説明

樹木の支持施工方法と、支持施工用具

【課題】主として樹高3m以上の高木を支持施工するための施工方法や支持施工用具のように大がかりとなることがなく、また、これらの施工方法や支持施工用具に比べてコストが安価であり、特に街路樹の支持施工等用として使用する場合に、従来の丸太による二脚支柱を用いた方法等に比べて支持強度が安定しており、且つこのような二脚支柱を用いた方法とコストが同程度若しくはそれより安価な、樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供することを課題とする。
【解決手段】地面に敷設用シートを敷設し、該敷設用シート上に、樹木の根鉢を載置するための台座を取り付け、該台座上に前記根鉢を載置し、該根鉢の上面に根鉢押え用シートを載置し、該根鉢押え用シートを根鉢押え用シート固定手段によって固定して施工することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木の支持施工方法と、支持施工用具、特に街路樹等用として施工される樹木の支持施工方法と、支持施工用具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための施工方法が実施されている。そして、このような支持施工方法においては、樹木の根鉢を地下部分で固定する必要があり、そのような支持施工方法や支持施工用具として従来から種々の方法や用具が採用されている。
【0003】
たとえば、根鉢の周囲にワイヤー等の紐状体を掛け回し、その紐状体をアンカー等の打込部材に係止し、その打込部材を地中に打ち込んで根鉢を固定する方法(下記特許文献1の図12等)や、そのアンカーに代えて根鉢を載置材に載置し、その載置材に紐状体を掛け回して根鉢を固定する方法(下記特許文献2、3)、或いは根鉢の側面に沿って杭状の部材を打ち込む方法(下記特許文献4、5)等が用いられている。
【0004】
このような方法は、たとえば博覧会場、プラザ、広場、公開空地等の都市部における場所であって、主として樹高3m以上の高木を支持施工するために採用されており、その施工方法や当該施工方法に用いられる支持用具も大がかりであり、またある程度の施工のコストも必要とされる。
【0005】
その一方で、たとえば街路樹に植設される樹木のように、樹高3m以下の比較的小さな樹木の支持施工には、旧来からの丸太による二脚支柱を用いた方法が現在でも採用されている。しかし、このような丸太による二脚支柱を用いた方法を採用する場合、樹木を支持する強度が必ずしも十分ではない。
【0006】
【特許文献1】特開平5−153877号公報
【特許文献2】特開平8−9796号公報
【特許文献3】特開平11−113430号公報
【特許文献4】特開平8−196154号公報
【特許文献5】特開平8−205696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、主として樹高3m以上の高木を支持施工するための施工方法や支持施工用具のように大がかりとなることがなく、また、これらの施工方法や支持施工用具に比べてコストが安価であり、特に街路樹の支持施工等用として使用する場合に、従来の丸太による二脚支柱を用いた方法等に比べて支持強度が安定しており、且つこのような二脚支柱を用いた方法とコストが同程度若しくはそれより安価な、樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために、地面に敷設用シート1を敷設し、該敷設用シート1上に、樹木16の根鉢17を載置するための台座2を取り付け、該台座2上に前記根鉢17を載置し、該根鉢17の上面に根鉢押え用シート7を載置し、該根鉢押え用シート7を根鉢押え用シート固定手段によって固定して施工することを特徴とする樹木の支持施工方法を提供する。このような支持施工方法は、予め地面に形成された植穴15内に根鉢17を収容して支持施工するいわゆる地下支柱に主として適用される。その場合、上記敷設用シート1は、植穴15の底壁面20に敷設される。
【0009】
また本発明は、地面に敷設される敷設用シート1と、該敷設用シート1上に取り付けられ且つ樹木16の根鉢17を載置するための台座2と、前記根鉢17の上面に載置される根鉢押え用シート7と、該根鉢押え用シート7を固定する根鉢押え用シート固定手段とを具備して構成されていることを特徴とする樹木の支持施工用具を提供する。
【0010】
