説明

止水装置およびこれに用いる治具

【課題】通信ケーブルや電力ケーブルと、これを収容して保持する保護管との間を止水する止水装置において、ケーブルの本数にかかわりなく止水できるようにする。
【解決手段】ケーブル11に巻き付けられる水膨張シート41と、水膨張シート41の上からケーブル11に対して取り付けられ、水膨張シート41に接する内周面と上記の保護管に接する外周面とを備えたパッキン51を有し、パッキン51の内周面と外周面には、水分を吸収して膨張する水膨張層52,53が一体に形成された止水装置31。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信ケーブルや電力ケーブルと、これを収容して保持する保護管との間を止水する止水装置に関し、より詳しくは、ケーブルの本数にかかわりなく止水できるような止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
止水装置としては、下記特許文献1に開示されているようなものがある。これは、筒状に形成された止水栓であり、止水栓をケーブルの外周面に嵌めて取り付けた後、保護管の端部に挿入して使用するものである。止水栓は、水膨張性ゴム組成物で形成されており、内周面と外周面の一部に、水膨張性繊維組成物からなるマットが備えられている。すなわち、止水栓を保護管に嵌めた後、止水栓が水を吸収すると膨張が起こり、保護管とケーブルの間を止水するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2793234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の止水栓によれば、止水栓の全体が膨張することにより止水がなされるが、止水栓の水膨張性繊維組成物以外の部分、つまり水膨張性ゴムからなる本体部分が膨張しきるまでには、1日〜数日など、長い時間がかかる。このため、膨張しきるまでの間は十分な止水性を得ることはできない。
【0005】
また、止水栓の内周の径が収容するケーブルの太さに対応したものであるので、収容するケーブルの本数や太さに応じた複数種類の止水栓が必要であった。
【0006】
そこで、この発明は、即座に十分な止水性を得ることができるうえに、収容するケーブルの本数や太さが変わっても、これに対応できるようにすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段は、ケーブルと該ケーブルを保護する保護管との間を止水する止水装置であって、前記ケーブルに巻き付けられる水膨張シートと、該水膨張シートの上からケーブルに対して取り付けられ、前記保護管に接する外周面を有したパッキンを備え、該パッキンの外周面には、水分を吸収して膨張する水膨張層が一体に形成された止水装置である。
【0008】
別の手段は、ケーブルと該ケーブルを保護する保護管との間を止水する止水装置であって、上記ケーブルに巻き付けられる水膨張シートと、該水膨張シートの上からケーブルに対して取り付けられ、水膨張シートに接する内周面と上記の保護管に接する外周面とを備えたパッキンを有し、該パッキンの内周面と外周面には、水分を吸収して膨張する水膨張層が一体に形成された止水装置である。
【0009】
すなわち、水膨張シートをケーブルに巻きつけた後、この上からパッキンを取り付けて保護管に挿入し、巻きつけた水膨張シートと、パッキンの水膨張層が水を吸収すれば、すぐさまこれらが膨張し、止水性を得られる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、水膨張シートと水膨張層の膨張で止水性を得るので、止水が即座に行える。
【0011】
また、ケーブルに巻きつける水膨張シートを備えているので、ケーブルの本数や太さの違いにも対応し易く、一種類のパッキンを複数種類の場合に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】止水装置の挿入状態を示す断面図。
【図2】止水装置の挿入状態を示す断面図。
【図3】止水装置の使用状態を示す斜視図。
【図4】パッキンの正面図。
【図5】他の例に係るパッキンの断面図。
【図6】他の例に係るパッキンの斜視図。
【図7】他の例に係るパッキンの斜視図。
【図8】他の例に係るパッキンの断面図。
【図9】他の例に係るパッキンの正面図。
【図10】他の例に係るパッキンの正面図。
【図11】他の例に係るパッキンの片側断面図。
【図12】他の例に係るパッキンの断面図。
【図13】他の例に係るパッキンの斜視図。
【図14】図13のパッキンの縦断面図。
