樹脂製品の透光部形成方法、透光部を有する電気機器用の筐体の製造方法
【課題】生産効率が高く、問題点のない、樹脂製品の透光部形成方法を提供する。
【解決手段】透光部材の片面に着色遮蔽層を形成する着色遮蔽層形成工程、透光部材の透光部形成部及び透光部形成部の周辺の着色遮蔽層の上に粘着剤層付シートを貼付ける粘着剤層付シート貼付工程、粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを、透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断する切断工程、透光部形成部の粘着剤層付シートを剥離除去する透光部粘着剤層付シート剥離除去工程、透光部形成部の着色遮蔽層及び透光部形成部の周辺の粘着剤層付シートの上に粘着剤層または接着剤層を積層する粘接着層積層工程、及び、透光部形成部の周辺の粘着剤層付シートを剥離除去することにより、粘着剤層付シートとともに透光部形成部の着色遮蔽層を除去して透光部を形成する透光部形成工程をこの順で備えている樹脂製品の透光部形成方法。
【解決手段】透光部材の片面に着色遮蔽層を形成する着色遮蔽層形成工程、透光部材の透光部形成部及び透光部形成部の周辺の着色遮蔽層の上に粘着剤層付シートを貼付ける粘着剤層付シート貼付工程、粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを、透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断する切断工程、透光部形成部の粘着剤層付シートを剥離除去する透光部粘着剤層付シート剥離除去工程、透光部形成部の着色遮蔽層及び透光部形成部の周辺の粘着剤層付シートの上に粘着剤層または接着剤層を積層する粘接着層積層工程、及び、透光部形成部の周辺の粘着剤層付シートを剥離除去することにより、粘着剤層付シートとともに透光部形成部の着色遮蔽層を除去して透光部を形成する透光部形成工程をこの順で備えている樹脂製品の透光部形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製品の透光部形成方法、及び、透光部を有する電気機器用の筐体の製造方法、及び、そのような筐体を備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な透光部が設けられている携帯電話機などの筐体は、LEDなどの内部に存在する光源の光を遮蔽するために隠蔽性を備えた、着色された樹脂で成形された筐体主要部材と、内部の液晶表示装置などの表示が外部から見えるように透明樹脂で成形された表示用の透光部材と、を組み合わせて構成されている。
【0003】
このように筐体主要部材と透光部材との2つの部材からなるために、衝撃により分解破損しやすく、隙間から水が内部に入りやすいなど、製品強度及び防水性に問題があった。さらに、それぞれの部品を成型する工程、組み合わせる工程等製造工程が多く、生産効率が低かった。
【0004】
ここで、特許第3366649号公報(特許文献1)では、上記問題を解決するために、遮光部が転写箔層として設けられたフィルムを用いるインモールド成形により筐体を成形し、上記フィルムの遮光部を筐体外面に転写すると云う技術が提案されている。しかしながら、フィルムの送り時の位置決めが困難であり、わずかであれずれが生じれば不良品となり、また、成形時に、成形される筐体の形状に沿うようにフィルムが延伸されるが、この際に、所定の箇所に上記透明窓部が位置するように制御することが困難である上に、コーナー部分の曲率が大きい立体的な筐体の成形には応用ができないと云う問題がある。
【0005】
また、Wo2006/095781公報(特許文献2)で提案されている技術では、雌金型と第1の雄金型とを用いて透光部を射出成形したのち、成形された透光部を雌金型に残した状態で第1の雄金型を第2の雄金型と交換し、次いで、非透光部を前記透光部と一体に成形すると云う技術であるが、この場合、特殊な射出成形機システムが必要となる上、生産効率が極めて低く、高コストとなると云う問題がある。
【0006】
そこで、本発明者等は、透光樹脂により筐体全体を成形したのちに、透光部裏面側にマスキングテープを貼付し、次いでこの筐体の裏面側のマスキングを施した部分も含めて印刷を施し、その後にマスキングテープを剥離して透光部、及び、非透光部を形成する方法について検討した。
【0007】
しかし、この方法には次の(1)〜(4)に示すような4つの問題点があることが判った。
(1)非透光部に高い隠蔽性が必要な場合には印刷層を厚くする必要があり、このとき、マスキングテープが印刷層の中に埋もれてしまい、その剥離作業が非常に困難となる。
(2)ベタ印刷の際、マスキングテープの透光部輪郭部にインキが十分に行き渡らず、そのために透光部の輪郭がシャープに形成されない。
(3)マスキングテープ剥離の際に、透光部外周部の印刷層も同時に剥離してしまい、このとき、透光部の輪郭が汚くなり、その結果、良品率が低くなる。
(4)マスキングテープを所定の位置に貼付する作業が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3366649号公報
【特許文献2】特許国際公開2006/095781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、生産効率が高く、そして、上記した問題点のない、樹脂製品の透光部形成方法、及び、透光部を有する電気機器用の筐体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂製品の透光部形成方法は前記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、樹脂からなる透光部材の片面に着色遮蔽層を形成する着色遮蔽層形成工程、前記透光部材の透光部形成部及び該透光部形成部の周辺の着色遮蔽層の上に粘着剤層付シートを貼付ける粘着剤層付シート貼付工程、前記粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを、前記透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断する切断工程、前記透光部形成部の前記粘着剤層付シートを剥離除去する透光部粘着剤層付シート剥離除去工程、前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に粘着剤層または接着剤層を積層する粘接着層積層工程、及び、前記透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートを剥離除去することにより、該粘着剤層付シートとともに前記透光部形成部の着色遮蔽層を除去して透光部を形成する透光部形成工程をこの順で備えていることを特徴とする樹脂製品の透光部形成方法である。
