説明

樹脂組成物およびその製造方法

【課題】複合材料化に伴う耐衝撃性低下を抑制し、実使用時において力学的バランスに優れた樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】短軸径100nm以下の金属酸化物粒子5〜30vol%と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂とを含む樹脂組成物の製造方法であって、低分子量成分を減量する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、低分子量成分含量の少ない樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂にナノサイズの無機フィラーを包含させたポリマーナノコンポジットは、樹脂に耐熱性、ガスシールド性、弾性率、表面平滑性、収縮等方性等、新たな物性を付与できるため、様々な工業分野からその技術が数多く開示されている(例えば、特許文献1〜3)。上記特許文献のうち、例えば、特許文献2では、粘土鉱物フィラーのモンモリロナイトの層間にナイロンの原料カプロラクタムを含浸させて重合させ、ナイロンと充填材(モンモリロナイト)のコンポジットを得る方法が開示されている。このコンポジットは十分な機械的物性の向上が見られ、工業的に有効な樹脂材料であるが、開示された方法では樹脂と無機フィラーの選択にかなりの限定があり、様々な樹脂に、無機粒子の特異な物性を付与できないでいた。
【0003】
そこで近年、粘土鉱物フィラーに代って、ナノサイズの無機フィラーとしてシリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物粒子、金、銀等の金属微細粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン、シルセスキオキサンなどの機能性ナノ有機材料が広く利用されるようになった。これらは無機フィラーがミクロンサイズの二次凝集体を形成することなく、均一に分散することで、ナノ領域となるとバルクとは異なった特異な物理、化学的性質を示すため、それらユニークな特性を材料に応用する研究が各方面にて行なわれている。例えば、特許文献4では、ナノサイズの針状チタニアの表面を酸化スズと酸化アンチモンで被覆し、導電性を高めたナノ粒子を作製し、これを塩化ビニルに含有させたコンポジットを得ることで帯電防止の樹脂材料を提供している。また、特許文献4の本文中には記述は無いものの、高アスペクト比を有する針状の粒子を用いることで弾性率、引張強度をはじめとする機械物性も大幅に向上されることが推察できる。
【0004】
また、高アスペクト比のアルミナ粒子を用いた例も報告されている(例えば、特許文献5)。当該特許文献5に開示される技術では、ナノオーダレベルの粒子を用い、これをシランカップリング剤で表面処理し分散性を向上し、フィルム等コンポジット材の表面性や弾性率、軟化温度の向上を図っている。しかしながら、シランカップリング剤処理ではその反応性の点から十分な分散性が期待できず、表面性の改善は期待できても透明性の点では未だ不十分である。
【0005】
上述したように、無機フィラーを用いた樹脂組成物について様々な検討がなされているにもかからわず、機械的物性を十分なレベルで実現することは未だ達成されていない。
【0006】
さらにナノサイズの無機フィラーは樹脂にユニークな特性を付与するが、思いがけないところで物性低下の原因ともなっている。例えば、上記特性を向上させるために無機フィラーの添加量を増大させた場合、樹脂組成物全体の延性が著しく低下し、力学的付加を加えた際の吸収エネルギーが低下し、特に衝撃強度が著しく低下する現象がある。フィラー添加による脆化の問題に対し、一般的にマクロサイズの無機フィラーではマトリクス樹脂との界面結合力を調整することで、脱接合または引き抜きを生じさせ、破壊エネルギーを損失させることで衝撃強度を保持する手法が採られる。ナノサイズの無機フィラーではその表面エネルギーに打ち勝ち、均一分散させるためにマトリクス樹脂と強い相互作用を有する表面改質剤の使用が必須であるため、界面結合力の調整による衝撃強度の付与は難しく、未だ具体的な報告例がない。
【0007】
粒子が均一に且つある濃度で分散することで初めて発現される高弾性、低熱膨張性、表面平滑性、透明性、可撓性の物性と、樹脂組成物として用いるために必要な靭性、延性、耐衝撃性と、いったトレードオフ関係にある性質を高いレベルで両立することが求められている。
【0008】
一方では、ポリカーボネートなどのポリマー自体の合成時におけるこのような低分子量成分を減量する技術が報告されている(例えば、特許文献6〜11)。これらは、高純度が要求される光学成形品用成形材料用途における低分子量体の低減や重合後のポリエステル中に含まれるオリゴマーの回収を目的とするものである。これらの特許文献には金属酸化物粒子との組み合わせについては何ら記載されていない。
【特許文献1】特許第2519045号明細書
【特許文献2】特公平7−47644号公報
【特許文献3】特開平10−30039号公報
【特許文献4】特公平6−17231号公報
【特許文献5】特開2004−149687号公報
【特許文献6】特開平4−306227号公報
【特許文献7】特開昭63−278929号公報
【特許文献8】特開平8−109280号公報え
【特許文献9】特開2005−162891号公報
【特許文献10】特開2002−3606号公報
【特許文献11】特開平7−316276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように樹脂にナノサイズの無機フィラーを包含させたポリマーナノコンポジットについては様々な検討がなされているが、これらの無機フィラーを用いた樹脂組成物では、機械物性を十分なレベルで実現することは未だできていない。
【0010】
また、上記特許文献6〜11から明らかであるように、従来は、ポリマー自体からの残留モノマーやオリゴマーの減量方法が記載されているのみであり、ポリマーナノコンポジットについてはなんら記載されておらず、粒子が均一に分散したポリマーナノコンポジットにおける低分子量成分の減量方法に関しての報告は未だなされていない。
【0011】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ナノサイズの金属酸化物粒子(フィラー)が均一分散し、透明性を有する樹脂組成物において、金属酸化物粒子の添加量の増加に伴う靭性、延性、耐衝撃性の低下を抑制し、実使用時において力学的バランスに優れた樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく金属酸化物粒子の樹脂への添加による物性低下の現象について鋭意検討を行なった結果、ポリマーナノコンポジットにおいて靱性や延性が低下する原因としては、金属酸化物粒子による剛化の他に、金属酸化物粒子を、特定の結合を有する樹脂中に添加すると、樹脂の分子鎖同士の絡み合い密度が低下し、低分子量成分が多く発生し、もしくは金属酸化物粒子の分散剤(表面処理剤)として使用する有機化合物の遊離により樹脂全体の分子量が低下することを見出した。また、このように低分子量成分を多く含んだまま、樹脂組成物を用いて成形すると、成形物は、樹脂の分子鎖同士の絡み合い密度が十分でないため、機械的物性、特に靭性、延性、耐衝撃性の低下が起こるのではないかと考えた。
【0013】
上記に加えて、本発明者らは、このように低分子量成分を多く含んだまま、樹脂組成物を、例えば、膜状に成形すると、得られた膜に硬質な物質の縞が多く存在する現象にも着目した。この現象についてさらに鋭意検討を行なった結果、低分子量成分は、金属酸化物と結合(架橋)して組成物中に存在しており、この結合(架橋)体は溶剤にはほとんど溶けないため、このように低分子量成分を多く含んだまま、樹脂組成物を用いて成形すると、得られた成形物にはこの結合(架橋)体が異物として存在して縞状に見えることが判明した。さらに、このような膜状成形物では、樹脂は柔らかい性質を有するのに対して、結合(架橋)体は硬い性質を有するため、両者の柔軟性の差が成形物の靭性の低下を引き起こし、例えば、窓等の透明性と靭性の双方が強く要求される分野では満足できる性能を発揮することができないことが判明した。
【0014】
このため、本発明者らは、上記靭性や延性などの諸物性の低下を抑制・防止する手段についてさらに鋭意検討を行なった結果、金属酸化物粒子と上記樹脂樹脂との樹脂組成物を溶融・混練した後で成形前に比べ、低分子量成分が多く発生することを見出した。このため、金属酸化物粒子と樹脂との樹脂組成物を溶融・混練した後、成形する前に、金属酸化物粒子の添加によって生じた低分子量成分を予め減量することによって、樹脂の分子量を確保でき、ゆえにこのような樹脂組成物を用いた成形品は十分な靭性及び延性を発揮することができることを見出した。
【0015】
上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、上記目的は、樹脂組成物に対して、5〜30vol%の短軸径100nm以下の金属酸化物粒子と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂とを含む樹脂組成物の製造方法であって、低分子量成分を減量する工程を含む、樹脂組成物の製造方法によって達成されうる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、金属酸化物粒子が均一分散した透明性を有する樹脂組成物において、金属酸化物粒子の添加量の増加に伴う靭性、延性、耐衝撃性の低下を抑制し、実使用時において力学的バランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第一は、樹脂組成物に対して、5〜30vol%の短軸径100nm以下の金属酸化物粒と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂とを含む樹脂組成物の製造方法であって、低分子量成分を減量する工程を含む、樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0019】
