説明

横編機におけるラッキング装置

【課題】一台の駆動手段を駆動源とし、前後ニードルベッドを駆動力伝達手段を介して逆方向に移動させ、ラッキング時間の減少で編成効率が向上する横編機におけるラッキング装置を提供する。
【解決手段】横編機において一台の駆動手段を設け、前後のニードルベッドそれぞれにナット部材を設ける。各ナット部材は前ニードルベッド用の送りネジと後ニードルベッド用の送りネジとに螺合する。前記駆動手段の駆動力を伝達する駆動力伝達手段を介して送りネジの回転を前後のニードルベッドを左右に摺動可能とする。前後のニードルベッドそれぞれが相対的に逆方向への移動となり、一方のニードルベッドによる従来のラッキングに対して半分の距離や時間でラッキングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも前後一対に配設されたニードルベッドを有する横編機のラッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
横編機の前後のニードルベッドを、それぞれ左右に移動させるラッキングについて、特許文献1では前後のニードルベッドに対して自由に行えることが示され、横編機の横方向の長さを増大させることなく、編成効率を低下させずにラッキング可能な振り量を大きくすることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−13294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらその構成においては、前後ニードルベッドの振りを、個別にモータを設けそれぞれに対して行っている。
【0005】
本発明の目的は、一台の駆動手段を駆動源とし、前後ニードルベッドを駆動力伝達手段を介して逆方向に移動させ、ラッキング時間の減少で編成効率が向上する横編機におけるラッキング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、複数の編針を並設したニードルベッドを編針の歯口部を突き合わせた状態で少なくとも前後一対に配設し、前後のニードルベッドにそれぞれナット部材を設け、各ナット部材はそれぞれ前ニードルベッド用の送りネジと後ニードルベッド用の送りネジとに螺合し、送りネジの回転により前後のニードルベッドを左右に摺動可能な横編機のラッキング装置において、前記前後のニードルベッドを左右に摺動させるための一台の駆動手段と、前後のニードルベッドのそれぞれに設けた送りネジに対して、前記駆動手段の駆動力を伝達する駆動力伝達手段を設けて、前記一台の駆動手段の駆動により、前後のニードルベッドが相対的に摺動することを特徴とする。
【0007】
また本発明では、前後のニードルベッドにそれぞれ設けた前記送りネジは、それぞれのネジ切り方向が異なり、前記駆動手段の駆動力を伝達する前記駆動力伝達手段を介してそれぞれの送りネジを同じ回転方向に回転させることを特徴とする。
【0008】
さらにまた本発明では、前後のニードルベッドにそれぞれ設けた前記送りネジは、それぞれのネジ切り方向が同じで、前記駆動手段の駆動力を伝達する前記駆動力伝達手段を介してそれぞれの送りネジを異なる回転方向に回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、一台の駆動手段の駆動力を伝達する駆動力伝達手段により前後ニードルベッドを移動させるための送りネジを同時に回転させ、各ニードルベッドを同時に且つ逆方向に移動させることで、一台の駆動手段で前後ニードルベッドのラッキングが可能となり、ラッキングの時間短縮が可能となる。
【0010】
また本発明では、一台の駆動手段の駆動で前後ニードルベッドに対応する各送りネジを同じ回転方向に回転させることができ、1つの駆動力伝達手段を介して2本の送りネジに駆動力を伝達するシンプルな機構で構成することができる。
【0011】
また本発明では、送りネジのネジ切り方向が同じであるため、送りネジと送りナットの種類を共通にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の横編機におけるラッキング装置の側面図である。
【図2】図1の概略的な平面図である。
【図3】変形例のプーリ、駆動力伝達手段、駆動手段の関係を簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施例を図面に基づいて説明を行う。この実施形態では、2枚ベッド機を用いて説明するが、公知の4枚ベッド機や、上部に補助ベッドを備えた横編機でも良い。なお、ラッキング装置を中心に示し、横編機本体の他の部分は省略する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の横編機におけるラッキング装置の側面図である。図2は、図1の概略的な平面図である。前後ニードルベッド2,3やモータ35などは省略する。本実施例で使用する横編機は、キャリッジ(図示なし)で進退操作される多数の編針を設けたニードルベッドを、編針の歯口部を突き合わせた状態で、前後に逆V字状に配置されている。前後ニードルベッド2,3は、それぞれ本体ベッド1上に左右方向に摺動自在に設けられる。
【0015】
前後ニードルベッド2,3に、送りナット12,13をネジ止めした連結ブロック10,11を固定したラッキング摺動板6,7を固定する。そして前後ニードルベッド2,3の下部に送りネジとしてのボールネジ14,15を各々1本ずつ、並行する状態で配置する。ボールネジ14,15は、本体ベッド1にネジ止めされたブラケット21に対し、ベアリング22で支持される。そのボールネジ14,15と送りナット12,13を、螺合させることで、前後ニードルベッド2,3は、ラッキング摺動板6,7を介してボールネジ14,15の回転駆動による送りナット12,13の移動に同調してラッキングを行う。
【0016】
さらにボールネジ14,15の端部では、プーリ32,33を配置している。ブラケット21にネジ止めされたモータベース36に固定された、駆動手段としてのサーボモータ35(図2では図示なし)を、ボールネジ14,15の下部に位置するように一台を配置する。本実施例では、駆動手段としてサーボモータを用いているが、ステッピングモータなど他の形式でもよい。
