説明

止水装置及び止水方法

【課題】
簡単に亀裂を閉塞して止水することができる止水板、止水装置及び止水方法を提供すること。
【解決手段】
止水装置は、可撓性ないし弾性を有し、亀裂の外壁面から流体の内圧が作用する該亀裂の内壁面に向かって畳まれた状態で挿入され、前記内圧により前記内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐよう構成された止水板2と、止水板2が支持される先端部1aと、先端部1aが亀裂内壁面側に挿入された状態で亀裂外壁面側に位置する部分に形成され、取付穴1dを介して止水板2が嵌装され、止水後にナットが螺合可能であり且つ切断可能なねじ部1bと、を備える挿入治具1と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板及びそれを有する止水装置並びにそれらを用いる止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等の取水路等の水路ないし管路において、コンクリート躯体同士を接続する耐震ジョイントに亀裂が発生し、この亀裂から漏水が発生することが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
耐震ジョイント等に亀裂が発生した場合、耐震ジョイントを取り外し新規なものに交換すると、取り外し時、水圧が解放されて水が吐出するおそれがある。
【0004】
本発明の目的は、簡単に亀裂を閉塞して止水することができる止水板、止水装置及び止水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の視点において、可撓性ないし弾性を有し、亀裂の外壁面から流体の内圧が作用する該亀裂の内壁面に向かって畳まれた状態で挿入され、前記内圧により前記内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐよう構成されたことを特徴とする止水板を提供する。
【0006】
本発明は、第2の視点において、亀裂の外壁面から流体の内圧が作用する該亀裂の内壁面に向かって挿入される挿入治具と、前記挿入治具に取り付けられ、可撓性ないし弾性を有し、前記亀裂の前記外壁面から前記内壁面に向かって畳まれた状態で挿入され、前記内圧により該内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐよう構成された止水板と、を有することを特徴とする止水装置を提供する。
【0007】
本発明は、第3の視点において、可撓性ないし弾性を有する止水板を畳み、畳んだ前記止水板を亀裂の外壁面から流体の内圧が作用する該亀裂の内壁面に向かって挿入し、前記亀裂の内側で前記止水板が前記内圧により該亀裂の内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐ、ことを特徴とする止水方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明によれば、可撓性ないし弾性を有する止水板を用いることにより、止水板を亀裂に直接挿入することができるため、止水板を亀裂以外の箇所から迂回して亀裂直下に移動させる場合に比べて、止水板を挿入するための特別の装置を用いることなく、迅速かつ簡単に止水を行うことができる。
(2)本発明によれば、可撓性ないし弾性を有する止水板が流体の内圧、すなわち、亀裂内壁面側から外壁面側に向かって作用する圧力によって、亀裂内壁面に自動的に圧着するため、内圧が高い場合であっても、かえって止水能力が向上する。
(3)本発明によれば、可撓性を有する止水板が流体の内圧、すなわち、亀裂内壁面側から外壁面側に向かって作用する圧力によって、亀裂内壁面に自動的に圧着するため、止水板を亀裂外壁面側で固定する場合にくらべて、止水板の固定に手間を要せず、止水板の固定が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前記止水板は、面方向に沿って中央部から周辺部に向かって厚みが薄くなるよう、テーパー状に形成されてなることにより、可撓性が高められ、亀裂への挿入が容易となる。
【0010】
前記止水板は、互いに分離可能な複数の止水板が厚み方向に沿って積層されてなることにより、亀裂の深さや大きさに応じて、止水板の厚みや大きさを調整することができる。
【0011】
積層された前記複数の止水板同士は、凹凸によって互いに係合していることにより、亀裂の形状に応じて止水板の分離による厚みや大きさ等の調整が容易となり、かつ、止水時には積層された複数の止水板同士の結合が高められる。
