説明

樹脂組成物および半導電性部材

【課題】 ドーパントを含む場合であっても経時安定性に優れた樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明は、耐熱性樹脂またはその前駆体と、オリゴアニリンとを含む樹脂組成物、および、耐熱性樹脂とオリゴアニリンとを含む半導電性部材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および半導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性材料と樹脂とを含む半導電性部材が知られている。係る導電性材料としては、カーボンブラック、グラファイト、金属粒子等の無機材料に加えて、樹脂との混合が容易であることから、ポリアニリン等の有機材料の使用も検討されている。例えば、溶媒中にポリアミド酸と脱ドープしたポリアニリンとドーパントとを混合および分散させて得られる樹脂溶液から半導電性部材が形成され得る。しかしながら、ポリアニリンを含む樹脂溶液は、ポリアニリンの凝集によって、短時間でゲル化してしまうという問題がある。これに対し、ゲル化を防ぐために、ポリアミド酸と脱ドープしたポリアニリンとを混合した樹脂溶液からポリイミドフィルムを作成し、得られたフィルムをドーパント溶液に浸漬することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、該方法には導電化処理が煩雑である等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ドーパントを含む場合であっても経時安定性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、樹脂組成物が提供される。該樹脂組成物は、耐熱性樹脂またはその前駆体と、オリゴアニリンとを含む。
好ましい実施形態においては、上記樹脂組成物は、ドーパントをさらに含む。
好ましい実施形態においては、上記耐熱性樹脂が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、およびポリフェニレンサルフィド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂である。
好ましい実施形態においては、上記オリゴアニリンが4量体アニリンである。
本発明の別の局面によれば、半導電性部材が提供される。該半導電性部材は、耐熱性樹脂とオリゴアニリンとを含む。
好ましい実施形態においては、上記半導電性部材の体積抵抗率が1×10〜1×1015Ω・cmである。
好ましい実施形態においては、上記半導電性部材の表面抵抗率が1×10〜1×1014Ω/□である。
好ましい実施形態においては、上記耐熱性樹脂が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、およびポリフェニレンサルフィド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂である。
好ましい実施形態においては、上記オリゴアニリンが4量体アニリンである。
好ましい実施形態においては、上記半導電性部材は、フィルムまたはシームレスベルトである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、導電性材料として、従来用いられてきたポリアニリンよりも低分子量のオリゴアニリンを用いるので、ドーパントを含む場合であっても経時安定性に優れ、かつ、導電性材料の分散性に優れた樹脂組成物が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、耐熱性樹脂またはその前駆体と、オリゴアニリンとを含む。該樹脂組成物は、好ましくはドーパントをさらに含み得る。このような構成を有する本発明の樹脂組成物は、オリゴアニリンが樹脂と均一に混合し得、かつ、導電性材料として機能するので、半導電性フィルム、半導電性ベルト等の半導電性部材の形成に好適に用いられ得る。
【0008】
本発明の樹脂組成物の粘度(25℃)は、好ましくは1〜1000Pa・sである。このような粘度であれば、成形性に優れた樹脂組成物が得られ得る。
【0009】
本発明の樹脂組成物の固形分濃度は、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。このような固形分濃度であれば、成形性に優れた樹脂組成物が得られ得る。
【0010】
A−1.耐熱性樹脂またはその前駆体
耐熱性樹脂としては、例えば、150℃以上のガラス転移温度を有する任意の適切な樹脂が採用され得る。好ましくは、後述するオリゴアニリンとの相溶性に優れる樹脂が用いられ得る。均一性の優れた樹脂組成物が得られるからである。
【0011】
上記耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、およびポリフェニレンサルフィド系樹脂が挙げられる。なかでも、ポリイミド系樹脂が好ましい。優れた耐熱性と高い機械的強度を有するからである。本発明においては、耐熱性樹脂として、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
