説明

樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法

【課題】中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止する。
【解決手段】中心導体(1)の外周を被覆する中空コア体(2)の開口部を接着剤(13)により塞いでから、金型に入れてモールド樹脂を注入し、樹脂モールド(15)を形成する。
【効果】中空コア体(2)の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止できるので、中空コア体(2)の中空部へのモールド樹脂の侵入に起因する特性の劣化を防止することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法に関し、さらに詳しくは、中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止した樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中心導体と、中心導体の外周を被覆する内環状部と内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部とリブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体と、中空コア体の外側に設けた外部導体層と、外部導体層の外側に設けたジャケット層とを備えた同軸ケーブルが知られている(例えば特許文献1参照。)。
また、中心導体および中心導体の外周を被覆する内環状部と内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部とリブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体を有する2本の信号線と、2本の信号線と並ぶように設置されたドレイン導体と、全体を包む外部導体と、全体を絶縁被覆するジャケット層とを備えた差動信号伝送ケーブルが知られている(例えば特許文献2参照。)。
さらに、中心導体の外周を被覆する内環状部と内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部とリブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体が知られている(例えば特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−249129号公報
【特許文献2】特開2008−103179号公報
【特許文献3】特開2007−335393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の同軸ケーブルや差動信号伝送ケーブルでは、中空コア体を誘電体とするため、優れた高周波特性が得られる。
しかし、このような中空コア体を用いた同軸ケーブルや差動信号伝送ケーブルに樹脂モールドタイプコネクタを設置するとき、中空コア体の中空部にモールド樹脂が侵入して、特性を劣化させることがある問題点があった。
そこで、本発明の目的は、中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止しうる樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、中心導体と、前記中心導体の外周を被覆する内環状部と前記内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部と前記リブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体とを少なくとも備えたケーブルの前記中心導体を樹脂モールドタイプコネクタの端子パッドに接続し且つ樹脂モールドしてなる樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法であって、樹脂モールドする前に、前記中空コア体の開口部を接着剤により塞いでおくことを特徴とする樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法を提供する。
上記第1の観点による樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法では、中空コア体の開口部を接着剤により塞いでから、樹脂を注入して樹脂モールドするため、中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止することが出来る。
【0006】
第2の観点では、本発明は、中心導体と、前記中心導体の外周を被覆する内環状部と前記内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部と前記リブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体と、前記中空コア体の外側に設けた外部導体層と、前記外部導体層の外側に設けたジャケット層とを備えた同軸ケーブルの前記中心導体および外部導体層を樹脂モールドタイプコネクタの端子パッドに接続し且つ樹脂モールドしてなる樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法であって、樹脂モールドする前に、前記中空コア体の開口部を接着剤により塞いでおくことを特徴とする樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法を提供する。
上記第2の観点による樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法では、中空コア体の開口部を接着剤により塞いでから、樹脂を注入して樹脂モールドするため、中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止して樹脂モールドタイプコネクタ付き同軸ケーブルを製造することが出来る。
【0007】
第3の観点では、本発明は、中心導体および前記中心導体の外周を被覆する内環状部と前記内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部と前記リブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体を備えてなる2本の信号線と、前記2本の信号線に沿って設置されたドレイン導体と、全体を包む外部導体と、全体を絶縁被覆するジャケット層とを具備する差動信号伝送ケーブルの前記中心導体およびドレイン導体を樹脂モールドタイプコネクタの端子パッドに接続し且つ樹脂モールドしてなる樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法であって、樹脂モールドする前に、前記中空コア体の開口部を接着剤により塞いでおくことを特徴とする樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法を提供する。
上記第3の観点による樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法では、中空コア体の開口部を接着剤により塞いでから、樹脂を注入して樹脂モールドするため、中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止して樹脂モールドタイプコネクタ付き差動信号伝送ケーブルを製造することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法によれば、中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止できるので、中空コア体の中空部へのモールド樹脂の侵入に起因する特性の劣化を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】中空コア体を誘電体とした同軸ケーブルの横断面図である。
【図2】先端部段差加工済み同軸ケーブルを示すA−A’断面図である。
【図3】中心導体と中心端子および外部導体層と外部端子の接続工程を示す縦断面図である。
【図4】実施例1に係る開口部封止工程を示す縦断面図である。
【図5】実施例1に係る樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルを示す縦断面図である。
【図6】中空コア体を用いた差動信号伝送ケーブルの横断面図である。
