説明

橋脚周りの仮締切構造体の施工方法及びその施工に使用するプラットホーム

【課題】水中での工数をできるだけ少なくする。
【解決手段】橋脚1周りに筒状仮締切構造体Aを構築する。橋脚の所要高さに作業用プラットホーム20を設け、この上で、仮締切構造体を上下方向に分割した構造体A1・・を順々に製作する。その各分割構造体の個々を製作後、プラットホーム外周の支持杆22d(プラットホーム外周部20a)を下方に退去させ、その分割構造体をプラットホームを通過・下降させて橋脚のフーチング3又は既設置の分割構造体上に固定する。この分割構造体の下降は、橋脚上部の昇降機17によって吊り下げ下降させて行う。この工法は、従来の潜水士の水中作業である大組みに比べて、水中での工数は少なくなり、フーチング上面の凹凸にも対応しやすい。また、作業者人数も少なく、機材の運搬も水上のプラットホーム上へとなって、その荷下ろしも水平方向となり、作業時間も短縮される。プラットホーム上の作業は、安定した体勢で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、河川や海等の水中に設けた橋脚の修理・補強等の改修を行う際に構築する仮締切構造体の施工方法及びその施工に使用するプラットホームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川や海等の水中に設けた橋脚は、経年劣化、台風や地震などにより損傷等が生じた際、Co巻立やアラミド巻付等によって改修を行う。この改修時、その橋脚周りを水のないドライ環境下にしてその改修作業を行えるようにする必要がある。このドライ環境を作成するために、橋脚周りに所要間隔をおいて筒状仮締切構造体を構築し、この仮締切構造体によって水がその内側に入らないようにして作業スペースを確保する。
その仮締切構造体は、一般的には、周方向及び上下方向に分割し、その各分割体を橋脚周りに筒状に配置して相互に連結して構築している(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−117315号公報
【特許文献2】特開2008−297748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、その分割体は、水中に降ろして環状に連結・固定するとともに、その環状分割体を上方に順々に連結・固定して筒状仮締切構造体を構築している。
この連結・固定作業は、その大部分が水中となり、潜水作業者(潜水士)が行うこととなる。潜水士による作業は、空気の供給ホース等の点から、その人数が制限されるため、作業日数がかかるとともに、水中は危険である。また、水の濁り等によって、組立て状態が把握しにくく、分割体の位置出しやひずみ等の確認に相当な時間を要する。
さらに、水中作業は、通常、不安定な体勢での作業となるため、各分割体の間等に止水用パッキングを組み付ける際、そのパッキングを傷付け易く、シール洩れが生じやすい。また、各分割体の荷下ろしは、水上から水中への上下の移動のため、時間を要する。
以上から、水中での作業工数はできるだけ少なくすることが好ましい。
【0005】
また、筒状仮締切構造体を構築する基礎上面には凹凸があり、その仮締切構造体を筒状の状態で基礎上に設置すれば、その凹凸に関係なく設置できるが、基礎上でその仮締切構造体をその構成部材でもって筒状に組立てているため、各構成部材が接地面の凹凸に応じて上下し、その組立てが容易でない。
【0006】
この発明は、以上の状況下、水中での工数をできるだけ少なくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、この発明は、まず、橋脚の水上適宜位置に作業用プラットホームを作り、このプラットホームにおいて、この上でできる作業は行うようにしたのである。
このプラットホームは水上にあるため、その上への機材の運搬も容易であり、その機材による環状分割体や仮締切構造体の組立ても容易である。
つぎに、この発明は、そのプラットホームの外周部を切り離し得るようにして、環状分割体等の構造物がプラットホームを通り抜け得るようにしたのである。
【0008】
この発明の具体的な構成としては、橋脚周りに筒状仮締切構造体を構築する施工方法であって、橋脚の所要高さの全周囲に環状作業用プラットホームを設け、このプラットホームの外周部は、外縁から中心に向かって所要長さ切り離し可能となって、その外周部が切り離されたプラットホームは前記仮締切構造体の内側に納まってその仮締切構造体が通過し得る大きさとなり、プラットホーム上で仮締切構造体を構築し、その構築後、前記外周部を切り離し、仮締切構造体を前記プラットホームを通過・下降させて橋脚の基礎に固定する構成を採用することができる。
