樹木の支持施工方法と、支持施工用具
【課題】公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の都市部における種々の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための樹木の支持施工方法と支持施工用具に関し、自然環境破壊の観点から、主として木製の杭を使用し、しかも支持施工のための作業を従来に比べて非常に容易にし、且つ支持施工に使用する部材のコストも低減することのできる樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供することを課題とする。
【解決手段】樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、前記複数の杭の上部にそれぞれ掛止具を取り付け、前記根鉢の上面に外側掛け回し材を掛け回すとともに該外側掛け回し材を前記掛止具に掛止し、次に、内側掛け回し材を前記外側掛け回し材の前記掛止具から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回し、その後、締付手段によって前記外側掛け回し材を締め付けることを特徴とする。
【解決手段】樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、前記複数の杭の上部にそれぞれ掛止具を取り付け、前記根鉢の上面に外側掛け回し材を掛け回すとともに該外側掛け回し材を前記掛止具に掛止し、次に、内側掛け回し材を前記外側掛け回し材の前記掛止具から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回し、その後、締付手段によって前記外側掛け回し材を締め付けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木の支持施工方法と、支持施工用具、さらに詳しくは、公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の都市部における種々の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための樹木の支持施工方法と、支持施工用具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための施工方法が実施されている。そして、このような支持施工方法においては、樹木の根鉢を地下部分で固定する必要があり、そのような支持施工方法や支持施工用具として従来から種々の方法や用具が採用されている。
【0003】
たとえば、根鉢の周囲にワイヤー等の紐状体を掛け回し、その紐状体をアンカー等の打込部材に係止し、その打込部材を地中に打ち込んで根鉢を固定する方法や、そのアンカーに代えて根鉢を載置材に載置し、その載置材に紐状体を掛け回して根鉢を固定する方法、或いは根鉢の側面に沿って杭状の部材を打ち込む方法等が用いられているが、これらの方法に用いられる支持施工用具の多くは金属製のものである。
【0004】
ところが、これらの支持施工用具は、根鉢を固定する目的で根鉢の周囲に設置されることから、一般には土中に埋設してそのまま放置される。しかし、金属製のこれらの支持施工用具が土中に埋設した状態でそのまま放置されることは、自然環境破壊の観点からは、本来好ましいものでない。
【0005】
そこで、このような点に鑑みて、たとえば木製の杭を根鉢の側面に沿って打ち込むような方法も行われており、このような方法として、たとえば下記特許文献1のような特許出願がなされている。
【0006】
すなわち、この特許文献1に記載された方法は、根鉢の周面に沿って木製の支持杭を打ち込むとともに、その支持杭に木製の根枷部材を横向きに取り付けて施工する方法である。
【0007】
しかしながら、この特許文献1に記載された方法では、2つのリングを有する根枷取付具のうちの1つのリングに杭を差し込み、他のリングに根枷部材を差し込むことによって根枷部材が2本の杭に跨がるように取り付けられるため、このようなリングに杭と根枷部材とを差し込んで施工する作業自体が煩雑であるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−73075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、自然環境破壊の観点から、主として木製の杭を使用し、しかも支持施工のための作業を従来に比べて非常に容易にし、且つ支持施工に使用する部材のコストも低減することのできる樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために、樹木の支持施工方法と、その支持施
工方法に用いる支持施工用具としてなされたもので、樹木の支持施工方法としての特徴は、樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、前記複数の杭の上部にはそれぞれ掛止具を取り付け、前記根鉢の上面に外側掛け回し材を掛け回すとともに該外側掛け回し材を前記掛止具に掛止し、内側掛け回し材を前記外側掛け回し材の前記掛止具から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回し、その後、締付手段によって前記外側掛け回し材を締め付けることである。
【0011】
さらに支持施工用具としての特徴は、樹木の根鉢に沿って地面に打ち込むための複数の杭と、前記複数の杭の上部にそれぞれ取り付けられる掛止具と、前記根鉢の上面に掛け回わされて前記掛止具に掛止される外側掛け回し材と、該外側掛け回し材の前記掛止具から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回わされる内側掛け回し材と、前記外側掛け回し材を締め付けるための締付手段とを具備して構成されていることである。
【0012】
締付手段によって外側掛け回し材を締め付けた後、さらに複数の杭を地中に打ち込むことも可能である。
【0013】
締付手段として、たとえばウインチのようなものが用いられる。このウインチは、外側掛け回し材に取り付けることによって、その締付力を好適に作用させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、上述のように、樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、その杭の上部に掛止具を取り付け、その掛止具に、根鉢の上面に掛け回す外側掛け回し材をと掛止するとともに、外側掛け回し材の掛止具から離間した位置に内側掛け回し材を掛止し、締付手段によって外側掛け回し材を締め付けることによって、施工することができ、このような複数の杭、掛止具、2種類の掛け回し材、及びウインチ等の締付手段のみを用いて施工することができるので、上記従来の技術の根枷部材のようなものを用いる煩雑さもなく、樹木の支持施工のための作業を簡易に行うことができるという効果がある。
