説明

樹脂シートの切出し設備

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟質あるいは半硬質の長い樹脂シートを巻いて成る樹脂シートロールから樹脂シートを引き出して所定長さに切断するのに好適な設備に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の設備としては本出願人が先に提案した特開平2ー28460号公報で開示されるように、樹脂シート送り出し装置によって送り出される樹脂シートの先端を把持手段によって把持した後、この把持手段を把持手段移送装置をもって水平方向へ移動させて樹脂シートを引き出し、引き出された樹脂シートを所定個所で樹脂シート切断装置により切断し、切断した樹脂シートを支持部材により支持し、さらに支持部材上の樹脂シートの両端側部を押え機構により押し下げるように構成されたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このように構成された従来の樹脂シート切り出し装置では、引き出される樹脂シートが幅方向へ偏るために、樹脂シートの縁に対して直角になるように樹脂シートを切断することができず、しかも、樹脂シートが不良のまま成形ステーションに送り込まれて成形される弊害が生じるなどの問題があった。本発明は、上記の問題を解消するためになされたもので、引き出される樹脂シートをこの縁に対してほぼ直角になるように切断するとともに、不良の樹脂シートが成形ステーションに送り込まれることのない設備を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明の樹脂シートの切出し設備は、樹脂シートロールから樹脂シートを引き出し所定長さに切断する樹脂シートの切出し設備あって、前記樹脂シートロールを横置状にして支持するとともに垂直面内で回転させる樹脂シートロール回転装置と、この樹脂シートロール回転装置にセットされた前記樹脂シートロールから送り出された所定長さの樹脂シートを一時溜めるとともに樹脂シートに適宜の大きさのテンションを付与する1ショットストッカ機構と、この1ショットストッカ機構からの樹脂シートの先端を把持可能な把持手段と、この把持手段を水平方向へ移動させて前記1ショットストッカ機構から樹脂シートを引き出す把持手段移送装置と、前記1ショットストッカ機構から引き出される樹脂シートの長さを計測する計測手段と、前記1ショットストッカ機構から引き出される樹脂シートを所定個所で切断する樹脂シート切断装置と、前記1ショットストッカ機構から引き出される樹脂シートに係る前記樹脂シート切断装置付近における樹脂シートの幅方向の偏りを修正する偏り修正装置と、引き出された樹脂シートの良否表示用目印を検知する検知手段と、を具備したことを特徴とする。
【0005】
【作用】このように構成された設備では、樹脂シートロール回転装置にセットされた樹脂シートロールから予め送り出された樹脂シートは、1ショットストッカ機構内を通された後、先端が把持手段により把持され、続いて、計測手段により引き出される長さを計測されながら、把持手段移送装置による把持手段の移動により引き出される。引き出された樹脂シートは、偏り修正手段により樹脂シート切断装置付近における樹脂シートの幅方向の偏りを修正され、その後、所定長さ引き出された樹脂シートは、樹脂シート切断装置により所定個所で切断されることとなる。そして、検知手段によって樹脂シートの不良が発見された場合には、所定長さのものにその不良個所のものが加わった長さのものが切断除去される。
【0006】
【実施例】本発明の一実施例について正面図である図1および平面図である図2に基づき詳細に説明する。図1に示すように、図1における左側位置に樹脂シートロール回転装置1がレール2をもって前後方向へ移動可能に配設してあり、樹脂シートロール回転装置1においては、レール2上に走行可能に配置した台車3上に、樹脂シートロール4を載せて回転させるキャタピラ5が装着してあり、キャタピラ5は、減速機付きモータ6が連結されていてモータ6の駆動により垂直面内で回転されるようになっている。
【0007】また、前記樹脂シートロール回転装置1の左側には1ショットストッカ機構7が配設してあり、1ショットストッカ機構7においては、上方位置に樹脂シートSの幅方向へ指向する2本のローラ9、10が上下方向へ所要の間隔をおいて軸着してあり、さらに、樹脂シートSの幅方向へ指向するフリーローラ11が図示しない支持部材を介して上下動自在に配設してあって、樹脂シートロール4から送り出された樹脂シートSは、ローラ9、11、10に順次掛け渡され、かつ、フリーローラ11の自重により適宜の大きさのテンションが付与されるようになっている(図1参照)。
