説明

樹脂製キャップ

【課題】容器の内容物の種類を視覚に依らずに容易に確認し得るようにすることで、視覚障害者の利便性を高めた樹脂製キャップを提供する。
【解決手段】キャップ1の頂面部4又は/及び周壁部3に、容器10の内容物を表示する点字21を設けることで、容器10に入った飲料を飲もうとする飲用者が視覚障害者であったとしても、この者は指先に触れた上記点字21を読み取ることで、健常者の助力を必要とすることなく、容器10の内容物が何であるかを容易に且つ的確に判断することができ、視覚障害者の利便性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ペットボトル等の飲料用容器の注口部に着脱自在に螺合固定される樹脂製キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料用容器として、プラスチック材の一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)を素材とする所謂「ペットボトル」が広く普及している。このペットボトルは、その上端部に設けた注口部にネジ式のキャップが螺着されるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
また、近年は、例えば、アルミラミネート袋とか蝋引き紙袋等の袋体も飲料用容器として用いられている。このような袋体からなる飲料用容器は、該袋体の上部に樹脂材からなる多段鍔付管状の注口部材を固着し、この注口部材にネジ式のキャップを螺着するようになっている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
そして、これらペットボトルあるいはアルミラミネート袋等のような容器に入れられた飲料を飲む場合には、飲用者は、上記容器を一方の手でもち、他方の手の指先部分でキャップを掴み、これをねじ戻して開けるのが通例である。
【0005】
【特許文献1】 特開2006−240633号公報
【特許文献2】 特開2007−176596号公報
【特許文献3】 特開2006−96421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような容器に入れて販売される飲料の種類は多く、通常、飲用者は、該容器のラベル等の外装表示を視認することで、容器内の飲料の種類が何であるかを確認するが、このような視認による容器内の飲料の種類の確認は、視覚障害の無い健常者にとっては何等支障の無い日常的な行為である。
【0007】
しかし、飲用者が視覚障害をもつ者である場合には、容器の外装表示を視認して容器内の飲料の種類を確認することは極めて困難、あるいは不可能であり、そのため、例えば、多種類のペットボトル入り飲料が混在している場合において、その中から自分が欲している特定種類の飲料を選択することができず、これと異なる他の種類の飲料を誤って選択してしまうとか、飲料の選択の度に健常者の助力を必要とする、など視覚障害者の利便性の確保という点において問題があった。
【0008】
そこで、本願発明は、上記問題点に鑑み、ペットボトル等の容器に用いられる樹脂製キャップにおいて、該容器の内容物の種類を視覚に依らずに容易に確認し得るようにすることで、視覚障害者の利便性を高めることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1の発明では、容器10の注口部12に着脱自在に螺合固定される樹脂製キャップ1において、該キャップ1の頂面部4又は/及び周壁部3に、上記容器10の内容物を表示する点字21、22を設けたことを特徴としている。
【0010】
本願の第2の発明では、容器10に取付けられた注口部材15に着脱自在に螺合固定される樹脂製キャップ1において、上記キャップ1の頂面部4又は/及び周壁部3に、上記容器10の内容物を表示する点字21、22を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本願の第1及び第2の発明に係る樹脂製キャップによれば、容器10に入った飲料を飲む場合、飲用者は、容器10を一方の手でもち、他方の手の指先部分でキャップ1を掴み、これをねじ戻して開けるのが通例であるところ、該キャップ1の頂面部4又は/及び周壁部3に上記容器10の内容物を表示する点字21、22を設けているので、この飲用者は上記キャップ1をねじ戻すとき、飲用者が意識的に上記点字21、22に触れようとする場合は勿論のこと、意識しない場合でも手指の動作の流れの中で、指先が上記点字21、22に触れることになる。この結果、飲用者が視覚障害者であっても、この者は、上記点字21、22部分を指先で触れてこれを読み取ることで、健常者の助力を必要とすることなく、該容器10の内容物が何であるかを自分自身で容易に且つ的確に判断することができ、視覚障害者の利便性の向上という面において極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0013】
A:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係るペットボトル用キャップ1及び該キャップ1が取付けられるペットボトル10を示している。
【0014】