【0009】
上記プラットホームの構成としては、種々の態様が考え得るが、例えば、その環状プラットホーム本体の周囲所要間隔にその内側から外側に向かって延びる複数の支持杆とその各支持杆上に設置される取り外し可能な作業板とからなり、支持杆は、プラットホーム本体と同一面上に固定可能かつそのプラットホーム本体側に折れ曲がり可能となって、その外周部が折れ曲がった状態で、上記仮締切構造体がプラットホーム本体を通過・下降し得る構成とすることができる。
支持杆のプラットホーム本体と同一面上への固定手段は、ボルトナット止めや副木を介したボルトナット止め等の周知の手段を採用できる。また、支持杆のプラットホーム本体側への折れ曲がりを円滑にするため、支持杆をプラットホーム本体と蝶番によって連結するようにすることができる。支持杆は、ボルト止めを止める(ボルトを外す)ことによって、単に、プラットホーム本体から切り離すだけでも良い。このため、蝶番によって支持杆がプラットホーム本体に連結されている場合も、支持杆は切り離し状態と言えるため、この場合も、「切り離し状態」の一例とする。
【0010】
上記仮締切構造体は、通常、周方向及び筒軸方向(上下方向)に所要数に分割されたものが一般的であるが、上下方向全長に亘るもの、すなわち、仮締切構造体全体をプラットホーム上において構築することは支障があるため、上下方向には必要数に分割することが好ましい。この場合、その各分割仮締切構造体をその下側の物からプラットホーム上で順々に構築し、その各分割仮締切構造体の構築後、前記外周部を切り離し、その各分割仮締切構造体を前記プラットホームを通過させて前記橋脚の基礎又は既設置の分割仮締切構造体に固定するようにすることができる。
【0011】
また、上記外周部を切り離し、上記仮締切構造体又はその環状分割体をプラットホーム(本体)を通過させて橋脚のフーチング等の基礎に固定する際、その環状分割体等は吊り下げ状態とすることが好ましい。その吊り下げは、昇降機(ホイスト等)の吊り下げワイヤによって行い、その昇降機の駆動によって降下させることが好ましい。その昇降機は、クレーンによって構成したり、前記プラットホーム上方の橋脚に設けた支保工に設けたりすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、水上のプラットホームにおいて、機材の構築作業を行うようにし、構築した環状分割体等はそのプラットホームを通過させて降下させるようにしたので、潜水士による水中作業は、従来に比べて、大組み(環状の構造体)となるため、水中での工数は少なくなるとともに、ケーソン等の基礎の上面凹凸にも対応しやすい。
また、水中での作業が大組みとなれば、その作業人数も少なくてすみ、空気供給ホースの問題も生じにくい。
さらに、機材の運搬も水上のプラットホームへとなるため、その機材の荷下ろしも極力水平方向となってその作業時間も短縮される。また、プラットホームにおける作業は、安定した体勢で行うことができるため、パッキング等の取付けも確実に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係わる仮締切構造体の施工方法の一実施形態の作業説明用斜視図
【図2a】同作業説明図であり、その「吊り足場」の設置状態図
【図2b】同支保工及び作業用プラットホームの設置状態図
【図2c】同仮締切構造体用分割体の組立て状態図
【図2d】同仮締切構造体用分割体の下降状態図
【図2e】同二段目の仮締切構造体用分割体の組立て状態図
【図2f】同二段目の仮締切構造体用分割体の組立て状態図
【図2g】同仮締切構造体用分割体の水中での連結固定状態図
【図2h】同仮締切構造体内への止水コンクリート打設状態図
【図3】図1の支保工の正面図
【図4】図2bの要部一部省略平面図
【図5】図2bの要部を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の要部左側面図
【図6】図1における一止水ライナープレートを示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は下面図
【図7】同一補強リングの平面図
【図8】(a)は止水ライナープレートと補強リングの連結部の側面図、(b)は補強リングの添え板の正面図
