説明

樹脂組成物

【課題】フラン環を有するポリマーと層状珪酸塩組成物とを含む、耐熱性、機械的強度に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表わされる繰返し単位を有するポリマーと、層状珪酸塩組成物と、を含む樹脂組成物。


(式中、Rは、2価以上の、芳香族基、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラン環を有するポリマーと、層状珪酸塩組成物と、を含む耐熱性、機械的強度に優れた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から再生可能な生物由来の有機性資源(化石資源を除く)(バイオマス)の利用が注目されている。プラスチックにおいては、主に植物由来の有機性資源を原料としたプラスチックとして、ポリ乳酸が注目されている。原料である乳酸は、とうもろこしやさつまいも等のでん粉を発酵させて得ることができる。しかし、ポリ乳酸は、従来のプラスチックに比べ、強度、耐熱性が劣る場合が多く、その用途は包装材や食器等に限られていた。
【0003】
一方、フルフラールを植物由来の原料から製造する方法が報告されており(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)、フラン環が導入されたポリマーを植物原料から製造できることが期待されている。また、フラン環を含有し、機械的強度に優れた新規高分子化合物が提案されている(特許文献3参照。)。
【0004】
また、バイオマスを原料とした熱可塑性樹脂の耐熱性及び機械的強度を向上させた例として、ポリ乳酸に石油を原料とした熱可塑性樹脂を添加することが提案されている(例えば、特許文献4及び特許文献5参照。)。しかしながら、この方法では所望の耐熱性を得るためには、石油を原料とした熱可塑性樹脂の添加量が多くなることから、環境対応材料としての役割に懸念があった。
【0005】
樹脂の耐熱性や機械的強度を向上させる方法として、一般に、タルク、ガラス繊維、炭素繊維などをはじめとする無機充填材を添加することがよく知られている。しかし、この方法では所望の物性を得るために必要とされる無機充填材の添加量が多くなるため、樹脂の比重が大きくなる。さらに、成形性や外観が低下する等の問題が生じていた。
【0006】
近年、無機充填材のなかでも、熱可塑性樹脂の耐熱性や機械的強度を向上させるために、有機オニウム化合物で処理した層状珪酸塩を添加した樹脂組成物が提案されている。その製造方法に関しては、熱可塑性樹脂と有機オニウム化合物で処理した層状珪酸塩を二軸押出機にて溶融混練する方法(例えば、特許文献6参照。)が提案されている。また、有機オニウム化合物で処理した層状珪酸塩の存在下で、熱可塑性樹脂を形成するモノマーを重合する方法(例えば、特許文献7参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2005−200321号公報
【特許文献2】特開2005−232116号公報
【特許文献3】特開2007−146153号公報
【特許文献4】特開平11−140292号公報
【特許文献5】特開2000−109664号公報
【特許文献6】特開2004−27136号公報
【特許文献7】特許第2627194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に示した特許文献のように、機械的強度に優れたフラン環を導入したポリマーが提案されているが、高耐熱、高強度を要する高機能部品へ適用するためには、さらなる物性向上が必要であると考えられる。しかしながら、フラン環を導入したポリマーを利用して、耐熱性や機械的強度の向上を検討した例はなく、その製造方法も明らかとなっていない。
【0008】
本発明の目的は、フラン環を有するポリマーと層状珪酸塩組成物と、を含む、耐熱性、機械的強度に優れた樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、フラン環を含有するポリマーと、層状珪酸塩を有機化して得られる層状珪酸塩組成物に注目し研究を進めた。この研究において層状珪酸塩の層間に保持された有機オニウムイオンとフラン環を有するポリマーとが結合することで、機械的強度、耐熱性に優れた樹脂組成物が提供できることを見出した。さらに、本発明者らは、この樹脂組成物が、光学機器やボトル、筐体材料の仕様に充分耐えうる物性を有することを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、上記課題を解決した本発明は、下記式(1)で表わされる繰返し単位を有するポリマーと、層状珪酸塩組成物と、を含む樹脂組成物に関する。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは、2価以上の、芳香族基、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下に記載する効果を奏する。すなわち、フラン環を有するポリマーに、層状珪酸塩を有機化して得られる層状珪酸塩組成物を導入することによって、フラン環を有するポリマーよりもさらに耐熱性及び機械的強度を高めた樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明におけるフラン環を有するポリマーは、前記式(1)で表わされる繰返し単位を有する。該ポリマーに含まれる式(1)で表わされる繰返し単位は、10ユニット以上であることが好ましい。なお、該ポリマーは、式(1)で表わされる1種の繰返し単位からなるホモポリマーであっても、また、Rが異なる2種以上の繰返し単位からなるコポリマーであってもよい。また、該ポリマー中に含まれる式(1)で表わされる繰返し単位の割合は、ポリマーを含む樹脂組成物の成形性、該樹脂組成物を用いて得られた成形品の強度、耐熱性などの所望とする特性を満たすことができるものであれば特に限定されない。
【0015】
また、式(1)で表わされる繰返し単位を有するポリマーの数平均分子量は、39000以上であることが好ましい。39000より小さい場合、光学機器やボトル、筐体材料への使用が難しい場合がある。
【0016】
前記式(1)中のRは、2価以上の、芳香族基、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。
【0017】