従来、ポリカーボネートや(メタ)アクリル樹脂等の樹脂にアルミナ、珪酸またはその塩、チタニア等の金属酸化物粒子(フィラー)を混合すると、耐衝撃性、弾性率、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、引張強度、熱膨張性、延性等の種々の特性が向上できるため、樹脂組成物に上記したような金属酸化物粒子をフィラーとして添加していた。しかし、このような特性の向上を図るあまり、金属酸化物粒子を過剰に添加すると、上記特性、特に靭性、延性や耐衝撃性が低下し、逆に、実使用時の力学的バランスに劣る樹脂組成物となってしまうという問題があった。
【0020】
これに対して、本発明の製造方法によれば、金属酸化物粒子とポリカーボネートや(メタ)アクリル樹脂等の樹脂との組成物から予め低分子量成分を減量した低分子量成分含量の低い組成物を成形すると、金属酸化物粒子の添加量を増加させた場合であっても、得られた成形物は、機械的特性、特に靭性、延性及び耐衝撃性の低下を引き起こす原因の一つであると考えられる樹脂の大幅な分子量の低下を避けることが出来、金属酸化物粒子による種々の特性の向上、特に、引張強度の向上、熱膨張性の低下が認められる。また、低分子量成分含量の低い組成物を成形して得られた成形物は、高弾性、低熱膨張性、表面平滑性、透明性、可撓性などを維持することができる。このような効果は、特に金属酸化物粒子と樹脂とを溶融混練した後でかつ成形前に、低分子量成分を減量することによって達成されうる。
【0021】
ここで、金属酸化物粒子の存在による物性低下の原因としては、樹脂中に低分子量成分が多く発生し、分子鎖同士の絡み合い密度が低下することが考えられる。さらに分子鎖同士の絡み合い密度の低下(樹脂の分子量の低下)は、主に以下のようにして起こることが推測される。なお、本発明は、下記推測によって限定されない。すなわち、アルミナ等の金属酸化物は吸着水や結晶水を極微量ではあるが含んでおり、この極微量の水分が高温(例えば200〜300℃)に加熱されると連続的に水蒸気となる。この水分は、通常の乾燥などの操作では外部に放出されず、混練や溶融工程などの高温時に初めて発生するものである。さらに、このように混練や溶融工程などで発生した水蒸気が存在すると、金属酸化物表面に存在する酸及び塩基点がポリカーボネートなどの樹脂の加水分解を触媒して、高分子鎖を切断するため、樹脂の分子量が大幅に低下して、これによりポリマーナノコンポジットにおける靱性や延性などが低下すると考えられる。また樹脂組成物中に分散剤を用いる場合には、分散剤(表面処理剤)のかかる高温での遊離に由来する低分子量成分の影響も考えられる。このため、本発明では、これらの原因となる低分子量成分を減量した樹脂組成物を用いた成形物は、低分子量成分の存在による靱性や延性の低下が起こらない。また、本発明に係る樹脂組成物を用いた成形物は、透明性を維持したまま、相当量の金属酸化物粒子が均一分散しているため、上記種々の特性に優れ、かつ靭性、延性や耐衝撃性の低下を有意に抑制することができ、実使用時においても力学的バランスに優れる。
【0022】
さらに、本発明の方法によれば、成形時には、樹脂組成物中に低分子量成分、ゆえに、低分子量成分と金属酸化物との結合(架橋)体がほとんど存在しないので、得られた成形物は、薄膜状であっても、縞模様は存在せず、また、樹脂と結合(架橋)体との柔軟性の相違による成形物の靭性低下も有意に抑制・防止できる。また、このようにして得られた成形物は、十分な透明性をも維持しうる。ゆえに、本発明の方法によって得られる樹脂組成物は、ガラスの代替材料として有用であり、自動車や建築物などの窓をはじめとして様々な用途に使用することにより、形状自由度の向上、軽量化、燃費向上などの様々な効果が期待できる。
【0023】
なお、本発明において、「低分子量成分」は、上述したように、その存在により成形物の靱性、延性、耐衝撃性などの低下を引き起こす原因成分であり、具体的には樹脂と金属酸化物粒子とを溶融混練する際に副生するオリゴマー(2〜10量体)、残留モノマー、ジオール化合物、分散剤(表面処理剤)、添加剤(主に酢酸)、触媒、その他分解生成物などである。
【0024】
以下、本発明その他の特徴及び利点について、発明を実施するための最良の形態に基づいて、発明の構成要件ごとに、詳細に説明する。
【0025】
1.金属酸化物粒子
本発明には目的の力学特性を得るために、マトリックスである樹脂(例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂)に対するフィラーとして、金属酸化物粒子を用いる。一般的に金属酸化物には活性な水酸基やルイス酸塩基活性を有する化学構造などの活性点が多く存在し、これらが原因となって高温を要する樹脂組成物の製造工程における樹脂の分子量の著しい低下が起こる。
【0026】
本発明において、金属酸化物粒子としては、マトリックスである樹脂に対してフィラーとして作用するものであれば特に制限されない。具体的には、酸化鉄(ヘマタイト)、酸化チタン(チタニア)、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化カルシウム(カルシア)、酸化アルミニウム(アルミナ、ベーマイト)、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素(シリカ)、タルク、およびカオリナイトなどが挙げられる。これらの金属酸化物粒子は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。この金属酸化物粒子のうち、機械的特性及び光学的特性を高い次元で両立させることを考慮すると、シリカ、カルシア、アルミナ、酸化鉄、チタニアが好ましく、中でも結晶性が良く、ナノサイズでありながら、アスペクト比の高い粒子を作ることができるという点で、アルミナが特に好ましい。この際、アルミナは、異なった結晶組成(α、γ、χ、η、δ、θ、κ、・・等)のいずれの組成のアルミナでもよく、また、ベーマイト等の水和物型(Al・nHO)のものも含むものとする。また、酸化鉄には、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(II,III)(Fe)、酸化鉄(III)(Fe)があるが、更にヘマタイト等の酸化鉄(III)(Fe)の鉱物形態やゲータイト、アカガネアイト、レピドクロサイト、フェリハイドライト等の鉄酸化・水酸化物(FeO(OH)等)の鉱物形態のものも含むものとする。同様に、他の金属酸化物粒子においても、異なった結晶組成のもの、水和物型のもの、鉱物形態のものなどを含むものとする。また、上記金属酸化物粒子は任意の割合で組み合わせて用いても良いし、また特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
上記金属酸化物粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは2種以上組合わせてあるいは適宜修飾して適用できる。特に金属酸化物粒子を、粒子同士の癒着、結合の起こらずに製造できる方法が好ましく、具体的には、水熱合成法、ゾルゲル法、逆ミセル法などの湿式合成法により得ることがより好ましい。一方、気相合成法、化学蒸着法、焼成処理により得られた粒子は粒子同士が癒着し、そのまま有機溶媒、樹脂に分散してしまうため所望の物性を得ることが難しくなる場合がある。
【0028】
また、上記の金属酸化物粒子として好適な酸化アルミニウムは、下記式(1)で表されるアルミナである。
【0029】
【化1】

【0030】
式中、nは、nは、0以上の整数である。この際、nが0のときは、酸化アルミニウムを示し、異なった結晶組成のα、γアルミナまたはβ、ρ、χ、ε、γ、κ、κ’、θ、η、δ、λ型のアルミナであり、好ましくは、α、γ、δ、θ型のアルミナである。なお、nが1のときは、ベーマイトを表す。さらに、nが1を越えて3未満である場合は、ベーマイトと非結晶構造のアルミナ水和物の混合物を示す。これは一般的に「疑ベーマイト」と呼ばれている。さらに、nが3以上では、非結晶構造のアルミナ水和物を示す。本発明のアルミナ粒子はこれらのうちから選ばれる少なくとも1つであるが、結晶性や粒子安定性の面や入手の容易さからベーマイト、αアルミナ、γアルミナのいずれかが特に好ましい。
【0031】
本発明において、金属酸化物粒子の形状や大きさは、短軸径(長さ)100nm以下であれば、特に制限されない。なお、金属酸化物粒子の短軸径(長さ)が100nmを超えると、樹脂組成物の透明性が低下するので好ましくない。これに対して、このような範囲であれば、本発明による効果が有意に奏され、樹脂組成物による透明性が確保され、また、成形物は熱膨張抑制、弾性、靭性等の力学的特性に優れる。
【0032】
また、金属酸化物粒子の形状は、特に制限されない。例えば、金属酸化物粒子は、球状のような等方性を示すものであってもよいが、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状、板状などの異方性を示すことが好ましい。金属酸化物粒子が異方性を示す場合には、金属酸化物粒子は、短軸径(長さ)が好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜20nm、さらにより好ましくは1〜10nm、最も好ましくは2〜6nmであり、長軸径(長さ)が20〜700nm、好ましくは100〜500nmであり、アスペクト比が5〜200、好ましくは20〜150であるような高異方性を示すことが特に好ましい。透明性を有する樹脂組成物中での金属酸化物粒子の光の散乱を考慮に入れ、熱膨張抑制や弾性率向上といった特性を向上させる場合、特に粒子サイズは短軸径(長さ)が6nm以下、特に2〜5nmであり、長軸径(長さ)が500nm以下、特に100〜400nmであることが好ましい。また、不定形粒子、たとえば粒子の前駆体となる水酸化物などのゲル状物質は、水を多量に含み、加水分解による自己縮合を招く場合がある。