【図15】他の例に係るパッキンの縦断面図。
【図16】図13のパッキンを用いた止水装置の挿入状態を示す断面図。
【図17】他の例に係る止水装置の挿入状態を示す断面。
【図18】補助介装部材の斜視図。
【図19】治具の分解斜視図。
【図20】治具の組み付け状態の斜視図。
【図21】治具の使用状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1と図2はいずれも、ケーブル11と保護管12との間を止水する止水装置31を保護管12の端部に挿入した状態を示す断面図であり、保護管12の形状(図1の保護管12は端部にくびれ部12aを有する一方、図2の保護管12はまっすぐに形成されている。)によって、具体的な形状は異なるものの、基本的な構成は同一である。
【0014】
すなわち、ケーブル11に巻き付けられる水膨張シート41と、水膨張シート41の上からケーブル11に対して取り付けられるパッキン51を有し、パッキン51における水膨張シート41に接する内周面51aと保護管12に接する外周面51bのうち少なくとも外周面51bに、水分を吸収して膨張する水膨張層52,53が一体に形成されている。
【0015】
以下、主に図1に示した形状の保護管12に対応する止水装置31を例に説明するが、図2に示した形状の保護管12に対応する止水装置31の場合でも同様である。
【0016】
水膨張シート41は、図3に仮想線で示したように帯状をなし、水分を吸収すると膨張するもので、たとえば不織布と水膨張材で構成される。不織布にはポリエチレンテレフタレートなどが用いられ、水膨張材には、粉粒状のもの、シート状のもの、液状のもの、繊維状のものなどが適宜使用される。
【0017】
パッキン51は、保護管12の端部に嵌る環状をなしたゴム(合成ゴムまたは天然ゴム)製で、一体に形成された上記の水膨張層52,53を有する。
【0018】
ケーブル11に巻いた水膨張シート41に接する内周面51aは、図1に示したようにパッキン51の長さ方向(挿入方向)全体にわたって同一径を有するが、保護管12に接する外周面51bは、保護管12の端部の内周面の形状、径の違いに対応して凹凸を有する。図中54は返しである。そして、図3、図4に示したように、これら内周面51aと外周面51bを連通する割れ目55を一部に有する。この割れ目55において開くことで、パッキン51をケーブル11に取り付けることができる。
【0019】
割れ目55は、図4(a)に示すように、相互に当接または近接するものであるも、図4(b)に示したように当接せずに欠損状態のものであるもよい。また、ゴムの硬さは適宜設定されるが、たとえばJIS規格 K6253の5 デュロメータ硬さ試験による硬度単位HAで、50〜70HAくらいであるとよい。やわらか過ぎるとケーブルに従って移動したりするおそれがあり、硬すぎると保護管12に嵌めにくいからである。
【0020】
また、内周面51aの全体と、外周面51bの返しよりも挿入方向後端側の部分と、割れ目55の端面55aには水膨張層52,53,56が形成されている。水膨張層56は上記の水膨張シート41と同様に形成された水膨張シートをパッキンの上記の3箇所に一体化して形成したものである。一体化は、パッキン51の成形時に一体成形して行うほか、パッキン51を成形したあとで貼り付けて行うこともできる。
【0021】
このように構成された止水装置31では、まず図3に示したように、保護管12(図1、図2参照)に収容するケーブル11の保護管12の端部(管口)に近い位置に水膨張シート41を巻きつける。収容するケーブル11が1本の場合と、2本の場合と、3本の場合で、巻きつける水膨張シート41の量を適宜変える。すなわち、1本の場合には2本3本の場合よりも多く巻きつける。また、2本3本の場合には、各ケーブル11に水膨張シート41を巻きつけた後、それらを束ねた上でさらに水膨張シート41を巻きつける。
【0022】
次に、パッキン51を割れ目55で開いて、ケーブル11に巻きつけた水膨張シート41の上から嵌めて、ケーブル11に対して取り付ける。この状態でパッキン51と水膨張シート41をずらしながら、保護管12の端部(管口)に挿入する。すると、図1、図2に示したような状態となる。
【0023】
この状態で水膨張シート41とパッキン51の水膨張層52,53,56が水分を吸収すると、これらが即座に膨張し、止水状態が得られる。このため、水膨張性ゴム組成物を用いた従来技術の場合のように、水が漏れるようなおそれは一切ない。
【0024】
また、ケーブル11に巻きつける水膨張シート41を備え、この水膨張シート41を巻きつけてからパッキン51を取り付けるので、ケーブル11の本数や太さの違いにかかわりなく、止水を行うことができる。
