本体部3のコンピュータで演算処理して点数化し、点数はゲームの最中ディスプレイ上で見ることができる。人形をゆっくりと持ち上げ、ふらつかずに横抱きができていれば点数は高く、男性が女性を横抱きしながらスムーズに歩く映像23が表示される。センサが異常な揺れを検出した場合、点数は低くなり(減点され)、ふらついて女性が落ちそうな映像24が表示される。ユーザーの動きに応じて人形の口元に装備してあるスピーカー13から音声が出力される。
【実施例2】
【0026】
実施例2は、介護士を目指している人のトレーニング、もしくは自宅で介護の必要のある人たちに対する講習を目的とした利用が可能なシミュレーション装置(シミュレーター)に関する。
実施例2のシミュレーション装置は、人形1の形状が異なる点、人形1が揺動自在に構成されている点、コンピュータ3の主記憶装置に記憶されたプログラム(介護訓練用ソフトウェア)が異なる点を除き、実施例1のゲーム機と同じ構成である。人形1に着せる服はパジャマ等であり、人形の顔面には皺等の加工が施されており、より臨場感を持たせるようにしている。
【0027】
上述の介護訓練用ソフトウェアは、実施例1と同様に、ユーザーの入力した体重値に基づき、体重値と同じ重さの人形になるようにトルクモータ14によりトルクが付与される。本実施例では、ユーザーの性別および被介護者の性別の設定を行うこともできる。
また、本実施例では、水平方向に略円弧状の軌道で揺動自在となるように構成されている。そのための構成として、女性を模した人形に水平方向に並ぶ長円穴を二つ設けて、二つの長円穴を棒で連結している。これは、介護の現場でベッドに横たわった被介護者の上半身を起こす動作を訓練するための機能である。介護訓練用ソフトウェアでは、被介護者の上半身を起こす動作についてもユーザーの上手下手を判定することができる。なお、上半身を起こす動作をする際にトルクを付与する手段(モーター等)を人形に内蔵させてもよい。
また、負荷量の経時変化を主記憶装置に記録し、消費カロリーを演算し、ディスプレイ2に表示させる機能を介護訓練用ソフトウェアに持たせてもよい。
【0028】
ディスプレイ上にはユーザーの設定に基づき男性又は女性の介護者が男性又は女性の被介護者を横抱きしている映像が表示される。横抱きしている最中、人形の傾きや揺れを加速度センサで測定し、本体のコンピュータに測定データを送信し、これを点数化して判定を行う点は実施例1と同様である。センサが異常な揺れを検出した場合、減点がなされ、苦しそうな被介護者の顔が表示される。ユーザーの動きに応じて人形の口元に装備してあるスピーカー13から音声が出力される。
【0029】
以上に説明した実施例2の装置によれば、高齢者を模した人形を用意し、実際の介護中に高齢者にかかると予想される負荷をかけ、ベッドから起こしたり、入浴させたりする場面を仮定して、様々な動作を練習することによって、現場で必要な技術をいち早く習得するのに役立てることができる。
【実施例3】
【0030】
実施例3は、ベビーシッター等のトレーニングが可能なシミュレーション装置(シミュレーター)、もしくは赤ちゃんのだっこを体感することができゲーム機に関する。
本実施例は、情報処理装置上で赤ちゃんだっこプログラムを実行することにより実現される。情報処理装置は、ディスプレイ等の表示部、キーボード等の入力部、音声出力部を備え、加速度センサにより傾斜を測定する機能を有する機器であればよく、具体的には、ウルトラモバイルPCやポケットPCと称される携帯用パソコン、ノートパソコン、PDA(Personal Data Assistance)、スマートフォンとも称される携帯端末装置などの装置を用いることができる。
情報処理装置を、伸縮性のあるバンド部材や粘着部材等を用いて赤ちゃん人形に取り付けることによりハードウェアの準備は完了する。
【0031】
本実施例の赤ちゃんのだっこプログラムをスタートするに際し、ユーザーはまず年齢、性別、性格、難易度等のキャラクター設定情報を入力する。この入力されたキャラクター設定情報に基づき、表示部にキャラクターが表示される。ここでは、表示されるキャラクターの顔に、取り込んだ画像データを出力させる仕様としてもよい。
プログラムがスタートとすると、ユーザーは所定のリズムで人形を揺らしながらだっこする。ユーザーが揺らす動作の許容性は、キャラクター設定情報により可変となる。例えば、気むずかしい性格とした場合、難易度を高くした場合には許容性は小さくなり、精度の高い揺らし動作が要求される。ユーザーの揺らし動作が好適である場合には、表示部に赤ちゃんの笑顔や寝顔が出力されると共に音声出力部から笑い声や寝息が出力される。逆に、ユーザーの揺らし動作が不十分である場合には、表示部に赤ちゃんの泣き顔や不機嫌な顔が出力されると共に音声出力部から鳴き声や怒った声が出力される。
【0032】
本実施例の赤ちゃんだっこプログラムには、次のような機能を持たせることもできる。
(ア)縦抱き(いわゆるたかいたかい)の上手下手を判定する機能。
(イ)情報処理装置がマイクを有している場合、ユーザーの話しかけた声(音声入力)を含めてあやしの上手下手を判定する機能。
(ウ)情報処理装置がカメラを有している場合、ユーザーの顔の表情(顔の画像認識)を含めてあやしの上手下手を判定する機能。
(エ)授乳、離乳食、おむつ替えの作業等を判定する機能。
(オ)赤ちゃんが成長する機能。例えば、赤ちゃんが成長することにより、揺らし方の好みが変わる仕様とする。
【0033】
なお、本実施例では赤ちゃんを対象としたが、大人サイズのマネキンにも本実施例を適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 人形
2 ディスプレイ(表示部)
3 本体部
4 ステージ部
5 連結棒(油圧シリンダーを備えた頑丈な筒状体)
6 ユーザーの立ち位置
7〜10 加速度センサ
11 加重センサ
12 通信用ケーブル
13 スピーカー(音声出力部)
14 トルクモータ
15 ワイヤー
16 回転センサ
17 方位センサ
18 連結具
19 ボールベアリング
20〜22 滑車
23 男性が女性を横抱きしながらスムーズに歩く映像
