説明

機械式駐車場装置用トレー装置

【課題】構成を複雑にすることなく、電気自動車側のバッテリー給電端子の位置が異なっても容易に対応することができる機械式駐車場装置用トレー装置を提供する。
【解決手段】外側起立部6Aに形成したほぼ水平な取り付け部8Aの上部に、駐車車両が電気自動車であるときにそのバッテリー給電端子と接続するために使用する充電用プラグ26を収納可能なトレー側充電用プラグ収納部9を配置し、一方、取り付け部8Aの下部には、トレー側充電用プラグ収納部9に接離する方向に移動可能な可動ドラム12と、この可動ドラム12を所定位置に保持するようにワイヤー21を可動ドラム12に連結したラチェット式巻き取り器13とを設け、充電用プラグ26に接続した電源ケーブル25を取り付け部8Aの下部に導いた後に、可動ドラム12に巻き掛けて往復路部を形成して配置し、電源ケーブル25の充電用プラグ26と反対側の復路部を位置固定する電源ケーブル固定部24を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車状態で電気自動車のバッテリー充電を行うことが可能な機械式駐車場装置用トレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械式駐車装置において、駐車車両である電気自動車を搭載したトレー装置を格納スペースに収納した状態で、電気自動車のバッテリーの充電を行う構成が知られている(例えば、特許文献1〜4を参照)。このような機械式駐車装置では、電気自動車を搭載するトレー装置に、電気自動車のバッテリー給電端子と電気的に接触する充電用プラグを構成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−366283号公報
【特許文献2】特開平6−57986号公報
【特許文献3】特開平6−57987号公報
【特許文献4】実開平5−62667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の機械式駐車装置用トレー装置では、駐車状態の電気自動車は車種や自動車メーカーによってバッテリー給電端子の位置が異なるため、通常の構成では充電用プラグを接続できない状況が生じてしまう。充電用プラグに接続した電源ケーブルに余裕を持たせることも考えられるが、駐車車両の進入時に誤って破損することのないようにしなければならず、また構成も複雑になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、構成を複雑にすることなく、電気自動車側のバッテリー給電端子の位置が異なっても容易に対応することができる機械式駐車場装置用トレー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、駐車車両を搭載するベースに、駐車車両の進入方向とほぼ平行に形成した外側起立部を形成した機械式駐車装置用トレー装置において、上記外側起立部にほぼ水平な取り付け部を形成し、上記取り付け部の上部に、前記駐車車両が電気自動車であるときにそのバッテリー給電端子と接続するために使用する充電用プラグを収納可能なトレー側充電用プラグ収納部を設け、上記取り付け部の下部に、上記トレー側充電用プラグ収納部に接離する上記進入方向に移動可能な可動ドラムと、この可動ドラムを所定位置に保持するようにワイヤーを上記可動ドラムに連結したラチェット式巻き取り器とを設け、上記充電用プラグに接続した電源ケーブルを上記取り付け部の下部に導いた後に、上記可動ドラムに巻き掛けて往復路部を形成して配置し、上記電源ケーブルの上記充電用プラグと反対側の復路部を位置固定する電源ケーブル固定部を設けたことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、電源ケーブルの長さ調整は、電気自動車の侵入方向と平行に形成した外側起立部の下部における残余空間部を活用し、同侵入方向と平行な方向に移動する可動ドラムによって行うことができ、簡単な構成で電気自動車側のバッテリー給電端子の位置が異なっても容易に対応することができ、かつ取り付け部の高さと幅を抑えながら、可動ドラムの移動距離、つまり電源ケーブルの調整長さを大きくすることができる。
【0008】
