説明

樹脂組成物

【課題】耐熱性を有し、反り性が低く、かつ耐衝撃性に優れたポリアリレート樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアリレート樹脂(A)と、結晶性ポリアミド樹脂(B)と、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と、酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)と、ガラスパウダー(E)とを含有し、各成分の質量比が下記式を満足することを特徴とする樹脂組成物。
(A)/(B)=10/90〜90/10 (i)
{(A)+(B)}/{(C)+(D)}=91/9〜97/3 (ii)
{(A)+(B)+(C)+(D)}/(E)=50/50〜80/20 (iii)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリレート樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物に関し、特に、耐熱性を有し、反り性が低く、かつ耐衝撃性に優れた樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアリレート樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物は、耐薬品性や成形性に優れ、金属代替材料として、電気・電子分野を中心に使用されている。また、従来、樹脂材料の機械特性を改良するため、ガラス繊維を配合した材料が用いられているように(例えば、特許文献1参照)、ポリアリレート樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物にもガラス繊維が配合され、ポリアリレート樹脂と、結晶性ポリアミド樹脂と、ガラス繊維とを含有する樹脂組成物は、剛性、耐薬品性、耐熱性、耐水性及び成形性に優れ、時計ケースなどの機械部品、自動車部品、電機部品として使用されている。
しかし、樹脂組成物の強度や耐熱性等を向上させるために、上記のガラス繊維などの繊維状強化材を多く配合した場合、樹脂組成物の成形時に、強化材が金型内での流動方向に配向することによって、成形収縮率のバランスが崩れ、成形品に反り変形が発生する問題があった。しかも繊維状強化材で強化した樹脂組成物は、脆性が増すため、耐衝撃性を要求される部品への使用においては大きな制約があり、その改善が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭49−34945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題点を解決し、耐熱性を有し、反り性が低く、かつ耐衝撃性に優れたポリアリレート樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアリレート樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物に、強化材としてガラスパウダーを添加し、さらにエポキシ基含有オレフィン系共重合体と、酸無水物含有オレフィン系共重合体とを添加することにより前記課題が解決できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
ポリアリレート樹脂(A)と、結晶性ポリアミド樹脂(B)と、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と、酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)と、ガラスパウダー(E)とを含有し、各成分の質量比が下記式を満足することを特徴とする樹脂組成物。
(A)/(B)=10/90〜90/10 (i)
{(A)+(B)}/{(C)+(D)}=91/9〜97/3 (ii)
{(A)+(B)+(C)+(D)}/(E)=50/50〜80/20 (iii)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性を有し、反り性が低く、かつ耐衝撃性に優れたポリアリレート樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリアリレート樹脂(A)と、結晶性ポリアミド樹脂(B)と、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と、酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)と、ガラスパウダー(E)とを含有する。
【0008】
本発明に用いられるポリアリレート樹脂(A)は、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、二価フェノールまたはその誘導体とを構成単位とする樹脂であり、溶液重合、溶融重合、界面重合などの方法により製造することができる。
【0009】
ポリアリレート樹脂を構成する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸が例示されるが、溶融加工性および総合的性能の点から、両者の混合物であることが好ましい。混合物におけるテレフタル酸とイソフタル酸の配合比は限定されないが、質量比で、テレフタル酸/イソフタル酸=9/1〜1/9であることが好ましい。溶融加工性や性能のバランスの点を考慮すれば、配合比が7/3〜3/7であることが好ましく、1/1であることが特に好ましい。
【0010】
ポリアリレート樹脂を構成する二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノンなどが挙げられ、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。これらは単独でもよくまた混合物であってもよい。さらにこれらの二価フェノールにエチレングリコール、プロピレングリコールなどを少量併用してもよい。
【0011】
ポリアリレート樹脂(A)の極限粘度は特に限定されないが、機械的特性と流動性の観点から、1,1,2,2−テトラクロロエタンを溶媒として、温度25℃で測定した極限粘度は、0.4〜0.8が好ましく、0.4〜0.7がさらに好ましい。
【0012】
本発明に用いられる結晶性ポリアミド樹脂(B)は、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸とから形成されるアミド結合を有する溶融成形可能な重合体である。
