説明

樹脂粒子の製造方法、トナーの製造方法、及び、トナー

【課題】溶剤や軟化補助液を使用することなく一工程で被膜形成をおこない、樹脂母粒子表面に母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子を製造する。
【解決手段】回転駆動される軸状部材101と、軸状部材の表面に設けた複数の攪拌部材102と、ケーシング103と、冷却ジャケット104とを備えた被膜処理装置100を用いる。この装置では、ケーシングは攪拌部材に対して一定の微小間隔を隔てた内周面を有する。攪拌部材は、母粒子と子粒子とを、軸状部材の軸方向の一方向に送りながら攪拌処理する第一の攪拌部材102aと、第一の攪拌部材102aとは逆方向に戻しながら攪拌処理する第二の攪拌部材102bとからなる。この装置で、母粒子と子粒子とに送りと戻しとを繰り返しながら攪拌処理することにより乾式で被膜形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を含有する母粒子表面に母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子の製造方法、トナーの製造方法、及びに、その製造方法で製造されたトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも樹脂を含有する母粒子表面に、母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子が知られている。被膜の代表的な機能としては、(1)母粒子を被膜壁により周囲から隔離・保護する機能、(2)母粒子を必要な時に瞬時に放出する機能、(3)母粒子の放出速度を制御する機能、(4)母粒子の性状に関わらず見掛け上粉体として取り扱える、(5)母粒子の味や臭いをマスキングする機能、(6)母粒子の表面改質、等が挙げられる。このような樹脂粒子では、母粒子の物性と被膜樹脂の物性との組み合わせにより、上記種々の機能を兼ね備えた新規な材料の創造も可能であり、期待される技法である。
【0003】
その一つとして、画像形成装置に用いるトナーへの応用が挙げられる。例えば、比較的ガラス転移温度の低い樹脂を含有する母粒子表面に、それよりもガラス転移温度の高い小粒径の樹脂である子粒子を被膜することにより、低温定着性と保存時安定性とを両立させるトナーが知られている。
【0004】
樹脂を含有する母粒子表面に母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜したトナーの製造方法としては、湿式法と乾式法とに大別できる。
【0005】
湿式法は、溶剤を使用した化学重合により被膜を行うものである(例えば、特許文献1〜12)。この方法では、化学重合後に、固液分離工程、粒子の洗浄工程および乾燥工程などの後処理工程を経て被膜した樹脂粒子が得られる。
【0006】
しかし、湿式法では上記乾燥工程をガラス転移温度よりも高い温度で行うと、樹脂粒子が溶融し、例えば乾燥機壁面などに付着してしまうことがある。これにより、高収率や連続運転性が困難となるだけでなく、樹脂粒子表面の荒れ等により、樹脂粒子の性能に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、乾燥工程をガラス転移温度よりも低い温度で行うと、樹脂粒子の溶融による乾燥機壁面への付着は抑制されるが、乾燥時間が長くなり、生産性や省エネに悪影響を及ぼすおそれがある。また、乾燥工程以外にも、固液分離工程、洗浄工程等の多くの後処理工程を必要であり、各後処理工程をおこなう装置がそれぞれ必要となるので、生産性や省エネ、投資コストの高さ、品質管理の点での課題は多い。
【0007】
一方、乾式法として、母粒子と子粒子とにエネルギーを与え、そのエネルギーの作用により被膜形成を行うことが試みられている。乾式法による被膜形成のためには、母粒子と子粒子とに充分なエネルギーを与えることが必要であるが、一般的なヘンシェルミキサ等の攪拌装置では、充分なエネルギーを与えることができず、被膜形成は困難である。
【0008】
特許文献13〜19には、回転羽根を周設した回転盤と回転軸とからなる回転攪拌手段により、母粒子と子粒子とを回転撹拌室および循環管を含む粉体流路内を繰り返し循環させながら攪拌する攪拌装置を用いた乾式法による被膜トナーの製造方法が記載されている。この製造方法では、攪拌装置の粉体流路内に母粒子と子粒子とを投入して回転攪拌手段により粉体流路内で循環させながら母粒子表面に子粒子を付着させる樹脂微粒子付着工程と、循環管内に膜化補助液としてのエタノールを噴霧してそれらの粒子を可塑化する噴霧工程と、回転攪拌手段による攪拌によりそれらの粒子が軟化して母粒子表面に子粒子が膜化するまで循環させながら機械的エネルギーを与える膜化工程とが、それぞれに適した温度に調整されて行われることにより、被膜した樹脂粒子が得られる。
【0009】
また、特許文献20には、母粒子表面に、子粒子を機械的衝撃力または乾式メカノケミカル法により機械的エネルギーを与えて均一固定化した後、熱気流中で処理して融着させて樹脂被膜を形成する乾式法による被膜トナーの製造方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
乾式法は、湿式法に較べると溶剤を使用しないために後処理工程が簡易で、生産性や投資コストという点でのメリットは大きい。しかし、上記特許文献13〜19の乾式法では、攪拌手段により機械的エネルギーを与えて被膜を形成する膜化工程の前に、膜化補助液としてのエタノールを噴霧する噴霧工程を必要としている。環境保全の点から考えるとエタノールを使用しないことが好ましい。また、エタノールの乾燥が必要であるため、乾燥温度によって上記湿式法の乾燥工程と同様の課題が発生する。また、被膜形成は一つの攪拌装置で行っているが、樹脂微粒子付着工程、噴霧工程、膜化工程等の複数の工程からなり、それぞれに適した温度調整が必要であるので、生産性や省エネ、品質管理等の点で、未だ課題が残っている。
【0011】
一方、上記特許文献20の乾式法では、膜化補助液は用いていないが、被膜形成は、機械的衝撃力または乾式メカノケミカル法による均一固定化工程と、熱気流中で処理する融着工程との複数の工程からなり、各工程をおこなう装置がそれぞれ必要となる。このため、生産性、投資コスト、省エネ、品質管理等の点で、課題が残っている。
【0012】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、溶剤や軟化補助液を用いずに一工程で被膜形成を行うことにより、樹脂母粒子表面に母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子を製造することができる樹脂粒子の製造方法、該樹脂粒子を含むトナーの製造方法、及びに、該製造方法で製造されたトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも樹脂を含有する母粒子の表面に、該母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子の製造方法であって、