【0011】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部形成工程の後に、前記透光部に有色透光層を積層する有色透光層積層工程を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記接着剤層が硬化性接着剤であり、かつ、前記粘接着層積層工程が、前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に該硬化性接着剤を塗布する硬化性接着剤塗布工程、及び、前記硬化性接着剤を硬化させる硬化性接着剤硬化工程をこの順で備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項4に記載の通り、請求項3に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記硬化性接着剤が、光硬化接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【0014】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部材の透光部形成部にあらかじめインモールド転写による意匠層が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記切断工程がレーザアブレーション法によって行われることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項7に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部材が透明であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部が、文字、図形、マーク、または、デザインとして設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項9に記載の通り、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部材が電気機器の筐体であり、かつ、前記着色遮蔽層形成工程において、該筐体の内面に着色遮蔽層が設けられることを特徴とする。
【0019】
本発明の電気機器は請求項10に記載の通り、請求項9に記載の樹脂製品の透光部形成方法により透光部が形成された筐体を備えていることを特徴とする電気機器である。
【0020】
本発明の電気機器は請求項11に記載の通り、請求項10に記載の電気機器において、前記透光部の前記筐体内側に表示装置が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の樹脂製品の透光部形成方法によれば、粘着剤層付シートの剥離作業は容易であり、透光部の縁はシャープでかつ設計通りのものとなり、さらに粘着剤付シートの貼り付け作業には厳密な位置合わせが不要でありながら、レーザ照射装置に治具などにより被処理部材をセットすることにより、所定の正確な位置に透光部を形成することができ、かつ、低コストで透光部を形成することができる。
【0022】
さらに、請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、透光部ごとに、または、透光部内を部分的に、色を変えたり、スモーク(乳白色やカラースモーク)とすることができる。
【0023】
さらに、請求項3に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、着色遮蔽層を形成する樹脂との接着性が良好となるために、着色遮蔽層をより確実に透光部から剥離させることができる。
【0024】
さらに、請求項4に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、接着剤の硬化において加熱が不要で短時間で進行するために、基材とする透光部材の材質選択の幅が広がるとともに、熱変形などの不都合があらかじめ防止され、短時間での硬化処理が可能となる。
【0025】
さらに、請求項5に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、透光部に意匠性を容易に付与することができる。
【0026】
さらに、請求項6に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、切断工程での切断箇所以外の部分が高熱とならないので、基材とする透光部材の材質選択の幅が広がるとともに、熱変形や変色などの不都合があらかじめ防止される。
【0027】
さらに、請求項7に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、LCDなどの表示装置(表示部)と透光部とを組み合わせて各種情報を表示させることができる。
【0028】
さらに、請求項8に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、高いデザイン性を持たせたり、あるいは、商標等を効果的に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部材1を示す図)である。図1(a)はモデル正面図、図1(b)は図1(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図2】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部材1に着色遮蔽層2を設けた状態を示す図)である。図2(a)はモデル正面図、図2(b)は図2(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図3】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(着色遮蔽層の上の、透光部形成部及び該透光部形成部の周辺に粘着剤層付シートを貼り付けた状態を示す図)である。図3(a)はモデル正面図、図3(b)は図3(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図4】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(粘着剤層付シート及び着色遮蔽層を、透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断した状態を示す図)である。