説明

機器用筐体、機器用装飾体及び変色の抑制方法

【課題】経時的変色が抑制されたカラー光輝意匠膜を備えた機器用筐体及び機器用装飾体並びにカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半透明金属皮膜21と、光干渉用透明膜22と、不連続構造の光反射金属皮膜23とを光の入射側からこの順で有し、光の干渉作用により発色するカラー光輝意匠膜20を備え、カラー光輝意匠膜20は、光反射金属皮膜23の光の入射側の反対側に、酸化バナジウムからなり、厚さが光反射金属皮膜23の厚さ以下である、カラー光輝意匠膜の経時的変色を抑制するための保護膜24を有することを特徴とする機器用筐体又は機器用装飾体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉作用により発色するカラー光輝意匠膜を備えた機器用筐体及び機器用装飾体並びにそのカラー光輝意匠膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、光の干渉作用を利用して色取られたものとして、成形物(フィルム、シート、紙等)の片面又は両面に光線反射膜と金属化合物透明薄膜(膜厚:60〜500nm)と半透明金属蒸着膜とからなる虹彩層を有するもの(特許文献1)、織物の片面に第1金属蒸着層と透明化合物蒸着層(膜厚:100〜500nm)と第2金属蒸着層とを順次積層した虹彩光沢を呈するもの(特許文献2)、繊維布帛の少なくとも片面に反射金属膜と透明金属化合物膜(膜厚:40〜500nm)と半透明金属膜とが順次積層されたもの(特許文献3)が提案されている。
【0003】
このように、光の干渉作用により色取られたものは、金属の薄膜を用いていることから、経時劣化等により、変色してしまったり、色彩を失ってしまったりするおそれがある。
【0004】
なお、特許文献4には、光学素子を保護するため、広い波長領域の光を透過可能な保護膜として、厚さ約1μmの酸化ハフニウム膜を光学素子基板の表面上に製膜する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−15962号公報
【特許文献2】特開平7−252773号公報
【特許文献3】特開平3−82881号公報
【特許文献4】特開2008−76941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、経時的変色が抑制されたカラー光輝意匠膜を備えた機器用筐体及び機器用装飾体並びにカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで、カラー光輝意匠膜の経時的変色について説明する。カラー光輝意匠膜が経時的に変色していく要因として、金属皮膜の酸化等による光反射率等の変化が一つ目としてある。また、図2のaに示すように、金属皮膜が、金属の粒子間に隙間があり連続していない構造の不連続構造膜である場合には、外部から加わる熱エネルギー等の影響により、図2のbに示すように、近隣の金属の粒子同士が結合し、粒子間の距離が広がることによる光反射率等の変化が二つ目として考えられる。
【0008】
今回、カラー光輝意匠膜の光反射金属皮膜が、インジウム薄膜等のように不連続構造膜である場合に、光反射金属皮膜の下に無機化合物からなる所定厚さの保護膜を製膜すると、カラー光輝意匠膜の経時的変色が小さくなることを見出した。
【0009】
このことについて説明すると、不連続構造膜の光反射金属皮膜下に無機化合物からなる保護膜を製膜すると、保護膜により光反射金属皮膜が遮蔽され、光反射金属皮膜の酸化が抑制されると共に、金属粒子同士の結合も抑制される。また、図3のaに示すように、所定の厚さ(光反射金属皮膜の厚さ以下)の保護膜は、膜厚が薄いことから、光反射金属皮膜の金属粒子の影響により不連続構造膜となり、歪が生じ難いものと推測される。一方、図3のbに示すように、膜厚が厚すぎる保護膜は、その膜厚により、光反射金属皮膜の金属粒子の影響が打ち消され、連続膜となってしまい、応力や熱膨張等の影響により歪が生じ易くなる。そのため、保護膜は、劣化してしまい、光反射金属皮膜を遮蔽する作用が低下してしまうものと推測される。
【0010】