敷設用シート1上に取り付けられた台座2は、さらに台座固定手段によって固定することが望ましい。このような台座固定手段としては、たとえば台座2を上側から押えて保持しつつ地面に打ち込む台座保持体4と、該台座保持体4に掛止されて該台座保持体4より深く地面に打ち込む打込体5とからなる台座固定具3のようなものが使用される。さらに、根鉢押え用シート固定手段としては、根鉢押え用シート7と、台座2とに架け渡して結束することにより根鉢押え用シート7を固定する結束バンド18のようなものが用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、上述のように、地面に敷設用シートを敷設し、該敷設用シート上に、樹木の根鉢を載置するための台座を取り付け、該台座上に前記根鉢を載置し、該根鉢の上面に根鉢押え用シートを載置し、該根鉢押え用シートを根鉢押え用シート固定手段によって固定して施工されるため、従来の丸太による二脚支柱を用いた方法等に比べて支持強度が安定しており、且つこのような二脚支柱を用いた方法とコストが同程度若しくはそれより安価な樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供しうるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の樹木の支持施工方法は、上述のように、地面に敷設用シートを敷設し、該敷設用シート上に、樹木の根鉢を載置するための台座を取り付け、該台座上に前記根鉢を載置し、該根鉢の上面に根鉢押え用シートを載置し、該根鉢押え用シートを根鉢押え用シート固定手段によって固定して施工する方法である。
【0013】
本発明の樹木の支持施工方法は、主として地下支柱と称される樹木の支持施工方法に主として適用される。従って、敷設用シートは、予め地面に形成された植穴の底壁面に敷設される。このように植穴の底壁面に敷設用シートを敷設する場合、施工現場において、敷設用シート上に台座を取り付けることも可能ではあるが、施工を容易にし、施工時間を短縮する観点からは、台座は、予め敷設用シート上に取り付けられていることが望ましい。このような敷設用シート上への台座の取り付けは、たとえば接着剤による接着等によって行われるが、他の手段によって取り付けることも可能である。
【0014】
また、本発明の樹木の支持施工用具は、地面に敷設される敷設用シートと、該敷設用シート上に取り付けられ且つ樹木の根鉢を載置するための台座と、前記根鉢の上面に載置される根鉢押え用シートと、該根鉢押え用シートを固定する根鉢押え用シート固定手段とを具備して構成されているものである。
【0015】
敷設用シートは、地面、特に植穴の底壁面に敷設して使用されるもので、敷設された敷設用シートの周辺部に埋め戻した土壌の重量によって、初期は樹木の安定性に寄与し、またシート故に根の生育が阻害されずに経年で根がしっかり張り、強度が保たれる。敷設用シートの材質は特に限定されるものではないが、自然環境破壊防止の観点から、土中に埋設されて分解しうるような分解可能な素材を用いることが望ましい。分解可能な素材としては、たとえばヤシ繊維、麻、綿、ジュート等の天然繊維や藁、紙等で構成することが可能である。これらのうちでも、取り扱いの容易さやコスト面から、ヤシ繊維や麻を用いることが望ましい。
【0016】
また台座は、初期の根鉢の静置安定性を良好にするもので、後述のように、根鉢が台座上で回転等により不用意に位置ずれするのを防止するものである。台座の材質も特に限定されるものではないが、木製のものを用いることが望ましい。木製の台座を用いることで、敷設用シートと同様に、土中に埋設されて一定年数経過したときに分解させることができ、ひいては自然環境破壊防止に寄与するからである。また、木製のものとすることで、台座のコストを安価なものとすることができるからである。
【0017】
台座の形状も特に限定されるものではないが、根鉢を載置するのに適した形状に形成されることが望ましい。たとえば木製の角柱状の枠部材を4辺に配置して平面略正方形の枠状に形成されたようなものが用いられる。このような平面略正方形の枠状のものを用いることで、一般には丸みを帯びた形態の根鉢が、枠状の台座に係止されつつ、その台座に載置されることとなり、施工時において根鉢が台座上で不用意に位置ずれするのが防止されることとなる。
【0018】