図4(a)はモデル正面図、図4(b)は図4(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図5】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部形成部の粘着剤層付シートを剥離除去した状態を示す図)である。図5(a)はモデル正面図、図5(b)は図5(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図6】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部形成部の着色遮蔽層及びその周辺の粘着剤層付シートの上に接着剤層を積層した状態を示す図)である。図6(a)はモデル正面図、図6(b)は図6(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図7】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(上記粘着剤層付シート、接着剤層及び接着剤層と接着されている透光部形成部の着色遮蔽層を剥離除去し、透光部が形成された状態を示す図)である。図7(a)はモデル正面図、図7(b)は図7(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図8】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(有色透光層を積層した透光部(文字マーク)を設けた例)である。図8(a)はモデル正面図、図8(b)は図8(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図9】携帯電話の試作品の例を示す部分写真である。
【図10】実施例で試作品された携帯電話の筐体を示す部分写真である。
【図11】図10で示した筐体(着色遮蔽層側面)の透光部と着色遮蔽層残留部分との境界部分(直線部分)の部分拡大写真である。
【図12】図10で示した筐体(着色遮蔽層側面)の透光部と着色遮蔽層残留部分との境界部分(角部分)の部分拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の樹脂製品の透光部形成方法について、図面を用いて説明する。図1には透光部材1(携帯電話機の筐体)を示した。図1(a)はモデル正面図、図1(b)は図1(a)のLLにおけるモデル断面図であり、符号1aは透光部形成部を示す(以下、図2〜7における(a)図、(b)図も同様である。ただし、図6(c)は図6(b)の部分拡大モデル図である)。
【0031】
透光部材1を形成する樹脂としては、透光性を有する樹脂、例えば着色されたあるいは無色の透明な樹脂、あるいは、顔料が添加されてスモークとなった樹脂等が挙げられる。、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)系樹脂などが挙げられ、このうち、透明な透光部を形成する場合には、透明性が高く、高硬度であるために特にアクリル系樹脂が好ましい。
【0032】
この透光部材1の筐体内側(機器収納側)にこの例では、着色遮蔽層2を設ける(着色遮蔽層形成工程。図2(a)及び図2(b)参照)。このとき、上記透光部形成部1aにも着色遮蔽層2を設けるが、必ずしも透光部形成部1a全体に着色遮蔽層2を設ける必要はなく、透光部形成部1aの輪郭部付近にだけ着色遮蔽層2を設けてもよい。
【0033】
着色遮蔽層を設ける塗料としては、アクリル系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料などが挙げられ、このうち、意匠性、塗膜硬度などの塗膜性能、作業性に優れるアクリル系塗料を用いることが望ましい。
【0034】
このような塗料を用いて、吹付塗装、静電塗装、浸漬塗装などにより着色遮蔽層2を設ける。
【0035】
次いで、着色遮蔽層2の上の、透光部形成部1a及びその周辺に粘着剤層付シート3を貼り付ける(粘着剤層付シート貼付工程。図3参照)。この貼り付けには厳密な位置決めは不要であり、そのために迅速に行うことができる。
【0036】
ここで用いる粘着材層付シート3としては、住友スリーエム社製マスキングテープ243J Plus等、粘着性が高いものを選択して用いる。
【0037】
次いで粘着剤層付シート3及び着色遮蔽層2を、透光部形成部1aの輪郭線1bに相当する部分でレーザ光の照射(符号10)により切断する(切断工程。図4参照)。切断は、あらかじめ検討した、粘着剤層付シート3及び着色遮蔽層2が切断できる条件(出力、照射時間等)で行う。
【0038】
ここで、紫外レーザ光源を用いるレーザアブレーション法によって切断することが好ましい。このとき、切断工程での切断箇所以外の部分が高熱とならないので、基材とする透光部材の材質選択の幅が広がるとともに、熱変形や変色などの不都合があらかじめ防止される。
【0039】
切断の際には用いるレーザ加工装置に治具などを介して透光部材を固定することにより、極めて精度の高い加工が可能となる。
【0040】
上記切断工程の後、透光部形成部1aの粘着剤層付シート3を剥離除去する(透光部粘着剤層付シート剥離除去工程。剥離除去後の状態を図5に示す)。
【0041】
次いで、上記で粘着剤層付シート3が剥離除去された透光部形成部の着色遮蔽層及びその周辺の粘着剤層付シート3の上に粘着剤層または接着剤層を積層する(粘接着層積層工程)。図6では光硬化性接着剤を塗布し、その光硬化性接着剤の硬化に適した波長の光を照射させて硬化させて接着剤層4を積層した例を示す。
【0042】
接着剤層を形成する接着剤としては、着色遮蔽層を形成する樹脂と親和性の高い樹脂を用いる。このような例として、アクリル塗料(着色遮蔽層)とウレタンアクリレートやエポキシアクリレート、ウレタン塗料(着色遮蔽層)とウレタンアクリレートなどの組合せが挙げられる。
【0043】
なお、接着剤としては、硬化性樹脂からなる接着剤であることが着色遮蔽層との密着が良好であるために好ましく、さらに可視光、あるいは、紫外線などによって硬化する光硬化接着剤であることが、硬化処理に加熱が不要となるために、熱変形や熱変色などの問題があらかじめ防止され、かつ、硬化処理が迅速に進行するために高い生産性が得られるので好ましい。
【0044】
また、接着剤を塗布する代わりに、接着テープや接着シートを用いることで上記箇所に接着層を積層することができる。この様な接着テープや接着シートとして市販の、日東電工社製精密電子部品用両面接着テープ、東レ社製電子部品用高性能接着シートTSAなどが挙げられる。
【0045】
また、接着層を積層する代わりに粘着剤層を積層することにより、ほぼ同等の効果を得ることができる。このとき、粘着シート、あるいは、粘着テープなどが用いられ、このようなものとして例えば、市販の住友スリーエム社製スコッチ超強力両面テープ(KPG−12)が挙げられる。
