説明

歌唱レベル判定方法

【課題】 歌唱レベルを客観的に判定する。
【解決手段】 CPU23は、各セクションごとに存在する歌唱技術記号を抽出し(ステップS3)、各セクションの得点を演算し(ステップS5)、演算結果をメモリに記憶する。ステップS7にて、最終セクションまで終了したと判断した場合には、歌唱レベルを演算して(ステップS9)、その平均を当該歌手の歌唱レベルとして演算する。このように、ブレスとブレスの間に存在する歌唱技術記号の存在程度が高い場合には、全体としてレベルが高く、低い場合には全体として低いと決定している。このように、ブレスによって吸気した空気を身体外に放出するときの声帯のふるえによって様々な音を出すという人間の発声メカニズムに基づいて、歌唱レベルを決定できるので、客観的なレベル判定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲の歌唱レベル判定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歌唱のあと、歌唱者に採点結果を報知することができるカラオケ装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特願2001−348457
【0004】
【特許文献2】特願平9−93551
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記公知文献は、所定の音符とのズレを判断するものであり、曲の歌唱技術を駆使すると、採点が低くなるというものであった。
【0006】
この発明は、上記問題を解決し、歌唱レベルの高い歌い方をした場合には、歌唱レベルが高く判定できる歌唱レベル決定装置またはその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1)本発明にかかる歌唱レベル判定方法は、歌唱レベルを判定する歌唱レベル判定方法であって、歌唱技術記号が付された歌唱データが与えられると、前記歌唱データに存在する歌唱技術記号について、歌唱技術記号とその個別難易度が予め対応づけられた個別難易度テーブルを参照して、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号の種類と存在数を息継ぎマーク間ごとにカウントし、前記難易度テーブルを参照して、1の息継ぎ区間における前記息継ぎマーク以外の歌唱技術記号についての個別難易度を総計して、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を読み出して、予め定められた歌唱レベル判定規則によって前記歌唱データの歌唱レベルを決定する。このように、息継ぎマーク間に存在する歌唱技術記号についての個別難易度を各息継ぎ区間ごとに総計し、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を読み出して、予め定められた歌唱レベル判定規則によって前記歌唱データの歌唱レベルを決定することにより、歌唱技術を考慮した歌唱レベル判定ができる。なぜなら、人間は1回の息継ぎで吸気できる空気の量には限界があり、かかる所定量の空気を放出することにより様々な音を出すという人間の発声メカニズムにおいては、息継ぎ区間内に、難しい歌唱技術記号が多いほど困難を伴うからである。
【0008】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置は、1)歌唱技術記号とその個別難易度を対応づけた個別難易度テーブルを記憶する難易度テーブル記憶手段、2)歌唱データ中に歌唱技術記号が付された歌唱データを記憶する歌唱データ記憶手段、3)前記歌唱データに存在する歌唱技術記号を抽出する歌唱技術記号抽出手段、4)前記抽出した歌唱技術記号について、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号を特定し、特定した息継ぎマークについて前記難易度テーブル記憶手段に記憶された難易度テーブルを参照して、各種類の歌唱技術記号の個別難易度を存在数だけ乗じて、息継ぎマーク間に存在する歌唱技術記号についての個別難易度を各息継ぎ区間ごとに総計し、各息継ぎ区間における区間別評価を決定する区間別評価決定手段、5)前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を平均した平均区間別評価を前記歌唱データの歌唱レベルとして決定する歌唱レベル決定手段を備えている。このように、息継ぎマーク間に存在する歌唱技術記号についての個別難易度を各息継ぎ区間ごとに総計し、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、この区間別評価の平均区間別評価を前記歌唱データの歌唱レベルとして決定することにより、前記歌唱データの歌唱レベルを客観的に決定することができる。なぜなら、人間は1回の息継ぎで吸気できる空気の量には限界があり、かかる所定量の空気を放出することにより様々な音を出すという人間の発声メカニズムにおいては、息継ぎ区間内に、難しい歌唱技術記号が多いほど困難を伴うからである。
