説明

機械式スプライサー装置

【課題】 糸継対象としての糸Y2・Y1に対しディスク部材28・28を接触させることで解撚及び撚掛けを行い、また、糸Y2・Y1の余剰末端部をクランプ部材29・29で除去することによって糸継ぎする機械式スプライサー装置において、装置のハウジング内部に風綿が蓄積しにくい構成を提供する。
【解決手段】 少なくともクランプ部材29・29及びディスク部材28・28を覆うハウジング32を備えるとともに、糸継対象としての糸Y2・Y1を導入する糸導入溝26を備える。そして、当該ハウジング32の内部に圧縮空気導入口34を介して圧縮空気を導入し、クランプ部材29やディスク部材28の近傍を通過してハウジング32の内部から外部に向かう空気流を、選択図の白抜き矢印のように形成する。具体的には、前記空気流を通過させる排出窓30・30や排出開口31・31を、前記ハウジング32の前記糸導入溝26が備えられた側の面に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸継対象としての糸を解撚する解撚工程、余剰末端の糸を除去する除去工程、及び、糸を撚掛けする撚掛工程を含む糸継作業を行う機械式スプライサー装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機械式スプライサー装置は、例えば特許文献1に開示される。この特許文献1の機械式スプライサー装置は所謂フリクション式に構成されており、糸に接触する撚り解き・撚り直しリングを各々が有する一対のプレートを備えるとともに、糸の余剰末端部をむしり取り及びちぎり取りするための一対のクランプ部材を備える。そして、これらプレートやクランプ部材は、シールドや側板によって覆われて保護されており、糸の繊維等の異物が装置外から内部に侵入して不具合を起こすことを防止できる構成になっている。
【特許文献1】特許第2518812号公報(第1図、第4図、第18図等、プレート17・18、クランプ部材42・142、シールド12、側板211・311)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示すような機械式スプライサー装置は、プレートで糸を撚り解き及び撚り直し、また、クランプ部材で糸をむしり取り及びちぎり取る構成であるので、糸継作業時にプレートやクランプ部材の部分で風綿が発生し易い。従って、シールドや側板の内部に風綿が蓄積し易く、これが装置の可動部分に悪影響を与えて、スプライサー装置の故障や糸継不良の原因になっていた。また、風綿を取り除くために頻繁にメンテナンス作業を行わなければならず、装置の稼動効率を低下させてしまっていた。
【0004】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、装置のハウジング内部に風綿が蓄積しにくい機械式スプライサー装置の構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0006】
◆本発明の第1の観点によれば、糸継対象としての糸を解撚する解撚工程、余剰末端の糸を除去する除去工程、及び、糸を撚掛けする撚掛工程を含む糸継作業を行う機械式スプライサー装置の、以下の構成が提供される。糸の解撚工程、除去工程、撚掛工程のうち少なくとも何れか一つを行うために糸に接触する作用部材と、この作用部材を覆うハウジングと、を備える。前記作用部材には、糸継対象としての糸を解撚及び撚掛けするディスク部材が含まれている。ガス流が前記ディスク部材の近傍を通過しつつ前記ハウジングの内部から外部へ流れるように構成する。
【0007】
これにより、解撚、あるいは撚掛け時等にハウジング内で発生してディスク部材に付着する風綿を空気流によって外部に排出して除去できるので、長期間にわたる安定した糸継作業を実現することができる。また、風綿除去のためのメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0008】
◆本発明の第2の観点によれば、以下のように構成する、機械式スプライサー装置が提供される。糸継対象としての糸を解撚する解撚工程、余剰末端の糸を除去する除去工程、及び、糸を撚掛けする撚掛工程を含む糸継作業を行う。糸の解撚工程、除去工程、撚掛工程のうち少なくとも何れか一つを行うために糸に接触する作用部材と、この作用部材を覆うハウジングと、を備える。前記作用部材には、糸継対象としての糸を除去するためのクランプ部材が含まれている。ガス流が前記クランプ部材の近傍を通過しつつ前記ハウジングの内部から外部へ流れるように構成する。
