説明

機能化された膜の作製方法

本開示は、官能性膜、及び官能性膜の作製方法を述べている。この方法は、多孔質基材を提供すること、多孔質基材に少なくとも1つのグラフト可能な種を適用すること、及び被覆された多孔質基材を電子ビーム照射により処理して、機能化された膜を提供することを含む。この方法は、多孔質基材に結合したグラフトされた種の勾配を含む機能化された膜を形成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能化された膜と、このような機能化された膜を作製する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
多様な特性を有する膜が、フィルター、通気性物品、吸収性物品、及び医薬用物品などのものを含む多くの近代製品に使用されてきた。膜を製造する多数の既知の方法が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
異なる化学的若しくは物理的機能性を有する膜がすでに述べられている。基材上への分子のグラフト化は、膜表面に機能性をもたらす一つの方法である。改善された膜、及びこのような膜を製造するための方法に対する必要性が業界に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、機能化された膜と、このような機能化された膜を製造する方法を提供する。
【0005】
第一の態様では、機能化された膜を製造する方法が提供される。この方法は、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を有する多孔質基材を提供することを含む。この方法は、多孔質基材に少なくとも1つのグラフト可能な種を適用して、被覆された多孔質基材を提供することを含む。この方法は、被覆された多孔質基材を電子ビーム照射により処理して、機能化された膜を提供することを含む。電子ビーム照射は、グラフトされた種の濃度が第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高い勾配で多孔質基材にグラフト可能な種を結合させる。
【0006】
別の態様では、前述の機能化された膜を製造するための方法が提供されるが、被覆された多孔質基材が第1の層と第2の層との間に配置されて、多層構造物を形成する。次に、この多層構造物は、電子ビーム照射により処理されて、第1の層と第2の層との間に配置されている機能化された膜を提供する。第1の層及び第2の層が多層構造物から除去されて、機能化された膜を提供する。
【0007】
なお別の態様では、機能化された膜が提供される。この機能化された膜は、ある勾配で多孔質基材に結合したグラフトされた種を有する多孔質基材を含む。この多孔質基材は、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を有する。グラフトされた種は、多孔質基材を通って第1の主表面から第2の主表面まで延びる勾配で多孔質基材に結合されている。グラフトされた種の濃度は、多孔質基材の第2の主表面の濃度よりも第1の主表面において高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電圧の関数としてのシミュレーションされた単位経路長さに対する電子ビームの照射線量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特記しない限り、本開示の説明において使用される用語は、当業者の理解と一致する意味を有すると理解される。本明細書で使用するとき、以下の用語は下記に特定される意味を有するものとする。
【0010】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包括される全ての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5を含む)。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に含まれるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物への言及は、2種以上の化合物の混合物を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0012】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用されている量又は成分量、性質の測定値などを表す全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、別途指示がない限り、先行の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメータは、本開示の教示を利用して当業者により得ることが求められる所望の性質に応じて変化し得る近似値である。最低でも、各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技法の適用によって少なくとも解釈されるべきである。本開示の広範囲で示す数値的範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告する。しかし、いずれの数値もそれらの試験測定値それぞれにおいて見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を本来含有する。
【0013】
本開示は、機能化された膜と、機能化された膜を製造する方法を提供する。本開示の方法は、多孔質基材を提供すること、被覆された多孔質基材に少なくとも1つのグラフト可能な種を適用すること、及び被覆された多孔質基材を電子ビーム照射により処理すること、を含む。この多孔質基材は、第1の主表面、基材の本体を通って延びる間隙の表面、及び第2の主表面を含む。間隙の表面は、多孔質基材開口又は細孔内の表面を含む。多孔質基材は、少なくとも1つのグラフト可能な種により処理されて、被覆された多孔質基材を提供する。被覆された多孔質基材は電子ビーム照射により処理される。被覆された多孔質基材まで送達される照射量(例えば、エネルギー)は、電子ビーム源における電流(mA)を調整することにより制御され得る。電子ビーム源からの透過の深さは、第1の主表面に送達される照射線量が被覆された多孔質基材の第2の主表面に送達される照射線量よりも大きいように電圧(keV)を調整することにより、制御され得る。換言すれば、勾配照射線量は、被覆された多孔質基材の厚さ全体にわたって送達される。照射に曝露された時、少なくとも1つのグラフト可能な種が被覆された多孔質基材に結合して、多孔質基材に結合したグラフトされた種の勾配を有する機能化された膜を形成する。グラフトされた種の勾配は、多孔質基材の厚さにわたって、機能化された膜の第1の主表面から第2の主表面まで延びる。機能化された膜のグラフトされた種の濃度は、第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高い。膜の厚さにわたって分布するグラフトされた種の勾配を有する、非対称膜が提供される。
【0014】
別の実施形態では、多孔質基材が少なくとも1つのグラフト可能な種により被覆されて、前述の被覆された多孔質基材を提供する、前述の機能化された膜を作製する方法が提供される。次に、多孔質基材が第1の層と第2の層との間に配置されて、多層構造体を形成する。多層構造物が電子ビーム照射に曝露されて、第1の層と第2の層との間に配置されている機能化された膜を形成する。勾配線量の照射が多層構造物の厚さ全体にわたって送達されて、機能化された膜の第1の主表面から第2の主表面まで分布して、グラフトされた種の濃度が第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高い、基材に結合したグラフトされた種の勾配を含む、機能化された膜を形成する。第1の層及び第2の層が多層構造物から除去されて、機能化された膜を提供する。
【0015】
基材が被覆可能であるか、あるいは被覆可能であるようになされ得、並びに開口又は細孔を含む限り、好適な多孔質基材は、いろいろな材料から選択され得る。好適な多孔質基材には、多孔質膜、多孔質不織布、及び多孔質繊維が含まれるが、これらに限定されない。多孔質基材が任意のポリマー材料から形成され得る。好適なポリマー材料には、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が含まれるが、これらに限定されない。好適なポリオレフィンには、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンのコポリマー、α−オレフィンコポリマー(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)、及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)が含まれるが、これらに限定されない。好適なフッ素化ポリマーには、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)などの)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)などの)が含まれるが、これらに限定されない。好適なポリアミドには、ポリ(イミノ(1−オキソヘキサメチレン))、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが含まれるが、これらに限定されない。好適なポリイミドには、ポリ(ピロメリットイミド)が含まれるが、これに限定されない。好適なポリ(エーテルスルホン)には、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)が含まれるが、これらに限定されない。好適なビニルアセテートのコポリマーには、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、及びアセテート基の少なくとも一部が加水分解されていて、種々のポリ(ビニルアルコール)を与えるコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
いくつかの実施形態では、この多孔質基材は、約10マイクロメートル未満の平均孔径を有する。いくつかの実施形態では、この多孔質基材の平均孔径は、約10ナノメートルよりも大きい。好適な多孔質基材には、ナノ多孔性膜、ミクロ多孔性膜、ミクロ多孔性不織布、及びミクロ多孔性繊維が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、この多孔質基材は、異なる孔径(例えば、マクロ細孔、ミクロ細孔、ナノ細孔)の組み合わせを有することができる。いくつかの実施形態では、この多孔質基材は、2つ以上の分離した多孔質域若しくは領域(例えば、多域膜)を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、この多孔質基材は疎水性であり、1つ以上の上述のポリマー材料を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、この多孔質基材は、熱誘起相分離(TIPS)膜などの親水性多孔質膜である。TIPS膜は、熱可塑性材料と熱可塑性材料の融点を超える第2の材料との溶液を形成させることによってしばしば作製される。冷却すると、熱可塑性材料は結晶化し、第2の材料から相分離する。結晶化材料はしばしば延伸される。第2の材料は、所望に応じて、延伸前又は延伸後に取り除く。TIPS膜は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第1,529,256号(Kelley)、同第4,726,989号(Mrozinski)、同第4,867,881号(Kinzer)、同第5,120,594号(Mrozinski)、同第5,260,360号(Mrozinski)、及び同第5,962,544号(Waller、Jr.)で開示されている。いくつかの実施形態では、TIPS膜は、ポリフッ化(ビニリデン)(すなわちPVDF)、ポリ(エチレン)又はポリ(プロピレン)などのポリオレフィン、ビニル含有ポリマー若しくはエチレン−ビニルアルコールコポリマーなどのコポリマー、及びブタジエン含有ポリマー若しくはコポリマー、並びにアクリレート含有ポリマー若しくはコポリマーなどのポリマー材料を含む。PVDFを含むTIPS膜は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2005/0058821号(Smith et al.)で更に開示されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、通常、25マイクロメートルよりも大きい平均孔径を有する不織ウエブである。好適な不織ウエブには、例えば、Wente,V.A.,「Superfine Thermoplastic Fibers」,Industrial Engineering Chemistry,48,1342〜1346(1956)、及びWente,V.A.,「Manufacture of Super Fine Organic Fibers」,Naval Research Laboratories(Report No.4364)May25,1954で述べられているメルトブローマイクロファイバー不織ウエブが含まれる。May25,1954例えば、不織ウエブは、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5、962、544号(Waller、Jr.)で述べられているエチレン−ビニルアルコールコポリマーから作製され得る。いくつかの実施形態では、好適な不織ウエブはナイロンから作製され得る。
【0020】
好適な多孔質基材には、商品名DURAPORE及びMILLIPORE EXPRESS MEMBRANE(Millipore Corporation of Billerica,Massachusettsから入手可能)で知られている親水性及び疎水性の微多孔性膜などの市販の材料が含まれる。商品名NYLAFLO及びSUPORで知られている他の好適な市販の微多孔性膜がPall Corporation of East Hills,NewYorkから入手可能である。いくつかの他の多孔質基材は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,513,666号、同第6,776,940号、同第6,413,070号、同第6,264,044号、同第3,876,738号、同第4,707,265号、同第4,473,474号、及び米国防衛出願T−103,601号で既述のものである。