【0025】
さらに、パッキン51自体が膨張することはないので、止水状態でも一定の硬さを有する。このため、取り外しも可能である。
【0026】
そのうえ、一部にパッキン51を有する構造であるので、水膨張シート41をケーブル11に巻きつけるだけで止水する場合に比して、止水部分の硬さを得ることができる。つまり、水膨張シート41が膨張すると弾力を有する状態になるが、この水膨張シート41はあくまでも補助的な役割を果たし、パッキン51が主体となって水膨張シート41と一体化して止水を行うので、強固な止水状態が得られる。
【0027】
また、パッキン51の水膨張層52,53,56は、パッキン51を構成するゴムと一体であるので、パッキン51と水膨張シート41との間や、パッキン51と保護管12との間、割れ目55で良好な止水状態が得られる。
【0028】
パッキン51の構造の他の例について、次に説明する。この説明において、先の構造と同一または同等の部位については同一の符号を付して、その詳しい説明意を省略する。
図5(a)は、パッキン51の断面図であり、この図に示すように、図1に示したような大きな返し54を形成せずに、保護管12のくびれ部12aの奥側の端部に若干ひっかかる程度の小さな返し54を形成して、外周面51bの全体に水膨張層53を形成した例である。水膨張層53が、ゴムが露出している場合に比して保護管12に対するすべりをよくするので、パッキン51を挿入しやすく、挿入状態を確保することもできる。
【0029】
図5(b)は、パッキン51の内周面51aに、突部57を形成した例である。すなわち、内周面51aにおける挿入方向後端側の端部に、内周方向に突出し、ケーブル11に巻かれた水膨張シート41を引っ掛けて移動させる突部57を有する。この突部57にも、水膨張層53が形成される。突部57を有するので、パッキン51を保護管12に挿入するときに、パッキン51と水膨張シート41がずれることはなく、作業がしやすい。
【0030】
図5(c)は、パッキン51を内外2層に構成した例である。すなわち、内層51cのゴムを外層51dのゴムよりも硬度を低くして、内層51cのほうが変形し易くした例である。内層51cの柔軟性を外層51dよりも高めているので、収容するケーブル11の本数や太さの違い、水膨張シート41の巻き付け量の多少に対応させることが容易である。また、外層51dの硬度を確保しているので、挿入状態の維持もできる。
【0031】
図6は、割れ目55に、相互に噛合する凹部55bと凸部55cを形成した例を示す。この凹部55bと凸部55c部分にも水膨張層56が形成されている。このように凹部55bと凸部55cが形成されていると、パッキン51が割れ目55部分でねじれるように位置ずれすることを防止でき、不測の抜けを回避して、良好な止水状態の確保が確実にできる。
【0032】
図7は、環状のパッキン51を2つ割りした例を示す。すなわち、パッキン51が正面視半円形状に形成され、互いに当接する対向面に噛合しあう凹部55bと凸部55cが形成されている。この凹部55bと凸部55c部分にも水膨張層56が形成されている。2つ割り構造であるので、ケーブル11に対する取り付けがきわめて容易に行える。
【0033】
図8は、パッキン51における挿入方向先端側の端面に、パッキンの長さ方向に長い環状の溝部58を形成した例を示している。溝部58は、溝部58よりも外周側の部分を変形させるためのもので、保護管12への挿入時に縮径する方向に変形し、挿入が容易に行える。また、溝部58の内面には水膨張層58aが形成されている。このため、パッキン51を保護管12に挿入したのち、溝部58の水膨張層58aが膨張すると、溝部58よりも外周側の部分が変形しにくくなり、確実な抜け止めが行える。
【0034】
図9は、パッキン51の正面図であり、このパッキン51は、保護管12の径の差異にも対応できるように、割れ目55を円弧状に形成した例を示している。図中、破線は、割れ目に形成された凹部55bと凸部55cである。
【0035】
図10は、パッキン51の正面図であり、内周面51aを円形ではなく、異形に形成した例である。すなわち、内周面51aの内側部分は、引き揃えた3本のケーブルに取り付けることができるように円弧状の3個の凹みを有する形状である。そして、ケーブルが1本または2本の場合でもぴったりと合うようにして使用できるように、着脱自在の2個のピース59a,59bを付属している。2個のピース59a,59bは、2本のケーブルに取り付けることができるように、円柱状の一部に突条を有する形状の第1ピース59aと、この第1ピース59aを嵌めたうえで他の1個の凹みに嵌められ、1本のケーブルに取り付けることができるような形状とする円柱状の第2ピース59bである。これら第1ピース59aと第2ピース59bの外周面には、上記の水膨張シートと同様の水膨張シートを一体にしてなる水膨張層59cが形成されている。このように着脱自在のピース59a,59bを付属することで、よりぴったりとした取り付け状態が得られ、止水性能を向上できる。
