説明

樹脂製キャップ

【課題】コストアップを招来することなく、コールドマークによる外観不良を抑えることができる樹脂製キャップを提供する。
【解決手段】
圧縮成形法を用いて成形され、天板2及び側壁3からなるキャップ本体5とこのキャップ本体5の開口端に破断可能な複数のブリッジ11を介して連結されたピルファープルーフバンド4とを備えた樹脂製キャップ1であり、凹金型60へ装填した溶融樹脂100で先行して型取られる天板2の外面g1の表面粗さをRa値で1.3〜6.0μmとすることで、天板2の外面g1に現れたコールドマークを目立たなくすると共に、コールドマークの発生自体を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料物等の容器を密封するために装着され、コールドマークによる外観不良を抑えることができる樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料物等の容器に装着される樹脂製キャップとして、例えば、円盤状の天板、及びこの天板の周縁から延びる側壁からなるキャップ本体と、キャップ本体の開口端に破断可能な複数のブリッジを介して連結されたピルファープルーフバンドとを備えることで、不正開栓の有無を確認できるものが広く用いられている。開栓されていることを購入前の消費者が確認できれば、いたずらによる被害を防止でき、内容物の品質が保証される。
【0003】
上記の樹脂製キャップは、射出成形法か圧縮成形法を用いて成形するのが一般的である。射出成形法においては、溶融樹脂が圧入されるため、樹脂の配向が生じて成形品に変形が起こり易く、特にゲート近傍では残留歪みによる変形が顕著に現れることがある。また、細いゲートを通じて溶融樹脂を装填するため、成形時間がそれだけ長くなるという欠点もある。一方、圧縮成形法では、溶融樹脂は成形金型へ直接的に装填されるため、成形品の変形が生じ難く、また、射出成形法よりも成形時間を短縮できるといった利点がある。しかし、溶融樹脂を成形金型へ装填した際、高温となっている溶融樹脂が低温の成形金型へ接触して当該溶融樹脂に急な温度変化が起こる。そのため、例えば図4に示す樹脂製キャップ50において、先行して型取られる天板51の外面51aにシワのような模様(コールドマーク)52が現れることがあり、外観不良となってしまう。
【0004】
その対策として、圧縮成形用の成形金型に形成した通路に所定温度の加熱媒体を流し、成形金型の温度を上げながら溶融樹脂を装填する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5−3373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように成形金型内に加熱媒体を流す方法では、加熱媒体によって昇温された成形金型を冷却するための時間を要するため、圧縮成形法を用いることで成形時間を短縮できるといった上記の利点を生かすことができない。それに加え、加熱媒体を流すための機器を構築することや、そのメンテナンスをするための費用がかかる。これらにより、コストアップを招いてしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、コストアップを招来することなく、コールドマークによる外観不良を抑えることができる樹脂製キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、次の技術的手段を講じた。
本発明は、容器口部の開口端に位置する天板とこの天板の周縁から軸方向一方側へ延びる筒状の側壁とを有する樹脂製キャップであって、溶融樹脂を成形金型へ装填した際に先行して型取られた成形部位の外面の表面粗さがRa値で1.3〜6.0μmであることを特徴とする。
【0009】
上記本発明の樹脂製キャップによれば、溶融樹脂を成形金型へ装填した際に先行して型取られた成形部位の外面の表面粗さがRa値で1.3〜6.0μmであるため、当該成形部位の外面に現れたコールドマークは、その表面粗さに打ち消された状態となって、製品外観上、目立たなくなる。さらに、上記の成形部位は、上記所定の表面粗さを出現させるために表面を粗くした成形金型で型取られることになることから、当該成形金型へ接触する溶融樹脂の急な温度変化が起こり難くなり、当該成形部位の外面のコールドマークの発生自体をも抑えることができる。これらにより、先行して型取られる成形部位の外面のコールドマークによる外観不良を抑えることができる。本発明の樹脂製キャップを成形する際には、成形金型における加熱媒体による昇温分の冷却は不要であり、加熱媒体を流すための機器を構築することや、そのメンテナンスをする必要がない。そのため、コストアップを招かないようにすることができる。
【0010】
例えば、一般的な圧縮成形法では、溶融樹脂を成形金型へ装填した際に先行して型取られる前記の成形部位は天板であり、この天板の外面の表面粗さをRa値で1.3〜6.0μmとすることで、当該天板の外面に現れたコールドマークは、製品外観上、目立たなくなる。天板を型取る成形金型は、上記所定の表面粗さを出現させるために表面を粗くしているため、当該天板の外面のコールドマークの発生自体をも抑えることができる。
【0011】
上記本発明の樹脂製キャップは、多様なタイプの樹脂製キャップに適用することが可能であり、例えば、前記天板及び前記側壁からなるキャップ本体と、このキャップ本体の開口端に破断可能な複数のブリッジを介して連結されたピルファープルーフバンドとを備え、装着状態からの開栓操作で前記複数のブリッジが破断され、前記キャップ本体と前記ピルファープルーフバンドとが互いに分離されるピルファープルーフタイプのものが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