回転駆動される軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられた複数の攪拌部材と、微小間隔を隔てて該複数の攪拌部材を覆う円筒状内周面を有するケーシングと、該ケーシング内の温度調整をおこなう温度調整手段とを備え、該複数の攪拌部材として、該母粒子と該子粒子とを該軸状部材の軸方向と略平行な一方向に送りながら攪拌処理する第一の攪拌部材と、該第一の攪拌部材とは逆方向に戻しながら攪拌処理する第二の攪拌部材とを有する攪拌装置を用い、該母粒子と該子粒子とを該第一の攪拌部材による送りと該第二の攪拌部材による戻しとを繰り返しながら攪拌処理することにより乾式で被膜形成することを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、上記構成を有する攪拌装置を用いて送りと戻しとを繰り返しながら母粒子と子粒子とを攪拌処理することにより、母粒子と子粒子とに高エネルギーを与え、その作用により後述のように乾式で母粒子表面に均一な被膜を形成することができる。上記構成の攪拌装置では、母粒子と子粒子とをケーシング内に投入して軸状部材を回転させた時、母粒子と子粒子とが攪拌されて母粒子に表面に子粒子が付着する。さらに、母粒子と子粒子とが攪拌される際、ケーシング内周面と攪拌部材との間の微小間隙で圧縮力、摩砕力、及び、せん断力が発生し、母粒子と子粒子とにこれら力による機械的エネルギーを与えると同時に、瞬間的局所的にかかる熱エネルギーを与えることができる。また、第一の攪拌部材による送りと第二の攪拌部材による戻しを繰り返しながら攪拌処理することにより、母粒子と子粒子とに高機械的エネルギーを与えると同時に、瞬間的局所的ではあるが高熱エネルギーを与えることができる。このように、上記構成の攪拌装置による攪拌処理は、特許文献13〜19の攪拌手段や特許文献20の機械的衝撃力または乾式メカノケミカル法に較べて、母粒子と子粒子とに高エネルギーを与えることができる。このため、膜化補助液を噴霧して可塑化させる噴霧工程や、熱気流中で処理する融着工程を設けなくとも、母粒子に付着した子粒子が軟化して母粒子表面に均一な被膜形成が可能となる。また、上記構成の攪拌装置による攪拌処理という一工程での乾式被膜形成が可能であるので、従来の乾式法よりもさらに生産性、省エネ、投資コスト、品質管理等の点でメリットが大きい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶剤や軟化補助液を用いずに一工程で被膜形成を行うことにより、樹脂母粒子表面に母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子を製造できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態で用いられる乾式被膜処理装置の一例を示す概略構成図。
【図2】図1の攪拌部材を示す概略図。
【図3】図1の攪拌部材の変形例を示す概略図。
【図4】実施例に係るトナーの表面観察写真。
【図5】比較例に係るトナーの表面観察写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態で用いられる乾式被膜処理装置の一例の概略構成図である。この乾式被膜処理装置は、少なくとも樹脂を含有する母粒子と、母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子とを攪拌する攪拌装置からなり、乾式で母粒子表面に子粒子の被膜処理するものである。
【0018】
図1の乾式被膜処理装置100は、回転可能な軸状部材101と、軸状部材101の表面に設けられている複数の板状の攪拌部材102と、複数の攪拌部材102を覆うことが可能な円筒状のケーシング103とを有している。軸状部材101は、軸受部材105によって片側で支持され、モータ等の駆動部112に連結されている。軸受部材105が配置されている側端部のケーシング103上部には、ケーシング103内に攪拌処理する処理物を投入する投入口106が設けられている。また、投入口106と反対側の端部のケーシング103下部には、攪拌処理された処理物を排出する排出口107が設けられている。ケーシング103の外周面に温度調整手段として、冷却媒体を流す冷却ジャケット104を有している。
【0019】
ケーシング103は、軸状部材101の回転軸に対して略平行な方向の一端側(図1中左側)のみで開口し、他端側(図1中右側)で閉塞した有底円筒状である。また、ケーシング103は、ガイド棒108及びボス109によって支持され、複数の撹拌部材102を覆う作動位置(図1参照)と、複数の撹拌部材102を覆わない非作動位置(不図示)に、軸状部材101の回転軸に対して略平行な方向に移動可能に設置されている。
【0020】
軸状部材101は、回転軸が鉛直方向に対して略垂直に設けられている。このため、駆動部112により軸状部材101を回転させることにより、軸状部材101の表面に設けられた複数の攪拌部材102が回動して、ケーシング103内の処理物を均一に攪拌処理することができる。軸状部材101の略垂直(又は略水平)の誤差として、垂直(又は水平)から5°程度のブレが許容される。
【0021】
また、ケーシング103には、ケーシング103内での温度上昇による空気の膨張に伴う圧力を開放したり、軸状部材101の軸シール部(不図示)のシールエアを逃がしたりするための排気管110が設けられている。この排気管110には、処理物の粉塵の飛散を抑制するためのフィルタ111が設置されている。
【0022】
次に、攪拌部材102について詳しく説明する。
攪拌部材102としては、軸状部材101の回転により処理物を、軸状部材101の回転軸と略平行な向きに駆動モータ112側(図1中左側)から逆側(図1中右側)に送りながら攪拌処理する第一の攪拌部材102aと、第一の攪拌部材102aとは逆方向に戻しながら攪拌処理する第二の攪拌部材102bとを有している。このような第一の攪拌部材102aと第二の攪拌部材102bとを、それぞれ複数づつ軸状部材101の回転方向に対して交互に設けている。図1の(a)と(b)とは、軸状部材101の回転停止位置が異なるものであり、(a)は第一の攪拌部材102aが軸状部材101の真上側にある場合、(b)は第二の攪拌部材102bが軸状部材101の真上側にある場合を示している。
【0023】
また、図2は、このような攪拌部材102の概略図である。攪拌部材102は、ケーシング103の内周面とに対して、一定の微小間隔である、クリアランスCを隔てて配置されている。
【0024】
このような構成の乾式被膜処理装置100で、ケーシング内103に投入口106より処理物を投入した後、駆動部112により軸状部材101を回転させる。この回転に伴い、第一の攪拌部材102aと第二の攪拌部材102bとが回動して、ケーシング103内において処理物に送りと戻しを繰り返しながら攪拌処理をおこなって活発に流動させる。このため、第一の攪拌部材102aや第二の攪拌部材102bとケーシング103の内周面との間のクリアランス部で、処理物が凝集したり、融着したりすることを抑制できる。
【0025】
また、互いに隣接する第一の攪拌部材102aと第二の攪拌部材102bとは、軸状部材101の回転軸方向に対して重なり合い、軸状部材101の回転方向においては離間して設けている。このため、第一の攪拌部材102aの端部から隣接する第二の攪拌部材102bの内側に処理物が移動し、第二の攪拌部材102bの端部から隣接する第一の攪拌部材102aの内側に処理物が移動する。これにより、ケーシング103内における処理物の移動経路が複雑になると共に長くなり、その結果、第一の攪拌部材102a及び第二の攪拌部材102bによる攪拌力を処理物に強く伝達することができる。
【0026】
また、投入口106または排出口107が形成されている端部となる位置では、軸状部材101の表面に第一の攪拌部材102aと第二の攪拌部材102bとをそれぞれ設けている。これにより、攪拌力が及びにくい軸状部材101の両端部側への処理物の移動を抑制し、第一の攪拌部材102aと第二の攪拌部材102bによる攪拌力が十分に伝達されていない処理物が排出口107から排出されることを抑制する。
【0027】
図1(a),(b)では、第一の攪拌部材102aと第二の攪拌部材102bは、それぞれ軸状部材102の表面に6個づつ、合わせて12個設けられている。第一の攪拌部材102a、第二の攪拌部材102bはそれぞれ、軸状部材101の回転方向の2箇所で回転軸方向に3個づつ設けている。また、第一の攪拌部材102aと第二の攪拌部材102bとは、それぞれの回転軸上に対称点が存在するように点対称に設けられている。なお、第一の攪拌部材102a、第二の攪拌部材102bは、回転軸方向の関して3個づつ以上設けても良い。第一の攪拌部材102a、第二の攪拌部材102bは、回転軸方向の関して1〜2個の場合は、子粒子の攪拌に偏りが生じて、子粒子を均一に分散させることができなく、母粒子表面に形成される子粒子の被膜が均一にならないこともある。
【0028】
なお、図1では、第一の攪拌部材102a、第二の攪拌部材102bの形状としては、板状のものを示したが、板状に限定されず、あぶみ状、溝形状、パドル状、フィン状等でもよく、特に制約はない。
【0029】