【0036】
図11は、図2に示したストレートの形状をなす保護管12に使用するパッキン51の他の例を示す片側断面図である。すなわち、全体としてテーパ状に形成された外周面51bに複数の凸条60を有している。凸条60は、挿入方向先端側にゆるい傾斜面60a、挿入方向後端側に急な傾斜面60bを有した抜け止めに資するものである。
【0037】
図12も、図2に示したストレートの形状をなす保護管12に使用するパッキン51の例を示している。このパッキン51は、外周面51bが挿入方向後端側ほど大径となるように傾斜しているが、長さ方向(挿入方向)の全体にわたって肉厚を同一にした例を示している。換言すれば、内周面51aを長さ方向の全体にわたって同一径ではなく、挿入方向後端側を大径にしている。
【0038】
そして、この挿入方向後端側に、長さ方向に切り込む複数の溝部61…が形成されている。この溝部61…は、パッキン51を保護管12に挿入したときにパッキン51の挿入方向後端側を縮径させるもので、挿入したときに、外周面51bのすべてが保護管12の内周面に接触するように構成されている。このように構成した場合には、パッキン51の外周面51bの水膨張層53が膨張しても、パッキン51に抜け方向の力がかかることはなく、パッキン51の抜けなどの不都合を回避して、良好な止水状態を保つことができる。なお、図12では便宜上、水膨張シート41とケーブル11を省略して図示している。
【0039】
図13は、パッキン51の斜視図であり、くびれ部12aを有する保護管12に対して使用するパッキン51の他の例を示す。このパッキン51は、止水のために使用した後に取り外す(解体)ことが極めて容易に、かつ適切に行えるように考慮したものである。
【0040】
このパッキン51は、挿入方向に長い環状(筒状)をなし、挿入方向先端側の端部の外周面に、保護管12のくびれ部12aの奥側の端部に係止する返し54が形成されている。この返し54は端面から挿入方向後端側斜め外周側に向けて延びる片で形成され、略横レ字状をなす中空構造である。図中、54aは空間部であり、この空間部54aの存在のため、返し54は撓み変形する。
【0041】
また、挿入方向後端側の端部には、外周方向に張り出す鍔部62が形成されている。この鍔部62は、図1に示したパッキン51の場合のように保護管12の端部に対応する形状に形成しただけのものではなく、積極的に厚みを持たせて張り出させてある。つまり、鍔部62は、図14にも示したように保護管12よりも大径であり、挿入方向に厚く形成されている。このため、挿入状態を一定に規制でき、差し込み状態の過不足をなくし、確実な止水状態を得るようにすることができる。鍔部62の厚さtは、アンカーナット63を保持するのに必要な厚さに設定される。
【0042】
すなわち、アンカーナット63は鍔部62に埋設され、パッキン51の挿入方向に延びるネジ孔63aを有し、このネジ孔63aはパッキン51の挿入方向の後端側の端面に開口している。アンカーナット63は等間隔に3個埋設される。このアンカーナット63は、パッキン51を取り外すときに利用されるものである。
【0043】
なお、パッキン51が鍔部62を有しない図2等に示したような構造の場合(パッキン51がストレートの形状をなす保護管12に使用するものである場合)には、アンカーナット63は、挿入方向に長い本体部分64の挿入方向後端側の端部に埋設するとよい。
【0044】
また、パッキン51の挿入方向後端側の端面には、内周面51aから内周方向に突出する突部57が全周にわたって形成されている。
【0045】
そして、前記返し54と鍔部62と突部57を有する本体部分64は、前述の各例においては厚さを厚く設定したが、この例においては薄く設定する。厚さtは、たとえば鍔部62の厚さtよりも薄く設定し、変形を許容している。
【0046】
このパッキン51は前述と同様にゴムで形成されるが、前述の例よりも硬く形成するとよい。たとえば、JIS規格 K6253の5 デュロメータ硬さ試験による硬度単位HAで、70〜95HAくらい、好ましくは90〜95HAくらいであるとよい。前述のような構成、特に返し54が中空構造であるので、材料が硬くても保護管12に嵌めやすい。
【0047】