耐熱性樹脂の前駆体としては、好ましくはポリイミド系樹脂の前駆体であるポリアミド酸が挙げられる。ポリアミド酸は、所望するポリイミド系樹脂に応じて、適切なテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミンとを選択し、これらを有機溶媒中で略等モルずつ重合反応させることにより、ポリアミド酸溶液として得られ得る。
【0013】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、任意の適切なテトラカルボン酸二無水物が採用され得る。好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0014】
上記ジアミンとしては、任意の適切なジアミンが採用され得る。好ましいジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパンが挙げられる。
【0015】
上記有機溶媒としては、任意の適切な有機溶媒が採用され得る。好ましい有機溶媒としては、例えば、アセトン、クロロホルム、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。なかでも、N,N−ジメチルアセトアミド、NMP、ジメチルホルムアミド等の極性のアミド系溶媒が好ましい。
【0016】
重合反応条件としては、任意の適切な条件が採用され得る。例えば、重合時において、好ましくは、触媒を添加する。当該触媒は、任意の適切な触媒が採用され得る。当該触媒の具体例としては、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等が挙げられる。なかでも、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、ジエチルピリジンまたはβ−ピコリン等の含窒素複素環化合物が好ましい。
【0017】
上記触媒の使用量は、得られるポリアミド酸のアミド酸1モル当量に対して0.04〜0.4モル当量、好ましくは0.05〜0.4モル当量である。触媒の添加量が0.04当量モル以下では触媒の効果が十分ではなく、また0.4当量以上添加しても効果の向上は見られない。
【0018】
上記重合反応時のモノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の濃度)は、好ましくは5〜30重量%である。
【0019】
上記重合反応時の反応温度は、好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは5〜50℃である。また、反応時間は、好ましくは、1〜10時間である。
【0020】
ポリアミド酸溶液の溶液粘度(25℃)は、好ましくは、B型粘度計で1〜1000Pa・sである。溶液粘度がこのような範囲にあれば、成形性に優れた樹脂組成物が得られ得る。ポリアミド酸溶液の溶液粘度は、上記重合反応後に得られたポリアミド酸溶液をさらに加熱、撹拌することにより、所望の粘度とすることができる。当該加熱温度は、好ましくは、50〜90℃である。
【0021】
A−2.オリゴアニリン
オリゴアニリンとしては、通常、重合度が2〜40、好ましくは4〜32、さらに好ましくは4〜16、特に好ましくは4〜12、最も好ましくは4のオリゴアニリンが採用され得る。該重合度であれば、樹脂組成物および半導電性部材に適度な半導電性を付与し得るとともに、上記耐熱性樹脂またはその前駆体と均一かつ安定に混合し得る。本発明においては、オリゴアニリンとして、上記所定の重合度を有する1種類のオリゴアニリンを単独で用いてもよく、重合度が異なる2種以上のオリゴアニリンを組み合わせて用いてもよい。
【0022】
1つの好ましい実施形態において、上記オリゴアニリンは、式(I)で表されるキノンジイミン構造単位およびフェニレンジアミン構造単位を主たる繰り返し単位として有する。このようなオリゴアニリン(以下、キノンジイミン・フェニレンジアミン型オリゴアニリンということがある)は、キノンジイミン構造を有するので、ドーピングによってドープ状態となり、十分な導電性を発揮し得る。その結果、本発明の樹脂組成物および半導電性部材に所望の半導電性を付与し得る。なお、ドーピングは、オリゴアニリンを後述のドーパントと接触させることにより行われ得る。
【化1】

(式中、mおよびnはそれぞれオリゴアニリン分子中のキノンジイミン構造単位およびフェニレンジアミン構造単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1である。)
【0023】
式(I)中のmとnの比は、オリゴアニリンの酸化状態に応じて変化する。具体的には、酸化されるにつれてmの値が1に近づき、還元されるにつれてnの値が1に近づいていく。本発明においては、任意の酸化状態のオリゴアニリンが使用可能である。なかでも、半酸化状態(m≒n≒0.5)、いわゆるエメラルディン状態のオリゴアニリンが好ましく用いられ得る。高い導電性と安定性を有するからである。
【0024】