また、第一の攪拌部材102a、第二の攪拌部材102bとして、図3にしめす形状の攪拌部材を用いてもよい。図3は、攪拌部材の変形例を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)はケーシング側からみた正面図である。この攪拌部材102は、ケーシング103の内周面に対向するように2つの溝状部121を形成してものである。この撹拌部材102では、2つの溝状部121により、ケーシング103の内周面に対向する領域が3つの領域に分割されている。ケーシング103の内周面に対向する領域を分割すると、撹拌部材102を大きくしても、処理物を撹拌する作用が低下したり、攪拌部材とケーシング103の内周面と間で処理物に加わるせん断力に伴う摩擦熱が局所に集中したりすることを抑制できる。ケーシング103の内周面に対向する領域の表面積に対して、溝状部121が形成されている領域の表面積の比は、通常15〜50%であり、特に20〜40%が好ましい。
【0030】
また、ケーシング103の形状としては、内周面の軸状部材101の回転軸に対して垂直な断面が、上述の第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bを覆う状態において、軸状部材101の回転軸との間の距離が略一定である円状であれば、円筒状に限定されず、球形状、円錐形状等が挙げられる。
【0031】
このような構成の乾式被膜処理装置100において、軸状部材101を回転させた際の第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bの周速は、通常10〜150m/秒であり、特に10〜120m/秒が好ましい。また、軸状部材101を回転させた際の第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bの円軌道の直径は、通常0.09〜1mであり、特に0.12〜0.75mが好ましい。
【0032】
このような構成の乾式被膜処理装置100を用いて、少なくとも樹脂を含有する母粒子と、母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子とを攪拌処理すると、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bと母粒子および子粒子との衝突力、母粒子と子粒子との衝突力、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bとケーシング103の内周面との間のクリアランス部での圧縮力や摩砕力やせん断力、瞬間的局所的にかかる熱エネルギーに加えて、送り及び戻しを繰り返す攪拌処理により、子粒子が母粒子の表面に被膜処理を行える。
【0033】
また、攪拌処理による温度上昇は、冷却ジャケット104に冷却媒体を流すことにより、攪拌中のケーシング103内を所望の温度に保った状態にして抑制する。
ケーシング103内の雰囲気の温度は、母粒子のガラス転移温度Tg−50℃以上、Tg−1515℃低いの範囲であることが好ましい。ケーシング103内の雰囲気の温度が母粒子のガラス転移温度よりも50℃低い温度未満であると、雰囲気温度が低すぎることにより、母粒子最表面が少しの軟化もなく、母粒子に子粒子を固定することが困難になることがある。また、雰囲気温度が低いことにより静電気的な力が増大し、母粒子と子粒子の反発する力が大きくなり、母粒子に子粒子を被膜処理することが困難になることがある。一方、母粒子のガラス転移温度よりも15℃低い温度を超えると、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bによる撹拌力により母粒子が融解したり、離型剤が露出したりすることがある。
【0034】
また、上記乾式被膜処理装置100を用いて、少なくとも樹脂を含有する母粒子と、母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子とを攪拌処理する混合エネルギーとしては、0.20kwh/kg以上が適しており、混合エネルギーが0.20kwh/kg未満であると、混合エネルギーが低すぎるため、母粒子表面に子粒子を付着させることはできるが、均一に被膜処理することが困難な場合がある。
【0035】
一方、混合エネルギーの上限としては、1.50kwh/kg以下が適している。混合エネルギーが1.50kwh/kgを超えると、エネルギーが強すぎるために、乾式被膜処理装置100内の雰囲気温度の制御が難しくなって温度上昇し、被膜処理はできるものの、母粒子や子粒子が融解し、上手く被膜することができないことがある。
【0036】
これらから、混合エネルギーは、0.20kwh/kg以上、1.50kwh/kg以下が適しており、さらに0.50kwh/kg以上、1.20kwh/kg以下が好ましく、0.75kwh/kg以上、1.20kwh/kg以下がより好ましい。なお、混合エネルギーとは、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bからなる攪拌部材102の処理物に対する、単位粒子量あたりの仕事(電力量)をいう。具体的には、軸状部材101を回転させる駆動部112の電動モータの電力から算出されるものである。ケーシング103内に処理物を入れて軸状部材101を回転させた時の電力から、ケーシング103内に処理物を入れない以外は同一の条件で軸状部材101を回転させた時の電力を差し引いた値に、軸状部材101を回転させた時間を乗じ、処理物の投入量を除した値である。
【0037】
さらに、本実施形態では、上記攪拌部材102とケーシング103の内周面との微小間隔をC[mm]、軸状部材101の外径をD[mm]、ケーシング103の内径をD[mm]とすると、式
/D≦2.0
2.5≦D1/2/C≦10.0
を満たすことが好ましい。
/Dが2を超えると、攪拌部材102による攪拌力を粒子に強く印加できなくなることがある。なお、D/Dは、通常、1.2以上である。D/Dが1.2未満であると、粒子を効率よく混合できなくなることがある。
1/2/Cが2.5未満である場合または10.0を超える場合は、攪拌部材102とケーシング103の内周面との間のクリアランス部における圧縮力や摩砕力やせん断力、瞬間的局所的にかかる熱エネルギーを効率よく粒子に与えられなくなることがある。
【0038】
さらに、本実施形態の樹脂粒子の製造方法で、上記乾式被膜処理の前に、母粒子と子粒子とを、混合エネルギーを0.15kwh/kg以下で予備攪拌処理してもよい。これは、母粒子と子粒子を、一気に高い混合エネルギーで攪拌処理するよりも、あらかじめ弱い混合エネルギーにて予備攪拌処理を行い、子粒子を母粒子表面に付着させてから、高い混合エネルギーで攪拌処理する方が、より安定した乾式被膜処理を施すことができる。この時、混合エネルギーが0.15kwh/kgを超えると、一気に高いエネルギーを与えるために、子粒子が母粒子表面に付着せず、脱離してしまうことがあり、被膜されない子粒子が存在するおそれがある。予備攪拌処理装置としては、特に限定されず公知の種々の装置を用いても良い。
【0039】
また、本実施形態の乾式被膜処理装置100は、特許文献13〜19に記載される被膜形成処理装置に較べて、粒子の性能のうえでもメリットがある。これは、特許文献13〜19に記載される被膜形成処理装置では、粉体流路内を循環している母粒子および子粒子が回転攪拌手段へ衝突することによる衝突エネルギーと、回転攪拌手段の回転による攪拌エネルギーによって、粒子にエネルギーを与えている。衝突エネルギーによって、微粉の発生や、粒子表面の荒れ等が発生しやすく、粒子の性能に悪影響を及ぼす虞がある。一方、本実施形態の乾式被膜処理装置100は、ケーシング103内に投入した母粒子と子粒子を攪拌部材で攪拌する構成であり、粉体経路から攪拌手段への衝突がないので、上記粒子の性能への悪影響を懸念する必要がない。
【0040】
次に、上記被膜処理装置100を用いた樹脂粒子の製造方法として、トナーを製造する例を用いて、具体的に説明する。
【0041】
本実施形態で製造されるトナーは、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有する母粒子に、母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜処理したものを有する。