前記2価以上の芳香族基としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合環を有する2価以上の芳香族基が挙げられる。具体的には、例えば、p−フェニレン、o−フェニレン、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイル、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、インデン−2,3−ジイル、アントラセン−1,4−ジイル、アントラセン−9,10−ジイル、フェナントレン−1,2−ジイル、フェナントレン−3,4−ジイル、フェナントレン−9,10−ジイル,ビスフェニレン等が挙げられる。ビスフェニレン基を有する化合物としてはビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。一方複素環を有する芳香族基としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環等の五員環複素環を有する芳香族基、例えば、フラン−2,5−ジイル、フラン−2,3−ジイル、フラン−2,4−ジイル、フラン−3,4−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、チオフェン−2,4−ジイル、ピロール−2,5−ジイル、ピロール−2,3−ジイル、オキサゾール−2,5−ジイル、チアゾール−2,4−ジイル、チアゾール−2,5−ジイル、イミダゾール−2,5−ジイル等が挙げられる。また、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の六員環複素環を有する芳香族基、例えば、ピラン−3,6−ジイル、ピリジン−2,3−ジイル、ピリジン−2,4−ジイル、ピリダジン−3,4−ジイル、ピリミジン−2,4−ジイル、ピラジン−2,3−ジイル、ピラジン−2,6−ジイル等が挙げられる。また、インドール環、カルバゾール環、クマリン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、ベンゾチアゾール環、キノキサリン環、プリン環等の縮合環を有する芳香族基、例えば、インドール−2,3−ジイル、インドール−2,6−ジイル、カルバゾール−2,7−ジイル、クマリン−3,4−ジイル、キノリン−2,3−ジイル、イソキノリン−3,4−ジイル、イソキノリン−6,7−ジイル、アクリジン−1,4−ジイル、ベンゾチアゾール−6,7−ジイル、キノキサリン−5,8−ジイル、プリン−2,6−ジイル等が挙げられる。
【0018】
前記2価以上の脂肪族炭化水素基としては、エタン−1,2−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル、2−メチルブタン−1,4−ジイル、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイル等が挙げられる。より好ましい脂肪族炭化水素基としては、エタン−1,2−ジイル、プロパン−1,2−ジイル及びブタン−1,4−ジイル、ブタン−1,3−ジイルなどの炭素数2〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基を挙げることができる。
【0019】
前記2価以上の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキレン基、シクロアルケニル基から選ばれる2価の基を挙げることができる。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジイル、シクロへキサン−1,2−ジイル、シクロヘプタン−1,2−ジイル、シクロオクタン−1,2−ジイル、シクロノナン−1,2−ジイル、シクロデカン−1,2−ジイル等が挙げられる。また、シクロアルケニル基としてはシクロブタ−2−エン−1,2−ジイル、シクロペンタ−2−エン−1,2−ジイル、シクロヘキサ−2−エン−1,2−ジイル、シクロヘプタ−2−エン−1,2−ジイル及びシクロオクタ−2−エン−1,2−ジイル等が挙げられる。
【0020】
これらの芳香族基、脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基は、置換されていてもよい。この置換基としては、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む各種のもの、例えば脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、シロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、ハロゲノ基等が挙げられる。脂肪族オキシ基の脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシルメチル基、トリメチルシロキシヘキシル基、クロロエチル基、メトキシブチル基、ジメチルアミノメチル基、ブテニル基、オクテニル基等を挙げることができる。芳香族オキシ基としては、フェノキシ基等が挙げられる。
【0021】
前記本発明の樹脂組成物は、下記式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物と、下記式(3)で表される多価アルコールと、層状珪酸塩組成物と、を含む混合物を反応して得ることができる。あるいは、下記式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物と、下記式(3)で表される多価アルコールと、を反応して式(1)で表わされる繰返し単位を有するポリマーを得た後、そのポリマーと、層状珪酸塩組成物を溶融混練して得ることができる。
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、Xはヒドロキシル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。)
1(OH)m (3)
(式中、R1は、価数がmの、芳香族基、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、mは2以上の整数を示す。)
上記式(2)で表される化合物としては、Xがヒドロキシル基であるフランジカルボン酸、アルコキシ基又はハロゲン原子であるフランジカルボン酸誘導体を挙げることができる。これら、フランジカルボン酸、その酸無水物、前記フランジカルボン酸誘導体及び上記式(3)で表される多価アルコールの少なくとも1種は、バイオマスから製造されたものであってもよい。
【0024】