【0015】
また、複数の杭、掛止具、2種類の掛け回し材、及びウインチ等の締付手段のみで支持施工用具が構成されているので、支持施工に使用する部材のコストも従来に比べて低減することができるという効果がある。
【0016】
そして上記内側掛け回し材は、施工後一定年数経過して、幹が太くなる等樹木が生育したときに、幹巻き用として樹木の幹部を支持するように好適に機能し、さらに外側掛け回し材は、根鉢の上面に掛け回わされて根鉢の固定用として好適に機能することとなり、さらに外側掛け回し材が掛止具を介して掛止された複数の杭によって根鉢が固定されるので、上記のような簡易な構成でありながら、樹木の支持施工用具として樹木を含む根鉢全体を好適に支持することができるのである。
【0017】
また、締付手段によって外側掛け回し材を締め付けた後、さらに複数の杭を地中に打ち込む場合には、外側掛け回し材によって根鉢を固定する作用がより好適に生じることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
【0019】
(実施形態1)
本実施形態の支持施工用具は、図1乃至図11に示すように、根鉢の側面に沿って地面に打ち込むための木製の杭1と、該杭1に取り付けられる掛止具2と、該掛止具2に掛止されて根鉢の上面に掛け回わされる外側掛け回し材の一例としての外側掛け回しベルト3と、該外側掛け回しベルト3に掛止されて、根鉢の上面における前記外側掛け回しベルト3よりも樹木の幹部側に近い位置に掛け回わされる内側掛け回し材の一例としての内側掛け回しベルト4と、前記外側掛け回しベルト3を締め付けるためのウインチ5と、前記外側掛け回しベルト3の一端側が掛止されて前記ウインチ5に同軸的に取り付けられる取付金具6と、前記内側掛け回しベルト4を固定するための固定金具7とを具備して構成されている。
【0020】
杭1は、図1に示すように、一般の丸太杭の形態に形成されたもので、その下端1aが地面に打ち込み可能に、尖って形成されている。
【0021】
掛止具2は、図2乃至図4に示すように、前記杭1への取付部分となる取付片8と、
前記外側掛け回しベルト3の掛止部分となるフック片9とで構成されている。取付片8とフック片9とは、ともに、鉄等の金属で構成されており、該取付片8の前面側に前記フック片9が溶接されて取付片8とフック片9とが一体化されることによって、前記掛止具2が構成されているのである。
【0022】
フック片9は、図2乃至図4に示すように、前記取付片8への取付部分となる取付部9aと、該取付部9aよりも幅広に形成されて該取付部9aの上部に立ち上がり形成された立ち上がり部9bと、該立ち上がり部9bの上部折曲部9cから下向き且つ外側へ湾曲しつつ延出された先端掛止部9dとで構成されている。取付部9aの中央やや下側には、釘の挿入部分となる小さい円形の孔10が穿設されている。
【0023】
前記立ち上がり部9bは、上向きに徐々に幅広となるように両側がテーパ状に形成され、前記先端掛止部9dは、前記上部折曲部9cから下向きに徐々に幅狭となるように両側がテーパ状に形成されている。このような状態で立ち上がり部9bと先端掛止部9dとがテーパ状に形成されている結果、上部折曲部9cの近傍が最も幅広くなるように設定されていることになる。これは、該上部折曲部9cの近傍が、外側掛け回しベルト3の直接的な掛止部分となるからである。
【0024】
取付片8は、図2に示すように横長の略長方形状に形成されており、左右両側に複数の長孔11が穿設されている。本実施形態においては、左右両側に5条ずつ、取付片8の全体で計10条の長孔11が穿設されている。このように計10条の長孔11が穿設されていることによって、後述するように、取付片8を断面円形の杭1の外周面に沿って湾曲させることが可能となるのである。
【0025】
また取付片8の中央やや下側には、釘の挿入部分となる小さい円形の孔12が穿設されている。この取付片8の孔12と前記フック片9の孔10とは、図2乃至4に示すように連通状態となるように、その位置が設定されている。
【0026】
ウインチ5は、図5、7、8に示すように、外側掛け回しベルト3の端部を取り付ける軸部13を具備し、さらに該軸部13の片側に取り付けられたラチェット14と、該ラチェット14に係止可能な係止体15とを具備して構成されている。前記軸部13の所定位置には図7のように長孔16が穿設されており、さらにウインチボディ5aの上面側にも図5のように長孔17が穿設されている。これら軸部13とウインチボディ5aとに穿設された長孔16、17は、いずれも外側掛け回しベルト3の挿入部分となるものである。ウインチ5は、全体が鉄等の金属で構成されている。
【0027】
取付金具6は、図6に示すように略ホームベース形に形成された鉄等の金属製のものであり、幅広な一端6a側には、外側掛け回しベルト3を挿入するための長孔18が穿設されており、先細な他端6b側には、前記取付金具6を前記ウインチ5に同軸的に取り付けるためのボルト20の挿入部分となる円形の孔19が穿設されている。そして、図6のように外側掛け回しベルト3が長孔18に挿入されて、該外側掛け回しベルト3が取付金具6に取り付けられている。
【0028】
ウインチボディ5aの上面側には、図5、7の点線で示すように、略三角形状の孔21が穿設されており、その孔21と前記取付金具6の孔19とが連通状態となるように配置された上で、ボルト20が孔19、21の挿入されることとなる。そして、図7に示すようにボルト20にワッシャ22及びナット23が取り付けられることによって、取付金具6がウインチ5に同軸的に取り付けられることとなる。この場合、取付金具6がウインチ5に対して回動自在となるように、前記ボルト20はナット23に緩めに螺合されている。これによって、ウインチ5の締付力が、該ウインチ5側に取り付けられる外側掛け回しベルト3の端部のみならず、取付金具6側に取り付けられる外側掛け回しベルト3の端部にも好適に作用することとなり、外側掛け回しベルト3の張力が好適に生じることとなるのである。
【0029】