また本発明は、上述の構成に加えて、上記トレー側充電プラグ収納部に、上記充電用プラグの出し入れ時に上記駐車車両の進入方向とほぼ平行な方向に開閉する保護カバーを設けたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、保護カバーを開くときに駐車車両に接触したり、周辺構造物によって開き程度が妨げたりすることはなく、トレー側充電用プラグ収納部を薄型に構成してトレー装置の大型化を防ぎながら、充電用プラグを雨滴や塵埃などから保護することができ、信頼性を一層高めることができる。
【0010】
また本発明は、上述の構成に加えて、上記電源ケーブルを導いた上記取り付け部の下部に、上記電源ケーブルの移動を円滑にする可回転的なプーリを設けたことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、取り付け部の下部の導出部近傍に配置したプーリに掛けてから上方部に引き出すことができ、取り付け部の下部の比較的狭い残余空間部を使用し、かつ水平方向に移動する可動ドラムを使用しても、電源ケーブルをスムーズに出し入れができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による機械式駐車装置用トレー装置によれば、電源ケーブルの長さ調整は、電気自動車の侵入方向と平行に形成した外側起立部の下部における残余空間部を活用し、同侵入方向と平行な方向に移動する可動ドラムによって行うことができ、簡単な構成で電気自動車側のバッテリー給電端子の位置が異なっても容易に対応することができ、かつ取り付け部の高さと幅を抑えながら、可動ドラムの移動距離、つまり電源ケーブルの調整長さを大きくすることができる。しかも、この電源ケーブルの長さ調整は、可動ドラムの移動によって行うことができるため、定常状態では電源ケーブルの殆どを取り付け部の下部にすっきりと納められ、電源ケーブルを引き伸ばした後も可動ドラムを移動して収納することができるので、同様にすっきりとした状態に戻すことができる。さらに、取り付け部の下部においても電源ケーブルを整然と配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態による機械式駐車装置用トレー装置を示す側面図である。
【図2】図1に示した機械式駐車装置用トレー装置の正面図である。
【図3】図1に示した機械式駐車装置用トレー装置の平面図である。
【図4】図2に示した機械式駐車装置用トレー装置の要部であるトレー側充電用プラグ保持部を拡大した側面図である。
【図5】図4に示したトレー側充電用プラグ保持部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図2および図3は、本発明の一実施の形態による機械式駐車装置用トレー装置を示す正面図および平面図であり、電気自動車搭載用として構成されたものである。ベース1を主たる構成としており、その下面には、図示しないレール上を走行する複数の車輪2を可回転的に支持しており、一方、ベース1の上面には電気自動車が侵入して来るときにタイヤ3をタイヤ搭載部4A,4Bへと確実に案内するために上方に突出した中央側起立部5A,5Bおよび外側起立部6A,6Bを有している。中央側起立部5A,5Bと外側起立部6A,6B間に形成したタイヤ搭載部4A,4Bには、乗り込んできた電気自動車のタイヤの停止位置を規制する位置規制部7A,7Bなどを備えている。
【0016】
外側起立部6A,6Bは、乗り込んだ電気自動車の側方に位置する部分であり、その上面に比較的幅の狭い取り付け部8A,8Bを形成しており、この取り付け部8Aの一方の端部近傍には、図3に示すようにトレー側充電用プラグ収納部9と、電源ケーブル導出部10が構成されている。また取り付け部8Aの下部に形成したスペースには、電気自動車の進入方向に並んで、可回転的なプーリ11と、このプーリ11側の移動終端部12Aまで移動可能に配置した可動ドラム12と、この可動ドラム12を図示の定常位置へと引き戻すラチェット式巻き取り器13とを配置している。
【0017】
図1は、外側起立部6Aの側面図である。取り付け部8Aに取り付けた電源ケーブル導出部10は、後述する電源ケーブル25を取り付け部8Aの下方部から引き出したり、電源ケーブル25を取り付け部8Aの下方部へと戻したりするときの移動を円滑に案内するものである。この電源ケーブル導出部10の下部に配置したプーリ11は、中心部の回転軸14によって可回転的に構成され、後述する電源ケーブル25の伸ばした方向を変換しながらその移動を円滑にするために回転させるものである。
【0018】