具体的には、フランジカルボン酸としては、2,3−フランジカルボン酸、2,4−フランジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸及び3,4−フランジカルボン酸を挙げることができる。また、式(2)におけるアルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。また、式(2)におけるハロゲン原子は、塩素であることが好ましい。さらに、式(2)で表わされるフランジカルボン酸としては、セルロースやグルコース、フルクトースなどのいわゆる植物原料(バイオマス)から公知の方法で製造することができる。また、フランジカルボン酸無水物としては、下記式(5)で表されるフランジカルボン酸−2,3−無水物、下記式(6)で表されるフランジカルボン酸−3,4−無水物を挙げることができる。また、前記(2)式で表される化合物は、2,5−フランジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸ジメチル、2,5−フランジカルボン酸ジエチル及び2,5−フランジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることが好ましい。このような化合物を用いると植物由来から誘導でき、物性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
式(3)のR1における芳香族基としては、前記式(1)のRに関して示した各種芳香族基を挙げることができる。
【0028】
式(3)のR1における脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基等の炭化水素基の他、前記式(1)のRに関して示した各種脂肪族炭化水素基が挙げられる。好ましい脂肪族炭化水素基としては、エタン−1,2−ジイル、プロパン−1,2−ジイル及びブタン−1,4−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、などの炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を挙げることができる。
【0029】
式(3)のR1における脂環式炭化水素基としては、シクロアルキレン基、シクロアルケニル基等を挙げることができ、前記式(1)のRに関して示した脂環式炭化水素基を挙げることができる。
【0030】
これらの芳香族基、脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基は、置換されていてもよい。この置換基としては前記式(1)のRに関して示した各種の置換基を挙げることができる。
【0031】
式(3)におけるOHは、R1に置換された水酸基であり、その置換個数mはRの価数と同じであり、2以上である。通常、m=2とすることが好ましい。
【0032】
式(3)で表される多価アルコールの具体例としては、芳香族、脂肪族又は脂環族ジオール、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、糖類を挙げることができる。また、ジオール類の分子間脱水から得られるエーテルジオール、さらにジヒドロキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を例示することができる。
【0033】
脂肪族又は脂環族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等がある。またジヒドロキシベンゼンとしては例えば1,3−ジヒドロキシベンゼンや1,4ジヒドロキシベンゼン等がある。
【0034】
また、ビスフェノールとしては、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン等がある。
【0035】
好適な態様では、多価アルコールとしてジオールを用い、このジオールが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等であり、植物を原料にして製造されるものである。
【0036】
本発明に用いられる層状珪酸塩組成物は、層状珪酸塩をヒドロキシアンモニウム化合物で有機化して得られたものが好ましい。このような層状珪酸塩組成物を用いると、耐熱性及び機械的強度に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0037】
本発明に用いられる層状珪酸塩としては、分散溶媒中で膨潤する性質を有するものであれば、特に限定されず、スメクタイト系粘土鉱物やカオリン系粘土鉱物、膨潤性マイカ及びバーミキュライトなどが挙げられる。スメクタイト系粘土鉱物の具体例としては、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト、ベントナイトなどを挙げることができる。また、カオリン系粘土鉱物としては、カオリナイト、ディッカイト、ハロサイトなどを挙げることができる。膨潤性マイカとしては、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四珪素マイカ、ナトリウム型四フッ素珪素マイカなどを挙げることができる。バーミキュライトは、八面体のイオン比率によって、3八面体型バーミキュライトに分類される。これらの層状珪酸塩はその置換体や誘導体であってもよく、また、天然、合成品、加工処理品のいずれあってもよい。また、これらを単独で用いても、2種類以上を組み合せて用いても良い。
【0038】
本発明で用いられる層状珪酸塩を有機化するためのヒドロキシアンモニウム化合物としては、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライド(別名:塩化コリン)、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド、メチル/タロービス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド、アルキルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライドなどが好ましい。このようなヒドロキシアンモニウム化合物を用いると、得られる層状珪酸塩組成物は容易に前記式(1)で表される繰返し単位を有するポリマーに分散され、耐熱性及び機械的強度に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