外側掛け回しベルト3の素材としては、たとえば麻、綿等の天然繊維、ポリアミド等の合成繊維等、一般に汎用されている素材のものを用いることができる。また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等生分解樹脂からなる繊維のものを用いることもできる。さらに、内側掛け回しベルト4の素材としても、外側掛け回しベルト3と同様に麻、綿等の天然繊維、ポリアミド等の合成繊維、生分解樹脂からなる繊維等を用いることができる。
【0030】
内側掛け回しベルト4を固定するための固定金具7は、図9及び図10に示すように、全体が略正方形状に形成されているとともに、2条の長孔24が穿設されている。この固定金具7は鉄等の金属で構成されている。
【0031】
本実施形態においては、図11に示すように2個の固定金具7を準備し、その2個の固定金具7の長孔24がほぼ連通するような状態となるように配置した上で、同図のように内側掛け回しベルト4の一端側4a側及び他端4b側を2個の固定金具7の長孔24に挿入し、外側に配置された固定金具7の周囲に巻装した後、内側に配置された固定金具7の長孔24に再度挿入するとともに、その内側の固定金具7の周囲に巻装する。結果として、内側掛け回しベルト4の一端側4a側及び他端4b側は、図11に示すように2個の固定金具7の長孔24に挿入されるとともに、その2個の固定金具7に断面略S字状となるように巻装されて固定されることとなる。
【0032】
次に、上記のような構成からなる樹木の支持施工用具を用いて、樹木の支持施工を行う方法について説明する。先ず、図12に示すように、予め形成された植穴25内に樹木26の根鉢27を収納し、その底壁面28に根鉢27を載置する。
【0033】
次に、根鉢27の側面に沿って、杭1を植穴25の底壁面28に打ち込む。それに先立って、杭1には、掛止具2を取り付けておく。すなわち、図13乃至図15に示すように、掛止具2の取付片8を、断面円形の杭1の外周面に沿うように湾曲させ、杭1の外周面に接触させる。この場合において、掛止具2の取付片8には上述のように左右両側に5条ずつ、計10条の長孔11が穿設されているので、取付片8が金属製のものであるにもかかわらず、その取付片8を断面円形の杭1の外周面に沿って容易に湾曲させることができる。
【0034】
そして、その状態で図13乃至図15に示すように、釘29をフック片9及び取付片8に連通状態となっている孔10、12に挿入しつつ、杭1に打ち込む。このようにして掛止具2が杭1に取り付けられることとなる。尚、掛止具2は、図13及び図14に示すように、杭1の上端1bよりも少し下側に位置するように取り付けられる。
【0035】
上述のように杭1に掛止具2を予め取り付けた上で、ハンマー等によって、図16及び図17に示すように杭1を根鉢27の側面に沿って底壁面28に打ち込む。この場合、杭1は、図16に示すように、やや内向きに傾いた状態となるように打ち込む。本実施形態では、図17に示すように計3本の杭1を根鉢27の側面に沿って略等間隔の位置に打ち込む。尚、打ち込み後の杭1の高さは、図16に示すように杭1の上端が根鉢27の上面よりも少し高くなるような位置に設定され、また図17に示すように、掛止具2のフック片9が外側に向くように、杭1の打ち込むべき向きが設定される。底壁面28には、図16に示すように予め予備客土30を盛っておくことが望ましい。
【0036】
次に、図18及び図19に示すように、外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回すとともに、その外側掛け回しベルト3を掛止具2に掛止させる。より詳しくは、図13乃至図15に示すように、掛止具2のフック片9、特に先端側先端掛止部9dの位置で外側掛け回しベルト3が掛止されることとなる。この場合において、掛止具2が取り付けられた3本の杭1は、根鉢の周囲に沿って略等間隔の位置に打ち込まれているので、外側掛け回しベルト3は、図19に示すように、平面視において略正三角形をなすように掛け回わされることとなる。
【0037】
また、この場合において、掛止具2のフック片9は、取付片8への取付部分となる取付部9aの上部に立ち上がり形成された立ち上がり部9bと、該立ち上がり部9bの上部折曲部9cから下向き且つ外側へ湾曲しつつ延出された先端掛止部9dとで構成されて、全体がフック状に形成されているので、そのフック片9から外側掛け回しベルト3が不用意に離脱するようなこともない。
【0038】
しかも、フック片9の立ち上がり部9bが上向きに徐々に幅広となるように両側がテーパ状に形成され、先端掛止部9dが上部折曲部9cから下向きに徐々に幅狭となるように両側がテーパ状に形成されており、結果として、上部折曲部9cの近傍がもっとも幅広くなるように構成されているので、外側掛け回しベルト3はフック片9に好適に掛止されることとなるのである。
【0039】
このように外側掛け回しベルト3が根鉢の上面に掛け回わされた状態において、外側掛け回しベルト3の両端部は、図19に示すようにウインチ5と取付金具6とに取り付けられた状態となっている。より詳しくは、図20に示すように、外側掛け回しベルト3の一端3a側が取付金具6の長孔18に挿入され、外側掛け回しベルト3の他端3b側がウインチ5の長孔17に挿入されて、外側掛け回しベルト3の両端部がウインチ5と取付金具6とに取り付けられることとなる。
【0040】
尚、このように外側掛け回しベルト3を根鉢の上面に掛け回わし、掛止具2に掛止した状態においては、未だウインチ5による締付けは行われておらず、従って、外側掛け回しベルト3は、図19に示すように少し弛んだ状態となっている。
【0041】
次に、図21及び図22に示すように、内側掛け回しベルト4を、根鉢の上面であって樹木26の幹部に比較的近い位置に掛け回し、且つ前記外側掛け回しベルト3に掛止させる。この場合、内側掛け回しベルト4は、略正三角形をなすように根鉢の上面に掛け回わされた外側掛け回しベルト3の3辺の部分に掛止され、結果として内側掛け回しベルト4自体も平面視において略正三角形をなし、且つ外側掛け回しベルト3の内側に包囲されるように、根鉢の上面に掛け回わされることとなる。
【0042】
この場合、内側掛け回しベルト4の両端部4a、4bは、上記図11に示すように
して固定金具7で固定される。
【0043】