結晶性ポリアミド樹脂(B)の好ましい具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド[ナイロン46]、ポリヘキサメチレンアジパミド[ナイロン66]、ポリヘキサメチレンセバカミド[ナイロン610]、ポリヘキサメチレンドデカミド[ナイロン612]、ポリウンデカメチレンアジパミド[ナイロン116]、ポリウンデカミド[ナイロン11]、ポリドデカミド[ナイロン12]、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド[ナイロンPACM12]、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド[ナイロンジメチルPACM12]、ポリメタキシリレンアジパミド[ナイロンMXD6]、ポリノナメチレンテレフタルアミド[ナイロン9T]、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド[ナイロン11T]、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド[ナイロン11T(H)]及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミド等が挙げられ、その中でもナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
【0013】
結晶性ポリアミド樹脂(B)の相対粘度は特に限定されないが、溶媒として96質量%硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定された相対粘度で、1.5〜5.0の範囲にあるものが好ましく、2.0〜4.0がさらに好ましい。相対粘度が1.5未満では、樹脂組成物の機械的強度が低下するため好ましくない。一方、5.0を超えるものでは、成形性が急速に低下するため好ましくない。
【0014】
本発明の樹脂組成物において、ポリアリレート樹脂(A)と結晶性ポリアミド樹脂(B)の配合割合{(A)/(B)}は、10/90〜90/10(質量比)であることが必要であり、20/80〜80/20であることが好ましい。ポリアリレート樹脂(A)の割合が10質量%未満では、耐熱性を満足する樹脂組成物が得られない場合がある。また、ポリアリレート樹脂(A)の割合が90質量%を超えると、樹脂組成物の流動性と耐薬品性が損なわれる。
【0015】
本発明で用いられるエポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)は、分子内にエポキシ基を含有するオレフィン系共重合体であれば特に限定されないが、例えば、1種以上の不飽和グリシジル単量体と1種以上のオレフィン系不飽和単量体とを共重合して得られる共重合体が好ましい。共重合体(C)の共重合様式は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体交互共重合体のいずれであってもよい。
【0016】
不飽和グリシジル単量体とは、1分子中に、オレフィン系単量体類と共重合しうる不飽和結合を有し、エポキシ基を1個以上有する単量体であり、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸モノグリシジルエステル、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレンp−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセンおよびビニルシクロヘキセンモノオキシドなどを挙げることができる。
【0017】
オレフィン系単量体は、不飽和グリシジル単量体との共重合により、実質的に分子中にエポキシ基を導入できるものならばいかなるものでもよいが、オレフィン類、ビニルエステル類、飽和アルコールとのエステル類、ビニルエーテル類、N−ビニルラクタム類、アクリル酸アミド系化合物が好ましい。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、デセン−1、オクタセン−1、スチレンなどが挙げられる。ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルベンゾエートなどが挙げられる。飽和アルコールとのエステル類としては、アクリル酸やメタアクリル酸と、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、2−エチルへキシルシクロへキシル−、ドデシル−、オクタデシル−などの飽和アルコールとのエステル類が挙げられる。ビニルエーテル類としては、マレイン酸ジエステル、ビニルクロライド、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどが挙げられる。N−ビニルラクタム類としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。これらの1種あるいは2種以上を用いることができる。
【0018】
本発明で用いられるエポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)としては、前記の組合せのうち、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルアクリレート−酢酸ビニル共重合体が特に好都合に用いられる。
【0019】
本発明において用いられるエポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)における不飽和グリシジル単量体の共重合比は、0.05〜95モル%であることが好ましく、0.1〜50モル%であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明で用いられる酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)は、酸無水物を含有するポリオレフィン系共重合体であれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンまたはオレフィン系共重合体に、不飽和ジカルボン酸無水物を共重合して得られるものが好ましい。
【0021】
ポリオレフィンまたはオレフィン系共重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのオレフィン類の単独重合体、あるいはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル重合体、あるいはアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステルの重合体、あるいはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などの異種のオレフィン類、またはオレフィン類とアクリル酸エステルなどのその他の異種単量体との共重合体が挙げられる。共重合体の共重合様式は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0022】