上記ペットボトル10は、特許請求の範囲中の「容器」に該当するもので、所定の形状及び所定容量をもつ本体部11と、該本体部11の上端に連続形成され螺条13を備えた注口部12から構成される。そして、このペットボトル10の注口部12に次述のキャップ1が着脱自在に螺合され、該キャップ1の螺入(ネジ込み)によって閉栓され、螺解(ネジ戻し)によって開栓される。
【0015】
上記キャップ1は、樹脂材により一体成形されるものであって、周壁部3と頂面部4を備えるとともに、該周壁部3の下端側には掛止リング2が設けられている。
【0016】
上記周壁部3は、平面視における外周形状を円形としたものであって、その外周面には上下方向へ延出する多数の細溝32が設けられている。なお、このキャップ1の上記周壁部3の内面には、上記ペットボトル10側の螺条13に螺合する螺条(図示省略)が設けられていることは言うまでも無い。
【0017】
上記掛止リング2は、小幅環状体で構成されるものであって、所定数の破断部(図示省略)を介して上記周壁部3の下端側に連続形成されている。
【0018】
一方、上記キャップ1の上記頂面部4は平滑な平面状に形成されるとともに、この頂面部4には、該キャップ1が使用されたペットボトルの内容物が何であるかを表示する点字21が設けられている。
【0019】
なお、この実施形態では、ペットボトルの内容物が「茶」である場合を例にとり、上記キャップ1の頂面部4に二マスからなる「ちゃ」を表現する点字21を設けている。
【0020】
このように、キャップ1の頂面部4に、ペットボトルの内容物の種類を表示する点字21を設けることで、以下のような特有の効果が得られる。
【0021】
例えば、キャップ1が装着されたペットボトル10の購入を欲する者、あるいはこのペットボトル10の内容物たる特定の飲料を飲もうとする者は、先ず、ペットボトル10の内容物の種類を確認するのが通例である。この場合、その者が健常者であれば、ペットボトル10に貼付されたラベルとかペットボトルの内容物を直接に視認することでその内容物の種類を容易に確認することができる。このような行為は、健常者にとっては何等支障なく行える日常的な行為である。
【0022】
これに対して、上記の「者」が視覚障害者である場合には、視覚によって内容物を確認することはできない。しかし、この実施形態のように上記キャップ1の頂面部4に、その内容物たる「茶」を表示する上記点字21が設けられていれば、その者は、ペットボトル10の購入あるいはペットボトル10に入った飲料を飲む前に、先ず、上記キャップ1の点字21部分を指先で触れてこれを読み取ることで、このペットボトル10の内容物が何であるかを容易に且つ的確に判断することができる。
【0023】
従って、例えば、多種類のペットボトル入り飲料が混在している場合でも、上記点字21による表示を確認することで、健常者の助力を必要とすることなく、多種類のペットボトルの中から自分が欲している特定種類の飲料を容易且つ的確に選択することができ、視覚障害者の利便性という面において極めて有用である。
【0024】
なお、ここでは、上記点字21として「茶」を表示するものを例示しているため、該点字21は二マスの表示となるが、この点字21は内容物に対応して変更表示されるものであって、例えば、内容物が「水」であるような場合には、三マスの「みず」を表示する点字が設けられることは勿論である。
【0025】
B:第2の実施形態
図2には、本願発明の第2の実施形態に係るペットボトル用キャップ1を示している。このキャップ1は、上記第1の実施形態の場合と同様に、周壁部3と頂面部4を備えているが、該第1の実施形態では上記周壁部3の平面視における外周形状を円形としていたのに対して、この実施形態では、上記周壁部3の平面視における外周形状を、平面状の角面31,31、・・を周方向に六個連接した六角形状としている。
【0026】
このように、上記キャップ1の周壁部3の外周形状を六角形状(六角形状を含む多角形状)に設定したのは、最初の開栓時には、キャップ1の上記周壁部3と上記掛止リング2を連結している上記破断部を破断する必要があることから比較的大きなネジ戻し力が必要であり、また、次回以後の閉栓時にはシール性を十分に確保する必要上、比較的大きなネジ込み力を必要とし、さらに開栓時には閉栓時のネジ込み力を上回るネジ戻し力を必要とすることから、これらを考慮して、手指の活動力に劣る高齢者とか障害者とか子供でも、手指が滑ることなく容易に且つ小さな把持力及び螺回力でキャップ1を着脱することができるように、上記各角面31間の稜線33部分をそれぞれ手指の掛止部として機能させることを意図したものである。
【0027】
一方、上記キャップ1の各角面31のうち、任意の一つの角面31を平滑面とする一方、他の各角面31にはそれぞれ上下方向へ延出する多数の細溝32が設けられている。
【0028】
そして、この実施形態では、ペットボトルの内容物が「茶」である場合を例にとり、平滑面で構成される上記頂面部4と、上記周壁部3の平滑面で構成される任意の角面31のそれぞれに、二マスからなる「ちゃ」を表現する点字21、22を設けている。
【0029】
このように、上記頂面部4に点字21を設けるのに加えて、上記キャップ1の周壁部3の外周形状を六角形状としたことで得られる上記角面31を利用して、ここにも上記点字22を設けることで、視覚障害者が上記キャップ1に触れて点字を読み取る場合、これら二つの点字21、22の何れか一方を確認することで該キャップ1が適用されるペットボトル10の内容物が何であるかを容易に知ることができることから、視覚障害者の利便性がさらに向上することになる。
【0030】