【0021】
少なくとも1つのグラフト可能な種が多孔質基材に適用される。用語「少なくとも1つのグラフト可能な種」は、電子ビーム照射に曝露されると、多孔質基材に結合する能力のある、1つ以上のグラフト可能な種を一般に指す。グラフト可能な種は、参照により本明細書に組み込まれている、多孔質基材の第1の主表面、間隙の表面(例えば、多孔質基材内)、及び第2の主表面に結合することができる。グラフト可能な種は、化学結合(例えば、フリーラジカル反応)により多孔質基材に結合して、共有結合を形成し得る。多孔質基材へのグラフト可能な種の結合時に、多孔質基材に結合したグラフトされた種を含む機能化された膜が形成される。機能化された膜の表面特性は、グラフト可能な種の結合時の多孔質基材の表面特性と異なり得る。同様に、機能化された膜の反応性は多孔質基材のそれと異なり得る。例えば、多孔質基材のグラフトされた種は、水素結合、ファンデルワールス相互作用により、あるいはイオン結合により生じる反応性をもたらし得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、グラフト可能な種は、フリーラジカル重合可能基及び追加の官能基をその上に有することができる。フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基又はビニル基のようなエチレン系不飽和基であることができる。フリーラジカル重合性基は、通常、電子ビーム照射に曝露されると、多孔質基材の表面と反応することができる。電子ビーム照射への曝露時のグラフト可能な種のフリーラジカル重合性基と多孔質基材の1つ以上の表面との反応によって、多孔質基材の表面に結合したグラフトされた種(例えば、共有結合により結合した)の勾配が形成され、多孔質基材の第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面に結合した1つ以上のグラフトされた種が機能化された膜を提供する。
【0023】
一つの実施形態では、機能化された膜は、第1の主表面及び第2の主表面を含み、両方の主表面は多孔質基材に第2の主表面よりも第1の主表面において高い濃度で結合したグラフトされた種と親水性である。
【0024】
いくつかの実施形態では、機能化された膜は物理的に非対称であることができる。いくつかの有用な非対称微多孔性膜は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,413,070号、同第6,513,666号、及び同第6,264,044号(Meyering et al.)で開示されている。例えば、第1の主表面における多孔率又は有効孔径は、第2の主表面における多孔率又は有効孔径と異なって、グラフトされた種が1つの主表面において、若しくは多孔質基材の厚さの少なくとも一部にわたって形成することができる。このような実施形態では、グラフトされた種の勾配は、一方の主表面上の細孔と、機能化された膜の第2の主表面まで延びる、増加する孔径を少なくとも部分的に閉塞するのに寄与し得る。
【0025】
フリーラジカル重合性基を有することに加えて、グラフト可能な種は第2若しくは追加の官能基を含有し得る。いくつかの実施形態では、第2の官能基は、第2のエチレン系不飽和基、開環基(例えば、エポキシ基、アザラクトン基、及びアジリジン基)、イソシアナト基、イオン基、アルキレンオキシド基、又はこれらの組み合わせから選択される。第2又は追加の官能基は、グラフトされた種の更なる反応性若しくは親和性をもたらすことができる。例えば、追加の官能基は、多孔質基材と他のモノマー又は少なくとも1個の求核性基を有する求核性化合物などの他の物質との間で反応し、連結基を形成することができる。
【0026】
追加の官能基の存在は、特別なタイプの化合物に対する親和性などの所望の表面特性を機能化された膜に付与することができる。グラフトされた種がイオン基を含有するならば、機能化された膜は、反対電荷を有する化合物に対する親和性をしばしば有する。すなわち、負帯電した基を有する化合物は、カチオン性基を有するグラフトされた種を有する機能化された膜に引き付けられ、正帯電した基を有する化合物は、アニオン性基を有するグラフトされた種を有する機能化された膜に引き付けられ得る。更に、グラフトされた種は、グラフトされた種による表面改質の前に疎水性を含む機能化された膜表面に親水性の特性を付与することができる。一つの実施形態では、アルキレンオキシド基を含むグラフトされた種は、機能化された膜に親水性の特性を付与することができる。
【0027】
別の実施形態では、この多孔質基材は、グラフト可能な種による表面改質の前に親水性の特性を有することができる。多孔質基材への結合に続いて、グラフトされた種は、機能化された膜の表面に疎水性の特性を付与することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、グラフト可能な種は、第1のエチレン系不飽和基であるフリーラジカル重合性基と、第2のエチレン系不飽和基である第2の官能基を有する。2個のエチレン性不飽和基を有する好適なグラフト化モノマーとしては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類が含まれるが、これらに限定されない。用語ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、用語ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレートと互換的に用いられる。(メタ)アクリレートにおけるような用語「(メタ)アクリル」は、アクリレートにおけるようなアクリル基、及びメタクリレートにおけるメタクリル基の両方を包含する。例示のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー類及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー類が含まれる。平均分子量が約400g/モルのポリエチレングリコールジアクリレートモノマーは、例えば、「SR344」という商品名で市販されており、平均分子量が約400g/モルのポリエチレングリコールジメタクリレートモノマーは、Sartomer Co.,Inc.(Exton,Pennsylvania)から「SR603」という商品名で市販されている。
【0029】
別の実施形態では、グラフトされた種の勾配は、電子ビーム照射への曝露時のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート種と多孔質基材との反応から生じる。これらのグラフト可能な種は、疎水性多孔質基材の改変に使用されて、第1の主表面、間隙の表面又は第2の主表面の1つ以上にポリアルキレンオキシド基を有する親水性機能化された膜を形成することができる。別の実施形態では、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー類は、ポリエチレングリコールジメタクリレートモノマー(例えば、約400g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)を単独又は他のモノマー類との組み合わせで含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、好適なグラフト可能な種は、第1のエチレン系不飽和基であるフリーラジカル重合性基と、エポキシ基である追加の官能基を有する。この部類の好適なグラフトモノマーには、グリシジル(メタ)アクリレートが含まれるが、これに限定されない。この部類のグラフトモノマーは、更なる反応性のために利用可能な少なくとも1つのエポキシ基を有する機能化された膜を提供することができる。多孔質基材に望ましい表面特性(例えば異なる反応性を有する特定の化合物又は官能基に対する親和性)を付与するために、エポキシ基は、別の種又は求核性化合物などの他の反応材料と反応することができる。エポキシ基と求核性化合物との反応は、例えば、エポキシ環の開環、及び求核性化合物を多孔質基材につなげるように機能する連結基の形成をもたらす。エポキシ基と反応するための好適な求核性基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、及びカルボキシ基が含まれるが、これらに限定されない。この求核性化合物は、多数のエポキシ基を架橋することができる1個以上の求核性基か、又は、機能化された膜に親水性の特性を付与することができる1個以上の随意の基か、を含むことができる。エポキシ基の開環により形成される連結基は、エポキシが一級アミノ基と反応するときC(OH)HCHNH−基を、あるいはエポキシがカルボキシ基と反応するときC(OH)HCHO(CO)−基をしばしば含む。
【0031】
ある場合では、エポキシ基は、2個の一級アミノ基を有するジアミン又は3個の一級アミノ基を有するトリアミンなどの多官能アミンと反応することができる。このアミノ基の一方は、エポキシ基との開環反応を行い、求核性化合物と多孔質基材との間に基−C(OH)HCHNH−を含む連結基を形成することができる。第2のアミノ基又は第2若しくは第3のアミノ基は、機能化された膜に親水性の性格を付与するか、あるいは1つ以上追加のエポキシ基との反応により2つ以上のグラフトされた種を架橋することができる。ある実施例では、多官能性アミンは、ポリアルキレングリコールジアミン又はポリアルキレングリコールトリアミンであり、エポキシ基と反応は、ポリアルキレングリコール基を有するグラフト化種(すなわちポリアルキレンオキシド基)の結合をもたらす。ポリアルキレングリコール基並びに任意の末端一級アミノ基は、膜に親水性を付与する傾向がある。
【0032】
なお他の実施態様では、好適なグラフト可能な種は、エチレン系不飽和基であるフリーラジカル重合性基と、アザラクトン基である追加の官能基を有する。好適なグラフト可能な種には、2−ビニル−4,4−ジメチルアズラクトンなどのビニルアズラクトンが含まれるが、これらに限定されない。この部類のグラフト種は、更なる反応性に利用することができる少なくとも1個のアズラクトン基を有する機能化膜を提供することができる。アズラクトン基は、別の種などの他の反応材料又は求核化合物と反応し、多孔質基材に所望の表面特性(例えば、特定の化合物又は異なる反応性を有する官能基に対する親和性)を付与することができる。アズラクトン基と求核性化合物との反応は、例えば、アズラクトン環の開環と、求核性化合物を多孔質基材につなげるように機能する連結基の形成をもたらす。求核性化合物は、通常、少なくとも1個の求核性基を含む。アズラクトン基と反応する好適な求核性基には、一級アミノ基、二級アミノ基、及びヒドロキシ基が含まれるが、これらに限定されない。求核性化合物は、複数のアズラクトン基を架橋できる追加の求核基を含むことができ、又は機能化された膜に親水性の性格を付与することができる他の随意の基を含むことができる。アズラクトン基の開環によって形成される連結基は、−(CO)NHCR−(CO)−基をしばしば含む。式中、Rはメチルのようなアルキルであり、(CO)はカルボニルを示す)。
【0033】
いくつかの場合では、アズラクトン基は、2個の一級アミノ基を有するジアミン又は3個の一級アミノ基を有するトリアミンなどの多官能アミンと反応することができる。アミノ基の一方は、アズラクトン基と開環反応することができ、求核性化合物と多孔質ベース基材との間に−(CO)NHCR(CO)−の基を含む結合の形成を生じる。第2のアミノ基、又は第2及び第3のアミノ基は、機能化された膜に親水性の性格を付与することができ、あるいは多数のグラフト化種を架橋することができる。ある実施例では、多官能性アミンは、ポリアルキレングリコールジアミン又はポリアルキレングリコールトリアミンであり、アズラクトン基との反応が、ポリアルキレングリコール基(すなわちポリアルキレンオキシド基)を有するグラフト化種の結合をもたらす。ポリアルキレングリコール基並びに任意の末端一級アミノ基は、機能化された膜に親水性の特徴を付与する傾向がある。
【0034】
なお他の実施態様では、好適なグラフト可能な種は、エチレン系不飽和基であるフリーラジカル重合性基と、イソシアナト基である追加の官能基を有する。好適なグラフト可能な種には、2−イソシアネートエチルメタクリレート及び2−イソシアネートエチルアクリレートのようなイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートが含まれるが、これらに限定されない。この部類のグラフト種は、更なる反応性に利用することができる少なくとも1個のイソシアナト基を有する機能化された膜を提供することができる。多孔質基材に望ましい表面特性(例えば異なる反応性を有する特定の化合物又は官能基に対する親和性)を付与するために、イソシナト基は、別のモノマーのような他の反応物質と又は求核性化合物と反応することができる。イソシアナト基と求核性化合物との反応は、求核性基が一級アミノ又は二級アミノ基の場合には尿素結合の形成、もしくは求核性基がヒドロキシ基の場合にはウレタン連結の形成をもたらすことができる。求核性化合物は、多数のイソシアナト基を架橋することができる追加の求核基を含有でき、もしくは親水性の性格を機能化された膜に付与することができる他の随意の基を含有できる。求核性化合物とイソシアナト基との反応により形成される連結基は、求核性基が一級アミノ基のときは基−NH(CO)NH−を、あるいは求核性基がヒドロキシであるときは−NH(CO)O−をしばしば含む。
【0035】
なお他の実施態様では、好適なグラフト可能な種は、エチレン系不飽和基であるフリーラジカル重合性基と、イオン基である追加の官能基を有する。イオン基は、正電荷、負電荷、又はこれらの組み合わせを有することができる。いくつかの好適なイオン種の場合、イオン基は、pH条件により中性又は帯電していてもよい。この部類の種は、通常、1つ以上の逆帯電した化合物に対する望ましい表面親和性を付与するために、又は1つ以上の同様に帯電した化合物に対する親和性を低下させるために用いられる。