24 ふらついて女性が落ちそうな映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に等身大の人形部(1)と、人形部の傾斜を測定する傾斜測定器と、人形部を上下方向に可動に支持し、人形部を横抱きしたユーザーに所定の重さを体感させるためのトルクを付与する負荷装置と、負荷装置と人形部とを連結する連結具と、体重値を含む設定情報を入力するための入力部と、表示部と、音声出力部と、制御部と、を備えた横抱き動作体感装置であって、
制御部が、人形部の姿勢を制御すると共に入力された体重値に基づき負荷装置に負荷を発生させ、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき音声出力部から所定の音声を出力させ、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする横抱き動作体感装置。
【請求項2】
人形部(1)が、加速度測定器を備え、
制御部が、傾斜測定器からの傾斜情報および加速度測定器からの加速度情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする請求項1の横抱き動作体感装置。
【請求項3】
人形部(1)が、水平方向に揺動自在であり、制御部が、傾斜測定器からの傾斜情報並びに加速度測定器からの上下方向および水平方向の加速度情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする請求項2の横抱き動作体感装置。
【請求項4】
人形部(1)の下方に位置する立ち位置(6)が設けられたステージ部(4)を備え、
立ち位置(6)には、加重センサが設けられており、
制御部が、立ち位置(6)にユーザーの重みが加わっているときだけ負荷装置により人形部に所定の重さを付与することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの横抱き動作体感装置。
【請求項5】
人形部(1)の移動速度検出し、人形部(1)が所定の速度以上で下方に移動した際に、人形部(1)の下方への移動を停止させる落下防止機構を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの横抱き動作体感装置。
【請求項6】
持ち上げる者および持ち上げられる者の性別を含むキャラクター設定情報を入力することができ、入力されたキャラクター設定情報に基づき表示部に持ち上げる者および持ち上げられる者のシミュレーション画像が表示されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの横抱き動作体感装置。
【請求項7】
人形の傾斜を測定する傾斜測定器と、性別を含むキャラクター設定情報を入力するための入力部と、表示部と、音声出力部と、制御部と、を備え、実質的に等身大の人形に取り付けて使用される横抱き動作体感装置であって、
制御部が、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき音声出力部から所定の音声を出力させると共に表示部にキャラクターの表情を動的に表示させ、傾斜測定器からの傾斜情報に基づき横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする横抱き動作体感装置。
【請求項8】
制御部が、赤ちゃんの横抱き動作の評価を表示部に出力することを特徴とする請求項7の横抱き動作体感装置。
【請求項9】
女性を模した人形部(1)と、演算処理したデータをグラフィカルに表示するディスプレイ(2)を含む本体部(3)と、ユーザーの足場となるステージ部(4)と、負荷装置と、を備えたゲーム機であって、女性を模した人形部は、加速度センサ(7〜10)、加重センサ(11)、通信用ケーブル(12)、スピーカー(13)を装備しており、人形部は中央に油圧シリンダーを備えた伸縮自在な頑丈な筒(5)で本体部と連結しており、本体部に含まれるコンピュータで測定したデータを演算処理し、演算処理したデータをグラフィック的にディスプレイに表示し、ユーザーが女性を模した人形を横抱きしている最中は、ディスプレイ上に女性を横抱きしながら歩く男性の映像が表示され(23)、横抱きしている最中のユーザーの腕の揺れや傾き等を各センサで測定し、ディスプレイ上に表示される男性の動作を実際のユーザーの動作に連動し、異常な揺れを測定したときは(24)のような映像が表示されるゲーム機。
【請求項10】
「お姫様だっこ」を連想させるために、女性を模した人形にドレスを着せ、お姫様をイメージさせた請求項9のゲーム機。
【請求項11】
ユーザーの首に手をかけることができるように、女性を模した人形の腕で輪をつくり、ユーザーがこの腕の輪に頭を通して人形を抱きやすいように設計し、人形の両肩の部分に回転軸を組み込み、上下に腕の輪を移動可能とした請求項8または9のゲーム機。
【請求項12】
女性を模した人形に水平方向に並ぶ長円穴を二つ設けて、二つの長円穴を棒で連結し、頑丈な筒と二つの長円穴を連結している棒を連結して、長円穴のあそび部分を利用して人形を横方向(水平方向)にスライドさせることが可能な請求項9ないし11のいずれかのゲーム機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218105(P2011−218105A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97382(P2010−97382)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【特許番号】特許第4733215号(P4733215)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(310009339)
【出願人】(310008262)
【出願人】(310008273)
【出願人】(310008538)
【上記1名の法定代理人】
【識別番号】310008516
【氏名又は名称】毛利 充夫
【Fターム(参考)】