取り付け部8Aの反対側の端部近傍には、取り付け部8Aの下方部に形成された残余空間部を外側起立部6Aの長手方向に円滑に移動可能な可動ドラム12が配置されている。この可動ドラム12の同方向の移動を円滑に行うためにガイド機構が構成されており、このガイド機構は種々の構成を採ることができるが、ここでは、可動ドラム12の中心部に可回転的に設けた回転軸15と、この回転軸15を外側起立部6Aの長手方向に案内するほぼ水平なガイド面16と、可動ドラム12の外周部を回転させながら外側起立部6Aの長手方向に案内するほぼ水平に形成した他のガイド面23と、回転軸15に一端を可回転的に連結したレバー17と、このレバー17の他端近傍にガイド面23上を回転しながら移動するように取り付けたガイドローラ18とを設けている。
【0019】
取り付け部8Aの反対側の端部に配置したラチェット式巻き取り器13は、中心部に可回転的な回転軸20を有する巻き取り部19と、この巻き取り部19に巻き取られて端部を上述した可動ドラム12のレバー17の他端に連結したワイヤー21とを有する周知の構成であり、ワイヤー21を引き出すとき、図示しない復帰手段の復帰力を蓄勢すると共に、この復帰手段によるワイヤー21の巻き戻しをラチェットで防止している。しかしながら、ワイヤー21を僅か引き出してラチェットを解放した状態にしてワイヤー21を釈放すると、蓄勢した復帰力によってワイヤー21を巻き取り部19に巻き戻す構成である。このラチェット式巻き取り器13におけるワイヤー引出部には案内ローラ22などが配置されている。
【0020】
ここでのラチェット式巻き取り器13における復帰手段は、単にワイヤー21を巻き戻すだけでなく、ワイヤー21に連結した可動ドラム12および電源ケーブル25も定常位置まで引き戻すことができるものである。
【0021】
取り付け部8Aの他の端部近傍に配置したトレー側充電用プラグ収納部9は、電気自動車側に取り付けた給電端子に、バッテリーの充電時に接続する充電用プラグ26を定常状態で収納するもので、取り付け部8Aの上面に固定した基部27に対して開閉可能に取り付けた保護カバー28を有しており、この保護カバー28内に充電用プラグ26を保持することによって、機械式駐車装置内に駐車した車両によって持ち込まれた雨水が電気的接触部に滴下して電気絶縁に悪影響を与えるのを防止している。
【0022】
電源ケーブル導出部10から導出した電源ケーブル25の端部25Bに上述の充電用プラグ26が接続されている。一方、電源ケーブル導出部10によって取り付け部8Aの下部に導入された電源ケーブル25は、その回転によって移動を円滑に行うプーリ11に掛けて方向変換し、可動ドラム12に掛けてから方向を反転して上下に並んだ往復路部を形成し、復路における電源ケーブル導出部10の近傍を電源ケーブル固定部24で機械的に保持している。この電源ケーブル固定部24は、電気的な接続部ではなく、同部で電源ケーブル25の移動を阻止するものである。
【0023】
電源ケーブル25の端部25Aは、さらにベース1の下部や中央側起立部5A,5Bおよび外側起立部6A,6Bの内側空間部を利用して導かれ、トレー側接触子35に接続されている。このトレー側接触子35は、図1から図3に示したトレー装置を所定の格納位置に収納したとき、格納位置の床面側に設けた固定側接触子と電気的に接触する位置に取り付けられている。固定側接触子は電源に電気的に接続されており、固定側接触子とトレー側接触子35の接触によって充電用プラグ26は電源に接続された状態となる。
【0024】
ここで、上述したトレー側充電用プラグ収納部9についてさらに図4および図5を用いて説明する。トレー側充電用プラグ収納部9の基部27には、蝶番29を使用して保護カバー28が開閉可能に取り付けられている。この保護カバー28は透明なプラスチック製でも良いし、不透明でも良く、利用者に分かり易く充電用プラグのマークや文字表示などで強調しても良い。蝶番29と反対側の位置の保護カバー28には、その開閉時に使用する握り部30と、充電用プラグ26の収納時の電源ケーブル25があっても保護カバー28を開閉できるように保護カバー28の一部を切り欠いた切り欠き部31とを有している。また保護カバー28内の基部27にはばね作用を有するようにく字状にした取り付け部材32の一端を固定し、取り付け部材32の他端に収納部33を取り付けている。この収納部33は、電気自動車側から伸ばした充電用プラグ26を斜め上方部から差し込み可能にするため斜め上方を向いて差し込み口を形成している。
【0025】