【図9】止水ライナープレートと補強リング等の連結各部におけるパッキングの介在状態図を示し、(a)は上下の止水ライナープレート連結部側面図、(b)は左右の止水ライナープレート連結部平面図、(c)は上下左右の止水ライナープレート連結部正面図、(d)は左右の補強リング連結部正面図、(e)は上下の止水ライナープレートと補強リングの連結部側面図
【図10】仮締切構造体の設置状態を示し、(a)は一部切断平面図、(b)は一部切断正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係わる仮締切構造体の施工方法の一実施形態を図1〜図10に示し、この実施形態は、図1に示すように、河川の橋の橋脚1周り所要高さの全周囲に環状作業用プラットホーム20を設け、このプラットホーム20の上で、図2a〜同図hに示すように、仮締切構造体A又はその分割体A1、A2・・を製作し、それらを橋脚1の基礎(フーチング)3に設置して、橋脚1周りに筒状仮締切構造体Aを構築するものである。
その仮締切構造体Aの環状形状は、橋脚1の断面形状に応じて、円環状、楕円環状(図10参照)等と適宜に設定すれば良いが、橋脚1の外周面との間に充分な作業スペースを確保できるようにする。
【0015】
仮締切構造体Aの構築は、まず、必要に応じて、図2aに示すように、橋脚1の上方である橋桁2の下面に吊り足場10を設ける。この吊り足場10は、足場板の周囲を吊り杆でもって橋桁2の下面に固定することによって、作業者の移動スペースを確保できる。
【0016】
この足場10上において、図1に示すように、図3で示す支保工13を橋脚1上面左右に2本設置する。この支保工13は、その長さ方向に3分割されており、両端の二者13a、13bにそれぞれ挟持片14が設けられて、その分割支保工13a、13bをその挟持片14を橋脚1上部側面に宛がって三者13a、13b、13cを連結することによって支保工13は橋脚1上部に固定される(図2b)。
支保工13の両端には吊り金具15が設けられ、この吊り金具15にワイヤ16が設けられている。ワイヤ16には電動ホイスト(チエーンブロック)17が介在され、そのホイスト17の吊り紐(ワイヤ)には2本のワイヤを介して吊りフック18が設けられている。フック18の数は後述の仮締切構造体A又はその分割体A1・・を安定かつ安全に吊れるように任意である(図2d〜同g参照)。
足場10を構築しない場合は、クレーン等で支保工13等を吊上げるとともに、作業者もそのクレーン等でもって作業位置に昇降移動する。
【0017】
つぎに、この仮締切構造体Aの施工中(構築中)において、水没しないと思われる橋脚1の高さに作業用プラットホーム20を構築する。このプラットホーム20は、仮締切構造体Aの環状形状に合わせて、円環状、楕円環状等と適宜に設定すれば良く、この実施形態では、橋脚1の横断面が楕円環状であるため、同様に、楕円環状としている。
この楕円環状プラットホーム20は、図1、図2b〜図2g及び図4、図5に示すように、橋脚1周りに所要間隔で支持脚22を設け、この支持脚22上に適宜にエキスパンドメタル等の作業板23を敷設した(敷き詰めた)ものである。作業板23は、仮締切構造体A(プラットホーム20)の断面形状に対応して分割された形状、例えば、図1、図4に示す、平面視、扇状、矩形状等の適宜な形状及び数に分割されて、支持脚22に締結具等によって適宜に固定されたり、嵌め込み等によって移動不能に載置される。
【0018】
支持脚22は、図5に示すように、橋脚1にボルト止めされる縦杆22aと、その縦杆22aの上端から水平に延びる横杆22bとその縦杆22aと横杆22bの間に設けた筋交い杆22cとからなる。
横杆22bは、その外側部22dが蝶番24を介して下方に折り曲げ可能となって、上下に起伏する(同図の実線と鎖線状態)。このため、外側部22d及びその上の作業板23のなすプラットホーム20の外周部20a(図1参照)を取り外し、その外側部22dが下方に折れ曲がると、図4に示すように、その外側部22dが退去したプラットホーム本体21(同図2点鎖線)は仮締切構造体A(同図1点鎖線)の内側に納る大きさとなる(同図において、仮締切構造体A(A1、A2、A3)の内周面よりその外側部22dの折り曲がり線は内側に位置する)。
なお、この実施形態では、特許請求の範囲でいうプラットホーム本体21が、縦杆22a、横杆22bの内側部及び筋交い杆22cとそれらの上に載置される作業板23aとから構成され、その横杆22bの外側部22dが同特許請求の範囲でいう支持杆となる。
【0019】
その横杆22bの外側部22dとプラットホーム本体21側との連結は、図5a、同cに示すように、その両端の端板をボルトナット止めすることによって行っており、そのボルトナット25を外すことによって、外側部22dは蝶番24を介して下方に折れ曲がり可能となる。