台座は、さらに台座固定手段によって固定することが可能である。このような台座固定手段も特に限定されるものではないが、たとえば台座が上記のような4辺に木製の枠部材を配置して平面略正方形の枠状に形成されたようなものの場合には、その台座の枠部材に跨がるようにして地中に打ち込まれるような部材を用いることができる。より具体的には、たとえば台座を上側から押えて保持しつつ地面に打ち込む台座保持体と、該台座保持体に掛止されて該台座保持体より深く地面に打ち込む打込体との2つの部材からなる台座固定具のようなものを用いることができる。
【0019】
上述のように、台座2は、たとえば接着剤による接着等によって敷設用シート1上に取り付けられるが、そのような取付手段に加えて上記のような台座固定手段によって台座2を固定することで、台座2が敷設用シート1から不用意に離脱して浮き上がるようなことを好適に防止することができる。尚、上記のような接着剤による接着等の取付手段を採用せずに、上記台座固定具3のような台座固定手段のみによって台座2を敷設用シート1に取り付けることも可能である。この場合は、台座固定手段自体が、敷設用シート1上への台座2の取付手段となる。
【0020】
根鉢押え用シートは、根鉢を上面側から押えて固定するためのものであるが、シートであるが故に、根鉢全体を押えることとなって、根鉢への食い込みが少ないものである。特に小さい樹木の根鉢は弱いので、根鉢押え用シートのようなシート状部材で
根鉢を押えるのが効果的である。根鉢押え用シートの材質も特に限定されるものではなく、合成繊維や天然繊維を用いることができる。自然環境破壊防止の観点からは、本来は上記敷設用シートと同様に、麻、綿、ヤシ繊維、ジュート等の天然繊維を用いることが望ましいが、根鉢押え用シートは、根鉢押え用シート固定手段によって固定されるので、そのような根鉢押え用シート固定手段による緊締力等の外力が生じたときに、根鉢押え用シートが不用意に引き裂けるのを防止する観点からは、強度の強い合成繊維を用いることが望ましい。合成繊維としては、汎用性やコストの面から、たとえばポリプロピレンのようなものが用いられる。
【0021】
さらに根鉢押え用シート固定手段としては、たとえば、根鉢押え用シートと、台座とに架け渡して結束することにより根鉢押え用シートを固定する結束バンドのようなものが用いられる。このような結束バンドを根鉢押え用シートと台座とに架け渡す場合、たとえば根鉢押え用シートには結束バンドが挿入可能な孔を穿設し、台座には結束バンドを掛止することができる掛止具を取り付け、結束バンドの一端部を掛止具に掛止させるとともに結束バンドの他端部側を根鉢押え用シートの孔に挿入し、その孔に挿入された結束バンドの他端部側を台座に取り付けられた掛止具側に戻し、その掛止具に結束バンドの他端部に掛止させることによって、結束バンドが根鉢押え用シートと台座とに架け渡されることとなる。
【0022】
このような結束バンドとしては、たとえば頭部と胴部とからなり、頭部に孔を有し、胴部の先端側の先端部を頭部に孔に挿入することで、逆方向への移動が禁止されるような、いわゆる逆止的な機能を有する結束バンドを用いることができる。このような結束バンドは、一般にはインシュロック(登録商標:ヘマランタイトン社製)と称される結束バンドである。結束バンドの材質も特に限定されるものではないが、たとえばポリアミド(脂肪族ポリアミド)やポリプロピレンのような合成樹脂製のものを用いることができる。このような逆止的な機能を有する結束バンドを用いることで、掛止具からの結束バンドの不用意な離脱を好適に防止することができる。また、このような結束バンドは、結束するための作業が簡単で、その作業を短時間に行うことができ、緩みにくく、外れにくいという利点を有する。ただし、このような逆止的な機能を有する結束バンドに代えて、一般の紐状体を用いることも可能である。
【0023】
結束バンドを掛止する掛止具としては、たとえば上記のような結束バンドが掛止されるように側面略S字状に形成された掛止体と、該掛止体を掛止するとともに、台座に打ち込んで固定することができる固定体との2つの部材からなるようなものを用いることか可能である。
【0024】
以下、本発明のより具体的な実施形態について、図面に従って説明する。
【0025】
本実施形態の支持施工用具は、図1乃至図6に示すように、地面に敷設される敷設用シート1と、該敷設用シート1上に取り付けられ且つ樹木の根鉢を載置するための台座2と、該台座2を固定する台座固定具3と、根鉢の上面を被覆する根鉢押え用シート7と、該根鉢押え用シート7と台座2とに架け渡されて根鉢押え用シート7を固定する結束バンド18と、該結束バンド18を掛止する掛止具11とを具備して構成されている。
【0026】
