説明

機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠くブタ動物

【課題】機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠く生存可能なブタを提供すること。異種移植または他の生医学的適用において使用するために、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠く、ブタ細胞、ブタ組織、およびブタ器官を提供すること。その細胞表面上にガラクトースα−1,3−ガラクトースエピトープを欠くブタ細胞を選択してスクリーニングする方法を提供すること。
【解決手段】機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠く、ブタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年8月21日に出願した米国特許仮出願番号60/404,775に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ブタ動物、ブタ組織、およびブタ器官、ならびにそのような動物、組織、および器官に由来する細胞および細胞株であって、これらは、機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α1,3GT)のいかなる発現をも欠く。そのような動物、組織、器官、および細胞は、研究および医学的治療(異種移植を含む)において使用され得る。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
末期臓器不全の患者は、生存のために器官移植を必要とする。臨床的移植における主要な限定要因は、適切なヒトドナーの不足である。過去10年間にわたり、臓器を待つ患者のリストの大きさは、1991年の約30,000人から、2001年の約80,000人へと劇的に増加した(情報源:New York Organ Donor Network;Association of Organ Procurement Organization’s Death Record Review Study from 1997 to 1999(30個の臓器斡旋組織により提供される))。過去10年間にわたるこの需要増加にも関わらず、臓器提供の数は、不活発なままである(1年間当たり約20,000件)。
【0004】
2003年7月17日当時のUnited Newwork for Organ Sharing(UNOS)によると、米国において臓器移植を待つ82,249人の患者が存在した。具体的な器官についての需要は、以下の通りであった:
【0005】
【表100】


米国において、すべての人種および民族のバックグラウンドの男性、女性および子供が、毎日平均17人、寄与される器官の欠如が原因で死んでおり、従って、毎年、6,200人を越えるアメリカ人が、器官移植を待って死んでいる。より信頼できかつ無限の器官供給源についての需要により、他の動物からの器官の移植(異種移植とも呼ばれる)の可能性について調査が引き起こされた。
【0006】
ブタは、異種移植片器官の最も可能性がる供給源であると考えられる。ブタの供給は、豊富であり、交配プログラムは、十分に確立されており、その大きさおよび生理は、ヒトに適合する。しかし、異種移植は、それ自体の問題を提示する。最も重要なことは、免疫拒絶である。第1の免疫学的障害物は、「超急性拒絶(HAR)」である。HARは、外来組織に結合する予め形成された高力価の天然抗体が遍在的に存在することによって定義され得る。これらの天然抗体が、ドナー器官の内皮上の標的エピトープに結合することが、HARにおける開始事象であると考えられる。この結合の後、レシピエント血液がドナー器官に還流して数分間以内に、補体活性化、血小板およびフィブリンの沈着が生じる、これらはすべて、レシピエントにおけるその器官の不全を引き起こす(Strahanら(1996)Frontiers in Bioscience 1,e34〜41)。
【0007】
旧世界のサル、類人猿、およびヒトを除いて、ほとんどの哺乳動物は、その細胞表面上に、糖タンパク質を保有し、この糖タンパク質は、ガラクトースα1,3−ガラクトースを含む(Galiliら、J.Biol.Chem.263:17755〜17762,1988)。ヒトおよび旧世界のサルは、大量に生成される天然に存在する抗αgal抗体を有する(Cooperら、Lancet 342:682〜683.1993)。これは、ガラクトースα−1,3−ガラクトースを保有する糖タンパク質および糖脂質に特異的に結合する。
【0008】
対照的に、ガラクトースα−1,3−ガラクトースを含む糖タンパク質は、他の哺乳動物(例えば、ブタ)の細胞上に多量に見出される。哺乳動物における「α−1,3−GTエピトープ」と抗Gal抗体(すなわち、ガラクトースα−1,3−ガラクトースを保有する糖タンパク質および糖脂質に結合する抗体)とのこの差次的な分布は、祖先の旧世界の霊長類およびヒトにおいて不活化(すなわち、変異型)α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼを有する種について選択した進化プロセスの結果である。従って、ヒトは、α1,3GTの「自然ノックアウト」である。この事象の直接の結果は、異種移植片の拒絶(例えば、最初にHARを介するヒト中に移植されたブタ器官の拒絶)である。
【0009】
ブタ異種移植により引き起こされる抗Gal体液性応答を排除または調節するために、種々のストラテジーが実施されてきた。そのストラテジーとしては、α−ガラクトシダーゼを用いるエピトープの酵素的除去(Stoneら、Transplantation 63:640〜645,1997)、特異的な抗gal抗体除去(Yeら、Transplantation 58:330−337,1994)他の糖質部分を用いるエピトープのキャップ化(これは、α−1,3−GT発現を排除できなかった)(Tanemuraら、J.Biol.Chem.27321:16421−16425,1998およびKoikeら、Xenotransplantation 4:147−153,1997)、補体阻害タンパク質の導入(Dalmassoら、Clin.Exp.Immunol.86:31−35,1991,Dalmassoら、Transplantation 52:530−533(1991))が挙げられる。C.Costaら(FASEB J 13,1762(1999))は、H−トランスフェラーゼトランスジェニックブタにおけるα−1,3−GTの競合阻害は、エピトープの単なる部分減少を生じたことを報告した。同様に、S.Miyagawaら(J Biol.Chem 276,39310(2001))は、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIトランスジェニックブタにおけるgalエピトープの発現をブロックする試みもまた、galエピトープ数の単なる部分的減少を生じ、霊長類レシピエントにおいて移植片生存を有意に拡大することはできなかったことを報告した。
【0010】
ブタ細胞および生存動物におけるα−1,3−GT遺伝子座の単一対立遺伝子ノックアウトが、報告されている。Denningら(Nature Biotechnology 19:559−562,2001)は、ヒツジにおけるα−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子の標的化遺伝子欠失を報告した。Harrisonら(Transgenics Research 11:143−150,2002)は、ヘテロ接合性α−1,3−GTノックアウト体細胞ブタ胎仔線維芽細胞の産生を報告した。2002年に、Laiら(Science 295:1089−1092,2002)およびDaiら(Nature Biotechnology 20:251−255,2002)は、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子が首尾良く不活化されたブタの産生を報告した。Ramsoondarら(Biol of Reproduc 69,437−445(2003)は、ヒトαー1,2−フコシルトランスフェラーゼ(HT)も発現するヘテロ接合性α−1,3−GTノックアウトブタの産生を報告した。このブタは、HTエピトープおよびα−1,3−GTエピトープの両方を発現した。
【0011】
PCT公開番号WO 94/21799および米国特許第5,821,117号(Austin Research Instituteに対する);PCT公開番号WO 95/20661(Bresatecに対する);ならびにPCT公開番号WO 95/28412,米国特許第6,153,428,米国特許第6,413,769および米国公開番号2003/0014770(BioTransplant,Inc.およびThe General Hospital Corporationに対する)は、α−1,3−GT遺伝子のcDNAの知見に基づき(そして、ゲノム組織化の知識もゲノム配列の知識も持たずに)、α−1,3−GTネガティブブタ細胞の産生についての考察を提供する。しかし、そのような細胞が、これらの出願の出願日前に実際に産生されたことの証拠は存在せず、それらの実施例は、すべて予言であった。
【0012】
ヘテロ接合性α−1,3−GTネガティブブタ細胞の首尾良い産生についての最初の公の開示は、Lake Tahoe Transgenic Animal Conference(David Ayares,ら、PPL Therapeutics,Inc.)において、1999年7月に行なわれた。本発明の前に、ホモ接合性α−1,3−GTネガティブブタ細胞の産生を、誰も公開も公に開示もしなかった。さらに、ブタ胚性幹細胞は、今日まで入手できていないので、生きたホモ接合性α−1,3−GTノックアウトブタを調製することを試みるために、α−1,3−GTホモ接合性胚性幹細胞を使用する方法は、存在しなかったし、今も存在しない。
【0013】
2003年2月27日に、Sharmaら(Transplantation 75:430−436(2003)は、α−1,3−GT遺伝子のノックアウトについて接合性である胎仔ブタ線維芽細胞の首尾良い産生を示す報告を公開した。
【0014】
PCT公開番号WO 00/51424(PPL Therapeuticsに対する)は、核移入のための体細胞の遺伝的改変を記載する。この特許出願は、ブタ体細胞におけるα−1,3−GT遺伝子の遺伝子破壊と、このα−1,3−GT遺伝子の少なくとも1コピーを欠くこれらの細胞の核を核移入のためにその後使用することを開示する。
【0015】
米国特許第6,331,658(CooperおよびKorenに対する)は、シアリルトランスフェラーゼタンパク質またはフコシルトランスフェラーゼタンパク質を発現する遺伝子操作哺乳動物を特許請求するが、その動物を実際に産生したかは何ら確認していない。この特許は、その遺伝子操作哺乳動物が、その哺乳動物の細胞表面上でのガラクトシル化タンパク質の減少を示すと主張する。
【0016】
PCT公開番号WO 03/055302(The Curators of the University of Missouri)は、異種移植において使用するためのヘテロ接合性α−1,3−GTノックアウトミニチュアの産生を確認する。この出願は、概して、破壊されたα−1,3−GT遺伝子を含むノックアウトブタに関し、そのノックアウトブタにおける機能的α−1,3−GTの発現は、野生型と比較して減少してうる。この出願は、そのブタが異種移植のために有用であるようにするのにどの程度α−1,3−GTが減少されなければならないかに関して、何ら指針を提供しない。さらに、この出願は、その産生されたヘテロ接合性ブタが、機能的α−1,3−GTの減少した発現を示したという証拠を何ら提供しない。さらに、この出願は、α−1,3−GTノックアウトブタと言うが、1匹でも実際に産生したかという証拠も、産生可能であるかという証拠も、この出願中に存在せず、いわんや、得られる子孫が、生存可能であるかも、異種移植のために表現型的に有用であるかも、この出願中に証拠は存在しない。
【0017】
ガラクトースα−1,3−ガラクトースを含む糖タンパク質の全体的除去は、明らかに、異種移植用ブタ動物の産生のための最良のアプローチである。α−1,3−GT遺伝子のダブルノックアウト(すなわち、両方のコピーの破壊)が、2つの方法によって作製され得ることが、理論上可能であり、その2つの方法は、1)子孫を産生するために2匹の単一対立遺伝子ノックアウト動物を交配すること(この場合は、メンデルの遺伝学に基づいて、4分の1がダブルノックアウトであるはずであると推定される)、または2)細胞中の第2の対立遺伝子を既存のシングルノックアウトを用いて遺伝子改変することである。実際、これは、ノックアウトブタに関する最初の出願が1993年に出願された一方で、最初のホモ接合性α−1,3−GTノックアウトブタが、2002年7月まで産生されなかった(これが産生されたのは、本発明の作業に基づき、本明細書中に記載された)という事実によって例証されるように、極めて困難であった。
【0018】
トランスジェニックマウス(ブタではない)は、歴史的には、多くの理由のために、哺乳動物の生理に対する遺伝子改変の効果を研究するための好ましいモデルであった。最も重要な理由の1つは、マウス胚性幹細胞が、利用可能であったのに対して、ブタ胚性幹細胞は、利用可能ではなかったことである。マウスは、基本的研究適用のために理想的な動物である。なぜなら、これは、比較的取扱い易く、迅速に増殖し、そして分子レベルで遺伝子操作し得るからである。研究者は、結腸癌から精神遅滞までに及ぶ種々の遺伝子ベースの疾患の分子病理を研究するために、マウスモデルを使用する。数千匹の遺伝子改変マウスが、今日までに作製された。「Mouse Knockout and Mutation Database」が、マウスノックアウトおよび古典的変異に関する表現型および遺伝子型の情報の包括的データベースが提供するために、BioMedNetによって作製された(http ://research.bmn.com/mkmd;Brandonら、Current Biology 5[7]:758−765(1995);;Brandonら、Current Biology 5[8]:873−881(1995))。このデータベースは、3,000個を超える独特の遺伝子に関する情報を提供する。これらの遺伝子は、今日までにマウスゲノムにおいて標的化されている。
【0019】
マウスを用いたこの広範な経験に基づいて、トランスジェニック技術がいくつかの重要な制限を有することが、学ばれた。発生欠損が原因で、遺伝子ノックマウス技術により作製された多くの遺伝子改変マウス(特に、ヌルマウス)は、研究者が実験用モデルを使用する機会を得る前に、胚として死ぬ。そのマウスが生存した場合でさえ、そのマウスは、有意に変化した表現型を発生し得、その表現型により、そのマウスは、重篤に機能不全にされ得るか、変形され得るか、衰弱され得る(Pray,Leslie,The Scientist 16[13]:34(2002);Smith,The Scientist 14[15]:32,(2000);Brandonら、Current Biology 5[6]:625−634(1995);Brandonら、Current Biology 5[7]:758−765(1995);Brandonら、Current Biology 5[8]:873−881(1995);http ://research.bmn.com/mkmd)。さらに、所定の遺伝子がその生物の発生において重要な役割を果たすか否か、従って、その遺伝子の排除により致死的表現型または変化した表現型が生じるか否かを予測することは、そのノックアウトが首尾良く作製されて生存子孫が産生されるまで不可能であることが、学ばれた。
【0020】
マウスは、機能的α−1,3−GT発現を排除するように遺伝子改変された。ダブルノックアウトα−1,3−GTマウスが、作製された。そえは、発生上生存可能であり、正常な器官を有する(Thallら、J Biol Chem 270:21437−40(1995);Tearleら、Transplantation 61:13−19(1996),米国特許第5,849,991号もまた参照のこと)。しかし、これらのマウスにおける2つの表現型異常が、明らかであった。第1に、全てのマウスが、濃い皮質部白内障を発症した。第2に、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子の排除は、そのマウスの発生に有意に影響を与えた。α−1,3−GT遺伝子についてヘテロ接合性のマウスの交配は、推定メンデル1:2:1比から有意に逸脱した遺伝子型比を生じた(Tearleら、Transplantation 61:13−19(1996))。
【0021】
ブタは、マウスにおいて見出されるより100倍〜1000倍高い、ガラクトースα1,3−ガラクトースを含む一定レベルの細胞表面糖タンパク質を有する(Sharmaら、Transplantation 75:430−436(2003);Galiliら、Transplantation 69:187−190(2000))。従って、α−1,3−GT活性は、マウスにおいてよりもブタにおいて、重要でありかつ豊富である。
【0022】
予測および予言的陳述にも関わらず、本発明の前には、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子の破壊が、致死性であるか、またはブタの発生に影響を与えるかもしくは変化した表現型を生じるか否か、誰も知らなかった(Ayaresら、Graft 4(1) 80−85(2001);Sharmaら、Transplantation 75:430−436(2003);Porter & Dallman Transplantation 64:1227−1235(1997);Galili,U.Biochimie 83:557−563(2001))。実際、この分野の多くの専門家は、ホモ接合性α−1,3−GTノックアウトブタが、生存可能であるかに関して、いわんや正常の発生するかに関して、深刻な疑問を表明した。そのような問題は、本発明のダブルノックアウトブタが産生されるまで、表された。当時この分野において作業していた人による陳述の例としては、以下が挙げられる。
【0023】
「豊富に発現されるα−galエピトープは、ブタの発生(例えば、細胞間相互作用)において、いくつかの生物学的役割を有し得る。この仮定が正しい場合、ブタは、このエピトープなしでは発生しないかもしれない(Galili,U.Biochimie 83:557−563(2001)」。
【0024】
「α−galについてのノックアウトブタを産生するのができないことは、α−galエピトープが、この種において不可欠であることを示唆し得る(Galiliら、Transplantation 69:187−190(2000))」。
【0025】
「ダブルノックアウトα−galマウスは、発生して完全に正常なままであるが、この酵素の欠如が他の動物においてより深刻な結果を有し得る可能性が、存在する。(Porter & Dallman Transplantation 64:1227−1235(1997))」。
【0026】
「GT(−/−)ブタは、生存しないかもしれないことがあり得る。なぜなら、GT遺伝子は、胚発生のために必須であるからである。この問題に対する回答および異種移植研究に対するGT(−/−)ブタの関連に対する回答は、可能な場合、適切なブタの産生を待たなければならない(Sharmaら、Transplantation 75:430−436(2003))。
【0027】
「ブタ器官におけるGalエピトープ発現は、マウス器官中より500倍高いので、αGT活性が、ブタにとって重要であり、かつこれらのブタの発生に影響を与え得る可能性が存在する(Ayaresら、Graft 4(1) 80−85(2001))」。
【0028】
従って、生存可能なダブルα−1,3−GTノックアウトブタが産生されるまで、当時の当業者に従うと、(i)子孫が生存可能であるか否かも、(ii)子孫が、ヒト中への移植のためにその器官を使用することが可能である表現型を提示するか否かについても、決定することは可能ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従って、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠く生存可能なブタを提供することが、本発明の目的である。