そして、このように外側掛け回しベルト3に内側掛け回しベルト4を掛止して、それぞれを根鉢の上面に掛け回した後、外側掛け回しベルト3をウインチ5で締め付ける。上記図22のように、内側掛け回しベルト4を外側掛け回しベルト3に掛止した直後においては、同図に示すように、内側掛け回しベルト4によって外側掛け回しベルト3が少し絞り込まれたような状態となっているが、外側掛け回しベルト3をウインチ5で締め付けることによって、図23のように外側掛け回しベルト3が真っ直ぐに張設されたような状態となる。このように外側掛け回しベルト3が張設されることによって根鉢27が固定されるとともに、その外側掛け回しベルト3の張設力が上記掛止具2を介して複数の杭1に作用し、その複数の杭1による根鉢27側への押圧力によって根鉢27を固定する作用がさらに増大することとなる。
【0044】
次に、図24の矢印方向に示すように、打ち込まれていた状態から、さらに杭1を地中に打ち込む。この場合、杭1の上端部が根鉢の上面よりも少し下側に位置するように杭1の打ち込み位置を設定する。
【0045】
その後、植穴25内に土を入れて植穴25を閉塞することによって、樹木の支持施工が完成する。
【0046】
尚、上記実施形態では、根鉢27の側面に沿って計3本の杭1を地面に打ち込んだが、打ち込む杭1の本数も上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば4本の杭1を打ち込むことも可能である。要は、複数の杭1が根鉢17の側面に沿って打ち込まれていればよいのである。
また、上記実施形態では、予め掛止具2を複数の杭1にそれぞれ取り付けた後に、その複数の杭1を根鉢27に沿って地面に打ち込んだが、これとは逆に、複数の杭1を地面に打ち込んだ後に、掛止具2を杭1に取り付けることも可能であり、その手順の前後は問わない。ただし、作業性の観点からは、上記実施形態のように予め掛止具2を杭1に取り付けた後に、杭1を地面に打ち込むことが望ましい。
さらに、上記実施形態では、外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回した後に、その外側掛け回しベルト3に内側掛け回しベルト4を掛け回したが、予め内側掛け回しベルト4を外側掛け回しベルト3に掛け回しておいて、その内側掛け回しベルト4が掛け回わされた外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回すことも可能である。ただし、作業性の観点からは、外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回した後に、外側掛け回しベルト3に内側掛け回しベルト4を掛け回すことが望ましい。
【0047】
また、上記実施形態では、掛止具2が上記のような取付片8やフック片9を具備して構成されていたが、掛止具2の構成も上記実施形態に限定されるものではない。また、ウインチ5や取付金具6の構成等も、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内で任意に変更可能である。
さらに、上記実施形態では、外側掛け回し部材や内側掛け回し部材として、平板状の形状に形成された外側掛け回しベルト3や内側掛け回しベルト4を用いたが、外側掛け回し部材や内側掛け回し部材の形状も該実施形態の平板状の形状に形成されたものに限らず、たとえば断面円形のロープ状に形成されたものを用いてもよい。さらに、締付手段として、ウインチ5に代えて、他の締付手段を用いることも可能である。
さらに、上記実施形態では、杭1をやや内向きに傾いた状態として打ち込んだので、
杭1の略全体が根鉢27に接触せずに、その一部が根鉢27から少し離間する可能性があるが、杭1の略全体を根鉢27に接触させることは条件とはならない。すなわち、本発明において「根鉢17に沿って杭1を地面に打ち込む」とは、杭1を根鉢に接触させるか否かは問わずに杭1を根鉢17に沿わせることを意味する。
【0048】
尚、本発明においては、上述のように自然環境破壊の観点から、木製の杭1を用いることを主眼とするが、木製のものに限らず、金属製の杭を用いる場合も本発明の範囲に含まれる。また、本発明は、一般の地盤に予め形成された植穴15内に根鉢17を収納して樹木を支持施工する、いわゆる地下支柱の施工に適用することを主眼とするが、このような一般の地盤の他、人工地盤における樹木の支持施工に本発明を適用することも可能である。このような人工地盤に用いる場合には、植穴15の形成は必要なく、根鉢17を埋設するよう人工土壌を積層することによって樹木の支持施工をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態の支持施工用具の杭の正面図。
【図2】掛止具の正面図。
【図3】同側面図。
【図4】図2のA−A線断面図。
【図5】ウインチに取付金具を取り付けた状態の平面図。
【図6】取付金具の平面図。
【図7】ウインチに取付金具を取り付けた状態の底面図。
【図8】同側面図。
【図9】固定金具の平面図。
【図10】図9のB−B線断面図。
【図11】固定金具に内側掛け回しベルトを掛け回した状態の断面図。
【図12】根鉢を植穴内に収納する状態の概略側面図。
【図13】掛止具を杭に取り付ける状態を示す正面図。
【図14】同概略側面図。
【図15】同一部断面概略底面図。
【図16】杭を打ち込んだ状態の概略側面図。
【図17】同概略平面図。
【図18】外側掛け回しベルトを掛け回した状態の概略側面図。
【図19】同概略平面図。
【図20】ウインチに外側掛け回しベルトを取り付けた要部拡大平面図。
【図21】内側掛け回しベルトを外側掛け回しベルトに取り付けた状態の概略側面図。
【図22】同概略平面図。
【図23】ウインチで締め付けた状態の概略平面図。
【図24】杭をさらに打ち込んだ状態の概略側面図。
【符号の説明】
【0050】
1…杭 2…掛止具
3…外側掛け回しベルト 4…内側掛け回しベルト
5…ウインチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木の支持施工方法と、支持施工用具、さらに詳しくは、公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の都市部における種々の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための樹木の支持施工方法と、支持施工用具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための施工方法が実施されている。そして、このような支持施工方法においては、樹木の根鉢を地下部分で固定する必要があり、そのような支持施工方法や支持施工用具として従来から種々の方法や用具が採用されている。
【0003】