【0042】
本実施形態のトナーで用いられる母粒子の結着樹脂または子粒子の樹脂としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレンービニルトルエン共重合体、スチレンービニルナフタレン共重合体、スチレンーアクリル酸エステル共重合体、スチレンーメタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンービニルメチルエーテル共重合体、スチレンービニルエチルエーテル共重合体、スチレンービニルメチルケトン共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレンーアクリロニトリルーインデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル;フェノール樹脂;天然変性フェノール樹脂;天然樹脂変性マレイン酸樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリアミド;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール;テルペン樹脂;クマロンインデン樹脂;石油系樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、スチレン系共重合体又はポリエステルが好ましい。
【0043】
母粒子は、ガラス転移温度Tgは40〜65℃であることが好ましい。母粒子のガラス転移温度が40℃未満であると、粒子の保存安定性が低下することがあり、65℃を超えると、粒子の低温定着性が低下することがある。なお、ガラス転移温度は、TA−60WS及びDSC−60(島津製作所社製)を用いて測定することができる。
【0044】
母粒子は、体積平均粒径が3〜9μmであることが好ましい。母粒子の体積平均粒径が3μm未満であると、トナーの融着が発生しやすくなることがあり、9μmを超えると、高画質画像を形成することが困難になることがある。なお、母粒子の体積平均粒径は、コールターカウンターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて測定することができる。
母粒子の製造方法としては、特に限定されないが、粉砕法、重合法等が挙げられる。
【0045】
母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子のガラス転移温度は、母粒子のガラス転移温度Tgに対して、Tg〜Tg+50℃が適しており、さらにTg+5℃〜Tg+40℃が好ましく、Tg+10℃〜Tg+30℃がより好ましい。子粒子のガラス転移温度がTg未満であると、子粒子が溶融しやすいことにより、攪拌部材102や壁面へ付着しやすくなり、母粒子表面に上手く被膜できないことがある。また、被膜材としての機能を果たすことができず、樹脂粒子の保存安定性が低下することがある。一方、Tg+50℃を超えると、子粒子が溶融しにくく、母粒子表面に上手く被膜できないことがある。また、樹脂粒子の保存安定性は向上するものの、低温定着性が低下することがある。
【0046】
また、子粒子の軟化温度は、母粒子の軟化温度をTmとすると、Tm〜Tm+50℃が適しており、さらにTm+5℃〜Tm+40℃が好ましく、Tm+10℃〜Tm+30℃がより好ましい。子粒子の軟化温度がTm未満であると、子粒子が溶融しやすいことにより、攪拌部材102や壁面へ付着しやすくなり、母粒子表面に上手く被膜できないことがある。また、被膜材としての機能を果たすことができず、樹脂粒子の保存安定性が低下することがある。一方、Tm+50℃を超えると、子粒子が溶融しにくく、母粒子表面に上手く被膜できないことがある。また、樹脂粒子の保存安定性は向上するものの、低温定着性が低下することがある。
【0047】
本実施形態のトナーに用いられる着色剤としては、イエロー系顔料、マゼンタ系顔料、シアン系顔料等を用いることができる。
イエロー系顔料としては、特に限定されないが、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
イエロー系顔料の市販品としては、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、90、93、95、96、97、109、110、111、120、128、129、138、147、155、163、180、181;ネフトールイエローS、ハンザイエローG、C.I.バットイエロー等が挙げられる。
【0048】
マゼンタ系顔料としては、特に限定されないが、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
マゼンタ系顔料の市販品としては、C.I.ピグメントレッド2、3、4、6、7、23、48、48:2、48:3、48:4、57、57:1、58、60、63、64、68、81、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、163、166、169、170、177、184、185、187、202、206、207、209、220、251、254;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0049】
シアン系顔料としては、特に限定されないが、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
シアン系顔料の市販品としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、6、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルー等が挙げられる。
【0050】
着色剤の添加量は、結着樹脂に対して、2〜20質量%であることが好ましく、4〜15質量%がさらに好ましい。着色剤の含有量が、結着樹脂に対して、2質量%未満であると、着色力が低下することがあり、20質量%を超えると、着色力が必要以上に高まり、薄い色等の再現が困難になることがある。
【0051】
本実施形態におけるトナーは、さらに離型剤としてワックスを含有していても良い。
本実施形態に用いられるワックスには、特に限定されないが、カルボニル基を有するワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、カルボニル基を有するワックスが好ましい。
カルボニル基を有するワックスとしては、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等のポリアルカン酸エステル;トリメリット酸トリステアリル、マレイン酸ジステアリル等のポリアルカノールエステル;ジベヘニルアミド等のポリアルカン酸アミド;トリメリット酸トリステアリルアミド等のポリアルキルアミド;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン等が挙げられる。中でも、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
ポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
長鎖炭化水素としては、パラフィンワックス、サゾールワックス等が挙げられる。
離型剤の融点は、通常、40〜160℃であり、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。離型剤の融点が40℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、160℃を超えると、低温定着性が低下することがある。
母体粒子中の離型剤の含有量は、通常、結着樹脂100に対して、3〜15質量%である。
【0052】
本実施形態におけるトナーは、帯電性をさらに安定化させるために、必要に応じて帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤の添加量は、結着樹脂に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