上記の通り、先行して型取られる成形部位の外面に現れたコールドマークは、製品外観上、目立たなくなることに加え、当該成形部位の外面のコールドマークの発生自体をも抑えることができるため、コールドマークによる外観不良を抑えることができる。本発明の樹脂製キャップを成形する際には、成形金型における加熱媒体による昇温分の冷却は不要であり、加熱媒体を流すための機器を構築することや、そのメンテナンスをする必要がなく、コストアップを招かないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂製キャップの断面図である。
【図2】図1の樹脂製キャップの斜視図である。
【図3】(a)は成形金型で溶融樹脂から樹脂製キャップが成形される状態を表す模式図であり、(b)は溶融樹脂が凹金型の底面部分へ接触している状態を表す拡大模式図である。
【図4】天板の外面にコールドマークが現れた従来の樹脂製キャップの斜視図である。
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂製キャップ1の断面図であり、図2は、その樹脂製キャップ1の斜視図である。樹脂製キャップ1は、図示しない容器口部に装着されるものであり、圧縮成形法を用いてポリプロピレンで一体的に成形されている。この樹脂製キャップ1は、容器口部の開口端に位置する天板2と、この天板2の周縁2aから軸方向一方側(図1下方)へ向かって延ばされ、容器口部の外周に位置される側壁3と、この側壁3の下端縁3aに連結されたピルファープルーフバンド4とを備えている。なお、樹脂製キャップ1を形成する素材は、特に限定されるものではなく、本実施形態で用いたポリプロピレンの他、ポリエチレン、ポリ乳酸等が好適に用いられる。
【0015】
天板2及び側壁3によってキャップ本体5が構成されている。天板2は、所要寸法を有する円盤状に形成されており、当該天板2の裏面2bには、内方へ向かって延出されたインナーリング6と、このインナーリング6の径方向外側で内方に向かって突出する環状突部7と、この環状突部7のさらに径方向外側でインナーリング6よりも短い寸法で内方へ向かって延出されたアウターリング8とが一体形成されている。樹脂製キャップ1が容器口部に装着されると、インナーリング6は当該容器口部の内周面へ密着され、それと共にアウターリング8が当該容器口部の外周面へ密着する。環状突部7は、容器口部の開口端面に当接して変形される。
【0016】
インナーリング6、アウターリング8、及び環状突部7の存在による多重のシール構造が、容器口部を良好にシールすることで、容器口部の密閉性が高く維持される。本実施形態の樹脂製キャップ1では、以上のようにパッキンを設けずに容器口部を密閉できるワンピース構造を採用しているが、樹脂性キャップの形態は限定されるものではなく、パッキンを設けたツーピース構造の樹脂製キャップであってもよい。
【0017】
側壁3は、所要寸法を有する円筒状に形成されたものであり、その内周面3bには、容器口部に螺合される雌ねじ部9が形成されている。なお、雌ねじ部9は、周方向に所定間隔をおいて連続状に設けられた複数の突状部9Aで構成されている。側壁3の外周面3cには、上下方向に延びるローレット溝10が形成されている。
【0018】
側壁3とピルファープルーフバンド4との境目部分には、複数のブリッジ11が周方向に沿って所定間隔をおいて形成されている。複数のブリッジ11は、キャップ本体5とピルファープルーフバンド4とを互いに連結しており、所定の力で引っ張られると破断するようになっている。ピルファープルーフバンド4の内側には係止部12が設けられている。係止部12は、ピルファープルーフバンド4の下端部4aから内側斜め上方へ折り返され、かつ周方向に沿って連続的に若しくは断続的に形成されている。係止部12は、内方、外方及び下方へ弾性変形可能となっている。そして、この係止部12は、樹脂製キャップ1が容器口部に装着された状態で、容器口部の図示しないビード部の下側へ位置され、開栓操作によって当該ビード部へ係止される。
【0019】
容器口部に装着された樹脂製キャップ1が開栓方向に回され始めると、係止部12が容器口部のビード部に係止され、複数のブリッジ11に引張力が作用し始め、さらに樹脂製キャップ1が回されると、複数のブリッジ11は大きく引っ張られて次第に細くなっていき、破断に至る。これにより、天板2及び側壁3よりなるキャップ本体5がピルファープルーフバンド4から分離され、容器が開栓される。
【0020】
図3(a)は成形金型で溶融樹脂100から樹脂製キャップ1が成形される状態を表す模式図である。成形金型は、溶融樹脂100が装填される凹金型60と、この凹金型60に組み合わされる凸金型65とからなる。凹金型60の底面部分61は、樹脂製キャップ1の天板2を型取る部位であり、側面部分62は、同キャップ1の側壁3及びピルファープルーフバンド4を型取る部位である。図3(b)は溶融樹脂100が凹金型60の底面部分61へ接触している状態を表す拡大模式図である。図示しない刃で切り取られた溶融樹脂100が凹金型60へ装填されると、その溶融樹脂100は、底面部分61へ最初に接触し、当該凹金型60へ組み合わされる凸金型65の押圧力によって当該底面部分61の全体に渡って押し広げられ、天板2が型取られる。続いて、溶融樹脂100は、凹金型60と凸金型65間に行き渡り、側壁3及びピルファープルーフバンド4が型取られる。
【0021】
凹金型60の底面部分61で型取られる天板2の外面g1の表面粗さはRa値で1.3〜6.0μmとなっている。表面粗さが調整された底面部分61へ接触する溶融樹脂100は、図3(b)のように当該底面部分61へ面接触ではなく無数の突部分へ点接触することになり、徐々に接触面積を広げていく。そのため、溶融樹脂100に急な温度変化が起こり難くなっている。