さらに、前記式(1)で表される繰返し単位を有するポリマーと溶融混練する層状珪酸塩組成物を得る場合において、層状珪酸塩を有機化するためのヒドロキシアンモニウム化合物としては、下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化5】

【0041】
(式中、R2は、水素原子又は、炭素数1以上25以下の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、x及びyは、同一でも異なっていてもよく、xとyとの合計が2以上10以下の整数を示す。)
前記式(4)中、R2は、水素原子又は、炭素数1以上25以下の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。炭素数としては、8以上が好ましく、より好ましくは12以上である。炭素数が8未満であると、層状珪酸塩の層間距離が十分に広がらず、混練時に、前記式(1)で表される繰返し単位を有するポリマーへの分散が不十分となる場合がある。また、25を超えると、ヒドロキシアンモニウム化合物の合成が困難になる場合がある。好ましい例として、飽和炭化水素基としては、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基、不飽和炭化水素基としては、オレイル基等が挙げられる。
【0042】
また、前記式(4)中、x及びyは、エチレンオキサイド(−CH2CH2O−)の重合度を表し、x及びyは、同一でも異なっていてもよく、xとyとの合計が、好ましくは2以上10以下の整数であり、より好ましくは5である。xとyとの合計が、10を超えると、有機化した層状珪酸塩組成物の親水性が高くなり、有機化工程における吸引ろ過が困難となる場合がある。さらに、前記式(1)で表される繰返し単位を有するポリマーへの分散も不十分となり、樹脂組成物の耐熱性が低下する傾向にある。
【0043】
次に、本発明の樹脂組成物の第一及び第二の製造方法について説明する。
【0044】
本発明の樹脂組成物の第一の製造方法は、次の工程を有する。
(A1)ヒドロキシアンモニウム化合物を用いて層状珪酸塩の有機化を行い、層状珪酸塩組成物を得る工程。
(B1)式(2)で表されるフランジカルボン酸化合物又はフランジカルボン酸無水物と、式(3)で表される多価アルコールと、層状珪酸塩組成物とを反応器中に装入し、触媒の存在下でエステル化反応を行い、エステル化合物を得る工程。
(C1)このようにして得られたエステル化合物の重縮合を行う工程。
【0045】
本発明の樹脂組成物の第一の製造方法にかかる反応方法(重合方法)としては、通常公知の方法、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の方法が挙げられ、成形品の種類により適宜選択される。重合温度、重合触媒、溶媒などの媒体等についてはそれぞれの重合方法に従うものが用い得る。
【0046】
この重縮合過程の終点で生じる溶融状態の重縮合物をそのまま、あるいは必要に応じて安定剤等各種添加剤を添加してペレット等の形状にし、成形品を形成するために用いることができる。
【0047】
さらに、本発明の樹脂組成物の第一の製造方法の実施形態の一例を挙げて詳細に説明する。
【0048】
まず、前記工程(A1)について説明する。工程(A1)においては、水100質量部に対し層状珪酸塩0.1〜5質量部を混合し、層状珪酸塩分散液を調製する。別途、水100質量部に対しヒドロキシアンモニウム化合物5〜15質量部を加えヒドロキシアンモニウム化合物水溶液を調製する。次に、上記層状珪酸塩100質量部に対し、上記ヒドロキシアンモニウム化合物8〜50質量部となるように、前記層状珪酸塩分散液に前記ヒドロキシアンモニウム化合物水溶液を加える。そして、50〜70℃にまで加温し、50〜100分間攪拌して層状珪酸塩の有機化を行う。有機化を終了した後、これをろ過し、洗浄して、残留している前記ヒドロキシアンモニウム化合物を除去する。これを、60〜100℃のもとで3〜6時間乾燥し、粉砕して層状珪酸塩組成物を調製する。得られた層状珪酸塩組成物は、通常、層状珪酸塩100質量部に対し、6〜46質量部のヒドロキシアンモニウム化合物を含有する。
【0049】
次に、工程(B1)においては、式(2)で表されるフランジカルボン酸化合物又はフランジカルボン酸無水物と、式(3)で表される多価アルコールと、層状珪酸塩組成物と、触媒または触媒混合物を反応器に装入する。反応器に装入した原料等を撹拌しながら徐々に110℃〜200℃に、好ましくは150℃〜180℃に加熱し、フランジカルボン酸と多価アルコール及びフランジカルボン酸と層状珪酸塩組成物に含まれるヒドロキシアンモニウム化合物とのエステル化を行う。これによりオリゴマーが生成する。
【0050】
次に、工程(C1)においては、反応系の温度を180℃〜280℃に、より好ましくは180℃〜230℃の範囲に加熱する。これによりエステル交換反応を起こし、高分子量化を目的とした重縮合を行う。この重縮合反応は、減圧下で実施することが好ましい。通常133Pa以下の圧力下で重縮合反応を行うことが好ましい。重縮合反応においては、副生成物として多価アルコールが生成する。減圧下で重縮合反応を行うと前記多価アルコールを容易に除去することができる。これにより重縮合反応の反応速度を高め、得られる樹脂組成物中のポリマーを高分子量化することができる。この加熱及び撹拌、減圧は前記成形品を成形するのに耐えうる、または前記成形品の仕様に耐えうる分子量まで継続して行う。
【0051】
次に、反応器に仕込むモノマー等の量について詳細に説明する。反応器に仕込むべき式(3)で表される多価アルコールの量は、好ましくは、式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物のモル数の1倍〜3倍の量とすることが好ましい。過剰な多価アルコールや、重縮合反応が進行するにつれて生成する多価アルコールは、反応系を減圧下にすることで留去するか、または他の溶媒と共沸させ留去するか、または他の方法により反応系外へ除去することが好ましい。
【0052】
また、反応器に仕込む前記層状珪酸塩組成物の量について詳細に説明する。反応器に仕込むべき前記層状珪酸塩組成物の量は、得られる樹脂組成物における前記層状珪酸塩組成物の含有量が、前記ポリマー100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下となるように添加することが好ましい。前記層状珪酸塩組成物が1質量部未満であると、所望の物性向上の効果が得られない場合がある。20質量部以上であると、前記層状珪酸塩組成物の分散が不十分となり、物性が低下する場合がある。また、前記ポリマー100質量部に対し前記層状珪酸塩組成物を1〜10質量部とすることがより好ましい。