【0009】
これにより、糸の除去時等にハウジング内で発生してクランプ部材に付着する風綿を空気流によって外部に排出して除去できるので、長期間にわたる安定した糸継作業を実現することができる。また、風綿除去のためのメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0010】
◆前記の機械式スプライサー装置においては、前記ハウジングの前記クランプ部材に対応する部位が開放されていることが好ましい。
【0011】
これにより、クランプ部材に付着した風綿を、その開放された部位を介して簡単にハウジング外へ排出することができる。
【0012】
◆前記の機械式スプライサー装置においては、以下のように構成することが好ましい。糸継対象としての糸を導入する糸導入溝を備える。前記ハウジングの前記糸導入溝が備えられた側の面には、前記ガス流を通過させる開放部が備えられている。
【0013】
このように糸導入溝側の面に開放部を配置することで、風綿の排出を容易に行うことができる。
【0014】
◆前記の機械式スプライサー装置においては、前記ハウジングの内部かつ前記作用部材の近傍には、当該作用部材に向けてガスを噴出するための噴出口が備えられていることが好ましい。
【0015】
これにより、作用部材に向けて噴出口からガス流を直接的に吹き付けることで、作用部材に付着した風綿を効果的に排出することができる。
【0016】
◆前記の機械式スプライサー装置においては、前記ハウジングにおける糸継対象としての糸をセットする面以外の面から、前記ガス流のガスが当該ハウジング内に導入されることが好ましい。
【0017】
これにより、ガス流のガスのハウジングへの導入のための経路が糸のセット/取外しを行う際に邪魔にならないので、スムーズな糸継作業を行わせることができる。
【0018】
◆前記の機械式スプライサー装置においては、前記ガス流の形成は、糸の解撚工程、除去工程、撚掛工程のうち少なくとも何れかのタイミングで行われることが好ましい。
【0019】
これにより、風綿の発生し易いタイミングでガス流が形成されるから、風綿をガス流によって確実かつ効果的に排出することができる。
【0020】
◆前記の機械式スプライサー装置においては、前記ガス流は、糸継作業を開始する前の段階から形成されていることが好ましい。
【0021】
このように糸継作業前からガス流を形成しておくことで、糸継作業中に発生する風綿を確実にハウジングの外部へ吹き飛ばして除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る機械式スプライサー装置のほぼ正面側から見た斜視図、図2は同じく斜め下側から見た斜視図である。図3は機械式スプライサー装置を備える自動ワインダの巻取ユニットの概略図である。
【0023】
図3には、本実施形態のスプライサー装置を備える巻取ユニット1の全体構成が示される。なお、図3では1つのユニットのみが図示されているが、この巻取ユニット1は通常は複数台が並設されており、これら複数台の巻取ユニット1・1・・・と、その並設方向の一端部に更に配置された図略の機台制御装置とで、糸条巻取機(自動ワインダ)が構成されている。
【0024】
図3に示す巻取ユニット1は、給糸ボビンBから解舒される紡績糸YをトラバースさせながらボビンBf上に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージPとするものである。また、巻取ユニット1は、巻取ユニット1を正面から見たときに、左右の一側にユニットフレーム13が設けられ、そのユニットフレーム13の側方に巻取処理を行う巻取ユニット本体14が設けられている。
【0025】