別の好ましい実施形態においては、上記オリゴアニリンは、式(II)で表されるイミノ−p−フェニレン構造単位を主たる繰返し単位として有する。このようなオリゴアニリン(以下、イミノ−p−フェニレン型オリゴアニリンということがある)は、有機溶剤への溶解性に優れるので、上記耐熱性樹脂との混合が容易であり、より均一性に優れた樹脂組成物が得られ得る。また、該オリゴアニリンは、空気酸化等の酸化によってキノンジイミン・フェニレンジアミン型オリゴアニリンとなり、キノンジイミン構造を有し得るので、ドーパントと共存させることにより、ドーピングされて十分な導電性を発揮し得る。
【化2】

【0025】
本発明においては、酸化状態が異なる2種以上のオリゴアニリンを組み合わせて用いてもよい。具体的には、mとnの比が異なる2種以上のキノンジイミン・フェニレンジアミン型オリゴアニリンを組み合わせて用いてもよく、キノンジイミン・フェニレンジアミン型オリゴアニリンとイミノ−p−フェニレン型オリゴアニリンとを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明で用いられるオリゴアニリンは、任意の適切な方法で得られ得る。例えば、アニリンまたは所望のオリゴアニリンよりも重合度の低いオリゴアニリンをプロトン酸および酸化剤存在下で重合する方法(化学酸化重合法)によって、ドープ状態のオリゴアニリンが得られ得る。得られるオリゴアニリンは、好ましくは半酸化状態である。該ドープ状態のオリゴアニリンを塩基性物質で処理することによって脱ドープ状態のオリゴアニリンが得られ得る。また、化学酸化重合法で得られたオリゴアニリンを還元剤で還元することにより還元状態のオリゴアニリン(代表的には、イミノ−p−フェニレン型オリゴアニリン)が得られ得る。上記オリゴアニリンの具体的な合成方法としては、Synthetic Metals 84(1997)119−120に記載の方法が挙げられる。
【0027】
上記塩基性物質としては、プロトン酸を中和し得る限り、任意の適切なものが採用され得る。好ましくは、アンモニア水;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;が用いられ得る。
【0028】
上記還元剤としては、フェニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等が好ましく用いられ得る。なかでも、還元反応後に残渣を生じないので、ヒドラジン水和物またはフェニルヒドラジンが特に好ましく用いられ得る。
【0029】
本発明の樹脂組成物中におけるオリゴアニリンの含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、通常は1〜50重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。このような含有量であれば、適度な半導電性を付与し得るとともに、上記耐熱性樹脂またはその前駆体と均一かつ安定に混合し得る。なお、樹脂組成物が樹脂の前駆体を含む場合は、該含有量は、前駆体から形成される樹脂100重量部に対する値である。
【0030】
A−3.ドーパント
本発明の樹脂組成物は、好ましくはドーパントをさらに含む。ドーパントを含むことにより、上記オリゴアニリンがドープ状態となり得るので、導電化処理を経ることなく、樹脂組成物から直接、半導電性部材が形成され得る。
【0031】
上記ドーパントとしては、プロトン酸を好ましく用いることができる。なかでも、酸解離定数 pKa値が4.8以下であるプロトン酸が好ましい。そのようなプロトン酸として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、リンフッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸のほか、酸解離定数 pKa値が4.8以下である有機酸を挙げることができる。
【0032】
上記有機酸としては、例えば、有機カルボン酸又はフェノール類であって、好ましくは、酸解離定数 pKa値が4.8以下であるものである。このような有機酸としては、脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、脂環式等の一又は多塩基酸を含む。このような有機酸は、水酸基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等を有していてもよい。従って、かかる有機酸の具体例として、例えば、酢酸、n−酪酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸、シアノ酢酸、アセチル酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸、ギ酸、シュウ酸、安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、ブロモフェノールブルー、マンデル酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、α−アラニン、β−アラニン、グリシン、グリコール酸、チオグリコール酸、エチレンジアミン−N,N'−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸等を挙げることができる。