【0053】
次に触媒について説明する。式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物と式(3)で表される多価アルコールと層状珪酸塩組成物に含まれるヒドロキシアンモニウムとの反応は、ジカルボン酸又はフランジカルボン酸無水物の自己触媒作用のために触媒を加えなくても進行する。しかし、ジカルボン酸又はフランジカルボン酸無水物の濃度は重合の進行とともに低下するため、触媒を添加することが好ましい。本発明における式(1)で表されるポリマーの合成は、エステル化反応とエステル交換反応による重縮合反応のふたつの反応を含んでいるため、それぞれに好適な触媒が存在する。
【0054】
工程(B1)におけるエステル化反応に好適な触媒としては、金属酸化物や塩、スズ、鉛、チタンなどの有機金属化合物や塩化ハフニウム(IV)や塩化ハフニウム(IV)・(THF)2などの四価のハフニウム化合物を挙げることができる。また工程(C1)におけるエステル交換反応による重縮合反応に最適な触媒としては、鉛、亜鉛、マンガン、カルシウム、コバルト、マグネシウムなどの酢酸塩や炭酸塩、またはマグネシウム、亜鉛、鉛、アンチモンなどの金属酸化物やスズ、鉛、チタンなどの有機金属化合物を挙げることができる。両工程に有効な触媒としては、特に、チタンアルコキシドが好ましい。
【0055】
触媒は工程(B1)と工程(C1)の各々の工程において各々に適切な触媒を加えてもよい。または、前記の触媒群から任意の組み合わせで反応器に式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物又は式(3)で表される多価アルコールとともに装入してもよい。もちろん、原料を加熱しながら適宜それに触媒を添加してもよく、さらに複数回に分けて任意の組み合わせで触媒を追加して添加してもよい。
【0056】
以上説明した製造方法における各条件は、式(2)で表される化合物及びフランジカルボン酸無水物の2種以上と式(3)で表される多価アルコールの2種以上とを用いた場合にも適用可能である。
【0057】
本発明の樹脂組成物の第二の製造方法は、次の工程を有する。
(A2)ヒドロキシアンモニウム化合物を用いて層状珪酸塩の有機化を行い、層状珪酸塩組成物を得る工程。
(B2)式(2)で表されるフランジカルボン酸化合物又はフランジカルボン酸無水物と、式(3)で表される多価アルコールとを、反応器中に装入し、触媒の存在下で、エステル化反応を行いエステル化合物を得る工程。
(C2)このようにして得られたエステル化合物の重縮合を行う工程。
(D2)工程(A2)によって得られた層状珪酸塩組成物と、工程(B2)及び(C2)によって得られた式(1)で表される繰返し単位を有するポリマーとを、溶融混練し、樹脂組成物を得る工程。
【0058】
第二の製造方法にかかる工程(A2)は、第一の製造方法にかかる工程(A1)と同様にして行われる。
【0059】
次に、工程(B2)においては、式(2)で表されるフランジカルボン酸化合物又はフランジカルボン酸無水物と、式(3)で表される多価アルコールと、触媒または触媒混合物を反応器に装入する。反応器に装入した原料等を撹拌しながら徐々に110℃〜200℃に、好ましくは150℃〜180℃に加熱し、フランジカルボン酸と多価アルコールのエステル化を行う。これによりオリゴマーが生成する。
【0060】
次に、工程(C2)においては、反応系の温度を180℃〜280℃に、より好ましくは180℃〜230℃の範囲に加熱する。これによりエステル交換反応を起こし、高分子量化を目的とした重縮合を行う。この重縮合反応は、減圧下で実施することが好ましい。通常133Pa以下の圧力下で重縮合反応を行うことが好ましい。重縮合反応においては、副生成物として多価アルコールが生成する。減圧下で重縮合反応を行うと前記多価アルコールを容易に除去することができる。これにより重縮合反応の反応速度を高め、得られる樹脂組成物中のポリマーを高分子量化することができる。この加熱及び撹拌、減圧は成形品を成形するのに耐えうる、分子量まで継続して行う。
【0061】
次に、反応器に仕込むモノマー等の量について詳細に説明する。反応器に仕込むべき式(3)で表される多価アルコールの量は、好ましくは、式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物のモル数の1倍〜3倍の量とすることが好ましい。過剰な多価アルコールや、重縮合反応が進行するにつれて生成する多価アルコールは、反応系を減圧下にすることで留去するか、または他の溶媒と共沸させ留去するか、または他の方法により反応系外へ除去することが好ましい。
【0062】
次に触媒について説明する。式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物と式(3)で表される多価アルコールとの反応は、ジカルボン酸又はフランジカルボン酸無水物の自己触媒作用のために触媒を加えなくても進行する。しかし、ジカルボン酸又はフランジカルボン酸無水物の濃度は重合の進行とともに低下するため、触媒を添加することが好ましい。本発明における式(1)で表されるポリマーの合成はエステル化反応とエステル交換反応による重縮合反応の二つの反応を含んでいるため、それぞれに好適な触媒が存在する。
【0063】
工程(B2)におけるエステル化反応に好適な触媒としては、金属酸化物や塩、スズ、鉛、チタンなどの有機金属化合物や塩化ハフニウム(IV)や塩化ハフニウム(IV)・(THF)2などの四価のハフニウム化合物を挙げることができる。また工程(C2)におけるエステル交換反応による重縮合反応に最適な触媒としては、鉛、亜鉛、マンガン、カルシウム、コバルト、マグネシウムなどの酢酸塩や炭酸塩、またはマグネシウム、亜鉛、鉛、アンチモンなどの金属酸化物やスズ、鉛、チタンなどの有機金属化合物を挙げることができる。両工程に有効な触媒としては、特に、チタンアルコキシドが好ましい。
【0064】
触媒は工程(B2)と工程(C2)の各々の工程において各々に適切な触媒を加えてもよい。または、前記の触媒群から任意の組み合わせで反応器に式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物又は式(3)で表される多価アルコールとともに装入してもよい。もちろん、原料を加熱しながら適宜それに触媒を添加してもよく、さらに複数回に分けて任意の組み合わせで触媒を追加して添加してもよい。