【0046】
次いで、粘着剤層付シート3を剥離除去する。このとき、接着剤層4及び接着剤層4と接着されている透光部1a形成部の着色遮蔽層2も剥離除去され、透光部5が形成される(透光部形成工程。図7(a)参照)。
【0047】
ここで、上記透光部形成工程の後に、透光部に有色透光層を積層(有色透光層積層工程)しても良い。
【0048】
この積層は、塗装、印刷(インクジェット式印刷も含む)、透光性または非透光性の有色シートの積層、有色シートの積層等の一般的な方法で行うことができる。
【0049】
図8には図1〜図7で説明した透光部1a以外に文字マーク6表示用の透光部6aを透光部1a同様に形成した後に、透光性の乳白色シート7を図示しない粘着剤層を介して透光部材1の着色遮蔽層2側面に積層した例を示す。
【0050】
なお、上記としては部分的に小さい透光部を設ける例について説明したが、本発明は透光部が大部分を占める部材への透光部の形成にも応用でき、その場合も本発明に含まれる。
【実施例】
【0051】
以下に本発明の実施例について説明する。
【0052】
図9に示す、時計等の情報表示用窓を透光部として有する携帯電話の筐体の試作を行った。
【0053】
<実施例1>
透明樹脂としてポリメチルメタクリレートからなる筐体(透光部材:厚さ:1mm)の内側面の必要部分及びに透光部形成部全体にアクリル系塗料を吹付塗装して厚さ40μmの着色遮蔽層(グレー色)を形成した。
【0054】
次いで、透光部形成部及びその周辺に粘着剤層付シートとして住友スリーエム社製マスキングテープ243J Plusを貼り付け、この粘着剤層付シートを、透光部形成部(およそ8mm×18mm)の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断した。
【0055】
切断工程での条件はYAGレーザ、波長266nm、周波数30kHz、出力0.68W、操作速度100000パルス/秒、操作回数8回である。このとき、あらかじめ検討した上記条件で、粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを切断した。
【0056】
その後、透光部形成部部分の粘着剤層付シートを剥離除去し、その透光部形成部及びその周辺に紫外線硬化型ウレタンアクリレート系接着剤を硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、この樹脂硬化に適した紫外光を12秒照射して接着剤層を形成した。
【0057】
次いで、粘着剤層付シートを剥離除去することにより、接着剤層、及び、透光部の着色被覆層を除去し、透光部を形成した。
【0058】
このときの透光部付近の外観を図10に、及び、透光部の直線部分及び角部分の顕微鏡による拡大写真(図9及び図10の写真に対して140倍)を図11及び図12に示した。
【0059】
目視観察の結果、境界部付近の着色被覆層には剥がれ、変色などの問題もなく、また、透光部との境界ははっきりとしており、携帯電話の筐体として評価した場合に、問題が全くない、良品との評価を受けた。
【0060】
<実施例2>
実施例1と同様に、ただし、接着剤としてエポキシアクリレート系接着剤を用いたところ、実施例1と同様に透光部と着色被覆層との境界がはっきりした良品のサンプルが得られた。
【0061】
<実施例3>
実施例1と同様に、ただし、接着剤ではなく、住友スリーエム社製スコッチ超強力両面テープ(KPG−12)(硬化工程は不要)を用いたところ、実施例1と同様に透光部と着色被覆層との境界がはっきりした良品のサンプルが得られた。
【0062】
<実施例4>
実施例1と同様に、ただし、着色被覆層形成にウレタン系塗料( 色)を用いたところ、実施例1と同様に透光部と着色被覆層との境界がはっきりした良品のサンプルが得られた。
【符号の説明】
【0063】
1 透光部材
1a 透光部形成部
2 着色遮蔽層
3 粘着材層付シート
4 接着剤層
5 透光部
6 文字マーク
6a 透光部
7 透光性の乳白色シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製品の透光部形成方法、及び、透光部を有する電気機器用の筐体の製造方法、及び、そのような筐体を備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な透光部が設けられている携帯電話機などの筐体は、LEDなどの内部に存在する光源の光を遮蔽するために隠蔽性を備えた、着色された樹脂で成形された筐体主要部材と、内部の液晶表示装置などの表示が外部から見えるように透明樹脂で成形された表示用の透光部材と、を組み合わせて構成されている。
【0003】
このように筐体主要部材と透光部材との2つの部材からなるために、衝撃により分解破損しやすく、隙間から水が内部に入りやすいなど、製品強度及び防水性に問題があった。さらに、それぞれの部品を成型する工程、組み合わせる工程等製造工程が多く、生産効率が低かった。
【0004】
ここで、特許第3366649号公報(特許文献1)では、上記問題を解決するために、遮光部が転写箔層として設けられたフィルムを用いるインモールド成形により筐体を成形し、上記フィルムの遮光部を筐体外面に転写すると云う技術が提案されている。しかしながら、フィルムの送り時の位置決めが困難であり、わずかであれずれが生じれば不良品となり、また、成形時に、成形される筐体の形状に沿うようにフィルムが延伸されるが、この際に、所定の箇所に上記透明窓部が位置するように制御することが困難である上に、コーナー部分の曲率が大きい立体的な筐体の成形には応用ができないと云う問題がある。
【0005】
また、Wo2006/095781公報(特許文献2)で提案されている技術では、雌金型と第1の雄金型とを用いて透光部を射出成形したのち、成形された透光部を雌金型に残した状態で第1の雄金型を第2の雄金型と交換し、次いで、非透光部を前記透光部と一体に成形すると云う技術であるが、この場合、特殊な射出成形機システムが必要となる上、生産効率が極めて低く、高コストとなると云う問題がある。
【0006】
そこで、本発明者等は、透光樹脂により筐体全体を成形したのちに、透光部裏面側にマスキングテープを貼付し、次いでこの筐体の裏面側のマスキングを施した部分も含めて印刷を施し、その後にマスキングテープを剥離して透光部、及び、非透光部を形成する方法について検討した。
【0007】
しかし、この方法には次の(1)〜(4)に示すような4つの問題点があることが判った。
(1)非透光部に高い隠蔽性が必要な場合には印刷層を厚くする必要があり、このとき、マスキングテープが印刷層の中に埋もれてしまい、その剥離作業が非常に困難となる。