本実施形態に用いられる帯電制御剤には、特に限定されないが、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸及びその誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージNX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0053】
また、本実施形態のトナーは、母粒子と母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子とを乾式被膜処理をした処理物に、さらに流動性や帯電性等を調整するために添加剤を必要に応じて含むことが一般的である。母粒子に対して0.1〜10質量%であり、0.5〜3質量%が好ましい。また平均一次粒径としては、10nm〜1μmであり、30nm〜500nmが好ましい。
【0054】
このような粒子を構成する材料には、特に限定されないが、スチレンーアクリル共重合体、ポリエステル等の樹脂;シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の無機化合物が挙げられる。
【0055】
スチレンーアクリル共重合体としては、スチレンと、アクリル酸、アクリル酸のアルキル(炭素数1〜36)エステル、メタクリル酸、メタクリル酸のアルキル(炭素数1〜36)エステル、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸パーフルオロアルキル等の(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が挙げられる。
スチレンーアクリル共重合体を構成するスチレンに対する(メタ)アクリル系モノマーの質量比は、通常、95/5〜5/95であり、90/10〜10/90が好ましい。
スチレンーアクリル共重合体から構成される粒子は、例えば、重合開始剤の存在下、スチレンと(メタ)アクリル系モノマーを共重合させることにより得られる。
【0056】
粒子を構成する樹脂の軟化点は、感光体等への融着の観点から、150℃以上であることが好ましい。また、粒子を構成する樹脂のガラス転移点は、凝集の観点から、60℃以上であることが好ましい。
樹脂から構成される粒子は、電気抵抗の観点から、p−トルエンスルホン酸又はその塩で表面処理されていることが好ましい。
p−トルエンスルホン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;テトラメチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;ヘキサデシルビリジニウム塩等のピリジニウム塩;1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム塩等が挙げられる。中でも、樹脂から構成される粒子Aへの親和性の観点から、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
p−トルエンスルホン酸又はその塩による表面処理量は、通常、樹脂から構成される粒子Aに対して、0.1〜5質量%であり、0.5〜3質量%が好ましい。
p−トルエンスルホン酸又はその塩で表面処理する方法としては、特に限定されないが、樹脂から構成される粒子Aと、p−トルエンスルホン酸又はその塩の水溶液とを混合した後、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0057】
以下、トナーの製造の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明中で部は質量部を意味する。
【0058】
<母粒子1の作製>
軟化温度が140℃のポリエステル100部、含フッ素4級アンモニウム塩3部及び銅フタロシアニンC.I.ピグメントブルー15:3(大日精化社製)3部を、ブレンダーを用いて混合した後、100〜110℃に加熱した2本ロールを用いて溶融混練し、自然放冷した。次に、カッターミルを用いて粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕した。さらに、風力分級装置を用いて分級し、母粒子1を得た。母粒子1は、ガラス転移温度Tgが55℃、軟化温度Tmが145℃、体積平均粒径が6.8μmであった。
【0059】
<母粒子2の作製>
加熱乾燥した三つ口フラスコに、セバシン酸ジメチル98mol%及び5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム2mol%からなる酸モノマーと、エチレングリコールからなるアルコールモノマーとをmol比1:1で入れ、全モノマーに対して、0.3質量%のジブチルスズオキサイドを入れた後、容器内の空気を窒素により置換し、180℃で5時間還流した。次に、減圧下、230℃まで昇温して2時間攪拌した後、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステルを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、結晶性ポリエステルの重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、9700であった。また、結晶性ポリエステルは、融点が72℃であった。
【0060】
得られた結晶性ポリエステル90部、カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.8部及びイオン交換水210部を100℃に加熱して、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させた後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて1時間分散させ、体積平均粒径が200nm、固形分が20質量%の結晶性ポリエステル分散液を得た。
【0061】
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた5Lのフラスコに、テレフタル酸30mol%、フマル酸70mol%、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物20mol%及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物80mol%を入れた後、1時間で190℃まで昇温した。次に、全モノマーに対して、1.2質量%のジブチルスズオキサイド1.2部を加えた。さらに、生成する水を留去しながら、6時間で240℃まで昇温した後、3時間保持し、非晶性ポリエステルを得た。非晶性ポリエステルは、酸価が12.0mg/KOH、重量平均分子量が9700、ガラス転移点Tgが61℃であった。
【0062】
得られた溶融状態の非晶性ポリエステルを、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)に100G/分で移送すると同時に、0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換器で120℃に加熱しながら、キャビトロンCD1010に0.1L/分で移送した。さらに、回転子の回転速度を60Hz、圧力を5kg/cmとして、キャビトロンを運転し、体積平均粒径が0.16μm、固形分が30質量%の非晶性ポリエステル分散液を得た。
【0063】
銅フタロシアニンC.I.ピグメントブルー15:3(大日精化社製)45部、カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製)5部及びイオン交換水200部を混合した後、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させ、体積平均粒径が168nm、固形分が22質量%の着色剤分散液を得た。
【0064】