【0012】
前記挿入治具は、前記挿入治具は、前記亀裂の内側に挿入され前記止水板が支持される先端部と、前記先端部が前記亀裂に挿入された状態で該亀裂の外側に位置する部分に形成され、前記止水板が前記先端部に支持されるよう該止水板に形成された取付穴が嵌装されるねじ部と、を備え、前記止水装置は前記挿入治具を前記亀裂が発生した部材に係止するため、前記ねじ部に螺合されるナットを、有することにより、止水板を亀裂に挿入した後、前記挿入治具をそのねじ部を利用して亀裂が発生した部材等に係止することができる。
【0013】
止水装置は、前記止水板が前記亀裂を塞いだ後、該亀裂上を被覆する一又は複数の所定のシートと、前記亀裂が発生した部材と相似な形状を備え、前記所定のシート上に被せられ、該シートを該部材との間で挟持する保護カバーと、を有する。
【実施例1】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例に係る止水板及び止水装置の説明図である。図1を参照すると、本発明の一実施例に係る止水装置は、亀裂外壁面側から流体の内圧が作用する内壁面側に向かって挿入される挿入治具1と、挿入治具1に取り付けられ、可撓性ないし弾性を有し、前記亀裂の外壁面側から畳まれた状態で該亀裂に挿入されて該亀裂内壁面側で拡がり、前記内圧により該亀裂内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐよう構成された止水板2と、を有する。
【0016】
止水板2は、互いに分離可能な複数の止水板2a,2b,2cが厚み方向に沿って積層されてなる。複数の止水板2a,2b,2cの中央には取付穴1dが形成され、取付穴1dを介して挿入治具1のねじ部1bに嵌装されて、挿入治具1の先端部1aの背面に支持された状態で、挟持又は接着剤等により取り付けられる。
【0017】
積層された複数の止水板2b,2c同士は、凹凸3によって互いに係合していることにより、止水板2b,2cの分離が容易となり、かつ、止水時には積層された複数の止水板2b,2c同士の結合が高められる。
【0018】
止水板2は、複数の止水板2a,2b,2cの外径が順に大きくされることにより、面方向に沿って中央部から周辺部に向かって厚みが薄くなるよう、テーパー状に形成されてなる。
【0019】
挿入治具1は、前記亀裂の内側に挿入され止水板2が支持ないし取り付けられる先端部1aと、先端部1aが前記亀裂の内側に挿入された状態で該亀裂の外側に位置する部分に形成され、止水板2が嵌装されるねじ部1bと、挿入時に保持されるハンドル部1cと、を有する。挿入治具1は、切断可能に形成され、ねじ部1bにはナット4を螺合することができる。
【0020】
次に、以上説明した止水装置を耐震ジョイントに発生した亀裂の止水に用いた施工例を説明する。図2は、図1に示した止水装置を耐震ジョイントに発生した亀裂の止水に用いた施工例である。図3(A)〜図3(F)は図2に示した施工例の工程図である。
【0021】
図2及び図3(A)を参照すると、コンクリート躯体同士に接続されているM字型の耐震ジョイント10に、目地部の上方で亀裂が発生すると、施工者は、挿入治具1の先端に止水板2を取り付け、流体の内圧(水圧)を受けて膨張した耐震ジョイント10に発生した亀裂に挿入する。止水板2は、亀裂内側の内圧により、亀裂内壁面に自動的に圧着する。
【0022】
図3(B)を参照すると、施工者は、図1に示したねじ部1bにナット4を螺合して、挿入治具1の耐震ジョイント10に対する係止を確実にし、ねじ部1bの余長を切断する。
【0023】
図3(C)〜図3(D)を参照すると、施工者は、耐震ジョイント10に保護シート5、次に補強シート6を接着し、さらに、ゴム系の充填剤8を塗布する。
【0024】
図3(E)を参照すると、補強シート6上から耐震ジョイント10と相似形状の保持カバー7を被せて接着し、全体を内側へ押し込む。これによって、挿入治具1の先端部1a(図1参照)が、耐震ジョイント10の間の目地部に挿入され、止水板2が、先端部1aと目地部開口との隙間を塞ぎ、さらに止水が確実にされる。
【0025】
以上説明した本発明の一実施例に係る止水装置を用いて止水試験を行った。試験条件は下記のとおりである。
【0026】
耐震ジョイント:t=14;
挿入治具:SUS304 ねじ部M4;
止水ゴム:クロロプレン系合成ゴム、中央孔φ14、三層積層の外径φ30,52,75、t=5;
保護シート:クロロプレン系合成ゴム;