【0030】
異種移植または他の生医学的適用において使用するために、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠く、ブタ細胞、ブタ組織、およびブタ器官を提供することが、本発明の別の目的である。
【0031】
その細胞表面上にガラクトースα−1,3−ガラクトースエピトープを欠くブタ細胞を選択してスクリーニングする方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0032】
(発明の要旨)
本発明は、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる機能的発現をも欠く最初の生存ブタの産生である。本発明の主題は、2003年にScinece magazineにおいて完全な論説として報道され(Phelpsら(Science 299:411−414(2003))、異種移植における躍進として報道において広範に報告された。
【0033】
機能的α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠く生存可能なブタ動物が産生され得ることが、初めて証明された。本発明は、ブタにおけるα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の両方の対立遺伝子の完全な不活化を提供し、それにより、この長期にわたる障害物を克服して異種移植を現実的にした。この遺伝子の発現を排除すると、細胞表面上でのガラクトースα−1,3−ガラクトースエピトープが欠如する。これは、ブタからヒトへの異種移植治療における超急性拒絶を排除する際の、最初の主要な段階を示す。本発明はまた、そのようなブタ動物に由来する器官、組織、および細胞を提供し、これらは、異種移植のために有用である。
【0034】
本発明の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の対立遺伝子は、不活性にされ、その結果、生じるα−1,3−GT酵素は、もはや、細胞表面上にガラクトースα−1,3−ガラクトースを生成し得ない。一実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、RNAへと転写され得るが、タンパク質には翻訳され得ない。別の実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、不活性な短縮形態で転写され得る。そのような短縮型RNAは、翻訳されないかもしれないし、非機能的タンパク質へと翻訳されるかもしれない。別の実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、その遺伝子の転写が生じない様式で不活化され得る。さらなる実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、転写され得、その後、非機能的タンパク質へと翻訳され得る。
【0035】
別の実施形態において、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠くブタは、ブタ異種移植において可能な遅延性拒絶機構および慢性拒絶機構を克服することを目的として現在開発中のアプローチのより明快な評価を提供するために有用である。
【0036】
本発明の一局面において、α−1,3−GT遺伝子の少なくとも一方の対立遺伝子が、遺伝子標的化事象を介して不活化されているブタ動物が、提供される。本発明の別の局面において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が、遺伝子標的化事象を介して不活化されているブタ動物が、提供される。上記遺伝子は、相同組換えを介して標的化され得る。他の実施形態において、上記遺伝子は、破壊され得る。すなわち、その遺伝コードの一部が変化され得、それにより、その遺伝子のその部分の転写および/または翻訳に影響が与えられ得る。例えば、遺伝子の破壊は、置換技術、欠失(「ノックアウト」)技術、または挿入(「ノックイン」)技術を介して、生じ得る。望ましいタンパク質のさらなる遺伝子、または既存の配列の転写を調節する調節配列が、挿入され得る。
【0037】
α−1,3−GT遺伝子の2つの不活性対立遺伝子を保有するブタは、天然には存在しない。そのようなブタが発生する推定頻度は、10−10〜10−12の範囲であり、未だ同定されていない。
【0038】
本発明の一局面として、α−1,3−GT遺伝子の第2の対立遺伝子を、遺伝子標的化事象を介してノックアウトすることを試みたのだが、その第2の対立遺伝子が不活性になる点変異が同定されたことが、驚くべきことに発見された。α−1,3−GT遺伝子中に点変異を保有するブタは、抗生物質耐性遺伝子を含まず、従って、ヒトでの使用のためにより安全な生成物を生成する能力を有する。従って、本発明の別の局面は、抗生物質耐性遺伝子も他の選択マーカー遺伝子も有さないホモ接合性α−1,3−GTノックアウトである。一実施形態において、この点変異は、遺伝子標的化事象を介して生じ得る。別の実施形態において、この点変異は、天然に存在し得る。さらなる実施形態において、変異は、変異原性因子を介してα−1,3−GT遺伝子において誘導され得る。
【0039】
他の具体的実施形態において、この点変異は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G変異であり得る(図2)。他の実施形態において、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、または少なくとも20個の点変異が存在して、α−1,3−GT遺伝子を不活性にし得る。他の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも防止する点変異を含むブタが、提供される。具体的な実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子中のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G変異を含むブタが、提供される(図2)。
【0040】
本発明の別の局面は、ブタ動物であり、このブタ動物において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活化されており、一方の対立遺伝子は、遺伝子標的化事象により不活化されており、もう一方の対立遺伝子は、点変異により不活化されている。一実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活化されているブタ動物が提供され、一方の対立遺伝子は、遺伝子標的化事象により不活化されており、もう一方の対立遺伝子は、エキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異の存在に起因して不活化されている。具体的実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活化されているブタ動物が提供され、一方の対立遺伝子は、エキソン9に対して指向された標的化構築物(例えば、図6参照)を介して不活化されており、もう一方の対立遺伝子は、エキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異の存在に起因して不活化されている(図2)。例えば、標的化はまた、エキソン9および/またはエキソン4〜8に対してであり得る。
【0041】
さらなる実施形態において、一方の対立遺伝子が、遺伝的標的化事象により不活化され、もう一方の対立遺伝子は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異の存在に起因して不活化される。具体的な実施形態において、一方の対立遺伝子が、エキソン9に対して指向された標的化構築物(例えば、図6参照)により不活化され、もう一方の対立遺伝子は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異の存在に起因して不活化される。別の実施形態において、そのようなブタをクローン化する方法は、卵母細胞を除核する工程;その卵母細胞を、機能的α1,3GTの発現を欠くブタ細胞由来のドナー核と融合する工程;およびその核移入誘導胚を、代理母中に移植する工程を包含する。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(αα−1,3−GT)のいかなる発現をも欠く生存可能なブタを産生するための方法を提供し、この方法は、α−1,3−GT遺伝子についてヘテロ接合性である雄のブタを、α−1,3−GT遺伝子についてヘテロ接合性である雌のブタと交配させる工程による。一実施形態において、そのブタは、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子の発現を防止するようにその一方の対立遺伝子が遺伝子改変されていることに起因して、ヘテロ接合性である。別の実施形態において、そのブタは、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子における点変異の存在に起因して、ヘテロ接合性である。別の実施形態において、その点変異は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異であり得る。具体的な一実施形態において、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠くブタ動物を産生するための方法が、提供され、この方法において、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→G点変異を含む雄のブタが、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→G点変異を含む雌のブタと交配されるか、あるいはその反対に、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→G点変異を含む雌のブタが、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→G点変異を含む雄のブタと交配される。
【0043】
本発明の別の局面において、ブタ細胞が、その細胞表面上にガラクトースα−1,3−ガラクトースを発現するか否かを決定するための選択方法が、提供される。一実施形態において、その選択手順は、ガラクトースα−1,3−ガラクトースの発現を欠く細胞について選択するために、細菌毒素に基づき得る。別の実施形態において、細菌毒素(Clostridium difficileにより産生される毒素A)が、そのような細胞を選択するために使用され得る。C.difficile毒素に対する曝露によって、このエピトープをその表面上に示す細胞の球体化(rounding)が生じ得、プレートマトリックスからそれらの細胞が遊離され得る。酵素機能または酵素発現を無能にする標的化遺伝子ノックアウトおよび変異の両方が、この選択方法を使用して検出され得る。ガラクトースα−1,3−ガラクトースの細胞表面発現を欠く細胞(記載される毒素A媒介性選択を使用して同定されるか、または遺伝子不活化の標準的方法(遺伝子標的化を含む)を使用して生成される)は、その後、機能的α−1,3−GTの発現を欠くブタを生成するために使用され得る。
【0044】
本発明の他の実施形態は、本発明の以下の説明、特許請求の範囲、当該分野で公知の知見を考慮すれば、当業者にとって明らかである。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠く、ブタ。
・(項目2)
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠くブタの、器官。
・(項目3)
腎臓である、項目2に記載の器官。
・(項目4)
肝臓である、項目2に記載の器官。
・(項目5)
心臓である、項目2に記載の器官。
・(項目6)
肺である、項目2に記載の器官。
・(項目7)
膵臓である、項目2に記載の器官。
・(項目8)
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠くブタの、組織。
・(項目9)
軟骨である、項目8に記載の組織。
・(項目10)
骨である、項目8に記載の組織。
・(項目11)
脂肪である、項目8に記載の組織。
・(項目12)
筋肉である、項目8に記載の組織。
・(項目13)
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠くブタに由来する、細胞または細胞株。
・(項目14)
膵臓に由来する、項目13に記載の細胞。
・(項目15)
ランゲルハンス島細胞である、項目14に記載の細胞。
・(項目16)
インスリン分泌細胞である、項目14に記載の細胞。
・(項目17)
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠くブタの産生のための方法であって、
α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子についてヘテロ接合性である雄のブタを、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子についてヘテロ接合性である雌のブタと交配させる工程;
を包含する、方法。
・(項目18)
項目17に記載の方法であって、一方または両方のブタは、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の一方の対立遺伝子の発現を防止するように当該一方の対立遺伝子が遺伝子改変されていることに起因して、ヘテロ接合性である、方法。
・(項目19)
項目17に記載の方法であって、一方または両方のブタは、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の対立遺伝子における点変異の存在に起因して、ヘテロ接合性である、方法。
・(項目20)
項目19に記載の方法であって、上記点変異は、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異である、方法。
・(項目21)
項目17に記載の方法であって、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→G点変異を含む雄のブタが、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→G点変異を含む雌のブタと交配される、方法。
・(項目22)
α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損性非ヒト動物を産生するための方法であって、
(a)細胞集団を、Clostridium difficile毒素Aに対して曝露する工程;
(b)表面マトリックスから盛り上がる細胞は、当該毒素Aのレセプター媒介性細胞毒性に起因して当該毒素Aにより有害に影響されるので、当該細胞を除去する工程;
(c)レセプター媒介性細胞毒性の影響を示さない細胞を増殖させて維持する工程;
(d)これらの毒素A耐性細胞を、適切なレシピエント細胞中への核移植のための核ドナーとして使用する工程;
(e)当該融合した活性化細胞を、雌代理母中に移植する工程;および
(f)galα1,3−galエピトープの欠損または完全な欠如をその細胞表面において示すクローン化動物を産生する工程;
を包含する、方法。
・(項目23)
項目22に記載の方法であって、選択されるべき細胞が、相同組換えによる一方の対立遺伝子の標的化ノックアウトを介して、上記galα1,3対立遺伝子に関してヘテロ接合性にされている、方法。
・(項目24)
項目22に記載の方法であって、選択されるべき細胞が、相同組換えによる両方の対立遺伝子の標的化ノックアウトを介して、上記galα1,3対立遺伝子に関してヘテロ接合性にされている、方法。
・(項目25)
項目22に記載の方法であって、選択されるべき細胞が、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子を無能にする単一のgalα1,3対立遺伝子の自然変異を介して、上記galα1,3対立遺伝子に関してヘテロ接合性にされている、方法。
・(項目26)
項目22に記載の方法であって、選択されるべき細胞は、相同組換えによる一方の対立遺伝子の標的化ノックアウトと第2の対立遺伝子の自然変異とにより作製された、α1,3galダブルノックアウトを保有する、方法。
・(項目27)
項目22に記載の方法であって、選択されるべき細胞が、上記galα1,3対立遺伝子に関してホモ接合性にされており、これは、両方のgalα1,3対立遺伝子の自然変異を介して達成されており、当該自然変異により、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子が無能にされている、方法。
・(項目28)
項目22に記載の方法であって、選択されるべき細胞は、相同組換えによる一方の対立遺伝子の標的化ノックアウトと、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子を無能にする第2の対立遺伝子の自然変異とにより作製された、α1,3galダブルノックアウトを保有する、方法。
・(項目29)
項目22に記載の方法であって、選択されるべき細胞は、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子を無能にする両方の対立遺伝子の誘導性変異を介して、galα1,3対立遺伝子に関してホモ接合性にされている、方法。
・(項目30)
項目22に記載の方法であって、選択のために使用される上記Clostridium difficile毒素Aは、精製毒素の形態である、方法。
・(項目31)
項目22に記載の方法であって、選択のために使用される上記Clostridium difficile毒素Aは、培養上清液の形態である、方法。
・(項目32)
項目22に記載の方法であって、上記精製毒素は、分散した細胞に適用され、当該分散した細胞は、その後、細胞接着のために適切な容器中でインビトロにて培養される、方法。
・(項目33)
項目22に記載の方法であって、上記精製毒素は、接着した細胞に適用される、方法。
・(項目34)
項目22に記載の方法であって、上記培養上清液は、分散した非接着細胞に適用され、その後、当該細胞は、細胞接着のために適切な容器中で培養される、方法。
・(項目35)
項目22に記載の方法であって、上記培養上清液が、適用される、方法。
・(項目36)
項目22に記載の方法であって、上記動物は、ブタである、方法。
・(項目37)
項目22に記載の方法であって、変異は、化学的変異、放射線、およびトランスポゾンからなる群より選択される変異原性因子により誘導される、方法。
・(項目38)
項目22に記載の方法であって、上記化学的変異は、EMS、ENU、マスタードガス、およびICR191からなる群より選択される、方法。
・(項目39)
項目22に記載の方法であって、上記放射線は、紫外線、α線、β線、およびγ線からなる群より選択される、方法。
・(項目40)
galα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子についてのホモ接合性ノックアウトを保有する細胞であって、当該ホモ接合性ノックアウトにおいて、少なくとも一方の対立遺伝子が、galα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子において自然変異または自然発生変異を含み、
当該細胞は、
(a)細胞集団を、Clostridium difficile毒素Aに対して曝露する工程;
(b)当該毒素Aのレセプター媒介性細胞毒性に起因して当該毒素Aにより有害に影響される細胞を除去する工程;および
(c)レセプター媒介性細胞毒性の影響を示さない細胞を増殖させて維持する工程;
を含む方法によって生成される、細胞。
・(項目41)
項目40に記載の細胞であって、当該細胞は、galα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子についてのホモ接合性ノックアウトを保有し、当該ホモ接合性ノックアウトにおいて、少なくとも一方の対立遺伝子が、当該α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の塩基424位においてチミン→グアニンの塩基置換を含み、これにより、galα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質の142位において、チロシン→アスパラギン酸のアミノ酸置換が生じる、細胞。