そこで、上記課題を解決するため、本発明の機器用筐体及び機器用装飾体は、半透明金属皮膜と、光干渉用透明膜と、不連続構造の光反射金属皮膜とを光の入射側からこの順で有し、光の干渉作用により発色するカラー光輝意匠膜を備え、前記カラー光輝意匠膜は、前記光反射金属皮膜の光の入射側の反対側に、保護用の無機化合物(以下、保護無機化合物という)からなり、厚さが該光反射金属皮膜の厚さ以下である、カラー光輝意匠膜の経時的変色を抑制するための保護膜(以下、保護膜という)を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明のカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法は、半透明金属皮膜と、光干渉用透明膜と、不連続構造の光反射金属皮膜とを光の入射側からこの順で有し、光の干渉作用により発色するカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法であって、前記光反射金属皮膜の光の入射側の反対側に、保護無機化合物からなる保護膜を膜厚が前記光反射金属皮膜の膜厚以下の厚さになるように形成して前記カラー光輝意匠膜の経時的変色を抑制することを特徴とする。
【0012】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0013】
1.保護膜
保護膜の厚さは、光反射金属皮膜の厚さ以下であると、上述のように、不連続構造膜となって、カラー光輝意匠膜の経時的変色を抑えることができる。また、厚さの下限については、特に限定はされないが、光反射金属皮膜をよりよく遮蔽できることから、10Å以上であることが好ましい。また、光反射金属膜の厚さに対する厚さの比(構成比)は、特に限定はされないが、変色抑制効果が高いことから、20〜80%であることが好ましく、より好ましくは、30〜70%である。また、光反射金属皮膜の不連続構造の影響をよりよく受けて、不連続構造膜となり易いことから、保護膜は、光反射金属皮膜に接する(間に他の膜を介在させない)ようにして、製膜することが好ましい。
保護膜は、光反射金属皮膜の下だけでなく、半透明金属皮膜の上に設けてもよい。
保護膜の製膜方法としては、特に限定はされないが、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着、スパッタリング等の物理的蒸着、熱化学的蒸着、プラズマ化学的蒸着、光化学的蒸着等の化学的蒸着が例示できる。
【0014】
2.保護無機化合物
保護無機化合物としては、特に限定はされないが、金属酸化物、金属窒化物等が例示でき、具体的には、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等が例示できる。
【0015】
3.半透明金属皮膜
金属からなり、照射された光の一部を反射し、一部を透過する膜である半透明金属皮膜としては、特に限定はされないが、干渉色が得られやすいことから、400〜800nm(可視光)の波長領域の光の透過率が10〜90%であることが好ましい。また、干渉色が得られやすいことから、400〜800nmの波長領域の光の反射率が3〜60%であることが好ましく、光輝感が高い干渉色が得られることから、5〜30%であることがより好ましい。
半透明金属皮膜としては、特に限定はされないが、金属の粒子間に隙間があり連続していない構造の膜である不連続構造膜であってもよいし、金属の粒子間に隙間がなく連続している構造の膜である連続膜であってもよい。
不連続構造膜の膜厚としては、特に限定はされず、膜を構成する金属の種類によっても異なるが、20〜500Åであることが好ましい。例えば、インジウムからなっている場合には、干渉色の発色が濃くなることから、30〜150Åであることが好ましい。
連続膜の膜厚としては、特に限定はされず、膜を構成する金属の種類によっても異なるが、10〜200Åの薄膜であることが好ましい。
半透明金属皮膜の金属としては、特に限定はされないが、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、錫(Sn)等の金属元素、ケイ素(Si)等の半金属元素(類金属元素)等が例示できる。また、不連続構造膜の場合には、不連続構造の膜を形成し易い、インジウム、錫等が好ましい。
半透明金属皮膜の製膜方法としては、特に限定はされないが、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着、スパッタリング等の物理的蒸着が例示できる。
【0016】
2.光干渉用透明膜
光干渉用透明膜は、屈折率(n)と膜厚(d)との積である光学膜厚(nd)が50〜1500Åであることが好ましく、より好ましくは、250〜1000Åである。
カラー光輝意匠膜による光干渉は、半透明金属皮膜と光反射金属皮膜との間での光の反射であり、また、光の波長によっても異なることから、屈折率(n)は、特に限定はされないが、敢えていえば、波長550nmの光において、1.3〜2.5であることが好ましい。