たとえば、根鉢の周囲にワイヤー等の紐状体を掛け回し、その紐状体をアンカー等の打込部材に係止し、その打込部材を地中に打ち込んで根鉢を固定する方法や、そのアンカーに代えて根鉢を載置材に載置し、その載置材に紐状体を掛け回して根鉢を固定する方法、或いは根鉢の側面に沿って杭状の部材を打ち込む方法等が用いられているが、これらの方法に用いられる支持施工用具の多くは金属製のものである。
【0004】
ところが、これらの支持施工用具は、根鉢を固定する目的で根鉢の周囲に設置されることから、一般には土中に埋設してそのまま放置される。しかし、金属製のこれらの支持施工用具が土中に埋設した状態でそのまま放置されることは、自然環境破壊の観点からは、本来好ましいものでない。
【0005】
そこで、このような点に鑑みて、たとえば木製の杭を根鉢の側面に沿って打ち込むような方法も行われており、このような方法として、たとえば下記特許文献1のような特許出願がなされている。
【0006】
すなわち、この特許文献1に記載された方法は、根鉢の周面に沿って木製の支持杭を打ち込むとともに、その支持杭に木製の根枷部材を横向きに取り付けて施工する方法である。
【0007】
しかしながら、この特許文献1に記載された方法では、2つのリングを有する根枷取付具のうちの1つのリングに杭を差し込み、他のリングに根枷部材を差し込むことによって根枷部材が2本の杭に跨がるように取り付けられるため、このようなリングに杭と根枷部材とを差し込んで施工する作業自体が煩雑であるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−73075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、自然環境破壊の観点から、主として木製の杭を使用し、しかも支持施工のための作業を従来に比べて非常に容易にし、且つ支持施工に使用する部材のコストも低減することのできる樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために、樹木の支持施工方法と、その支持施
工方法に用いる支持施工用具としてなされたもので、樹木の支持施工方法としての特徴は、樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、前記複数の杭の上部にはそれぞれ掛止具を取り付け、前記根鉢の上面に外側掛け回し材を掛け回すとともに該外側掛け回し材を前記掛止具に掛止し、内側掛け回し材を前記外側掛け回し材の前記掛止具から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回し、その後、締付手段によって前記外側掛け回し材を締め付けることである。
【0011】
さらに支持施工用具としての特徴は、樹木の根鉢に沿って地面に打ち込むための複数の杭と、前記複数の杭の上部にそれぞれ取り付けられる掛止具と、前記根鉢の上面に掛け回わされて前記掛止具に掛止される外側掛け回し材と、該外側掛け回し材の前記掛止具から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回わされる内側掛け回し材と、前記外側掛け回し材を締め付けるための締付手段とを具備して構成されていることである。
【0012】
締付手段によって外側掛け回し材を締め付けた後、さらに複数の杭を地中に打ち込むことも可能である。
【0013】
締付手段として、たとえばウインチのようなものが用いられる。このウインチは、外側掛け回し材に取り付けることによって、その締付力を好適に作用させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、上述のように、樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、その杭の上部に掛止具を取り付け、その掛止具に、根鉢の上面に掛け回す外側掛け回し材をと掛止するとともに、外側掛け回し材の掛止具から離間した位置に内側掛け回し材を掛止し、締付手段によって外側掛け回し材を締め付けることによって、施工することができ、このような複数の杭、掛止具、2種類の掛け回し材、及びウインチ等の締付手段のみを用いて施工することができるので、上記従来の技術の根枷部材のようなものを用いる煩雑さもなく、樹木の支持施工のための作業を簡易に行うことができるという効果がある。
【0015】
また、複数の杭、掛止具、2種類の掛け回し材、及びウインチ等の締付手段のみで支持施工用具が構成されているので、支持施工に使用する部材のコストも従来に比べて低減することができるという効果がある。
【0016】
そして上記内側掛け回し材は、施工後一定年数経過して、幹が太くなる等樹木が生育したときに、幹巻き用として樹木の幹部を支持するように好適に機能し、さらに外側掛け回し材は、根鉢の上面に掛け回わされて根鉢の固定用として好適に機能することとなり、さらに外側掛け回し材が掛止具を介して掛止された複数の杭によって根鉢が固定されるので、上記のような簡易な構成でありながら、樹木の支持施工用具として樹木を含む根鉢全体を好適に支持することができるのである。
【0017】
また、締付手段によって外側掛け回し材を締め付けた後、さらに複数の杭を地中に打ち込む場合には、外側掛け回し材によって根鉢を固定する作用がより好適に生じることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
【0019】
(実施形態1)
本実施形態の支持施工用具は、図1乃至図11に示すように、根鉢の側面に沿って地面に打ち込むための木製の杭1と、該杭1に取り付けられる掛止具2と、該掛止具2に掛止されて根鉢の上面に掛け回わされる外側掛け回し材の一例としての外側掛け回しベルト3と、該外側掛け回しベルト3に掛止されて、根鉢の上面における前記外側掛け回しベルト3よりも樹木の幹部側に近い位置に掛け回わされる内側掛け回し材の一例としての内側掛け回しベルト4と、前記外側掛け回しベルト3を締め付けるためのウインチ5と、前記外側掛け回しベルト3の一端側が掛止されて前記ウインチ5に同軸的に取り付けられる取付金具6と、前記内側掛け回しベルト4を固定するための固定金具7とを具備して構成されている。
【0020】
杭1は、図1に示すように、一般の丸太杭の形態に形成されたもので、その下端1aが地面に打ち込み可能に、尖って形成されている。
【0021】
掛止具2は、図2乃至図4に示すように、前記杭1への取付部分となる取付片8と、
前記外側掛け回しベルト3の掛止部分となるフック片9とで構成されている。取付片8とフック片9とは、ともに、鉄等の金属で構成されており、該取付片8の前面側に前記フック片9が溶接されて取付片8とフック片9とが一体化されることによって、前記掛止具2が構成されているのである。