【0009】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置は、1)歌唱技術記号とその個別難易度を対応づけた個別難易度テーブルを記憶する難易度テーブル記憶手段、2)歌唱データ中に歌唱技術記号が付された歌唱データを記憶する歌唱データ記憶手段、3)前記歌唱データに存在する歌唱技術記号を抽出する歌唱技術記号抽出手段、4)前記抽出した歌唱技術記号について、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号の種類と存在数を息継ぎマーク間ごとに特定し、前記難易度テーブル記憶手段に記憶された難易度テーブルを参照して、1の息継ぎ区間における前記息継ぎマーク以外の歌唱技術記号についての個別難易度を総計して、各息継ぎ区間における区間別評価を決定する区間別評価決定手段、5)前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価に基づいて、前記歌唱データの歌唱レベルを決定する歌唱レベル決定手段を備えている。このように、息継ぎマーク間に存在する歌唱技術記号についての個別難易度を各息継ぎ区間ごとに総計し、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、各息継ぎ区間ごとの区間別評価に基づいて、前記歌唱データの歌唱レベルを決定することにより、歌唱レベルを客観的に決定することができる。なぜなら、人間は1回の息継ぎで吸気できる空気の量には限界があり、かかる所定量の空気を放出することにより様々な音を出すという人間の発声メカニズムにおいては、息継ぎ区間内に、難しい歌唱技術記号が多いほど困難を伴うからである。
【0010】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、歌唱レベル決定手段は、前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価の平均値を前記歌唱データの歌唱レベルとして決定する。このように、区間別評価の平均区間別評価を歌唱レベルとして決定することにより、歌唱レベルを曲全体で決定することができる。
【0011】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、歌唱レベル決定手段は、予め記憶した区間抽出規則に合致した区間別評価の区間を特定し、その区間の区間別評価を用いて前記歌唱データの歌唱レベルを決定する。したがって、前記区間抽出規則に合致した区間の難易度によって、曲全体の歌唱レベルを決定することができる。
【0012】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、歌唱レベル決定手段は、前記区間抽出規則に合致した区間の区間別評価の平均値を前記歌唱データの歌唱レベルとして決定する。したがって、前記区間抽出規則に合致した区間の難易度の平均によって、曲全体の歌唱レベルを決定することができる。
【0013】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、歌唱レベル決定手段は、前記区間抽出規則に合致した区間の分布位置に基づいて、前記歌唱データの歌唱レベルを決定する。したがって、前記区間抽出規則に合致した区間がどのように分布しているかによって、曲全体の歌唱レベルを決定することができる。
【0014】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、歌唱レベル決定手段は、前記区間抽出規則に合致した区間が、分散しているほど前記歌唱レベルを高く決定する。したがって、前記区間抽出規則に合致した区間が分散している場合に、歌唱レベルを高く決定することができる。
【0015】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、歌唱レベル決定手段は、前記区間抽出規則に合致した区間が連続しているほど前記歌唱レベルを高く決定する。したがって、前記区間抽出規則に合致した区間が連続している場合に、歌唱レベルを高く決定することができる。
【0016】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、歌唱技術記号抽出手段は前記歌唱技術記号を出現順を保持したまま抽出し、前記歌唱レベル決定手段は、出現する歌唱技術記号の順列が所定の組合せ規則に合致する場合には、前記歌唱レベルを高く決定する。したがって、歌唱技術記号の組合せを考慮した歌唱レベル判断が可能となる。