光干渉用透明膜としては、特に限定はされないが、製膜時のモルホロジー制御による凹凸を表面に有するものであることが好ましい。ここで、製膜時のモルホロジー制御とは、膜を構成する無機化合物の異方成長性を高くすることをいう。より具体的には、製膜時にGR(ガス比)等を制御(小さく等)することにより、生成する無機化合物の結晶に異方性を持たせて成長させることである。また、製膜時のモルホロジー制御による凹凸とは、このような製膜時のモルホロジー制御により生じた膜表面の凹凸をいう。
光干渉用透明膜は無機化合物からなり、その無機化合物としては、特に限定はされないが、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、弗化物等が例示でき、酸化物又は窒化物が好ましい。
酸化物としては、特に限定はされないが、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化タンタル、酸化インジウム等の金属酸化物、酸化ケイ素等の半金属酸化物等が例示できる。
窒化物としては、特に限定はされないが、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化クロム等が例示できる。
上記無機化合物を用いる場合の光干渉用透明膜の膜厚としては、膜を構成する無機化合物の屈折率によっても異なるが、屈折率が2.5(波長550nmの光における)である酸化クロムの場合には、100〜450Åであることが好ましく、屈折率が1.46(波長550nmの光における)である酸化ケイ素の場合には、200〜800Åであることが好ましい。
光干渉用透明膜の製膜方法としては、特に限定はされないが、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着、スパッタリング等の物理的蒸着、熱化学的蒸着、プラズマ化学的蒸着、光化学的蒸着等の化学的蒸着が例示できる。
【0017】
3.光反射金属皮膜
金属からなり、照射された光を反射する膜である光反射金属皮膜としては、特に限定はされないが、光輝感が高い干渉色が得られることから、400〜800nmの波長領域の光の反射率が30%以上であることが好ましい。
光反射金属皮膜の膜厚としては、特に限定はされないが、300〜600Åであることが好ましい。
光反射金属皮膜の金属としては、特に限定はされないが、不連続構造の膜を形成し易い、インジウム、錫等が好ましい。
光反射金属皮膜の製膜方法としては、特に限定はされないが、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着、スパッタリング等の物理的蒸着が例示できる。
【0018】
6.カラー光輝意匠膜
カラー光輝意匠膜が設けられる態様としては、特に限定はされないが、機器用装飾体等の表面(機器用装飾体等の一部を開蓋等することにより表れる面も含む)の少なくとも一部に設けられることにより、該機器用装飾体等を色取りしてもよいし、機器用装飾体等の外部から透視可能な内部に設けられることにより、該機器用装飾体等を色取りしてもよい。
【0019】
8.機器用筐体又は機器用装飾体
機器としては、特に限定はされないが、自動車等の輸送機器、携帯電話等の通信機器、テレビ等の電気機器等が例示できる。機器用装飾体としては、特に限定はされないが、例えば、上記自動車の装飾品である、ラジエータグリル、グリルカバー、サイドモール、バックパネル、バンパー、エンブレム、ハンドル、インストゥルメントパネル等が例示できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、経時的変色が抑制されたカラー光輝意匠膜を備えた機器用筐体及び機器用装飾体並びにカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例のカラー光輝意匠膜付近の断面模式図である。
【図2】カラー光輝意匠膜の経時変化の模式図である。
【図3】保護膜の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
図1に示すように、本発明の実施例の自動車の装飾品であるグリルカバー10は、干渉色が外部から視認できるよう、透明なポリカーボネート樹脂(PC)からなるグリルカバーの本体部31と、本体部31の裏面に形成されたカラー光輝意匠膜20とを備え、カラー光輝意匠膜の発色により色取られている。そして、カラー光輝意匠膜20は、光の入射方向(カラー光輝意匠膜20の発色を視認する方向でもある)から、インジウム(In)からなる半透明金属皮膜21、窒化ケイ素(SiN)からなる光干渉用透明膜22、インジウム(In)からなる光反射金属皮膜23及び酸化バナジウム(VO)からなる保護膜24で構成されている。