【0033】
本明細書において、金属酸化物粒子の短軸径(長さ)、長軸径(長さ)及びアスペクト比[長軸径(長さ)/短軸径(長さ)]は、いずれも後述の実施例で記載した方法で測定した100個の粒子の平均値を意味する。金属酸化物粒子が柱状である場合を例にとると、図1Aに示すように、金属酸化物粒子11の長軸径(長さ)は、Lとして求められる。金属酸化物粒子11の短軸径(長さ)は、短軸方向の断面の長径Lおよび短径Lの平均値L=(L+L)/2として求められる。ここで、L≧Lであり、短軸方向の断面形状が円形の場合には、L=Lである。また、L≧Lであり、球状粒子の場合には、L=L(=L=L=粒子径)である。アスペクト比は、金属酸化物粒子の長軸径(長さ)と短軸径(長さ)との比(L/L)として求められる。なお、金属酸化物粒子が中空形状や海島形状の場合でも、図1Aの柱状の金属酸化物粒子の場合と同様に、図1Bに示すようにして、金属酸化物粒子の短軸径(長さ)、長軸径(長さ)及びアスペクト比を求めることができる。また、後述する金属酸化物粒子が中空形状や海島形状の場合の中空円筒もしくは中空角柱のサイズに関しても、中空円筒もしくは中空角柱の短軸の径Lは、短軸方向の中空断面の長径Lおよび短径Lの平均値(L+L)/2として求められる。中空円筒もしくは中空角柱の長さは、Lとして求められる。このような場合のアスペクト比も、L/Lをいう。中空円筒もしくは中空角柱の両端は、図1Bに示すように開口していてもよいし、いずれか一端または両端が閉じていてもよい。また、金属酸化物粒子がアルミナ粒子等の金属酸化物の中空粒子である場合には、金属酸化物粒子は、図1Bに示すように、粒子短軸の径(短軸長さL)の大きさに応じて、0.5nm〜9.5nmの径L(=(L+L)/2)であり、また長さLが粒子長軸径(長軸長さL)以下の5〜700nmの中空円筒を粒子内に有した中空粒子であることが好ましい。これによって、前記アルミナ粒子等の金属酸化物粒子の比重を低減することができる。
【0034】
なお、金属酸化物粒子のモル数は化学組成の一般式より求められる。例えば、アルミナ粒子を例にとれば、αアルミナ粒子は一般式:Alより式量は101.96となる。ベーマイト粒子の場合は例外的にAlO(OH)を式量に適用して75.98を式量とする。他の金属酸化物粒子のモル数に関しても同様に一般式より求めるものとし、ベーマイト粒子(AlO(OH))やゲータイト粒子(FeO(OH))のような金属の酸化・水酸化物の場合は、例外的に当該酸化・水酸化物の一般式を式量に適用して求めるものとする。
【0035】
上述した金属酸化物粒子の製造方法は、上記サイズのものが得られれば特に限定されず、水熱合成法やゾルゲル法など一般的な方法を用いることができる。
【0036】
前記金属酸化物粒子の樹脂組成物に対する配合量は、要求特性(例えば、剛性、耐熱性及び耐熱膨張性など)が得られるような量であれば特に制限されないが、得られる樹脂組成物に対し、金属酸化物粒子の総配合量が、5〜30vol%であり、10〜25vol%であることが好ましい。ここで、前記金属酸化物粒子の配合量が5vol%未満では、金属酸化物粒子を配合することにより奏される効果が少なく、得られる樹脂組成物の剛性、耐熱性及び耐熱膨張性などの物性の向上がほとんど認められない場合がある。また、前記金属酸化物粒子の配合量が30vol%を超えると、比重の増加が無視できなくなるばかりでなく、コスト面でも不利となり、樹脂組成物のコスト及び比重が増大してしまうという問題が生じる。また、前記金属酸化物粒子の含有量の増大に伴い、得られる樹脂組成物の粘度が増大し、成形性が悪くなる場合がある。
【0037】
2.樹脂
本発明の原料として用いる樹脂は、加水分解性の結合をもつものであり、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂であり、具体的にはエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂であれば特に限定しない。繰り返し単位構造中にエステル結合を有する樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル系樹脂、などが挙げられ、繰り返し単位構造中に炭酸エステル結合を有する樹脂としては、ポリカーボネート、環状ポリカーボネートなどが挙げられる。なかでも透明性、衝撃強度、引張強度、熱膨張性のバランスを考慮すると優れたポリカーボネートが好ましく、表面へのコーティング性やラミネート化し易さを考慮すると、メタクリル酸メチル樹脂が好ましい。ここで、本発明の原料として用いる樹脂では、上記樹脂が単独で使用されても、あるいは上記異なる種類の樹脂を2種以上混合して使用されてもよい。
【0038】
原料ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、界面重合法および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0039】
上記の二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどを挙げることができる。その他1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの二価の脂肪族アルコールを共重合することも可能である。これらのうち、成形性、機械的特性のバランスが良好である点から特にビスフェノールAが好ましい。
【0040】
上記のカーボネート前駆体としては、カーボネートエステル、カルボニルハライド、ハロホルメート等が使用され、具体的にはジフェニルカーボネート、ホスゲン、ジハロホルメートなどが挙げられる。これらのうち、ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0041】
上記二価フェノールと上記カーボネート前駆体を溶融エステル交換法によって反応させて原料ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また原料ポリカーボネートは三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0042】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる多官能性化合物の割合は、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。多官能性化合物の割合がポリカーボネート全量中、0.001モル%以上であれば熱安定性が向上することから好ましく、また1モル%以下であれば延性を顕著に低下させないことから好ましい。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。分岐構造の分岐ポリカーボネート量がポリカーボネート全量中、0.001モル%以上であれば熱安定性が向上することから好ましく、また1モル%以下であれば、延性を顕著に低下させないことから好ましい。なお、かかる割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0043】
更に芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを、本発明にかかる樹脂として使用してもよい。脂肪族の二官能性カルボン酸としては、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族の二官能性カルボン酸が挙げられる。かかる脂肪族の二官能性のカルボン酸は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。芳香族の二官能性カルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビス−(4−カルボキシ)−ジフェニル、ビス−(4−カルボキシフェニル)−エーテル、ビス−(4−カルボキシフェニル)−スルホン、ビス−(4−カルボキシフェニル)−カルボニル、ビス−(4−カルボキシフェニル)−メタン、ビス−(4−カルボキシフェニル)−ジクロロメタン、1,2−および1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)−エタン、1,2−および2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−プロパン、1,2−および2,2−ビス−(3−カルボキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、1,1−および2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ブタン、1,1−および2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ペンタン、3,3−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ヘプタン、2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)−ヘプタン;および脂肪族酸例えば蓚酸、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、セバチン酸、グルタール酸、アゼライン酸、スペリン酸等が挙げられる。かかる芳香族の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸及びテレフタル酸あるいはこれらの誘導体の混合物が好ましく挙げられる。
【0044】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のポリエステル系樹脂の使用も可能である。
【0045】