上記の巻取ユニット本体14は、ボビンBfを把持するクレードル2と、紡績糸Yをトラバースさせる綾振ドラム(巻取ドラム)3と、を備えている。クレードル2は、綾振ドラム3に対し近接又は離間する方向に揺動自在であり、それによって、ボビンBfに紡績糸Yを巻いて形成されたパッケージPが綾振ドラム3に対して接触または離間される。また、クレードル2には、糸切れ時にクレードル2を上げて、パッケージPを綾振ドラム3から離反させるリフトアップ機構2aと、クレードル2を上げると同時に、クレードル2に把持されたパッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構2bが取り付けられている。
【0026】
綾振ドラム3の周面には螺旋状の綾振溝3aが形成されており、この綾振溝3aによって紡績糸Yをトラバースさせるようにしている。また、巻取ユニット1は、給糸ボビンBと綾振ドラム3との間の糸走行経路中に、給糸ボビンBから順に、解舒補助装置4、テンション付与装置5、糸継装置としてのスプライサー装置7、クリアラー(糸太さ検出器)8を配設している。
【0027】
解舒補助装置4は、給糸ボビンBの解舒とともに芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸の解舒を補助するものである。テンション付与装置5は、走行する紡績糸Yに所定のテンションを付与するものである。図3に示される例では、固定の櫛歯5aに対して可動の櫛歯5bを配置するゲート式のものが用いられている。櫛歯5aに対して櫛歯5bが噛み合わせ状態または解放状態になるように旋回自在になっており、その旋回はロータリー式のソレノイドにより行われる。
【0028】
スプライサー装置7は、糸欠点を検出して行う糸切断時、または解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビンB側の下糸Y1と、パッケージP側の上糸Y2とを糸継ぎするものである。このスプライサー装置7は機械式のものに構成されており、この詳細については後述する。クリアラー8は、紡績糸Yの欠陥を検出するためのものであって、クリアラー8からの紡績糸Yの太さに応じた信号が図示しないアナライザーで処理されることで、スラブ等の糸欠点を検出する。また、このクリアラー8には、糸欠点を検出した時の糸切断用のカッター8aが付設されている。
【0029】
スプライサー装置7の上下には、給糸ボビンB側の下糸Y1を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段11と、パッケージP側の上糸Y2を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段12が設けられている。この構成で、糸切断時または糸切れ時においては、下糸捕捉案内手段11の吸引口11aが図示の位置で下糸Y1を捕捉し、軸11bを中心にして下から上へと旋回してスプライサー装置7に下糸Y1を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段12のサクションマウス12aが図示の位置から軸12bを中心にして下から上へと旋回し、逆転させられるパッケージPから上糸Y2を捕捉し、更に軸12bを中心にして上から下へと旋回し、スプライサー装置7に上糸Y2を案内するようになっている。
【0030】
上記のスプライサー装置7の外観斜視図が図1及び図2に示され、このスプライサー装置7は、内部機構の上下側を覆う上下面カバー21・21及び左右側を覆う左右面カバー22・22を備え、更にスプライサー装置7の背面側は背面カバー25によって覆われている。また、スプライサー装置7の正面側を覆うようにして、正面カバーを兼ねる糸案内部材23・24が左右に並べて取り付けられている。本実施形態のスプライサー装置7のハウジング32は、上記の上下面カバー21、左右面カバー22、背面カバー25、糸案内部材23・24によって構成されている。
【0031】
ハウジング32の正面側を構成する2つの糸案内部材23・24は所定の幅の隙間を形成しながら配置されており、これにより、両糸案内部材23・24の間には、上下方向に細長い糸導入溝26が形成される。こうしてハウジング32の正面側に形成された糸導入溝26の内部には、上糸Y2及び下糸Y1を案内できるようになっている。言い換えれば、本実施形態のスプライサー装置7では、糸Y2・Y1をセットするセット面は、ハウジング32の正面側に構成されている。
【0032】