補強シート:合成ゴム+補強繊維;
接着剤:ゴム系樹脂接着剤
充填剤:ポリブタジエン系接着剤−2液型
保持カバー:SUS304。
【0027】
以上の試験条件で、流体の内圧として0.1MPaの水圧を印加し、26日間放置したが、漏水は発生しなかった。また、保持カバーを取り外したところ、充填剤は弾性を有し、補強シート、保護シートに剥がれ等もなく良好であった。
【0028】
さらに、耐震ジョイントの引張試験(図2中左右方向への引張り)を行ったところ、引張り荷重3.45kNまで、各シートの剥離がなかった。これは、耐震ジョイントと同形状の保護カバーを被せることにより、各シート等の追随性が向上しているからと考察される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の止水板、止水装置及び止水方法は、耐震ジョイントの亀裂の補修の他、種々の水路、ガス管、その他の配管において、気体、液体等の流体の内圧がかかる箇所における亀裂の補修に適用される。例えば、配管に亀裂が発生した場合、亀裂に止水板を直接挿入すると、配管内の圧力により、自動的に止水板が配管内壁面に圧着し、止水ができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係る止水板及び止水装置の説明図である。
【図2】図1に示した止水装置を耐震ジョイントに発生した亀裂の止水に用いた施工例である。
【図3】(A)〜(F)は図2に示した施工例の工程図である。
【符号の説明】
【0031】
1 挿入治具
1a 先端部
1b ねじ部
1c ハンドル部
2 止水板
2a 下層の止水板
2b 中間層の止水板
2c 上層の止水板
2d 取付穴
3 凹凸
4 ナット
5 保護シート
6 補強シート
7 保持カバー
8 充填剤
10 耐震ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性ないし弾性を有し、亀裂の外壁面から流体の内圧が作用する該亀裂の内壁面に向かって畳まれた状態で挿入され、前記内圧により前記内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐよう構成されたことを特徴とする止水板。
【請求項2】
前記止水板は、面方向に沿って中央部から周辺部に向かって厚みが薄くなるよう、テーパー状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の止水板。
【請求項3】
前記止水板は、互いに分離可能な複数の止水板が厚み方向に沿って積層されてなることを特徴とする請求項1記載の止水板。
【請求項4】
積層された前記複数の止水板同士は、凹凸によって互いに係合していることを特徴とする請求項3記載の止水板。
【請求項5】
亀裂の外壁面から流体の内圧が作用する該亀裂の内壁面に向かって挿入される挿入治具と、
前記挿入治具に取り付けられ、可撓性ないし弾性を有し、前記亀裂の前記外壁面から前記内壁面に向かって畳まれた状態で挿入され、前記内圧により該内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐよう構成された止水板と、
を有することを特徴とする止水装置。
【請求項6】
前記挿入治具は、前記亀裂の内側に挿入され前記止水板が支持される先端部と、前記先端部が前記亀裂に挿入された状態で該亀裂の外側に位置する部分に形成され、前記止水板が前記先端部に支持されるよう該止水板に形成された取付穴が嵌装されるねじ部と、を備え、
前記止水装置は、前記挿入治具を前記亀裂が発生した部材に係止するため、前記ねじ部に螺合されるナットを有することを特徴とする請求項5記載の止水装置。
【請求項7】
可撓性ないし弾性を有する止水板を畳み、畳んだ前記止水板を亀裂の外壁面から流体の内圧が作用する該亀裂の内壁面に向かって挿入し、前記亀裂の内側で前記止水板が前記内圧により該亀裂の内壁面に圧着して該亀裂を塞ぐ、ことを特徴とする止水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−283439(P2006−283439A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106011(P2005−106011)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000221535)東電工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】