(2)ベタ印刷の際、マスキングテープの透光部輪郭部にインキが十分に行き渡らず、そのために透光部の輪郭がシャープに形成されない。
(3)マスキングテープ剥離の際に、透光部外周部の印刷層も同時に剥離してしまい、このとき、透光部の輪郭が汚くなり、その結果、良品率が低くなる。
(4)マスキングテープを所定の位置に貼付する作業が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3366649号公報
【特許文献2】特許国際公開2006/095781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、生産効率が高く、そして、上記した問題点のない、樹脂製品の透光部形成方法、及び、透光部を有する電気機器用の筐体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂製品の透光部形成方法は前記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、樹脂からなる透光部材の片面に着色遮蔽層を形成する着色遮蔽層形成工程、前記透光部材の透光部形成部及び該透光部形成部の周辺の着色遮蔽層の上に粘着剤層付シートを貼付ける粘着剤層付シート貼付工程、前記粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを、前記透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断する切断工程、前記透光部形成部の前記粘着剤層付シートを剥離除去する透光部粘着剤層付シート剥離除去工程、前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に粘着剤層または接着剤層を積層する粘接着層積層工程、及び、前記透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートを剥離除去することにより、該粘着剤層付シートとともに前記透光部形成部の着色遮蔽層を除去して透光部を形成する透光部形成工程をこの順で備えていることを特徴とする樹脂製品の透光部形成方法である。
【0011】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部形成工程の後に、前記透光部に有色透光層を積層する有色透光層積層工程を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記接着剤層が硬化性接着剤であり、かつ、前記粘接着層積層工程が、前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に該硬化性接着剤を塗布する硬化性接着剤塗布工程、及び、前記硬化性接着剤を硬化させる硬化性接着剤硬化工程をこの順で備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項4に記載の通り、請求項3に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記硬化性接着剤が、光硬化接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【0014】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部材の透光部形成部にあらかじめインモールド転写による意匠層が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記切断工程がレーザアブレーション法によって行われることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項7に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部材が透明であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部が、文字、図形、マーク、または、デザインとして設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の樹脂製品の透光部形成方法は、請求項9に記載の通り、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法において、前記透光部材が電気機器の筐体であり、かつ、前記着色遮蔽層形成工程において、該筐体の内面に着色遮蔽層が設けられることを特徴とする。
【0019】
本発明の電気機器は請求項10に記載の通り、請求項9に記載の樹脂製品の透光部形成方法により透光部が形成された筐体を備えていることを特徴とする電気機器である。
【0020】
本発明の電気機器は請求項11に記載の通り、請求項10に記載の電気機器において、前記透光部の前記筐体内側に表示装置が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の樹脂製品の透光部形成方法によれば、粘着剤層付シートの剥離作業は容易であり、透光部の縁はシャープでかつ設計通りのものとなり、さらに粘着剤付シートの貼り付け作業には厳密な位置合わせが不要でありながら、レーザ照射装置に治具などにより被処理部材をセットすることにより、所定の正確な位置に透光部を形成することができ、かつ、低コストで透光部を形成することができる。
【0022】
さらに、請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、透光部ごとに、または、透光部内を部分的に、色を変えたり、スモーク(乳白色やカラースモーク)とすることができる。
【0023】
さらに、請求項3に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、着色遮蔽層を形成する樹脂との接着性が良好となるために、着色遮蔽層をより確実に透光部から剥離させることができる。
【0024】
さらに、請求項4に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、接着剤の硬化において加熱が不要で短時間で進行するために、基材とする透光部材の材質選択の幅が広がるとともに、熱変形などの不都合があらかじめ防止され、短時間での硬化処理が可能となる。
【0025】
さらに、請求項5に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、透光部に意匠性を容易に付与することができる。
【0026】
さらに、請求項6に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、切断工程での切断箇所以外の部分が高熱とならないので、基材とする透光部材の材質選択の幅が広がるとともに、熱変形や変色などの不都合があらかじめ防止される。