この外側部22dの折れ曲がり方向は、下方に限らず、横方向、斜め下方などと任意であり、その折れ曲がりによって、プラットホーム本体21が仮締切構造体Aの内側に納る大きさとなって、その仮締切構造体Aがプラットホーム本体21を通り抜け得る(通過・下降し得る)ようになればよい。すなわち、その通り抜けに邪魔にならない態様ならば何れでも良い。
【0020】
なお、このプラットホーム20は、仮締切構造体用分割体A1・・を安定して支えるとともに、作業者が安全に作業を行え得る強度と安定性を有するように、支持脚22及び作業板23の数、配置及び強度や外側部22dの締結強度を持たせることは勿論である。また、この実施形態はプラットホーム20が楕円環状のため、支持脚22は、そのプラットホーム20の長辺部中央を除いてその中心から放射状に延び、長辺部中央はその辺に直角に内側から外側に向かって伸びている。例えば、プラットホーム20が円環状であれば、支持脚22は、そのホーム中心から放射状に延びたものとする等、その配置は、作業板23の支え強度を有するとともに、外側部22d(プラットホーム外周部20a)が容易に退去して仮締切構造体Aがプラットホーム本体21を通り抜け得るようになれば、いずれの配置でもよい
【0021】
これらのプラットホーム20の支持脚22(縦杆22a、横杆22b、筋交い杆22c、外側部22d)及び作業板23等の機材は、図2bに示すように、機材台船S1でもって運搬し、その機材台船S1から作業台船S2上のクレーンDでもってその構築位置に運搬して構築する。機材台船S1は、仮締切構造体用分割体A1・・を構築するための各必要構成機材(部材)を搭載している。図中、Hは船舶係船用H鋼である。
【0022】
プラットホーム20を構築すれば、図1、図2cに示すように、仮締切構造体用分割体A1をそのプラットホーム20上において製作する。このとき、プラットホーム20はその支持脚横杆外側部22dが外向きに延びた水平状態に固定されている。
その仮締切構造体用分割体A1は、図6乃至図9に示す、所要曲率又は直線状の波形ライナープレート31と、その上下のライナープレート31を連結する補強リング32と、その各ライナープレート31間、ライナープレート31と補強リング32の間及び補強リング32間に介在されるパッキング33とからなる。
【0023】
その各ライナープレート31の周方向の連結は、図9(b)、(c)に示すように、その端フランジ31aをパッキング33を介在してボルトナット34によって締結する。同上下方向の連結は、図9(a)、(c)に示すように、ライナープレート31の端フランジ31aをパッキング33を介在してボルトナット34止めするとともに、図2f、図9(e)に示すように、ライナープレート31の適宜連結数(実施形態では2枚)毎にH形鋼からなる補強リング32のリブにそのライナープレート31の端フランジ31aをパッキング33を介在してボルトナット34止めする。このとき、補強リング32の継ぎ目においては、図8に示すように、添え板32aを宛がうとともに、図9(d)、(e)に示すように、各補強リング32の突き当たりウエブ端面間にパッキング33を介在する。これらのライナープレート31、補強リング32等は市販の既製品である。
【0024】
この各ライナープレート31の補強リング32を介した連結環状体を所要数、実施形態では4積層して仮締切構造体用分割体A1とする。この仮締切構造体用分割体A1の高さ(環状体の積層数)は、下記の下降作業が円滑に行えるとともに、プラットホーム20上の作業性等を考慮して適宜に決定する。例えば、ライナープレート31の高さ(図6(a)の上下方向の高さ)が500mmであれば、人の作業可能高さが2m程のため、4積層とする。
【0025】
この仮締切構造体用分割体A1の製作が完了すれば、上記吊りワイヤ16でもってその仮締切構造体用分割体A1を吊りフック18を介し吊り上げてプラットホーム20から切り離す。
この後、プラットホーム20の外側部22dを必要に応じその上の作業板23bを取り除いて下方に退去させ、図2dに示すように、ホイスト17でもってワイヤ16を介しその仮締切構造体用分割体A1を吊ってプラットホーム20から切り離した後、プラットホーム20の外側部22d(外周部20a)を退去させる。
その後、ホイスト17でもってその仮締切構造体用分割体A1をプラットホーム20(プラットホーム本体21)を通過させて、橋脚1のフーチング(基礎)3上に下降させる。
【0026】