このような差し込み口を上方に向けて形成した構成の収納部33は、取り付け部材32のばねアクションを利用しながら充電用プラグ26の収納作業を容易に行うことができるが、差し込み口を上方に向けている故に、電気的な接続部に雨滴や埃が付着しやすく、電気的な接触トラブルの原因となり易い。しかしながら、このトレー側充電用プラグ収納部9は、収納部33を開閉可能に覆う保護カバー28を有しているため、差し込み口を上方に向けていても、電気的な接続部に雨滴や埃が付着することはなく、電気的な接触トラブルの原因を生じさせない。
【0026】
また、トレー側充電用プラグ収納部9内に配置した収納部33は上向きの差し込み口を有した構成で、充電用ケーブル25の先端部の充電用プラグ26を下向きにして収納部33に差し込む構成であるため、充電用プラグ26は下向きに差し込むことになり、差し込み状況などを目視確認しながら差し込みを容易に行うことができる。しかも、トレー側充電用プラグ収納部9内に配置した収納部33は、ばね作用を有する取り付け部材32を使用して揺動可能に支持しているため、取り付け部材32のばねアクションを利用することができるので、無理な力を加えることなく収納作業を行うことができる。
【0027】
また、トレー側充電用プラグ接続部9の保護カバー14は、開いた状態で取り付け部8Aの側部に突出しないように、取り付け部8Aのほぼ投影面で開閉するようにしている。つまり、駐車車両の侵入方向と平行に形成した外側起立部6A上に搭載したトレー側充電用プラグ収納部9は、駐車車両の侵入方向と平行な方向に開閉する保護カバー28を有している。
【0028】
このように駐車車両をベース1上の所定の位置に停止させるために、トレー装置上に搭載した駐車車両の側方に位置し、かつ駐車車両の侵入方向に連続して形成した外側起立部6A,6Bがあるため、その上下には余り活用されていない空間部が存在することになるが、外側起立部6Aの上方部に幅の狭い取り付け部8を形成し、この取り付け部8の上方部にトレー側充電用プラグ保持部9を配置することによって効果的に活用している。
【0029】
一方、トレー側充電用プラグ収納部9を配置するために外側起立部6Aの上部に形成した取り付け部8Aを使用すると、その下部には残余空間が形成されてしまうが、ここでは、この残余空間に叙述したプーリ11と、可動ドラム12と、ラチェット式巻き取り器13と、電源ケーブル固定部24とをほぼ水平方向に並んで配置することによって、積極的に活用している。
【0030】
次に、トレー装置上に搭載した電気自動車のバッテリーを駐車中に充電する場合について説明する。
【0031】
機械式駐車装置は、全てのトレー装置を図1乃至図3に示したように電気自動車充電用として構成しても良いし、全体のうちの一部複数台を電気自動車充電用として構成しても良い。後者の場合、係員または駐車車両の運転手等は操作ボタンなどを操作して駐車しながらバッテリー充電を行う利用であることを選択することによって、電気自動車充電用のトレー装置を呼び出す。いずれの場合でも、先ず、トレー装置を構成するベース1の所定の位置に駐車車両である電気自動車を停止させる。
【0032】
その後、トレー側充電用プラグ収納部9の握り部30を用いて保護カバー28を開き充電用プラグ26を取り出し、電気自動車側のバッテリー給電端子に接続する。このとき保護カバー28は、電気自動車の乗り込み方向と平行な方向に開く配置構成なので、保護カバー28を開くときに電気自動車に接触したり、開き程度が周辺構造物によって妨げたりすることはない。しかも、この接続作業は、トレー装置が格納位置へ案内収納される前であるから、充電用プラグ26および電源ケーブル25はまだ電源に接続されていないため、誰でも安全に行うことができる。
【0033】
充電用プラグ26と電気自動車側のバッテリー給電端子との接続を完了したら、握り部30を用いて保護カバー14を閉じる。従って、その後、長時間にわたって電気自動車を駐車しながらバッテリーの充電を行っても、収納部33に雨滴が侵入したり塵埃が溜まることはない。
【0034】
その後、図1から図3に示したトレー装置を機械式駐車装置の所定の格納位置に収納すると、格納位置の床面側に設けた固定側接触子と、ベース1の下部に設けたトレー側接触子35とが電気的に接触し、充電用プラグ26が電源に接続されてバッテリーの充電が開始される。
【0035】
ところで、トレー装置上に搭載した電気自動車のバッテリーを駐車中に充電するため、