【0027】
さらに、請求項7に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、LCDなどの表示装置(表示部)と透光部とを組み合わせて各種情報を表示させることができる。
【0028】
さらに、請求項8に記載の樹脂製品の透光部形成方法によれば、高いデザイン性を持たせたり、あるいは、商標等を効果的に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部材1を示す図)である。図1(a)はモデル正面図、図1(b)は図1(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図2】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部材1に着色遮蔽層2を設けた状態を示す図)である。図2(a)はモデル正面図、図2(b)は図2(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図3】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(着色遮蔽層の上の、透光部形成部及び該透光部形成部の周辺に粘着剤層付シートを貼り付けた状態を示す図)である。図3(a)はモデル正面図、図3(b)は図3(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図4】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(粘着剤層付シート及び着色遮蔽層を、透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断した状態を示す図)である。図4(a)はモデル正面図、図4(b)は図4(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図5】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部形成部の粘着剤層付シートを剥離除去した状態を示す図)である。図5(a)はモデル正面図、図5(b)は図5(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図6】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(透光部形成部の着色遮蔽層及びその周辺の粘着剤層付シートの上に接着剤層を積層した状態を示す図)である。図6(a)はモデル正面図、図6(b)は図6(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図7】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(上記粘着剤層付シート、接着剤層及び接着剤層と接着されている透光部形成部の着色遮蔽層を剥離除去し、透光部が形成された状態を示す図)である。図7(a)はモデル正面図、図7(b)は図7(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図8】本発明の樹脂製品の透光部形成方法の説明図(有色透光層を積層した透光部(文字マーク)を設けた例)である。図8(a)はモデル正面図、図8(b)は図8(a)のLLにおけるモデル断面図である。
【図9】携帯電話の試作品の例を示す部分写真である。
【図10】実施例で試作品された携帯電話の筐体を示す部分写真である。
【図11】図10で示した筐体(着色遮蔽層側面)の透光部と着色遮蔽層残留部分との境界部分(直線部分)の部分拡大写真である。
【図12】図10で示した筐体(着色遮蔽層側面)の透光部と着色遮蔽層残留部分との境界部分(角部分)の部分拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の樹脂製品の透光部形成方法について、図面を用いて説明する。図1には透光部材1(携帯電話機の筐体)を示した。図1(a)はモデル正面図、図1(b)は図1(a)のLLにおけるモデル断面図であり、符号1aは透光部形成部を示す(以下、図2〜7における(a)図、(b)図も同様である。ただし、図6(c)は図6(b)の部分拡大モデル図である)。
【0031】
透光部材1を形成する樹脂としては、透光性を有する樹脂、例えば着色されたあるいは無色の透明な樹脂、あるいは、顔料が添加されてスモークとなった樹脂等が挙げられる。、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)系樹脂などが挙げられ、このうち、透明な透光部を形成する場合には、透明性が高く、高硬度であるために特にアクリル系樹脂が好ましい。
【0032】
この透光部材1の筐体内側(機器収納側)にこの例では、着色遮蔽層2を設ける(着色遮蔽層形成工程。図2(a)及び図2(b)参照)。このとき、上記透光部形成部1aにも着色遮蔽層2を設けるが、必ずしも透光部形成部1a全体に着色遮蔽層2を設ける必要はなく、透光部形成部1aの輪郭部付近にだけ着色遮蔽層2を設けてもよい。
【0033】
着色遮蔽層を設ける塗料としては、アクリル系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料などが挙げられ、このうち、意匠性、塗膜硬度などの塗膜性能、作業性に優れるアクリル系塗料を用いることが望ましい。
【0034】
このような塗料を用いて、吹付塗装、静電塗装、浸漬塗装などにより着色遮蔽層2を設ける。
【0035】
次いで、着色遮蔽層2の上の、透光部形成部1a及びその周辺に粘着剤層付シート3を貼り付ける(粘着剤層付シート貼付工程。図3参照)。この貼り付けには厳密な位置決めは不要であり、そのために迅速に行うことができる。
【0036】
ここで用いる粘着材層付シート3としては、住友スリーエム社製マスキングテープ243J Plus等、粘着性が高いものを選択して用いる。
【0037】
次いで粘着剤層付シート3及び着色遮蔽層2を、透光部形成部1aの輪郭線1bに相当する部分でレーザ光の照射(符号10)により切断する(切断工程。図4参照)。切断は、あらかじめ検討した、粘着剤層付シート3及び着色遮蔽層2が切断できる条件(出力、照射時間等)で行う。
【0038】
ここで、紫外レーザ光源を用いるレーザアブレーション法によって切断することが好ましい。このとき、切断工程での切断箇所以外の部分が高熱とならないので、基材とする透光部材の材質選択の幅が広がるとともに、熱変形や変色などの不都合があらかじめ防止される。
【0039】