【0036】
なお他の実施態様では、負電荷を有する好適なイオン性グラフト可能な種は、式Iの(メタ)アクリルアミドスルホン酸又はこの塩を含む。
【0037】
【化1】

【0038】
式I中、Rは、水素又はメチルであり、Yは、直鎖又は分枝アルキレン(例えば、1個〜10個の炭素原子、1個〜6個の炭素原子、又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。式Iによる例示のイオン種には、N−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸及び2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸が含まれるが、これらに限定されない。これらの酸性種の塩も用いることが可能である。塩に対する対イオンは、例えば、アンモニウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、又はナトリウムイオンであることができる。
【0039】
負電荷を有する他の好適なイオン性グラフト可能な種には、ビニルスルホン酸及び4−スチレンスルホン酸などのスルホン酸、(メタ)アクリルアミドホスホン酸、例えば、(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸(例えば、2−アクリルアミドエチルホスホン酸及び3−メタクリルアミドプロピルホスホン酸)、アクリル酸及びメタクリル酸、並びに2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−カルボキシプロピルアクリレート、及び3−カルボキシプロピルメタクリレートなどのカルボキシアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。なお他の好適な酸性種には米国特許第4,157,418号(Heilmann et al)に述べられている(メタ)アクリロイルアミノが含まれる。例示の(メタ)アクリロイルアミノ酸には、N−アクリロイルグリシン、N−アクリロイルアスパラギン酸、N−アクリロイル−β−アラニン、及び2−アクリルアミドグリコール酸が含まれるが、これらに限定されない。これらの酸性種の任意の塩も用いることができる。
【0040】
正電荷を与えることのできる他のイオン性グラフト種は、式IIのアミノ(メタ)アクリレート又はアミノ(メタ)アクリルアミド、又はこれらの四級アンモニウム塩である。四級アンモニウム塩の対イオンは、しばしばハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩などである。
【0041】
【化2】

【0042】
式II中、Rは水素又はメチルであり、Lはオキシ又は−NH−であり、Yはアルキレン(例えば、1個〜10個の炭素原子、1個〜6個の炭素原子、又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキレン)である。各Rは独立して、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル(すなわち、ヒドロキシで置換されているアルキル)、又はアミノアルキル(すなわち、アミノで置換されているアルキル)である。あるいは、2個のR基は、これらが結合する窒素原子と一緒になって、芳香族であって、部分的に不飽和(すなわち、不飽和ではあるが芳香族ではない)、又は飽和である複素環式基を形成でき、この場合、複素環式基は任意に応じて、芳香族(例えば、ベンゼン)、部分的に不飽和(例えば、シクロヘキセン)、又は飽和(例えば、シクロヘキサン)である第2の環と融合することができる。
【0043】
式IIのいくつかの実施形態では、R基は両方とも水素である。他の実施形態では、1個のR基は水素であり、他方は、1個〜10個、1個〜6個又は1個〜4個の炭素原子を有するアルキルである。更に他の実施形態では、R基の少なくとも1個は、アルキル基の炭素原子のいずれかの上に配置されているヒドロキシ基又はアミノ基とともに1個〜10個、1個〜6個、又は1個〜4個の炭素原子を有しているヒドロキシアルキル又はアミノアルキルである。更に他の実施形態では、R基は、この基が結合している窒素原子と結びついて複素環式基を形成する。この複素環式基は、少なくとも1個の窒素原子を含み、酸素又はイオウのような他のヘテロ原子を含むことができる。代表的な複素環式基にはイミダゾリルが含まれるが、これに限定されない。複素環式基は、ベンゼン、シクロヘキセン、又はシクロヘキサンのような追加の環と融合することができる。追加の環と融合した例示の複素環式基には、ベンゾイミダゾリルが含まれるが、これに限定されない。
【0044】
例示のアミノ(メタ)アクリレート類(すなわち、式IIのLはオキシ)には、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−t−ブチルアミノプロピルメタクリレート、N−t−ブチルアミノプロピルアクリレート及びその類などのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類が含まれる。
【0045】
例示のアミノ(メタ)アクリルアミド類(すなわち、式IIのLが−NH−)には、例えば、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(2−イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)アクリルアミド及びN−(3−ベンゾイミダゾリルプロピル)メタクリルアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
式IIのイオン種の例示の四級塩類には、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩類(例えば、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)並びに(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩類(例えば、2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及び2−アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
他のグラフト可能な種が、例えば、イオン交換樹脂に正帯電した基を提供することが知られているものから選択され得る。このようなグラフト種には、アルケニルアズラクトン類のジアルキルアミノアルキルアミン付加物類(例えば、2−(ジエチルアミノ)エチルアミン、(2−アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロライド及びビニルジメチルアズラクトンの3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン付加物類)並びにジアリルアミンモノマー類(例えば、ジアリルアンモニウムクロライド及びジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が含まれる。
【0048】
機能化された膜を作製するためのいくつかの方法においては、好適なグラフト可能な種は、2個のフリーラジカル重合性基、並びに親水性基を含有する。例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類は、グラフト化モノマーとして使用され、疎水性多孔質ベース基材に親水性の性格を付与することができる。これらのグラフト可能な種は2個の(メタ)アクリロイル基と、親水性ポリアルキレングリコール(すなわち、ポリアルキレンオキシド)基を有する。
【0049】
機能化された膜がエポキシ基、アザラクトン基、又はイソシアナト基を含むグラフトされた種を有するときは、官能基が1個若しくは複数個の求核性基を有する求核性化合物と反応することができるように、機能化された膜が更に処理されて、疎水性の多孔質ベース基材に親水性の性格を付与することができる。未反応の求核性基は、親水性機能化された膜の形成に寄与することができる。ある例示の求核性化合物は、求核性基に加え、ポリアルキレンオキシド基のような親水基を含む。例えば、ポリアルキレングリコールジアミン類及びポリアルキレングリコールトリアミン類などの求核性化合物は、複数のアミノ基を含むことができる。
【0050】
下記に詳述するように、機能化された膜を作製するために、本発明の機能化された膜は、少なくとも1つのグラフト可能な種又は上述のグラフト可能な種の2つ以上の混合物を使用して、多孔質基材の表面特性を変えることにより作製され得る。多孔質ベース基材の表面特性を変更するため、上記グラフト可能な種の2個又はそれ以上を使用する場合、この種は、単一反応工程(すなわち、2個又はそれ以上グラフト化モノマーは全て電子ビームに曝露時存在する)又は逐次反応工程(すなわち、第1のグラフト化種は、電子ビームへの第1の曝露時に存在し、第2のグラフト化種は、電子ビームへの第2の曝露時存在する)で多孔質基材にグラフトされ得る。
【0051】
多孔質基材へのグラフト可能な種の適用において、少なくとも1つのグラフト可能な種が多孔質基材に適用される。いくつかの実施形態では、1種以上のグラフト可能な種が多孔質基材に適用され得る。ある場合には、グラフト可能な種は、溶媒などの他の材料を含有する溶液の一部であり得る。他の実施態様では、グラフト可能な種は、分散液、懸濁液、乳化液の一部であるか、あるいは溶媒を含まないもの(すなわち、ニート)又は他の材料であり得る。いくつかの実施形態では、グラフト可能な種は、多孔質基材に順次適用され得る。少なくとも1つのグラフト可能な種が多孔質基材に適用され、電子ビーム照射により処理されて、第1の機能化された膜をもたらすことができる。次に、第2のグラフト可能な種が第1の機能化された膜に適用され、電子ビーム照射により処理されて、第2の機能化された膜をもたらすことができる。第2の機能化された膜は、追加の表面特性又は第1の機能化された膜と異なる表面特性を有することができる。
【0052】
他の実施態様では、グラフトされた種の勾配を有する第1の機能化された膜を形成するために、グラフト可能な種が適用され、電子ビーム照射により処理され、並びに多孔質基材に結合され得る。グラフトされた種の濃度は、第1の機能化された膜の第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高くなることができる。次に、第1の機能化された膜が第2のグラフト可能な種により被覆され、膜が再配列され、並びに第1の機能化された膜の第2の主表面が第1の機能化された膜の第1の主表面よりも大きい量の電子ビーム照射を受けるように、照射されて、第2の機能化された膜を提供し得る。グラフトされた種の濃度は、第2の機能化された膜の第1の主表面における濃度よりも第2の主表面において高いことができる。
【0053】
グラフト可能な種は、多孔質基材の第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面に適用される、被覆可能な分散液、懸濁液、乳化液などとして最初に作製され得る。いくつかの実施例では、多孔質基材がグラフト可能な種の溶液中で飽和若しくは浸漬されて、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を被覆する。例えば、溶液中のグラフト可能な種の濃度は、限定ではないが、溶液中のグラフト可能な種、グラフト化度又は多孔質基材上で所望される結合、グラフト可能な種の反応性、及び使用される溶媒を含む、多数の要素によって変化し得る。いくつかの実施形態では、溶液中のグラフト可能な種の濃度は、溶液の全重量基準で0重量パーセント以上100重量パーセント以下の範囲、5重量パーセント以下60重量パーセント以上の範囲、5重量パーセント以上40重量パーセント以下の範囲、又は7以上35重量パーセント以下の範囲にある。
【0054】
多孔質基材に少なくとも1つのグラフト可能な種を適用、若しくは被覆するためのいくつかの好適な適用方法には、浸漬、スプレー被覆、流し掛け被覆、ナイフコーティング、又は他の既知の被覆若しくは適用方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、多孔質基材を前述の少なくとも1つのグラフト可能な種により被覆する、多層構造物を用いて機能化された膜が形成されて、被覆された多孔質基材を提供する。第1の層が被覆された多孔質基材の第1の主表面に隣接して配置され、並びに第2の層が被覆された多孔質基材の第2の主表面に隣接して配置されて、多層構造物を形成する。第1の層及び第2の層は、分離した材料片であるか、あるいは材料の連続的なシートを構成し得る。連続法のラインでは、例えば、第1の層及び第2の層は、ロールから巻き出され、被覆された多孔質基材と接触され得る。被覆された多孔質基材を第1の層と第2の層との間に配置(すなわち、挟み込まれる)して、多層構造物を形成する、前述の実施態様では、単一のローラー又は多数個のローラーが使用されて、過剰なグラフト可能な種及び捕捉された空気泡を被覆された多孔質基材から計量若しくは除去し得る。多層構造物の第1の層及び第2の層は、電子ビームチャンバーを出る時に酸素への曝露からの一時的な保護を機能化された膜にもたらす能力のある任意の不活性材料を含み得る。第1の層及び第2の層に好適な材料には、ポリエチレンテレフタレートフィルム材料、他の芳香族ポリマーフィルム材料、及び任意の他の非反応性ポリマーフィルム材料から選択されるシート材料が含まれるが、これらに限定されない。組み立てられたら、多層構造物は、通常、照射に進行する。電子ビーム源による照射後、第1の層及び第2の層が多層構造物から取り外されて(すなわち、除去されて)、機能化された膜を提供することができる。
【0056】