原料ポリカーボネートは、上述した各種二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有する分岐ポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、末端フェニル性ポリカーボネートなど各種のポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。更に下記に示す製造法の異なるポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
【0046】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃、好ましくは150〜310℃の範囲である。反応温度が120℃以上であれば、エステル交換反応の活性化エネルギーを得ることが可能となるため、反応が促進されることから好ましく、また350℃以下であればビスフェノールAの熱分解生成物で着色物質であるイソプロペニルフェノール誘導体の生成が抑制されることから好ましい。反応後期には系を1.33×10以下で1.33×10〜13.3Pa程度、好ましくは133〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応後期の系内圧力が1.33×10Pa以下であれば、副生成物であるフェノールが除去され、反応平衡が重合側に傾くため、高分子量化が促進されることから好ましい。また反応後期の系内圧力の下限値は特に制限されないが、13.3Pa以上であれば高真空状態を作り出すポンプが不要となるため、コスト低減が図れることになることから好ましい。ここで、反応後期とは、粘度平均分子量が5000g/mol以上となった状態をいうものとし、粘度、GPC測定などによりかかる減圧開始時期=反応後期になった状態を検知ないし感知することができる。反応時間は通常1〜4時間程度、好ましくは1〜2時間である。反応時間が1時間以上であれば、十分に重合反応が進行するため高分子量化が促進されることから好ましく、また4時間以下であれば、ビスフェノールAの熱分解生成物で着色物質であるイソプロペニルフェノール誘導体の生成が抑制されることから好ましい。
【0047】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0048】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。更にアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。重合触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。重合触媒の使用量が原料の二価フェノール1モルに対し、1×10−8当量以上であれば、触媒による活性化エネルギーの低減効果のため反応が促進されることから好ましく、また1×10−3当量以下であれば余剰分の触媒量を低減することで、ポリカーボネートとの接触分解を抑制できることから好ましい。
【0049】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。ここで、重縮反応の後期とは、粘度平均分子量が5000g/mol以上となった状態をいうものとし、粘度、GPC測定などによりかかる重縮反応の後期の状態を検知ないし感知することができる。また重縮反応の終了時は粘度平均分子量が13000g/mol以上となった状態をいうものとし、粘度、GPC測定などによりかかる重縮反応の終了時の状態を検知ないし感知することができる。重縮反応の終了後とは、上記重縮反応の終了時以降であれば特に制限されるものではないが、重縮反応の終了時から1時間以内に上記化合物を加えるのが望ましい。
【0050】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いないことが好ましい。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが挙げられる。失活剤を用いない理由としては、成形工程中における重合反応を促進させるためである。
【0051】
原料(メタ)アクリル樹脂は、下記に詳述されるような(メタ)アクリル樹脂系モノマーを重合あるいは共重合することによって製造される。この際、(メタ)アクリル樹脂系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で使用されてもあるいは2種以上を混合して使用されてもよい。得られる成形物の透明性、剛性及び硬度等のバランスを考慮すると、メチルメタクリレートを主成分とすることが好ましい。より好ましくは、メチルメタクリレートは、モノマー全量に対して、70〜100質量%の量で使用されることが好ましい。
【0052】
本発明に係る樹脂の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、本発明においては13,000以上、好ましくは13,000〜150,000の範囲が好適であり、より好ましくは15,000〜60,000の範囲である。樹脂の数平均分子量が13,000であれば、成形物は上記したような様々な特性を満足することができる。樹脂の数平均分子量が13,000未満であると強度などが低下し、更に得られる樹脂組成物の熱安定性が低下する場合がある。一方、樹脂の数平均分子量の上限値は特に制限されないが、150,000を超えるとフェニル性末端の濃度が不足し、成形工程中における重合反応が不十分になる。本明細書において、数平均分子量は、後述する実施例の測定方法を用いて算出する。
【0053】
3.分散剤(表面処理剤)
本発明において、金属酸化物粒子は、そのままの形態で樹脂に分散させてもよいが、金属酸化物粒子を樹脂中に均一分散させるためには、金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子表面に樹脂との親和性を向上させるための分散剤(表面処理剤)が結合した金属酸化物粒子複合体の形態をとることが好ましい。分散剤(表面処理剤)の例としては、特に限定されないが、金属酸化物粒子表面に化学的に結合する有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤はその分散効果が高く、特に好ましい。金属酸化物粒子に対する解膠能力は、有機スルホン酸が高く、特にp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が最も高い。有機リン化合物は特に限定されないが、金属酸化物粒子表面への反応性、化合物としての安定性、入手の容易さなどの理由から、モノフェニルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノブトキシエチルアシッドホスフェート、モノベンジルアシッドホスフェートが特に望ましい。シランカップリング剤は特に限定されないが、入手の容易さなどの理由から、メトキシトリメチルシラン、アセトキシトリメチルシラン、t−ブチルジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシランが特に望ましい。
【0054】
これらの有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。ここでいう「2種以上」とは、例えばブトキシエチルアシッドホスフェートとp−トルエンスルホン酸のように化学種の異なるものを組み合わせてもよいし、また例えば、下記式(2):
【0055】
【化2】

【0056】
式中、mは1または2である、
で表されるブチルアシッドホスフェートにおいて、式中のmが1のものと2のものを混合して用いてもよいことを意味している。
【0057】
なお、本発明の目的を達成することが出来る限りにおいて、前記有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤は、前記金属酸化物粒子に対して、共有結合、配位縮合、水素結合、静電気的な結合などのいずれの態様で結合していても良いし、前記有機スルホン酸、有機リン化合物の総てがこのような態様で結合している必要はなく、少なくとも一部が結合していればよい。
【0058】
本発明の金属酸化物粒子における有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤の含有量は特に制限されない。しかしながら、金属酸化物粒子の重量に対して0.1wt%以上が好ましく、さらに好ましくは0.2wt%以上、特に好ましくは0.2〜40wt%の範囲である。この上限値は樹脂組成物の熱安定性の点で好ましくは30wt%である。有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤の含有量が0.1wt%未満の場合には、後述する樹脂組成物において分散効果が十分に得られない恐れがある。尚、上記に規定する有機スルホン酸、有機リン化合物、シランカップリング剤の含有量は、これらを単独で用いる場合には、当該化合物の含有量を表わし、2種以上を併用して用いる場合には、それらすべての化合物の合計含有量を言うものとする。尚、有機スルホン酸、有機リン化合物の含有量は、TG−DTA、IR、NMR、GC−MSなどの装置を組み合わせて定性、定量することができる。シランカップリング剤の含有量は、後述するXPSで定性、定量することができる。
【0059】
4.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物の製造方法は、低分子量成分を減量する工程を必須の構成要件として含む以外は、特に制限されず、公知の方法がそのままあるいは適宜組合わせてあるいは適宜修飾して同様にして適用できる。以下、本発明の樹脂組成物の製造方法の好ましい実施形態を以下の5工程の製法を参照しながら説明する。しかしながら、本発明の方法は、下記工程に制限されるものではない。
【0060】
本発明に係る樹脂組成物は、下記5工程によって好適に作製される。
【0061】