【0008】また、図1における中央位置には把持手段12が配設してあり、把持手段12においては、可動部材13が後述の把持手段移送装置18のローラチェン19に保持されかつ把持手段移送装置18のレール48に摺動可能に係合され、可動部材13の下端には板状の固定爪14が固着してあり、さらに可動部材13には上下方向へ指向する2本のガイドロッド15、15が左右方向へ所要の間隔をおいて設けてあり、ガイドロッド15、15には可動爪16が昇降自在に装架してあり、可動爪16には前記可動部材13に装着した下向きシリンダ17のピストンロッドの下端が固着してあって、可動爪16はシリンダ17の伸長作動により下降して固定爪14とで樹脂シートSを把持することができるようになっている。
【0009】さらに、図1における中央位置には把持手段移送装置18が設置してあり、把持手段移送装置18においては、前記把持手段12の可動部材13を保持するローラチェン19が、左右方向へ所要の間隔をおいて配設した2個の鎖車20、20間に掛け渡して設けてあり、鎖車20、20は門型フレーム21に軸支した回転軸22、22にそれぞれ嵌着されており、これら2本の回転軸22、22の一方には計測手段としてのロータリーエンコーダを付設した減速機付モータ(図示しない)が連結してあって、把持手段12はモータの正逆回転によりローラチェン19をもって左右方向へ往復移動されるようになっている。また、門型フレーム21の天井部の下面には、左右方向へ延びるレール48が装着してある。
【0010】また、前記1ショットストッカ機構7と前記把持手段12との間には偏り修正装置23と、樹脂シート切断装置24とが右方向へ向けて順次配設してあり、偏り修正装置23においては、板状の受け部材25が摺動機構50およびボールねじ機構26をもって樹脂シートSの幅方向へ移動調節可能に設けてあり、ボールねじ機構26のねじ軸49には図示しないブレーキ付きモータの出力軸か連結してあり、さらに、受け部材25の上方には押え部材27が摺動機構28を介して樹脂シートの幅方向へ往復動自在に設けてあり、摺動機構28は固定配設した下向きのシリンダ29のピストンロッドの下端が固着してあって、押え部材27はシリンダ29の伸長作動により下降して受け部材25上の樹脂シートSを把持し、かつ、受け部材25はモータの正逆回転により樹脂シートSの幅方向へ往復動されて樹脂シートSの幅方向の偏りを修正することができるようになっている。
【0011】また、前記樹脂シート切断装置24においては、前記偏り修正装置23の受け部材25の右側に隣接する板状の固定受け部材30と、この固定受け部材30の右側に隣接しかつ上向きのシリンダ31によって昇降する板状の可動受け部材32とが相互に所要の間隔をおいて配設してあり、これら固定・可動受け部材30、32の上方には、2本の下向きシリンダ33、34の伸縮作動により昇降する2個の押え部材35、36が、固定・可動受け部材30、32にそれぞれ対向して配設してあって、これら押え部材35、36は、シリンダ33、34の伸長作動により下降して固定・可動受け部材30、32上の樹脂シートを押圧することができるようになっている。そして、2個の押え部材35、36間には回転式のカッタ37が配設してあり、カッタ37は移動手段38を介して樹脂シートSの幅方向へ往復移動するようになっている。
【0012】また、図2に示すように、前記1ショットストッカ機構7と前記樹脂シート切断装置24との間には検知手段39が配設してあり、検知手段39においては、孔の存在を示すために樹脂シートロール4に予め張付けた銀箔の有無を検知するセンサ40がボールねじ機構41をもって樹脂シートSの幅方向へ移動調節可能に設けてあり、ねじ軸42には一対の傘歯車51を介して回転軸52の一端が連結してあり、回転軸52の他端にはハンドル43が嵌着してあって、ハンドル43の回転により、センサ40は樹脂シートSの幅方向へ移動調節することができるようになっている。
【0013】また、前記樹脂シート切断装置24の右側には、樹脂シートSの幅方向へ延びるベルトコンベヤ44が、さらに、このベルトコンベヤ44の右側位置には前記把持手段12の移動方向へ指向するベルトコンベヤ45がそれぞれ配設してある。なお、図中46は廃棄箱、47は支持台である。
【0014】次にこのように構成された設備の作動について説明する。まず、孔が明いている個所の側部に目印として銀箔を設けた樹脂シートロール4を樹脂シートロール回転装置1のキャタピラ5上にセットし、検知手段39のハンドル43を正逆回転させてセンサ40が樹脂シートSの銀箔を検知できる位置に移動調整し、図1に示すように、偏り修正装置23のシリンダ29を収縮作動して押え部材27を上昇させ、樹脂シート切断装置24のシリンダ33、34を収縮作動して押え部材35、36を上昇させかつシリンダ31を収縮作動して可動受け部材32を下降させて押え部材36と可動受け部材32とを引き離し、さらに、把持手段12のシリンダ17を収縮作動して可動爪16を上昇させておく(図1参照)。
【0015】この状態の下に、樹脂シートロール回転装置1のモータ6の駆動によりキャタピラ5を所要角度回転させて樹脂シートロール4を回転させ、これにより、樹脂シートロール4の樹脂シートSを所要長さ送り出し、続いて、送り出された樹脂シートSを手作業により1ショットストッカ機構7内を通すとともに樹脂シートSの先端を樹脂シート切断装置24の可動受け部材32と押え部材36との間から右方向へ出す。