【0033】
上記有機酸は、スルホン酸又は硫酸基を有するものであってもよい。このような有機酸としては、例えば、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンフアースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等を挙げることができる。
【0034】
また、本発明においては、分子内に2つ以上のスルホン酸基を有する多官能有機スルホン酸も用いることができる。このような多官能有機スルホン酸としては、例えば、エタンジスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、ヘキサンジスルホン酸、ヘプタンジスルホン酸、オクタンジスルホン酸、ノナンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、エチルベンゼンジスルホン酸、プロピルベンゼンジスルホン酸、ブチルベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジプロピルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、プロピルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、ペンチルナフタレンジスルホン酸、ヘキシルナフタレンジスルホン酸、ヘプチルナフタレンジスルホン酸、オクチルナフタレンジスルホン酸、ノニルナフタレンジスルホン酸、ジメチルナフタレンジスルホン酸、ジエチルナフタレンジスルホン酸、ジプロピルナフタレンジスルホン酸、ジブチルナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ナフタレンテトラスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、フェナントレンジスルホン酸、フルオレノンジスルホン酸、カルバゾールジスルホン酸、ジフエニルメタンジスルホン酸、ビフエニルジスルホン酸、ターフェニルジスルホン酸、ターフェニルトリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フェナントレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フルオレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、カルバゾールスルホン酸−ホルマリン縮合物等を挙げることができる。芳香環におけるスルホン酸基の位置は任意である。
【0035】
さらに、本発明において、有機酸はポリマー酸であってもよい。このようなポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリハロゲン化アクリル酸、ポリイソプレンスルホン酸、N−スルホアルキル化ポリアニリン、核スルホン化ポリアニリン等を挙げることができる。ナフイオン(米国デユポン社登録商標)として知られている含フッ素重合体も、ポリマー酸として好適に用いられる。
【0036】
樹脂組成物中におけるドーパントの含有量は、所望される半導電性の程度、ドーパントの種類等に応じて、適切に設定され得る。該含有量は、上記オリゴアニリン1モル当量に対して、好ましくは0.1〜5モル当量、さらに好ましくは0.5〜4モル当量、特に好ましくは1〜3モル当量である。
【0037】
A−4.その他の成分
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、上記オリゴアニリン以外の導電性材料を含み得る。導電性材料として、上記オリゴアニリンと他の導電性材料とを併用することにより、所望の電気特性を有する樹脂組成物または半導電性部材が得られ得る。他の導電性材料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、金属粒子、金属酸化物粒子等が挙げられる。
【0038】
また、本発明の樹脂組成物には、任意の適切な有機溶媒を添加して所望の粘度または固形分濃度とすることができる。該有機溶媒としては、上記A−1項に記載の有機溶媒が挙げられる。
【0039】
A−5.樹脂組成物の調製方法
本発明の樹脂組成物の調製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、(a)上記耐熱性樹脂またはその前駆体を有機溶媒に溶解し、該溶液に上記オリゴアニリンを添加および溶解して混合する方法、(b)上記耐熱性樹脂またはその前駆体を有機溶媒に溶解した溶液と、上記オリゴアニリンを有機溶媒に溶解した溶液とを混合する方法、(c)上記耐熱性樹脂またはその前駆体を溶融し、該溶融物に上記オリゴアニリンまたはオリゴアニリン溶液を添加して混合する方法等が挙げられる。
【0040】
上記ドーパントおよびその他の成分は、耐熱性樹脂またはその前駆体とオリゴアニリンとの混合物に添加して混合してもよく、予めどちらか一方に混合しておいてもよく、全ての成分を同時に添加して混合してもよい。