【0023】
光反射金属皮膜の厚さを300Å又は500Åにしたものに、それぞれ酸化バナジウムからなる保護膜の厚さをかえた実施例又は比較例を作成し、それらの耐熱試験を行い、試験の前後における色彩の変化をLab色度変化(ΔE)として求めた。
【0024】
この実施例及び比較例のカラー光輝意匠膜の構成とLab色度変化(ΔE)とを表1に示す。また、光反射金属膜の厚さに対する保護膜の厚さの比を構成比として求め、その値も表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例及び参考例の各試料は、次のようにして作成した。
1)先ず、基材(材質:ポリカーボネート、寸法:100×100mm、厚さ:3mm)上に、インジウム(In)からなる厚さ100Åの半透明金属皮膜を真空蒸着により形成した。半透明金属皮膜は、インジウムからなることで、不連続構造膜となっている。
2)次に、形成された半透明金属皮膜上に、窒化ケイ素(SiN)からなる厚さ300Åの光干渉用透明膜を同じく真空蒸着により形成した。
3)さらに、形成された光干渉用透明膜上に、インジウム(In)からなる厚さ300Å又は500Åの光反射金属皮膜を同じく真空蒸着により形成した。光反射金属皮膜は、インジウムからなることで、不連続構造膜となっている。
4)そして、形成された光反射金属皮膜上に、酸化バナジウム(VO)からなる厚さ0(なし)〜750Åの保護膜を同じく真空蒸着により形成した。
5)上記のようにして形成されたカラー光輝意匠膜上に(保護膜上に)、二液型のアクリルウレタン系塗料(黒色)を膜厚が30μmになるように塗装し、80℃で120分の硬化条件で製膜して試料を作成した。
蒸着装置としては、シンクロン社製のEB(電子ビーム式)蒸着装置を用い、るつぼを交換することで、それぞれの蒸着膜を形成した。また、製膜条件として、真空度:5×10−3Pa以下、試料(基材)の温度:50℃、成長速度:0.3nm/秒であった。
それぞれの膜の厚さを管理するため、水晶振動子式膜厚計及び光学膜厚計(光波長:550nm)を用いた。
【0027】
このように作成した試料について、色差計を用いて、基材側からの色彩(Lab色度)を測定した後、120℃の雰囲気中に6時間静置する耐熱試験を行った。そして、試験前と同じように色彩を測定した。測定した試験前後のLab色度の値から下記の式を用いて、試験の前後におけるLab色度変化(ΔE)を求めた。
【数1】


、a、bは、試験後のLab色度の値であり、L、a、bは、試験前のLab色度の値である。
【0028】
以上の結果より、光反射金属皮膜と同じ厚さか又はそれより薄い(構成比で100%以下)保護膜を有するもの(全ての実施例)は、耐熱試験による色の変化が保護膜がないもの(比較例1、3)より小さくなった。一方、光反射金属皮膜より厚い保護膜を有するもの(比較例2、4)は、耐熱試験による色の変化が保護膜がないもの(比較例1、3)より大きくなった。
【0029】
次に、光反射金属膜の厚さを500Åの一種類にし、材質を酸化バナジウムから酸化タングステン(WO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニウム(AlO)又は酸化チタン(TiO)に変更し、厚さを200〜800Åにした保護膜を有する実施例又は比較例を、上記酸化バナジウムの実施例等と同じように作成した。ただし、酸化アルミニウムからなる保護膜は、スパッタリングで作成した。そして、それらについても、上記のように耐熱試験を行い、試験の前後における色彩の変化をLab色度変化(ΔE)として求めた。
【0030】
この実施例及び比較例のカラー光輝意匠膜の構成とLab色度変化(ΔE)とを表2に示す。また、光反射金属膜の厚さに対する保護膜の厚さの比を構成比として求め、その値も表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
以上の結果より、光反射金属皮膜と同じ厚さか又はそれより薄い(構成比で100%以下)保護膜を有するもの(全ての実施例)は、耐熱試験による色の変化が保護膜がないもの(比較例3)より小さくなった。一方、光反射金属皮膜より厚い保護膜を有するもの(比較例5、7、8)は、耐熱試験による色の変化が保護膜がないもの(比較例3)より大きくなった。
【0033】