第1の層の厚さは、一般に、10マイクロメートル以上250マイクロメートル以下、20マイクロメートル以上200マイクロメートル以下、25マイクロメートル以上175マイクロメートル以下、又は25マイクロメートル以上150マイクロメートル以下の範囲にある。第1の層及び第2の層は、一般に、限定ではないが、ポリ(エチレンテレフタレート)などの材料を含む不活性材料である。第2の層は、同一の厚さ又は第1の層のそれと異なる厚さを有し得る。第1の層は、第2の層に使用されるものと同一の材料又は異なる材料であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の層が被覆された多孔質基材上の第1の主表面に隣接して配置されて、二層構造物を形成する。第1の層が電子ビーム源と被覆された多孔質基材との間に配置される。電子ビーム源による照射後、第1の層が二層構造物から取り外されて(すなわち、除去されて)、機能化された膜を提供することができる。
【0058】
別の実施形態では、被覆された多孔質基材は第1の層及び第2の層を含まない。被覆された多孔質基材が不活性雰囲気(例えば、窒素、アルゴン)にかけられて、被覆された多孔質基材への酸素の透過を低下させ得る。
【0059】
被覆された多孔質基材が電子ビーム照射に曝露されて、機能化された膜を形成する。被覆された多孔質基材の照射によって、少なくとも1つのグラフト可能な種を多孔質基材の表面上にグラフト化又は結合することが可能となる。被覆された多孔質基材を表面に結合した後、グラフト可能な種は、グラフトされた種と呼ばれる。
【0060】
好適な電子ビーム源は既知であり、市販されている。このような装置中では、電子ビーム(e−ビーム)は、約0.13mPa(10−6Torr)で維持されている真空チャンバー内でリペラープレートと抽出装置グリッドとの間に保持されているタングステン線フィラメントに高電圧を印加することにより、一般に生成される。フィラメントが高電流で加熱され電子を生成する。電子は、リペラープレート及び抽出装置グリッドにより金属箔の薄い窓に向かって案内され、加速される。加速電子は、10メートル/秒(m/秒)を超える速度で進行し、約10〜300キロ電子ボルト(keV)を所有する加速電子は、真空チャンバーから箔の窓を通過し、いかなる材料が窓の後に置かれていても直ちに透過する。
【0061】
発生する電子の量は、抽出グリッド電圧と直接関係がある。抽出装置グリッド電圧を増加させるに従って、タングステン線フィラメントから引き出される電子の量は増加する。電子ビーム(E−ビーム)による加工は、コンピュータ制御する場合にはきわめて正確であることができ、正確な照射線量及び照射線量率の電子を材料に向けることができる。
【0062】
電子ビーム発生装置は、ESI「ELECTROCURE」EB SYSTEM(Enegy Sciences,Inc.,Wilmington,Massachusetts)、及びBROADBEAM EB PROCESSOR(PCT Engineered Systems,LLC,Davenport,Iowa)を含む、いろいろな発売元から市販されている。いかなる所定の機器及び照射試料場所であろうとも、送達される照射線量は、Practice for Use of a Radiochromic Film Dosimetry Systemと題するASTME−1275により測定され得る。抽出装置のグリッド電圧ビーム領域の被覆率及び/又は線源への距離を変えることにより、いろいろな線量率を得ることができる。
【0063】
望ましいこととしては、処理領域内の温度は、慣用の手段により外周温度に維持される。いかなる特定のメカニズムにも限定されることを意図しないが、多孔質ベース基材の電子ビームへの暴露は、基材上でフリーラジカル反応開始をもたらし、続いてエチレン性不飽和基を有する種などの二重結合を有する種と反応することを可能にすると思われる。
【0064】
電子ビーム照射は、材料(すなわち、多孔質基材)内のある厚さ又は深さに限定され得る。照射線量は、照射される多孔質基材の特別の深さ又は厚さに制御(単位質量当りの堆積されるエネルギー)され得る。多孔質基材の場所及び深さまで選択されたエネルギー量を送達するためには、電子ビーム源により送達されるエネルギーは、電圧及び電流レベルを変えることにより調整され得る。窓が電子ビーム源と多孔質基材との間に設けられて、照射される。市販の電子ビーム装置は、電子ビームを発生させる真空チャンバーと、ターゲット材料(例えば、多孔質基材)を照射する雰囲気との間に配置される窓を含む。窓は電子散乱により電子ビームを拡げる。窓は一般にチタニウムからできている。窓は、通常、1m(メートル)当り3以上60グラム以下の単位経路長さを有する。間隙は窓と材料との間に存在する。間隙は、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの組み合わせなどの不活性ガスにより一般に充填されて、酸素の存在を低下させる。窓と多孔質基材との間の間隙厚さは、一般に、0g/m以上200g/m以下の、10g/m以上175g/m以下の、25g/m以上150g/m以下の、若しくは50g/m以上125g/m以下の範囲にある。
【0065】
被覆された多孔質基材の断面にわたって送達される電子ビームの照射線量のプロフィール又は勾配プロフィールは、電子ビームが横断するそれぞれの材料の単位経路長さに対して電子ビーム源からの距離の各々の増分における電子ビームの照射線量をプロットすることにより測定され得る。図1に照射線量のプロフィールのグラフを図示する。
【0066】
照射線量のプロフィールは、電子ビーム源からのある距離において最大若しくはピークの照射線量に達し、次に経路長さの増加と共に減少する。例えば、電圧を160kV以上に増加させない限り、図1の深さ/照射線量の曲線のピークが窓/間隙領域の後方に移動しないように、約12マイクロメートルの公称の厚さと、54gsm(1平方メートル当りのグラム)の単位経路長さを有する慣用のチタニウム窓は、充分なエネルギーを吸収する。図1中の電子ビーム照射の相対照射線量(モンテカルロコードに基づいて計算される値)は、ASTM標準E2232−02(Appendix A5)、「Standard Guide for Selection and Use of Mathematical Methods for Calculating Absorbed Dose in Radiation Processing Application」で述べられている1電子当りの照射線量の単位として特徴付けられる、MeV−cm/g−電子の単位で表示される。より高い電圧は、通常、平坦かつ広く、照射材料中でゆっくり減少する、深さ/照射線量のプロフィールを生じる。被覆された多孔質基材に照射線量を送達する電圧の選択についてバランスを取ることで、被覆された多孔質基材の厚さにわたって、グラフトされた種の勾配を形成し得る。表1は、モンテカルロコードを用いて、印加電圧において第1の層を有する被覆された多孔質基材に送達される電子ビーム照射の照射線量を図示する。第1の層は、窓/間隙と被覆された多孔質基材の第1の主表面との間に配置される。被覆された多孔質基材の厚さが減少するに従って、所定の電圧における第2の主表面は、電子ビーム照射のより高い照射線量に曝露される。電圧が減少するに従って、被覆された多孔質基材の第2の主表面における照射線量は減少する。
【0067】
【表1】

【0068】
モンテカルロコードを有効に使用して、照射される材料に及ぼす種々の操作条件の影響の予測に有用な、深さ/線量のプロフィールをシミュレーションし得る。これらの予測によって、照射された被覆された多孔質基材中のいろいろな深さにおける電子ビーム線量の予測及び調整が可能となり、被覆された多孔質基材の表面上へのグラフト可能な種の結合に必要とされる随意の線量が可能となる。好適なモンテカルロコードは、Integrated Tiger Series(ITS),Electron Gamma Shower EGS)、及びMonte Carlo Neutron−Proton(MCNP)を含む。モンテカルロコードによって、線量と深さとの間の有利な関係を同定することが可能となる。モンテカルロコード及び関連の計算の使用は、Weiss,D.E.etal.,「Low−Voltage Electron−Beam Simulation Using the Integrated Tiger Series Monte Carlo Code and Calibration Through Radiochromic Dosimetry」,Irradiation of Polymers,ACS Symposium Series No.620,Ch.8,American Chemical Society,(1996)、及び米国特許第6,749,903号(Weiss et al.)で述べられている。線量/深さプロフィールの計算に使用される別の方法は、米国特許第5,266,400号(Yarusso et al.)に見られる。
【0069】
図1に示すように、約160keVの電圧は、被覆された多孔質基材に勾配線量の照射を送達することができる。図1に示すように、線量は、被覆された多孔質基材の厚さにわたって約4MeV−cm/g−電子以上0MeV−cm/g−電子以下の範囲にあることができる。線量は電流に関連して調整され得る。勾配線量の照射は、第1の主表面から第2の主表面まで延びるグラフトされた種の勾配の結合を被覆された多孔質基材の厚さにわたってもたらすことができる。
【0070】
一つの実施形態では、被覆された多孔質基材への電子ビーム源エネルギー(例えば、エネルギーの線量又は送達された線量)は、一般に、10kGy以上200kGy以下、12kGy以上150kGy以下、14kGy以上125kGy以下、15kGy以上100kGy以下、若しくは16kGy以上50kGy以下との間にある。電子ビーム電圧及び電流が調整され得る。間隙が増加するに従って、電子ビームエネルギーは減少し、電圧を増加することにより、送達されるしかるべき電圧の勾配が得られる。被覆された多孔質基材に勾配線量の照射を送達するのに、電圧は、一般に、80keV(キロ電子ボルト)以上300keV以下の、100keV以上275keV以下の、125keV以上250keV以下の、130keV以上225keV以下の、若しくは140keV以上200keV以下の範囲にあることができる。窓と被覆された多孔質基材との間の間隙厚さを電子ビームに対して調整して、照射で改変可能な材料を改変することができる。いくつかの実施形態では、窓と、この窓と被覆された多孔質基材との間に配置されている第1の層と、の間の間隙厚さが電子ビームに対して調整され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電子ビーム源、又は電子ビーム照射への多数回の曝露が使用されて、被覆された多孔質基材にわたっての照射の勾配に影響を及ぼす。
【0071】
被覆された多孔質基材は、25マイクロメートル以上750マイクロメートル以下の範囲の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、被覆された多孔質基材は、50マイクロメートル以上650マイクロメートル以下、50マイクロメートル以上550マイクロメートル以下、75マイクロメートル以上450マイクロメートル以下、100マイクロメートル以上350マイクロメートル以下、又は100マイクロメートル以上300マイクロメートル以下の範囲の厚さを有する。
【0072】
被覆された多孔質基材の厚さにわたって照射の勾配を導入すると、窓から被覆された多孔質基材までの距離の増加に従って、照射線量が減少する。被覆された多孔質基材の厚さが増加するに従って、照射線量も被覆された多孔質基材の厚さにわたって減少する。照射の線量に曝露されると、被覆された多孔質基材は、第1の主表面において照射の最大の線量(すなわち、濃度)を受ける。電子ビーム源からの距離の増加に従って、照射線量は、被覆された多孔質基材の厚さにわたって漸次減少する。照射勾配は、第1の主表面(すなわち、照射源に最も近い表面)から第2の主表面(すなわち、照射源から最も遠い表面)まで延びる。いくつかの実施形態では、照射勾配は、被覆された多孔質基材の第2の主表面に達する前にゼロまで減少し得る。
【0073】
被覆された多孔質基材が受ける電子ビーム照射の線量は、少なくとも1つのグラフト可能な種を第1の主表面においてグラフトさせる程度と、第2の主表面まで延びる被覆された多孔質基材の厚さにわたって分布するグラフトされた種の勾配の形成に主な影響を及ぼす。本開示のいくつかの実施形態では、被覆された多孔質基材のグラフト可能な種の少なくとも10重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、若しくは少なくとも50重量パーセントをグラフトされた種に転化するのが通常である。更に、多孔質基材の全重量基準で多孔質基材への適用時に添加されるグラフト可能な種のほとんど約5重量パーセント、ほとんど10重量パーセント、ほとんど20重量パーセント、及びほとんど30重量パーセントを結合して、グラフトされた種を形成するのが通常である。
【0074】
被覆された多孔質基材に送達される照射線量は、限定ではないが、電圧、ライン速度(すなわち、連続法のライン)、及び電子ビーム電流を含む処理パラメータに依存する。照射線量は、ライン速度と、電子ビーム源の抽出装置グリッドに供給される電流を制御することにより調整され得る。例えば、被覆された多孔質基材に送達される20kGyのターゲット線量は、実験的に測定される係数(すなわち、マシン定数)に電子ビーム電流を掛け、ウエブ速度で割って、曝露を求めることにより計算され得る。マシン定数は電子ビーム電圧の関数として変わる。
【0075】
被覆された多孔質基材に送達される電子ビーム照射の線量は、滞留時間に依存的であることができる。被覆された多孔質基材へのグラフト可能な種の結合又は結合の程度は、照射の線量により制御され、被覆された多孔質基材の厚さにわたって分布するグラフトされた種の濃度に影響を及ぼすことができる。被覆された多孔質基材の厚さにわたって送達される線量は、0以上200kGy以下の範囲にあることができる。低線量率及び長滞留時間が照射に好ましいが、実際の操作のためのグラフト可能な種の結合は速度を必要とし、高線量率及び短滞留時間を強制する。例えば、機能化された膜を形成するために、ウエブ経路全体及び巻き取り機から酸素を排除する代替策として多層構造物(例えば、被覆された多孔質基材が第1の層と第2の層との間に配置されている)中で酸素を排除することによって、電子ビームへの曝露後フリーラジカル反応がグラフト化若しくは結合収率の改善に充分な期間継続することが可能となる。照射の勾配を生じさせるのに選択される電圧は、窓の単位経路長さ、間隙の厚さ、第1の層に使用される材料、第1の層の厚さ、多孔質基材に使用される材料、及び被覆された多孔質基材の厚さと、これらの組み合わせに依存的であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、グラフト可能な種の適用の前に電子ビーム照射により処理され得る。多孔質基材を照射した後、多孔質基材が不活性雰囲気下で多孔質基材に適用されるグラフト可能な種を有して、機能化された膜を形成し得る。