・(項目42)
項目40に記載の細胞であって、当該細胞は、galα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子についてのホモ接合性ノックアウトを保有し、当該ホモ接合性ノックアウトにおいて、少なくとも一方の対立遺伝子が、当該galα−1,3−ガラクトシルトラン
スフェラーゼ遺伝子において誘導性変異を含む、細胞。
・(項目43)
項目22に記載の方法に従って産生された、動物。
・(項目44)
項目40に記載の細胞を核ドナーとして使用する核移入クローニングによって産生された、動物。
・(項目45)
項目41に記載の細胞を核ドナーとして使用する核移入クローニングによって産生された、動物。
・(項目46)
項目42に記載の細胞を核ドナーとして使用する核移入クローニングによって産生された、動物。
・(項目47)
レシピエントの細胞、組織または器官についてのインビボもしくはエキソビボでの補充または置換として使用するための、項目42に記載の動物から得られる細胞、組織、および器官。
・(項目48)
レシピエントの細胞、組織または器官についてのインビボもしくはエキソビボでの補充または置換として使用するための、項目43に記載の動物から得られる細胞、組織、および器官。
・(項目49)
レシピエントの細胞、組織または器官についてのインビボもしくはエキソビボでの補充または置換として使用するための、項目44に記載の動物から得られる細胞、組織、および器官。
・(項目50)
レシピエントの細胞、組織または器官についてのインビボもしくはエキソビボでの補充または置換として使用するための、項目45に記載の動物から得られる細胞、組織、および器官。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、胎仔680B1−4に由来する細胞に対する補体の相対的溶解効果を示すグラフである。
【図2】図2は、毒素Aにより選択される点変異が存在するα−1,3−GT遺伝子(GenBank登録番号L36152参照)のコード領域の短いセグメントを示す。上側の配列は、野生型中に存在する。下側の配列は、2番目の対立遺伝子における点変異に起因する変化を示す。
【図3】図3は、ウシα−1,3−GTのUDP結合部位の3次元モデルの提示である。チロシン残基(前面、白色)の芳香環は、UDPのウラシル塩基(グレースケール)の近傍において観察され得る。
【図4】図4は、2002年7月25日生まれた、本発明の方法により産生されたホモ接合性α−1,3−GT欠損性クローンブタの写真である。
【図5】図5は、α−1,3−GTノックアウト(KO)マウス中の仔ブタ島様細胞クラスター(ICC)の注入前後の抗α−1,3−gal IgMレベルを示すグラフである。各マウスに、4日間にわたる腹腔内注射(1回の注射当たり200〜500IC)を介して、3回の連続ICC注射を与えた。野生型(WT)仔ブタICCの3つすべてのレシピエントは、抗α−1,3−Gal IgM力価の有意な上昇と、その後の、ICC移植4週間後のベースラインへの回帰とを示した。α−1,3−GTダブルノックアウト(DKO)仔ブタICCを注射した3匹すべてのマウス由来の血清は、35日間の観察時間の間に、抗α−1,3−gal IgM力価の低いベースライン値を維持した(Phelpsら、Science 299:411〜414,2003、図S4)。
【図6】図6は、ブタα−1,3−GT遺伝子座(α−1,3−GTノックアウトベクターにおける5’アームおよび3’アームとして使用し得るα−1,3−GTゲノム配列に対応する)および相同組換え後の標的化遺伝子座の構造の図示である。3’PCRおよびロングレンジ(long−range)PCRのために使用されるプライマーの名前および位置が、短い矢印により示される。短いバーは、α−1,3−GTサザンブロット分析のために使用されるプローブを示す。内因性α−1,3−GT遺伝子座およびα−1,3−GT標的化遺伝子座の両方についてのBstEII消化したサザンバンドの推定サイズもまた、示される。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼのいかなる発現をも欠く生存可能なブタ動物が、産生され得ることを、ここに証明した。本発明は、ブタにおけるα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の両方の対立遺伝子の完全な不活化を提供し、それにより、この長期にわたる障害物を克服し、異種移植を現実的にする。この遺伝子の発現を排除すると、細胞表面上でのガラクトースα−1,3−ガラクトースエピトープが欠如する。これは、ブタからヒトへの異種移植治療における超急性拒絶を排除する際の、最初の主要な段階を示す。本発明はまた、そのようなブタ動物に由来する器官、組織、および細胞を提供し、これらは、異種移植のために有用である。
・一局面において、本発明は、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠くブタから得られる、ブタの器官、組織および/または精製された細胞もしくは細胞株もしくは実質的な純粋な細胞もしくは細胞株を提供する。別の実施形態において、本発明は、異種移植のために有用な器官または組織を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、異種移植のために有用な細胞または細胞株を提供する。
【0047】
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「動物」(遺伝子改変(または遺伝子変化)動物におけるような)は、任意の非ヒト動物、特に任意の非ヒト哺乳動物(ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ(cattle)(ウシ(bovine))、シカ、ラバ、ウマ、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、鳥類、ニワトリ、爬虫類、魚類および昆虫が挙げられるが、これらに限定されない)を包含する。本発明の一実施形態において、遺伝子改変ブタおよびその産生方法が、提供される。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「器官(臓器)」とは、組織化された構造物であり、これは、1つ以上の組織から構成され得る。「器官(臓器)」とは、1つ以上の具体的な生物学的機能を実施する。器官(臓器)としては、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、甲状腺、および皮膚が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「組織」とは、細胞と、その細胞を取り囲む細胞間物質とを含む、組織化された構造物である。「組織」は、単独で、または他の細胞もしくは組織と組み合わせて、1つ以上の生物学的機能を実施し得る。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「ブタ(porcine)」、「ブタ動物」、「ブタ(pig)」および「ブタ(swine)」とは、性別にも、大きさにも、品種にも関わりなく、同じ型の動物を指す一般的な用語である。
【0051】
(I.α−1,3−GT遺伝子の遺伝子標的化)
本発明の一局面において、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子が、遺伝子標的化を介して不活化されている、ブタ動物が提供される。本発明の別の局面において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が、遺伝子標的化を介して不活化されている、ブタ動物が提供される。一実施形態において、上記遺伝子は、相同組換えを介して標的化され得る。他の実施形態において、上記遺伝子は、破壊され得る。すなわち、その遺伝コードの一部が変化され得、それにより、その遺伝子のその部分の転写および/または翻訳に影響が与えられ得る。例えば、遺伝子の破壊は、置換技術、欠失(「ノックアウト」)技術、または挿入(「ノックイン」)技術を介して、生じ得る。望ましいタンパク質のさらなる遺伝子、または既存の配列の転写を調節する調節配列が、挿入され得る。
【0052】
本発明の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性になっており、その結果生じるα−1,3−GT酵素は、もはや、細胞表面上にガラクトースα−1,3−ガラクトースを生成し得ない。一実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、RNAへと転写され得るが、タンパク質には翻訳され得ない。別の実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、短縮形態で転写され得る。そのような短縮型RNAは、翻訳されないかもしれないし、非機能的タンパク質へと翻訳されるかもしれない。別の実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、その遺伝子の転写が生じない様式で不活化され得る。さらなる実施形態において、そのα−1,3−GT遺伝子は、転写され得、その後、非機能的タンパク質へと翻訳され得る。
【0053】
α−1,3−GT遺伝子の2つの不活性対立遺伝子を保有するブタは、天然には存在しない。α−1,3−GT遺伝子の第2の対立遺伝子を、遺伝子標的化事象を介してノックアウトすることを試みたのだが、その第2の対立遺伝子が機能的α1,3GTを生成するのを防ぐ点変異が同定されたことが、驚くべきことに発見された。
【0054】
従って、本発明の別の局面において、α−1,3−GT遺伝子は、少なくとも1つの点変異を介して不活性にされ得る。一実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子は、少なくとも1つの点変異を介して不活性にされ得る。別の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子は、少なくとも1つの点変異を介して不活性にされ得る。一実施形態において、この点変異は、遺伝子標的化事象を介して生じ得る。別の実施形態において、この点変異は、天然に存在し得る。さらなる実施形態において、変異は、変異原性因子を介してα−1,3−GT遺伝子において誘導され得る。
【0055】
1つの具体的実施形態において、この点変異は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G変異であり得る(図2)。α−1,3−GT遺伝子中に天然に存在する点変異を保有するブタは、抗生物質耐性遺伝子を含まないα−1,3−GT欠損ブタの産生を可能にし、従って、ヒトでの使用のためにより安全な生成物を生成する能力を有する。他の実施形態において、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、または少なくとも20個の点変異が存在して、α−1,3−GT遺伝子を不活性にし得る。他の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも防止する点変異を含むブタが、提供される。具体的な実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子中のエキソン9の2番目の塩基におけるT→G変異を含むブタが、提供される(図2)。
【0056】
本発明の別の局面は、ブタ動物を提供し、このブタ動物において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活化されており、一方の対立遺伝子は、遺伝子標的化事象により不活化されており、もう一方の対立遺伝子は、変異により不活化されている。一実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活化されているブタ動物が提供され、一方の対立遺伝子は、遺伝子標的化事象により不活化されており、もう一方の対立遺伝子は、エキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異の存在に起因して不活化されている。具体的実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活化されているブタ動物が提供され、一方の対立遺伝子は、エキソン9に対して指向された標的化構築物(例えば、図6参照)を介して不活化されており、もう一方の対立遺伝子は、エキソン9の2番目の塩基におけるT→G点変異の存在に起因して不活化されている。
【0057】
(ブタ細胞の型)
遺伝子改変され得るブタ細胞は、種々の異なる器官および組織から得られ得る。その器官および組織は、例えば、以下であるが、これらに限定されない:皮膚、間葉、肺、膵臓、心臓、腸、胃、膀胱、血管、腎臓、尿道、生殖器官、ならびに胚、胎児もしくは成体動物の全体もしくは一部の分解(disaggregated)調製物。本発明の一実施形態において、ブタ細胞は、以下からなる群(これらに限定されない)より選択され得る:上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラノサイト、軟骨細胞、リンパ球(BおよびT)、マクロファージ、単球、単核細胞、心筋細胞、その他の筋細胞、肉芽腫細胞、卵丘細胞、表皮細胞、内皮細胞、ランゲルハンス島細胞、血球、血液前駆細胞、骨細胞、骨前駆体細胞、神経幹細胞、始原幹細胞,肝細胞、ケラチノサイト、臍静脈内皮細胞、大動脈内皮細胞、毛細血管内皮細胞、線維芽細胞、肝臓星細胞、大動脈平滑筋細胞、心筋細胞、ニューロン、クップファー細胞、平滑筋細胞、シュヴァン細胞、および上皮細胞、赤血球、血小板、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、脂肪細胞、軟骨細胞、膵臓島細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、耳下腺細胞、腫瘍細胞、グリア細胞、星状細胞、赤血球細胞、白血球細胞、マクロファージ、上皮細胞、体細胞、下垂体細胞、副腎細胞、毛細胞、膀胱細胞、腎臓細胞、網膜細胞、桿細胞、錐体細胞、心臓細胞、ペースメーカー細胞、脾臓細胞、抗原提示細胞、記憶細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、筋肉細胞、卵巣細胞、子宮細胞、前立腺細胞、膣上皮細胞、精子細胞、精巣細胞、生殖細胞、卵細胞、ライディヒ細胞、管周細胞、セルトーリ細胞、黄体細胞、子宮頸部細胞、子宮内膜細胞、乳腺細胞、卵胞細胞、粘液細胞、繊毛細胞、非角化上皮細胞、角化上皮細胞、肺細胞、杯細胞、円柱上皮細胞、扁平上皮細胞、骨細胞、骨芽細胞、および破骨細胞。
【0058】
別の一実施形態において、胚性幹細胞が、使用され得る。胚性幹細胞株が、使用され得るか、または胚性幹細胞が、宿主(例えば、ブタ動物)から新たに得られ得る。この細胞は、適切な線維芽細胞フィーダー層において増殖され得るか、または白血病抑制因子(LIF)の存在下で増殖され得る。好ましい実施形態において、上記ブタ細胞は、線維芽細胞であり得る。具体的実施形態において、上記ブタ細胞は、胎児線維芽細胞であり得る。線維芽細胞は、好ましい体細胞型である。なぜなら、この細胞は、発生中の胎児および成体動物から大量に得られ得るからである。これらの細胞は、迅速な倍加時間でインビトロにて容易に増殖され得、そして遺伝子標的化手順において使用するためにクローン的に増殖され得る。
【0059】
(標的化構築物)
(相同組換え)
相同組換えにより、内因性遺伝子の部位特異的改変が可能になり、従って、新規な変化が、ゲノム中に操作され得る。相同組換えにおいて、入って来るDNAが、実質的に相同なDNA配列を含むゲノム部位と相互作用してその部位中に組み込む。非相同(「ランダム」または「不法(illicit)」組み込みにおいて、この入って来るDNAは、そのゲノム中の相同性配列においては見出されないが、多数の可能な位置のうちの1つにおいて、どこででも組み込む。一般に、高等真核細胞を用いる研究により、相同組換えの頻度は、ランダム組み込みの頻度より遥かに小さいことが、明らかになっている。これらの頻度の比率は、「遺伝子標的化」についての直接的関係を有し、これは、相同組換え(すなわち、内因性「標的化DNA」と、ゲノム中の対応する「標的DNA」との間の組換え)を介する組み込みに依存する。
【0060】
多数の論文が、哺乳動物細胞における相同組換えの使用を記載する。これらの論文の例示は、Kucherlapatiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3153−3157,1984;Kucherlapatiら、Mol.Cell.Bio.5:714−720,1985;Smithiesら、Nature 317:230−234,1985;Wakeら、Mol.Cell.Bio.8:2080−2089,1985;Ayaresら、Genetics 111:375−388,1985;Ayaresら、Mol.Cell.Bio.7:1656−1662,1986;Songら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:6820−6824,1987;Thomasら、Cell 44:419−428,1986;Thomas and Capecchi,Cell 51:503−512,1987;Nandiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3845−3849,1988;and Mansourら、Nature 336:348−352,1988.EvansおよびKaufman,Nature 294:146−154,1981;Doetschmanら、Nature 330:576−578,1987;ThomaおよびCapecchi,Cell 51:503−512,4987;Thompsonら、Cell 56:316−321,1989である。
【0061】
本発明は、細胞(例えば、上記のブタ細胞)におけるα−1,3−GT遺伝子を不活化するために相同組換えを使用する。このDNAは、ネイティブ遺伝子の少なくとも1コピー(必要に応じて両方のコピー)中に、機能的α−1,3−GTの発現を防止するように変化が導入された、上記遺伝子の少なくとも一部を特定の遺伝子座に含み得る。この変化は、挿入、欠失、置換、またはその組み合わせであり得る。その変化が、不活化されている遺伝子の1コピーのみに導入される場合、標的遺伝子の単一の非変異コピーを有する細胞が、増幅され、第2の標的化工程に供され得、この第2標的化工程において、上記変化は、第1変化と同じであっても異なっていてもよく、通常は異なり、欠失または置換が関与する場合には、元々導入された変化の少なくとも一部と重複し得る。この第2の標的化工程において、同じ相同性アームを有するが異なる哺乳動物選択マーカーを含む標的化ベクターが、使用され得る。生じる形質転換体は、機能的標的抗原が存在しないことについてスクリーニングされ、そしてその細胞のDNAは、野生型遺伝子が存在しないことを確実にするためにさらにスクリーニングされ得る。あるいは、表現型に関するホモ接合性が、上記変異についてヘテロ接合性である宿主を交配することによって、達成され得る。
【0062】
(標的化ベクター)
細胞の標的化遺伝子座の改変は、その細胞中にDNAを導入することによって作製され得、そのDNAは、標的遺伝子座に対する相同性を有し、マーカー遺伝子を含み、これにより、組み込まれた構築物を含む細胞の選択が可能になる。この標的ベクター中の相同性DNAは、標的遺伝子座において染色体DNAと組換わる。そのマーカー遺伝子は、両側で、相同性DNA配列、3’組換えアーム、および5’組換えアームと隣接し得る。標的化ベクターを構築するための方法は、当該分野で、例えば、Daiら、Nature Biotechnology 20:251−255,2002;WO 00/51424の図6において記載されている。
【0063】