融点が75℃のパラフィンワックスHNP9(日本精鑞社製)45部、カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製)5部及びイオン交換水200部を混合した後、95℃に加熱した。次に、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させ、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散させ、体積平均粒径が200nm、固形分が20質量%の離型剤分散液を得た。
【0065】
丸型のステンレス製フラスコに、非晶性ポリエステル分散液256.7部、結晶性ポリエステル分散液33.3部、着色剤分散液27.3部及び離型剤分散液35部を入れ、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させた。次に、ポリ塩化アルミニウム0.20部を加え、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて分散させた後、48℃まで昇温し、60分間保持した。さらに、非晶性ポリエステル分散液70部を加えた後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。次に、ステンレス製フラスコを密閉し、96℃まで昇温し、5時間保持した後、冷却した。さらに、濾過し、残渣をイオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離した。次に、残渣を40℃のイオン交換水1Lに加え、ホモジナイザーのウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて、300rpmで15分間攪拌した後、濾過する操作を繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度が7.0μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過により、濾紙No.54Aを用いて固液分離した。さらに、12時間真空乾燥して、母粒子2を得た。母粒子2は、ガラス転移点Tgが50℃、軟化温度Tmが125℃、体積平均粒径が5.9μmであった。
【0066】
<子粒子1の作製>
スチレンとアクリル酸とアクリル酸ブチルとを重合して、体積平均粒径が80nm、ガラス転移温度が65℃、軟化温度が155℃である粒子を得た。
【0067】
<子粒子2の作製>
スチレンとアクリル酸とアクリル酸ブチルとを重合して、体積平均粒径が80nm、ガラス転移温度が85℃、軟化温度が175℃である粒子を得た。
【0068】
<母粒子のガラス転移温度>
母粒子のガラス転移温度は、TA−60WS及びDSC−60(島津製作所社製)を用いて、以下の測定条件で測定した。
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mgg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量59mL/分)
(昇温条件1)
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/分
終了温度:150℃
保持時間:なし
(降温条件1)
降温温度:10℃/分
終了温度:20℃
保持時間:なし
(昇温条件2)
昇温速度:10℃/分
終了温度:150℃
【0069】
測定結果は、データ解析ソフトTA−60、バージョン1.52(島津製作所製)を用いて解析した。具体的には、2度目の昇温のDSC微分曲線であるDRDSC曲線の最も低温側に最大ピークを示す点を中心として、±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いて、ピーク温度を求めた。次に、DSC曲線でピーク温度+5℃及び−5℃の範囲で、解析ソフトのピーク解析機能を用いて、DSC曲線の最大吸熱温度を求めた。
【0070】
<母粒子の軟化温度>
流動特性評価装置(商品名:フローテスター、CFT−500、株式会社島津製作所社製)において、荷重20kgf/cm(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm,長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求めた。
【0071】
<母粒子の体積平均粒径>
母粒子の体積平均粒径は、コ-ルターカウンターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて測定した。具体的には、まず、約1質量%塩化ナトリウム水溶液ISOTON−II(コールター社製)100〜150ml中にポリオキシエチレンアルキルエ-テルを0.1〜5ml加えた。次に、母粒子2〜20mg加えた後、超音波分散機を用いて、約1〜3分間分散させた。さらに、100μm角のアパーチャーを用いて、母粒子の体積平均粒径を求めた。チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満;2.52μm以上3.17μm未満;3.17μm以上4.00μm未満;4.00μm以上5.04μm未満;5.04μm以上6.35μm未満;6.35μm以上8.00μm未満;8.00μm以上10.08μm未満;10.08μm以上12.70μm未満;12.70μm以上16.00μm未満;16.00μm以上20.20μm未満;20.20μm以上25.40μm未満;25.40μm以上32.00μm未満;32.00μm以上40.40μm未満の13チャンネルを用い、粒径が2.00μm以上40.30μm未満の粒子を測定対象とした。
【0072】
<実施例1>
乾式被膜処理装置100(図1参照)を用いて、200gの母粒子1、及び、10gの子粒子1を入れて、0.10kwh/kgの混合エネルギーで予備攪拌処理を実施した。その後、0.17kwh/kgの混合エネルギーで乾式被膜処理を実施した。その後、更に平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)4gを入れて、0.05kwh/kgの混合エネルギーで攪拌処理を実施して、トナーを得た。
このとき、クリアランスCを1.0mm、軸状部材101の外径Dを91mm、ケーシング103の内径Dを130mmとした。第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bの円軌道の直径は128mmとした。
予備攪拌処理は、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bの周速を10〜150m/秒の範囲で調整しながら、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bの粒子1kgに対する混合エネルギーが0.10kwh/kgとなるまで混合した。乾式被膜処理は、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bの周速を10〜150m/秒の範囲で調整しながら、第一の攪拌部材102aおよび第二の攪拌部材102bの粒子1kgに対する混合エネルギーが0.17kwh/kgとなるまで混合した。また、ケーシング103内の雰囲気温度が20℃となるように冷却した。
【0073】
<実施例2>
乾式被膜処理での混合エネルギーを0.20kwh/kgに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0074】
<実施例3>
乾式被膜処理での混合エネルギーを0.50kwh/kgに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0075】
<実施例4>
乾式被膜処理での混合エネルギーを1.00kwh/kgに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0076】
<実施例5>
乾式被膜処理での混合エネルギーを1.40kwh/kgに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0077】
<実施例6>
予備攪拌処理を行わない以外は、実施例4と同様にして、トナーを得た。
【0078】
<実施例7>
子粒子1の代わりに子粒子2を用いた以外は、実施例4と同様にして、トナーを得た。