不飽和ジカルボン酸無水物としては、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物およびシス型2重結合を環内に有する脂環式カルボン酸無水物が挙げられる。α,β−不飽和ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
シス型2重結合を環内に有する脂環式カルボン酸無水物の例としては、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−ビシクロ−(2,2,1)−5−へプテン−2,3−ジカルボン酸、メチル−エンド−シス−ビシクロ−(2,2,1)−5−へプテン−2,3−ジカルボン酸、エンド−ビシクロ−(2,2,1)−1,2,3,4,7,7−ヘキサクロロ−2−ヘプテン−5,6−ジカルボン酸などの無水物があり、必要によってはこれらの機能誘導体、たとえばジカルボン酸、ジカルボン酸の金属塩、エステル、アミド、酸ハロゲン化物も共用することができる。
【0023】
本発明で用いられる酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)としては、前記の組合せのうち、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体への無水マレイン酸あるいはエンド−ビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸の無水物の共重合物あるいはグラフト付加物が好都合に用いられる。
【0024】
酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)における不飽和ジカルボン酸無水物の共重合比は、0.05〜95モル%であることが好ましく、0.1〜50モル%であることがさらに好ましい。
【0025】
エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)あるいは酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)を製造する方法としては、公知のいわゆるラジカル共重合法が用いられるほか、オレフィン系単独重合体あるいはオレフィン系共重合体にラジカル発生剤を存在させ、エポキシ基あるいは酸無水物を含む不飽和単量体の1種以上を溶剤あるいは分散媒の存在下または非存在下でラジカルグラフト反応させる方法を挙げることができる。中でも溶融状態でグラフトさせる場合、押出機、ニーダ−、バンバリーミキサーなどの溶融混練機を用いることにより、簡略された方法で極めて短時間に目的とするものを得ることができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物において用いられるエポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)は、反り性及び耐衝撃性を改善するために、(C)/(D)が、1/5〜5/1(質量比)となるように配合することが好ましく、1/4〜4/1となるように配合することがさらに好ましい。この範囲を超えると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下する場合がある。
【0027】
本発明の樹脂組成物において用いられるエポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)の当量比は、反り性及び耐衝撃性を改善するために、(C)/(D)が、1/9〜9/1(当量比)となるように配合することが好ましく、3/7〜7/3となるように配合することがさらに好ましい。この範囲を超えると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下する場合がある。
【0028】
またエポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)の配合量の合計と、ポリアリレート樹脂(A)と結晶性ポリアミド樹脂(B)の配合量の合計とは、{(A)+(B)}/{(C)+(D)}=91/9〜97/3(質量比)であることが必要であり、92/8〜96/4であることが好ましい。エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)の配合量の合計が3質量%未満では衝撃強度改良効果が著しくなく、9質量%を超える場合には衝撃強度改良効果が劣ると共に耐熱性の低下も大きい。
【0029】
本発明では、樹脂組成物の強化材として、ガラスパウダー(E)を使用する。ガラスパウダーとしては、従来公知の方法で製造されるものを使用することができる。例えば、溶融炉でガラス原料を溶融し、この融液を水中に投入して水砕したり、冷却ロールでシート状に成形して、そのシートを粉砕したりして、所望する粒径のパウダーにしたものを使用することができる。本発明において、ガラスパウダー(E)の粒径は特に限定されないが、1〜100μmのものが好ましく用いられる。
【0030】
樹脂組成物におけるガラスパウダー(E)の配合量と、ポリアリレート樹脂(A)、結晶性ポリアミド樹脂(B)、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)および酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)の配合量の合計とは、{(A)+(B)+(C)+(D)}/(E)=50/50〜80/20(質量比)であることが必要であり、60/40〜75/25であることが好ましい。ガラスパウダー(E)の配合量が20質量%未満では、ガラスパウダーを添加した効果が得られず、また50質量%を超えると樹脂組成物の製造が困難である。
【0031】