【図7】先端部加工済み差動信号伝送ケーブルを示すB−B’断面図である。
【図8】中心導体と中心端子およびドレイン導体と外部端子の接続工程を示す縦断面図である。
【図9】実施例2に係る開口部封止工程を示す縦断面図である。
【図10】実施例2に係る樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
−実施例1−
図1は、先端部段差加工済み同軸ケーブル10の横断面図である。図2は図1のA−A’断面図である。
この先端部段差加工済み同軸ケーブル10は、中心導体1と、中心導体1の外周を被覆する内環状部2aと内環状部2aの外周から外側に向けて放射状に延びるリブ部2bとリブ部2bの外端を連結する外環状部2cとを有する中空コア体2と、中空コア体2の外側に設けた外部導体層3と、外部導体層3の外側に設けたジャケット層4とを備えてなり、段差を付けて中心導体1,中空コア体2,外部導体層3を露出させている。
【0012】
図3に示すように、まず、先端部段差加工済み同軸ケーブル10の中心導体1を中心端子11に接続し、外部導体層3を外部端子12に接続する。
【0013】
図4に示すように、次に、中空コア体2の開口部を接着剤13により塞ぐ。
接着剤13は、シリコーン樹脂系(例えば「商品名:POSシールスピード」(セメダイン社製))、エポキシ樹脂系(例えば「商品名:EP001」(セメダイン社製))、ウレタン樹脂系、エポキシ−シリコーン樹脂系(例えば「商品名:MOS7」(コニシ社製))が使用でき、特に粘度が比較的高い弾性タイプ且つ熱による膨張収縮が少ない2液硬化系が適している。また、シアノアクリレート系のゼリー状瞬間接着剤でも良い。
【0014】
図5に示すように、次に、金型に入れてモールド樹脂を注入し、樹脂モールド15を形成する。
以上により、樹脂モールドタイプコネクタ付き同軸ケーブル20を製造できる。
【0015】
実施例1に係る樹脂モールドタイプコネクタ付き同軸ケーブル20では、中空コア体2の開口部を接着剤13により塞いでからモールド樹脂を注入して樹脂モールド15を形成するため、中空コア体2の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止することが出来る。従って、中空コア体2の中空部へのモールド樹脂の侵入に起因する特性の劣化を防止することが出来る。
【0016】
−実施例2−
図6は、先端部加工済み差動信号伝送ケーブル30の横断面図である。図7は図6のB−B’断面図である。
この先端部加工済み差動信号伝送ケーブル30は、2本の信号線33,36と、2本の信号線33,36に沿って設置されたドレイン導体37と、全体を包む外部導体6と、全体を絶縁被覆するジャケット層7とを具備し、先端部に信号線33の中心導体31,信号線36の中心導体34およびドレイン導体37を露出させている。
【0017】
信号線33は、中心導体31と、中心導体31の外周を被覆する内環状部32aと内環状部32aの外周から外側に向けて放射状に延びるリブ部32bとリブ部32bの外端を連結する外環状部32cとを有する中空コア体32とを備えてなる。
信号線36は、中心導体34と、中心導体34の外周を被覆する内環状部35aと内環状部35aの外周から外側に向けて放射状に延びるリブ部35bとリブ部35bの外端を連結する外環状部35cとを有する中空コア体32とを備えてなる。
【0018】
図8に示すように、まず、先端部加工済み差動信号伝達ケーブル30の中心導体31,34を中心端子11,11に接続し、ドレイン導体37をドレイン端子16に接続する。
【0019】
図9に示すように、次に、中空コア体32,35の開口部を接着剤13により塞ぐ。
接着剤13は、シリコーン樹脂系(例えば「商品名:POSシールスピード」(セメダイン社製))、エポキシ樹脂系(例えば「商品名:EP001」(セメダイン社製))、ウレタン樹脂系、エポキシ−シリコーン樹脂系(例えば「商品名:MOS7」(コニシ社製))が使用でき、特に粘度が比較的高い弾性タイプ且つ熱による膨張収縮が少ない2液硬化系が適している。また、シアノアクリレート系のゼリー状瞬間接着剤でも良い。
【0020】
図10に示すように、次に、金型に入れてモールド樹脂を注入し、樹脂モールド15を形成する。
以上により、樹脂モールドタイプコネクタ付き差動信号伝送ケーブル40を製造できる。
【0021】
実施例2に係る樹脂モールドタイプコネクタ付き差動信号伝送ケーブル40では、中空コア体32,35の開口部を接着剤13により塞いでからモールド樹脂を注入して樹脂モールド15を形成するため、中空コア体32,35の中空部へのモールド樹脂の侵入を防止することが出来る。従って、中空コア体32,35の中空部へのモールド樹脂の侵入に起因する特性の劣化を防止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法は、中心導体を中空コア体で取り巻いたケーブルを製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0023】
1,31,34 中心導体
2,32,35 中空コア体
2a,32a,35a 内環状部
2b,32b,35b リブ部
2c,32c,35c 外環状部
3,6 外部導体層
4,7 ジャケット層
5 同軸ケーブル
10 先端部段差加工済み同軸ケーブル
11 中心端子
12 外部端子
13 接着剤
15 樹脂モールド
16 ドレイン端子
20 樹脂モールドタイプコネクタ付き同軸ケーブル
33,36 信号線
37 ドレイン導体
40 樹脂モールドタイプコネクタ付き差動信号伝送ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と、前記中心導体の外周を被覆する内環状部と前記内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部と前記リブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体とを少なくとも備えたケーブルの前記中心導体を樹脂モールドタイプコネクタの端子パッドに接続し且つ樹脂モールドしてなる樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法であって、樹脂モールドする前に、前記中空コア体の開口部を接着剤により塞いでおくことを特徴とする樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法。
【請求項2】
中心導体と、前記中心導体の外周を被覆する内環状部と前記内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部と前記リブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体と、前記中空コア体の外側に設けた外部導体層と、前記外部導体層の外側に設けたジャケット層とを備えた同軸ケーブルの前記中心導体および外部導体層を樹脂モールドタイプコネクタの端子パッドに接続し且つ樹脂モールドしてなる樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法であって、樹脂モールドする前に、前記中空コア体の開口部を接着剤により塞いでおくことを特徴とする樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法。
【請求項3】
中心導体および前記中心導体の外周を被覆する内環状部と前記内環状部の外周から外側に向けて放射状に延びる3本以上のリブ部と前記リブ部の外端を連結する外環状部とを有する中空コア体を備えてなる2本の信号線と、前記2本の信号線に沿って設置されたドレイン導体と、全体を包む外部導体と、全体を絶縁被覆するジャケット層とを具備する差動信号伝送ケーブルの前記中心導体およびドレイン導体を樹脂モールドタイプコネクタの端子パッドに接続し且つ樹脂モールドしてなる樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法であって、樹脂モールドする前に、前記中空コア体の開口部を接着剤により塞いでおくことを特徴とする樹脂モールドタイプコネクタ付きケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−14413(P2011−14413A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158326(P2009−158326)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】