【0017】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定装置においては、1)歌唱技術記号とその個別難易度を対応づけた個別難易度テーブルを記憶する難易度テーブル記憶手段、2)歌唱技術記号が付された歌唱データを記憶する歌唱データ記憶手段、3)前記歌唱データに存在する歌唱技術記号を抽出する抽出手段、4)前記抽出した歌唱技術記号について、その種類および存在数を特定し、前記難易度テーブル記憶手段に記憶された難易度テーブルを参照して、全歌唱技術記号の総計を求め、これを全歌唱技術記号の数で除算した値を、前記歌唱データの歌唱レベルとして決定する歌唱レベル決定手段を備えている。このように、前記歌唱データに存在する歌唱技術記号を全て抽出し、これらを前記難易度テーブルを用いて総計し、これを全歌唱技術記号の数で除算することにより、どの程度難しい歌唱技術記号が存在するかを判断することができる。したがって、歌唱レベルを考慮したレベル判定ができる。
【0018】
その他本発明にかかる歌唱レベル決定方法は、曲難易度をコンピュータによって演算させる方法であって、1)歌唱技術記号とその個別難易度を対応づけた個別難易度テーブルを記憶しておき、2)歌唱技術記号が付された歌唱データが与えられると、前記歌唱データに存在する歌唱技術記号を抽出し、3)前記抽出した歌唱技術記号について、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号の種類と存在数を息継ぎマーク間ごとにカウントし、前記記憶された難易度テーブルを参照して、1の息継ぎ区間における前記息継ぎマーク以外の歌唱技術記号についての個別難易度を総計して、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、4)前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を用いて、前記歌唱データの歌唱レベルを決定する。このように、息継ぎマーク間に存在する歌唱技術記号についての個別難易度を各息継ぎ区間ごとに総計し、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、この区間別評価を用いて、前記歌唱データの歌唱レベルを決定することにより、歌唱技術を考慮した歌唱レベル判定ができる。なぜなら、人間は1回の息継ぎで吸気できる空気の量には限界があり、かかる所定量の空気を放出することにより様々な音を出すという人間の発声メカニズムにおいては、息継ぎ区間内に、難しい歌唱技術記号が多いほど困難を伴うからである。
【0019】
その他本発明にかかるプログラムは、歌唱レベルをコンピュータに演算させるためのプログラムであって、前記プログラムは、以下のステップを前記コンピュータに実行させるためのプログラムである。1)歌唱技術記号が付された歌唱データが与えられると、前記歌唱データに存在する歌唱技術記号を抽出してメモリに一時記憶させ、2)歌唱技術記号とその個別難易度が予め対応づけられた個別難易度テーブルを読み出してメモリに一時記憶させ、3)前記抽出した歌唱技術記号について、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号の種類と存在数を息継ぎマーク間ごとにカウントしてメモリに一時記憶させ、4)前記メモリに一時記憶された難易度テーブルを参照して、1の息継ぎ区間における前記息継ぎマーク以外の歌唱技術記号についての個別難易度を総計して、各息継ぎ区間における区間別評価を決定してメモリに一時記憶させ、5)前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を読み出して、予め定められた歌唱レベル判定規則によって前記歌唱データの歌唱レベルを決定する。このように、息継ぎマーク間に存在する歌唱技術記号についての個別難易度を各息継ぎ区間ごとに総計し、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を読み出して、予め定められた歌唱レベル判定規則によって前記歌唱データの歌唱レベルを決定することにより、歌唱技術を考慮した歌唱レベル判定ができる。なぜなら、人間は1回の息継ぎで吸気できる空気の量には限界があり、かかる所定量の空気を放出することにより様々な音を出すという人間の発声メカニズムにおいては、息継ぎ区間内に、難しい歌唱技術記号が多いほど困難を伴うからである。
【0020】
なお、本明細書において、「区間抽出規則」とは、実施形態では、上位10の区間別評価の区間の値を抽出するとか、全区間の区間別評価の区間の値を抽出するとかが該当するが、これに限定されるわけではなく、所定の規則を予め定めておけばよい。また、「歌唱レベル判定規則」は実施形態では、上位10の区間別評価の区間の値の平均とするようにしたが、全区間の区間別評価の区間の値を平均するようにしてもよい。当然、これに限定されるわけではなく、所定の規則を予め定めておけばよい。すなわち、どの区間を抽出するのかという区間抽出規則および抽出した区間の各評価からどのように評価をするのかという評価計算規則を予め決めておけばよい。また、「組合せ規則」とは、実施形態では、図4に示す組合せ難易度テーブルに記憶された区間別評価を決定する2以上の歌唱技術記号が所定の順番で連続する場合の規則が該当する。