さらに、半透明金属皮膜の上、すなわち基材と半透明金属皮膜との間に、厚さ300Å又は500Åの酸化バナジウムからなる上保護膜を設けた実施例を作成した。ただし、作成方法は、上記実施例等とほぼ同じであるが、半透明金属皮膜を形成する前に、基材の表面上に上保護膜を蒸着により形成し、この上保護膜上に半透明金属皮膜を形成したことのみが上記実施例等と異なる。そして、これらについても、上記のように耐熱試験を行い、試験の前後における色彩の変化をLab色度変化(ΔE)として求めた。
【0034】
この実施例のカラー光輝意匠膜の構成とLab色度変化(ΔE)とを表3に示す。また、光反射金属膜の厚さに対する保護膜の厚さの比を構成比として求め、その値も表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
以上より、光反射金属膜と同じ厚さか又はそれより薄い(構成比で100%以下)保護膜を有するカラー光輝意匠膜は、保護膜を有さないカラー光輝意匠膜より、耐熱試験による色の変化が小さいことから、経時的変色が抑制されている。
【0037】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 機器用装飾体(グリルカバー)
20 カラー光輝意匠膜
21 半透明金属皮膜
22 光干渉用透明膜
23 光反射金属膜
24 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明金属皮膜と、光干渉用透明膜と、不連続構造の光反射金属皮膜とを光の入射側からこの順で有し、光の干渉作用により発色するカラー光輝意匠膜を備え、
前記カラー光輝意匠膜は、前記光反射金属皮膜の光の入射側の反対側に、保護用の無機化合物からなり、厚さが該光反射金属皮膜の厚さ以下である、カラー光輝意匠膜の経時的変色を抑制するための保護膜を有することを特徴とする機器用筐体又は機器用装飾体。
【請求項2】
前記無機化合物は、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化チタン又は酸化アルミニウムである請求項1記載の機器用筐体又は機器用装飾体。
【請求項3】
前記光反射金属皮膜の金属は、インジウムである請求項1又は2記載の機器用筐体又は機器用装飾体。
【請求項4】
前記光反射金属皮膜の膜厚は、300〜600Åである請求項1〜3のいずれか一項に記載の機器用筐体又は機器用装飾体。
【請求項5】
前記半透明金属皮膜の金属は、インジウムである請求項1〜4のいずれか一項に記載の機器用筐体又は機器用装飾体。
【請求項6】
半透明金属皮膜と、光干渉用透明膜と、不連続構造の光反射金属皮膜とを光の入射側からこの順で有し、光の干渉作用により発色するカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法であって、
前記光反射金属皮膜の光の入射側の反対側に、保護用の無機化合物からなる保護膜を膜厚が前記光反射金属皮膜の膜厚以下の厚さになるように形成して前記カラー光輝意匠膜の経時的変色を抑制することを特徴とするカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法。
【請求項7】
前記無機化合物は、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化チタン又は酸化アルミニウムである請求項6記載のカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法。
【請求項8】
前記光反射金属皮膜の金属は、インジウムである請求項6又は7記載のカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法。
【請求項9】
前記光反射金属皮膜の膜厚は、300〜600Åである請求項6〜8のいずれか一項に記載のカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法。
【請求項10】
前記半透明金属皮膜の金属は、インジウムである請求項6〜9のいずれか一項に記載のカラー光輝意匠膜の経時的変色の抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−173273(P2010−173273A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21015(P2009−21015)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】