トレー側充電用プラグ収納部9から充電用プラグ26を取り出し、電気自動車側のバッテリー給電端子に接続するとき、電気自動車側のバッテリー給電端子の位置が車種によって様々であり、充電用プラグ26が接続された電源ケーブル25を引き出して伸ばさなければならない場合がある。次に、このときの動作について説明する。
【0036】
先ず、トレー側充電用プラグ収納部9から充電用プラグ26を取り出した後、電源ケーブル25を取り付け部8Aの下部から引き出すために充電用プラグ26側をさらに引っ張り上げる。すると、電源ケーブル25はプーリ11を回転させながら可動ドラム12をプーリ11側に移動させ、その往復路部の長さが縮小される。可動ドラム12は、その回転軸15がガイド面16に沿って回転しながら、また、ローラ18がガイド面23に沿って回転しながら円滑に移動する。
【0037】
このとき、レバー17を介して可動ドラム12と連結されているラチェット式巻き取り器13のワイヤー21も引き出され、同時にラチェットによってワイヤー21の引き戻しが防止されながら、ワイヤー21を引き戻す復帰力を蓄勢される。
【0038】
可動ドラム12の移動は、最大で図1の点線で示した終端部12Aまで移動することができる。トレー装置におけるベース1の長手方向寸法を、例えば5500mmとし、定常位置の可動ドラム12の回転軸15と終端部12Aにおける同回転軸15間の寸法を3000mmとすると、電源ケーブル25は同部に往復路部を形成しているので、最大で6m程度引き伸ばすことができる。これは電気自動車のバッテリー給電端子が種々の位置に構成されていたとしても、同バッテリー給電端子に充電用プラグ26を接続できる十分な長さである。この6m程度の最大引き出し寸法は、取り付け部8Aの長手方向の両端部付近にラチェット式巻き取り器13とトレー側充電用プラグ収納部9を配置することによって得られるので、引き出し寸法がより短くても良い場合は、ベース1の長手方向寸法、ラチェット式巻き取り器13とトレー側充電用プラグ収納部9の位置、また可動ドラム12の終端部12Aの位置などを適宜変更することができる。
【0039】
電源ケーブル25の端部25Bに設けた充電用プラグ26を引っ張ると、可動ドラム12が移動し、同時に電源ケーブル25にも全体的に同方向への力が加わるが、電源ケーブル固定部24で電源ケーブル25が保持されているため絶縁被覆などで受けることになり、電気的な接続に悪影響を及ぼすことはない。
【0040】
バッテリー充電後に、電気自動車の給電端子から充電用プラグ26を取り外し、今度は電源ケーブル25を取り付け部8Aの下部に戻す場合は、電源ケーブル25を僅かに引っ張ってラチェット式巻き取り器13のラチェットを外し、この状態で電源ケーブル25を離すことによって行う。すると、蓄勢されている復帰手段によってワイヤー21は巻き取り部19に巻き取られて行き、同時に可動ドラム12も元の位置へと駆動されて行く。可動ドラム12が実線で示す定常位置まで戻されると、電源ケーブル25も図1に示す元の状態となる。この状態で、充電用プラグ26をトレー側充電用プラグ収納部9の内部の所定位置に保持させると、定常状態となる。
【0041】
このようにして、トレー装置上に電気自動車を搭載した状態で、トレー側充電用プラグ収納部9の近傍にバッテリー給電端子が位置する車種では、トレー側充電用プラグ収納部9内から取り出した充電用プラグ26をバッテリー給電端子に接続して充電を行うことができる。しかし、トレー装置上に電気自動車を搭載した状態で、トレー側充電用プラグ収納部9から離れた位置にバッテリー給電端子が位置する車種では、トレー側充電用プラグ収納部9内から取り出した充電用プラグ26を引っ張ることによって電源ケーブル25を任意の長さにした後に、充電用プラグ26をバッテリー給電端子に接続して充電を行うことができる。
【0042】
上述した機械式駐車装置用トレー装置によれば、電源ケーブル25の長さ調整は、電気自動車の侵入方向と平行に形成した外側起立部6Aの下部における残余空間部を活用し、同侵入方向と平行な方向に移動する可動ドラム12によって行うようにしたため、簡単な構成で電気自動車側のバッテリー給電端子の位置が異なっても容易に対応することができ、かつ取り付け部8Aの高さと幅を抑えながら、可動ドラム12の移動距離、つまり電源ケーブル25の調整長さを大きくすることができる。可動ドラム12を固定式にして引き延ばす分の電源ケーブル25全体を巻き取ることも考えられるが、この場合、ドラムの径が大きくなって取り付け部8Aの高さを増大してしまい、横配置にしても取り付け部8Aの幅を大きくしてしまう。