【0021】
また、「歌唱データ」とは、歌詞データはもちろん楽譜データを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔1.概略および機能ブロックの説明〕
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明にかかる歌唱レベル決定装置1の機能ブロック図を示す。歌唱レベル決定装置1は、図1に示すように、歌唱データ記憶手段3、歌唱技術記号抽出手段5、難易度テーブル記憶手段7、区間別評価決定手段8、および歌唱レベル決定手段9を備えている。
【0023】
難易度テーブル記憶手段7は、歌唱技術記号とその個別難易度を対応づけた個別難易度テーブルを記憶する。歌唱データ記憶手段3は、歌唱データ中に歌唱技術記号が付された歌唱データを記憶する。歌唱技術記号抽出手段5は、前記歌唱データに存在する歌唱技術記号を抽出する。区間別評価決定手段8は、前記抽出した歌唱技術記号について、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号を特定し、特定した息継ぎマークについて前記難易度テーブル記憶手段7に記憶された難易度テーブルを参照して、各種類の歌唱技術記号の個別難易度を存在数だけ乗じて、息継ぎマーク間に存在する歌唱技術記号についての個別難易度を各息継ぎ区間ごとに総計し、各息継ぎ区間における区間別評価を決定する。歌唱レベル決定手段9は、前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を平均した平均区間別評価を前記歌唱データの歌唱レベルとして決定する。
【0024】
このように、データに存在する歌唱技術記号を抽出し、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号を特定し、特定した息継ぎマークについて、歌唱技術記号とその個別難易度を対応づけた難易度テーブルを参照して、各息継ぎ区間における区間別評価を決定して、この各息継ぎ区間ごとの区間別評価を平均した平均区間別評価を前記歌唱データの歌唱レベルとして決定する。したがって、息継ぎという人間の発声メカニズムに関連して、前記歌唱レベルを決定することができる。
【0025】
〔2.ハードウェア構成〕
図1に示す歌唱レベル決定装置1のハードウェア構成について図2を用いて説明する。図2は、歌唱レベル決定装置1をCPUを用いて構成したハードウェア構成の一例である。
【0026】
歌唱レベル決定装置1は、CPU23、メモリ27、ハードディスク26、モニタ30、CDD(CD−ROMドライブ)25、入力デバイス28およびバスライン29を備えている。CPU23は、ハードディスク26に記憶されたプログラムにしたがいバスライン29を介して、各部を制御する。なお、オペレーティングシステムとしては、例えば、WindowsXp(商標)等を採用すればよい。
【0027】
ハードディスク26には、後述するプログラムが記憶されている。このプログラムは、CDD25を介して、プログラムが記憶されたCDROM25aから読み出されてハードディスク26にインストールされたものである。なお、CDROM以外に、フレキシブルディスク(FD)、ICカード等のプログラムをコンピュータ可読の記録媒体から、ハードディスクにインストールさせるようにしてもよい。さらに、通信回線を用いてダウンロードするようにしてもよい。
【0028】
本実施形態においては、プログラムをCD−ROMからハードディスク26にインストールさせることにより、CD−ROMに記憶させたプログラムを間接的にコンピュータに実行させるようにしている。しかし、これに限定されることなく、CD−ROMに記憶させたプログラムをCDD25から直接的に実行するようにしてもよい。なお、コンピュータによって、実行可能なプログラムとしては、そのままのインストールするだけで直接実行可能なものはもちろん、一旦他の形態等に変換が必要なもの(例えば、データ圧縮されているものを、解凍する等)、さらには、他のモジュール部分と組み合わせて実行可能なものも含む。
【0029】
ハードディスク26は、プログラム記憶部26p、難易度テーブル記憶部26n,歌詞データ記憶部26kを有する。難易度テーブル記憶部26nは、図3に示す記号別難易度テーブルと図4に示す組合せ難易度テーブルが記憶されている。記号別難易度テーブルは、技術記号がその個別難易度と対応づけられて記憶されている。
【0030】