【0022】
フック片9は、図2乃至図4に示すように、前記取付片8への取付部分となる取付部9aと、該取付部9aよりも幅広に形成されて該取付部9aの上部に立ち上がり形成された立ち上がり部9bと、該立ち上がり部9bの上部折曲部9cから下向き且つ外側へ湾曲しつつ延出された先端掛止部9dとで構成されている。取付部9aの中央やや下側には、釘の挿入部分となる小さい円形の孔10が穿設されている。
【0023】
前記立ち上がり部9bは、上向きに徐々に幅広となるように両側がテーパ状に形成され、前記先端掛止部9dは、前記上部折曲部9cから下向きに徐々に幅狭となるように両側がテーパ状に形成されている。このような状態で立ち上がり部9bと先端掛止部9dとがテーパ状に形成されている結果、上部折曲部9cの近傍が最も幅広くなるように設定されていることになる。これは、該上部折曲部9cの近傍が、外側掛け回しベルト3の直接的な掛止部分となるからである。
【0024】
取付片8は、図2に示すように横長の略長方形状に形成されており、左右両側に複数の長孔11が穿設されている。本実施形態においては、左右両側に5条ずつ、取付片8の全体で計10条の長孔11が穿設されている。このように計10条の長孔11が穿設されていることによって、後述するように、取付片8を断面円形の杭1の外周面に沿って湾曲させることが可能となるのである。
【0025】
また取付片8の中央やや下側には、釘の挿入部分となる小さい円形の孔12が穿設されている。この取付片8の孔12と前記フック片9の孔10とは、図2乃至4に示すように連通状態となるように、その位置が設定されている。
【0026】
ウインチ5は、図5、7、8に示すように、外側掛け回しベルト3の端部を取り付ける軸部13を具備し、さらに該軸部13の片側に取り付けられたラチェット14と、該ラチェット14に係止可能な係止体15とを具備して構成されている。前記軸部13の所定位置には図7のように長孔16が穿設されており、さらにウインチボディ5aの上面側にも図5のように長孔17が穿設されている。これら軸部13とウインチボディ5aとに穿設された長孔16、17は、いずれも外側掛け回しベルト3の挿入部分となるものである。ウインチ5は、全体が鉄等の金属で構成されている。
【0027】
取付金具6は、図6に示すように略ホームベース形に形成された鉄等の金属製のものであり、幅広な一端6a側には、外側掛け回しベルト3を挿入するための長孔18が穿設されており、先細な他端6b側には、前記取付金具6を前記ウインチ5に同軸的に取り付けるためのボルト20の挿入部分となる円形の孔19が穿設されている。そして、図6のように外側掛け回しベルト3が長孔18に挿入されて、該外側掛け回しベルト3が取付金具6に取り付けられている。
【0028】
ウインチボディ5aの上面側には、図5、7の点線で示すように、略三角形状の孔21が穿設されており、その孔21と前記取付金具6の孔19とが連通状態となるように配置された上で、ボルト20が孔19、21の挿入されることとなる。そして、図7に示すようにボルト20にワッシャ22及びナット23が取り付けられることによって、取付金具6がウインチ5に同軸的に取り付けられることとなる。この場合、取付金具6がウインチ5に対して回動自在となるように、前記ボルト20はナット23に緩めに螺合されている。これによって、ウインチ5の締付力が、該ウインチ5側に取り付けられる外側掛け回しベルト3の端部のみならず、取付金具6側に取り付けられる外側掛け回しベルト3の端部にも好適に作用することとなり、外側掛け回しベルト3の張力が好適に生じることとなるのである。
【0029】
外側掛け回しベルト3の素材としては、たとえば麻、綿等の天然繊維、ポリアミド等の合成繊維等、一般に汎用されている素材のものを用いることができる。また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等生分解樹脂からなる繊維のものを用いることもできる。さらに、内側掛け回しベルト4の素材としても、外側掛け回しベルト3と同様に麻、綿等の天然繊維、ポリアミド等の合成繊維、生分解樹脂からなる繊維等を用いることができる。
【0030】
内側掛け回しベルト4を固定するための固定金具7は、図9及び図10に示すように、全体が略正方形状に形成されているとともに、2条の長孔24が穿設されている。この固定金具7は鉄等の金属で構成されている。
【0031】
本実施形態においては、図11に示すように2個の固定金具7を準備し、その2個の固定金具7の長孔24がほぼ連通するような状態となるように配置した上で、同図のように内側掛け回しベルト4の一端側4a側及び他端4b側を2個の固定金具7の長孔24に挿入し、外側に配置された固定金具7の周囲に巻装した後、内側に配置された固定金具7の長孔24に再度挿入するとともに、その内側の固定金具7の周囲に巻装する。結果として、内側掛け回しベルト4の一端側4a側及び他端4b側は、図11に示すように2個の固定金具7の長孔24に挿入されるとともに、その2個の固定金具7に断面略S字状となるように巻装されて固定されることとなる。
【0032】
次に、上記のような構成からなる樹木の支持施工用具を用いて、樹木の支持施工を行う方法について説明する。先ず、図12に示すように、予め形成された植穴25内に樹木26の根鉢27を収納し、その底壁面28に根鉢27を載置する。
【0033】
次に、根鉢27の側面に沿って、杭1を植穴25の底壁面28に打ち込む。それに先立って、杭1には、掛止具2を取り付けておく。すなわち、図13乃至図15に示すように、掛止具2の取付片8を、断面円形の杭1の外周面に沿うように湾曲させ、杭1の外周面に接触させる。この場合において、掛止具2の取付片8には上述のように左右両側に5条ずつ、計10条の長孔11が穿設されているので、取付片8が金属製のものであるにもかかわらず、その取付片8を断面円形の杭1の外周面に沿って容易に湾曲させることができる。
【0034】
そして、その状態で図13乃至図15に示すように、釘29をフック片9及び取付片8に連通状態となっている孔10、12に挿入しつつ、杭1に打ち込む。このようにして掛止具2が杭1に取り付けられることとなる。尚、掛止具2は、図13及び図14に示すように、杭1の上端1bよりも少し下側に位置するように取り付けられる。
【0035】