【0077】
電子ビーム照射の透過が被覆された多孔質基材にわたって制限若しくは減衰されて、一方の面に他方と異なる組成を有する機能化された膜上にグラフトされた種の勾配を生成することができる。一つの実施形態では、機能化された膜は、親水性表面及び疎水性表面を有する非対称膜である。
【0078】
機能化された膜は、多数の要素に依っていろいろな表面特性及び構造特性を有することができる。これらの要素は、限定ではないが、多孔質基材の物理的及び化学的特性、多孔質基材の細孔の形状(すなわち、対称又は非対称)、多孔質基材の形成方法、被覆された多孔質基材の表面(すなわち、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面)の上にグラフトされた種、機能化された膜に加えられる随意のグラフト化可能な後処理(例えば、加熱工程)、及び随意のグラフト化可能な後反応(例えば、グラフトされた種の追加の官能基と求核性化合物などの化合物又はアニオン性基を持つ化合物との反応)を含む。
【0079】
機能化された膜は、種々の溶液又は溶媒への曝露時にいろいろな度合いの濡れ性を呈することができる。濡れ性は、機能化された膜の親水性又は疎水性の性格にしばしば相互に関連付けられ得る。本明細書で使用されるとき、用語「瞬時の濡れ」又は「瞬時の濡れ性」は、水が多孔質基材表面と接触すると直ちに、通常、1秒未満以内で水滴が所定の機能化された膜に浸透することを指す。例えば、表面濡れエネルギーが約72ダイン以上は、通常、瞬時の濡れを生じる。本明細書で使用するとき、用語「瞬時に濡れない」は、水滴が特定の基材に浸透するが、水滴が基材の表面に接触して瞬時に濡れないことを指す。本明細書で使用する時、用語「濡れない」は、水滴が所定の機能化された膜に浸透しないことを指す。例えば、表面濡れエネルギーが約60ダイン以下は、通常、濡れない結果を生じる。
【0080】
疎水性の多孔質基材上へのグラフト可能な種の適用と、電子ビーム照射への被覆された疎水性多孔質基材の処理によって、疎水性の特性を有する第1及び第2の主表面、親水性の特性を有する第1の主表面及び疎水性の特性を有する第2の主表面、又は親水性の特性を有する第1及び第2の主表面を有する膜を得ることができる同様に、疎水性の多孔質基材上へのグラフト可能な種の適用と、電子ビーム照射への被覆された疎水性多孔質基材の処理によって、親水性の特性を有する第1及び第2の主表面、疎水性の特性を有する第1の主表面及び親水性の特性を有する第2の主表面、又は疎水性の特性を有する第1及び第2の主表面を有する膜を得ることができる。
【0081】
本開示は、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面と、多孔質基材に結合したグラフトされた種の勾配を含み、グラフトされた種の濃度が第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高い、機能化された膜も提供する。機能化された膜は、第1の主表面から第2の主表面まで機能化された膜の厚さにわたって延びる、グラフトされた種の勾配を含む。機能化された膜は、一方の主表面において特別な表面特性と、もう一方の主表面において異なる表面特性を有することができる。いくつかの実施形態では、第2の主表面の細孔よりも大きい孔径の第1の主表面を有する非対称膜を機能化された膜の形成に使用することができる。いくつかの実施形態では、グラフトされた種の結合が非対称膜の第1の主表面において起こり、グラフトされた種の濃度が第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高いことができる。いくつかの実施形態では、グラフトされた種の結合が非対称膜の第2の主表面において起こり、グラフトされた種の濃度が第1の主表面における濃度よりも第2の主表面において高いことができる。
【0082】
グラフト可能な種により均一に被覆された対称膜は、グラフトされた種の勾配を有する機能化された非対称膜を形成することができる。本明細書で述べられている機能化された膜は、機能化された表面を有する多孔質基材を含み、これは、親水性特性、疎水性特性、又は親水性及び疎水性の特性の組み合わせを有する機能化された膜をもたらすことができる。これらの機能化された膜は、いくつかの例では、捕捉又はイオン交換能力のために膜の少なくとも一部を通って延びる電荷親和性特性の勾配を有する。いくつかの実施形態では、機能化された膜の官能性を変えて、物理的なサイズ排除又は分子量カットオフ特性を補償することができる。
【0083】
相分離又は本明細書で述べられている膜の形成に有用な他の方法により形成される非対称膜もグラフトされた種の勾配を与えて機能化され得る。グラフトされた種の勾配は、グラフトされた種の濃度が第1の主表面において高く、並びにグラフトされた種の濃度が膜を通って延びて第2の主表面まで減少することができるようなものである。いくつかの実施形態では、グラフトされた種の勾配は、第2の主表面においてより大きく、グラフトされた種の濃度は第1の主表面に向かって減少することができる。いくつかの実施形態では、機能化された膜は、第1の主表面が第2の主表面の平均孔径よりも大きい平均孔径直径を有するように、非対称多孔質基材を含む。いくつかの実施形態では、第1の主表面の平均孔径は、第2の主表面の平均孔径よりも小さい。
【0084】
本開示の方法により機能化された非対称膜又は非対称とされた対称膜は、限定ではないが、水軟化、濾過、及びクロマトグラフィを含む、用途を有する。いくつかの実施形態では、滅菌グレードの膜性能を有する機能化された非対称膜が形成され得る。この膜は、第1の主表面がフィード原料に向かい合うように、第2の主表面よりも大きい孔径(例えば、直径)の第1の主表面で始まる、グラフトされた種の帯電した勾配を有する。機能化された非対称膜の第1の主表面で始まる上部は、親和性及び長い処理寿命をもたらすことができるサイズ排除濾過特性を有するプレフィルターとして機能することができ、第2の主表面に向かって膜の厚さにわたって延びるより小さい孔径は、最小の流束低下でサイズ排除特性をもたらすことができる。膜のより小さい孔径は流束を調整することができ、グラフトされた種の勾配は、グラフトされた種の濃度が第2の主表面において小さいか、又はゼロであるようなものである。本明細書で述べられている機能化された非対称膜は、例えば、大きい直径細孔中で不純物を捕捉及び貯蔵することができ、小さい直径の細孔のファウリングの発生を減少させる。
【0085】
いくつかの実施形態では、機能化された非対称基材は、平均孔径が第2の主表面の平均孔径よりも小さいように、第1の主表面においてグラフトされた種のより高い濃度を有することができる。グラフトされた種の勾配は、第1の主表面から膜内のある場所又は第2の主表面まで延びることができる。第1の主表面におけるグラフトされた種のより高い濃度は、法線流濾過又は正接流濾過にウルトラ濾過膜又はナノ濾過膜を提供することができる。より小さい孔径は、細孔の容易な収縮を生じることができる。
【0086】
一つの実施形態では、多孔質基材は疎水性又は親水性である。別の実施形態では、機能化された非対称膜は、疎水性表面及び親水性表面を含む。第1の主表面は親水性であり、第2の主表面は疎水性であることができる。
【0087】
一つの実施形態では、機能化された膜は対称性の多孔質基材を含む。機能化された対称膜は、第1の主表面から第2の主表面まで延びて、グラフトされた種の濃度が第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高い、グラフトされた種の勾配を含む。別の実施形態では、第1の主表面が親水性であり、第2の主表面が疎水性である。
【0088】
別の実施形態では、機能化された膜は非対称多孔質基材を含む。機能化された非対称膜は、第1の主表面から第2の主表面まで延びて、グラフトされた種の濃度が第2の主表面における濃度よりも第1の主表面において高い、グラフトされた種の勾配を含む。別の実施形態では、第1の主表面は親水性であり、第2の主表面は疎水性である。
【0089】
本開示の機能化された膜は、燃料電池及び関連の用途での使用を含む種々の用途のいずれにおいても使用され得る。これらの用途で使用される膜は、一般に空気流無しでの水蒸気透過を必要とする。燃料電池の中への水蒸気の流れ(例えば、水蒸気透過(MVT))によって、電池をスタートアップ条件において脱水するとき、このような電池をガス(空気)の交差無しで水和状態に保つことが可能となる。
【0090】
燃料電池を水和状態に保つことは、電池をスタートアップ条件において完全に脱水すると、燃料電池中でガス(空気)の交差をさせること無しで重要である。本開示の機能化された非対称膜の例は、制約された空気流をもたらすが、水蒸気透過(MVT)を可能とさせる。ガーレイ多孔率測定を用いて、非対称機能化された膜を通る空気の流れを測定することができる。これらの測定は、50立方センチメートル(cc)の空気又は別の容積が1平方インチ又は6.35cmの機能化された膜を124mm水柱の圧力で通過する秒での時間を測定する。制約無しの空気流は、機能化された膜中を急速に通過する空気により表され得る。一つの実施形態では、疎水性表面及び親水性表面を有する機能化された膜は、20分以上のガーレイ多孔率と、非改変多孔質基材のほぼ87パーセントのMVTを有する。
【0091】
本開示は、例示的なものであり、本開示の範囲を制限することを意図しない以下の実施例により、更に明らかになるであろう。
【実施例】
【0092】
特に注釈がない限り、以下の実施例において記載する全ての割合、百分率、及び比率は重量を基準としたものであり、又、実施例において使用する全ての試薬は、下記の化学薬品供給業者から得られた若しくは入手可能なものであり、従来の方法によって合成されてもよい。
【0093】
試験方法
流体流束測定
ほぼ47ミリメートル(mm)(1.85インチ)の直径を有する膜の円板を41mmの有効濾過直径を有するModel 4238 Pall Gelmanマグネットフィルターホルダー(Pall Corporation of East Hills,New Yorkから入手可能)に入れることにより、流体流束測定(例えば、水、溶媒)を求めた。真空ポンプを取り付けたフィルターフラスコ上に、このフィルターホルダーを置いた。減圧ゲージを使用して減圧を監視した。ほぼ150ミリリットル(mL)の水又は流体をフィルターホルダーに入れ、次に真空を印加する。約50mLの水がフィルムを通過した後、この時点での真空計は、ほぼ71kPa(約533mmHg(約21インチHg))を示し、ストップウォッチを使用し、時間測定を開始した。残存する水又は流体がすべて膜を通過したならば、計時を止めた。100mLの水又は流体が膜を通過するのに経過する、秒で測定した時間から流体流束を計算した。
【0094】
流束圧力測定
ほぼ37ミリメートル(mm)(1.85インチ)の直径を有する膜の円板をModel 2220 Pall Gelmanマグネットフィルターホルダー(Pall Corporation of East Hills,New Yorkから入手可能)に入れることにより、流束圧力測定(例えば、水、溶媒)を求めた。入力流れに向かって第1の主表面(グラフトされた種の濃度が高い)を上に向けて膜をフィルターホルダーに装填した。商品名Filter Tek(Scilog Incorporated of Middleton,Wisconsinから入手可能)と表示されているデッドエンド濾過システムを用いて流束圧力測定を行った。濾過装置を定圧モードで操作し、69〜483kPa(10〜70psi)の範囲にわたって変動させた。流量をミリリットル/分で記録した。
【0095】
平均孔径
濡らし用液体でサンプル膜の孔を同時に満たし、非反応性気体を用いて、膜の細孔から液体置換することによって平均孔径を求めた。供給ソフトウェア(CAPWINバージョン6.71.54)を載せた自動化キャピラリーフローポロメーター(モデル番号APP−1200−AEX,Porous Materials Incorparated(PMI),Ithaca,New York)を用いて、気体の圧力及び流速を正確に測定した。商品名フルオリナートFC−43(3M Corporation,St.Paul,Minnesota)で得られる湿潤流体を湿潤流体として使用し、最大圧力設定689.5kPa(689.5キロニュートン/(メートル)(kN/m)(一平方インチ当り100ポンド(psi)))で置換するために圧縮窒素ガスを使用した。試験は、ウェットアップ/ドライダウンソフトウェア構成で行った。
【0096】
比較例1及び実施例2
商品名F150AOAで3M CUNO(Meriden,Connecticut)から得られるナイロン膜(すなわち、多孔質基材)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(すなわち、グラフト可能な種)と、87.5重量%(重量パーセント)のDI水を含有する溶液により被覆した。多孔質基材を溶液に浸漬して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。比較例1は上記と同一の多孔質基材であるが、溶液に浸漬しなかった。次に、実施例2の被覆された多孔質基材を100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(第1及び第2の)の間に「濡れた状態」で置いて、多層構造物を形成した。過剰な溶液を絞り出し、多層構造物の表面にゴムローラーをかけることにより、捕捉された空気泡を多層構造物から除去した。多層構造物をPETの移動ウエブにテープで貼って、1分当り6.1メートル(mpm)の速度で電子ビーム処理装置を通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビームカソード(Energy Sciences,Inc.,Wilmington,Massachusetts)上の電子ビーム源(E−ビーム)により照射した。電子ビーム処理装置を充分な電子ビーム電流をカソードに印加しながら加速電圧170keVに設定して、搬送速度6.1mpmで単一パスで60kGyの線量を送達した。国立標準研究所(RISO、デンマーク)で較正され、トレース可能な薄膜線量計を用いて、電子ビームを較正した。本開示で送達される線量は、線量計により記録される表面線量(例えば、多層構造物のPETの第1の層に送達される線量)を指す。