図3に示す各技術記号について簡単に説明する。「ブレス」とは、息継ぎ箇所を示す。「短いブレス」(ディフィカルトブレス)とは、ロングトーン、ノンブレス箇所の後などのように、1つ前の記号との間隔が短く、短い間に多量の息継ぎをする必要がある箇所である。「ノンブレス」とは、息継ぎ無しで発声を通さなければいけない箇所である。「ロングトーン」とは、音符によってまたは音符とは別に、歌い手が音を伸ばして歌っている箇所である。本実施形態においては、約1拍につき、記号を1つ付けるようにしたが、これに限定されるわけではない。また、記号が2つ以上続く場合に、これを評価対象とするようにした(2つ続く場合は2点、3つ続く場合は3点・・・)。「瞬発力(インパクト)」とは、1曲中の技術を相対的に判断して、詞と曲の成り立ち上、横隔膜による瞬発的な発声を必要とする箇所である。「ノンブレス」とは、息継ぎ無しで発声を通す箇所をいう。「ビブラート」とは、横隔膜から声帯までの間の筋肉を震わすことにより主旋律に波をつける箇所である。「フェイク」とは、主旋律に波をつけるという点ではビブラートと同じであるがそのやり方が異なる。「フェイク」は延髄を中心として首を振ることにより、主旋律に波をつけるというテクニックである。演歌のこぶしなども「フェイク」に属する。「ファルセット」とは、裏声を用いた発声箇所である。地声が体を中心に共鳴させている声の響かせ方に対して、ファルセットは音が喉から口の中の上の骨(口蓋部分)に突き当たり、口蓋から頭蓋骨に響き、頭蓋骨天頂部から、音が出ているイメージの音である。発声された音の周波数自体高い。「トップファルセット」とは、 裏声でもかなり音程の高い発生箇所であり、どちらかというと悲鳴を音階に変えたような音である。たとえば、歌手”マライヤキャリー”や、グループ”アースウインド&ファイアー”のフィリップベイリーや、ラビンユーを歌った歌手”ミニーリパートン”など、これが発声できる人は、限られているといわれている。「音程注意」とは、主旋律の中でもコードがセブンス、ナインスなどにかかり、作者の意図を重要視するべきメロディーラインの部分や、急な音の高低や、それが連続して続く様な、ピッチコントロールが難しい箇所である。「リズム注意」とは、3連のリズムや、裏打ちのリズムなどのリズムに関して難しい箇所である。
【0031】
なお、本実施形態においては、以上の歌唱テクニックを採用したが、これに限定されず、たとえば、ブレス間の発声音符数など、他の難易度項目を採用することもできる。
【0032】
つぎに、図4に示す組合せ難易度テーブルについて説明する。本実施形態においては、発声の切り替え技術に着目して、以下の組合せに該当する場合は、当該セクションの難易度が高くなるように点数と記号の組合せとの対応情報が記憶されている。具体的には、ロングトーンからビブラートへの切り換えが存在する場合は4点、ビブラートのあとフェイクその後ビブラートという切り換えが存在する場合は7点、連続するフェイクが存在する場合は8点、地声とファルセットへの切り換えが存在する場合は8点とした。本実施形態においては、地声とファルセットへの切り換えが存在する場合とは、そのセクションの頭からファルセットでない場合とした。かかる判断手法については後述する。
【0033】
図2に示す歌詞データ記憶部26kについて説明する。歌詞データ記憶部26kは、歌詞に前記歌唱技術記号が記述された歌唱技術記号付き歌詞が記憶される。具体例を、図5に示す。なお、かかる歌唱技術記号付き歌詞は、歌い手が歌っている曲を評価できる人間が聴いて、どのようなテクニックを用いているかを把握して付与したものである。
【0034】
〔3.フローチャート〕
歌唱レベル決定装置1における処理について図6を用いて説明する。以下では、図5に示す歌唱技術記号付き歌詞データにおけるレベル決定処理を例として説明する。CPU23は、まず、対象セクション番号iを初期化する(i=0とする)(ステップS1)。つぎに、CPU23は、0番目のセクションを特定し、存在する歌唱技術記号を抽出する(ステップS3)。この場合、図7Aに示すように、6つの歌唱技術記号が抽出される。ここで、各歌唱技術記号間にカンマ記号「,」が存在しているのは、実際の歌詞を構成する文字が各歌唱技術記号間にある場合である。これは、後述する複合技術点を演算するためのものである。また、先頭の歌唱技術記号については、そのセクションの文字が存在する場合は、カンマ記号を記録するようにした。これは、後述するように、当該歌唱技術記号がそのセクションの途中からはじまっているのかを判断するためのものである。
【0035】
CPU23は、0番目のセクションの得点を演算する(ステップS5)。この場合、記号による得点は、フェイク、ロングトーン、ロングトーン、ビブラート、ビブラート、ビブラートある。本実施形態においては、ロングトーンは2以上つながっている場合に、1点/1つとした。したがって、図3に示すテーブルを参照して、4+3+3+3で計13点を得る。また、図4に示すテーブルを参照して、複合技術点としては、フェイクとロングトーンの切替があるので、総計17点となる。