【0041】
B.半導電性部材
本発明の半導電性部材は、耐熱性樹脂とオリゴアニリンとを含む。好ましい耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、およびポリフェニレンサルフィド系樹脂が挙げられる。オリゴアニリンとしては、通常、重合度が2〜40のオリゴアニリンが用いられ、4量体アニリンが特に好ましく用いられ得る。耐熱性樹脂およびオリゴアニリンの詳細については、それぞれ上記A−1項およびA−2項の説明が適用され得る。
【0042】
本発明の半導電性部材の体積抵抗率および表面抵抗率は、用途等に応じて適切に設定され得る。該体積抵抗率は、好ましくは1×10〜1×1015Ω・cmであり得る。また、該表面抵抗率は、好ましくは1×10〜1×1014Ω/□であり得る。なお、上記体積抵抗率および表面抵抗率は、JIS−K6911準拠法で測定した値である。
【0043】
本発明の半導電性部材は、代表的には、ドーパントを含む上記樹脂組成物から形成される。半導電性部材の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、溶融状態の樹脂を含む樹脂組成物から半導電性フィルムを形成する場合は、樹脂組成物を基材上にコーティングして樹脂組成物層を形成し、次いで、冷却することにより耐熱性樹脂とオリゴアニリンとを含む半導電性フィルムが得られ得る。また、樹脂組成物が有機溶媒に溶解された状態の樹脂およびオリゴアニリンを含む場合は、樹脂組成物を基材上にコーティングして樹脂組成物層を形成し、次いで、加熱乾燥または自然乾燥によって有機溶媒を除去することにより耐熱性樹脂とオリゴアニリンとを含む半導電性フィルムが得られ得る。また、樹脂組成物がポリアミド酸溶液を含む場合は、加熱して有機溶媒の除去および閉環イミド化反応を行うことにより、ポリイミド系樹脂とオリゴアニリンとを含む半導電性フィルムが得られ得る。閉環イミド化反応時の加熱温度は、好ましくは300〜400℃である。
【0044】
半導電性ベルトを形成する場合は、上記基材に代えて円筒金型内に樹脂組成物を展開させればよい。円筒金型内に展開させる方法としては、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により展開させる方法が挙げられる。このような方法によれば、均一に展開させることができる。加熱方法としては、好ましくは、金型を回転させながら加熱する方法、高精度の熱風循環を用いる方法、低温で投入し昇温速度を小さくする方法およびこれらの方法の組み合わせが挙げられる。このような形成方法によれば、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さない半導電性シームレスベルトが得られ得る。
【0045】
ドーパントを含まない樹脂組成物を用いる場合は、上記と同様にしてフィルムやベルト等の部材を形成し、次いで、該部材を導電化処理することにより、半導電性部材が得られ得る。導電化処理方法としては、例えば、ドーパント溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0046】
本発明の半導電性部材は、樹脂との相溶性に優れたオリゴアニリンを導電性材料として含むので、均一な半導電性を有し得る。したがって、本発明の半導電性部材は、電池の電極材料、電磁シールド材、静電吸着用フィルム、帯電防止材、画像形成装置部品、電子デバイス等に好適に用いられ得る。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
<ポリアミド酸の調製>
酸成分である3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)1モルと、ジアミン成分であるp−フェニレンジアミン(PDA)を略当モルでN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1610gに溶解して、モノマー濃度20重量%のモノマー溶液を得た。該モノマー溶液を窒素雰囲気中において室温で2時間攪拌しながら反応させた後、70℃で12時間加熱しながら攪拌して25℃におけるB型粘度計(東京計器社製、BH)による粘度が250Pa・sのポリアミド酸溶液を調製した。
【0049】
<四量体アニリンの調製>
Synthetic Metals 84(1997)119−120に記載の方法を参考にして、4量体アニリンを調製した。具体的には、以下のとおりである。
N−フェニル−1,4フェニレンジアミン(アニリン二量体)2.5gを0.1Mの塩酸200ml中に溶解し、アニリン二量体溶液を得た。該アニリン二量体溶液に塩化鉄6水和物6.15gを0.1Mの塩酸35ml中に溶解した溶液を加えて、氷浴中で4時間攪拌を行った。生成した沈殿物を吸引ろ過によって回収し、0.1M塩酸で洗浄を行った。該洗浄された沈殿物をイオン交換水中に添加して2時間攪拌を行った後、0.1Mアンモニア水溶液420mlを加えて、さらに48時間攪拌を行うことにより、0.1Mアンモニア水溶液での洗浄を行った。該洗浄された沈殿物を吸引ろ過にて回収し、再度0.1Mアンモニア水溶液で同様に洗浄した。該洗浄された沈殿物を吸引ろ過にて回収し、60℃、24時間真空乾燥で乾燥した。得られた沈殿物をゲル浸透クロマトグラフィー測定に供したところ、四量体アニリンが合成されたことが確認された。得られた四量体アニリンをNMP中に5wt%となるように溶解して、四量体アニリン溶液を得た。