【0022】
一般に、凹金型の底面部分では、溶融樹脂は長く接することになるので、天板にコールドマークが発生し易い。凹金型の側面部分では、溶融樹脂は急に押し広げられることから、当該側面部分に接触している溶融樹脂の表層部と、溶融樹脂の内部との温度差が少なくなり、天板以外の部位にコールドマークは発生し難い。本実施形態では、凹金型60へ装填される溶融樹脂100は、上述のように凹金型60の底面部分61において急な温度変化が起こり難くなっており、例えば、凹金型の底面部分が鏡面仕上げされている場合よりも急冷され難くなっている。これにより、凹金型60の底面部分61で型取られる天板2のコールドマークの発生を抑えることができる。
【0023】
また、天板2の外面g1の表面粗さはRa値で1.3〜6.0μmとなっているため、仮に、当該天板2の外面g1にコールドマークが発生した場合であっても、当該コールドマークを構成する段差等は、粗くなっている天板2の外面g1の凹凸で打ち消された状態となる。これにより、天板2の外面g1に現れてしまったコールドマークは、製品外観上、目立たなくなっている。以上の点から、先行して型取られる天板2のコールドマークによる外観不良を抑えることができる。
【0024】
本実施形態では、樹脂製キャップ1のうち先行して型取られる成形部位を天板2としたが、先行して型取られる成形部位を側壁3やピルファープルーフバンド4として、その外面g2の表面粗さをRa値で1.3〜6.0μmとしてもよい。
【0025】
先行して型取られる成形部位(例えば天板2)の外面の表面粗さはRa値で1.3〜6.0μmが好ましく、2.0〜3.0μmがより好ましい。外面の表面粗さがRa値で1.3μm未満であれば、コールドマークは打ち消されずに、外観上、目立つようになるか、又は成型金型の表面粗さによる接触面積の観点からコールドマークが発生してしまうことになる。外面の表面粗さがRa値で6.0μmを超えれば、綺麗に印刷されない等の印刷不良の問題が生じてしまう。つまり、先行して型取られる成形部位の外面の表面粗さがRa値で1.3〜6.0μmの範囲外となれば、良好な外観を得られなくなるおそれがある。
【0026】
さらに、本実施形態の樹脂製キャップ1を成形する際には、成形金型における加熱媒体による昇温分の冷却は不要であり、加熱媒体を流すための機器を構築することや、そのメンテナンスをする必要がなく、コストアップを招かないようにすることができる。以上の点から、コストアップを招来することなく、コールドマークによる外観不良を抑えることができる。
【0027】
上記で開示した実施形態は、本発明に係る樹脂製キャップを例示したものであり、各部の形状、寸法等は適宜変更されるものである。別体のパッキンで容器口部を密閉するツーピースキャップに適用することも勿論可能であり、ピルファープルーフタイプではない他の樹脂製キャップへ適用することもできる。本発明の樹脂製キャップが適用される容器はどのようなものでもよく、容器口部の形状を限定するものでもない。本発明の樹脂製キャップは、圧縮成形法で成形されたものに限られず、例えば射出成形法などの他の成形法を用いて成形されたものであってもよい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。凹金型の底面部分の表面粗さの異なる成形金型を5種類用意し、それぞれの成形金型で複数の樹脂製キャップを成形した。各成形金型で成形した複数の樹脂製キャップから6個をサンプリングし、サンプリングした各樹脂製キャップの天板の外面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を計測し、天板のコールドマークによる外観不良を目視で判定すると共に、天板へ印刷を施して適正に印刷されるか否かを目視で判定した。結果は表1のようであった。
【0029】
【表1】

【符号の説明】
【0030】
1 樹脂製キャップ
2 天板
3 側壁
4 ピルファープルーフバンド
5 キャップ本体
50 従来の樹脂製キャップ
51 天板
52 コールドマーク
60 凹金型
61 底面部分
62 側面部位
65 凸金型
100 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部の開口端に位置する天板とこの天板の周縁から軸方向一方側へ延びる筒状の側壁とを有する樹脂製キャップであって、溶融樹脂を成形金型へ装填した際に先行して型取られた成形部位の外面の表面粗さがRa値で1.3〜6.0μmであることを特徴とする樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記成形部位が前記天板であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記天板及び前記側壁からなるキャップ本体と、このキャップ本体の開口端に破断可能な複数のブリッジを介して連結されたピルファープルーフバンドとを備え、装着状態からの開栓操作で前記複数のブリッジが破断され、前記キャップ本体と前記ピルファープルーフバンドとが互いに分離されるピルファープルーフタイプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112399(P2013−112399A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262236(P2011−262236)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】