上述のように杭1に掛止具2を予め取り付けた上で、ハンマー等によって、図16及び図17に示すように杭1を根鉢27の側面に沿って底壁面28に打ち込む。この場合、杭1は、図16に示すように、やや内向きに傾いた状態となるように打ち込む。本実施形態では、図17に示すように計3本の杭1を根鉢27の側面に沿って略等間隔の位置に打ち込む。尚、打ち込み後の杭1の高さは、図16に示すように杭1の上端が根鉢27の上面よりも少し高くなるような位置に設定され、また図17に示すように、掛止具2のフック片9が外側に向くように、杭1の打ち込むべき向きが設定される。底壁面28には、図16に示すように予め予備客土30を盛っておくことが望ましい。
【0036】
次に、図18及び図19に示すように、外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回すとともに、その外側掛け回しベルト3を掛止具2に掛止させる。より詳しくは、図13乃至図15に示すように、掛止具2のフック片9、特に先端側先端掛止部9dの位置で外側掛け回しベルト3が掛止されることとなる。この場合において、掛止具2が取り付けられた3本の杭1は、根鉢の周囲に沿って略等間隔の位置に打ち込まれているので、外側掛け回しベルト3は、図19に示すように、平面視において略正三角形をなすように掛け回わされることとなる。
【0037】
また、この場合において、掛止具2のフック片9は、取付片8への取付部分となる取付部9aの上部に立ち上がり形成された立ち上がり部9bと、該立ち上がり部9bの上部折曲部9cから下向き且つ外側へ湾曲しつつ延出された先端掛止部9dとで構成されて、全体がフック状に形成されているので、そのフック片9から外側掛け回しベルト3が不用意に離脱するようなこともない。
【0038】
しかも、フック片9の立ち上がり部9bが上向きに徐々に幅広となるように両側がテーパ状に形成され、先端掛止部9dが上部折曲部9cから下向きに徐々に幅狭となるように両側がテーパ状に形成されており、結果として、上部折曲部9cの近傍がもっとも幅広くなるように構成されているので、外側掛け回しベルト3はフック片9に好適に掛止されることとなるのである。
【0039】
このように外側掛け回しベルト3が根鉢の上面に掛け回わされた状態において、外側掛け回しベルト3の両端部は、図19に示すようにウインチ5と取付金具6とに取り付けられた状態となっている。より詳しくは、図20に示すように、外側掛け回しベルト3の一端3a側が取付金具6の長孔18に挿入され、外側掛け回しベルト3の他端3b側がウインチ5の長孔17に挿入されて、外側掛け回しベルト3の両端部がウインチ5と取付金具6とに取り付けられることとなる。
【0040】
尚、このように外側掛け回しベルト3を根鉢の上面に掛け回わし、掛止具2に掛止した状態においては、未だウインチ5による締付けは行われておらず、従って、外側掛け回しベルト3は、図19に示すように少し弛んだ状態となっている。
【0041】
次に、図21及び図22に示すように、内側掛け回しベルト4を、根鉢の上面であって樹木26の幹部に比較的近い位置に掛け回し、且つ前記外側掛け回しベルト3に掛止させる。この場合、内側掛け回しベルト4は、略正三角形をなすように根鉢の上面に掛け回わされた外側掛け回しベルト3の3辺の部分に掛止され、結果として内側掛け回しベルト4自体も平面視において略正三角形をなし、且つ外側掛け回しベルト3の内側に包囲されるように、根鉢の上面に掛け回わされることとなる。
【0042】
この場合、内側掛け回しベルト4の両端部4a、4bは、上記図11に示すように
して固定金具7で固定される。
【0043】
そして、このように外側掛け回しベルト3に内側掛け回しベルト4を掛止して、それぞれを根鉢の上面に掛け回した後、外側掛け回しベルト3をウインチ5で締め付ける。上記図22のように、内側掛け回しベルト4を外側掛け回しベルト3に掛止した直後においては、同図に示すように、内側掛け回しベルト4によって外側掛け回しベルト3が少し絞り込まれたような状態となっているが、外側掛け回しベルト3をウインチ5で締め付けることによって、図23のように外側掛け回しベルト3が真っ直ぐに張設されたような状態となる。このように外側掛け回しベルト3が張設されることによって根鉢27が固定されるとともに、その外側掛け回しベルト3の張設力が上記掛止具2を介して複数の杭1に作用し、その複数の杭1による根鉢27側への押圧力によって根鉢27を固定する作用がさらに増大することとなる。
【0044】
次に、図24の矢印方向に示すように、打ち込まれていた状態から、さらに杭1を地中に打ち込む。この場合、杭1の上端部が根鉢の上面よりも少し下側に位置するように杭1の打ち込み位置を設定する。
【0045】
その後、植穴25内に土を入れて植穴25を閉塞することによって、樹木の支持施工が完成する。
【0046】
尚、上記実施形態では、根鉢27の側面に沿って計3本の杭1を地面に打ち込んだが、打ち込む杭1の本数も上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば4本の杭1を打ち込むことも可能である。要は、複数の杭1が根鉢17の側面に沿って打ち込まれていればよいのである。
また、上記実施形態では、予め掛止具2を複数の杭1にそれぞれ取り付けた後に、その複数の杭1を根鉢27に沿って地面に打ち込んだが、これとは逆に、複数の杭1を地面に打ち込んだ後に、掛止具2を杭1に取り付けることも可能であり、その手順の前後は問わない。ただし、作業性の観点からは、上記実施形態のように予め掛止具2を杭1に取り付けた後に、杭1を地面に打ち込むことが望ましい。
さらに、上記実施形態では、外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回した後に、その外側掛け回しベルト3に内側掛け回しベルト4を掛け回したが、予め内側掛け回しベルト4を外側掛け回しベルト3に掛け回しておいて、その内側掛け回しベルト4が掛け回わされた外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回すことも可能である。ただし、作業性の観点からは、外側掛け回しベルト3を根鉢27の上面に掛け回した後に、外側掛け回しベルト3に内側掛け回しベルト4を掛け回すことが望ましい。
【0047】
また、上記実施形態では、掛止具2が上記のような取付片8やフック片9を具備して構成されていたが、掛止具2の構成も上記実施形態に限定されるものではない。また、ウインチ5や取付金具6の構成等も、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内で任意に変更可能である。
