説明

横振れ防止ジャッキ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、手動操作のねじ式ジャッキの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来のねじ式ジャッキの斜視外観図であり、図4(a)はジャッキ21を使用しないときのジャッキ21の状態を示す図、図4(b)はジャッキ21を使用して物を持ち上げたときのジャッキ21の状態を示す図である。
【0003】図4(a)において、内筒23が持ち上げられて外筒22に収納され、重力により内筒23が下方に摺動しないように、内筒23のピン挿入穴24に挿入されたピン25が外筒22の上端22aに引っ掛かるようにされ、ハンドル付きのねじ軸26もほぼ全部が内筒23の内部にねじ込まれている。
【0004】取付け金具27により通常は複数のジャッキ21の外筒22が取り付けられている不図示の物をジャッキ21により持ち上げるときは、図4(b)に示すように、まずピン25を引き抜いて内筒23を下方に摺動させ、外筒22に設けられたピン挿入穴28から内筒23のピン挿入穴24を通過させるようにして、ピン25を確実に挿入して外筒22と内筒23とを互いに嵌合固定する。その後、ハンドル29の回転操作にてねじ軸26を回転することによって、物を所要の位置まで持ち上げる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図5は、図4に示すねじ式ジャッキの断面図であり、図5(a)は図4(b)におけるA−A′断面図、図5(b)は同じくB−B′断面図である。
【0006】内筒23を下方に摺動させて、ピン25により外筒22のピン挿入穴28と内筒23のピン挿入穴24とが合致する位置で外筒22と内筒23とを互いに嵌合固定する動作は、ねじ軸26をハンドル29の回転操作により上下させる動作に比べて簡単であり、また、物を持ち上げる負荷がかかる前の高さ位置までは外筒22に対して内筒23を摺動させて行った後、ねじ軸26の回転操作により物を持ち上げることは極く一般的な操作であり問題はない。
【0007】しかし、ここで外筒22に対する内筒23の摺動による移動は外筒22と内筒23との間に若干の間隙30がないと不可能であるが、この間隙30の存在がピン25を軸とするジャッキ21全体のふらつき現象発生の原因となる。
【0008】本発明の目的は、上述の課題を解決し、負荷により自動的に外筒と内筒とが密接して安定に固定され、ふらつき現象が発生しないジャッキを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、外筒内に摺動可能に内筒を配置し、該内筒から下方に突出して該内筒に対して上下方向に移動可能にねじ軸を該内筒に螺合し、該ねじ軸の下端に脚部を設け、前記外筒および内筒の側面にそれぞれ設けられたピン挿入穴にピンを引き抜き可能に挿入するねじ式ジャッキにおいて、前記外筒のピン挿入穴を前記内筒のピン挿入穴より大きく形成するとともに、前記外筒のピン挿入穴の縁部の一部を、負荷がかかった時に前記ピンに当接して横方向に移動するように案内する形状としたことを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態である、横振れ防止ジャッキの外観図である。図1において、不図示の物に対してねじなどにより複数個所において取り付けられる横振れ防止ジャッキ1の外筒2と内筒3とは角筒型に成形され、内筒3の最下部内部には図1には不図示の雌ねじが取り付けられ、これにハンドル4が取り付けられたねじ軸5の上端5aがねじ込まれている。ねじ軸5の下端5bには脚部6が、ねじ軸5に対して首振り状に若干回転自在に、ねじなどにより取り付けられる。
【0011】内筒3には、ピン7が挿入される円形のピン挿入穴8が対向面の中心の所要の高さ位置に穿孔される。
【0012】ピン7の先端7aには、挿入されたピン5が振動などにより抜けることがないように、ストッパ9がピン7の先端7aを切り欠いてピン7の軸方向に対して回転可能に取り付けられている。また、ピン7の後端7bにはくさり10が一端において取り付けられ、該くさり10の他端は外筒2に固定されている。
【0013】図2は、同じく横振れ防止ジャッキ1の外筒2および内筒3の側面図である。外筒2の対向する両側面には、ピン挿入穴11が面対称に成形されるが、その中心位置は外筒2の両側面の中心ではなく、図2に示すように、内筒3のピン挿入穴8に対して偏心した円形の穴として成形される。