第一工程として、金属酸化物粒子を所定の有機溶剤中に前記分散剤(表面処理剤)を用いて分散させた金属酸化物粒子複合体分散ゾルを調製する(直接、金属酸化物粒子を樹脂と溶融混練する場合はこの工程はない)。第二工程として、金属酸化物粒子、または金属酸化物粒子複合体分散ゾルもしくはその乾燥粉末と樹脂、もしくは樹脂を含む溶液を溶媒に溶解し、均一化後に溶媒を除去することで粗樹脂組成物を調製する(直接、金属酸化物粒子複合体の粉末を樹脂と溶融する場合はこの工程はない)。第三工程として、粗樹脂組成物などを溶融混練する。第四工程として、溶融混練を経た樹脂組成物に対し、抽出溶媒などにより低分子量成分を減量する。第五工程として、目的の形状にするための成形を行う。
【0062】
上記第一工程の目的として、このようなゾルを経ることで、金属酸化物粒子表面の分散剤(表面処理剤)による改質率を向上させることができる。また、ゾルに用いる溶媒に原料ポリカーボネートに対して溶解性のあるものを選択することで、樹脂組成物の構成原料を均一に混合することができ、金属酸化物粒子複合体の分散性の向上効果が得られる。なお、分散剤(表面処理剤)を使用せずに、直接樹脂と混合する場合にはこの工程は必要ではない。第一工程において使用される有機溶剤としては、金属酸化物粒子表面の改質を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、メチレンクロライドなどが挙げられる。
【0063】
第一工程において、原料の金属酸化物粒子は、水ゾルの状態から分散剤(表面処理剤)を用い、沸点差を利用して有機溶剤ゾルへ溶媒交換されて、金属酸化物粒子複合体分散ゾルが調製されることが好ましい。ここで、水ゾルの調製方法は特に制限されないが、好ましくは、金属酸化物粒子を水中に0.5〜10質量%程度の濃度になるように分散させて、水ゾルを調製することが好ましい。また、金属酸化物粒子の水ゾルは、市販品を使用してもよく、例えば、触媒化成工業株式会社製の水分散ベーマイト(商品名:Cataloid−AS−3;ベーマイトの長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、水分散ベーマイト中の固形分7wt%、比重1.05)などが好ましく使用できる。また、有機溶剤ゾルの調製時に用いられる有機溶剤は、特に制限されない。具体的には、シクロヘキサノン(沸点:約156℃)、1,4−ジオキサン(沸点:約101℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:約180℃)などなどの沸点100℃以上の高沸点溶剤;ならびにテトラヒドロフラン、クロロホルム、メチレンクロライド、1,3−ジオキソランなどが好ましく、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、o−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフランがより好ましい。有機溶剤を使用する場合の、有機溶剤の使用量は、十分有機溶剤ゾルへ溶媒交換できる量であれば特に限定されないが、金属酸化物粒子の濃度が好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%の範囲になるような量である。
【0064】
第二工程の目的として、金属酸化物粒子、または金属酸化物粒子複合体分散ゾルもしくはその乾燥粉末を適当な溶媒中に分散させることにより、前記第一工程と同様な金属酸化物粒子分散性や成形時の重合反応性の向上効果が挙げられる。
【0065】
第二工程において使用される溶媒は、後述の低分子量成分を減量する工程以外の使用工程において、目的の構成成分(金属酸化物粒子、または金属酸化物粒子複合体分散ゾルもしくはその乾燥粉末)に対して必要十分な溶解性を持つものであれば特に限定されない。例えば、ポリカーボネート等の樹脂、金属酸化物粒子または金属酸化物粒子複合体を溶解・分散するのに適する溶媒として、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、メチレンクロライド、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、o−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。また、第二工程での、溶媒の使用量は、上述したように目的の構成成分に対して必要十分に溶解できる量であれば特に限定されないが、樹脂及び金属酸化物粒子または金属酸化物粒子複合体の合計質量に対して、好ましくは500〜10000質量%、より好ましくは1000〜4000質量%である。なお、上記第一工程で使用された有機溶剤と、第二工程で使用される溶媒は、同じであってもあるいは異なるものであってもよく、前者の場合には、有機溶剤が目的の構成成分を溶解するのに十分量存在する場合には、特に本工程において溶媒を新たに添加する必要はなく、また、必要量のみを新たに添加してもよい。
【0066】
第二工程において、溶媒の除去方法は、特に制限されず、エバポレータや薄膜蒸発機を用いて減圧下で溶媒を留去する方法など、公知の溶媒の除去方法が同様にして適用できる。具体的には、ベントなどに備え付けた減圧装置を使用することや、冷却トラップ付き蒸留装置などを用いるなどにより、溶媒を除去できる。ここで、溶媒除去(留去)後、さらに溶媒を完全に除去することを目的として、減圧下(好ましくは、50mmHg以下)で100〜200℃で溶媒をさらに除去してもよい。
【0067】
第三工程の目的は、上述の粗樹脂組成物の状態から、溶融混練を経ることで、金属酸化物粒子の分散性が向上することが挙げられる。混練機は、二軸押出成形機、真空微量混練押出機、ラボプラストミル等を用いることができ、前記金属酸化物粒子複合体の種類などにより適宜選択する。
【0068】
第三工程において、溶融混練する際の温度としては、使用する樹脂の溶融温度以上であれば特に限定されないが、混練時の樹脂の粘性(流動性)や熱劣化(熱ストレス)などを考慮すると、使用する樹脂の溶融(軟化)温度よりも10〜100℃、より好ましくは10〜50℃ほど高い温度で、粗樹脂組成物を溶融混練することが好ましい。
【0069】
第四工程の目的は、第三工程にて得られた低分子量成分を含む樹脂組成物から低分子量成分を減量することである。第三工程にて低分子量成分を減量する方法としては、特に制限されないが、例えば、(ア)第三工程にて得られた低分子量成分を含む樹脂組成物に対して、低分子量成分の抽出溶媒を用いて抽出減量を行なう方法;(イ)第三工程にて得られた低分子量成分を含む樹脂組成物を良溶媒に溶解した後、貧溶媒を添加することにより低分子量成分を減量する方法;(ウ)超臨界二酸化炭素を用いて抽出減量を行うなどの方法が挙げられる。この際、上記(ア)及び(イ)の方法が好ましく、上記(ア)の方法が特に好ましい。ここで、上記(ア)〜(ウ)の工程は、単独で使用されてももしくは2種以上を組合わせて使用されても、または上記いずれかの工程もしくは2種以上の工程の組み合わせを繰り返し行なってもよい。また、第三工程による低分子量成分減量工程後の低分子量成分の濃度は、当該減量工程前の低分子量成分及び金属酸化物粒子以外の樹脂成分に対して、好ましくは0.1〜5wt%、より好ましくは0.1〜1wt%の範囲内である。ここで、低分子量成分の濃度が0.1より低いと成形性が顕著に低下する可能性があり、5wt%より高いと抽出が十分ではないため、目的の物性を得られない可能性がある。
【0070】
まず、上記(ア)の方法について説明する。この際用いる抽出溶媒としては、樹脂組成物中から低分子量成分のみを減量できるものであれば、特に制限されず、各種のものを用いることができる。好ましくは、樹脂への低い溶解性および低分子量成分への溶解性を有する、より好ましくは樹脂の溶解性は低くかつ低分子量成分への溶解性は高い溶媒が使用される。このような抽出溶媒としては、例えば、炭化水素、アルカン、脂肪族ケトン、塩素系炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族エステル、二硫化炭素、アルコール、水などが挙げられる。これらの抽出溶媒は、単独で使用されてもあるいはこれらの2種以上の混合物の形で用いてもよい。これらのうち、炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられ;アルカンとしては好ましくは炭素数5〜8のアルカンであり、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、などが挙げられ;脂肪族ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、3−ペンタノン等の炭素数4以下の脂肪族ケトンなどが挙げられ;塩素系炭化水素としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、などが挙げられ;脂肪族エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、などが挙げられ;脂肪族エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の炭素数4以下の脂肪族エステルなどが挙げられ;アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の炭素数4以下のアルコールなどが挙げられ;さらに、水としては、水道水、蒸留水、純水、イオン交換水、などが挙げられる。これらのうち、水、炭素数4以下のアルコール、炭素数4以下の脂肪族ケトン、炭素数4以下の脂肪族エステル、炭素数5〜8のアルカンが好ましく、純水、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、ヘプタン、及びアセトンが好ましく、アセトン、メチルエチルケトンがより好ましい。特に、アセトンは、樹脂成分、金属酸化物粒子成分とも溶解せず、樹脂成分のみを膨潤させる特長を持ち、最も抽出効率に優れているため特に好ましい。これらの抽出溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合溶媒の形態で使用されてもよいが、回収の手間などを考慮すると、単独で使用されることが好ましい。抽出溶媒と樹脂組成物との浴比(樹脂組成物に対する抽出溶媒の重量比)は任意の量で問題ないが、樹脂組成物に対する抽出溶媒の重量比が、通常、1.0〜3.0、より好ましくは2.0〜3.0となるような範囲が好ましい。浴比が3.0より大きいと、処理設備が過大になったりコストアップに繋がる場合があり、また浴比が1.0より小さいと低分子量成分の減量に時間がかかったり、減量が不十分となる場合がある。ただし樹脂組成物の比表面積や抽出時間により抽出量が変わるためこの限りではない。