敷設用シート1は、図1に示すように、平面略正方形状に形成されたもので、全体がヤシ繊維で構成されている。台座2は、図2に示すように、4本の木製の角柱2a、2b、2c、2dが接続されて、全体が平面略正方形の枠状に形成されている。4本の角柱2a、2b、2c、2dの接続は、たとえば接着剤による接着等によって行われる。
【0027】
台座固定具3は、図3に示すように、台座2を上側から押えて保持する台座保持体4と、該台座保持体4を固定すべく地面に打ち込む打込体5とからなるものである。台座保持体4は、図3に示すように、台座2を上側から押える部分となる上部押え部4aと、該上部押え部4aの両端側から立ち下がり形成された1対の立ち下り部4bとで構成され、全体として側面略コ字状に形成されている。そして、立ち下り部4bの先端部4cは、先鋭な形状に形成されている。
【0028】
打込体5は、図3に示すように、略リング状の頭部5aと、該頭部5aの下部に形成された細長い胴部5bとからなり、該胴部5bの先端部5cは、先鋭な形状に形成されている。そして、略リング状の頭部5aの孔部6は、前記台座保持体4の上部押え部4aが挿入可能となるような内径に形成されている。この打込体5と台座保持体4は、ともに鉄等の金属で構成されている。
【0029】
根鉢押え用シート7は、図4に示すように、平面略正方形状に形成されたもので、全体がポリプロピレンからなる合成繊維で構成されている。根鉢押え用シート7の略中央には、樹木を挿入するための円形の樹木挿入孔8が穿設されており、該樹木挿入孔8に連通して1条の切込み9が、前記根鉢押え用シート7の1角のコーナー部に向かうように形成されている。また、根鉢押え用シート7の4角コーナー部のうちの3角のコーナー部には、後述する結束バンドを挿入するための挿入孔10がそれぞれ1個ずつ穿設され、切込み9が向かうように形成された1角のコーナー部には、前記切込み9に跨がるように、2個の挿入孔10が穿設されている。この2個の挿入孔10、10は、切込み9に対して非対称な位置に穿設されている。
【0030】
結束バンド18は、図5に示すように、細長い胴部18bの上部に該胴部18bよりも幅広な頭部18aが形成され、前記胴部18bの下部の先端部18cが先鋭な形状に形成されたものである。図5には図示されていないが、結束バンド18の頭部18aには、下部の先端部18cを頭部18a側に戻すように胴部18bを曲げた状態において、該先端部18cが挿入されるような孔が穿設されている。この孔は、挿入方向に先端部18cが挿入されることは許容するが、その挿入方向と逆方向への先端部18cの抜け出しを好適に禁止しうるような、いわゆる逆止的な機能を有するものである。結束バンド18は、全体がポリアミドで構成されている。
【0031】
掛止具11は、図6に示すように、結束バンド18が掛止されるように側面略S字状に形成された掛止体12と、該掛止体12を掛止するとともに、台座2に打ち込んで固定する固定体13とからなるものである。固定体13は、図6に示すように、略リング状の頭部13aと、該頭部13aの下部に形成された胴部13bとからなり、該胴部13bの先端部13cは、先鋭な形状に形成されている。そして、略リング状の頭部13aの孔部14は、前記側面略S字状の掛止体12が挿入可能となるような内径に形成されている。この掛止体12と固定体13は、ともに鉄等の金属で構成されている。
【0032】
敷設用シート1と台座2とは、図7に示すように前記台座2を前記敷設用シート1上に接着剤等で接着することで予め一体化されている。また、掛止具11は、図8に示すように、台座2の4角コーナー部に予め固定して取り付けられている。より具体的には、図9に示すように、掛止具11の固定体13が台座2に打ち込まれ、該固定体13の頭部13aの孔部14内に掛止体12が挿入されて該掛止体12が固定体13に掛止された状態とされることによって、掛止具11が台座2に取り付けられている。
【0033】
この場合において、固定体13は、図9に示すように、頭部13aのみが裸出し、胴部13bのほとんどが台座2内に埋設されるような状態で台座2に打ち込まれることによって取り付けられている。尚、図9においては、便宜上、側面略S字状の掛止体12を起立させた状態に図示しているが、この掛止体12は固定体13に対して揺動自在に掛止されているので、実際には、掛止体12は固定体13に対して寝かせた状態に取り付けられることとなる。
【0034】
次に、上記のような構成からなる樹木の支持施工用具を用いて、樹木の支持施工を行う方法について説明する。
【0035】