【0065】
以上説明した製造方法における各条件は、式(2)で表される化合物及びフランジカルボン酸無水物の2種以上と式(3)で表される多価アルコールの2種以上とを用いた場合にも適用可能である。
【0066】
次に、工程(D2)においては、工程(A2)から得られた層状珪酸塩組成物と、工程(B2)及び工程(C2)から得られた式(1)で表される繰返し単位を有するポリマーとを、二軸押出機に投入し、混練を行う。この混練工程の温度は、好ましくは160〜220℃である。160℃未満であると、ポリマーの溶融が不十分となり、層状珪酸塩組成物の分散が不十分となる場合がある。また、220℃よりも高くなると、ポリマーの分解、層状珪酸塩組成物に含まれるヒドロキシアンモニウム化合物の分解が始まり、混練によって得られた樹脂組成物の物性が低下する場合がある。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物に、難燃剤、着色剤、内部離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの添加剤を必要量添加してもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明する。
【0069】
また、実施例におけるポリマーの数平均分子量測定は、以下の装置、条件で行った。
分析機器 :Waters社製アライアンス2695(商品名)
検出器 :示差屈折検出器
溶離液 :5mMトリフルオロ酢酸ナトリウムの濃度であるヘキサフルオロイソプロパノール溶液
流量 :1.0ml/min
カラム温度:40℃
(実施例1)
水を60℃程度に加温し、攪拌しながら、1質量%に相当するモンモリロナイト(陽イオン交換容量115ミリ当量/100g、クニピアF(商品名):クニミネ工業(株)製)を徐々に加えて、1時間攪拌を続けて分散させモンモリロナイト分散液を調製した。次に、別途塩化コリンの5質量%水溶液を調製した。塩化コリン水溶液を60℃程度に加温し、モンモリロナイト分散液を攪拌しながら塩化コリン水溶液を徐々に加えて、60℃に加温しながら、24時間攪拌した。次に、これをブフナーロートを用いて吸引ろ過し、ろ別した固形分を温水で3回程度、洗浄・ろ過を繰返した。ろ別した固形分を80℃で乾燥し、粉砕して、層状珪酸塩組成物を調製した。
【0070】
窒素導入管、分留管−冷却管、温度計、SUS製撹拌羽を取り付けた1Lの四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコに、ジカルボン酸として2,5−フランジカルボン酸(154.0g)と、ジオールとして蒸留済み1,4−ブタンジオール(270.3g;モル比=1:3)を装入した。さらに、前記層状珪酸塩組成物(11.05g)、すず触媒(モノすずオキシド、和光純薬工業)0.059質量%、トルエンで溶解したチタン触媒(ブチルチタネート、キシダ化学製)0.059質量%を装入した。なお、ここでの%値は、投入した材料の全質量をベースとする。
【0071】
四つ口フラスコ内にて窒素を導入しながら撹拌を開始するとともに、150℃の油浴に浸漬しこれら内容物を昇温させた。内温が150℃に達したあたりから縮合反応にともなう副生水の流出が始まった。さらに、約4時間かけて170℃まで昇温させ縮合反応を行った。
【0072】
分留管をト字管に換え、減圧を開始した。約一時間かけてフルバキューム(5Pa)とし、以後、減圧下(5Pa)、180℃で約390分間反応を続けた。四つ口フラスコを割って、得られた生成物を取り出した。得られた生成物を、分子量を高めるために反応温度150℃で固相重合を行った。こうして得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。
【0073】
得られた樹脂組成物を一軸押出機(ラボプラストミル(商品名):(株)東洋精機製作所製、スクリュ径:φ20、L/D=25)にて、シリンダ温度190℃で溶融混練し、ストランド状に押し出した。得られたストランドを冷却後、ペレタイザを用いてペレット化し樹脂組成物ペレットを得た。
【0074】
(実施例2)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂組成物ペレットを得た。
(a)ジオールを蒸留済みエチレングリコール(186.2g;モル比=1:3)としたこと。
(b)前記層状珪酸塩組成物の装入量を、11.05gから9.58gに変更したこと。
(c)内温が150℃に達し縮合反応にともなう副生水の流出が始まった後、約4時間かけて昇温させる温度を170℃から280℃に変更したこと。
(d)減圧下(5Pa)、で反応を続ける温度を180℃から280℃に変更したこと。
【0075】
得られた生成物を、分子量を高めるために反応温度180℃で固相重合を行った。こうして得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.3×104であった。
【0076】
(実施例3)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂組成物ペレットを得た。
(a)ジオールを蒸留済み1,3−プロパンジオール(228.3g;モル比=1:3)としたこと。
(b)前記層状珪酸塩組成物の装入量を11.05gから10.32gに変更したこと。
(c)内温が150℃に達し縮合反応にともなう副生水の流出が始まった後、約4時間かけて昇温させる温度を180℃から230℃に変更したこと。
(d)減圧下(5Pa)で反応を続ける温度を180℃から230℃に変更したこと。
【0077】
得られた生成物を、分子量を高めるために反応温度140℃で固相重合を行った。こうして得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=4.9×104であった。
【0078】
(実施例4)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、層状珪酸塩組成物を調製し、樹脂組成物ペレットを得た。得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。
(a)モンモリロナイトに替えて、膨潤性マイカ(陽イオン交換容量120ミリ当量/100g、ソマシフME−100(商品名):コープケミカル(株)製)を用いたこと。
【0079】
(実施例5)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、層状珪酸塩組成物を調製した。