【0097】
照射後、多層構造物を移動ウエブから取り出し、約2分間放置して、開封した。グラフトされた種は被覆された多孔質基材に結合し、剥離可能な第1層と第2の層との間に機能化された膜を形成した。機能化された膜を第1及び第2のPET層から除去した。機能化された膜をDI水と3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄した。機能化された膜をペーパータオルによりふき取って、乾燥し、風乾した。メチルエチルケトン(MEK)、アルコール、又は他の好適な溶媒により洗浄することにより、水により容易に除去されない残存グラフト可能な種を機能化された膜から抽出してもよい。
【0098】
比較例1の多孔質基材の平均孔径は、1.18マイクロメートルと測定され、実施例2の機能化された膜は、1.27マイクロメートル(μm)の平均孔径を有し、細孔の詰まりが多孔質基材の表面に結合したグラフトされた種からは殆ど若しくは全く起こらないことを示した。前述の平均孔径測定方法により比較例1及び実施例2の平均孔径を求めた。
【0099】
表2に示す流体流束測定を用いて、機能化された膜の細孔に及ぼす溶媒(例えば、流体)の影響を調べた。比較例1及び実施例2について水流束測定は極めて異なることが示され、比較例1は実施例2についてよりも大きいが、実施例2と比較例1については多孔率及び平均孔径直径は同程度である。この差異は、平均孔径測定で使用されるフルオリナートFC43濡らし用湿潤流体が膜のグラフトされた種を膨潤させず、グラフトされた種が実施例2の細孔を閉塞しないことを結論することにより説明され得る。膜細孔の膨潤が少なく、実施例2のグラフトされた種が大きい平均孔径を示唆する結果として、MEKによる比較例1及び実施例2の流体流束測定は最大であった。両方の膜はMEK流束値と比較して同様の低下した流束値を有するので、イソプロピルアルコール(IPA)は膜を膨潤させることができるが、実施例2におけるグラフトされた種を膨潤させない。両方の膜は、MEK流束と比較して低下した水流束値を有するが、実施例2によっては大きな値を有する。流束における追加の制約は、細孔のグラフトされた種が水の存在においてAMPSモノマーからの非対称グラフトの上方の勾配まで膨潤することに帰され得る。小さい細孔は、膨潤するグラフトされた種を用いて、目詰まり及び流束低下を容易に起こしがちである。膨潤することができるグラフトされた種のグラフト制御は、多孔質基材の本来的な流束特性の維持に寄与することができる。膨潤現象によって、小さい細孔を含む膜が流束低下を特に受けやすくなる。
【0100】
【表2】

【0101】
(実施例3及び4)
実施例2で形成される機能化された膜からの2枚の47mm円板を切り出し、0.0016M(モル)の濃度を有する帯電した染料(正又は負)を水中に含有する2本の20ミリリットル(mL)バイアル中に入れた。商品名METANIL YELLOW(Alfa Aesar,Heysham,Lancashire,England)で入手される負帯電した染料を実施例3に使用した。商品名ASTRAZON ORANGE G(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)で得られる正帯電した染料を実施例4に使用した。実施例3〜4の機能化された膜を含むバイアルをVortexミキサーにより15秒間スピンさせた。機能化された膜をバイアルから取り出し、脱イオン(DI)水によりリンスした。機能化された膜のそれぞれを47ミリメートル(mm)のGelmanマグネットフィルター漏斗(モデル番号4238、Pall Corporation,AnnArbor,Michiganから入手可能)中に取り付けることにより、機能化された膜をDI水によりフラッシュした。約400mLのDI水を70.7kPa(530mmHg真空(10psi))で機能化された膜を通して吸引し、次に機能化された膜を引き続いて乾燥した。機能化された膜の面Aは機能化された膜の第1の主表面を表し、面Bは第2の主表面を表す。表3に実施例3〜4の結果を示す。
【0102】
【表3】

【0103】
実施例3は、僅かな正電荷を有するナイロン基材が負帯電の染料を引き付けるほどに、機能化された膜のMetanil Yellow染料に対して面Bにおいて親和性を示して、強い黄色を生じた。黄色染料は、面Bにおけるよりも負電荷(AMPS)を保持する高濃度のグラフトされた種を有する面Aから洗浄され、これは機能化された非対称膜を示した。実施例4は、橙色染料に対する機能化された非対称膜への面Aでの親和性を示した(高濃度の負帯電の表面を有するグラフトされた種(AMPS)が正帯電した染料を引き付ける)。橙色の染料は、グラフトされた種を殆ど、又は全く持たない面Bに対して親和性を殆ど若しくは全く持たず、これは機能化された非対称膜を示した。面Aは強い橙色を有していた。
【0104】
実施例3の機能化された膜の断面は、面Bにおいて結合された高い濃度の黄色染料を示し、黄色染料の面Aへの結合を殆ど、又は全く示さなかった。黄色染料の強度は面Bにおいて最大であり、色強度は実施例3の面Aへの厚さ方向で減少した。
【0105】
実施例4の機能化された膜の断面は、面Aに結合される橙色染料の濃度の増加を示し、面Bへの橙色染料の結合を殆ど、又は全く示さなかった。黄色染料の強度は面Aにおいて最大であり、色強度は実施例4の面Bへの厚さ方向で減少した。
【0106】
(実施例5〜20)
米国特許公報第2005/0058821号(Smithら)で述べられている方法によりPVDF膜(すなわち、多孔質基材)を作製した。この多孔質基材は約0.7マイクロメートルの平均孔径を有するものであった。TCI Tokyo Kasei(Japan)から商品名A1493で入手される(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)モノマー(すなわち、グラフト可能な種)、Sartomer Company Incorporate(Exton,Pennsylvania)から商品名SR−344で得られるPEG400ジアクリレート(DIAC)、及びSigma Aldrich(St.Louis,Missouri)から入手されるメタノール(MeOH)を有する溶液により、多孔質基材を被覆した。入手されるAPTACモノマーは、水中で74以上76重量%以下の濃度を有するものであった。多孔質基材を溶液により被覆した後、それぞれほぼ100マイクロメートルの厚さを有するPETフィルムの2層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で置いた。第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に過剰な溶液と共にそれぞれ置き、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。この多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESICB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表4に実施例5〜20を示す。
【0107】
【表4】

【0108】
実施例9は、実施例10と対照的に第1の主表面が上流に向くことを除いて、実施例10で使用されるのと同一の機能化された膜であった。流体流束測定のために実施例10をホルダー中で反転した。グラフトされた種(すなわち、ゲル化した面)の濃度が最大である表面を下流に向けた。ゲル化した表面を洗い流さなかった。
【0109】
実施例16及び17は、乾燥無しの機能化された膜(1)に対する流体流束測定を示した。乾燥後流体流束測定を行い、再び濡らすこと(2)が流体流束を増加させた。
【0110】
実施例19は、被覆された多孔質基材内で細孔を形成するためにDow Chemical Company(Midland,Michigan)から商品名POLYGLYCOL E200で入手されるPEG 200を細孔形成剤として含有するものであった。
【0111】
次の改良を加えた水流束試験手順により、表4に示す実施例11〜12及び18に対する塩排除率(%)を求めた。この方法に使用されるDI水は、水1リットル当り約2グラムの塩化マグネシウム(MgCl)を添加したものであった。MgClを添加した後、追加のDI水を添加して、VWR(West Chester,Pennsylvania)から入手されるVWR電導度計(モデルNo.61161−662)により測定して約1130μs/cmの電導度を得た。攪拌機構を300rpmで操作した。実施例11、12、及び18に対しては、第1の主表面(グラフトされた種の濃度が最大)をホルダー中で面を上に向けて置いた。電導度計の測定プローブを流出する流れに入れ、機能化された膜に対して最小の電導度測定値を記録した。次の計算によりパーセント塩排除率を求めた。
【0112】
1−(電導度/1130μs/cm)×100=パーセント塩排除率
実施例5〜20の機能化された膜の染料結合能力を上述の正帯電したグラフトされた種により調べた。実施例5〜20の47mm円板を形成し、負帯電の染料を水中で0.0016Mの濃度で含有する20mLバイアルに入れた。負帯電した染料は、Alfa Aesar(Heysham,Lancashire,England)から商品名METANIL YELLOWとして入手されるものであった。このバイアルを12時間おだやかにゆすった。橙色に着色した溶液は、染料が機能化された膜により殆ど、又は全く結合されないということを示した。透明な着色溶液は、染料の全部又は殆ど全部が機能化された膜により結合されるということを示すものであった。淡色の黄色若しくは橙色溶液は、表4に示す機能化された膜による染料の部分的な結合を示した。
【0113】
(実施例21)
実施例5〜20に述べたポリビニリデンフッ化(PVDF)多孔質基材を実施例21で使用した。Sartomer Company Incorporate(Exton,Pennsylvania)から商品名SR−344で入手可能な、10.0重量%のPEG400ジアクリレート(DIAC)、及びSigma Aldrich(St.Louis,Missouri)から入手可能な、90.0重量%のメタノール(MeOH)を含有する溶液(例えば、グラフト可能な種)によりこの多孔質基材を被覆した。次に、被覆された多孔質基材をほぼ100マイクロメートルの厚さを有するPETフィルムの2層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で置き、任意の過剰な溶液及び捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により60kGyの線量で照射した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。この膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。
【0114】
実施例21で形成される機能化された膜を水に浸漬した。面Aは照射時に電子ビーム照射源に最も近接していた。面Bは機能化された膜の相対する面Aであった。照射濃度は面Aにおいての濃度より大きく、照射勾配が面Aから面Bに設けられた。
【0115】
実施例21の機能化された非対称膜は、親水性面(面A)及び疎水性面(面B)を含む。グラフトされた種の濃度は、面Aにおいての濃度より高く、水が細孔を充填し、面Aが暗色化するか、もしくは暗青色に見えた。面Bは水により充填されず、面Bは可視光を拡散するかあるいは散乱して、淡青色を生じる。表5に実施例21の結果を示す。
【0116】
【表5】

【0117】
比較例22(CE22)及び実施例23〜26(水蒸気透過)(MVT)
比較例22及び実施例23〜26に対して実施例21に述べたPVDF多孔質基材を使用して、MVT特性を評価した。グラフト可能な種を含有する溶液(10.0重量%又は25重量%のPEG 400ジアクリレートモノマーをDI水中に含有する)を実施例23〜26の多孔質基材上に被覆した。比較例22をグラフト可能な種を含有する溶液で被覆しなかった。実施例23〜26を電子ビーム源により表6に示す電圧で照射した。実施例25〜26においては、電子ビーム照射の2回のパス(a)及び(b)を使用した。
【0118】
比較例22及び実施例23〜26についてASTME−96−80を用いて水蒸気透過(MVT)試験を行った。60℃及び35%相対湿度(%RH)に維持されている循環空気オーブンを有する試験チャンバーを使用することにより、試験方法を改良した。機能化された膜とバイアル中の水のレベルとの間の3.175cmのヘッドスペースを維持した。1.91cmの開口を有する約67mLの容積を有するびんを使用した。1.91cmの開口を有するびんのキャップを中心に穿孔した。びんを約50mLのDI水で充填した。比較例22及び実施例23〜26の試料を直径約2.54cmに切断し、びんの周縁に接着した。キャップをしっかり閉めて、機能化された膜によることを除いて、水が失われることはないことを確認した。びんを対流オーブン中に60℃で18時間直立して置いた。次に、びんをオーブンから取り出し、内容物を秤量した。膜の水蒸気透過を計算し、表6に示した。
【0119】
一定容積のガス(50cm)が機能化された膜の標準面積(6.35cm)を124mmの水柱圧力において通過するのに必要な時間として表される、機能化された膜中のガス流れに対する抵抗性を測定するために、ガーレイ空気透過率を示し、表6に示す。ガーレイ空気透過率は、ASTM D726−58、方法Aで更に規定されている。
【0120】
【表6】

【0121】
実施例25及び26は、比較例22のそれに相対的に近いMVT値の低い空気流速を呈した。
【0122】
比較例23(CE23)
非対称ナイロン膜(多孔質基材)を商品名Life Assure BLA−045で3M CUNO(Meriden,Connecticut)から入手した。比較例23(CE23)は、約0.8μm/0.8μm/0.45μmの平均孔径を有する三域膜(多域膜)であった。