種々の構築物が、標的遺伝子座における相同組換えのために調製され得る。この構築物は、標的遺伝子座と相同な少なくとも50bp、100bp、500bp、lkbp、2kbp、4kbp、5kbp、10kbp、15kbp、20kbpまたは50kbpの配列を含み得る。この配列は、ブタα−1,3−GT遺伝子の任意の連続配列(例えば、GenBank登録番号L36152,W00130992(The University of Pittsburgh of the Commonwealth System of Higher Educationに対する);WO01/123541(Alexion,Inc.に対する)参照のこと)を含み得る。
【0064】
種々の考慮事項が、標的DNA配列の相同性の程度を決定する際に関与し得、それは例えば、標的遺伝子座の大きさ、配列の利用可能性、標的遺伝子座におけるダブルクロスオーバー事象の相対的効率、および他の配列とその標的配列との類似性である。
【0065】
その標的化DNAは、実質的に同系であるDNAが、改変されるべきゲノム中の対応標的配列を伴う望ましい配列改変と隣接している、配列を含み得る。その実質的に同系の配列は、対応標的配列と少なくとも約95%、少なくとも約97〜約98%、少なくとも約99.0〜約99.5%、少なくとも約99.6%〜約99.9%または少なくとも約100%同一であり得る(望ましい配列改変を除く)。その標的化DNAと標的DNAとは、100%同一である少なくとも約75塩基対、少なくとも約150塩基対、または少なくとも約500塩基対のDNAストレッチを好ましくは共有し得る。従って、標的化DNAは、標的化される細胞株と近縁の細胞に由来し得るか、または標的化DNAは、標的化される細胞と同じ細胞株もしくは動物の細胞に由来し得る。
【0066】
そのDNA構築物は、内因性の標的α−1,3−GTを改変するように設計され得る。その構築物を標的化するための相同性配列は、1つ以上の欠失、挿入、置換、またはそれらの組み合わせを有し得る。その変化は、標的遺伝子の上流配列と読み取り枠で融合した選
択マーカー遺伝子の挿入であり得る。
【0067】
適切な選択マーカー遺伝子としては、特定の培地基質において増殖する能力を付与する遺伝子(例えば、tk遺伝子(チミジンキナーゼ)またはhprt遺伝子(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)(これは、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)において増殖する能力を付与する);細菌gpt遺伝子(グアニン/キサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)(これは、MAX培地(ミコフェノール酸、アデニン、およびキサンチン)における増殖を可能にする))が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Song,K−Y.,ら、Proc.Nat’1 Acad.Sci.U.S.A.84:6820−6824(1987);Sambrook,J.,ら、Molecular Cloning−−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989),Chapter 16参照のこと。選択マーカーの他の例としては、抗生物質などの化合物に対する耐性を付与する遺伝子、選択された基質において増殖する能力を付与する遺伝子、検出可能なシグナル(例えば、発光)を生成するタンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、増強型緑色蛍光タンパク質(eGFP))をコードする遺伝子が挙げられる。広範な種類のそのようなマーカーが、公知であり、かつ利用可能である。それらとしては、例えば、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)(Southern,P.およびP.Berg,J.Mol.Appl.Genet.1:327−341(1982));ならびにハイグロマイシン耐性遺伝子(hyg)(Nucleic Acids Research 11:6895−6911(1983)およびTe Riele,H.,ら、Nature 348:649−651(1990))が挙げられる。他の選択マーカー遺伝子としては、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、β−グルコロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(CFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン(lincomycin)、メトトレキサート、ホスフィノトリシン(phosphinothricin)、ピューロマイシン(puromycin)、およびテトラサイクリンに対する耐性を付与する、複数の選択マーカーが利用可能である。
【0068】
抗生物質耐性遺伝子およびネガティブ選択因子を組み込むための方法には、当業者は精通している(例えば、WO 99/15650;米国特許第6,080,576号;米国特許第6,136,566号;Niwaら、J.Biochem.113:343−349(1993);およびYoshidaら、Transgenic Research 4:277−287(1995))を参照のこと)。
【0069】
(表1:検出可能なシグナルを発する選択マーカー)
【0070】
【表1−1】

【0071】
【表1−2】

【0072】
【表1−3】

【0073】
【表1−4】

【0074】
【表1−5】


選択マーカーの組み合わせもまた、使用され得る。例えば、標的α−1,3−GTに、neo遺伝子(上記で考察されるように、それ自体のプロモーターを含むかまたは含まない)が、α−1,3−GTに対して相同性であるDNA配列中にクローン化され得る。マーカーの組み合わせを使用するために、HSV−tk遺伝子が、この遺伝子が標的化DNAの外側にあるようにクローン化され得る(別の選択マーカーが、望ましい場合には、反対側に配置され得る)。標的化されるべき細胞中にそのDNA構築物を導入した後、その細胞は、適切な抗生物質上で選択され得る。この特定の場合において、G418およびガンシクロビルに対して耐性である細胞が、neo遺伝子がα−1,3−GT遺伝子中に組み換えられたがtk遺伝子が失われた相同組換えにより生じた可能性が最も高い。なぜなら、tk遺伝子は、このダブルクロスオーバーの領域の外側に位置したからである。
【0075】
欠失は、少なくとも約50bpであり得、より通常には、少なくとも100bp、一般的には、約20kbp以下であり得、その欠失は、通常は、1つ以上のエキソンの一部、1つ以上のイントロンの一部を含む、コード領域の少なくとも一部を含み、そして隣接非コード領域(特に、5’非コード領域(転写調節領域))の一部を含んでも含まなくてもよい。従って、その相同性領域は、上記コード領域を越えて5’非コード領域あるいは3’非コード領域中にまで広がり得る。挿入は、一般的には、10kbpを超えず、通常は、5kbpを超えず、一般的には、少なくとも50bpであり、より通常には少なくとも200bpであり得る。
【0076】
相同性の領域は、変異を含み得、その変異は、標的遺伝子をさらに不活化して、フレームシフトを提供するかもしくは重要なアミノ酸を変化し得るか、またはその変異は、機能不全対立遺伝子を矯正し得るなどである。その変異は、相同性隣接配列の微妙な変化(約5%を超えない)であり得る。遺伝子の変異が望ましい場合、そのマーカー遺伝子は、イントロンまたはエキソン中に挿入され得る。
【0077】
その構築物は、当該分野で公知である方法に従って調製され得、種々のフラグメントが一緒にされ、適切なベクター中に導入され、クローン化され、分析され、その後、望ましい構築物が達成されるまでさらに操作され得る。種々の改変が、その配列になされて、制限分析、切り出し、プローブの同定などが可能になり得る。サイレント変異が、望ましい場合に導入され得る。種々の段階において、制限分析、配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応による増幅、プライマー修復、インビトロ変異誘発などが、使用され得る。
【0078】
その構築物は、細菌ベクター(原核生物複製系(例えば、E.coliにより認識可能な起点)を含む)を使用して調製され得、各段階にて、その構築物は、クローン化され分析され得る。マーカー(これは、挿入のために使用されるマーカーと同じであるかまたは異なる)が、使用され得、このマーカーは、標的細胞中に導入する前に除去され得る。一旦、この構築物を含むベクターが完成すると、このベクターは、例えば、細菌配列の欠失、線状化、相同性配列中での短い欠失の導入によって、さらに操作され得る。最終的操作の後、この構築物は、上記細胞中に導入され得る。
【0079】
本発明は、α−1,3−GT遺伝子の配列を含む組換え構築物をさらに含む。この構築物は、ベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)を含み、そのベクター中に、本発明の配列が、順方向または逆方向に挿入されている。この構築物はまた、上記配列に作動可能に連結された、調節配列(例えば、プロモーターを含む)を含み得る。多数の適切なベクターおよびプロモーターが、当業者にとって公知であり、そして市販されている。以下のベクターが、例として提供される。細菌ベクター:pBs,pQE−9(Qiagen),phagescript,PsiX174,pBluescript SK,pBsKS,pNH8a,pNH16a,pNH18a,pNH46a(Stratagene);pTrc99A,pKK223−3,pKK233−3,pDR540,pRIT5(Pharmacia)。真核生物ベクター:pWLneo,pSv2cat,pOG44,pXTl,pSG(Stratagene) pSVK3,pBPv,pMSG,pSVL(Pharmiacia);ウイルス起源ベクター(M13ベクター、細菌ファージ1ベクター、アデノウイルスベクター、およびレトロウイルスベクター)、高コピー数ベクター、低コピー数ベクター、および調節可能なコピー数のベクター、単一宿主において組み合わせて使用するために適合性レプリコンを有するベクター(pACYC184およびpBR322)、ならびに真核生物エピソーム複製ベクター(pCDM8)。他のベクターとしては、以下が挙げられる:原核生物発現ベクター(例えば、pcDNA II,pSL301,pSE280,pSE380,pSE420,pTrcHisA,B,およびC;pRSET A,B,およびC(Invitrogen,Corp.),pGEMEX−l,およびpGEMEX−2(Promega,Inc.),pETベクター(Novagen,Inc.),pTrc99A,pKK223−3,pGEXベクター,pEZZ18,pRIT2T,およびpMC1871(Pharmacia,Inc.),pKK233−2およびpKK388−1(Clontech,Inc.),およびpProEx−HT(Invitrogen,Corp.)、ならびにそれらの改変体および誘導体。他のベクターとしては、以下が挙げられる:真核生物発現ベクター(例えば、pFastBac,pFastBacHT,pFastBacDUAL,pSFV,およびpTet−Splice(Invitrogen),pEUK−Cl,pPUR,pMAM,pMAMneo,pBI101,pBI121,pDR2,pCMVEBNA,およびpYACneo(Clontech),pSVK3,pSVL,pMSG,pCH110,およびpKK232−8(Pharmacia,Inc.),p3’SS,pXTl,pSG5,pPbac,pMbac,pMClneo,and pOG44(Stratagene,Inc.),およびpYES2,pAC360;pBlueBacHis A,B,およびC;pVL1392,pBlueBacIII,pCDM8,pcDNA1,pZeoSV,pcDNA3 pREP4,pCEP4,およびpEBVHis(Invitrogen,Corp.)、ならびにそれらの改変体および誘導体。使用され得るさらなるベクターとしては、以下が挙げられる:pUC18,pUC19,pBlueScript,pSPORT,コスミド、ファージミド、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、PI(Escherichia coliファージ)、pQE70,pQE60,pQE9(quagan),pBSベクター、PhageScriptベクター、BlueScriptベクター、pNH8A,pNH16A,pNH18A,pNH46A(Stratagene),pcDNA3(Invitrogen),pGEX,pTrsfus,pTrc99A,pET−5,pET−9,pKK223−3,pKK233−3,pDR540,pRIT5(Pharmacia),pSPORT1,pSPORT2,pCMVSPORT2.0およびpSV−SPORT1(Invitrogen),pTrxFus,pThioHis,pLEX,pTrcHis,pTrcHis2,pRSET,pBlueBacHis2,pcDNA3.1/His,pcDNA3.1(−) /Myc−His,pSecTag,pEBVHis,pPIC9K,pPIC3.5K,pA0815,pPICZ,PPICZ□,PGAPZ,PGAPZ□,pBlueBac4.5,pBlueBacHis2,pMelBac,pSinRep5,pSinHis,pIND,pIND(SPl),pVgRXR,pcDNA2.1,pYES2,pZErOl.1,pZErO−2.1,pCR−Blunt,pSE280,pSE380,pSE420,pVL1392,pVL1393,pCDM8,pcDNAl.l,pcDNAl.l/Amp,pcDNA3.1,pcDNA3.1/Zeo,pSe,SV2,pRc/CMV2,pRc/RSV,pREP4,pREP7,pREP8,pREP9,pREP 10,pCEP4,pEBVHis,pCR3.1,pCR2.1,pCR3.1−Uni,およびpCRBac(Invitrogenから);□ ExCell,□ gtll,pTrc99A,pKK223−3,pGEX−1□T,pGEX−2T,pGEX−2TK,pGEX−4T−1,pGEX−4T−2,pGEX−4T−3,pGEX−3X,pGEX−5X−1,pGEX−5X−2,pGEX−5X−3,pliZZ18,pRIT2T,pMC1871,pSVK3,pSVL,pMSG,pCH110,pKK232−8,pSL1180,pNEOおよび UC4K(Pharmaciaから);pSCREEN−lb(+),pT7Blue(R),pT7Blue−2,pCITE−4abc(+),pOCUS−2,pTAg,pET−32LIC,pET−30LIC,pBAC−2cp LIC,pBACgus−2cp LIC,pT7Blue−2 LIC,pT7Blue−2,□SCREEN−1,□BlueSTAR,pET−3abcd,pET−7abc,pET9abcd,pET11abcd,pET12abc,pET−14b,pET−15b,pET−16b,pET−17b−pET−17xb,pET−19b,pET−20b(+),pET−21abcd(+),pET−22b(+),pET−23abcd(+),pET−24abcd(+),pET−25b(+),pET−26b(+),pET−27b(+),pET−28abc(+),pET−29abc(+),pET−30abc(+),pET−31b(+),pET−32abc(+),pET−33b(+),pBAC−1,pBACgus−1,pBAC4x−1,pBACgus4x−1,pBAC−3cp,pBACgus−2cp,pBACsurf−1,plg,Signal plg,pYX,Selecta Vecta−Neo,Selecta Vecta−HygおよびSelecta Vecta−Gpt(Novagenから);pLexA,pB42AD,pGBT9,pAS2−1,pGAD424,pACT2,pGAD GL,pGAD GH,pGAD10,pGilda,pEZM3,pEGFP,pEGFP−1,pEGFP−N,pEGFP−C,pEBFP,pGFPuv,pGFP,p6xHis−GFP,pSEAP2−Basic,pSEAP2−Contral,pSEAP2−Promoter,pSEAP2−Enhancer,plGgal−Basic,p[lgal−Control,pUgal−Promoter,pGgal−Enhancer,pCMVD,pTet−Off,pTet−On,pTK−Hyg,pRetro−Off,pRetro−On,pIRESlneo,pIRESlhyg,pLXSN,pLNCX,pLAPSN,pMAMneo,pMAMneo−CAT,pMAMneo−LUC,pPUR,pSV2neo,pYEX4T−1/2/3,pYEX−Sl,pBacPAK−His,pBacPAK8/9,pAcUW31,BacPAK6,pTriplEx,pRS404,pRS405,pRS406,pRS413,pRS414,pRS415,およびpRS416(Stratageneから)、ならびにそれらの改変体および誘導体。ツーハイブリッドベクターおよび逆ツーハイブリッドベクター(pPC86,pDBLeu,pDBTrp,pPC97,p2.5,pGAD1−3、pGAD10、pACt、pACT2、pGADGL、pGADGH、pAS2−1、pGAD424、pGBT8、pGBT9、pGAD−GAL4、pLex4、pBD−GAL4、pHISi、pHISi−1、pLacZi、pB42AD、pDG202、pJK202、pJG4−5、pNLexA、pYESTrp、ならびにそれらの改変体または誘導体)もまた、使用され得る。他の任意のプラスミドおよびベクターが、宿主において複製可能でありかつ生存可能である限りにおいては、使用され得る。
【0080】
上記DNA構築物が宿主細胞中に侵入するのを可能にするために使用され得る技術としては、リン酸カルシウム/DNA共沈、核中へのDNAのマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、インタクトな細胞との細菌プロトプラスト融合、トランスフェクション、または当業者に公知の他の任意の技術が挙げられる。このDNAは、一本鎖DNAであっても、二本鎖DNAであっても、線状DNAであっても環状DNAであっても、弛緩型DNAであってもスーパーコイル状DNAであってもよい。哺乳動物細胞をトランスフェクトするための種々の技術については、例えば、Keownら、Methods in Enzymology,Vol.185,pp.527|537(1990)を参照のこと。
【0081】
具体的な一実施形態において、ヘテロ接合性ノックアウト細胞が、同系DNAから単離したα−1,3−GT配列を含むノックアウトベクターを用いて、初代ブタ胎仔線維芽細胞をトランスフェクションすることによって、生成され得る。Daiら(Nature Biotechnology,20:451〜455)に記載されるように、5’アームは、4.9kbであり得、イントロン8の大きなフラグメントと、エキソン9の5’末端から構成され得る。その3’アームは、エキソン9配列であり得、そしてエキソン9配列を含み得る。そのベクターは、プロモーター捕捉ストラテジーを、例えば、IRES(内部リボソーム侵入部位)を使用して組み込んで、Neor遺伝子の翻訳を開始し得る(例えば、図6参照)。
【0082】
(相同組み換えした細胞の選択)
その後、上記細胞は、適切な組換え体を提供する細胞を同定するために、適切に選択された培地中で増殖され得る。α−1,3−GT遺伝子中に挿入された選択マーカー遺伝子の存在は、宿主ゲノム中への上記標的構築物の組み込みを確立する。その後、望ましい表現型を示す細胞が、相同組み換えまたは非相同組み換えが生じたか否かを確立するために、DNAを分析するための制限分析、電気泳動、サザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応などによりさらに分析され得る。これは、上記挿入物のプローブを使用すること、その後、その挿入物に隣接する5’領域および3’領域を、上記構築物の隣接領域を越えて広がるα−1,3−GT遺伝子の存在について配列決定すること、または欠失の存在(そのような欠失が導入された場合には)を同定することによって、決定され得る。上記構築物内の配列と相補的でありかつ上記構築物の外側および標的遺伝子座にある配列と相補的である、プライマーもまた使用され得る。この様式で、相同組み換えが生じた場合には、相補鎖中に存在するプライマーの両方を有するDNA二重鎖のみを獲得し得る。上記プライマー配列または予測されるサイズの配列の存在を示すことによって、相同組み換えの発生が、支持される。
【0083】