また、外周面51bにおける前記返し54と鍔部62の間には、水膨張層53が一体に形成されるが、内周面51aには、図14に示したように水膨張層を設けずともよく、また図15に示したように水膨張層52を設けてもよい。
【0048】
このように構成されたパッキン51は前述と同様に使用される。すなわち、保護管12(図1、図2参照)に収容するケーブル11の保護管12の端部(管口)に近い位置に水膨張シート41を巻きつける。図16に示した例では、収容するケーブル11が1本の場合を示している。
【0049】
ケーブル11に水膨張シート41を巻きつけた後、パッキン51を割れ目55で開いて、ケーブル11に巻きつけた水膨張シート41の上から嵌めて、ケーブル11に対して取り付ける。この状態でパッキン51と水膨張シート41をずらしながら、保護管12の端部(管口)に挿入する。パッキン51の内周面51aに形成された突部57が水膨張シート41を引っ掛けて保持するので、ずれて分離することなく移動し、図16に示したような状態となる。
【0050】
この状態で水膨張シート41とパッキン51の水膨張層52,53,56が水分を吸収すると、これらが即座に膨張し、止水状態が得られる。このため、水膨張性ゴム組成物を用いた従来技術の場合のように、水が漏れるようなおそれは一切ない。
【0051】
なお、ケーブル11がパッキン51の内周面51aの径に比して細い場合や、複数本のケーブル11を保持する場合になどには、図17に示したように、パッキン51の内周面51aとケーブル11に巻き付けられた水膨張シート41の間に介装される補助介装部材71を用いるとよい。
【0052】
この補助介装部材71は、図18に示したように筒状で、パッキン51における前記突部57に嵌合する嵌合溝72を、挿入方向後端側の端面の外周縁に有する。そして、パッキン51と同様に外周面から内周面にかけて連通する割れ目73を備える。パッキンと同様にゴムで形成され、外周面71bや内周面71aには必要に応じてパッキン51に形成したのと同じ水膨張層74,75が形成される。図18(a)は、外周面71bに水膨張層75を形成した例であり、図18(b)は外周面71bに加えて内周面71aにも水膨張層74を形成した例である。この補助介装材71の外周面に水膨張層75が形成されている場合には、前記パッキン51として内周面51aに水膨張層52のないパッキン51を使用できる。パッキン51と補助介装部材71との間に水膨張層が少なくとも一層形成されていればよい。
【0053】
また、図18では、補助介装部材71の内周面71aが断面円形である例を示したが、たとえば前述の図10に示した例のような異形であるもよい。
【0054】
なお、補助介装部材71は、前記嵌合溝72がパッキン51の突部57に嵌合したときに、挿入方向先端の端面の位置が、図17に示したように、パッキン51の返し54の位置に重ならないような長さに設定されると、パッキン51を取り外すときの返し54の変形が容易に行えるようにすることができる。
【0055】
前述のように補助介装部材71を備えれば、ケーブル11の本数や太さの違いにかかわりなく、確実に止水を行うことができる。
【0056】
図19は、図13に示したパッキン51を用いた止水装置31を解体するためにパッキン51を取り外すときに使用する治具81である。すなわち、前記アンカーナット63を利用してパッキン51を引き抜く。引き抜きは、ケーブル11が痛まないように、ケーブル11の長手方向に行う。
【0057】
この治具81は、相互に組み合わされる金属製の複数の部材で構成されている。すなわち、ベースプレート82、引き付けプレート83、従動プレート84、支持軸85、係止軸86、および引き付けボルト87で構成される。
【0058】
ベースプレート82は、略方形板状をなし、中央部分に穴部82aが形成されている。穴部82aは、一辺に連通する切欠部82bを有する。この切欠部82bと穴部82aは、保持するケーブル11を通す大きさに形成され、さらに前記穴部82aは、鍔部62を有するパッキン51よりも大径に形成されている。
【0059】
図19に示したように固定されたパッキン51は、鍔部62の挿入方向先端側の端面が保持管12を埋設した壁面91と面一になるように固定されるので、穴部82aがパッキン51より大径に形成されることで、パッキン51があってもベースプレート32を前記壁面91に当てることができる。
【0060】
また、ベースプレート82の対角線上の2箇所(四隅のうちの2箇所)には、ネジ孔82cが形成される。このネジ孔82cは、前記引き付けプレート83をベースプレート82上でベースプレート82に対して接離可能にするための前記支持軸85を固定するためのものである。