【0123】
(実施例27及び28)
比較例23(CE23)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、87.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液により被覆した。多孔質基材をこの溶液で被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を大きな孔径(第1の主表面)を上にして置き、各々100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第1の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上10kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表7に実施例27及び28に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。同様に、表8に実施例28に対する長時間の水圧力流束測定を示した。
【0124】
(実施例29)
比較例23(CE23)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、20重量%のメタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)、67.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液により被覆した。多孔質基材をこの溶液により被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を大きな孔径(第1の主表面)を上にして置き、それぞれ100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第1の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上10kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表7に実施例29に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。
【0125】
(実施例30)
比較例23(CE23)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、87.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液で被覆した。多孔質基材をこの溶液により被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を小さな孔径(第2の主表面)を上にして置き、それぞれ100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第2の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表7に実施例30に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。同様に、表8に実施例30に対する長時間の水圧力流束測定を示した。
【0126】
(実施例31)
比較例23(CE23)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、20重量%のメタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)、67.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液で被覆した。多孔質基材をこの溶液で被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を小さな孔径(第2の主表面)を上にして置き、それぞれ100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第2の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表7に実施例31に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。
【0127】
【表7】

【0128】
【表8】

【0129】
比較例24〜26(CE24〜CE26)
米国特許第6,513,666号、同第6,776,940号、同第6,413,070号、及び同第6,264,044号で述べられている方法により、三域の補強非対称微多孔性ナイロン膜を作製した。単一ベースポリマー添加配合物を3つの成分に分割し、三方加熱操作装置に適用した。添加配合物を3つの異なる温度に加熱して、3つの分かれた域を得た。非対称微多孔性膜を形成するために、使用される温度の各々を選択して、孔径をそれぞれの域中で生成させた。第1の域(上方域)は最大の孔径を有し、第2の域(中間域)は中間孔径を有し、第3の域(下方域)は最小の孔径を有する。この膜は、3つの連続する、漸次的に小さくなる孔径の排除域を有する単一層であった。
【0130】
比較例24(CE24)は、ほぼ0.2マイクロメートルの第3の域(下方域)に対する平均孔径を有するものであった。
【0131】
比較例25(CE25)は、ほぼ0.65マイクロメートルの第3の域(下方域)に対する平均孔径を有するものであった。
【0132】
比較例26(CE26)は、ほぼ1.2マイクロメートルの第3の域(下方域)に対する平均孔径を有するものであった。
【0133】
表9に実施例CE24〜CE26に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。
【0134】
(実施例32〜34)
実施例32は、下記に述べるグラフトされた種を有する比較例24に対応するものであった。
【0135】
実施例33は、下記に述べるグラフトされた種を有する比較例25に対応するものであった。
【0136】
実施例34は、下記に述べるグラフトされた種を有する比較例26に対応するものであった。
【0137】
比較例24〜26(CE24〜CE26)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、20重量%のメタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)、67.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液で独立に被覆した。多孔質基材をこの溶液で被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を大きな孔径(第1の主表面)を上にして置き、各々100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第1の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表9に実施例32〜34に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。
【0138】
比較例27〜28(CE27〜CE28)
二層組み合わせ非対称膜を形成した。比較例27(CE27)を比較例24(CE24)に張り合わせた比較例25(CE25)の組み合わせ物から形成した。CE25は最上層であり、最小の孔径を有するCE25の表面を最大の孔径を有するCE24(最下層)の最上表面に隣接して張り合わせたものであった。二層組み合わせ膜CE27の最小孔径は0.2マイクロメートルであった。
【0139】
比較例28(CE28)は、比較例25(CE25)に張り合わせた比較例(CE26)の組み合わせ物であった。CE26は最上層であり、最小の孔径を有するCE26の表面を最大の孔径を有するCE25(最下層)の最上表面に隣接して張り合わせたものであった。二層組み合わせ膜CE28の最小孔径は0.65マイクロメートルであった。
【0140】
米国特許第3,876,738号及び米国防衛出願T−103,601号で述べられている配合物及び方法を用いて、比較例27〜28の二層組み合わせ膜を形成した。膜キャスト、形成、及び水リンス工程の後、個別の層(三域膜)を濡れている時に張り合わせた。最上層の下表面(より小さい孔径)が最下表面の上表面(より大きい孔径)と接触するように、濡れている層を物理的に接触して配置した。捕捉された空気をラミネート層から除去し、二層組み合わせ膜を乾燥装置中で拘束下で移動させ、クロスウエブ若しくはダウンウエブ方向における収縮を制御及び最小化して、二層組み合わせ膜を形成した。比較例27〜28の二層組み合わせ膜は、最大の孔径を有し、小さい孔径まで徐々に延びる最上表面を有する6つの独立の多孔質域を独立に有する。
【0141】
(実施例35〜36)
実施例35は、下記に述べるグラフトされた種を有する比較例27(CE27)に対応するものであった。
【0142】
実施例36は、下記に述べるグラフトされた種を有する比較例28(CE28)に対応するものであった。
【0143】
比較例27〜28(CE27〜CE28)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される、12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、20重量%のメタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis、Missouri)、67.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液で独立に被覆した。CE27及びCE28の多孔質基材をこの溶液で被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を大きな孔径(第1の主表面)を上にして置き、それぞれ100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第1の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表9に実施例35〜36に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。
【0144】
比較例29(CE29)
三層組み合わせ非対称膜を形成した。比較例29(CE29)は、比較例24(CE24)(最下層)に張り合わせた、比較例25(CE25)(中間層)に張り合わせた比較例26(CE26)(最上層)の組み合わせ物であった。最小孔径(寸法)を有するCE26の最下表面を最大孔径を有するCE25の最上表面(中間層)に隣接して張り合わせ、三層組み合わせ非対称膜を形成するために、CE24の最上表面をCE25の最下表面(小孔径)に隣接して張り合わせた。三層組み合わせ非対称膜CE29の最小孔径は0.2マイクロメートルであった。
【0145】
米国特許第3,876,738号及び米国防衛出願T−103,601号で述べられている配合物及び方法を用いて、CE29の三層組み合わせ非対称膜を形成した。膜キャスト、形成、及び水リンス工程の後、個別の層(三域膜)を濡れている時に張り合わせた。最上層の下表面(より小さい孔径)が中間層の上表面(より大きい孔径)及び中間層(より小さい孔径)の下表面が最下層の最上表面(大きい孔径)と接触するように、濡れた層を物理的に接触して配置した。捕捉された空気を3つのラミネート層から除去し、三層組み合わせ非対称膜を乾燥装置中で拘束下で移動させ、クロスウエブ若しくはダウンウエブ方向における収縮を制御及び最小化して、三層組み合わせ膜を形成した。比較例29の三層組み合わせ膜は、最大の孔径を有し、最上表面が最下表面中の小さい孔径まで徐々に延びるより大きい孔径を有する9つの独立の多孔質域を独立に有するものであった。
【0146】
(実施例37〜38)
実施例37は、下記に述べるグラフトされた種を有する比較例29(CE29)に対応するものであった。
【0147】
実施例38は、下記に述べるグラフトされた種を有する比較例29(CE29)に対応するものであった。
【0148】
比較例29(CE29)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される、12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、20重量%のメタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)、67.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液で被覆した。CE29の多孔質基材をこの溶液により被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を大きな孔径(第1の主表面)を上にして置き、それぞれ100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第1の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表9に実施例37〜38に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。
【0149】
(実施例39)
比較例29(CE29)をLubrizol Corporation of Wicliffe,Ohioから入手される12.5重量パーセント(重量%)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(AMPS、水中50以上60重量%以下の濃度、入手状態のまま)モノマー(例えば、グラフト可能な種)と、20重量%のメタノール(Sigma−Aldrich,St.Louis,Missouri)、67.5重量%(重量パーセント)の脱イオン(DI)水を有する溶液で被覆した。CE29の多孔質基材をこの溶液で被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を大きな孔径(第1の主表面)を上にして置き、それぞれ100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第2の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて風乾した。表9に実施例39に対する時間を決めてはかった流束測定を示した。
