説明

機能性材料から構造体を製造するための方法および装置

【課題】 余分な構造化材料を塗布する必要をなくすこと。
【解決手段】 機能性材料、特に、電気的機能性材料(8)から構造体を製造するための方法および装置を提供するために、第一の工程において、最初に、基板(1)の表面張力を、基板の通常の状態と比べてより高い均一な表面張力となし、次に、第一あるいは第二の領域(3,5)において、基板の表面張力をより低い値に低下させる。第一の領域は、製造すべき構造体の形状に構成される。第二の工程において、機能性材料を基板に塗布し、この機能性材料は、第一の領域のみに堆積しその結果機能性材料から所望の構造が形成されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性材料、特に、電気的機能性材料から構造体を製造するための方法および装置であって、第一の工程において、異なる表面張力を有する少なくとも第一及び第二の領域が形成されるように基板に前処理を施し、第一の領域は製造すべき構造体の形状に構成され、第二の工程において、機能性材料を基板に塗布し、この機能性材料が、第一の領域のみに堆積しその結果機能性材料から所望の構造が形成されるように構成された方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性有機材料から導電路を製造する方法が、ドイツ特許公開公報第10229118号(DE−A−10229118)により知られている。この目的のために、マトリックス化合物を印刷することによって基板表面上に区画を定め、これにより、親水性および疎水性区画を有する基板表面が得られる。導電性有機ポリマー溶液をこのように構成された基板表面に塗布し、これにより、親水性区画のみもしくは疎水性区画のみを有機ポリマー溶液で湿潤させる。
【0003】
同様の方法が米国特許公開公報第20020083858号(US−A−20020083858)により知られている。
【0004】
しかしながら、これらの公知の方法には、構造化のために、最初に材料を塗布しなければならないという問題がある。この構造化のために用いられる印刷方法に利点があったとしても、問題もまた生じる。例えば、最初に印刷された構造化材料を再び除去しなければならない。あるいは、この構造化材料は、製造プロセスの後に、何ら機能を有することなく表面上に残留することになる。さらに、基板と、最初に印刷した構造化材料と、次に塗布される機能性材料の間で、材料の調和が難しい場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、機能性材料から構造体を製造するための方法および装置にさらに改良を加え、余分な構造化材料を塗布する必要をなくすことである。
【0006】
この目的は、本発明により、請求項1および11の特徴によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、機能性材料、特に、電気的機能性材料から構造体を製造するための方法において、第一の工程において、異なる表面張力を有する少なくとも第一及び第二の領域が形成されるように基板に前処理を施し、第一の領域は製造すべき構造体の形状に構成される。この場合、最初に、基板の表面張力を、基板の通常の状態と比べてより高い均一な表面張力となし、次に、第一あるいは第二の領域において、基板の表面張力をより低い値に低下させる。第二の工程において、機能性材料を基板に塗布し、この機能性材料は、第一の領域のみに堆積しその結果機能性材料から所望の構造が形成されるように構成される。
【0008】
上記方法を実施するための装置は、基本的に、基板の表面張力を、基板の通常の状態と比べてより高い均一な表面張力となすための手段と、第一あるいは第二の領域において、基板の表面張力をより低い値に低下させるための手段と、機能性材料を基板に塗布するための手段とを有する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、従属請求項の主題として述べられている。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、均一な表面張力はコロナ処理によって生じる。しかしながら、本発明の範囲内で、化学的処理、機械的処理および/またはトライボロジー(摩擦)処理を用いることも可能である。
【0011】
本発明の一態様によれば、表面張力の低下は接触構造と接触することにより生じる。第二の工程において、機能性材料の塗布は、例えば、圧延法、スプレー法、ディップ法、あるいは、カーテンコーティング法によって行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、余分な構造化材料を塗布する必要なく、機能性材料から構造体を製造するための方法および装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例について、図面を参照して説明する。
【0014】
本発明による方法において、表面極性の構造化のために、材料を印刷したり、または、その他の方法で塗布したりすることはない。そうではなく、様々な表面状態をとることができる適切な基板1、例えば、プラスチック膜、特に、PET膜が用いられる。
【0015】
すなわち、基板1は、まず、基板の通常の状態に比べてより高い均一な表面張力を生じさせるための手段2を通過する。このような表面活性化は、例えば、コロナ処理手段により行うことができ、このコロナ処理では、基板1の表面に電子を、また適宜高電圧領域におけるイオンを照射する。処理された基板の表面は、基板の通常の状態に比べてより高い均一な表面張力を有する(図2a参照)。
【0016】
次の工程において、手段4を用いて、特定の領域において表面張力を低下させ、これにより、異なる表面張力を有する少なくとも第一の領域3と第二の領域5を形成する。第一の領域は、製造すべき構造体の形状に構成される。
【0017】
表面張力の低下は、本例においては領域5において達成され、例えば、領域5において活性化した基板を手段4の接触構造と接触させることにより達成される。これにより、この位置において先に実施した表面活性化は再び無効化され、再度、より低い元の表面張力となる。
【0018】
表面張力を低下させるための手段4は、例えば、基板の表面と接触するローラーあるいはプレートからなり、このローラー/プレートは、突出した接触構造6を有し、ローラー/プレートの突出した接触構造のみが基板の表面と接触する。既存の接触構造は、好ましくは、不活性化を助ける材料から作られる。これに関しては、例えば、市販のフレキソ印刷プレートあるいはドライオフセットプレートが大変好ましいことがわかっている。しかしながら、その他の材料も用いることができる。
【0019】
対応する構造体を、接触構造6に対応して微細な形状によって、活性化した基板表面に作成することができる。これにより、基板の個々の領域5は、領域3より低い表面張力を獲得する。領域3は、接触構造6とは接触せず、予め設定された高レベルの表面張力に維持される。