先ず、図10乃至図12に示すように、予め形成された植穴15内に、台座2が一体化された敷設用シート1を収納し、その植穴15の底壁面20に前記敷設用シート1を載置する。この場合において、敷設用シート1の外径が植穴15の内径よりも大きく形成されている場合には、図11及び図12に示すように、敷設用シート1の端部1aが、植穴15の側壁面21側に折り曲げられることとなる。掛止具11が台座2に予め取り付けられていることは上述のとおりである。
【0036】
次に、図13乃至図15に示すように、4個の台座固定具3を、台座2の4辺を構成する角柱2a、2b、2c、2dにそれぞれ取り付ける。より具体的には、図16に示すように、台座保持体4の上部押え部4aを台座2の上面に接触させ、台座保持体4の1対の立ち下り部4b、4bのうち、一方の立ち下り部4bを台座2の側面に沿わせ、他方の立ち下り部4bを台座2の側面からわずかに離間するようにして両立ち下り部4b、4bの先端部4c、4cを図16及び図17に示すように植穴15の底壁面20に打ち込む。これらの台座保持体の先端部4c、4cは、同図のように、敷設用シート1を貫通して底壁面20に打ち込まれることとなる。
【0037】
そして、台座2の側面から離間するようにして底壁面20に打ち込まれる他方の立ち下り部4b側から、台座保持体4を予め打込体5の頭部5aの孔部6に挿入させ、さらに図16及び図17に示すように、台座保持体4の上部押え部4aを打込体5の頭部5aの孔部6に挿入させた状態で、打込体5の胴部5bを台座2の側面に沿わせ、該打込体5の胴部5b及び先端部5cを植穴15の底壁面20に打ち込む。これらの打込体5の先端部5c等も、上記台座保持体の先端部4cと同様に、敷設用シート1を貫通して底壁面20に打ち込まれることとなる。
【0038】
この場合において、台座2の上面は台座保持体4の上部押え部4aに接触した状態とされて、台座保持体4の先端部4c、4cが植穴15の底壁面20に打ち込まれ、さらにその台座保持体4の上部押え部4aが、打込体5の頭部5aの孔部6に挿入させた状態で、打込体5の先端部5cが植穴15の底壁面20に打ち込まれているので、これらの3本の先端部4c、4c、5cの打ち込みによって、台座保持体4の上部押え部4aによる押圧力が台座2に対して有効に作用し、その結果、台座2は、不用意に位置ずれを生じさせることなく、敷設用シート1上で確実に固定されることとなる。
【0039】
次に、図18乃至図20に示すように、台座2上に、樹木16の根鉢17を載置する。この場合、台座2は、上述のように台座保持体4及び打込体5からなる台座固定具3によって確実且つ強固に固定されているので、根鉢17を載置する作業を行う際に、台座2が敷設用シート1から不用意に剥離されて、浮き上がるようなことがなく、また位置ずれすることもない。
【0040】
次に、図21及び図22に示すように、根鉢17の上面に根鉢押え用シート7を載置する。より具体的には、根鉢押え用シート7に形成された切込み9の部分を起点とし、その切込み9に連通する樹木挿入孔8に樹木16が挿入されるようにして、根鉢押え用シート7を根鉢17の上面に載置する。この場合において、切込み9は、樹木挿入孔8から、4角コーナー部のうちの1箇所のコーナー部に向かうように形成されているため、根鉢押え用シート7の樹木挿入孔8に樹木16を挿入させる際に、切込み9が好適に開裂し、それによって樹木挿入孔8に樹木16を挿入させる作業を容易に行うことができる。
【0041】
次に、図23及び図24に示すように、前記根鉢押え用シート7と掛止具11とに4本の結束バンド18を架け渡す。より具体的には、同図に示すように、結束バンド18の一端部を掛止具11の掛止体12に掛止させ、その状態で結束バンド18の他端部側を根鉢押え用シート7の挿入孔10に順次挿入し、その結束バンド18の他端部側を掛止具11側に戻して、該結束バンド18の他端部も掛止具11の掛止体12に掛止させる。
【0042】
この場合、4本の結束バンド18のうち、3本の結束バンド18は、図25に示すように3角コーナー部の1個の挿入孔10に挿入して掛止具11側に戻し、1本の結束バンド18は、図25に示すように切込み9が形成された1角のコーナー部の2個の挿入孔10に挿入して掛止具11側に戻し、それぞれ掛止具11に掛止させる。このようにして、4本の結束バンド18は、根鉢押え用シート7の4角コーナー部に穿設された挿入孔10にそれぞれ挿入され、台座2の4角コーナー部に取り付けられた掛止具11に該結束バンド18の両端部が掛止されることとなる。
【0043】