また、ハウジング32の上下面カバー21・21の正面側端部の位置には糸寄せレバー27・27がそれぞれ回動自在に配置されている。この構成で前記糸寄せレバー27・27を回動させると、糸Y2・Y1を、糸導入溝26の開口端の位置で糸案内部材23・24に形成されている傾斜状の案内面によってガイドしながら、糸導入溝26内へ導入できるようになっている。
【0033】
そして、上記ハウジング32の内部にはディスク部材(作用部材)28・28が互いに対向した状態で回転自在に支持されており、前記糸導入溝26に導入された上糸Y2及び下糸Y1に対し、2枚のディスク部材28・28が当該糸Y2・Y1を挟むように接触し、この状態でディスク部材28・28を互いに逆方向に回転させることで、2本の糸Y2・Y1を解撚し、及び撚掛けできるように構成されている。また、ハウジング32の内部であって前記ディスク部材28・28の上方及び下方の位置には、糸Y2・Y1をクランプして余剰末端部を除去するためのクランプ部材(作用部材)29・29が配置されている。ただし本願の図面では、上下のクランプ部材29・29のうち下側のクランプ部材29のみを、図2に代表して図示している。
【0034】
以上の糸寄せレバー27・27、クランプ部材29・29、ディスク部材28・28等の可動部品は、糸導入溝26の近傍に配置されている。また、これらの可動部品は、ハウジング32の内部に配置された、図示しないカムやアームやリンクや歯車を用いた駆動機構によって駆動される。この駆動機構としては、例えば前記の特許文献1に示すような公知の機構を用いれば良い。
【0035】
そして図2に示すように、ハウジング32の背面側を構成する前記背面カバー25には、筒状の圧縮空気プラグ33が突設されている。この圧縮空気プラグ33の先端には圧縮空気導入口(ガス導入口)34が形成され、この圧縮空気導入口34には図示しない配管が接続されて、圧縮空気源からの圧縮空気を配管と圧縮空気プラグ33を介してハウジング32内に導入できるようになっている。また、圧縮空気源と前記圧縮空気導入口34の間には図示しないバルブが設置されており、このバルブの開閉は、前記ユニットフレーム13に設置された図略のコントローラによって制御される。
【0036】
また、ハウジング32の正面側を構成する2枚の糸案内部材23・24のうち一方の糸案内部材24には、多角形状の排出窓(開放部)30・30が上下に2つ並べて貫通状に開口されている。この排出窓30・30は、前記糸導入溝26の脇の位置(糸導入溝26とは異なる位置)に設けられている。
【0037】
更に、2つの排出窓30・30が設けられている領域の上方及び下方の位置には、糸案内部材24に排出開口(開放部)31・31が形成されている。この排出開口31・31は、前記糸導入溝26の上端部及び下端部にそれぞれ接続している。また、この排出開口31・31は、上下の前記クランプ部材29・29に対面する位置にそれぞれ形成されている。
【0038】
以上の構成で、スプライサー装置7による糸継作業(ディスク部材28・28による糸の解撚工程及び撚掛工程、また、クランプ部材29・29による糸の余剰末端部の除去工程)の際に、前記バルブが開弁される。すると、圧縮空気導入口34に圧縮空気が供給され、ハウジング32の内部に背面側から圧縮空気が導入されることにより、ハウジング32内の圧力が上昇する。従って、ハウジング32内の空気は糸導入溝26を通じて正面側へ抜けるほか、ハウジング32の正面に形成された前記排出窓30・30や排出開口31・31を通じて、図1や図2の白抜き矢印のように空気流を形成しながら、正面上方及び正面下方の斜めに抜けることになる。
【0039】
従って、前記ディスク部材28・28による解撚及び撚掛けや、クランプ部材29・29による糸の除去の際に生じる風綿を、前記の空気流によってハウジング32の内部から排出することができるので、良好な糸継作業(糸継動作)を長期間にわたって継続して行えるとともに、メンテナンスの必要頻度も低減することができる。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態の機械式スプライサー装置7は、糸継対象としての上糸Y2及び下糸Y1に対しディスク部材28・28を接触させることで解撚及び撚掛けを行い、また、その過程においてクランプ部材29によって糸Y2・Y1の余剰末端部を除去することで、糸継作業を行うように構成している。そしてスプライサー装置7は、糸Y2・Y1の除去を行うクランプ部材29・29や、解撚・撚掛けを行うディスク部材28・28等を覆うハウジング32を備えるとともに、当該ハウジング32の内部から外部に向かう空気流(図1や図2の白抜き矢印)を形成することが可能に構成されている。