【0079】
<実施例8>
母粒子1の代わりに母粒子2を用いた以外は、実施例4と同様にして、トナーを得た。
<実施例9>
クリアランスを3.5mmにした以外は、実施例3と同様にして、トナーを得た。
<実施例10>
クリアランスを1.2mmに変更すると共に、軸状部材101の外径を65mmに変更した以外は、実施例3と同様にして、トナーを得た。
【0080】
<比較例>
乾式被膜処理装置100の代わりに、ヘンシェルミキサーFM20B(日本コークス社製)を用いた。ヘンシェルミキサーFM20Bに、2000gの母粒子1、及び、100gの子粒子1を入れて、0.10kwh/kgの混合エネルギーで予備攪拌処理を実施した。その後、0.15kwh/kgの混合エネルギーで乾式被膜処理を実施した。その後、更に平均一次粒径が40nmのシリカ粒子RX50(日本アエロジル社製)40gを入れて、0.05kwh/kgの混合エネルギーで攪拌処理を実施して、トナーを得た。
【0081】
表1に、実施例1〜10、及び、比較例のトナーの製造条件をまとめたものを示す。
【表1】


表1中の乾式被膜処理装置の欄では、本実施形態の乾式被膜処理装置100を1で示し、ヘンシェルミキサーFM20Bを2で示している。
【0082】
実施例1〜10、及び、比較例のトナーを以下のようにして評価した。
【0083】
<表面観察>
FE−SEMを用いて、トナー表面の子粒子の被膜状態を観察した。
◎:子粒子が脱離または埋没しておらず、完全に被膜されている場合。
○:子粒子が脱離または埋没しておらず、一部付着状態であるものの被覆状態が85%以上である場合。
△:子粒子の一部が脱離または埋没しており、被覆状態が50%程度である場合。
×:子粒子の一部が脱離または埋没しており、コア粒子表面上に被膜しておらず、付着している場合。
【0084】
<低温定着性>
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した複写機MF2200(リコー社製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6200紙(リコー社製)に複写テストを行った。
具体的には、定着温度を変化させてコールドオフセット温度(定着下限温度)を求めた。
定着下限温度の評価条件は、紙送りの線速度を120〜150mm/秒、面圧を1.2kgf/cm、ニップ幅を3mmとした。
◎:定着下限温度が140℃未満である場合
○:定着下限温度が140℃以上150℃未満である場合
△:定着下限温度が150℃以上160℃未満である場合
×:定着下限温度が160℃以上170℃未満である場合
【0085】
<保存安定性(耐熱保存性)>
トナー10gを30mlのスクリューバイアル瓶に入れタッピングマシンで150回タッピングした後、50℃8時間恒温槽で保管し、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上の残存率を測定した。
この時、保存安定性が良好なトナー程、残存率が小さい。
◎:残存率が0%以上10%未満である場合
○:残存率が10%以上15%未満である場合
△:残存率が15%以上20%未満である場合
×:残存率が20%以上である場合
【0086】
表2に、実施例1〜10、及び、比較例のトナーの評価した結果を示す。
【表2】


また、図4に実施例4のトナーの表面観察写真を、図5に比較例のトナーの表面観察写真を示す。
【0087】
表2より、実施例1〜10トナーは、乾式被膜処理を施すことが可能であり、かつ低温定着性と保存安定性の両立が可能であることがわかる。また、図4の表面観察写真に示すように、球形状の子粒子が機械的エネルギーや局所的にかかる熱エネルギーによって変形し、母粒子表面上になめされて、「被膜状態」となっていることがわかる。
【0088】
これらより、母粒子と子粒子とを本実施形態の乾式被膜処理装置100を用いて攪拌処理することで、ケーシング103と攪拌部材102との間のクリアランス部での圧縮力や摩砕力やせん断力、瞬間的局所的にかかる熱エネルギーに加えて、左右の対向する方向への攪拌により、乾式被膜処理が可能であることを示している。その結果、トナー性能としては、低温定着性と保存安定性を両立させることができた。
【0089】
一方、表2より、比較例のトナーは、乾式被膜処理を施すことが不可能であり、それに伴い低温定着性と保存安定性の両立が不可能であることがわかる。また、図5の表面観察写真に示すように、球形状の子粒子は変形することなく、母粒子表面上に付着/固定化して存在している。これは「被膜状態」ではない。このように、比較例のトナーは、被膜処理装置の構造の違いや混合エネルギーが低いため、乾式被膜処理を施すことができず、母粒子表面が一部露出している部分が存在する。そのため、特に保存安定性に関しては悪化傾向であった。
【0090】
なお、特許文献20に記載される被膜トナーの製造方法は、子粒子を機械的衝撃力または乾式メカノケミカル法により機械的エネルギーを与える工程により図5の固定化した状態とし、熱気流中で処理して融着させる工程により図4の「被膜状態」としている。
【0091】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
少なくとも樹脂を含有する母粒子の表面に、母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子の製造する製造方法であって、回転駆動される軸状部材101と、軸状部材101の表面に設けられた複数の攪拌部材102と、複数の攪拌部材102に対して一定の微小間隔Cを隔てた円筒状内周面を有するケーシング203と、ケーシング103の外周部に設けられた冷却ジャケット104等の温度調整手段とを備えた被膜処理装置100等の攪拌装置を用いる。被膜処理装置100の複数の攪拌部材102は、母粒子と子粒子とを、軸状部材101の軸方向に関して一方向に送りながら攪拌処理する第一の攪拌部材102aと、第一の攪拌部材102aとは逆方向に送りながら攪拌処理する第二の攪拌部材102bとから形成されている。この被膜処理装置100に母粒子と子粒子とを投入して、第一の攪拌部材102aによる送りと第二の攪拌部材102bによる戻しとを繰り返しながら攪拌処理することにより乾式で被膜形成する。これによれば、上記実施形態について説明したように、溶剤や軟化補助液を使用することなく、一工程で、樹脂母粒子表面に母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子を製造することができる。
(態様B)
(態様A)において、乾式被膜処理装置100により被膜形成を行う母粒子と子粒子との混合エネルギーが0.20kwh/kg以上である。これによれば、上記実施形態で説明したように、母粒子と子粒子とに充分な高エネルギーを与えられ、安定して良好な被膜形成ができる。
(態様B)
(態様A)または(態様C)において、上記微小間隔をC[mm]、上記軸状部材の外径をD[mm]、上記ケーシングの内径をD[mm]とすると、 D/D≦2.0、 2.5≦D1/2/C≦10.0 を満たす。これによれば、上記実施形態で説明したように、母粒子と子粒子とに、充分な高エネルギーを与えられ、安定して良好な被膜形成ができる。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、ケーシング103内の雰囲気の温度は、母粒子のガラス転移温度Tgに対して、Tg−50℃以上、Tg−15℃以下とする。これによれば、上記実施形態で説明したように、安定して良好な被膜形成ができる。
(態様E)
(態様C)または(態様D)において、上記被膜形成処理の前に、母粒子と子粒子との混合エネルギーが0.15kwh/kg以下で予備攪拌処理をおこなう。これによれば、上記実施形態で説明したように、より安定して良好な被膜形成ができる。
(態様F)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、または(態様E)において、子粒子のガラス転移温度は、母粒子のガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+50℃以下であり、子粒子の軟化温度は、母粒子の軟化温度Tmに対して、Tm以上、Tm+50℃以下とする。これによれば、上記実施形態で説明したように、安定して良好な被膜形成ができる。また、樹脂粒子の低温定着性と保存安定性とを両立されるという、被膜材として機能を得ることができる。また、樹脂粒子の低温定着性と保存安定性とを両立されるという、被膜材として機能を得ることができる。