この支持軸85は、先端部に雄ネジ85aが形成されたボルトで構成される。
【0061】
前記引き付けプレート83も、ベースプレート82と同様に、略方形板状をなし、中央部分に穴部83aが形成され、この穴部83aは一辺に連通する切欠部83bを有する。この切欠部83bと穴部83aは、保持するケーブル11を通す大きさに形成されている。
【0062】
そして、前記ベースプレート82のネジ孔82cに対応する部位には、前記支持軸85を挿嵌する透孔83cを有し、他の対角線上の2箇所にはネジ孔83dが形成されている。このネジ孔83dは、引き付けプレート83をベースプレート82に寄った位置から、ベースプレート82から離れる方向に引き付け移動させるためのもので、前記引き付けボルト87が螺合される。
【0063】
引き付けボルト87は、引き付けプレート83のネジ孔83dに螺合し、先端をベースプレート82に押し付けることで、引き付けプレート83をベースプレート82から離間させる。
【0064】
前記従動プレート84は、引き付けプレート83の上に載って、引き付けプレート83の前記引き付け移動に伴ってベースプレート82から離れる方向に移動するもので、略馬蹄形板状に形成されている。すなわち、円板の中央部に円形の穴部84aが形成され、この穴部84aから縁まで、穴部84aの直径と同一幅の切欠部84bが形成されている。この従動プレート84の大きさは、前記引き付けプレート83の穴部83aの周縁部に重合する大きさで、穴部84aは、少なくとも、保持するケーブル11を通す大きさを有する。
【0065】
そして、穴部84aと切欠部84bの内周縁には、パッキン51に埋設された3個のアンカーナット63に対応する溝部84cが3個形成されている。この溝部84cは、内周縁から外周側に切り込むようにして形成されている。また、この溝部84cは、パッキン51のアンカーナット63に螺合されて固定され、従動プレート84がアンカーナット63から離間するのを阻止する前記係止軸86を通す部分である。
【0066】
この係止軸86は、先端側に前記アンカーナット63に螺合する雄ネジ86aを有し、長手方向の中間部に鍔部86bを有するボルトで構成される。鍔部86bが従動プレート84の上面に当たることで、従動プレート84が係止軸86上を移動してパッキン51から離れることを阻止する。
【0067】
これらの各部材は、ベースプレート82と引き付けプレート83を重ね合わせて支持軸85で組み合わせて一体化した後、係止軸86の鍔部86bよりも先端側の部分を従動プレート84の溝部84cに嵌めて、さらに係止軸86の先端の雄ネジ86aをパッキン51のアンカーナット63に螺合する。このとき、パッキン51の周方向の向きは一定でないので、パッキン51の向きに合わせて従動プレート84の向きを適宜変更する。係止軸86をアンカーナット63に固定すると、各部材の位置関係は図20に示したように決まる。最後に、引き付けボルト87を引き付けプレート83のネジ孔83dに螺合すればよい。引き付けボルト87を先に保持させておくなど、組み付けの手順は適宜変更し得る。
【0068】
このように治具81をパッキン51に対して固定した後、引き付けボルト87を螺進方向に回転させると、図21に示したように引き付けプレート83が引き付けられる。この動作によって、パッキン51は引っ張られて、保護管12から引き出される。
【0069】
このとき、パッキン51の返し54は中空構造であるため変形するので、力は必要だがパッキン51を確実に引き出せる。パッキン51はケーブル11の長さ方向に真っ直ぐに引っ張られるので、こじ開けるような動作をしてパッキンを取り出す場合とは異なり、ケーブル11が損傷することはない。また、発泡樹脂を充填して止水していた場合には、硬化した発泡体をドリル等で壊して解体していたが、このときのようなケーブル11の損傷も回避できる。
【0070】
この発明の構成と、上記の一形態の構成との対応において、
この発明の硬質部分は、上記の外層51dに対応し、
軟質部分は、上記の内層51cに対応するも、
この発明は上記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
たとえば、パッキン51の内周面51aは、円形以外の他の形状であるもよい。
【0071】
また、図5(b)に示したような突部57は、挿入方向先端側の端部にも備えられ、2条の突部57で水膨張シートを挟み込むようにすることもできる。パッキン51と水膨張シート41との一体性を高めることができる。さらに、このような突部は、内周面の端部以外の部分に設けることもできる。
【0072】