さらに、上記実施形態では、外側掛け回し部材や内側掛け回し部材として、平板状の形状に形成された外側掛け回しベルト3や内側掛け回しベルト4を用いたが、外側掛け回し部材や内側掛け回し部材の形状も該実施形態の平板状の形状に形成されたものに限らず、たとえば断面円形のロープ状に形成されたものを用いてもよい。さらに、締付手段として、ウインチ5に代えて、他の締付手段を用いることも可能である。
さらに、上記実施形態では、杭1をやや内向きに傾いた状態として打ち込んだので、
杭1の略全体が根鉢27に接触せずに、その一部が根鉢27から少し離間する可能性があるが、杭1の略全体を根鉢27に接触させることは条件とはならない。すなわち、本発明において「根鉢17に沿って杭1を地面に打ち込む」とは、杭1を根鉢に接触させるか否かは問わずに杭1を根鉢17に沿わせることを意味する。
【0048】
尚、本発明においては、上述のように自然環境破壊の観点から、木製の杭1を用いることを主眼とするが、木製のものに限らず、金属製の杭を用いる場合も本発明の範囲に含まれる。また、本発明は、一般の地盤に予め形成された植穴15内に根鉢17を収納して樹木を支持施工する、いわゆる地下支柱の施工に適用することを主眼とするが、このような一般の地盤の他、人工地盤における樹木の支持施工に本発明を適用することも可能である。このような人工地盤に用いる場合には、植穴15の形成は必要なく、根鉢17を埋設するよう人工土壌を積層することによって樹木の支持施工をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態の支持施工用具の杭の正面図。
【図2】掛止具の正面図。
【図3】同側面図。
【図4】図2のA−A線断面図。
【図5】ウインチに取付金具を取り付けた状態の平面図。
【図6】取付金具の平面図。
【図7】ウインチに取付金具を取り付けた状態の底面図。
【図8】同側面図。
【図9】固定金具の平面図。
【図10】図9のB−B線断面図。
【図11】固定金具に内側掛け回しベルトを掛け回した状態の断面図。
【図12】根鉢を植穴内に収納する状態の概略側面図。
【図13】掛止具を杭に取り付ける状態を示す正面図。
【図14】同概略側面図。
【図15】同一部断面概略底面図。
【図16】杭を打ち込んだ状態の概略側面図。
【図17】同概略平面図。
【図18】外側掛け回しベルトを掛け回した状態の概略側面図。
【図19】同概略平面図。
【図20】ウインチに外側掛け回しベルトを取り付けた要部拡大平面図。
【図21】内側掛け回しベルトを外側掛け回しベルトに取り付けた状態の概略側面図。
【図22】同概略平面図。
【図23】ウインチで締め付けた状態の概略平面図。
【図24】杭をさらに打ち込んだ状態の概略側面図。
【符号の説明】
【0050】
1…杭 2…掛止具
3…外側掛け回しベルト 4…内側掛け回しベルト
5…ウインチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木(26)の根鉢(27)に沿って複数の杭(1)を地面に打ち込み、前記複数の杭(1)の上部にはそれぞれ掛止具(2)を取り付け、前記根鉢(27)の上面に外側掛け回し材を掛け回すとともに該外側掛け回し材を前記掛止具(2)に掛止し、内側掛け回し材を前記外側掛け回し材の前記掛止具(2)から離間した位置に掛止して前記根鉢(27)の上面に掛け回し、その後、締付手段によって前記外側掛け回し材を締め付けることを特徴とする樹木の支持施工方法。
【請求項2】
締付手段によって外側掛け回し材を締め付けた後、さらに複数の杭(1)を地中に打ち込む請求項1記載の樹木の支持施工方法。
【請求項3】
締付手段が、外側掛け回し材に取り付けられたウインチ(5)である請求項1又は2記載の樹木の支持施工方法。
【請求項4】
樹木(26)の根鉢(27)に沿って地面に打ち込むための複数の杭(1)と、前記複数の杭(1)の上部にそれぞれ取り付けられる掛止具(2)と、前記根鉢(27)の上面に掛け回わされて前記掛止具(2)に掛止される外側掛け回し材と、該外側掛け回し材の前記掛止具(2)から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回わされる内側掛け回し材と、前記外側掛け回し材を締め付けるための締付手段とを具備して構成されていることを特徴とする樹木の支持施工用具。
【請求項5】
締付手段が、外側掛け回し材に取り付けられたウインチ(5)である請求項4記載の樹木の支持施工用具。
【請求項1】
樹木(26)の根鉢(27)に沿って複数の杭(1)を地面に打ち込み、前記複数の杭(1)の上部にはそれぞれ掛止具(2)を取り付け、前記根鉢(27)の上面に外側掛け回し材を掛け回すとともに該外側掛け回し材を前記掛止具(2)に掛止し、内側掛け回し材を前記外側掛け回し材の前記掛止具(2)から離間した位置に掛止して前記根鉢(27)の上面に掛け回し、その後、締付手段によって前記外側掛け回し材を締め付けることを特徴とする樹木の支持施工方法。
【請求項2】
締付手段によって外側掛け回し材を締め付けた後、さらに複数の杭(1)を地中に打ち込む請求項1記載の樹木の支持施工方法。
【請求項3】
締付手段が、外側掛け回し材に取り付けられたウインチ(5)である請求項1又は2記載の樹木の支持施工方法。
【請求項4】
樹木(26)の根鉢(27)に沿って地面に打ち込むための複数の杭(1)と、前記複数の杭(1)の上部にそれぞれ取り付けられる掛止具(2)と、前記根鉢(27)の上面に掛け回わされて前記掛止具(2)に掛止される外側掛け回し材と、該外側掛け回し材の前記掛止具(2)から離間した位置に掛止して前記根鉢の上面に掛け回わされる内側掛け回し材と、前記外側掛け回し材を締め付けるための締付手段とを具備して構成されていることを特徴とする樹木の支持施工用具。
【請求項5】
締付手段が、外側掛け回し材に取り付けられたウインチ(5)である請求項4記載の樹木の支持施工用具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−193972(P2008−193972A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33595(P2007−33595)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【出願人】(391024696)住友林業緑化株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【出願人】(391024696)住友林業緑化株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]