切断の際には用いるレーザ加工装置に治具などを介して透光部材を固定することにより、極めて精度の高い加工が可能となる。
【0040】
上記切断工程の後、透光部形成部1aの粘着剤層付シート3を剥離除去する(透光部粘着剤層付シート剥離除去工程。剥離除去後の状態を図5に示す)。
【0041】
次いで、上記で粘着剤層付シート3が剥離除去された透光部形成部の着色遮蔽層及びその周辺の粘着剤層付シート3の上に粘着剤層または接着剤層を積層する(粘接着層積層工程)。図6では光硬化性接着剤を塗布し、その光硬化性接着剤の硬化に適した波長の光を照射させて硬化させて接着剤層4を積層した例を示す。
【0042】
接着剤層を形成する接着剤としては、着色遮蔽層を形成する樹脂と親和性の高い樹脂を用いる。このような例として、アクリル塗料(着色遮蔽層)とウレタンアクリレートやエポキシアクリレート、ウレタン塗料(着色遮蔽層)とウレタンアクリレートなどの組合せが挙げられる。
【0043】
なお、接着剤としては、硬化性樹脂からなる接着剤であることが着色遮蔽層との密着が良好であるために好ましく、さらに可視光、あるいは、紫外線などによって硬化する光硬化接着剤であることが、硬化処理に加熱が不要となるために、熱変形や熱変色などの問題があらかじめ防止され、かつ、硬化処理が迅速に進行するために高い生産性が得られるので好ましい。
【0044】
また、接着剤を塗布する代わりに、接着テープや接着シートを用いることで上記箇所に接着層を積層することができる。この様な接着テープや接着シートとして市販の、日東電工社製精密電子部品用両面接着テープ、東レ社製電子部品用高性能接着シートTSAなどが挙げられる。
【0045】
また、接着層を積層する代わりに粘着剤層を積層することにより、ほぼ同等の効果を得ることができる。このとき、粘着シート、あるいは、粘着テープなどが用いられ、このようなものとして例えば、市販の住友スリーエム社製スコッチ超強力両面テープ(KPG−12)が挙げられる。
【0046】
次いで、粘着剤層付シート3を剥離除去する。このとき、接着剤層4及び接着剤層4と接着されている透光部1a形成部の着色遮蔽層2も剥離除去され、透光部5が形成される(透光部形成工程。図7(a)参照)。
【0047】
ここで、上記透光部形成工程の後に、透光部に有色透光層を積層(有色透光層積層工程)しても良い。
【0048】
この積層は、塗装、印刷(インクジェット式印刷も含む)、透光性または非透光性の有色シートの積層、有色シートの積層等の一般的な方法で行うことができる。
【0049】
図8には図1〜図7で説明した透光部1a以外に文字マーク6表示用の透光部6aを透光部1a同様に形成した後に、透光性の乳白色シート7を図示しない粘着剤層を介して透光部材1の着色遮蔽層2側面に積層した例を示す。
【0050】
なお、上記としては部分的に小さい透光部を設ける例について説明したが、本発明は透光部が大部分を占める部材への透光部の形成にも応用でき、その場合も本発明に含まれる。
【実施例】
【0051】
以下に本発明の実施例について説明する。
【0052】
図9に示す、時計等の情報表示用窓を透光部として有する携帯電話の筐体の試作を行った。
【0053】
<実施例1>
透明樹脂としてポリメチルメタクリレートからなる筐体(透光部材:厚さ:1mm)の内側面の必要部分及びに透光部形成部全体にアクリル系塗料を吹付塗装して厚さ40μmの着色遮蔽層(グレー色)を形成した。
【0054】
次いで、透光部形成部及びその周辺に粘着剤層付シートとして住友スリーエム社製マスキングテープ243J Plusを貼り付け、この粘着剤層付シートを、透光部形成部(およそ8mm×18mm)の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断した。
【0055】
切断工程での条件はYAGレーザ、波長266nm、周波数30kHz、出力0.68W、操作速度100000パルス/秒、操作回数8回である。このとき、あらかじめ検討した上記条件で、粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを切断した。
【0056】
その後、透光部形成部部分の粘着剤層付シートを剥離除去し、その透光部形成部及びその周辺に紫外線硬化型ウレタンアクリレート系接着剤を硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、この樹脂硬化に適した紫外光を12秒照射して接着剤層を形成した。
【0057】
次いで、粘着剤層付シートを剥離除去することにより、接着剤層、及び、透光部の着色被覆層を除去し、透光部を形成した。
【0058】
このときの透光部付近の外観を図10に、及び、透光部の直線部分及び角部分の顕微鏡による拡大写真(図9及び図10の写真に対して140倍)を図11及び図12に示した。
【0059】
目視観察の結果、境界部付近の着色被覆層には剥がれ、変色などの問題もなく、また、透光部との境界ははっきりとしており、携帯電話の筐体として評価した場合に、問題が全くない、良品との評価を受けた。
【0060】
<実施例2>
実施例1と同様に、ただし、接着剤としてエポキシアクリレート系接着剤を用いたところ、実施例1と同様に透光部と着色被覆層との境界がはっきりした良品のサンプルが得られた。
【0061】
<実施例3>
実施例1と同様に、ただし、接着剤ではなく、住友スリーエム社製スコッチ超強力両面テープ(KPG−12)(硬化工程は不要)を用いたところ、実施例1と同様に透光部と着色被覆層との境界がはっきりした良品のサンプルが得られた。
【0062】
<実施例4>
実施例1と同様に、ただし、着色被覆層形成にウレタン系塗料( 色)を用いたところ、実施例1と同様に透光部と着色被覆層との境界がはっきりした良品のサンプルが得られた。
【符号の説明】
【0063】
1 透光部材
1a 透光部形成部
2 着色遮蔽層
3 粘着材層付シート
4 接着剤層
5 透光部
6 文字マーク
6a 透光部
7 透光性の乳白色シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる透光部材の片面に着色遮蔽層を形成する着色遮蔽層形成工程、
前記透光部材の透光部形成部及び該透光部形成部の周辺の着色遮蔽層の上に粘着剤層付シートを貼付ける粘着剤層付シート貼付工程、
前記粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを、前記透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断する切断工程、
前記透光部形成部の前記粘着剤層付シートを剥離除去する透光部粘着剤層付シート剥離除去工程、
前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に粘着剤層または接着剤層を積層する粘接着層積層工程、及び、