【0014】横振れ防止ジャッキ1に負荷がかかると、ピン7は偏心した外筒2のピン挿入穴11の縁に案内されて、図2(a)に示す位置から矢印のように図2(b)に示す位置に移動する。これにより内筒3は外筒2に対して右方に動き、右側の間隙12が無くなって内筒3は外筒2の内面に密接し、内筒3が外筒2に対してふらつく現象が防止される。なお、外筒2と内筒3は円筒形であってもよい。ただし、角筒形に比べるとふらつき現象防止の具合が多少劣る。
【0015】図3は、本発明の実施の他の形態として示す外筒2の側面図であり、この形態では、外筒2の対向面に面対称に成形されるピン挿入穴13は、左右の対辺が下から上に向かって狭くなる台形状に成形される。横振れ防止ジャッキ1に負荷がかかると、ピン7はピン挿入穴13の次第に狭くなる台形の斜辺に沿って矢印の方向に移動し、これにより内筒3は外筒2に対して右方に動き、右側の間隙12が無くなって内筒3は外筒2の内面に密接し、内筒3が外筒2に対してふらつく現象が防止される。なお、ピン挿入穴13は三角形でもよい。
【0016】このように、外筒2に成形されるピン挿入穴11の中心位置を偏らせて穿孔する、あるいは、ピン挿入穴13の形状を台形状とすることにより、物を持ち上げた後、さらに外筒2と内筒3とをボルトナットなどによって締めつけ密着固定するような煩瑣な動作を必要とせず、かつ、経済的なねじ式ジャッキの提供を可能ならしめる。
【0017】本発明による横振れ防止ジャッキは、移動式防雷避難小屋、移動式トイレ、移動式倉庫、移動式休憩所、移動式販売店などの移動用車輪を有するものを設置面に対して昇降させるのに特に好適である。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、外筒のピン挿入穴を内筒のピン挿入穴より大きく形成するとともに、外筒のピン挿入穴の縁部の一部を、負荷がかかった時にピンに当接して横方向に移動するように案内する形状とし、以て、外筒およびピンを経て負荷が内筒にかかると、ピンが外筒のピン挿入穴の縁部の一部により案内されて、横方向に移動することにより、内筒が外筒内で横方向に移動し、外筒の内側に密接するようにしたから、外筒を内筒に安定に固定し、ふらつき現象の発生をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である、横振れ防止ジャッキの斜視外観図である。
【図2】同じく、横振れ防止ジャッキの外筒の側面図である。
【図3】本発明の実施の他の形態である、横振れ防止ジャッキの外筒の側面図である。
【図4】従来のねじ式ジャッキの斜視外観図である。
【図5】図4に示す従来のねじ式ジャッキの断面図である。
【符号の説明】
1 横振れ防止ジャッキ
2 外筒
3 内筒
4 ハンドル
5 ねじ軸
5a 上端
5b 下端
6 脚
7 ピン
7a 先端
7b 後端
8 ピン挿入穴
9 ストッパ
10 くさり
11 ピン挿入穴
12 間隙
13 ピン挿入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外筒内に摺動可能に内筒を配置し、該内筒から下方に突出して該内筒に対して上下方向に移動可能にねじ軸を該内筒に螺合し、該ねじ軸の下端に脚部を設け、前記外筒および内筒の側面にそれぞれ設けられたピン挿入穴にピンを引き抜き可能に挿入するねじ式ジャッキにおいて、前記外筒のピン挿入穴を前記内筒のピン挿入穴より大きく形成するとともに、前記外筒のピン挿入穴の縁部の一部を、負荷がかかった時に前記ピンに当接して横方向に移動するように案内する形状としたことを特徴とする横振れ防止ジャッキ。
【請求項2】 前記外筒のピン挿入穴を円形とするとともに、該外筒の側面の中心に対して偏心した位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の横振れ防止ジャッキ。
【請求項3】 前記外筒のピン挿入穴を台形あるいは三角形としたことを特徴とする請求項1記載の横振れ防止ジャッキ。
【請求項4】 前記外筒および内筒を共に角筒形に形成したことを特徴とする請求項1記載の横振れ防止ジャッキ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【特許番号】第2879759号
【登録日】平成11年(1999)1月29日
【発行日】平成11年(1999)4月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−199291
【出願日】平成7年(1995)7月13日
【公開番号】特開平9−30783
【公開日】平成9年(1997)2月4日
【審査請求日】平成10年(1998)9月30日
【出願人】(000205661)大崎電気工業株式会社 (61)
【参考文献】
【文献】特開 平7−147305(JP,A)