この場合において、結束バンド18の両端部は掛止具11の掛止体12の一端側に掛止され、その掛止体12の他端側に掛止された固定体13が台座2に打ち込まれているため、樹木16に作用する傾倒力等によって結束バンド18に張力が生じても、結束バンド18は不用意に離脱することがなく、掛止体12と根鉢押え用シート7とに架け渡された結束バンド18に好適に張力が生じて、根鉢17は確実に固定されることとなる。また結束バンド18は、上述のような逆止的な機能を有するものであるので、掛止体12と根鉢押え用シート7とに架け渡された結束バンド18が不用意に緩むこともない。
【0044】
その後、図26に示すように、土19を植穴15内に収容することによって、その土19に根鉢17が埋設され、樹木の支持施工が完了する。
【0045】
以上のように、本実施形態の樹木の支持施工用具は、ヤシ繊維で構成された敷設用シート1と、ポリプロピレン繊維で構成された根鉢押え用シート7と、木製の台座2と、ポリアミドで構成された結束バンド18とを、根鉢を保持するための主要な構成部材とし、その他の補助的な構成部材として、台座2を固定する鉄製の台座固定具3、結束バンド18を掛止する鉄製の掛止具11を用い、これらのみで支持施工用具を構成したので、全体として支持施工用具が簡易な構成のものとなり、街路樹のように樹高3m以下の比較的小型の樹木の支持施工に適した支持施工用具を提供しうるに至った。
【0046】
また、敷設用シート1上の台座2と根鉢押え用シート7とに結束バンド18を架け渡し、台座固定具3によって台座2を固定しているので、街路樹のような樹木の支持施工用として用いられていた従来の丸太による二脚支柱を用いた方法等に比べて根鉢の支持強度が良好となる。
【0047】
さらに敷設用シート1が土で覆われているので、その土の重量が敷設用シート1に作用するとともに、敷設用シート1に取り付けられた台座2、及び結束バンド18の架け渡しによって台座2に一体化された根鉢押え用シート7の全体にも作用し、従って、根鉢17を地下部分において好適に支持することができるので、上記二脚支柱を用いた方法のように地上部分で樹木を支持する方法に比べて、根鉢の支持強度が一層良好となる。
【0048】
また、台座2が、4本の木製の角柱2a、2b、2c、2dが接続されて、全体が平面略正方形の枠状に形成されているため、このような平面略正方形の枠状の台座2に根鉢17を載置したときに、根鉢17の底部に引っ掛かりが生じ、それによって根鉢17の不用意な移動がより好適に防止されることとなる。
【0049】
さらに、敷設用シート1、及び台座2という、根鉢を保持するための主要な構成部材が、天然繊維や木製のもので構成されているので、支持施工用具が土中に埋設されて一定年数経過すると、これらの構成部材は分解されることとなる。また、合成繊維からなる根鉢押え用シート7や合成樹脂製の結束バンド18は土中で分解可能な素材ではないが、一定年数経過によりある程度劣化しうるものである。さらに、分解しにくい金属製の台座固定具3や掛止具11は、部品的な構成部材で小型のものであるので、地中に残存しても、自然環境破壊の影響は少ないものである。いずれにしても、本実施形態では、大型の金属製の構成部材を用いていないので、自然環境破壊防止に寄与することとなる。
【0050】
さらに、根鉢押え用シート7を固定する固定手段として、従来、高木の樹木の支持施工に一般に用いられていたウインチのような機械的な用具を用いる必要がなく、結束バンド18のようなきわめて簡易な構成部材を用いることができるので、施工を一層容易にし、コストを一層低減させることができる。
【0051】
さらに、いずれの構成部材も安価なものであるので、支持施工用具全体のコストも安価となる。
【0052】
尚、上記実施形態では、上述のように、予め地面に形成された植穴15内に根鉢17を収容して根鉢17を地下部分で支持する、いわゆる地下支柱に適用する場合について説明したが、本発明はこのような地下支柱に適用する場合に限定されるものではない。
【0053】
また、敷設用シート1、台座2、台座固定具3、根鉢押え用シート7、結束バンド18等の形状や材質も上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内で任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】一実施形態の支持施工用具の構成部材である敷設用シートの平面図。
【図2】台座の平面図。
【図3】台座固定具の正面図。
【図4】根鉢押え用シートの平面図。
【図5】結束バンドの正面図。
【図6】掛止具を分解して示す正面図。
【図7】台座を敷設用シート上に取り付けた状態の平面図。