【0017】
また、サーボモータ35からの駆動力(回転)を前後ニードルベッド2,3の横方向への動きに伝達する仕組みとして、サーボモータ35側のプーリ34およびボールネジ14,15の端部に配置された止めナット28で位置がズレない様に固定されているプーリ32,33を、駆動力伝達手段であるタイミングベルト37を介してオープンベルトで作用させる。
【0018】
本実施例では、ボールネジ14,15は、それぞれのネジ切り方向が異なっているものを使っている。サーボモータ35からの駆動力(回転)は、タイミングベルト37により、プーリ32,33にも伝わり、ボールネジ14,15は、同じ方向に回転する。ボールネジ14,15は、それぞれネジ切りが逆であり、螺合している送りナット12,13の動きは、それぞれが相対的に逆方向となる。よって、送りナット12,13に対応する前後ニードルベッド2,3についても、両方がともに内側に移動または外側に移動のように、それぞれが相対的に逆方向への移動となり、それが同時に行われるため、一方のニードルベッドによる従来のラッキングに対して半分の距離や時間でよく、効率化を図ることができる。なお、ボールネジに代えてスクリュー軸を使ってもよい。
【0019】
なおラッキング時には、前後ニードルベッド2,3の移動(位置)の制御が必要であり、サーボモータ35の回転だけでなく、前後ニードルベッド2,3の左右への動きに対しても、位置検出センサー(図示なし)を用いて制御している。
【実施例2】
【0020】
実施例1では、ネジ切りの方向が異なっているボールネジを使用して説明を行ったが、実施例2では、ネジ切りの方向が同じボールネジを使用して、それぞれを異なる回転方向に回転させる構成を説明する。ここでは、駆動手段の駆動力を、駆動力伝達手段を介してボールネジが異なる回転を行う仕組みに絞って説明を行う。他の構成は、実施例1に準ずる。
【0021】
図3は、プーリ、駆動力伝達手段、駆動手段の関係を簡略的に示す図である。図3(a)では、プーリ41,42はそれぞれ前後ニードルベッド(図示なし)に対して設けたボールネジ47,48に固定される。駆動手段としてのサーボモータ45の駆動力は、駆動力伝達手段であるタイミングベルト43,44やプーリ40,46,49を介してプーリ41,42に伝達される。タイミングベルト43については、両歯ベルトを使っている。図のようにタイミングベルトを掛けることで、それぞれのプーリ41,42の回転方向は逆方向となる。各プーリに固定されるボールネジ47,48のネジ切りの方向は同じであるが、プーリ41,42の回転方向は逆方向となるため、本実施例でも、それぞれのボールネジ47,48に対応する送りナット(図示なし)は、相対的に逆方向の移動を行うことができる。
【0022】
また、図3(b)においても、サーボモータ55の駆動力は、駆動力伝達手段であるタイミングベルト53,54やプーリ50,59を介して、前後ニードルベッド(図示なし)に対して設けたボールネジ57,58に固定されたプーリ51,52に伝達される。図のようにタイミングベルト53,54を掛けることで、それぞれのプーリ51,52の回転方向は逆方向となる。本実施例では、プーリ51,52間に掛け渡されるタイミングベルト53で、図に示すように180度捻ってクロスベルトとしている。一台のサーボモータ55の駆動力は、(a)と同様に、プーリ51,52に固定されるネジ切りの方向が同じであるボールネジ57,58をそれぞれ逆方向に回転させ、各ボールネジに対応する送りナット(図示なし)を相対的に逆方向に移動することができる。
【0023】
図3(a)、(b)で示した機構においても、送りナットと連動する前後ニードルベッドが、一台のサーボモータの駆動により両方がともに内側に移動、又はともに外側に移動のように、それぞれ相対的に逆方向へ移動する。またそれが同時に行われるために、一方のニードルベッドによる従来のラッキングに対して半分の距離や時間で行うことが可能となり、効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
2 前ニードルベッド
3 後ニードルベッド
14,15 ボールネジ
32,33,34,41,42,51,52 プーリ
35,45,55 サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の編針を並設したニードルベッドを編針の歯口部を突き合わせた状態で少なくとも前後一対に配設し、前後のニードルベッドにそれぞれナット部材を設け、各ナット部材はそれぞれ前ニードルベッド用の送りネジと後ニードルベッド用の送りネジとに螺合し、送りネジの回転により前後のニードルベッドを左右に摺動可能な横編機のラッキング装置において、
前記前後のニードルベッドを左右に摺動させるための一台の駆動手段と、
前後のニードルベッドのそれぞれに設けた送りネジに対して、前記駆動手段の駆動力を伝達する駆動力伝達手段を設けて、
前記一台の駆動手段の駆動により、前後のニードルベッドが相対的に摺動することを特徴とする横編機におけるラッキング装置。
【請求項2】
前後のニードルベッドにそれぞれ設けた前記送りネジは、それぞれのネジ切り方向が異なり、前記駆動手段の駆動力を伝達する前記駆動力伝達手段を介してそれぞれの送りネジを同じ回転方向に回転させることを特徴とする請求項1記載の横編機におけるラッキング装置。
【請求項3】
前後のニードルベッドにそれぞれ設けた前記送りネジは、それぞれのネジ切り方向が同じで、前記駆動手段の駆動力を伝達する前記駆動力伝達手段を介してそれぞれの送りネジを異なる回転方向に回転させることを特徴とする請求項1記載の横編機におけるラッキング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−122249(P2011−122249A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278406(P2009−278406)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】