相同組み換え事象をスクリーニングするために使用されるポリメラーゼ連鎖反応は、当該分野で公知である。例えば、KimおよびSmithies,Nucleic Acids Res.16:8887−8903,1988;ならびにJoynerら、Nature 338:153−156,1989.を参照のこと。変異体ポリオーマエンハンサーと、ネオマイシン遺伝子を駆動するためのチミジンキナーゼプロモーターとの特異的組み合わせは、胚性幹細胞およびEC細胞の両方において活性であることが、ThomasおよびCapecchi(前出),1987;NicholasおよびBerg(1983)Teratocarcinoma Stem Cell,Siver,MartinおよびStrikland編(Cold Spring Harbor Lab.,Cold Spring Harbor,N.Y.(pp.469−497);ならびにLinneyおよびDonerly,Cell 35:693−699,1983によって、示された。
【0084】
第1回の標的化から得られる細胞株は、標的化対立遺伝子についてヘテロ接合性である可能性がある。両方の対立遺伝子が改変されているホモ接合性は、多数の方法で達成され得る。1つのアプローチは、1コピーが改変されている多数の細胞を増殖させること、その後、これらの細胞を、さらにもう1回、異なる選択マーカーを使用する標的化に供することである。あるいは、ホモ接合性は、改変された対立遺伝子についてヘテロ接合性である動物を、伝統的メンデル遺伝学に従って交配することによって、獲得され得る。いくつかの状況において、2つの異なる改変対立遺伝子を有することが、望ましくあり得る。これは、連続回の遺伝子標的化によってか、またはヘテロ接合体(その各々が、望ましい改変対立遺伝子のうちの一方を保有する)を交配することによって、達成され得る。
【0085】
(α−1,3−GT遺伝子座において誘導された変異)
他の特定の実施形態において、本発明の方法は、変異原性因子を介する変異の意図的導入を包含する。当該分野で公知であり、本発明における使用のために適切な、変異原性因子の例としては、化学的変異原(例えば、DNAインターカレート剤、またはDNA結合化学物質(例えば、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)、エチルメタンスルホネート(EMS)、マスタードガス、ICR191など))(例えば、E.C.Friedberg,G.C.Walker,W.Siede,DNA Repair and Mutagenesis,ASM Press,Washington DC(1995)参照)、物理的変異原(例えば、紫外線、放射線、X線)、生化学的変異原(例えば、制限酵素、DNA修復変異原、DNA修復インヒビター、およびエラープローンDNAポリメラーゼおよび複製タンパク質)、ならびにトランスポゾン挿入が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法に従って、培養中の細胞が、これらの因子のうちの1つに曝露され得、細胞表面上でのガラクトシダーゼα−1,3−ガラクトースの除去をもたらす任意の変異が、例えば、毒素Aに対する曝露を介して、選択され得る。
【0086】
細胞において変異を誘導するための化学的変異原の好ましい用量は、当該分野で公知であるか、または当該分野で公知の変異誘発アッセイを使用して当業者により容易に決定され得る。インビトロでの細胞の化学的変異誘発は、上記細胞を種々の用量の上記変異原性因子で処理すること、および/または上記因子に対する曝露時間を制御することによって、達成され得る。上記変異原性因子の曝露および/または用量を力価測定することによって、意図した目的のために最適な程度の変異誘発を実行し、それによって、各標的細胞において望ましい数の遺伝子を変異させることが、可能である。例えば、有用なENU用量は、約1〜約2時間の間に0.1mg/ml〜0.4mg/mlであり得る。別の例において、有用なEMS用量は、約10〜約30時間の間に、0.1mg/ml〜1mg/mlであり得る。さらに、より低用量および高用量、ならびにより長い曝露時間およびより短い曝露時間もまた、望ましい変異頻度を達成するために使用され得る。
【0087】
(II.機能的α−1,3−GTを発現しない細胞の同定)
本発明の別の局面において、ブタ細胞が機能的α−1,3−GTの発現を欠くか否かを決定するための選択方法が、提供される。
【0088】
一実施形態において、上記選択手順は、機能的α−1,3−GTの発現を欠く細胞を選択するために、細菌毒素に基づき得る。別の実施形態において、上記細菌毒素(Clostridium difficileにより産生される毒素A)が、細胞表面エピトープのガラクトースα−1,3−ガラクトースを欠く細胞を選択するために使用され得る。C.difficile毒素に対する曝露によって、このエピトープをその表面上に示す細胞の球体化(rounding)が生じ得、プレートマトリックスからそれらの細胞が遊離され得る。酵素機能または酵素発現を無能にする標的化遺伝子ノックアウトおよび変異の両方が、この選択方法を使用して検出され得る。ガラクトースα−1,3−ガラクトースエピトープの細胞表面発現を欠く細胞(記載される毒素A媒介性選択を使用して同定されるか、または遺伝子不活化の標準的方法(遺伝子標的化を含む)を使用して生成される)は、その後、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性であるブタを生成するために使用され得る。
【0089】
一実施形態において、上記選択方法は、α−1,3−GTエピトープの欠如を直接検出し得、これは、その欠如が、相同組み換えによるα−1,3−GT遺伝子の標的化ノックアウトに起因するか、非機能的酵素または非発現酵素を生じる遺伝子変異に起因するかに関わらない。抗生物質耐性を介する選択は、スクリーニングのために最も一般的に使用されている(上記参照)。この方法は、標的化ベクター上での上記耐性遺伝子の存在を検出し得るが、組み込みが標的化組換え事象であったかまたはランダム組換えであったかは、直接には示さない。特定の技術(例えば、ポリAおよびプロモーター捕捉技術)は、標的化事象の確率を増加するが、これもまた、望ましい表現型(細胞表面上のgalα−1,3−galエピトープが欠損している細胞)が達成されたという直接の証拠は提供しない。さらに、ネガティブな選択形態が、標的化組み込みについて選択するために使用され得る。これらの場合、その細胞に対して致死性の因子の遺伝子が、標的化事象だけが唯一その細胞を死から回避させ得る様式で挿入される。その後、これらの方法により選択された細胞が、遺伝子破壊、ベクター組み込み、そして最終的には、α−1,3−galエピトープ欠如についてアッセイされ得る。これらの場合、その選択は、標的化ベクター組み込みが検出されること、および変化した表現型では検出されないことに基づき、標的化ノックアウト(点変異ではない)、遺伝子の再配置もしくは遺伝子短縮、または他のそのような改変だけが、検出され得る。
【0090】
毒素A(細菌Clostridium difficileにより産生される細胞毒素)は、末端糖質のガラクトースα1,3−ガラクトース配列であるgalα1−3galβ1−4GlcNacに特異的に結合する。このレセプターに対する結合は、細胞上での細胞傷害性効果を媒介し、細胞を形態変化させ、いくつかの場合には、細胞をプレートマトリックスから遊離させる。制御された条件下では、このマーカーを保有しない細胞は、上記毒素により影響されない。従って、一実施形態において、α1,3galエピトープが、galα−1,3−GT遺伝子座の標的化ノックアウトまたは遺伝子変異を介して首尾良く除去されたか否かを決定するために、上記エピトープを保有しない細胞が、選択され得る。毒素Aに対する曝露は、上記エピトープを保有する細胞について毒性であり得、上記遺伝子が首尾良く不活化された細胞についての選択を促進する。従って、本発明の一局面に従って、galα1,3遺伝子座においてノックアウトされたかまたは変異された遺伝子改変動物(例えば、ブタ)の産生のための核ドナーとして有用な細胞が、C.difficile毒素Aに対して細胞を曝露することによって、選択される。
【0091】
毒素A(Clostridium difficileにより産生される2つの細胞毒素のうちの1つ)は、種々の細胞型の表面上に見出されるガラクトースα1,3−ガラクトース配列であるgalα1,3−galβ1,4GlcNacについて高い結合親和性を有する(Clarkら、Arch.Biochem.Biophys.257(1) :217−229,1987)。この糖質は、毒素Aについての機能的レセプターとして作用するようである。なぜなら、このエピトープを細胞表面上に提示する細胞は、このレセプターを欠く細胞よりも毒素Aの細胞毒性効果に対して感受性であるからである。培養中で毒素Aに対して曝露された感受性細胞は、おそらくはアクチン脱重合およびその結果生じる細胞骨格完全性の変化に起因して、細胞の球体化(rounding)を示す(Kushnaryovら、J.Biol.Chem.263:17755−17762(1988) and Justら、J.Clin.Invest.95:1026−1031,1995)。これらの細胞は、その培養物から選択的に除去され得る。なぜなら、これらの細胞は、マトリックスから持ち上がり、懸濁物中で浮遊しており、影響されない細胞が、プレート表面に堅く結合したままになるからである。
【0092】
毒素Aに対する細胞の曝露。一実施形態において、付着した細胞は、細胞培養培地の構成成分としての毒素Aに曝露される。固定した曝露時間の後、毒素Aを含む培地、および放出された毒素Aに感受性の細胞が、除去され、プレートが洗浄され、毒素Aを含まない培地が、補充される。毒素Aに対する曝露は、一定日数にわたって反復されて、付着した毒素感受性の細胞がプレートから除去され、非感受性細胞が増殖拡大するのが可能になる。精製毒素Aが、本発明の方法において使用され得る(市販されており、例えば、Techlab Inc.,カタログ番号T3001,Blacksburg,VAを参照)。粗製非精製毒素Aもまた使用され得る(市販されており、例えば、Techlab Inc.カタログ番号T5000またはT3000,Blacksburg,VA)。これは、選択のための有効用量を決定するための初期力価測定が必要であり得る。
【0093】
(血清ベースの選択方法)
別の実施形態において、その選択手順は、補体因子と、galα1,3galエピトープに対する自然抗体とを含む血清を使用して、実行され得る(例えば、Koikeら、Xenotransplantation 4:147−153,1997)。抗Gal抗体を含むヒトまたは非ヒト霊長類由来の血清に対して曝露すると、galα1,3galエピトープを示す細胞における特異的抗体結合および補体活性化に起因して、細胞溶解が引き起こされ得る。従って、α−1,3−GTが欠損した細胞は、生きたままであり、従って、選択され得る。
【0094】
(機能的α−1,3GTの発現を欠くブタ細胞のさらなる特徴付け)
機能的α−1,3GTの発現を欠くと考えられるブタ細胞は、さらに特徴付けられ得る。そのような特徴付けは、以下の技術(PCR分析、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析、特異的レクチン結合アッセイ、および/または配列決定分析が挙げられるが、これらに限定されない)によって達成され得る。
【0095】
当該分野で記載されるようなPCR分析(例えば、Daiら、Nature Biotechnology 20:431−455)が、標的化ベクターの組み込みを決定するために使用され得る。一実施形態において、増幅因子(amplimer)は、抗生物質耐性遺伝子を起点とし得、そしてそのベクター配列の外側にある領域へと広がり得る。サザン分析(例えば、Daiら、Nature Biotechnology 20:431−455参照)もまた、遺伝子座中での大きな改変(例えば、α−1,3GT遺伝子座中への標的化ベクターの組み込み)を特徴付けるために使用され得る。これに対して、ノーザン分析は、それらの対立遺伝子の各々から生成される転写物を特徴付けるために使用され得る。
【0096】
特異的レクチン結合(Griffonia(Bandeiraea)simplicifolia由来のGSL IB4レクチン(Vector Labs)(このレクチンは、糖質部分galα1,3galに特異的に結合する)を使用する)と、結合のFACS(蛍光抗体細胞選別)分析とによって、α1,3galエピトープが細胞上に存在するか否かを決定し得る。この型の分析は、その細胞への蛍光標識GSL−IB4レクチンの添加、およびその後の細胞選別を包含する。
【0097】
さらに、上記RNA転写物から生成されるcDNAの配列決定分析もまた、α1,3−GT対立遺伝子におけるあらゆる変異の正確な位置を決定するために使用され得る。
【0098】
(III.ブタ動物の生産)
なお別の局面において、本発明は、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性にされた生きたブタを生産するための方法を提供する。一実施形態において、そのブタは、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性にされたブタ細胞に由来するドナー核を用いてクローニングすることによって生産される。一実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子は、遺伝的標的化事象を介して不活性化される。別の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子は、点変異の存在に起因して不活性化される。別の実施形態において、一方の対立遺伝子は、遺伝的標的化事象によって不活性化される一方で、他方の対立遺伝子は、点変異によって不活性化される。さらなる実施形態において、一方の対立遺伝子は、遺伝的標的化事象によって不活性化され、他方の対立遺伝子は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるTからGへの点変異の存在に起因して不活性化される。特定の実施形態において、一方の対立遺伝子は、エキソン9に指向される標的化構築物を介して不活性化され(図6)、他方の対立遺伝子は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるTからGへの点変異の存在に起因して不活性化される。別の実施形態において、このようなブタをクローニングする方法は、以下の工程を包含する:卵母細胞から除核する工程、その卵母細胞と、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化されたブタ細胞に由来するドナー核とを融合する工程、およびその核移入によって得られた胚を、代理母に移植する工程。
【0099】
あるいは、胚性幹細胞(次いで、この胚性幹細胞は、子孫を生産するために使用され得る)におけるα−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子を不活性化することによって、機能的α−1,3−GTのいかなる発現をも欠く生存可能なブタを生産するための方法が提供される。
【0100】
遺伝子改変された動物は、直接接合子を改変することによって作出され得る。哺乳動物に関しては、その改変された接合子は、次いで、出産のときまでその動物を妊娠し続けることができる偽妊娠雌の子宮に導入され得る。例えば、α−1,3−GT遺伝子を欠いた完全な動物が望ましい場合、その動物に由来する胚性幹細胞が、標的化され得、後に、その改変された細胞をキメラ動物へと成長させるために、胚盤胞に導入され得る。胚性幹細胞に関しては、胚性幹細胞株または新たに得られた幹細胞のいずれかが使用され得る。
【0101】
本発明の適切な実施形態において、全能細胞は、胚性幹(ES)細胞である。胚盤胞からのES細胞の単離、ES細胞株の樹立およびそれらのその後の培養は、例えば、Doetchmannら,J.Embryol.Exp.Morph.87:27−45(1985);Liら、Cell 69:915−926(1992);Robertson,E.J.「Tetracarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach」,E.J.Robertson編,IRL Press,Oxford,England(1987);Wurst and Joyner,「Gene Targeting:A Practical Approach」,A.L.Joyner編,IRL Press,Oxford,England(1993);Hogenら,「Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual」,Hogan,Beddington,Costantini and Lacy編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1994);およびWangら,Nature 336:741−744(1992)に記載されるような従来の方法によって行われる。本発明の別の適切な実施形態において、その全能細胞は、胚性生殖(embryonic germ)(EG)細胞である。胚性生殖細胞は、ES細胞に機能的に等しい(すなわち、それらは、インビトロで培養およびトランスフェクトされ得、次いで、キメラの体細胞系列および生殖細胞系列に寄与する(Stewartら,Dev.Biol.161:626−628(1994)))、未分化細胞である。EG細胞は、増殖因子:白血病阻害因子、steel因子および塩基性線維芽細胞増殖因子の組み合わせとの、始原生殖細胞、配偶子の先祖の培養によって、誘導される(Matsuiら,Cell 70:841−847(1992);Resnickら、Nature 359:550−551(1992))。EG細胞の培養は、Donovanら,「Transgenic Animals,Generation and Use」,L.M.Houdebine編,Harwood Academic Publishers(1997)、およびそこに引用されている本来の文献において記載される方法を使用して実行され得る。
【0102】
本発明において使用するための四倍体胚盤胞は、天然の配偶子生成および発生によって、または二細胞胚の電気融合による公知の方法よって得られ得、その後、例えば、Jamesら、Genet.Res.Camb.60:185−194(1992);Nagy and Rossant,「Gene Targeting:A Practical Approach」,A.L.Joyner編,IRL Press,Oxford,England(1993);またはKubiak and Tarkowski,Exp.Cell Res.157:561−566(1985)によって記載されるように培養され得る。
【0103】
胚盤胞へのES細胞またはEG細胞の導入は、当該分野において公知の方法によって行われ得る。本発明の目的に適した方法は、Wangら、EMBO J.10:2437−2450(1991)によって記載されるマイクロインジェクション法である。
【0104】
あるいは、改変胚性幹細胞によって、トランスジェニック動物が生産され得る。その遺伝子改変された胚性幹細胞は、胚盤胞に注入され得、次いで、従来の技術に従って、雌宿主哺乳動物において分娩される。ヘテロ接合性子孫は、次いで、PCRまたはサザンブロッティングのような技術を使用して、標的遺伝子座の部位における改変の存在についてスクリーニングされ得る。同じ種の野生型宿主と交配した後に、得られたキメラ子孫を、次いで、ホモ接合性宿主を達成するために交雑させ得る。
【0105】
胚性幹細胞を標的化ベクターで形質転換して、α−1,3−GT遺伝子を改変した後に、その細胞を、適切な培地(例えば、ウシ胎仔血清で強化したDMEM)中のフィーダー層上にプレーティングし得る。その構築物を含む細胞を、選択培地を使用することによって、コロニーが増殖するに十分な時間後に検出し得、コロニーは、拾い上げられ得、相同組換えの存在について分析され得る。構築物配列内にあるプライマーおよび構築物配列を含まないが標的遺伝子座にあるプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応を使用し得る。相同組換えを示すコロニーが、次いで、胚操作および胚盤胞注入のために使用され得る。胚盤胞を、過排卵雌から獲得し得る。その胚性幹細胞を次いで、トリプシン処理し得、その改変細胞を、胚盤胞を含む小滴に添加し得る。その改変胚性幹細胞のうちの少なくとも1つが、胚盤胞の胞胚腔に注入され得る。注入後、その胚盤胞のうちの少なくとも1つを、偽妊娠雌の各子宮角に戻し得る。雌を、次いで、出産時まで経過させ、得られた同腹仔を、その構築物を有する変異細胞についてスクリーニングする。その胚盤胞を、形質転換ES細胞からの異なる血統について選択する。胚盤胞およびES細胞の異なる表現型を提供することによって、キメラ子孫を、容易に検出し得、次いで、遺伝子型決定を行って、改変α−1,3−GT遺伝子の存在についてプローブし得る。