前記透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートを剥離除去することにより、該粘着剤層付シートとともに前記透光部形成部の着色遮蔽層を除去して透光部を形成する透光部形成工程を
この順で備えていることを特徴とする樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項2】
前記透光部形成工程の後に、前記透光部に有色透光層を積層する有色透光層積層工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項3】
前記接着剤層が硬化性接着剤であり、かつ、
前記粘接着層積層工程が、
前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に該硬化性接着剤を塗布する硬化性接着剤塗布工程、及び、
前記硬化性接着剤を硬化させる硬化性接着剤硬化工程を
この順で備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項4】
前記硬化性接着剤が、光硬化接着剤であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項5】
前記透光部材の透光部形成部にあらかじめインモールド転写による意匠層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項6】
前記切断工程がレーザアブレーション法によって行われることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項7】
前記透光部材が透明であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項8】
前記透光部が、文字、図形、マーク、または、デザインとして設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項9】
前記透光部材が電気機器の筐体用部材であり、かつ、
前記着色遮蔽層形成工程において、前記筐体用部材の内面に前記着色遮蔽層が設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂製品の透光部形成方法により透光部が形成された筐体を備えていることを特徴とする電気機器。
【請求項11】
前記透光部の前記筐体内側に表示装置が備えられていることを特徴とする請求項10に記載の電気機器。
【請求項1】
樹脂からなる透光部材の片面に着色遮蔽層を形成する着色遮蔽層形成工程、
前記透光部材の透光部形成部及び該透光部形成部の周辺の着色遮蔽層の上に粘着剤層付シートを貼付ける粘着剤層付シート貼付工程、
前記粘着剤層付シートと着色遮蔽層とを、前記透光部形成部の輪郭線に相当する部分でレーザ光の照射により切断する切断工程、
前記透光部形成部の前記粘着剤層付シートを剥離除去する透光部粘着剤層付シート剥離除去工程、
前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に粘着剤層または接着剤層を積層する粘接着層積層工程、及び、
前記透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートを剥離除去することにより、該粘着剤層付シートとともに前記透光部形成部の着色遮蔽層を除去して透光部を形成する透光部形成工程を
この順で備えていることを特徴とする樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項2】
前記透光部形成工程の後に、前記透光部に有色透光層を積層する有色透光層積層工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項3】
前記接着剤層が硬化性接着剤であり、かつ、
前記粘接着層積層工程が、
前記透光部形成部の着色遮蔽層及び該透光部形成部の周辺の前記粘着剤層付シートの上に該硬化性接着剤を塗布する硬化性接着剤塗布工程、及び、
前記硬化性接着剤を硬化させる硬化性接着剤硬化工程を
この順で備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項4】
前記硬化性接着剤が、光硬化接着剤であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項5】
前記透光部材の透光部形成部にあらかじめインモールド転写による意匠層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項6】
前記切断工程がレーザアブレーション法によって行われることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項7】
前記透光部材が透明であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項8】
前記透光部が、文字、図形、マーク、または、デザインとして設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項9】
前記透光部材が電気機器の筐体用部材であり、かつ、
前記着色遮蔽層形成工程において、前記筐体用部材の内面に前記着色遮蔽層が設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂製品の透光部形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂製品の透光部形成方法により透光部が形成された筐体を備えていることを特徴とする電気機器。
【請求項11】
前記透光部の前記筐体内側に表示装置が備えられていることを特徴とする請求項10に記載の電気機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−105151(P2012−105151A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253137(P2010−253137)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(508061561)株式会社ワイズ・マイクロテクノロジー (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(508061561)株式会社ワイズ・マイクロテクノロジー (4)
【Fターム(参考)】
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