(a)塩化コリンの10質量%水溶液に替えて、オレイルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド(エチレンオキサイドの重合度x+y=2)の10質量%水溶液を用いたこと。
【0080】
また、層状珪酸塩組成物を四つ口フラスコに装入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂を調製し、樹脂ペレットを得た。このとき得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。
【0081】
得られた層状珪酸塩組成物5質量部と、樹脂ペレット95質量部を二軸押出機(ラボプラストミル(商品名):(株)東洋精機製作所製、スクリュ径:φ26、L/D=25)に投入した。そして、シリンダ温度180℃、スクリュ回転数150rpm、吐出量2kg/hで溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドを冷却後、ペレタイザを用いて樹脂組成物ペレットを得た。
【0082】
(実施例6)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、層状珪酸塩組成物を調製した。
(a)塩化コリンの10質量%水溶液に替えて、オレイルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド(エチレンオキサイドの重合度x+y=5)の10質量%水溶液を用いたこと。
【0083】
また、層状珪酸塩組成物を四つ口フラスコに装入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂を調製し、樹脂ペレットを得た。このとき得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。
【0084】
得られた層状珪酸塩組成物5質量部と、樹脂ペレット95質量部を実施例5と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
【0085】
(実施例7)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、層状珪酸塩組成物を調製した。
(a)塩化コリンの10質量%水溶液に替えて、オレイルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド(エチレンオキサイドの重合度x+y=10)の10質量%水溶液を用いたこと。
【0086】
また、層状珪酸塩組成物を四つ口フラスコに装入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂を調製し、樹脂ペレットを得た。このとき得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。
【0087】
得られた層状珪酸塩組成物5質量部と、樹脂ペレット95質量部を実施例5と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
【0088】
(実施例8)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、層状珪酸塩組成物を調製した。
(a)塩化コリンの10質量%水溶液に替えて、オレイルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド(エチレンオキサイドの重合度x+y=2)の10質量%水溶液を用いたこと。
(b)モンモリロナイトに替えて、膨潤性マイカ(陽イオン交換容量120ミリ当量/100g、ソマシフME−100(商品名):コープケミカル(株)製)を用いたこと。
【0089】
また、層状珪酸塩組成物を四つ口フラスコに装入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂を調製し、樹脂ペレットを得た。このとき得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。得られた層状珪酸塩組成物5質量部と、樹脂ペレット95質量部を実施例5と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
【0090】
(実施例9)
下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、層状珪酸塩組成物を調製した。
(a)塩化コリンの10質量%水溶液に替えて、オレイルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド(エチレンオキサイドの重合度x+y=5)の10質量%水溶液を用いたこと。
(b)モンモリロナイトに替えて、膨潤性マイカ(陽イオン交換容量120ミリ当量/100g、ソマシフME−100(商品名):コープケミカル(株)製)を用いたこと。
【0091】
また、層状珪酸塩組成物を四つ口フラスコに装入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂を調製し、樹脂ペレットを得た。このとき得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。得られた層状珪酸塩組成物5質量部と、樹脂ペレット95質量部を実施例5と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
【0092】
(実施例10)
下記のように変更したこと以外は実施例9と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
(a)前記層状珪酸塩組成物の量を5質量部から10質量部に変更したこと。
(b)前記樹脂ペレットの量を95質量部から90質量部に変更したこと。
【0093】
(比較例1)
層状珪酸塩組成物の調製を行わなかったこと及び層状珪酸塩組成物を四つ口フラスコに装入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂を調製し、樹脂ペレットを得た。
このとき得られたポリマーの数平均分子量は、Mn=6.0×104であった。
【0094】
(樹脂組成物及び樹脂の評価)