【0106】
(クローニングされたトランスジェニック子孫を生産するための体細胞核移入)
本発明は、体細胞核移入を介して、機能的α−1,3−GT遺伝子を欠くブタをクローニングするための方法を提供する。一般に、そのブタは、以下の工程を包含する核移入プロセスによって生産され得る:ドナー核の供給源として使用される所望の分化したブタ細胞を得る工程;ブタから卵母細胞を得る工程;その卵母細胞から除核する工程;その所望の分化した細胞または細胞核を、その除核した卵母細胞に移入して(例えば、融合または注入によって)、NTユニットを形成する工程;得られたNTユニットを活性化させる工程;およびその培養NTユニットを宿主ブタに移入して、よって、そのNTユニットを、胎仔へと発生させる工程。
【0107】
核移入技術または核翻訳技術は、当該分野で公知である(Daiら、Nature Biotechnology 20:251−255;Polejaevaら Nature 407:86−90(2000);Campbellら,Theriogenology,43:181(1995);Collasら,Mol.Report Dev.,38:264−267(1994);Keeferら,Biol.Reprod.,50:935−939(1994);Simsら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,90:6143−6147(1993);WO94/26884;WO94/24274、およびWO90/03432、米国特許第4,944,384号および同第5,057,420号)。
【0108】
ドナー細胞核(これは、α−1,3−GT遺伝子を変化させるように改変されている)は、レシピエントブタ卵母細胞に移される。この方法の使用は、特定のドナー細胞型に制限されない。そのドナー細胞は、本明細書中に記載されるとおりであり得る。例えば、例えば、Wilmutら Nature 385 810(1997);Campbellら Nature 380 64−66(1996);Daiら、Nature Biotechnology 20:251−255,2002またはCibelliら Science 280 1256−1258(1998)もまた参照のこと。正常核型の細胞全て(核移入において成功裏に使用され得る胚性細胞、胎仔体細胞および成体体細胞を含む)を、使用し得る。胎仔線維芽細胞は、ドナー細胞の特に有用なクラスである。一般に、核移入の適切な方法は、Campbell et al Theriogenology 43 181(1995)、Daiら、Nature Biotechnology 20:251−255、Polejaevaら Nature 407:86−90(2000)、Collasら Mol.Reprod.Dev.38 264−267(1994)、Keeferら Biol.Reprod.50 935−939(1994)、Simsら Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90 6143−6147(1993)、WO−A−9426884、WO−A−9424274、WO−A−9807841、WO−A−9003432、米国特許第4,994,384号および同第5,057,420号に記載される。分化ドナー細胞または少なくとも部分的に分化したソナー細胞もまた、使用され得る。ドナー細胞はまた、培養され得るが、必ずしも培養されなくてもよく、休止性であり得る。休止性核ドナー細胞は、休止期に入るように誘導され得るか、またはインビボで休止状態にある細胞である。先行技術の方法はまた、クローニング手順において胚細胞型を使用した(Campbellら(Nature,380:64−68,1996)およびSticeら(Biol.Reprod.,20 54:100−110,1996)。
【0109】
体細胞性核ドナー細胞は、種々の異なる器官および組織(例えば、皮膚、間葉、肺、膵臓、心臓、腸、胃、膀胱、血管、腎臓、子宮、生殖器官が挙げられるが、これらに限定されない)、および胚、胎仔または成体動物の全てまたは一部の分解調製物から獲得され得る。本発明の適切な実施形態において、核ドナー細胞は、上皮細胞、線維芽細胞、ニューロン細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラノサイト、軟骨細胞、リンパ球(BおよびT)、マクロファージ、単球、単核球、心筋細胞、他の筋細胞、顆粒膜細胞、卵丘細胞(cumulus cell)、表皮細胞または内皮細胞からなる群より選択される。別の実施形態において、その核ドナー細胞は、胚性幹細胞である。好ましい実施形態において、線維芽細胞は、ドナー細胞として使用され得る。
【0110】
本発明の別の実施形態において、本発明の核ドナー細胞は、動物の生殖細胞である。胚、胎仔、または成体の段階における動物種のあらゆる生殖細胞が、核ドナー細胞として使用され得る。適切な実施形態において、その核ドナー細胞は、胚性生殖細胞である。
【0111】
核ドナー細胞は、アクセプター細胞との協調を確実にするために、細胞周期(G0、G1、G2、S、M)のいずれかの段階において停止され得る。当該分野で公知のあらゆる方法が、その細胞周期段階を操作するために使用され得る。細胞周期段階を制御する方法としては、培養細胞の接触阻害によって誘導されるG0休止、血清または他の必須栄養素の除去によって誘導されるG0休止、老化によって誘導されるG0休止、特定の増殖因子の添加によって誘導されるG0休止;物理的または化学的手段(例えば、熱ショック、高比重圧(hyperbaric pressure)、または化学物質、ホルモン、増殖因子もしくは他の物質での他の処置)によって誘導されるG0休止またはG1休止;複製手順の何らかの点を妨害する化学薬剤での処置を介するS期制御;蛍光活性化セルソーティング、有糸分裂させないこと(mitotic shake off)、微小管破壊剤または有糸分裂の進行を混乱させる任意の化学物質での処理(Freshney,R.I,.「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique」,Alan R.Liss,Inc,New York(1983)もまた参照のこと)を使用する選択を介するM期制御が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
卵母細胞の単離のための方法は、当該分野において周知である。本質的には、これは、卵母細胞をブタの卵巣または生殖管から単離する工程を包含し得る。ブタ卵母細胞の容易に入手可能な供給源は、屠殺場にあるものである。遺伝子操作、核移入およびクローニングのような技術の組み合わせについて、卵母細胞は、一般に、これらの細胞が、核移入のためのレシピエント細胞として使用され得る前、およびこれらの細胞が、精子細胞により授精されて胚へと発生し得る前に、インビトロで成熟されなければならない。このプロセスは、一般に、哺乳動物卵巣(例えば、屠殺場で得たウシ卵巣)から未成熟(前期I)卵母細胞を収集し、授精または除核前に、卵母細胞が中期II段階(この段階は、ウシ卵母細胞の場合では、一般に、吸引してから約18時間後〜約24時間後に起こる)に達するまで、その卵母細胞を成熟培地中で成熟させることを要する。この期間は、「成熟期間」として公知である。特定の実施形態において、その卵母細胞は、未経産若年性雌ブタ(gilt)から得られる。「未経産若年性雌ブタ(gilt)」とは、子孫を以前に生んだことのない雌ブタである。他の実施形態において、その卵母細胞は、成熟雌ブタ(sow)から得られる。「成熟雌ブタ(sow)」とは、子孫を以前に生んだことのある雌ブタである。
【0113】
中期II段階卵母細胞は、レシピエント卵母細胞であり得、この段階で、その卵母細胞は、授精している精子がするように、その導入される核を処置するために十分に「活性化」され得るか、または活性化されていると考えられる。インビボで成熟した中期II段階卵母細胞は、核移入技術において成功裏に使用されてきた。本質的には、成熟中期II卵母細胞は、発情期が開始して、またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)もしくは類似のホルモンを注射してから35時間後〜48時間後もしくは39時間後〜41時間後に、非過排卵ブタまたは過排卵ブタのいずれかから、外科手術により収集され得る。
【0114】
約10〜40時間の範囲、好ましくは、約16〜18時間の範囲の固定した時間の成熟期間の後、その卵母細胞から除核し得る。除核前、その卵母細胞が取り出され得、卵丘細胞を除去する前に、適切な培地(例えば、1mg/mlのヒアルロニダーゼを含むHECM)中に入れられ得る。剥がされた卵母細胞は、次いで、極体についてスクリーニングされ得、その選択された中期II卵母細胞(極体の存在によって決定される)は、次いで、核移入のために使用される。除核は、次に行われる。
【0115】
除核は、米国特許第4,994,384号に記載されるような公知の方法によって行われ得る。例えば、中期II卵母細胞は、すぐに除核するためにHECM(必要に応じて、7.5mg/mlのサイトカラシンBを含む)に入れられるか、または適切な培地(例えば、胚培養培地(例えば、CR1aa+10%発情ウシ血清))中に入れられるかのいずれかであり得、次いで、除核され得、好ましくは、24時間後を超えず、より好ましくは、16〜18時間後を超えない。
【0116】
除核は、極体および隣接する細胞質を除去するために、マイクロピペットを使用して顕微手術下で行われ得る。その卵母細胞は、次いで、成功裏に除核されたものを同定するためにスクリーニングされ得る。その卵母細胞をスクリーニングする1つの方法は、卵母細胞をHECM中1mg/mlの33342 Hoechst色素で染色し、次いで、その卵母細胞を、10秒未満の間に、紫外線照射下で見ることである。成功裏に除核された卵母細胞は、次いで、適切な培養培地(例えば、CR1aa+10%血清)中に入れられ得る。
【0117】
その除核された卵母細胞と同じ種の単一の哺乳動物細胞を、次いで、NTユニットを生成するために使用される除核卵母細胞の卵黄周囲腔に移入し得る。その哺乳動物細胞およびその除核卵母細胞を使用して、当該分野で公知の方法に従って、NTユニットを生成し得る。例えば、その細胞を、電気融合により融合し得る。電気融合は、形質膜の一過性の破損を引き起こすに十分な電気のパルスを提供することにより達成される。その形質膜の破損は、非常に短時間である。なぜなら、その膜は、急激に再形成するからである。従って、2つの隣接する膜が破損するように誘導され、再形成の際に、その脂質二重層が混ざる場合、小さなチャネルが、その2つの細胞の間に開き得る。このような小さな開口部の熱力学的不安定性に起因して、その2つの細胞は、1つになるまで、その開口部は大きくなる。例えば、Pratherらによる米国特許第4,997,384号を参照のこと。種々の電気融合培地(例えば、スクロース、マンニトール、ソルビトールおよびリン酸緩衝化溶液を含む)が使用され得る。融合はまた、融合形成性因子(fusogenic agent)としてセンダイウイルスを使用して行われ得る(Graham,Wister Inot.Symp.Monogr.,9,19,1969)。また、その核は、エレクトロポレーション融合を使用することよりむしろ、その卵母細胞に直接注入され得る。例えば、Collas and Barnes,Mol.Reprod.Dev.,38:264−267(1994)を参照のこと。融合後、得られた融合したNTユニットは、活性化されるまで、適切な培地(例えば、CR1aa培地)に入れられる。代表的には、活性化は、融合して、直後に、例えば、24時間後、約4時間後〜約9時間後、または必要に応じて、1時間後〜2時間後にもたらされ得る。好ましい実施形態において、活性化は、融合して少なくとも1時間後、成熟して40時間後〜41時間後に起こる。
【0118】
そのNTユニットは、公知の方法により活性化され得る。このような方法は、例えば、本質的に、そのNTユニットに冷温ショックまたは実際に冷たい温度のショックを適用することによって、生理学的温度未満でそのNTユニットを培養する工程を包含する。これは、そのNTユニットを室温(これは、胚が通常曝される生理学的温度条件より低温である)にて培養することによって、最も簡便に行われ得る。あるいは、活性化は、既知の活性化剤の適用によって達成され得る。例えば、授精の間の精子による卵母細胞への進入は、融合前(prefusion)卵母細胞を活性化して、核移入後により多数の生存性の妊娠および多数の遺伝的に同一の子ウシを得ることが示された。また、電気ショックおよび化学物質ショックのような処理は、融合後にNT胚を活性化するために使用され得る。例えば、Susko−Parrishらに対する米国特許第5,496,720号を参照のこと。さらに、活性化は、卵母細胞における二価カチオンのレベルを同時にまたは連続的に増大させ、その卵母細胞における細胞タンパク質のリン酸化を減少することによってもたらされ得る。これは、一般に、二価カチオン(例えば、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムまたはカルシウム)を、例えば、イオノフォア(ionophore)の形態で、卵母細胞細胞質へ導入することによりもたらされ得る。二価カチオンレベルを増大させる他の方法は、電気ショックの使用、エタノールでの処理、およびケージ化(caged)キレート剤での処理を包含する。リン酸化は、公知の方法(例えば、キナーゼインヒビター(例えば、6−ジメチル−アミノプリン、スタウロスポリン、2−アミノプリン、およびスフィンゴシンのようなセリン−スレオニンキナーゼインヒビター)の添加)によって減少され得る。あるいは、細胞タンパク質のリン酸化は、ホスファターゼ(例えば、ホスファターゼ2Aおよびホスファターゼ2B)を卵母細胞に導入することによって阻害され得る。
【0119】
その活性化されたNTユニットまたは「融合胚」は、次いで、細胞コロニーが生成されるまで、適切なインビトロ培養培地中で培養され得る。胚の培養および成熟に適した培養培地は、当該分野で周知である。胚の培養および維持のために使用され得る公知の培地の例としては、Ham’s F−10+10% ウシ胎仔血清(FCS)、Tissue Culture Medium−199(TCM−199)+10%ウシ胎仔血清、タイロード−アルブミン−乳酸−ピルビン酸(TALP)、ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、イーグル培地およびホイットン培地が挙げられ、1つの具体例において、その活性化NTユニットは、5% COの加湿雰囲気中、約38.6℃にて1時間〜4時間にわたってNCSU−23培地で培養され得る。
【0120】
その後、その培養NTユニットは、洗浄され得、次いで、好ましくは、適切なコンフルエントフィーダー層を含むウェルプレートに含まれる適切な培地中に入れられ得る。適切なフィーダー層としては、例示として、線維芽細胞および上皮細胞が挙げられる。そのNTユニットは、NTユニットが、レシピエント雌への移入に適したサイズに達するまで、または細胞コロニーを生成するために使用され得る細胞を得るために、フィーダー層上で培養される。好ましくは、これらのNTユニットは、少なくとも約2個〜約400個の細胞、約4個〜約128個の細胞、または少なくとも約50個の細胞になるまで培養され得る。
【0121】
活性化NTユニットは、次いで、雌ブタの卵管に移入され得る(胚移入)。一実施形態において、その雌ブタは、発情同期化レシピエント未経産若年性雌ブタであり得る。交配した未経産若年性雌ブタ(大型の白色/デュロック/ランドレース)(280−400lbs)を使用し得る。その未経産若年性雌ブタは、飼料に混合した18〜20mgのRegu−Mate(Altrenogest,Hoechst,Warren,NJ)を経口投与することにより、レシピエント動物と同期化され得る。Regu−Mateは、連続14日間与えられ得る。1000ユニットのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG,Intervet America,Millsboro,DE)を、次いで、最後のRegu−Mate処置から約105時間に筋肉内(i.m.)投与し得る。胚移入を、次いで、hCG注射の約22〜26時間後に行い得る。一実施形態において、その妊娠は、出産時まで維持され得、生きた子孫の出産がもたらされ得る。別の実施形態において、その妊娠は、初期に終了され得、胚細胞が採取され得る。
【0122】
(所望のホモ接合性ノックアウト動物のための交配)
別の局面において、本発明は、機能的α−1,3−GTのあらゆる発現を欠いた生きたブタ(このブタは、α−1,3−GT遺伝子についてヘテロ接合性の雄ブタと、α−1,3−GT遺伝子についてヘテロ接合性の雌ブタとを交配することによって提供される)を生産するための方法を提供する。一実施形態において、そのブタは、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子の、その対立遺伝子の発現を防止するような遺伝的改変に起因して、ヘテロ接合性である。別の実施形態において、そのブタは、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子における点変異の存在に起因して、ヘテロ接合性である。別の実施形態において、その点変異は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→Gの点変異であり得る。1つの具体的実施形態において、機能的α−1,3−GTのあらゆる発現を欠くブタ動物を生成する方法が提供され、ここでα−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→Gの点変異を含む雄ブタが、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基においてT→Gの点変異を含む雌ブタと交配される。
【0123】
一実施形態において、α−1,3−GT遺伝子におけるダブルノックアウトを有するドナー細胞からの核移入により生産された、性的に成熟した動物が交配され得、それらの子孫が、ホモ接合性ノックアウトについて試験され得る。これらのホモ接合性ノックアウト動物は、次いで、より多くの動物を生産するために交配され得る。
【0124】
別の実施形態において、性的に成熟したダブルノックアウト動物に由来する卵母細胞は、2つの遺伝的に異なるブタ系統に由来する野生型精子を使用してインビトロで授精させられ得、その胚は、適切な代理母に移植され得る。これらの交配により得られた子孫は、ノックアウトの存在について試験され得る。例えば、それらは、cDNA配列決定、PCR、毒素A感受性および/またはレクチン結合によって試験され得る。次いで、性的成熟度において、これらの同腹仔の各々から動物は、適合され得る。
【0125】
本発明のこの局面に従う特定の方法において、妊娠は、初期に終了され得る。よって、胎仔線維芽細胞が、単離され得、さらに、表現型によりおよび/または遺伝子型により特徴付けられる。α−1,3−GT遺伝子の発現を欠く線維芽細胞は、次いで、本明細書中に記載される方法に従う核移入のために使用されて(Daiらもまた参照のこと)、所望のダブルノックアウトを有する複数の妊娠および子孫がもたらされる。
【0126】
(IV.遺伝子改変されたブタ動物の型)
本発明の一局面において、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子が、遺伝子標的化事象を介して不活性化されるブタ動物が、提供される。本発明の別の局面において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が遺伝子標的化事象を介して不活性化されているブタ動物が提供される。一実施形態において、その遺伝子は、相同組換えを介して標的化され得る。他の実施形態において、その遺伝子は破壊され得る。すなわち、遺伝コードの一部が変化され得、それによって、その遺伝子のそのセグメントの転写および/または翻訳が影響を受け得る。例えば、遺伝子の破壊は、置換、欠失(「ノックアウト」)または挿入(「ノックイン」)の技術を通じて起こり得る。望ましいタンパク質のためのさらなる遺伝子または存在する配列の転写を調節する調節配列が、挿入され得る。