【0071】
抽出(洗浄)温度は、特に制限されず、使用する抽出溶媒や樹脂の種類などによっても異なるが、通常10〜55℃の範囲内で設定され、抽出時間においても、3〜30時間の範囲内で設定される。
【0072】
このような抽出によって、溶融後の樹脂中の低分子量成分を大幅に減量(低減)することができる。なお、本明細書において、「低分子量成分を減量」あるいは「低分子量成分を低減」とは、低分子量成分量を減少させることに加えて、低分子量成分量を全く存在しないようにする(即ち、0にする)ことをも包含する。本発明における低分子量成分とは、分子量が通常150〜3000の有機化合物である。抽出溶媒側に低分子量成分が溶解しているため、抽出後は、この抽出液を、濾過フィルターなどを用いて溶液のみを除去して、残渣を、真空乾燥機、熱風乾燥機等の乾燥機を用いて、50〜140℃、より好ましくは60〜120℃の温度で、0.001〜0.1Mpa、より好ましくは0.001〜0.01Mpaの減圧下で、1〜12時間、より好ましくは1〜6時間、乾燥することによって、低分子量成分含量の少ないまたは低分子成分を含まない樹脂(樹脂組成物)を容易にかつ効率よく製造することができる。抽出後の低分子量成分の濃度は、抽出前の低分子量成分及び金属酸化物粒子以外の樹脂成分に対して、好ましくは0.1〜5wt%、より好ましくは0.1〜2wt%の範囲内である。低分子量成分の濃度が0.1より低いと成形性が顕著に低下する可能性があり、5wt%より高いと抽出が十分ではないため、目的の物性を得られない可能性がある。ここで、「低分子量成分及び金属酸化物粒子以外の樹脂成分」とは、本発明に係る樹脂組成物から低分子量成分及び金属酸化物粒子を除いた部分であり、例えば、樹脂、分散剤(表面処理剤)などを含む。本明細書における「低分子量成分及び金属酸化物粒子以外の樹脂成分に対する、低分子量成分の量」は、下記実施例(5)に記載される方法によって測定された値を意味する。
【0073】
または、上記(イ)に記載されるように、溶融混練工程を経た低分子量成分を含む樹脂組成物を良溶媒に溶解した後、貧溶媒を添加することにより低分子量成分を減量/分離してもよい。ここでは、良溶媒は、低分子量成分を含む樹脂組成物全体を溶解し、その後、貧溶媒を添加すると、低分子量成分は溶解したままである一方、樹脂組成物は沈殿する。上記(イ)の工程において、良溶媒としては、溶融混練工程を経た樹脂組成物全体を良好に溶解できるものであれば特に制限されないが、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、o−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、メチレンクロライド、1,3−ジオキソラン、などが挙げられる。これらのうち、メチレンクロライド、テトラヒドロフランが好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。また、ここで用いられる貧溶媒としては、低分子量成分は溶解させたまま樹脂組成物を沈殿できるものであれば特に限定されないが、金属酸化物粒子複合体が樹脂組成物から顕著に流出しないものであることが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、n−オクタン、ヘプタン、ヘキサン、水、40〜100℃の温水等が挙げられる。これらのうち、ヘプタン、メタノールが好ましく、ヘプタンがより好ましい。
【0074】
上記方法は、貧溶媒の添加により、有機溶媒に含まれる低分子量成分を析出させることができるため、薄膜蒸発機等の設備が不要である。また、加熱操作の際、貧溶媒を添加しない場合と比較して低い温度で有機溶媒を除去することができ、プロセス面やコスト面で有利である。
【0075】
ここで、良溶媒の添加量は、溶融工程を経た樹脂組成物を良好に溶解できる量であれば特に制限されないが、樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは1000〜10000質量%、より好ましくは1500〜4000質量%である。また、貧溶媒の添加量は、低分子量成分は溶解したまま樹脂組成物を分離/析出できる量であれば特に制限されないが、貧溶媒の質量に対して、好ましくは100〜1000質量%、より好ましくは200〜500質量%である。
【0076】
このような上記(イ)の工程によって、溶融後の樹脂中の低分子量成分を大幅に減量((低減)することができる。貧溶媒側に低分子量成分が溶解しているため、貧溶媒添加後は、この混合液を、濾過フィルターなどを用いて溶液のみを除去して、残渣を、真空乾燥機、熱風乾燥機等の乾燥機を用いて、50〜140℃、より好ましくは60〜120℃の温度で、0.001〜0.1Mpa、より好ましくは0.001〜0.01Mpaの減圧下で、1〜12時間、より好ましくは1〜6時間、乾燥することによって、低分子量成分含量の少ないまたは低分子成分を含まない樹脂(樹脂組成物)を容易にかつ効率よく製造することができる。(イ)工程後の低分子量成分の濃度は、(イ)工程前の低分子量成分及び金属酸化物粒子以外の樹脂成分に対して、好ましくは0.1〜5wt%、より好ましくは0.1〜3wt%の範囲内である。低分子量成分の濃度が0.1より低いと成形性が顕著に低下する可能性があり、5wt%より高いと抽出が十分ではないため、目的の物性を得られない可能性がある。
【0077】
上記第四工程後、有機溶媒や抽出溶媒を含有する樹脂組成物を成形する前に、50〜150℃、より好ましくは100〜140℃程度の比較的高温にて真空乾燥を行う。これは樹脂の成形前に通常実施する乾燥を強化したもので、水分とともに残存溶媒を効率的に除去することが出来る。100℃より低温では水分や溶媒の除去に不十分である可能性があり、140℃を超える温度では樹脂の結晶部が溶融し、ペレットや顆粒形状を保持できなくなり、成形が困難となる可能性がある。
【0078】
第五工程の目的は樹脂組成物を融点以上の温度にて任意の形状に成形することである。目的とする部品形状や求められる性能によって成形法は適宜選択することが出来る。例えば、射出成形、押出成形、インジェクションプレス、熱プレス、ブロー成形などが挙げられる。
【0079】
本発明に係る樹脂組成物は必要に応じて、例えば、相溶化剤、酸化防止剤及び熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、チオエーテル、及びこれらの置換体及びその組み合わせを含む)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、べンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、滑剤、離型剤(例えばシリコン樹脂、モンタン酸及びその塩、ステアリン酸及びその塩、ステアリルアルコール、ステアリルアミド等)、染料(例えばニトロシン等)、顔科(例えば硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、添加剤添着液(例えばシリコンオイル等)、結晶核剤(例えばタルク、カオリン等)、及び触媒(例えば金属、有機金属錯体)などを単独又は適宜組み合わせて添加することができ、さらに他の樹脂と任意の比率でブレンドしてもよい。
【0080】
本発明の方法によって製造される樹脂組成物は、靱性、延性、耐衝撃性などの低下を引き起こす原因である低分子量成分をほとんど含まないまたは全く含まない。このため、当該樹脂組成物を用いた成形物は、優れた靭性、延性及び耐衝撃性を発揮でき、また、金属酸化物粒子の存在により、種々の特性、特に、引張強度、熱膨張性などの向上が認められる。さらに、得られた成形物は、低分子量成分と金属酸化物との結合(架橋)体がほとんど存在しないので、十分な透明性を有していると同時に、高弾性、低熱膨張性、表面平滑性、可撓性などをも有している。したがって、本発明の方法によって得られる樹脂組成物は、種々の用途に有用であり、例えば、その透明性により、自動車や建築物等のガラスなど、様々な分野におけるガラスの代替材料として有用である。特に、本発明の方法によって得られる樹脂組成物を自動車の窓ガラス等の自動車部品に適用される場合には、安全性が向上する上、軽量化、複雑な形状を有する部材の製造が有意に達成できて、燃費向上、意匠性向上などの様々な効果が期待できる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例および比較例により本発明の実施の形態をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において採用した分析方法および分析機器は下記の通りである。
【0082】
(1) 粒子形状、粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)にて、粒子形状を観察した。
【0083】
<観察方法1(粒子形状)>
試料を純水(2段蒸留水)にて希釈後、超音波洗浄器にて15分間かけた。その後銅メッシュ上の親水処理済カーボン被覆コロジオン膜に試料を塗布し、乾燥させ観察試料を準備した。透過型電子顕微鏡にてその試料の電子顕微鏡像を120KV、70mA、10万倍にて撮影して、観察した。
【0084】
<観察方法2(樹脂組成物中の二次凝集)>
成形後の試験片の一部をウルトラミクロトームを用い超薄切片を作成した。透過型電子顕微鏡にてその試料の電子顕微鏡像を200kV、10万倍にて撮影して、観察した。
【0085】
<観察方法1、2の共通の条件>
・TEM用銅メッシュ:マイクログリット150−Bメッシュ、カーボン補強済み 応研商事株式会社
・透過型電子顕徹鏡:JEOLJEM−1200EXII 日本電子株式会社