治具81を構成する各部材は、すべて別個の部材であるのではなく、たとえば従動プレート84と係止軸86など、適宜予め一体化された部材で構成することもできる。
【符号の説明】
【0073】
11…ケーブル
12…保護管
12a…くびれ部
31…止水装置
41…水膨張シート
51…パッキン
51a…内周面
51b…外周面
51c…内層
51d…外層
52,53,56…水膨張層
54…返し
54a…空間部
55…割れ目
57…突部
62…鍔部
63…アンカーナット
63a…ネジ孔
71…補助介装部材
72…嵌合溝
74,75…水膨張層
81…治具
82…ベースプレート
82a…穴部
83…引き付けプレート
83a…穴部
83d…ネジ孔
84…従動プレート
85…支持軸
86…係止軸
87…引き付けボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと該ケーブルを保護する保護管との間を止水する止水装置であって、
前記ケーブルに巻き付けられる水膨張シートと、
該水膨張シートの上からケーブルに対して取り付けられ、前記保護管に接する外周面を有したパッキンを備え、
該パッキンの外周面には、水分を吸収して膨張する水膨張層が一体に形成された
止水装置。
【請求項2】
ケーブルと該ケーブルを保護する保護管との間を止水する止水装置であって、
上記ケーブルに巻き付けられる水膨張シートと、
該水膨張シートの上からケーブルに対して取り付けられ、水膨張シートに接する内周面と上記の保護管に接する外周面とを備えたパッキンを有し、
該パッキンの内周面と外周面には、水分を吸収して膨張する水膨張層が一体に形成された
止水装置。
【請求項3】
前記パッキンが環状をなし、前記外周面から内周面にかけて連通する割れ目を一部に有した構造である
請求項1または請求項2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記パッキンの内周面の端部に、内周方向に突出する突部が形成された
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項5】
前記パッキンが、径方向において並ぶ硬質部分と軟質部分を一体に備える
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項6】
前記パッキンにおける挿入方向先端側の端部に、前記保護管に形成されたくびれ部の奥側の端部に係止する返しが形成されるとともに、
該返しが中空に形成された
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項7】
前記パッキンにおける挿入方向後端側の端部に、保護管よりも大径の鍔部が形成された
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項8】
前記パッキンに、パッキンの挿入方向に延びるネジ孔を有したアンカーナットが埋設され、
前記ネジ孔が、パッキンの挿入方向後端側の端面に開口された
請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の止水装置。
【請求項9】
前記パッキンの内周面と、ケーブルに巻き付けられた前記水膨張シートの間に介装される補助介装部材が備えられた
請求項1、3、4、5、6、7、又は8に記載の止水装置。
【請求項10】
前記パッキンよりも大径の穴部を有するベースプレートと、
該ベースプレート上に位置して、前記ケーブルを通す穴部を有した引き付けプレートと、
該引き付けプレートをベースプレート上でベースプレートに対して接離可能にすべく支持する支持軸と、
前記引き付けプレート上における前記穴部の周縁部に重合され引き付けプレートの引き付け移動に従って動く従動プレートと、
前記パッキンに埋設された前記アンカーナットに固定されて従動プレートのアンカーナットからの離間を阻止すべく係止する係止軸と、
前記引き付けプレートに形成されたネジ孔に対して螺合され先端が前記ベースプレートに当接する、引き付けプレートを引き付ける引き付けボルトを有する
請求項8または請求項9に記載された止水装置に用いられる治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−4735(P2010−4735A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122990(P2009−122990)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(392035341)共和ゴム株式会社 (15)
【Fターム(参考)】