【0041】
従って、糸Y2・Y1の解撚、除去、撚掛け時に発生する風綿を空気流によってハウジング32の内部から外部へ排出して除去できるので、長期間にわたる安定した糸継作業を実現することができ、また、風綿除去のためのメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0042】
また、前記空気流は、ディスク部材28やクランプ部材29の近傍を通過してハウジング32の外部へ排出されるように構成されている。従って、ディスク部材28やクランプ部材29に付着した風綿を効率良く外部へ排出することができる。
【0043】
また、前記ハウジング32は、前記クランプ部材29に対応する部位に排出開口(開放部)31が形成されており、当該部位が開放されている。従って、クランプ部材29に付着した風綿を、その排出開口31を介して簡単にハウジング32の外部へ排出することができ、風綿の除去効果を一層向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態のスプライサー装置7では、糸継対象としての上糸Y2及び下糸Y1を導入する糸導入溝26を備えるとともに、空気流を通過させる排出窓30及び排出開口31を、ハウジング32の糸導入溝26が備えられた側、即ち正面側の面に設けている。このように糸導入溝26側の面に排出窓30や排出開口31を設けることで、風綿の排出を容易に行うことができる。即ち、上述のとおり本実施形態ではディスク部材28やクランプ部材29は糸導入溝26の近傍に設けられているから、糸導入溝26側の面に排出窓30や排出開口31を配置することで、風綿が発生しやすい箇所であるディスク部材28やクランプ部材29の近傍に当該排出窓30や排出開口31が位置することになる。従って、風綿の発生箇所からハウジング32外へ至る簡素な排出経路を形成でき、風綿の容易かつ確実な排出を実現することができる。
【0045】
なお、前記スプライサー装置7においては、前記圧縮空気プラグ33のハウジング32内部側の端部に内部配管としてのホースを接続して、当該ホースをハウジング32内部に引き回すようにしても良い。この場合、当該ホースの端部(噴出口)をハウジング32の内部で前記クランプ部材29・29や前記ディスク部材28・28の近傍に配置するとともに、この噴出口を当該クランプ部材29・29やディスク部材28・28へ向けるように構成すれば、クランプ部材29やディスク部材28に向けて一層直接的に圧縮空気が吹き付けられる構成になるから、風綿除去効果を一層向上できる。また、当該ホースの先端の噴出口に流路断面積を絞る形状のノズルが備えられていると、強い空気流で風綿を勢い良く吹き飛ばして効果的に除去できるので好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、スプライサー装置7において上糸Y2及び下糸Y1をセットする面(糸導入溝26が設けられている面)はハウジング32の正面側である一方、空気流に用いられる圧縮空気を導入する面(圧縮空気導入口34が配置されている側の面)はハウジング32の背面側である。言い換えれば、糸Y2・Y1のセット面と異なる面である背面側から、空気流のための圧縮空気がハウジング32内部に導入される構成である。従って、圧縮空気導入口34に接続される圧縮空気の経路(具体的には、配管)が、装置7への糸Y2・Y1のセット/取外しの際に邪魔にならないので、スムーズな糸継作業が実現される。
【0047】
また、前記の圧縮空気流の形成は、少なくとも、ディスク部材28による糸の解撚動作及び撚掛動作、及び、クランプ部材29による糸の除去動作のタイミングにおいて行われている。従って、風綿が形成され易いタイミングにおいて空気流による風綿排出が効果的に行われ、効率良く風綿をハウジング32内部から除去することができる。
【0048】
あるいは、前記バルブを常時開弁状態とする等して、スプライサー装置7による糸継作業が開始される前の段階から空気流が形成されるように構成しても良い。こうすることで、糸継作業中に発生する風綿を確実にハウジング32の外部へ吹き飛ばして除去することができる。