【0020】
最後の工程において、実際の機能性材料8、特に、電気的機能性材料を手段7によって塗布する。この機能性材料は、第一の領域3のみに堆積しその結果機能性材料から所望の構造が形成されるように構成される。機能性材料の種類に応じて、機能性材料は、活性化されたままの領域、もしくは、接触構造によって不活性化された領域のいずれかに堆積することになる。図示の例では、活性化した領域に堆積される機能性材料を選択した。機能性材料から形成された所望の構造を、例えば、導電路として、図2cに示す。
【0021】
機能性材料は、例えば、流体状態で塗布される導電性有機ポリマーからなる。ただし、粘度は十分に低くなければならず、所望の構造に応じて流体を分布させることができるように、乾燥プロセス前の流体相が十分長い時間保証されなければならない。
【0022】
機能性材料8の塗布法として、材料の十分に均一な塗布を可能とするいかなる方法も用いることができる。基板表面に機能性材料を噴霧するスプレー法は、特にこれに適している。このスプレー法により、機能性材料は、異なる表面張力の故に、適切な表面張力を有する領域のみに堆積される。
【0023】
しかしながら、この工程について、基板を流体機能性材料に浸漬するディップ法により、機能性材料を塗布してもよい。
【0024】
さらなる可能性として、基板表面が、機能性材料の1回あるいは数回の流体噴射を経て案内されるカーテンコーティング法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】機能性材料から構造体を製造するための装置の概略図である。
【図2a】第1の工程における基板表面の概略図である。
【図2b】第2の工程における基板表面の概略図である。
【図2c】第3の工程における基板表面の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料、特に、電気的機能性材料から構造体を製造するための方法であって、第一の工程において、異なる表面張力を有する少なくとも第一及び第二の領域(3,5)が形成されるように基板(1)に前処理を施し、前記第一の領域は製造すべき前記構造体の形状に構成され、第二の工程において、前記機能性材料を前記基板に塗布し、前記機能性材料(8)は、前記第一の領域のみに堆積しその結果前記機能性材料から所望の構造が形成されるように構成された方法において、前記第一の工程において、最初に、前記基板の表面張力を、前記基板の通常の状態と比べてより高い均一な表面張力となし、次に、前記第一あるいは前記第二の領域において、前記基板の表面張力をより低い値に低下させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記均一な表面張力は、コロナ処理により生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記均一な表面張力は、化学的処理により生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記均一な表面張力は、機械的処理および/またはトライボロジー(摩擦)処理により生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記均一な表面張力は、請求項2〜4に記載の方法の組み合わせにより生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記表面張力の低下は、接触構造(6)と接触することにより生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の工程において、前記機能性材料は、前記機能性材料で覆われたローラーが前記基板表面上で回転する圧延法で塗布され、前記機能性材料は、異なる表面張力の故に、適切な表面張力を有する領域にのみ堆積されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の工程において、前記機能性材料は、前記基板表面に前記機能性材料が噴霧されるスプレー法で塗布され、前記機能性材料は、異なる表面張力の故に、適切な表面張力を有する領域にのみ堆積されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第二の工程において、前記機能性材料は、前記基板が流体機能性材料に浸漬されるディップ法で塗布され、前記機能性材料は、異なる表面張力の故に、適切な表面張力を有する領域にのみ堆積されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第二の工程において、前記機能性材料は、前記基板が前記機能性材料の1回あるいは数回の流体噴射を経て案内されるカーテンコーティング法で塗布され、前記機能性材料は、異なる表面張力の故に、適切な表面張力を有する領域にのみ堆積されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記請求項1〜10の少なくとも1つに記載の方法を実施するための装置であって、前記装置は、前記基板の表面張力を、前記基板の通常の状態と比べてより高い均一な表面張力となすための手段(2)と、前記第一あるいは前記第二の領域において、前記基板の表面張力をより低い値に低下させるための手段(4)と、さらに、前記機能性材料を前記基板に塗布するための手段(7)とを有することを特徴とする装置。
【請求項12】
均一な表面張力となすための前記手段(2)は、コロナ処理手段により構成されることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
表面張力を低下させるための前記手段(4)は、前記基板の表面と接触するローラーあるいはプレートにより構成され、前記ローラーあるいはプレートは突出した接触構造を有し、前記ローラー/プレートの突出した接触構造のみが前記基板の表面と接触することを特徴とする、請求項11に記載の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【公表番号】特表2008−521599(P2008−521599A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543729(P2007−543729)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012390
【国際公開番号】WO2006/058622
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(506402285)プリンティド システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】