【0127】
α−1,3−GT遺伝子の2つの不活性対立遺伝子を有するブタは、天然には存在しない。驚くべきことに、α−1,3−GT遺伝子の第2の対立遺伝子を、遺伝子標的化事象を通じてノックアウトしようと試みる間に、第2の対立遺伝子を不活性にする点変異を同定したことが発見された。
【0128】
従って、本発明の別の局面において、そのα−1,3−GT遺伝子は、少なくとも1つの点変異によって不活性にされ得る。一実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の一方の対立遺伝子は、少なくとも1つの点変異によって不活性にされ得る。別の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子は、少なくとも1つの点変異によって不活性にされ得る。一実施形態において、この点変異は、遺伝子標的化事象を介して起こり得る。別の実施形態において、この点変異は、天然に存在し得る。特定の実施形態において、その点変異は、α−1,3−GT遺伝子のエキソン9の2番目の塩基におけるT→Gの変異であり得る(図2)。α−1,3−GT遺伝子において天然に存在する点変異を有するブタは、抗生物質耐性遺伝子がない、α1,3−GT欠損性ブタの生産を可能にし、従って、ヒト用途のためのより安全な製品を生成する能力を有する。別の実施形態において、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個または少なくとも20個の点変異が、α−1,3−GT遺伝子を不活性にするために存在し得る。一実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が、機能的α1,3−GTのあらゆる発現を防止する点変異を含むブタが、提供される。特定の実施形態において、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子におけるエキソン9の2番目の塩基においてT→Gの変異を含む(図2)ブタが提供される。
【0129】
本発明の別の局面は、一方の対立遺伝子が遺伝子標的化事象によって不活性化され、他方の対立遺伝子が天然に存在する点変異によって不活性化された、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化されたブタ動物が提供される。一実施形態において、一方の対立遺伝子が遺伝子標的化事象によって不活性化され、他方の対立遺伝子がエキソン9の2番目の塩基におけるT→Gの点変異の存在に起因して不活性化された、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化されたブタ動物が提供される。特定の実施形態において、一方の対立遺伝子がエキソン9に指向される標的化構築物を介して不活性化され(図6)、他方の対立遺伝子がエキソン9の2番目の塩基におけるT→Gの点変異の存在に起因して不活性化された、α−1,3−GT遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化されたブタ動物が提供される。
【0130】
(V.ブタの器官、組織、細胞および細胞株)
本発明は、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の両方の対立遺伝子が不活性化されている生存ブタを最初に提供する。本発明はまた、異物移植のために有用である、このようなブタ由来の器官、組織、および細胞を提供する。
【0131】
1つの実施形態では、本発明は、機能的α1,3GTのあらゆる発現を欠くブタから得られる、ブタの器官、組織および/または精製細胞もしくは精製細胞株もしくは実質的に純粋な細胞もしくは細胞株を提供する。
【0132】
1つの実施形態では、本発明は、異物移植のために有用である器官を提供する。制限されずに:脳、心臓、肺、腺、脳、眼、胃、脾臓、膵臓、腎臓、肝臓、腸、子宮、膀胱、皮膚、毛、爪、耳、鼻、口、唇、歯ぐき、歯、舌、唾液腺、扁桃腺、咽頭、食道、大腸、小腸、直腸、肛門、幽門、甲状腺、胸腺、副腎(腎上体)、骨、軟骨、腱、靭帯、骨格筋、平滑筋、血管、血液、脊髄、気管、尿管、尿道、視床下部、下垂体、副腎、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精液、精嚢、陰茎、リンパ、リンパ節およびリンパ管を含む、任意のブタ器官が用いられ得る。
【0133】
別の実施形態では、本発明は、異物移植のために有用である組織を提供する。制限されずに:上皮、連結組織、血液、骨、軟骨、筋肉、神経、腺様(adenoid)組織、脂肪組織、疎性結合組織、骨、褐色脂肪組織、海綿骨組織、筋肉、軟骨組織、海綿(cavernous)組織、軟骨様組織、クロム親和性組織、肉様組織、弾性組織、上皮、脂肪組織、線維硝子組織、線維組織、ギャンジー包帯、ゼラチン状組織、肉芽組織、腸関連リンパ、ハラー脈管、硬性造血組織、未分化組織、間質、被覆組織、島組織、リンパ組織、リンパ系、間葉組織、中腎性組織、粘液様結合組織、多房性脂肪組織、骨髄、軟組織鼻点、腎発生組織、結節組織、骨様組織、骨形成組織、骨状組織、歯根尖周囲組織、細網組織、網状組織、ゴム状組織、骨格筋、平滑筋、および皮下組織を含む任意のブタ組織が用いられ得る。
【0134】
さらなる実施形態では、本発明は、機能的α1,3GTの発現を欠くブタ動物からの細胞および細胞株を提供する。1つの実施形態では、これらの細胞または細胞株は、異物移植のために用いられ得る。制限されずに:上皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラノサイト、軟骨細胞、リンパ球(BおよびT)、マクロファージ、単球、単核細胞、心筋細胞、その他の筋細胞、顆粒膜細胞、卵丘細胞、上皮細胞、内皮細胞、ランゲルハンス島細胞、膵臓インシュリン分泌細胞、膵臓α2細胞、膵臓β細胞、膵臓α1細胞、血液細胞、血液前駆体細胞、骨細胞、骨前駆体細胞、神経幹細胞、始原幹細胞,肝細胞、ケラチノサイト、臍静脈内皮細胞、大動脈内皮細胞、毛細血管内皮細胞、線維芽細胞、肝臓星状細胞、大動脈平滑筋細胞、心筋細胞、ニューロン、クップファー細胞、平滑筋細胞、シュヴァン細胞、および上皮細胞、赤血球、血小板、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、脂肪細胞、軟骨細胞、膵臓島細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、耳下腺細胞、腫瘍細胞、グリア細胞、星状細胞、赤血球細胞、白血球細胞、マクロファージ、上皮細胞、体細胞、下垂体細胞、副腎細胞、毛細胞、膀胱細胞、腎臓細胞、網膜細胞、桿細胞、錐体細胞、心臓細胞、ペースメーカー細胞、脾臓細胞、抗原提示細胞、記憶細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、筋肉細胞、卵巣細胞、子宮細胞、前立腺細胞、膣上皮細胞、精子細胞、精巣細胞、生殖細胞、卵細胞、ライディヒ細胞、管周細胞、セルトーリ細胞、黄体細胞、子宮頸部細胞、子宮内膜細胞、乳腺細胞、卵胞細胞、粘液細胞、繊毛細胞、非角化上皮細胞、角化上皮細胞、肺細胞、杯細胞、円柱細胞、ドーパミン作動性細胞(dopamiergic cell)、扁平上皮細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、ドーパミン作動性細胞、胎児性細胞、線維芽細胞および胎児線維芽細胞を含む任意のブタ組織または器官からの細胞が用いられ得る。特定の実施形態では、機能的α−1,3−GTの発現を欠くブタ由来の膵臓細胞(制限されずにランゲンルハンス島細胞、インスリン分泌細胞、α−2、β細胞、α−1細胞を含む)が、提供される。
【0135】
生細胞を剥離させた組織を含む生育不能な誘導体は、これらの組織誘導体を酵素的または化学的に処理することによって、移植における使用前に架橋または他の化学的処置を介してさらに加工され得る。好ましい実施形態では、その誘導体は、種々の組織(皮膚、泌尿器、膀胱または器官粘膜下組織を含む)由来の細胞外マトリクスを含む。また、医療デバイスとして、心臓弁および他の生育不能な組織を含むように生存組織を剥離された腱、関節および骨も提供される。
【0136】
(治療的用途)
細胞は、広範な方法で順番に宿主に投与され得る。好ましい投与様式は、坐薬経由、経皮経由、鼻腔スプレー経由、外科的移植片経由、内部外科的塗擦経由、輸液ポンプ経由、またはカテーテル経由を含む、非経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮内投与、硬膜外投与、脊髄内投与、胸骨内投与、関節内投与、滑液包内投与、くも膜下(intrathecal)投与、動脈内投与、心臓内投与、筋内投与、鼻腔内投与、皮下投与、眼窩内投与、嚢内投与、局所投与、経皮貼布投与、直腸経由投与、膣投与または尿道投与である。1つの実施形態では、薬剤およびキャリアは、徐放処方物(直接的な組織注射、またはボーラス、移植物、微粒子、ミクロスフェア、ナノ粒子もしくはナノスフェア)で投与される。
【0137】
開示した細胞の注入によって処置され得る障害としては、正常な血球の産生および成熟の機能不全から生じる疾患(すなわち、再生不良性貧血および低増殖性幹細胞障害);造血性器官における腫瘍性の悪性疾患(例えば、白血病およびリンパ腫);非造血器官の広域性悪性固形腫瘍;自己免疫性状態;および遺伝的障害が挙げられるが、これらに限定されない。このような障害としては、正常な血球の産生および成熟の機能不全から生じる疾患(薬物、放射線、または注入、特発に起因する、低増殖性幹細胞障害、再生不良性貧血、汎血球減少症、顆粒球減少症、血小板減少症、赤血球形成不全、ブラックファン−ダイアモンド症候群を含む);造血性悪性腫瘍(急性リンパ芽球性(リンパ球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性悪性骨髄硬化症、多発性骨髄腫、真性赤血球増加症、特発性骨髄化生、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含む);悪性の固形腫瘍(悪性黒色腫、胃の癌、卵巣癌、乳癌、小細胞肺癌、網膜芽細胞腫、精巣癌、グリア芽腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、リンパ腫)を有する患者における免疫抑制;自己免疫疾患(リウマチ様関節炎、I型糖尿病、慢性肝炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスを含む);遺伝的(先天性)障害(貧血、家族性形成不全、ファンコーニ症候群、ジヒドロ葉酸還元酵素欠乏症、ホルムアミノトランスフェラーゼ欠乏症、レッシュ−ナイハン症候群、先天性異常赤血球産生症候群I〜IV、シュバッハマン−ダイアモンド症候群、ジヒドロ葉酸還元酵素欠乏症、ホルムアミドトランスフェラーゼ欠乏症、レッシュ−ナイハン症候群、先天性球状赤血球症、先天性楕円赤血球症、先天性口唇状赤血球症、先天性Rh陰性疾患、発作性夜間血色素尿症、G6PD(グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)改変体1、G6PD改変体2、G6PD改変体3、ピルビン酸キナーゼ欠乏症、先天性エリスロポエチン感受性、欠乏症、鎌状赤血球疾患および鎌状赤血球形成傾向、サラセミアα、サラセミアβ、サラセミアγ、met−色素血症、免疫の先天性障害、重症複合免疫不全(SCID)、不全リンパ球症候群、イオノフォア反応性複合免疫不全、キャップ形成異常を有する複合免疫不全、ヌクレオシドホスホリラーゼ欠乏症、顆粒球アクチン欠乏症、乳児顆粒球減少症、ゴーシェ病、アデノシンデアミナーゼ欠乏症、コストマン症候群、網様発育不全、先天性白血球機能不全症候群を含む);および他の障害(例えば、骨粗鬆症、骨髄硬化症、後天性溶血性貧血、後天性免疫不全、一次的免疫欠損もしくは二次的免疫欠損を引き起こす感染性障害、細菌感染、(例えば、ブルセラ症、リステリア症、結核、ハンセン病)、寄生虫感染(例えば、マラリア、リーシュマニア症)、真菌感染、加齢に関連する種々の障害に起因する不均衡なリンパ球セットおよび障害性の免疫機能に関連する障害、食細胞障害、コストマン無顆粒球、慢性肉芽腫症、チェディアック−東症候群、好中球アクチン欠乏症、好中球膜GP−180欠乏症、代謝性蓄積症、ムコ多糖類、ムコリピドーシス、および免疫機構、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、α1−アンチリプシン欠乏症など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
疾患または病理としては、神経変性疾患、肝変性疾患、神経変性疾患、脊髄損傷、頭部外傷もしくは頭部手術、および組織変性、器官変性もしくは腺変性を生じるウイルス感染などが挙げられる。このような神経変性疾患としては、AIDS痴呆複合症;脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、および急性トランスフェラーゼ脊髄炎);錐体外路系障害および小脳障害(例えば、脊髄系の病変);脳幹神経節の障害または小脳障害;多動性運動障害(例えば、ハンチントン舞踏病および老年舞踏病);薬物誘導性運動障害(例えば、CNSドーパミンレセプターをブロックする薬物によって誘導される障害);低運動性運動障害(例えば、パーキンソン病);進行性核上麻痺;小脳の構造病変;脊髄小脳変性(例えば、脊髄性運動失調、フリートライヒ運動失調、小脳皮質変性、多系統変性症(Mencel、Dejerine Thomas、Shi−Drager、およびMachado−Joseph)、全身性障害(例えば、Rufsum病、無β−リポ蛋白血症、運動失調、毛細管拡張症));およびミトコンドリア多系統障害;脱髄性核障害(例えば、多発性硬化症、急性横断脊髄炎);および運動単位の障害(例えば、神経性筋萎縮(前角細胞変性(例えば、筋萎縮性側索硬化症、乳児筋萎縮および若年性脊髄性筋萎縮)));アルツハイマー病;中年のダウン症候群;びまん性レヴィー小体病;レヴィー体型の老人性痴呆症;パーキンソン病;ヴェルニッケ−コルサコフ症候群;慢性アルコール中毒;クロイツフェルト−ヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎ハレルフォルデン−シュパッツ病;およびボクサー痴呆が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Berkowら(編)(1987)The Merck Manual、第15版、Merck and Co.Rahway,NJを参照のこと。
【0139】
本発明は、以下の実施例でさらに詳細に記載される。以下に提供される実施例は、例示的なものだけに過ぎないことが意図され、本発明の範囲を制限することは意図されない。
【実施例】
【0140】
(実施例1:α−1,3−GT遺伝子がヘテロ接合性であるブタ細胞の産生)
(初代ブタ胎児線維芽細胞の単離およびトランスフェクション)
胎児線維芽細胞(PCFF4−1〜PCFF4−10)を、妊娠の33日目に同じ妊娠の10の胎児から単離した。頭および内臓を除去した後、胎児をハンクス平衡塩溶液(HBSS;Gibco−BRL、Rockville、MD)で洗浄し、20mlのHBSS中に配置し、そして小手術用ハサミで刻んだ。組織をペレット化し、そして50mlのチューブに、胎児あたり40mlのDMEMおよび100U/mlのコラゲナーゼ(Gibco−BRL)中に再懸濁した。チューブを、振盪水浴中、37℃で40分間インキュベートした。消化された組織を、3〜4分間沈降させ、そして細胞が豊富な上清液を、新たな50mlチューブに移し、そしてペレット化した。細胞を、次いで、10%ウシ胎児血清(FCS)、1×非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウムおよび2ng/ml bFGFを含むDMEMの40ml中に再懸濁し、10cmディッシュ中に播種した。すべての細胞を、集密に到達する際に凍結保存した。SLA−1細胞〜SLA−10細胞を、妊娠28日の10の胎児から単離した。胎児は、過剰の熱を生成しないように湾曲した手術用鉗子をゆっくりと用い、60メッシュの金属スクリーンを通してすりつぶした。細胞懸濁液を、次いで、ペレット化し、そして10%FCS、1×非必須アミノ酸、2ng/ml bFGF、および10μg/mlゲンタマイシンを含むDMEMの30ml中に再懸濁した。細胞を、10cmディッシュ中に接種し、1〜3日培養し、そして凍結保存した。トランスフェクションには、10μgの線状化ベクターDNAを、エレクトロポーレーションにより、2百万の細胞中に導入した。トランスフェクションの48時間後、トランスフェクトされた細胞を、48ウェルプレート中に、ウェルあたり2,000細胞の密度で接種し、そして250μg/mlのG418で選択した。
【0141】
(ノックアウトベクター構築)
2つのα−1,3−GTノックアウトベクターpRL654およびpPL657を、2つの初代ブタ胎児線維芽細胞SLA1−10細胞およびPCFF4−2細胞の同系DNAから構築した。イントロン8およびエキソン9の大部分を含む6.8kbのα−1,3−GTゲノムフラグメントを、SLA1−10細胞およびPCFF4−2細胞の精製DNAから、それぞれ、PCRによって生成した。エキソン9の5’末端にある唯一のEcoRV部位を、SalI部位に変換し、そして1.8kbのIRES−neo−ポリAフラグメントをこのSalI部位中に挿入した。IRES(内部リボソーム侵入部位)は、neoタンパク質の翻訳開始部位として機能する。従って、両ベクターは、4.9kbの5’組換えアーム、および1.9kb 3’組換えアームを有している(図6)。
【0142】
(3’PCRおよびロングレンジPCR)
およそ1,000の細胞を、5μlの胚性溶解緩衝液中(ELB)(40 mM Tris、pH 8.9、0.9% Triton X−100、0.9% NP40、0.4mg/ml プロテイナーゼK)中に懸濁して、15分間に亘って65℃に亘ってインキュベートし、それら細胞を溶解して、10分間に亘って95℃で加熱して、プロテイナーゼKを不活性化した。3’PCR分析のために、フラグメントを、反応体積25μl中で、以下のパラメータを用いてExpand High Fidelity PCR system(Roche Molecular Biochemicals)を使用して増幅した:94℃で1分間、60℃で1分間、および72℃で2分間を35サイクル。LR−PCRのために、フラグメントを、反応体積50μl中で以下のパラメータを用いてTAKARA LA system(Panvera/Takara)を使用して増幅した:94℃で10秒間、65℃で30秒間、68℃で10分間(1サイクルごとに+20秒間)を30サイクルした後に、68℃で7分間の最終1サイクル。精製したDNAについて3’PCRおよびLR−PCRの条件は、同じであるが、但し、1μlの精製DNA(30μg/ml)を、4μl ELBと混合した。
【0143】
(細胞サンプルのサザンブロット分析)
およそ10細胞を、溶解緩衝液(10mM Tris、pH7.5、10mM EDTA、10mM NaCl、0.5%(w/v)Sarcosyl、1mg/mlのプロテイナーゼK)中で一晩、60℃で溶解し、そのDNAをエタノールで沈殿させた。次いで、このDNAを、BstEIIで消化して、1%アガロースゲル上で分離した。電気泳動の後で、そのDNAを、ナイロンメンブレンに移して、3’末端ジゴキシゲニン標識プローブで調べた。化学発光基質システム(Roche Molecular Biochemicals)を用いてバンドを検出した。
【0144】
(結果)