【0016】その後、設備を稼動すると、樹脂シート切断装置24のシリンダ33の伸長作動により押え部材35が下降して、押え部材35と固定受け部材30とで樹脂シートSを把持し、かつ、把持手段12が把持手段移送装置18をもって左方へ移動されて、把持手段12の可動爪16と固定爪14との間に樹脂シートSが進入させる。次いで、把持手段12のシリンダ17が伸長作動して送り出された樹脂シートSの先端を固定爪14と可動爪16とで把持し、続いて、把持手段移送装置18をもって把持手段12が右方向へ移動されて、ロータリーエンコーダにより引き出される長さを計測されながら、1ショットストッカ機構7内の樹脂シートSが1ショット分引き出される。
【0017】そして、引き出された樹脂シートSは、幅方向へ偏って図示しないセンサによりその偏りが検知された場合には、偏り修正装置23のシリンダ29を伸長作動して押え部材27等を下降させ、受け部材25上の樹脂シートSを把持し、続いて、その検知結果に基づいて偏り修正装置23のモータが適宜正逆回転されてその偏りが修正される。こうして樹脂シートSが所定長さ引き出されると、シリンダ31が伸長作動して可動受け部材32が上昇し、シリンダ34が伸長作動して押え部材36が下降して樹脂シートSを把持し、その後、樹脂シート切断装置24のカッタ37が移動手段38をもって樹脂シートSの幅方向へ往復移動されて樹脂シートSが所定個所で切断されることとなる。
【0018】なお、樹脂シートSが1ショットストッカ機構7から引き出される間は、検知手段39が銀箔の有無をチェックすることにより樹脂シートSの良否を検知することになるが、検知手段39によって樹脂シートSの不良が検知された場合には、樹脂シートロール回転装置1と把持手段移送装置18とが所要時間駆動された後一時停止して樹脂シートSの引き出すが中断され、これにより、樹脂シートSは孔がカッタ37の右側位置に来るまで引き出される。次いで、シリンダ33の伸長作動により押え部材35が下降して固定受け部材30とで樹脂シートSを把持し、続いて、カッタ37が移動手段38をもって樹脂シートSの幅方向へ往復移動されて樹脂シートSが所定個所で切断される。次いで、把持手段12のシリンダ17が収縮作動されて、樹脂シートSの把持手段12による把持状態が解かれ、続いて、ベルトコンベヤ44、45が駆動されて、切断された不良樹脂シートが廃棄箱46へ送られる。
【0019】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、偏り修正装置により樹脂シートの幅方向の偏りを小さくして樹脂シートをこの縁に対してほぼ直角になるように切断することができるようにし、さらに、検知手段により不良樹脂シートを発見して不良樹脂シートの成形ステーションへの送り込みを未然に防止することができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【符号の説明】
1 樹脂シートロール回転装置
7 1ショットストッカ機構
12 把持手段
18 把持手段移送装置
23 偏り修正装置
24 樹脂シート切断装置
39 検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 樹脂シートロールから樹脂シートを引き出して所定長さに切断する樹脂シートの切出し設備であって、前記樹脂シートロールを横置状にして支持するとともに垂直面内で回転させる樹脂シートロール回転装置と、この樹脂シートロール回転装置にセットされた前記樹脂シートロールから送り出された所定長さの樹脂シートを一時溜めるとともに樹脂シートに適宜の大きさのテンションを付与する1ショットストッカ機構と、この1ショットストッカ機構からの樹脂シートの先端を把持可能な把持手段と、この把持手段を水平方向へ移動させて前記1ショットストッカ機構から樹脂シートを引き出す把持手段移送装置と、前記1ショットストッカ機構から引き出される樹脂シートの長さを計測する計測手段と、前記1ショットストッカ機構から引き出される樹脂シートを所定個所で切断する樹脂シート切断装置と、前記1ショットストッカ機構から引き出される樹脂シートに係る前記樹脂シート切断装置付近における樹脂シートの幅方向の偏りを修正する偏り修正装置と、引き出された樹脂シートの良否表示用目印を検知する検知手段と、を具備したことを特徴とする樹脂シートの切出し設備。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】第2717922号
【登録日】平成9年(1997)11月14日
【発行日】平成10年(1998)2月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−215046
【出願日】平成5年(1993)8月6日
【公開番号】特開平7−52082
【公開日】平成7年(1995)2月28日
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【参考文献】
【文献】特開 平2−28460(JP,A)