<観察方法1(粒子形状)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて粒子径を測定した。短軸径、長軸径、厚さ、一辺の長さ共にそれぞれ無作為に100個体選び、測定しその平均値とした。尚、粒子の長軸に垂直方向の断面形状に関する寸法は10万倍拡大のTEM画像中にて画像面に対して長軸が垂直の位置関係にある粒子(前処理のミクロトームにより、粒子が切断されて断面構造がわかるもの)を無作為に10個体選び、測定しその平均値とした。
【0086】
ソフト名:Scion Image for Whindows(登録商標)Scion corp.
<観察方法2(樹脂組成物中の二次凝集)>
透過型電子顕微鏡にて撮影した写真を市販のスキャナーで電子データとして取り込み、市販のパソコン上で長さを測るソフトを用いて二次凝集径を測定した。1.5μm四方の範囲内にて短軸方向に100nm以上の凝集径を持つものの有無を測定した。
【0087】
ソフト名:Scion Image for Whindows(登録商標)Scion corp.
(2) 金属酸化物粒子及び粒子表面改質量の定性、定量
TG−DTA、NMRを用いて行なった。
【0088】
<分析条件>
TG−DTA:セイコーインスツルメンツ(株)製TG−DTA20にて、室温〜900℃、昇温速度10℃/分の条件で灰分を測定した。
【0089】
NMR:日本電子(株)製JNMLA−400にて、H、13Cスペクトルを測定し、定性した。測定溶媒として重クロロホルムを用いた。
【0090】
(3) 機械的物性、光学的物性測定
得られた樹脂組成物を乾燥して粒状にし、加熱プレス成形して厚さ4mmの試験片フィルムを得る。得られたシートについて曇価、破断伸度、曲げ弾性率、熱線膨張係数、IZOD衝撃強度を測定した。力学試験に関しては、下記のとおりである。
【0091】
・曇価は、へーズメーター(村上色彩研究所製 HM−65)で計測した。
【0092】
・曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠し、オートグラフ(島津製作所(株)製 DSC−10T)で計測した。
【0093】
・破断伸度は、引張試験機(インストロン(株)製デジタル材料試験機5881型)を用いて、JIS K7161準拠し、試験速度1mm/min(±20%)にて測定した。
【0094】
・熱線膨張係数は、熱機械測定装置(セイコー電子工業(株)製 TMA120C)で計測した。
【0095】
・IZOD衝撃強度は、JIS K7110に準拠し、IZOD衝撃試験装置(安田精機社製 95−LFR)で切欠き入り、23℃にて測定した。
【0096】
(4) 分子量測定
得られた樹脂組成物を乾燥して粒状にし、加熱プレス成形したものを測定試料として、20℃のクロロホルムに溶解し、0.25wt%の溶液を作成した。本溶液を0.5μmフィルターでろ過した溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPC)に供試し、分子量を測定した。測定条件はトーソー(株)製TOSOシステム8000、カラムPL GEL mixd−D×2本、流速1ml/min、UV(254nm)検出、移動相クロロホルム、注入量200μlにて行った。平均分子量の算出は、標準ポリスチレンの検量線から行った。
【0097】
(5) 低分子量成分の定量
抽出後の樹脂組成物(ペレット形状)を乾燥して粒状にしたものを測定試料として、20℃のアセトンに24時間浸漬し、5wt%の溶液を作製した。本溶液を0.5μm フィルターでろ過した溶液を乾燥させ、重量を測定した。この結果と上述の金属酸化物粒子灰分の値から、低分子量成分及び金属酸化物粒子以外の樹脂成分に対しての低分子量成分の濃度を算出した。
【0098】
(6) 粒子の合成
針状ベーマイト粒子の合成
機械攪拌機を備えたテフロン製ビーカーに塩化アルミニウム六水和物(2.0M,40ml,25℃)を入れ、恒温槽で10℃に保ちつつ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.10M,40ml,25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH=7.08)。溶液をテフロンライナーを備えたオートクレーブに代え密栓し、オーブンで120℃、24時間経時させた(第1の熱処理)。第1の熱処理の終了後、前記オートクレーブをオイルバスヘ移し、180℃、30分間加熱した(第2の熱処理)。第2の熱処理終了後、前記オートクレーブを流水へ入れ、急速冷却(約10℃)をした(第3の熱処理)。第3の熱処理終了後、前記オートクレーブを再びオーブンヘ入れ150℃で、1日加熱を続けた(第4の熱処理)。その後、前記オートクレーブを流水で冷やし、遠心分離(30000rpm,30min)で上澄み除去後、遠心水洗3回、水メタノール混合溶液(体積比 水:メタノール、0.5:9.5)遠心洗浄を1回行った。その後、凍結乾燥機を用いて乾燥させることにより無色結晶(A)を得た。この無色結晶(A)はX線回折の結果、針状ベーマイトであることが判明した。また、TEMを用いて粒子のサイズを調べたところ、長軸径(長さ)125±13nm、短軸径(長さ)5.2±0.6nm、アスペクト比が約24の針状であることが判明した。
【0099】
(7) 金属酸化物粒子複合体分散溶液の合成
針状ベーマイト粒子複合体分散溶液(B):実施例1〜4、比較例2、比較例4の原料1,3−ジオキソランゾル
上記(6)にて得た針状ベーマイト粒子(A)を1,3−ジオキソラン(和光純薬工業株式会社製)に添加し、粒子5wt%の分散溶液としたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけた。そこヘパラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)を粒子重量に対して15wt%の割合で添加し、よく攪拌した後、超音波分散機に90分間かけた。その後、得られた溶液をさらに高圧乳化装置で50MPaの圧力で処理することにより、1,3−ジオキソランに分散した針状ベーマイト粒子複合体分散溶液(B)を得ることができた。また、前記分散溶液を濃縮、乾燥し、TG−DTAを用いて粒子上に吸着している分散剤(表面処理剤)量を確認すると、粒子重量に対して14wt%であった。
【0100】
ガラス繊維分散液(C):比較例3、比較例4の原料溶液
サンゴバン・セラミック・マテリアルズ株式会社製 ガラス繊維サーフェストランドREV4(直径13μm、長さ70μm)を1,3−ジオキソランに添加し、粒子5wt%の分散溶液としたものをよく攪拌した後、超音波分散機に40分間かけ、ガラス繊維分散液(C)を得た。この分散液は懸濁状態であった。
【0101】
(8) 粗樹脂組成物の合成
針状ベーマイト粒子複合体の粗樹脂組成物(D):実施例1、実施例2、比較例2の粗樹脂組成物
針状ベーマイト粒子複合体分散溶液(B)172gにポリカーボネート(株式会社三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバレックス7030A)23.3gを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧し、1,3−ジオキソランを留去し、粗樹脂組成物(D)を得た。
【0102】
針状ベーマイト粒子複合体の粗樹脂組成物(E):実施例3、実施例4、比較例6の粗樹脂組成物
針状ベーマイト粒子複合体分散溶液(B)172gにアクリル(三菱レイヨン株式会社製アクリペットV001)23.3gを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧し、1,3−ジオキソランを留去し、粗樹脂組成物(E)を得た。
【0103】
粗樹脂組成物(F):比較例1の粗樹脂組成物
1,3−ジオキソラン200gにポリカーボネート(株式会社三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバレックス7030A)23.3gを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧し、1,3−ジオキソランを留去し、粗樹脂組成物(F)を得た。
【0104】
粗樹脂組成物(G):比較例5の粗樹脂組成物
1,3−ジオキソラン200gにアクリル(三菱レイヨン株式会社製アクリペットV001)23.3gを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧し、1,3−ジオキソランを留去し、粗樹脂組成物(G)を得た。
【0105】
ガラス繊維複合体の粗樹脂組成物(H):比較例3、比較例4の粗樹脂組成物
ガラス繊維分散液(C)172gにポリカーボネート(株式会社三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバレックス7030A)23.3gを加え、エバポレータにて、1.3×10−3MPa、60℃、2.5時間減圧し、1,3−ジオキソランを留去し、粗樹脂組成物(H)を得た。
【0106】
(9) 粗樹脂組成物の混練
混練済樹脂組成物(I)、(J)、(K)、(L)、(M):全ての試料の混練済樹脂組成物
得られた粗樹脂組成物(D)、(E)、(F)、(G)、(H)を乾燥して粒状にし、これを真空微量混練押出機(井元製作所製、IMC−1170B型)を用いて溶融混練した。混練条件は真空チャンバー内0.01MPa以下の減圧度、炉内及びローター温度250℃、ローター回転速度15rpmで10分間行い、それぞれ樹脂組成物(I)、(J)、(K)、(L)、(M)を得た。
【0107】
(10) 混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形
実施例1:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(N)