【0043】
しかも、この電源ケーブル25の長さ調整は、可動ドラム12の移動によって行うようにしているため、定常状態では電源ケーブル25の殆どを取り付け部8Aの下部にすっきりと納められ、電源ケーブル25を引き伸ばした後も可動ドラム12を移動して収納することができるので、同様にすっきりとした状態に戻すことができる。さらに、可動ドラム12の移動によって電源ケーブル25の出し入れを行っているため、取り付け部8Aの下部においても電源ケーブル25を整然と配置することができる。
【0044】
また取り付け部8Aの下部を利用して配置した電源ケーブル25は、取り付け部8Aの下部の導出部近傍に配置したプーリ11に掛けてから上方部に引き出しているため、取り付け部8Aの下部の比較的狭い残余空間部を使用し、かつ水平方向に移動する可動ドラム12を使用しても、電源ケーブル25をスムーズに出し入れができる。
【0045】
さらに、ベース1における側部に電気自動車の侵入方向と平行に外側起立部6Aを形成し、この外側起立部6A上にトレー側充電用プラグ収納部9を搭載し、このトレー側充電用プラグ収納部9に電気自動車の侵入方向と平行な方向に開閉する保護カバー28を設けることによって、保護カバー28を開くときに駐車車両に接触したり、周辺構造物によって開き程度が妨げたりすることはなく、トレー側充電用プラグ収納部9を薄型に構成してトレー装置の大型化を防ぎながら、充電用プラグ26を雨滴や塵埃などから保護することができ、信頼性を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ベース
2 車輪
3 タイヤ
4A,4B タイヤ搭載部
5A,5B 中央側起立部
6A,6B 外側起立部
7A,7B 位置規制部
8A,8B 取り付け部
9 トレー側充電用プラグ収納部
10 電源ケーブル導出部
11 プーリ
12 可動ドラム
12A 終端部
13 ラチェット式巻き取り器
14 回転軸
15 回転軸
16 ガイド面
17 レバー
18 ガイドローラ
19 巻き取り部
20 回転軸
21 ワイヤー
22 案内ローラ
23 ガイド面
24 電源ケーブル固定部
25 電源ケーブル
25A,25B 端部
26 充電用プラグ
27 基部
28 保護カバー
29 蝶番
30 握り部
31 切り欠き部
32 取り付け部材
33 収納部
34 トレー側接触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車車両を搭載するベースに、駐車車両の進入方向とほぼ平行に形成した外側起立部を形成した機械式駐車装置用トレー装置において、上記外側起立部にほぼ水平な取り付け部を形成し、上記取り付け部の上部に、前記駐車車両が電気自動車であるときにそのバッテリー給電端子と接続するために使用する充電用プラグを収納可能なトレー側充電用プラグ収納部を設け、上記取り付け部の下部に、上記トレー側充電用プラグ収納部に接離する上記進入方向に移動可能な可動ドラムと、この可動ドラムを所定位置に保持するようにワイヤーを上記可動ドラムに連結したラチェット式巻き取り器とを設け、上記充電用プラグに接続した電源ケーブルを上記取り付け部の下部に導いた後に、上記可動ドラムに巻き掛けて往復路部を形成して配置し、上記電源ケーブルの上記充電用プラグと反対側の復路部を位置固定する電源ケーブル固定部を設けたことを特徴とする機械式駐車装置用トレー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、上記トレー側充電プラグ収納部に、上記充電用プラグの出し入れ時に上記駐車車両の進入方向とほぼ平行な方向に開閉する保護カバーを設けたことを特徴とする機械式駐車装置用トレー装置。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、上記電源ケーブルを導いた上記取り付け部の下部に、上記電源ケーブルの移動を円滑にする可回転的なプーリを設けたことを特徴とする機械式駐車装置用トレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158955(P2012−158955A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20854(P2011−20854)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000227043)日精株式会社 (68)