【0049】
以上に本発明の好適な実施形態および変形例を説明したが、上記の構成に対しては、例えば以下のような変更を加えることもできる。
【0050】
○排出窓30や排出開口31の形状や位置は図1や図2に図示されているものに限定されず、例えば円形の排出窓30や排出開口31としたり、糸案内部材24の上下中央に排出窓30を配置したり、他側の糸案内部材23側に排出窓30や排出開口31を形成する等、空気流を通過させる開放部の形状や位置は任意に変更することができる。また、ハウジング32の内部から外部へ抜ける空気流の向きも、斜め方向ではなく、例えば真っ直ぐ正面に向かって(水平方向に)空気流を形成するように変更することができる。またハウジング32についても、上記の実施形態では略直方体状に構成しているが、これに限定されない。
【0051】
○圧縮空気流はどのタイミングで噴出させても良く、例えば上述のように常時噴出させたり、糸継作業時にのみ噴出させたりすることができる。また例えば、糸継作業の開始前の時点(例えば、クリアラー8のカッター8aにより糸を切断した時点や、糸切れを検出した時点)から、糸継作業完了時まで圧縮空気流を継続して噴出させるように構成することもできる。また、空気を噴出する/しないを単に切り換えるのではなく、例えば通常時は低圧で噴出させておき、糸継作業時にのみ高圧で噴出させるように構成することもできる。
【0052】
○また、糸継作業の開始から終了までの時間に限ってみても、常時噴出させておく場合のほか、糸の除去動作の時だけ噴出させたり、解撚動作や撚掛動作の時だけ噴出させたりすることができる。また、糸継作業の中で噴出の圧力を増減させることもできる。
【0053】
○風綿を除去するためのガス流としては、上記の構成では圧縮空気による空気流としたが、これに限定されずに任意のガス(気体)を使用することができる。
【0054】
○圧縮空気で風綿を吹き飛ばす構成に代えて、又はこれに付加して、負圧源に接続したサクションを設けて風綿を吸引除去する構成に変更することができる。このサクションの吸引口は、例えば前記の排出窓30や排出開口31の近傍に配置することが考えられる。
【0055】
○圧縮空気プラグ33は、背面カバー25のみならず、例えば上下面カバー21、左右面カバー22や糸案内部材23・24に設けることができる。言い換えれば、圧縮空気導入口34は、ハウジング32の背面側のみならず、上下面や左右側面、あるいは正面側に配置することができる。ただし、正面側の糸案内部材23・24以外に(糸がセットされる正面側以外に)圧縮空気プラグ33を設けたほうが、ハウジング32から正面側に向かって圧縮空気流を容易に形成でき、また、セットされる糸Y2・Y1が圧縮空気源からの配管と干渉しにくくなる点で好ましい。
【0056】
○上記の空気流を形成する構成は、ハウジングの正面側に保護カバーを設け、通常時は保護カバーを閉じ状態とし、糸継作業の時にのみ糸のセット/取外しのために保護カバーを開く方式のスプライサーに適用することもできる。この場合、保護カバーが閉じられた状態で前記排出窓等の開放部を通過する空気流を形成したり、あるいは保護カバーが開かれた状態でその開放された部分を通過する空気流を形成したりすることができる。
【0057】
○ディスク部材28やクランプ部材29の近傍に圧縮空気の噴出口を配置するための構成としては、上述したようなハウジング32の内部にホースを引き回す方法に限定されない。例えば、前記ハウジング32の内部に配置されているディスク部材28やクランプ部材29等の駆動機構の一部をなすギアやカムやレバー等に孔を形成し、この孔の内部に圧縮空気の経路を構成するとともに、当該孔の開口端の部分に、ディスク部材28やクランプ部材29に向けて圧縮空気を噴出するための噴出口を形成する構成が考えられる。
【0058】
○上記の実施形態では、糸導入溝26がハウジング32の正面側に形成されているが、これに限らず、糸Yの走行経路のレイアウトに応じて、糸Y2・Y1のセット面が例えばハウジング32の上面側であったり、側面側であったり、背面側であったりしても良い。
【0059】
○本発明の機械式スプライサー装置は、上記のような自動ワインダのみならず、糸継装置を備える繊維機械一般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る機械式スプライサー装置のほぼ正面側から見た斜視図。