樹脂組成物(I)を20℃、60gのアセトン中に24時間浸漬し、ろ過フィルターにて溶液のみを除去し、真空乾燥機中180℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、実施例1の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0108】
実施例2:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(O)
樹脂組成物(I)を20℃、300gのクロロホルムで溶解し、これにヘプタンを800g加えて樹脂組成物を再沈殿させた。ろ過フィルターにて溶液のみを除去し、真空乾燥機中180℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、実施例2の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0109】
実施例3:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(P)
樹脂組成物(J)を20℃、60gのアセトン中に24時間浸漬し、ろ過フィルターにて溶液のみを除去し、真空乾燥機中120℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、実施例1の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0110】
実施例4:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(Q)
樹脂組成物(J)を20℃、300gのクロロホルムで溶解し、これにヘプタンを800g加えて樹脂組成物を再沈殿させた。ろ過フィルターにて溶液のみを除去し、真空乾燥機中120℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、実施例2の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0111】
比較例1混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(R)
樹脂組成物(K)を真空乾燥機中120℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、比較例1の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0112】
比較例2:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(S)
樹脂組成物(I)を真空乾燥機中120℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、比較例2の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0113】
比較例3:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(T)
樹脂組成物(M)を20℃、60gのアセトン中に24時間浸漬し、ろ過フィルターにて溶液のみを除去し、真空乾燥機中180℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、比較例3の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0114】
比較例4:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(U)
樹脂組成物(M)を真空乾燥機中120℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、比較例4の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0115】
比較例5:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(V)
樹脂組成物(L)を真空乾燥機中120℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、比較例5の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0116】
比較例6:混練済樹脂組成物の溶媒抽出、成形品(W)
樹脂組成物(J)を真空乾燥機中120℃、0.01MPaにて12時間乾燥した。得られた樹脂組成物をプレスにて4mm厚のシート状に成形し、比較例6の試料を得た。この試料を上記の機械的物性、光学的物性測定、分子量測定に用いた。
【0117】
(評価結果)
各実施例、比較例の評価結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の金属酸化物粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)の取り方を模式的に表した概略図である。このうち、図1Aは、異方性を示す中実粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)の取り方を模式的に表した概略図である。図1Bは、異方性を示す中空粒子の短軸径(長さ)及び短軸径(長さ)、中空円筒もしくは中空角柱の長さ及び短軸の径の取り方を模式的に表した概略図である。
【符号の説明】
【0120】
11 金属酸化物粒子、
L1 金属酸化物粒子の長軸径(長さ)、
L2 金属酸化物粒子の短軸径(長さ)。
【0121】
L3 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の長さ、
L4 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸の径、
La 金属酸化物粒子の短軸方向の断面の長径、
Lb 金属酸化物粒子の短軸方向の断面の短径、
La 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸方向の中空断面の長径、
Lb 金属酸化物粒子の中空円筒もしくは中空角柱の短軸方向の中空断面の短径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短軸径100nm以下の金属酸化物粒子5〜30vol%と、繰り返し単位構造中にエステル結合および炭酸エステル結合の少なくとも一方を有する樹脂とを含む樹脂組成物の製造方法であって、低分子量成分を減量する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記低分子量成分を減量する工程後の低分子量成分の量が、減量する工程前の低分子量成分および金属酸化物粒子以外の樹脂成分に対して0.1〜5wt%である、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記低分子量成分を減量する工程は、溶融工程を経た樹脂組成物に対して、抽出溶媒による低分子量成分を抽出減量することを有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記抽出溶媒は、樹脂への低い溶解性および低分子量成分への溶解性を有する、請求項3に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
抽出溶媒は、水、炭素数4以下のアルコール、炭素数4以下の脂肪族ケトン、炭素数4以下の脂肪族エステル、炭素数5〜8のアルカンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項3または4に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記低分子量成分を減量する工程は、溶融工程を経た樹脂組成物を良溶媒に溶解した後、貧溶媒を添加することにより低分子量成分を減量することを有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記良溶媒は、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、o−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、メチレンクロライド、および1,3−ジオキソランからなる群より選択される少なくとも一種であり、前記貧溶媒は、メタノール、エタノール、ブタノール、n−オクタン、ヘプタン、および水からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項6に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂はポリカーボネートおよび(メタ)アクリル樹脂の少なくとも一方である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物粒子は、酸化鉄、酸化チタン、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、タルク、およびカオリナイトから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物の粒子を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記酸化アルミニウムは、下記式(1):
【化1】

ただし、nは、0以上の整数である、
で表されるα、γ、δ、θ型のアルミナである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法によって製造される樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−62492(P2009−62492A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233262(P2007−233262)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】