抗生物質(G418)耐性コロニーを、neo442SおよびαGTE9A2と順方向プライマーおよび逆方向プライマーとして使用する3’PCRによってスクリーニングした。Neo442Sは、neo遺伝子の3’末端に存在しており、そして、αGTE9A2は、3’組換えアームの外側に位置づけられる配列中のエキソン9の3’末端に存在する(図6)。したがって、α1,3GT遺伝子座における首尾良い標的化を介してのみ、予測された2.4kb PCR産物を取得された。4つの異なる細胞株における総数にして7つのトランスフェクションから、1105個のG418耐性コロニーが精選され、そのうちの100(9%)が、その最初の3’PCRスクリーン(範囲2.5〜12%)におけるα1,3GT遺伝子破壊についてポジティブであった。以下のコロニー、657A−A8、657A−I6、および657A−I11は、予測された2.4kbのバンド示し、他方、コントロールのPCFF4−6および別のG418耐性コロニーである657A−P6は、ネガティブであった。3’PCRポジティブコロニーの各々の一部分を、NT実験におけるその後の使用のために、数個の小さなアリコートで、直ぐに凍結し、他方、残りの細胞を、ロングレンジPCR(LR−PCR)およびサザンブロット分析のために増殖させた。
【0145】
組換え接合部を検出するためのPCR分析またはmRNA分析(RT−PCR)は、擬陽性の結果を生成し得るので、ロングレンジPCR(これは、標的化領域全体を包含する)を実施した。このLR−PCRは、7.4kbのα1,3GTゲノム配列のエキソン8からエキソン9の末端までに及び、両方のプライマー(aGTE8SおよびaGTE9A2)は、組換え領域の外側に位置づけられる(図2)。このコントロールPCFF4−6細胞、および3’PCRネイティブコロニーである、657A−P6は、野生型のα1,3GT遺伝子座由来の内因性7.4kbバンドのみを示す。対照的に、3’PCRポジティブコロニーのうちの3つ、すなわち、657A−A8、657A−I6 および657A−I1は、7.4kbの内因性バンド、および新規の9.2kbのバンドの両方を示した。この9,2kbというサイズは、α1,3GT遺伝子座への1.8kbのIRES−neoカセットの標的化挿入として予測される。
【0146】
LR−PCRポジティブコロニーのうちのおよそ半分(17/30)を、サザンブロット分析のために十分な数の細胞(1×10細胞)を産生するように首尾よく増殖した。それらのコロニーが、α1,3GT遺伝子座でのノックアウトについてヘテロ接合性であり、したがって、これらが、α1,3GT遺伝子の、1つの正常な非改変遺伝子コピーおよび1つの破壊された遺伝子コピーを有していることが理解される。BstEII消化を用いると、α1,3GTノックアウト細胞は、以下の2つのバンドを示す:内因性α1,3GT対立遺伝子について予測されるサイズである1つの7kbバンド、およびα1,3GT遺伝子座でのIRES−neo配列の挿入の特徴である9kbバンド(図2)。17個の全てのLR−PCRポジティブコロニーは、そのノックアウトについてサザン分析することによって確認された。同じメンブレンを、neoについて特異的な配列を用いて再度、調べ、そして、その9kbのバンドが、neoプローブを用いて検出され、したがって、破壊されたα1,3GT遺伝子座におけるIRES−neoカセットの標的化した挿入を確認した。
【0147】
(実施例2)
(α1,3GT遺伝子についてヘテロ接合性であるブタ細胞の産生)
ヘテロ接合性のα1,3GTノックアウト胎仔線維芽細胞(657A−I11 1−6)を、上述のように妊娠32日目に単離した(Daiら. Nature Biotechnology 20: 451 (2002)を参照のこと)。ATG(開始コドン)標的化α1,3GTノックアウトベクター(このベクターはまた、neo遺伝子を含む)を、α1,3GT遺伝子の第2対立遺伝子をノックアウトするように構築した(pPL680)。これらの細胞を、pPL680を用いてエレクトロポレーションによってトランスフェクトして、精製したC. difficile毒素A(上述)を有するα1,3GTネガティブ表現形について選択した。
【0148】
(実施例3:)
(α1,3GT遺伝子についてヘテロ接合性であるブタ細胞についてのC. difficile毒素Aを用いる選択)
(毒素A細胞毒性曲線)
ブタ細胞(PCFF4−6)を、10倍連続希釈した毒素A(0.00001μg/ml〜10μg/ml)に1時間〜一晩曝露した。細胞を、24ウェルプレート中で培養して、37℃で1時間に亘ってまたは一晩、この毒素とともにインキュベートした。この曝露の結果を、表2で詳細に示した。明らかに、1μg/mlを上回る毒素Aに対する1時間の曝露によって、90%を超える細胞に対して細胞毒性効果を生じた。したがって、1μg/mlでのまたはそれよりも僅かに濃い濃度の毒素Aを、遺伝的に改変された細胞の選択について選んだ。
【0149】
【表2】


gal α1,3GT遺伝子の1つの対立遺伝子における以前に同定された標的化ノックアウトを含むブタ胚(I−11:1−6)(Daiら)に由来する、ばらばらにした細胞を、エレクトロポレーションによって10μgの線形ベクターDNA(プロモーターtrap)を用いてトランスフェクションした。48時間後に、それらの細胞を、1ウェル当たり2000細胞の密度で48ウェルプレートに播種し、そして、250μg/ml G418を用いて選択した。トランスフェクションの5日後に、培地を、ウェルから取り出し、そして、培養培地(2.8ng/mlbFGFおよび20% FCSを添加したDMEM高グルコース)中の2μg/mlの毒素Aで入れ替えた。細胞を37℃で2時間に亘って毒素Aの選択効果まで曝露した。この毒素A含有培地を、プレート表面から放出された影響を受けたあらゆる細胞とともに取り出し、残りの細胞を新しい培地で洗浄し、そして、毒素Aを含まない培地で置き換えた。10日後に、細胞を、37℃で2時間に亘って培地中で1.3μg/mlの毒素Aに再度曝露した。この培地、毒素A、および溶液中のあらゆる細胞を取り除き、残った細胞を洗浄し、そして、その培地を入れ替えた。
【0150】
トランスフェクションの16日後に、毒素A非感受性を示す単一のコロニー(680B1と呼ぶ)を、回収して、DNA分析およびレクチン染色のために一部分を送った。DNA分析によって、その毒素A非感受性は、第2の標的ベクターの組み込みに起因しないが、しかし、それらの細胞は、GSL IB−4レクチンで染色されないことが示された。このことは、その遺伝子座の機能的ノックアウトが生じていることを示している。これらの680B1ダブルノックアウト細胞を、5レシピエントに対する核移行のために使用して、そのうち3つが妊娠した。これらの妊娠個体のうちの2体は、1ヶ月で自然流産した。その残りの妊娠個体に由来する4つの胎仔を、妊娠第39日目で回収して、それらの細胞をばらばらにして、組織培地に播種した。これらの胎仔細胞(680B1−1、680B1−2、680B1−3、680B1−4)を、37℃で1時間に亘って、1μg/mlの毒素Aに曝露し、その後、培地を取り除いて、細胞を洗浄し、そして、毒素Aのない培地で置換した。
【0151】
胎仔1、2、および4は、毒素Aに影響されおらず、他方で、胎仔3に由来する細胞のほとんどが球状に丸くなっていた。このことは、この胚が、毒素Aの細胞毒性効果に対して感受性があることを示した。
【0152】
胎仔1、2および4は、FACS分析(表3を参照)によると、GS IB4レクチンに結合せず、他方、胎仔3は、レクチンに結合した。このことによって、胎仔1、2、および4は、この特定のレクチンにとって特異的であるエピトープα1,3 galを保持していないことを示唆する。
【0153】
【表3】


補体固定アッセイを、4体の胎仔すべてに由来する細胞について実行した。この補体溶解アッセイを、αgal発現の欠如についてのバイオアッセイとして展開した。ヒト血清は、α−galに対する高レベルの予め形成された抗体ならびに補体調節タンパク質(C3経路)の完全なポートフォリオを含む。細胞の表面においてα−galが存在していると、抗α−gal抗体が結合する場合に、補体カスケードを活性化して、そして、補体媒介性細胞溶解を生じる。α−galネガティブ細胞は、補体媒介性溶解に対して耐性である。これらの3つの別個の試験において、B1細胞およびコントロールブタ細胞を、ヒト血清+補体に曝露し、そして、アッセイを、α−gal誘導性補体媒介性細胞溶解に対する感受性または耐性を評価するために実施した。このアッセイを、B1−1細胞、B1−2細胞およびB1−4細胞、ならびに、ヘテロ接合性GT KO(ノックアウト)細胞(B1−3、galポジティブ)を用いて、そして、コントロールとして野生型α−gal(+)PCFF4−6ブタ細胞を使用して、実施した。細胞を、3つの処置のうちの1つに対して曝露した。2つのネガティブコントロールである、ウシ血清アルブミン(BSA)、および熱不活性化ヒト血清(HIA−HS)は、いかなる機能性補体タンパク質も含まず、したがって、いかなる有意な細胞溶解をも引き起こすとは予測されなかった。第3の処置である非熱不活性化ヒト血清(NHS)は、機能性ヒト補体ならびに抗gal特異的抗体を含み、したがって、ガラクトースα1,3ガラクトースをそれらの細胞表面上に有する細胞を溶解すると予測された。
【0154】
図1に示される結果は、B1−1細胞、B−2細胞およびB1−4細胞がヒト補体媒介性溶解に対して耐性であり、他方、B1−3細胞(α1,3Galポジティブである)は、いまだに、野生型のPCFF4−6細胞がそうであるように、ヒト血漿に対して感受性であることを、明らかに示す。
【0155】
全ての胎仔からのcDNAの配列決定結果は、胎仔1、2、および4が、第2のα1,3GT対立遺伝子における点変異(機能的不全である酵素を生じ得る変化)を含むこと(図2を参照のこと)を示す。この変異は、そのコード領域のbp424において、具体的には、α1,3GT(GGTA1)遺伝子(GenBank受託番号L36152)のエキソン9の第2塩基対において、チミン残基からグアニン残基への変換(アミノ酸(aa)142におけるチロシンからアスパラギン酸へのアミノ酸置換が起こる)として生じた。
【0156】
これは重要な変換である。なぜなら、親水性アミノ酸であるこのチロシンは、α1,3GTのUDP結合部位における重要な成分であるからである(図3)。ウシα1,3GTタンパク質の結晶構造分析によって、このチロシンは、その酵素の触媒性ドメインの中心であることが示され、このチロシンが、UDP−Gal結合に関与することが示された(Gastinel et. al. , EMBO Journal 20 (4): 638−649, 2001)。したがって、アスパラギン酸(親水性アミノ酸)へのチロシン(疎水性アミノ酸)からの変化によって、(実際に観察されたように)αGT機能の破壊が生じると予測された。
【0157】
変異したcDNAが機能的αGTタンパク質を生成しないことを確認するために、4つ全ての細胞の第2の対立遺伝子からのcDNAを、発現ベクターにクローニングし、このGT発現ベクターをヒト線維芽細胞(HeLa細胞)および霊長類であるアカゲザル細胞にトランスフェクトした。ヒトおよび旧世界ザルは、機能的α1,3GT遺伝子を欠くので、そのHeLa細胞は、レクチン結合実験によってアッセイされるように、それらの細胞表面にα1,3ガラクトースを有さない。HeLa細胞およびサル細胞は、B1−1、B1−2およびB1−4細胞から得られたcDNAでトランスフェクトされた場合に、IB4−レクチン染色によって、なおα1,3Gal陰性であったが、B1−3に由来するcDNAでトランスフェクトされたHeLa細胞およびアカゲザル細胞が、機能的α1,3GT転写物を生成し、その後α1,3Gal陽性であったことが、結果から示された。明らかに、(チロシンの代わりに)アスパラギン酸変異を有する細胞は、α1,3ガラクトシルトランスフェラーゼを生成することができない。
【0158】
(実施例4:核ドナーとしてホモ接合性α1,3GT欠損胎仔線維芽細胞を使用するクローン化ブタの生産)
核移入のための細胞の調製。ドナー細胞を、上記に一般的に記載されるように、α1,3GT欠損性についてホモ接合性の細胞を生成するために遺伝子操作した。核移入を、核ドナー(本明細書中上記で詳細に記載されるように生成した)として毒素A(トキシンA)選択ブタ線維芽細胞を使用する、当該分野で周知の方法によって行った(Daiら、Nature Biotechnology 20:251−255,2002;およびPolejaevaら、Nature 407:86−90,2000を参照のこと)。
【0159】
(胚移入および得られた生存仔の出産)
生きたα−1,3−GT dKO(ダブルノックアウト)ブタを核移入により生産しようとする最初の試みにおいて、合計16個の胚移入を、遺伝子操作したドナー細胞を用いて行った。9頭の最初の妊娠が樹立されたが、妊娠75日目を超えると、2頭しか残らなかった。5頭の子ブタが2002年7月25日に生まれた。1頭のブタは産まれて直ぐに死亡し、さらに4頭は、生きたまま産まれ、正常に見えた(図4)。
・(実施例5)
(ホモ接合性α1,3GTノックアウトブタの分析)
尾部線維芽細胞および臍組織切片標本を、全5匹のダブルノックアウト仔ブタから得、先に記載したようにGS−IB4レクチンを用いて染色した。染色は観察されなかった。このことは、これらの動物からの組織表面におけるガラクトースα1,3ガラクトースエピトープの完全な欠失を示す(データは示さず)。死亡した仔ブタ(761−1)から単離した大動脈内皮細胞および筋肉線維芽細胞および尾部線維芽細胞は、GS−IB4レクチン染色はネガティブだった。仔ブタ761−1からの筋肉繊維芽細胞のFACS分析もまた、GS−IB4結合についてネガティブな結果を示した。肝臓、腎臓、脾臓、皮膚、小腸、筋肉、脳、心臓、膵臓、肺、大動脈、舌、臍、および尾部の組織切片を、仔ブタ761−1から取得した。これらは、全て、GS−IB4染色でネガティブであった。このことは、検出可能な細胞表面α1,3Galエピトープの完全な欠如を示している。(Phelps et al.,Science 299: 411−414,2003 including figure S3)。
【0160】
本発明者らは、α1,3GT−ノックアウトマウスを用いてインビボ免疫原性試験を実施した。本発明者らは、仔ブタ761−1の膵臓から単離した島様細胞クラスター(ICC)を、α1,3GT−ノックアウトマウスに腹腔内注射した。本発者らは、コントロールとして新生の野生型仔ブタからのICCを使用した。図5に示されるように、α1,3Galに対する免疫グロブリンM(IgM)の力価の増加は、α1,3GT DKO(ダブルノックアウト)仔ブタからのICCを注射した後のα1,3GTノックアウトマウスでは観察されなかった。対照的に、野生型仔ブタICCを注射したマウスではIgM力価の有意な増加が観察された(Phelpsら、Science 299: 411−414,2003、図S4に含める)。この結果は、DKO(ダブルノックアウト)仔ブタ細胞がいかなるα1,3Galエピトープも生成しないことを明らかに実証する。
【0161】
全5匹の仔ブタから得たDNAの配列決定によって、これらの動物をクローン化するために使用した680B1−2細胞において観察されるように、GGTA1遺伝子のbp424での変異の存在が確認された(図2)。
【0162】
これは、α−GT dKO(ダブルノックアウト)ブタの同腹仔の最初に成功した生成であるので、dKO(ダブルノックアウト)仔ブタからの2匹の生じた同腹仔が、核移入によって生成された。1つの場合(同腹仔662)、核ドナー細胞としてdKO(ダブルノックアウト)胎仔線維芽細胞を用いた。同腹仔660を、核ドナーとして同腹仔761のメンバー由来の尾部線維芽細胞を用いる核移入によって生成した。これらの出生を、表4にまとめた。
【0163】
【表4】


(実施例6) (ダブルノックアウト(DKO)ブタの小集団(miniherd)を確立するためのヘテロ接合性α1,3GTシングルノックアウト(SKO)雄性ブタおよび雌性ブタの交配(breeding))
サザンブロットで確認したクローン化GT−SKO雌性ブタ計29匹、およびサザンブロットで確認したGT−SKO雄性ブタ計25匹が、現在まで生まれた。これらの雄性および雌性のヘテロ接合性(単一遺伝子α1、3GT ノックアウトブタ)を、自然交配および人工受精(AI)によって繁殖させ、前臨床試験およびヒト臨床試験において使用するためのDKOブタ集団を生成した。本発明者らは、13同腹仔から16匹のα,3−GT DKO 仔ブタを生成した。
・本発明は、実施形態を参照して記載されている。本明細書中に記載される一般的な発明の他の実施形態およびその改変は、当業者にとって明らかであり、そしてそれらはすべて、本発明の範囲内にあると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠くブタの産生のための方法であって、
該α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)遺伝子の不活化についてヘテロ接合性である雄のブタを、該α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)遺伝子の不活化についてヘテロ接合性である雌のブタと交配させる工程;
を包含し、
一方または両方のブタは、該α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)遺伝子の対立遺伝子における点変異の存在に起因してヘテロ接合性である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠くブタ同士を交配させて、機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠くブタの集団を生成する工程、
をさらに包含する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記雄のブタまたは雌のブタのうちの少なくとも一方が、遺伝子標的化事象を介して不活化された少なくとも1つのα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)遺伝子対立遺伝子を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠くブタ同士を交配させて、機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠くブタの集団を生成する工程、
をさらに包含する、方法。
【請求項5】
機能的α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠く天然に存在しないブタであって、該α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)の少なくとも一方の対立遺伝子が点変異を介して不活性になっている、ブタ。
【請求項6】
請求項5のブタ同士を交配させることにより生成されたブタの集団であって、該集団におけるブタは、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠く、集団。
【請求項7】
請求項6に記載のブタから得られた細胞、組織、または器官であって、該ブタは、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠く、細胞、組織、または器官。
【請求項8】
請求項5に記載のブタであって、前記α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)の少なくとも一方の対立遺伝子が遺伝子標的化事象を介して不活性になっている、ブタ。
【請求項9】
請求項8に記載のブタ同士を交配させることにより生成されたブタの集団であって、該集団におけるブタは、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠く、集団。
【請求項10】
請求項9に記載のブタから得られた細胞、組織、または器官であって、該ブタは、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α−1,3−GT)のいかなる発現をも欠く、細胞、組織、または器官。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−15697(P2011−15697A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204963(P2010−204963)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2004−539849(P2004−539849)の分割
【原出願日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(504364367)レビビコア, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】