(態様G)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)または(態様F)において、上記母粒子は結晶性ポリエステルを含有し、更に離型剤を含有する。これによれば、上記実施形態で説明したように、樹脂粒子の低温定着性と保存安定性とを両立させやすく、また、ホットオフセットを発生させ難くすることができる。
(態様H)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、または(態様G)によって、子粒子を母粒子表面に乾式被膜処理した樹脂粒子を用いたトナーの製造方法である。これによれば、上記実施形態について説明したように、液体を使用することなく、環境保全性の良い、一工程で、樹脂母粒子表面に母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子からなるトナーを製造することができる。
(態様I)
(態様H)の製造方法により製造したトナーである。これにより、低温定着性と保存安定性とが両立できる。
【符号の説明】
【0092】
100 乾式被膜処理装置
101 軸状部材
102 攪拌部材
102a 第一の攪拌部材
102b 第二の攪拌部材
103 ケーシング
104 冷却ジャケット
105 軸受部
106 投入口
107 排出口
108 ガイド棒
109 ボス
110 排気管
111 フィルタ
112 駆動部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特許第4285289号公報
【特許文献2】特開2009−139588号公報
【特許文献3】特開2009−53318号公報
【特許文献4】特開2007−93637号公報
【特許文献5】特開2007−3840号公報
【特許文献6】特開2005−274964号公報
【特許文献7】特開2005−266565号公報
【特許文献8】特開2010−78995号公報
【特許文献9】特開2009−69351号公報
【特許文献10】特開2008−180938号公報
【特許文献11】特開2008−14999号公報
【特許文献12】特開2007−293161号公報
【特許文献13】特開2011−48307号公報
【特許文献14】特開2010−277000号公報
【特許文献15】特開2010−230733号公報
【特許文献16】特開2010−145755号公報
【特許文献17】特開2010−204215号公報
【特許文献18】特開2010−107600号公報
【特許文献19】特許4512657号公報
【特許文献20】特許3778267号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂を含有する母粒子の表面に、該母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子の製造方法であって、
回転駆動される軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられた複数の攪拌部材と、微小間隔を隔てて該複数の攪拌部材を覆う円筒状内周面を有するケーシングと、該ケーシング内の温度調整をおこなう温度調整手段とを備え、該複数の攪拌部材として、該母粒子と該子粒子とを該軸状部材の軸方向と略平行な一方向に送りながら攪拌処理する第一の攪拌部材と、該第一の攪拌部材とは逆方向に戻しながら攪拌処理する第二の攪拌部材とを有する攪拌装置を用い、該母粒子と該子粒子とを該第一の攪拌部材による送りと該第二の攪拌部材による戻しとを繰り返しながら攪拌処理することにより乾式で被膜形成することを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1の樹脂粒子の製造方法において、上記攪拌装置により被膜形成をおこなうよう上記母粒子と上記子粒子とを混合する混合エネルギーが0.20kwh/kg以上であることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の何れかの樹脂粒子の製造方法において、上記微小間隔をC[mm]、上記軸状部材の外径をD[mm]、上記ケーシングの内径をD[mm]とすると、式
/D≦2.0
2.5≦D1/2/C≦10.0
を満たすことを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2または3の何れかの樹脂粒子の製造方法において、上記温度調整手段により上記ケーシング内の雰囲気の温度を、上記母粒子のガラス転移温度Tgに対して、Tg−50℃以上、Tg−15℃以下に調整することを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の何れかの樹脂粒子の製造方法において、上記被膜形成処理の前に上記母粒子と上記子粒子との混合エネルギーが0.15kwh/kg以下で予備攪拌処理をおこなうことを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の何れかの樹脂粒子の製造方法において、上記子粒子のガラス転移温度は、上記母粒子のガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+50℃以下であり、該子粒子の軟化温度は、該母粒子の軟化温度Tmに対して、Tm以上、Tm+50℃以下であることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の何れかの樹脂粒子の製造方法において、上記母粒子は結晶性ポリエステルを含有し、更に離型剤を含有することを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する母粒子の表面に、該母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜した樹脂粒子を含有するトナーの製造方法であって、
回転駆動される軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられた複数の攪拌部材と、微小間隔を隔てて該複数の攪拌部材を覆う円筒状内周面を有するケーシングと、該ケーシング内の温度調整をおこなう温度調整手段とを備え、該複数の攪拌部材として、該母粒子と該子粒子とを該軸状部材の軸方向と略平行な一方向に送りながら攪拌処理する第一の攪拌部材と、該第一の攪拌部材とは逆方向に戻しながら攪拌処理する第二の攪拌部材とを有する攪拌装置を用い、該母粒子と該子粒子とを該第一の攪拌部材による送りと該第二の攪拌部材による戻しとを繰り返しながら攪拌処理することにより乾式で被膜形成された樹脂粒子を用いたことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項9】
少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する母粒子の表面に、該母粒子よりも小粒径の樹脂である子粒子を被膜したトナーであって、
回転駆動される軸状部材と、該軸状部材の表面に設けられた複数の攪拌部材と、微小間隔を隔てて該複数の攪拌部材を覆う円筒状内周面を有するケーシングと、該ケーシング内の温度調整をおこなう温度調整手段とを備え、該複数の攪拌部材として、該母粒子と該子粒子とを該軸状部材の軸方向と略平行な一方向に送りながら攪拌処理する第一の攪拌部材と、該第一の攪拌部材とは逆方向に戻しながら攪拌処理する第二の攪拌部材とを有する攪拌装置を用い、該母粒子と該子粒子とを該第一の攪拌部材による送りと該第二の攪拌部材による戻しとを繰り返しながら攪拌処理することにより乾式で被膜形成することにより製造された樹脂粒子を含有することを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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