このとき、潜水士aによって、その仮締切構造体用分割体A1が適切な位置となるように誘導し、仮締切構造体用分割体A1とフーチング3の凹凸上面の隙間に支え片を介在して仮締切構造体用分割体A1をフーチング3上に安定させる。この作業は、環状の仮締切構造体A1のため、フーチング3上面が凹凸であっても、全体としてはほぼ安定してフーチング3上に設置し得る。このため、フーチング3上で仮締切構造体をその構成部材でもって筒状に組立てる作業に比べれば、容易である。図中、bは潜水士aへの空気供給ホースである。
【0027】
その仮締切構造体用分割体A1の設置が終了すれば、図2eに示すように、プラットホーム20の外周部20a(外側部22d)を立ち上げて外向きの固定状態とするとともに、その上に作業板23bを敷設して、通常の大きさのプラットホーム20とする。そのプラットホーム20上で、2段目の仮締切構造体用分割体A2を仮締切構造体用分割体A1と同様にして製作する。
【0028】
ライナープレート31を4積層すれば、上記と同様に、ホイスト17からの吊りワイヤ16でもってその仮締切構造体用分割体A2を吊ってプラットホーム20から切り離した後、プラットホーム20の外側支持杆22dを退去させる。
その後、ホイスト17でもってその仮締切構造体用分割体A2をプラットホーム20を通過させて、その仮締切構造体用分割体A2の上面がプラットホーム20の作業面レベルとなるようにする。その仮締切構造体用分割体A2上に、図2fに示すように、さらに、ライナープレート31を適宜数積層固定する。この実施形態では、10層とした。この積層時、一層を構築する度に、その層厚分、その仮締切構造体用分割体A2を下降させて、常時、作業レベルは一定となるようにすれば、機材の荷下ろし等の作業性が良い。
【0029】
この仮締切構造体A2は10段(層)のライナープレート31の積層体からなり、図2gに示すように、ホイスト17でもってその仮締切構造体用分割体A2をさらに下降させて、1段目の仮締切構造体用分割体A1上に載せる。このときも、上記と同様に、潜水士aによって、その仮締切構造体用分割体A2が適切な位置となるように誘導する。以後、同様に、仮締切構造体用分割体A3を作って仮締切構造体用分割体A2上に載せる(図2h参照)。この実施形態では、仮締切構造体用分割体A2を仮締切構造体用分割体A1上に載せても仮締切構造体用分割体A2の上面がプラットホーム20上に位置するため、仮締切構造体用分割体A3はその仮締切構造体用分割体A2上で作る。
【0030】
フーチング3上への仮締切構造体Aの設置が終了すれば、潜水士aによって各分割体A1〜A3の間をボルトナット止め等によって連結・固定する。この各分割体A1〜A3の連結・固定は、各分割体A2、A3の設置毎に行っても良い。また、仮締切構造体Aの内側に支保杆4(切梁4a及び縦梁4b)を適宜に設ける(図10参照)。
【0031】
この仮締切構造体Aの構築が終了すれば、従来と同様に、図2hに示すように、橋桁2上のコンクリートミキサー車Mからその仮締切構造体A内の底部と内枠の間に水中コンクリートCを送り込んで打設する。この打設が終われば、仮締切構造体A内の水抜きを行って、ドライ環境下の作業スペースを確保する。
この構造物内において、橋脚1の修理・補強等の改修を行う。その改修が終われば、この仮締切構造体Aは撤去する。
【0032】
この実施形態は、河川における橋脚1の場合であったが、海、湖などの水中の橋脚の改修時の仮締切構造体Aの構築に、この発明が採用し得ることは勿論である。また、水没しない橋脚でも採用し得る。
【0033】
仮締切構造体A(ライナープレート31等)の周方向、上下方向の分割数も適宜に設定し得る。さらに、各分割体のライナープレート31の積層数も、3層、5層と任意であり、まず、プラットホーム20上で所要数の分割体A1・・を製作した後、その分割体A1・・を下降させ、その上面が所要の作業レベルと常になるように、その積層分割体を徐々に下降させ、所要のライナープレート31を積層した仮締切構造体Aを製作した後、その仮締切構造体Aをフーチング3上に設置するようにすることができる。
一方、所要積層数の分割体A2・・をフーチング3上の分割体1上に載置した後、プラットホーム20上でさらにライナープレート31を所要数積層した分割体を製作することもできる。すなわち、上記実施形態のように、3回の分割体A1、A2、A3の製作ではなく、それ以上の分割数の分割体を順々に製作して下降するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 橋脚
2 橋桁
3 橋脚のフーチング
10 足場
13 支保工
15 吊り金具