【図2】同じく斜め下側から見た斜視図。
【図3】機械式スプライサー装置を備える自動ワインダの巻取ユニットの概略図。
【符号の説明】
【0061】
1 自動ワインダの巻取ユニット
7 機械式スプライサー装置
21・21 上下面カバー(ハウジングの一部)
22・22 左右面カバー(ハウジングの一部)
23・24 糸案内部材(ハウジングの一部)
25 背面カバー(ハウジングの一部)
26 糸導入溝
28・28 ディスク部材(作用部材)
29・29 クランプ部材(作用部材)
30 排出窓(開放部)
31 排出開口(開放部)
32 ハウジング
34 圧縮空気導入口(ガス導入口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸継対象としての糸を解撚する解撚工程、余剰末端の糸を除去する除去工程、及び、糸を撚掛けする撚掛工程を含む糸継作業を行う機械式スプライサー装置において、
糸の解撚工程、除去工程、撚掛工程のうち少なくとも何れか一つを行うために糸に接触する作用部材と、
この作用部材を覆うハウジングと、を備え、
前記作用部材には、糸継対象としての糸を解撚及び撚掛けするディスク部材が含まれており、
ガス流が前記ディスク部材の近傍を通過しつつ前記ハウジングの内部から外部へ流れるように構成したことを特徴とする、機械式スプライサー装置。
【請求項2】
糸継対象としての糸を解撚する解撚工程、余剰末端の糸を除去する除去工程、及び、糸を撚掛けする撚掛工程を含む糸継作業を行う機械式スプライサー装置において、
糸の解撚工程、除去工程、撚掛工程のうち少なくとも何れか一つを行うために糸に接触する作用部材と、
この作用部材を覆うハウジングと、を備え、
前記作用部材には、糸継対象としての糸を除去するためのクランプ部材が含まれており、
ガス流が前記クランプ部材の近傍を通過しつつ前記ハウジングの内部から外部へ流れるように構成したことを特徴とする、機械式スプライサー装置。
【請求項3】
請求項2に記載の機械式スプライサー装置であって、前記ハウジングの前記クランプ部材に対応する部位が開放されていることを特徴とする、機械式スプライサー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の機械式スプライサー装置であって、
糸継対象としての糸を導入する糸導入溝を備えるとともに、
前記ハウジングの前記糸導入溝が備えられた側の面には、前記ガス流を通過させる開放部が備えられていることを特徴とする機械式スプライサー装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の機械式スプライサー装置であって、前記ハウジングの内部かつ前記作用部材の近傍には、当該作用部材に向けてガスを噴出するための噴出口が備えられていることを特徴とする機械式スプライサー装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の機械式スプライサー装置であって、
前記ハウジングにおける糸継対象としての糸をセットする面以外の面から、前記ガス流のガスが当該ハウジング内に導入されることを特徴とする、機械式スプライサー装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか一項に記載の機械式スプライサー装置であって、
前記ガス流の形成は、糸の解撚工程、除去工程、撚掛工程のうち少なくとも何れかのタイミングで行われることを特徴とする、機械式スプライサー装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか一項に記載の機械式スプライサー装置であって、
前記ガス流は、糸継作業を開始する前の段階から形成されていることを特徴とする、機械式スプライサー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−347697(P2006−347697A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175888(P2005−175888)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】