【0036】
CPU23は、かかる演算結果(ゼロ番目のセクション:得点17)をメモリに一時記憶する。
【0037】
CPU23は、最終セクションまで終了したか否か判断する(ステップS7)。この場合、最終セクションまで終了していないので、対象セクション番号iをインクリメントし(ステップS8)、ステップS3以下の処理をおこなう。
【0038】
この場合、CPU23は、1番目のセクションを特定し、存在する歌唱技術記号を抽出する(ステップS3)。この場合、図7Bに示すように、6つの歌唱技術記号が抽出される。CPU23は、1番目のセクションの得点を演算する(ステップS5)。この場合、記号による得点は計5+3+3=11点となる。複合技術点は、地声とファルセットの切り換で8点となる。したがって、総計19点となる。CPU23は、かかる演算結果をメモリに一時記憶する。
【0039】
以下、同様にして、図7C,図7D,図7E、図7Fに示すような記号が抽出され、第2セクション:11点、第3セクション:0点、第4セクション:0点,第5セクション:31点,・・・・・とセクションごとの得点が得られる。
【0040】
なお、図7Cに示す第2セクションでは、歌唱技術記号”ファルセット”の前に、カンマ記号がない。したがって、当該セクションの最初からファルセットにて発声していると判断する。これに対して、図7Bに示す第1セクションや図7Iに示す第8セクションでは、歌唱技術記号”ファルセット”の前に、カンマ記号がある。したがって、セクションの途中にて地声とファルセットとの切替があると判断する。また、第1セクションでは歌唱技術記号”ロングトーン”と”ビブラート”の間に、カンマ記号がある。したがって、図4に示す発声切替はないと判断することができる。
【0041】
CPU23は、ステップS7にて、最終セクションまで終了したと判断した場合には、歌唱レベルを演算する(ステップS9)。本実施形態においては、区間抽出規則として、全セクションのうち、上位20の得点のセクションを抽出するという規則を採用し、さらにこれらの平均を当該曲の歌唱レベルとして演算するようにした。このように、所定の上位のセクションによって歌唱レベルを決定することにより、難しいセクションによって曲全体の歌唱レベルを決定することができる。
【0042】
図8に同じ曲を異なる歌い手が歌った場合の歌唱技術記号付き歌詞を一例を示す。この場合には、上記実施形態と同様にして、図9に示すような 歌唱技術記号が抽出され、各セクションごとの得点が演算される。この場合、図7に示す場合と較べて、抽出された歌唱技術記号が少なく、また、そして、各セクションごとの得点に基づいて、歌唱レベルが演算される。このように、同じ曲を異なる歌い手が歌った場合には、付加されている歌唱技術記号およびその組合せによって、歌唱レベルが変動する。
【0043】
〔4.他の実施形態〕
上記実施形態においては、歌唱技術記号が付された曲の歌唱レベルを判定するようにした。かかる歌唱レベル判定を行うことにより、たとえば、ある曲をある歌い手が歌った場合の歌唱記号を付して、この装置に演算させることにより、カラオケなどにおける曲の難易度を提供することができる。かかる難易度を歌う場合の選考判断要素として採用することもできる。
【0044】
なお、所定の上位のセクションを抽出するのではなく、全セクションのセクションごとの得点を平均するようにしてもよい。この場合の処理としては、各セクションごとに得点を求めることなく、全歌唱技術記号を抽出し、存在するブレス数で除算するようにしてもよい。このように、前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価に基づいて、当該歌い手の歌唱レベルを決定することも可能である。
【0045】
また、前記区間抽出規則に合致した区間の区間別評価の平均値ではなく、前記区間抽出規則に合致した区間の分布位置に基づいて、前記歌唱レベルを決定するようにしてもよい。たとえば、前記区間抽出規則に合致した区間が、分散しているほど前記歌唱レベルを高く決定したり、前記区間抽出規則に合致した区間が連続しているほど前記歌唱レベルを高く決定することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、図3、図4に示すテーブルに示す歌唱技術記号が当該曲に存在するか否かで判断するようにした。しかし、かかる歌唱技術記号は一例であり、他の歌唱技術記号を採用してもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、存在する歌唱技術記号から、単独の難易度および組合せによる難易度の双方を用いて、歌唱レベルを判定するようにした。しかし、いずれか一方だけで判断するようにしてもよい。
【0048】