実施例1〜10、比較例1で得られたペレットを80℃で4時間以上乾燥した。前記乾燥ペレットを射出成形機(SG50(商品名):住友重機械工業(株)製、スクリュ径φ22)にて、シリンダ温度190℃、金型温度110℃で射出成形して成形品(10×80×4.0mm)を作製した。作製した成形品についてISOの規格(ISO178、ISO179、ISO75)準じた試験を行い、その物性を評価した。得られた結果をまとめて表1、表2に示す。
【0095】
表1、表2に示した結果から、フラン環骨格をもつポリマーの構造中に、層状珪酸塩組成物が導入されることによって、耐熱性及び機械的強度が向上することが明らかとなった。また、表2より、ヒドロキシアンモニウム化合物中のエチレンオキサイドの重合度によって、樹脂組成物の耐熱性に差があり、ある特定の重合度において耐熱性に優れていることが明らかとなった。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる繰返し単位を有するポリマーと、層状珪酸塩組成物と、を含む樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、2価以上の、芳香族基、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。)
【請求項2】
下記式(2)で表わされる化合物又はフランジカルボン酸無水物と、下記式(3)で表わされる多価アルコールと、前記層状珪酸塩組成物と、を含む混合物を反応して得られる請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】

(式中、Xはヒドロキシル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。)
1(OH)m (3)
(式中、R1は、価数がmの、芳香族基、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、mは、2以上の整数を示す。)
【請求項3】
前記式(2)で表される化合物が、2,5−フランジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸ジメチル、2,5−フランジカルボン酸ジエチル及び2,5−フランジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記式(3)で表される多価アルコールが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール又は1,4−ブタンジオールであることを特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記層状珪酸塩組成物が、層状珪酸塩をヒドロキシアンモニウム化合物で有機化して得られたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシアンモニウム化合物が、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライド、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド、メチル/タロービス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド及びアルキルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記式(1)で表わされる繰返し単位を有するポリマーと、層状珪酸塩組成物を溶融混練することによって得られる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記式(1)で表される繰返し単位を有するポリマーは、下記式(2)で表される化合物又はフランジカルボン酸無水物と、下記式(3)で表される多価アルコールと、を反応させることにより得られたものであることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
【化3】

(式中、Xはヒドロキシル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。)
1(OH)m (3)
(式中、R1は、価数がmの、芳香族基、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、mは、2以上の整数を示す。)
【請求項9】
前記式(2)で表される化合物が、2,5−フランジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸ジメチル、2,5−フランジカルボン酸ジエチル及び2,5−フランジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記式(3)で表される多価アルコールが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール又は1,4−ブタンジオールであることを特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記層状珪酸塩組成物が、層状珪酸塩をヒドロキシアンモニウム化合物で有機化して得られたものであることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ヒドロキシアンモニウム化合物が、下記式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の樹脂組成物。
【化4】

(式中、R2は、水素原子又は、炭素数1以上25以下の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、x及びyは、同一でも異なっていてもよく、xとyとの合計が2以上10以下の整数を示す。)
【請求項13】
前記層状珪酸塩が、スメクタイト系粘土鉱物または膨潤性マイカであることを特徴とする請求項5、6、11及び12のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記層状珪酸塩組成物の含有量が、前記式(1)で表わされる繰返し単位を有するポリマー100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−75068(P2008−75068A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183201(P2007−183201)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】