本発明の樹脂組成物においては、前記の技術分野に好適に用いられるためには、後述するように、ASTM D256に準拠して測定した衝撃強さは、30J/m以上が好ましく、30〜50J/mがより好ましい。また、ASTM D648(荷重1.82MPa)に準拠して測定した荷重たわみ温度は、168℃以上が好ましく、170〜180℃がより好ましい。さらに、反り量は、0.80mm以下が好ましく、0.75mm以下がより好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物においては、ポリアリレート樹脂(A)、結晶性ポリアミド樹脂(B)、ガラスパウダー(E)とを含有する樹脂組成物において、反り性及び耐衝撃性を改善するために、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)を含有することにより、上記衝撃強さ、荷重たわみ温度、反り量を制御することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、着色防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、離型剤等を添加してもよい。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、二軸押出機を用いて、最も上流側に位置するフィード孔(トップフィード)より、所定量のポリアリレート樹脂(A)と、結晶性ポリアミド樹脂(B)と、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と、酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)と、ガラスパウダー(E)とを供給し、押出機下流側先端に取り付けられた紡孔でストランド状に成形した後、冷却し切断する方法が挙げられる。
【0035】
本発明の樹脂組成物を用いて、通常の成形加工方法で目的とする成形品を得ることができる。例えば射出成形、押出成形、吹き込み成形等の熱溶融成形法によって各種の成形品が製造でき、有機溶媒溶液からの流延法により薄膜が製造できる。
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた原料および物性測定方法は次の通りである。
【0037】
1.原料
(A)ポリアリレート樹脂
(A−1)ビスフェノールA/フタル酸共重合体(ユニチカ社製 Uポリマー U−100、ビスフェノールA/フタル酸共重合体=50/50(モル比)、極限粘度:0.64)
【0038】
(B)結晶性ポリアミド樹脂
(B−1)ナイロン6(ユニチカ社製 A1030BRL(相対粘度:2.50(96質量%硫酸、温度25℃、濃度1g/dlで測定)))
【0039】
(C)エポキシ基含有オレフィン系共重合体
(C−1)エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体(住友化学社製 ボンドファーストE)
【0040】
(D)酸無水物含有オレフィン系共重合体
(D−1)エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エステル共重合体(住化CDF製 ボンダインLX4110)
【0041】
(E)ガラスパウダー
(E−1)GP−M10A(日本電気硝子社製)
【0042】
2.測定方法
(1)衝撃強さ
ASTM D256に準拠して測定した。
(2)荷重たわみ温度
ASTM D648に準拠して、荷重1.82MPaにて測定した。
(3)反り量の測定
射出成形により、50mm×50mm、厚さ2mmの平板を作成し、該平板の1辺を固定し、固定した箇所を基準の高さとして、残りの2角の高さの平均を反り量とした。
【0043】
実施例1
ポリアリレート樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、ボンドファーストE、ボンダインLX4110およびガラスパウダーGP−M10Aを表1の割合でクボタ社製連続定量供給装置を用いて、同方向二軸押出機(東芝機械製TEM37BS)により溶融混練した。ダイスからストランド状に引き取った樹脂組成物を水槽を通して冷却固化し、これをペレタイザーでカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。押出条件は、温度設定250〜280℃で、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/h、ダイスから出た樹脂組成物の樹脂温度は270℃であった。
次いで得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製EC100)を用いてシリンダー温度280℃、金型温度100℃の条件で射出成形して物性測定試験片を作成し、各種評価試験を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
実施例2〜12、比較例1〜9
表1に示す成分比率にした他は、実施例1と同様にして試験片を作成し、各種評価試験を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から明らかなように、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)とガラスパウダー(E)を添加した樹脂組成物は、耐熱性を有し、反り性が低く、かつ耐衝撃性に優れていた。
これに対して、比較例1ではポリアリレート樹脂(A)の比率が低いために、樹脂組成物の流動性が低く、成形体を得ることが困難であった。
一方、比較例2では、ポリアリレート樹脂(A)の比率が高いために、樹脂組成物の流動性が低く、成形体を得ることが困難であった。
比較例3では、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)の合計添加量が多いために、一方、比較例4では、それらの合計添加量が少ないために、それぞれ、耐衝撃性に劣るものであった。
比較例5〜7では、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)および/または酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)を含有しないために、いずれも耐衝撃性が劣るものであった。
比較例8では、ガラスパウダー(E)の配合量が少ないため、反り量が大きいものであった。一方、比較例9では、ガラスパウダー(E)の配合量が多いために、樹脂組成物ペレットの製造が困難であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリレート樹脂(A)と、結晶性ポリアミド樹脂(B)と、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(C)と、酸無水物含有オレフィン系共重合体(D)と、ガラスパウダー(E)とを含有し、各成分の質量比が下記式を満足することを特徴とする樹脂組成物。
(A)/(B)=10/90〜90/10 (i)
{(A)+(B)}/{(C)+(D)}=91/9〜97/3 (ii)
{(A)+(B)+(C)+(D)}/(E)=50/50〜80/20 (iii)



【公開番号】特開2012−72215(P2012−72215A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216266(P2010−216266)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】