なお、本実施形態においては、コンピュータによってかかる演算をおこなうようにしたが、人間が計算するようにしてもよい。この場合でも、ブレスとブレスの間に存在する歌唱技術記号の存在程度が高い場合には、歌唱レベルが高く、低い場合には低いと決定できるので、ブレスによって吸気した空気を身体外に放出するときの声帯のふるえによって様々な音を出すという人間の発声メカニズムに基づいて、歌唱レベルを決定できるので、客観的な歌唱レベル決定が可能となる。
【0049】
また、上記実施形態においては、ブレス間のブレス以外の歌唱技術記号の存在に応じた歌唱レベルを演算するようにしたが、あるセクションが通常のブレスではなく、当該セクションの最後に存在する短いブレスによって区切られる場合には、当該セクションの評価値として、短いブレスのぶんだけ、加算するようにしてもよい。これは、短いブレスについては、歌唱技術の1つとして判断するようにしてもよいくらい、歌唱レベルの高い歌唱技術であるからである。
【0050】
なお、上記実施形態においては、歌唱データとして歌詞データを例とした場合について説明したが、楽譜データであってもよい。かかる表記例を図10に示す。このように、歌唱技術記号が付加された楽譜データでも、同様に適用することができる。また、図10においては、音符と音符の間に歌唱技術記号を付加した場合について説明したが、付加する位置についてはいずれでもよい。
【0051】
なお、上記実施形態においては、ブレス間のブレス以外の歌唱技術記号に応じた得点を演算するようにしたが、ブレス間の発声音符数に応じた得点をセクションごとに求め、かかるセクションごとの得点から全体の歌唱レベルを演算するようにしてもよい。
【0052】
上記実施形態においては、歌唱データから歌唱技術記号を一旦抜き出しこれらの歌唱技術記号だけとしてから各区間ごとに難易度を演算するようにしたが、歌唱データに存在する歌唱技術記号をそのまま検出して、直接各区間ごとに難易度を演算するようにしてもよい。すなわち、上記抽出とはこのような歌唱技術記号をそのまま検出する手法も含む概念である。
【0053】
本実施形態においては、図1に示す機能を実現する為に、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部もしくは全てを、ロジック回路等のハードウェアによって実現してもよい。
【0054】
なお、プログラムの一部の処理をさらに、オペレーティングシステム(OS)にさせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明にかかる歌唱レベル決定装置1の機能ブロック図である。
【図2】歌唱レベル決定装置1をCPUを用いて実現したハードウエア構成の一例を示す図である。
【図3】記号別難易度テーブルのデータ構造を示す。
【図4】組合せ難易度テーブルのデータ構造を示す。
【図5】歌唱技術記号付きの歌詞の一部である。
【図6】全体フローチャートである。
【図7】セクションごとに歌唱技術記号だけを抜き出した一例を示す。
【図8】歌唱技術記号付きの歌詞の一部である。
【図9】図8に示す歌唱技術記号が付された歌詞から、セクションごとに歌唱技術記号だけを抜き出した一例を示す。
【図10】歌唱技術記号付きの楽譜データの一部を示す。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・歌唱レベル決定装置
23・・・CPU
27・・・メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌唱レベルを判定する歌唱レベル判定方法であって、
歌唱者による歌唱を聞いた評価者が付与した歌唱技術記号が付された歌唱データが与えられると、前記歌唱データに存在する歌唱技術記号について、歌唱技術記号とその個別難易度が予め対応づけられた個別難易度テーブルを参照して、息継ぎマークの間に存在する息継ぎマーク以外の歌唱技術記号の種類と存在数を息継ぎマーク間ごとにカウントし、前記難易度テーブルを参照して、1の息継ぎ区間における前記息継ぎマーク以外の歌唱技術記号についての個別難易度を総計して、各息継ぎ区間における区間別評価を決定し、
前記各息継ぎ区間ごとの区間別評価を読み出して、予め定められた歌唱レベル判定規則によって前記歌唱データの歌唱レベルを決定すること、
を特徴とする歌唱レベル判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−287275(P2008−287275A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172099(P2008−172099)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【分割の表示】特願2003−192855(P2003−192855)の分割
【原出願日】平成15年7月7日(2003.7.7)
【出願人】(503244114)
【Fターム(参考)】