【0050】
<樹脂組成物の調製>
上記ポリアミド酸溶液と四量体アニリンとドーパントとしてのドデシルベンゼンスルホン酸とを混合することにより樹脂組成物1を得た。このとき、ポリアミド酸溶液のポリイミド固形分100重量部に対し、四量体アニリンが10重量部となるように混合した。また、四量体アニリン1モル当量に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸が2モル当量となるように混合した。
【0051】
[実施例2]
ポリアミド酸溶液のポリイミド固形分100重量部に対し、四量体アニリンが20重量部となるように混合したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物2を得た。
【0052】
[実施例3]
ポリアミド酸溶液のポリイミド固形分100重量部に対し、四量体アニリンが40重量部となるように混合したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物3を得た。
【0053】
[比較例1]
四量体アニリン溶液の代わりに、市販のポリアニリン(Aldrich製、Mw>15000)のNMP溶液(5wt%)を用いたこと、および該ポリアニリンをポリアミド酸溶液のポリイミド固形分100重量部に対し、10重量部となるように混合したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物c1を得た。
【0054】
[比較例2]
ポリアミド酸溶液のポリイミド固形分100重量部に対し、ポリアニリンが20重量部となるように混合したこと以外は比較例1と同様にして、樹脂組成物c2を得た。
【0055】
[比較例3]
ポリアミド酸溶液のポリイミド固形分100重量部に対し、ポリアニリンが40重量部となるように混合したこと以外は比較例1と同様にして、樹脂組成物c3を得た。
【0056】
<経時安定性試験>
上記各実施例・比較例で得られた樹脂組成物の混合直後の粘度、および、25℃の温度下にて24時間、30日間保存した後の粘度をB型粘度計(東京計器社製、BH)で測定した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示されるとおり、ドープ状態のオリゴアニリンとポリアミド酸とを含む本発明の樹脂組成物は、長期にわたってゲル化せず、経時安定性に優れることがわかる。一方、ドープ状態のポリアニリンとポリアミド酸とを含む比較例の樹脂組成物は、混合から24時間後にはゲル化しており、安定性に問題があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の樹脂組成物および半導電性部材は、電池の電極材料、電磁シールド材、静電吸着用フィルム、帯電防止材、画像形成装置部品、電子デバイス等に用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性樹脂またはその前駆体と、オリゴアニリンとを含む樹脂組成物。
【請求項2】
ドーパントをさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、およびポリフェニレンサルフィド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記オリゴアニリンが4量体アニリンである、請求項1から3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
耐熱性樹脂とオリゴアニリンとを含む半導電性部材。
【請求項6】
体積抵抗率が1×10〜1×1015Ω・cmである、請求項5に記載の半導電性部材。
【請求項7】
表面抵抗率が1×10〜1×1014Ω/□である、請求項5または6に記載の半導電性部材。
【請求項8】
前記耐熱性樹脂が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、およびポリフェニレンサルフィド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂である、請求項5から7のいずれかに記載の半導電性部材。
【請求項9】
前記オリゴアニリンが4量体アニリンである、請求項5から8のいずれかに記載の半導電性部材。
【請求項10】
フィルムまたはシームレスベルトである、請求項5から9のいずれかに記載の半導電性部材。

【公開番号】特開2010−285534(P2010−285534A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140014(P2009−140014)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】