【0150】
【表9】

【0151】
(実施例40)
比較例29(CE29)を15.0重量パーセント(重量%)の[3−(メタクロイルオイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)モノマー、15重量%のメタノール、10重量%のポリエチレングリコール(ヒドロキシル末端基、平均分子量4,000g/モル(PEG 4000)、及び60重量%の水を有する溶液で被覆した(すべての薬品はSigma−Aldrich 1001から入手可能)。CE 29の多孔質基材をこの溶液により被覆して、第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を濡らした。次に、被覆された多孔質基材を大きな孔径(最上層)を上にして置き、それぞれ100マイクロメートルの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの2つの層(剥離可能な第1及び第2の層)の間に「濡れた状態」で挟んだ。PETの第1の層及び第2の層を被覆された多孔質基材の相対する面上に置いて、過剰な溶液を含む多層構造物を形成し、捕捉された空気泡を携帯型ゴムローラーにより絞り出した。ビーム源に面する第1の主表面を有する多層構造物をキャリアウエブ上で電子ビームを通して搬送した。多層構造物をESI CB−300電子ビーム系中で電子ビーム(E−ビーム)により30kGy以上100kGy以下の範囲の線量で照射した。140keV以上300keV以下の範囲の電圧で電子ビームを操作した。照射の2分後に、機能化された膜を第1及び第2のPET層から取り出した。機能化された膜をDI水により3回交換される水のトレー中に漬けて、未反応のグラフト可能な種の機能化された膜を洗浄し、引き続いて実施例40を形成するために風乾した。
【0152】
貫流方式での膜の濾過性能を測定するための染料吸着試験を用いて、実施例40及びCE29を試験した。染料吸着試験は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,473,474号(Ostreicher)で述べられている。染料吸着試験は、膜中の流動する液体の流れの存在において濾過媒体中での濾過吸着能力、イオン交換効果、及び他の表面現象を測定するのに有用であり得る。
【0153】
Ostreicherにより述べられている染料吸着試験方法を同様の装置と、50mM NaHPO、140mM NaCl、及び80ppm Metanil黄色染料を含有する試験溶液で使用した。Masterflex蠕動ポンプ(モデル7016ポンプヘッド)及び駆動ユニットを用いて、試験溶液を30mL/分の流速で流した。貫流筐体に独立に取り付けられた、ほぼ13平方センチメートルの露出面積(シールのo−リング内)の実施例40及びCE29の47mmの円板に試験溶液を流した。分析のために実施例40及びCE29を最大孔径性能域を上流に向け、最小孔径性能域を下流に向けて筐体中に独立に取り付けた。LKB Ultrospec II分光光度計(モデル#4050)を用いて分光光度計による流出液の吸光度を455nmで測定し、時間の関数として記録した。流出液の透過率がほぼ1.1吸光度単位(80ppmのMetanil Yellow試験溶液の入口濃度のほぼ25%(20ppm)において)まで増加したならば、試験を停止した。時間の関数としての吸着濾過効率(30mL/分の流速で測定)を測定した。実施例40は、グラフトされた種(カチオン性)無しのCE29と比較して殆ど5倍の吸着濾過効率の増加を示した。独立にCE29及び実施例40を試験装置から取り出し、目視で検査した。実施例40は、CE29(グラフトされたカチオン性種を含まない)と比較して、染色された膜表面におけるナイロン多孔質構造物の動的流れ試験において上流表面における能力がより高く、染料性能がより大きいことを示した。
【0154】
本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく本開示の様々な修正形態及び変更形態が、当業者には、明らかとなろう。また、本開示は、本明細書に記載した例示的な要素に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能化された膜を作製する方法において、前記方法が
第1の主表面、間隙の表面、及び第2の主表面を有する多孔質基材を提供すること、
前記多孔質基材に少なくとも1つのグラフト可能な種を適用して、被覆された多孔質基材を提供すること、並びに
前記被覆された多孔質基材を電子ビーム照射により処理して、機能化された膜を提供すること、を含み、前記電子ビーム照射が、グラフトされた種の濃度が前記第2の主表面における濃度よりも前記第1の主表面において高いような前記多孔質基材に結合した前記グラフトされた種を含む勾配で、前記多孔質基材にグラフト可能な種を結合させる、機能化された膜を作製する方法。
【請求項2】
前記多孔質基材が親水性、又は疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質基材が、フィルム、不織ウエブ、織製ウエブ、及び前出のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質基材が微多孔性の熱誘起相分離膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱誘起相分離膜がポリ(フッ化ビニリデン)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質基材がナイロンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記機能化された膜の前記第1の主表面が親水性であり、前記機能化された膜の前記第2の主表面が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記機能化された膜の前記第1の主表面が親水性であり、前記機能化された膜の前記第2の主表面が疎水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのグラフト可能な種がフリーラジカル重合性基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのグラフト可能な種が前記フリーラジカル重合性基と、エチレン系不飽和基、エポキシ基、アザラクトン基、イオン基、アルキレンオキシド基、及び前出のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、追加の官能基と、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン基がスルホン酸又はスルホン酸塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン基がアミン又は四級アンモニウム塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記追加の官能基が求核性化合物と反応する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記求核性化合物が、一級アミノ基、二級アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及び前出のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される求核性基を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのグラフト可能な種が少なくとも2個の官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのグラフト可能な種がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのグラフト可能な種が、グリシジル(メタ)アクリレート、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアザラクトン、及び前出のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1の層と第2の層との間に前記被覆された多孔質基材を配置して、多層構造物を形成することを更に含み、前記第1の層が前記第1の主表面に隣接して配置され、前記第2の層が前記第2の主表面に隣接して配置されており、前記被覆された多孔質基材を電子ビーム照射により処理することが前記電子ビーム照射に前記多層構造物を曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記被覆された多孔質基材を電子ビーム照射により処理した後で、前記多層構造物から前記第1の層と前記第2の層を除去することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の主表面に隣接する前記被覆された多孔質基材上に第1の層を配置して、二層構造物を形成すること、及び前記被覆された多孔質基材を電子ビーム照射に暴露することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記被覆された多孔質基材を電子ビーム照射により処理した後で、前記二層構造物から前記第1の層を除去することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被覆された多孔質基材を不活性雰囲気により処理して、前記機能化された膜を提供することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記被覆された多孔質基材に送達される電子ビーム照射の線量が、約0kGy以上約120kGy以下の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記電子ビーム照射が、約120keV以上約250keV以下の範囲内の電圧で操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記グラフトされた種の一部がゲルを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記多孔質基材に少なくとも1つのグラフト可能な種を適用することが、前記多孔質基材に2つのグラフト可能な種を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記2つのグラフト可能な種が、前記多孔質基材に同時に適用される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記2つのグラフト可能な種が前記多孔質基材に順次に適用され、第1のグラフト可能な種が前記多孔質基材に適用されて、前記被覆された多孔質基材を提供し、前記被覆された多孔質基材の電子ビーム照射による処理の前に、第2のグラフト可能な種が前記被覆された多孔質基材に適用される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記機能化された膜に少なくとも1つの追加のグラフト可能な種を適用し、その後、前記機能化された膜を電子ビーム照射の第2の処理により処理して、前記機能化された膜に前記追加のグラフト可能な種を結合することを更に含み、前記機能化された膜が少なくとも1つの追加のグラフトされた種を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの追加のグラフトされた種の濃度が、前記第1の主表面における濃度よりも前記第2の主表面において高い、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
機能化された膜を作製する方法において、前記方法が、
第1の主表面、間隙表面、及び第2の主表面を有する多孔質基材を提供すること、
前記多孔質基材を電子ビーム照射により処理して、開始部位の勾配を含む照射多孔質基材を提供すること、並びに、
前記照射多孔質基材に少なくとも1つのグラフト可能な種を適用して、機能化された膜を提供することを含み、前記グラフト可能な種が、グラフトされた種の濃度が前記第2の主表面における濃度よりも前記第1の主表面において高いような前記多孔質基材に結合した前記グラフトされた種を含む勾配で、前記多孔質基材上の前記開始部位に結合する、方法。
【請求項32】
第1の主表面、間隙表面、及び第2の主表面を有する多孔質基材と、
グラフトされた種の濃度が前記第2の主表面における濃度よりも前記第1の主表面において高いような前記第1の主表面から前記第2の主表面へと前記多孔質基材を通って延びる勾配で、前記多孔質基材に結合したグラフトされた種と、を含む、機能化された膜。
【請求項33】
前記多孔質基材が非対称である、請求項32に記載の機能化された膜。
【請求項34】
前記多孔質基材が対称である、請求項32に記載の機能化された膜。
【請求項35】
前記第1の主表面の平均孔径が、前記第2の主表面の平均孔径よりも大きい、請求項33に記載の機能化された膜。
【請求項36】
前記第1の主表面の平均孔径が、前記第2の主表面の平均孔径よりも小さい、請求項33に記載の機能化された膜。

【図1】
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【公表番号】特表2011−508065(P2011−508065A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540852(P2010−540852)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/088106
【国際公開番号】WO2009/086347
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】