【図8】掛止具を台座に取り付けた状態の平面図。
【図9】図8のA−A線拡大断面図。
【図10】掛止具を取り付けた台座を一体化させた敷設用シートを、植穴の底壁面に敷設した状態の概略平面図。
【図11】図10のB−B線断面図。
【図12】図10のC−C線断面図。
【図13】台座固定具で台座を固定した状態を示す概略平面図。
【図14】図13のD−D線断面図。
【図15】図13のE−E線断面図。
【図16】図14の要部拡大断面図。
【図17】図15の要部拡大断面図。
【図18】台座に根鉢を載置した状態を示す概略平面図。
【図19】図18のF−F線断面図。
【図20】図18のG−G線断面図。
【図21】根鉢押え用シートを根鉢の上面に載置した状態の概略平面図。
【図22】図21のH−H線断面図。
【図23】紐状体を掛止具と根鉢押え用シートとに架け渡した状態の概略平面図。
【図24】図23のI−I線断面図。
【図25】結束バンドを挿入孔に挿入させる状態を示す要部拡大平面図。
【図26】土を植穴に収容して根鉢を土で埋設した状態の概略断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 敷設用シート
2 台座
3 台座固定具
4 台座保持体
5 打込体
7 根鉢押え用シート
11 掛止具
18 結束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に敷設用シート(1)を敷設し、該敷設用シート(1)上に、樹木(16)の根鉢(17)を載置するための台座(2)を取り付け、該台座(2)上に前記根鉢(17)を載置し、該根鉢(17)の上面に根鉢押え用シート(7)を載置し、該根鉢押え用シート(7)を根鉢押え用シート固定手段によって固定して施工することを特徴とする樹木の支持施工方法。
【請求項2】
予め地面に形成された植穴(15)の底壁面(20)に敷設用シート(1)を敷設し、該敷設用シート(1)上に、樹木(16)の根鉢(17)を載置するための台座(2)を取り付け、該台座(2)上に前記根鉢(17)を載置し、該根鉢(17)の上面に根鉢押え用シート(7)を載置し、該根鉢押え用シート(7)を根鉢押え用シート固定手段によって固定し、その後、植穴(15)内に土を収容して施工することを特徴とする樹木の支持施工方法。
【請求項3】
敷設用シート(1)上に取り付けられた台座(2)を、さらに台座固定手段によって固定する請求項1又は2記載の樹木の支持施工方法。
【請求項4】
台座固定手段が、台座(2)を上側から押えて保持しつつ地面に打ち込む台座保持体(4)と、該台座保持体(4)に掛止されて該台座保持体(4)より深く地面に打ち込む打込体(5)とからなる台座固定具(3)である請求項1乃至3記載の樹木の支持施工方法。
【請求項5】
根鉢押え用シート固定手段が、根鉢押え用シート(7)と、台座(2)とに架け渡して結束することにより根鉢押え用シート(7)を固定する結束バンド(18)である請求項1乃至4記載の樹木の支持施工方法。
【請求項6】
地面に敷設される敷設用シート(1)と、該敷設用シート(1)上に取り付けられ且つ樹木(16)の根鉢(17)を載置するための台座(2)と、前記根鉢(17)の上面に載置される根鉢押え用シート(7)と、該根鉢押え用シート(7)を固定する根鉢押え用シート固定手段とを具備して構成されていることを特徴とする樹木の支持施工用具。
【請求項7】
敷設用シート(1)上に取り付けられた台座(2)が、さらに台座固定手段によって固定される請求項6記載の樹木の支持施工用具。
【請求項8】
台座固定手段が、台座(2)を上側から押えて保持しつつ地面に打ち込む台座保持体(4)と、該台座保持体(4)に掛止されて該台座保持体(4)より深く地面に打ち込む打込体(5)とからなる台座固定具(3)である請求項6又は7記載の樹木の支持施工用具。
【請求項9】
根鉢押え用シート固定手段が、根鉢押え用シート(7)と、台座(2)とに架け渡されて結束されることにより根鉢押え用シート(7)を固定する結束バンド(18)である請求項6乃至8のいずれかに記載の樹木の支持施工用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−124749(P2010−124749A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302574(P2008−302574)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】