なお、本願発明では、上記キャップ1の周壁部3の外周形状の角数については、何等の制約も無いことは言うまでもない。
【0031】
また、上記以外の構成及び作用効果については、第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0032】
C:第3の実施形態
図3には、本願発明の第3の実施形態に係るキャップ1を示している。このキャップ1は、例えば、アルミラミネート袋を飲料用容器10として利用したものに適用されるキャップである。
【0033】
即ち、このアルミラミネート袋でなる容器10は、その上端部分に樹脂製の注口部材15を固着しており、この注口部材15に対してキャップ1を取付けるようになっている。この場合、上記注口部材15は、上記容器10への固着構造との関係から、比較的小径の縦長筒状に形成されているため、該注口部材15に螺着される上記キャップ1も比較的小径の縦長形体とされている。
【0034】
このような比較的小径の縦長形体のキャップ1においても、その頂面部4は平滑な平面状とされているため、ここに上記点字21を設けている。
【0035】
このような小径縦長形体のキャップ1にあっては、これを取り外す際には、縦長面である周壁部3を掴んで螺回操作することが多く、上記頂面部4に触れる機会は少ないとも考えられるが、通常は、螺回操作に先立って、上記頂面部4の上記点字21に触れて容器10の内容物を確認するのが通例であることを考え併せれば、この実施形態の場合にも、上記第1及び第2の実施形態の場合と同様に、上記キャップ1の頂面部4に上記点字21を設けることで、視覚障害者において上記容器10の内容物が何であるのかを容易に且つ的確に判断することができ、視覚障害者の利便性の向上という点において極めて有用であるといえる。
【0036】
D:第4の実施形態
図4には、本願発明の第4の実施形態に係るキャップ1を示している。このキャップ1は、例えば、蝋引き紙製の袋を飲料用容器10として利用したものに適用されるキャップであって、その適用対象は上記第1の実施形態の場合と異なるものの、上記キャップ1それ自体の構造は上記第1の実施形態の場合と同じである。
【0037】
従って、この実施形態のキャップ1においても、その頂面部4に上記点字21を設けることで、視覚障害者において上記容器10の内容物が何であるのかを容易に且つ的確に判断することができ、視覚障害者の利便性の向上という点において極めて有用であるといえる。
【0038】
E:その他
(1) 上記各実施形態では、上記点字21、22を上記キャップ1と一体的に成形していたが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、他の実施形態においては、例えば、予め所定の点字表示が設けられた点字シートを用意しておき、上記キャップ1を成形した後、該キャップ1の頂面部4とか周壁部3の角面31に上記点字シートを事後的に貼付して上記点字21及び点字22とすることもできる。
【0039】
(2) 上記各実施形態では、上記キャップ1の適用対象として、ペットボトル用キャップ(第1及び第2の実施形態)と、袋体容器用キャップ(第3の実施形態)と、紙製容器(第4の実施形態)をそれぞれ示したが、これらはあくまでも例示であって、これらに限定されないことは勿論であり、このほかに、例えば、ガラス容器用キャップとか金属容器用キャップ等、種々の容器のキャップとして適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】 本願発明の第1の実施形態に係る樹脂製キャップを示す斜視図である。
【図2】 本願発明の第2の実施形態に係る樹脂製キャップを示す斜視図である。
【図3】 本願発明の第3の実施形態に係る樹脂製キャップを示す斜視図である。
【図4】 本願発明の第4の実施形態に係る樹脂製キャップを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ・・キャップ
2 ・・掛止リング
3 ・・周壁部
4 ・・頂面部
10 ・・容器
11 ・・本体部
12 ・・注口部
13 ・・螺条
14 ・・嵌合溝
21 ・・点字
22 ・・点字
31 ・・角面
32 ・・細溝
33 ・・稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(10)の注口部(12)に着脱自在に螺合固定される樹脂製キャップ(1)であって、
上記キプ(1)の頂面部(4)又は/及び周壁部(3)に、上記容器(10)の内容物を表示する点字(21)、(22)が設けられていることを特徴とする樹脂製キャップ。
【請求項2】
容器(10)に取付けられた注口部材(15)に着脱自在に螺合固定される樹脂製キャップ(1)であって、
上記キプ(1)の頂面部(4)又は/及び周壁部(3)に、上記容器(10)の内容物を表示する点字(21)、(22)が設けられていることを特徴とする樹脂製キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−40499(P2009−40499A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229530(P2007−229530)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(507217453)多和砕石工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】