16 ワイヤ
17 ホイスト(昇降機)
20 プラットホーム
20a プラットホーム外周部
21 プラットホーム本体
22 支持脚
22a 支持脚の縦杆
22b 支持脚の横杆
22c 支持脚の筋交い杆
22d 外側部(支持杆)
23 作業板
24 蝶番
25 締結用ボルトナット
31 仮締切構造体用分割体の弧状部材(ライナープレート)
32 同補強リング
33 同パッキング
34 同締結ボルト
A 仮締切構造体
A1、A2、A3 仮締切構造体用分割体
S1 機材台船
S2 作業台船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚(1)周りに筒状仮締切構造体(A)を構築する施工方法であって、前記橋脚(1)の所要高さの全周囲に環状作業用プラットホーム(20)を設け、このプラットホーム(20)の外周部(20a)は、外縁から中心に向かって所要長さ切り離し可能となって、その外周部(20a)が切り離されたプラットホーム(20)は前記仮締切構造体(A)の内側に納まってその仮締切構造体(A)が通過し得る大きさとなり、前記プラットホーム(20)上で前記仮締切構造体(A)を構築し、その構築後、前記外周部(20a)を切り離し、前記仮締切構造体(A)を前記プラットホーム(20)を通過・下降させて前記橋脚(1)の基礎(3)に固定することを特徴とする仮締切構造体の施工方法。
【請求項2】
上記プラットホーム(20)の外周部(20a)は、その環状プラットホーム本体(21)の周囲所要間隔に内側から外側に向かって延びる複数の支持杆(22d)とその各支持杆(22d)上に設置される取り外し可能な作業板(23b)とからなり、前記支持杆(22d)は、前記プラットホーム本体(21)と同一面上に固定可能かつそのプラットホーム本体(21)側に折れ曲がり可能となって、その外周部(20a)が折れ曲がった状態で、上記仮締切構造体(A)がプラットホーム(20)を通過・下降させ得ることを特徴とする請求項1に記載の仮締切構造体の施工方法。
【請求項3】
上記仮締切構造体(A)がその筒軸方向に所要数に分割されたものであり、その各分割仮締切構造体(A1、A2)をその下側の物から上記プラットホーム(20)上で順々に製作し、その各分割仮締切構造体(A1、A2)の製作後、上記プラットホーム(20)の外周部(20a)を切り離し、その各分割仮締切構造体(A1、A2)を前記プラットホーム(20)を通過させて前記橋脚(1)のフーチング(3)又は既設置の分割仮締切構造体(A1、A2)に固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の仮締切構造体の施工方法。
【請求項4】
上記仮締切構造体(A)又は分割仮締切構造体(A1、A2)の下降時、上記橋脚(1)上部に設けた昇降機(17)によって、その仮締切構造体(A)又は分割仮締切構造体(A1、A2)を吊り下げ、下降させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の仮締切構造体の施工方法。
【請求項5】
請求項1記載の仮締切構造体の施工方法に使用する橋脚(1)の所要高さの全周囲に構築される環状作業用プラットホーム(20)であって、そのプラットホーム(20)の外周部(20a)が、その環状プラットホーム本体(21)の周囲所要間隔にその内側から外側に向かって延びる複数の支持杆(22d)とその各支持杆(22d)上に設置される取り外し可能な作業板(23b)とからなり、前記支持杆(22d)は、前記プラットホーム本体(21)と同一面上に固定可能かつそのプラットホーム本体(21)側に折れ曲がり可能となって、その外周部が折れ曲がった状態で、上記仮締切構造体(A)がプラットホーム(20)を通過・下降し得ることを特徴とするプラットホーム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−69183(P2011−69183A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245278(P2009−245278)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【特許番号】特許第4625532号(P4625532)
【特許公報発行日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(395013212)株式会社イスミック (10)
【出願人】(595065150)株式会社日本海洋サービス (7)