説明

止着式紙おむつ

【課題】より効果的におむつのズレ下がりを防止する。
【解決手段】腹側サイドフラップ部FFの内面1における動摩擦係数を、腹側サイドフラップ部FFの外面2における動摩擦係数よりも高くし、かつ背側サイドフラップ部BFの内面3における動摩擦係数を、腹側サイドフラップ部FFの外面2における動摩擦係数以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止着式紙おむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
止着式紙おむつは、特に乳児や介護用として汎用されているものである。止着式紙おむつの多くは、腹側のウエスト端部から股間部を通り背側のウエスト端部に延在する、排泄物を吸収保持する吸収性本体部と、この吸収性本体部における腹側の両側部からそれぞれ側方に延在する腹側サイドフラップ部と、吸収性本体部における背側の両側部からそれぞれ側方に延在する背側サイドフラップ部と、背側サイドフラップ部に設けられた係止部材とを備えており、装着に際して、背側サイドフラップ部を腹側サイドフラップ部の上に重ねた状態で、背側サイドフラップ部の係止部材を腹側の外面に係止するものである。
このような止着式紙おむつは、装着中にズレ下がり易いものであった。そのため、従来は、ウエスト端部に沿って糸ゴムを配置したり、ウレタンを配置したりしていたが、更なる改善が要望されていた。
そして近年では、背側サイドフラップ部及び腹側サイドフラップ部の重なり部分における摩擦力を高める(特許文献1)、あるいは滑り止めを設ける(特許文献2)ことにより、当該重なり部分におけるズレや捩れを防止し、もっておむつのズレ下がりを防止することも提案されている。
【特許文献1】特開2004−350756号公報
【特許文献2】特開2004−181014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、背側サイドフラップ部及び腹側サイドフラップ部の重なり部分におけるズレや捩れを防止するだけでは、おむつのズレ下がりを防止するには不十分であった。
そこで、本発明の主たる課題は、より効果的におむつのズレ下がりを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
幅方向中央に沿って腹側の上縁から股間部を通り背側の上縁まで延在する、排泄物を吸収保持する吸収性本体部と、
腹側の上縁側部分の両側において、それぞれ前記股間部よりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部と、
背側の上縁側部分の両側において、それぞれ前記股間部よりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部と、
前記背側サイドフラップ部に設けられた係止部材とを備え、
前記背側サイドフラップ部を前記腹側サイドフラップ部の外側に重ねた状態で、前記係止部材を腹側の外面に係止することにより装着するように構成された、止着式紙おむつにおいて、
前記腹側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が、前記腹側サイドフラップ部の外面における動摩擦係数よりも高い、
ことを特徴とする、止着式紙おむつ。
【0005】
(作用効果)
本発明では、装着者の肌に当接する面の摩擦力が高くなるため、おむつのズレ下がりを直接的に抑制する効果が発揮される。よって、より効果的におむつのズレ下がりを防止することができる。
なお、本発明における動摩擦係数は、JIS P 8147の3.1頁に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記腹側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が1.0〜2.5であり、前記腹側サイドフラップ部の外面における動摩擦係数が0.6未満である、請求項1記載の止着式紙おむつ。
【0007】
(作用効果)
サイドフラップ部の具体的な動摩擦係数が本項記載の範囲内にあると、特に好ましい。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記腹側サイドフラップ部の内面に、点状または線状の滑り止め樹脂が間隔を空けて複数固着されている、請求項1または2記載の止着式紙おむつ。
【0009】
(作用効果)
本発明に従ってサイドフラップ部の動摩擦係数に差を設ける場合、本項記載のように滑り止め樹脂を間隔を空けて複数固着するのは好ましい。通気性を損なわずに動摩擦係数を高めることができる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記背側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が、前記腹側サイドフラップ部の外面における動摩擦係数以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の止着式紙おむつ。
【0011】
(作用効果)
本項記載の発明によれば、背側サイドフラップ部及び腹側サイドフラップ部の重なり部分における摩擦力が高くなるため、当該重なり部分のズレ等に起因するおむつのズレ下がりも防止される
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記背側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が0.6〜1.0である、請求項4記載の止着式紙おむつ。
【0013】
(作用効果)
サイドフラップ部の具体的な動摩擦係数が本項記載の範囲内にあると、特に好ましい。
【0014】
<請求項6記載の発明>
前記背側サイドフラップ部の内面に、点状または線状の滑り止め樹脂が間隔を空けて複数固着されている、請求項4または5記載の止着式紙おむつ。
【0015】
(作用効果)
本発明に従ってサイドフラップ部の動摩擦係数に差を設ける場合、本項記載のように滑り止め樹脂を間隔を空けて複数固着するのは好ましい。通気性を損なわずに動摩擦係数を高めることができる。
【0016】
<請求項7記載の発明>
前記吸収性本体部は、内面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートシートと、これらの間に介在された吸収要素とを有するものであり、前記腹側サイドフラップ部および背側サイドフラップ部の各々は、内面および外面がそれぞれ不織布により形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の止着式紙おむつ。
【0017】
(作用効果)
本発明は、このような形態の止着式紙おむつに好適である。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり、本発明によれば、より効果的におむつのズレ下がりを防止できるようになる等、種々の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について詳説する。
図1及び図2は本発明に係る止着式紙おむつの一例を示している。図2は図1におけるB−B線矢視図である。この止着式紙おむつは、幅方向中央に沿って腹側Fの上縁F1から股間部Cを通り背側Bの上縁B1まで延在する、排泄物を吸収保持する吸収性本体部10と、腹側Fの上縁F1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部FF,FFと、背側Bの上縁B1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部BF,BFとを備えている。また、背側サイドフラップ部BF,BFには、係止部材としてのファスニング片130がそれぞれ設けられている。
【0020】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部が、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11はトップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0021】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)するバリヤーカフス60,60が設けられており、このバリヤーカフス60,60を形成するバリヤーシート64,64が、背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0022】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でSMS不織布やSMMS不織布等の積層不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0023】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0024】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に、トップシート30より液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
【0025】
(バリヤーカフス)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)するバリヤーカフス60、60を設けるのは好ましい。
このバリヤーカフス60は、実質的に幅方向に連続するバリヤーシート64と、このバリヤーシート64に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材62とにより構成されている。このバリヤーシート64としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材62としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍において、バリヤーシート64と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等の弾性伸縮部材66がそれぞれ設けられている。
脚周りにおいては、バリヤーカフス60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0026】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有している。包被シート58は省略することもできる。さらに、図示形態では、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられているが、この保持シート80は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0027】
(吸収体)
吸収体56は、繊維52,52の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプ等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは1〜6デニールが望ましい。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0028】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、図2に示すように高吸収性ポリマー粒子54,54…を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態や、保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以下とすることにより、ポリマーの重量によって、合成連続繊維を採用することにより軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0029】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
この包被シート58は、図2のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0030】
(保持シート)
保持シート80を設ける場合、保持シート80と吸収体56上との間には、高吸収性ポリマー粒子54をその散布などにより介在させることができる。高吸収性ポリマー粒子54は、連続繊維52の集合体への供給時又はその後の工程、あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、連続繊維52の集合体を通り抜けることがある。連続繊維の集合体を通り抜けた高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56と包被シート58との間に高吸収性ポリマー54の保持性能を有する保持シート80を介在させるのも好ましい形態である。
この保持シート80は、ティッシュペーパ(クレープ紙)などの包被シート58のみでは足りないコシを補強して、消費者が使用する際に手で触ったときのジャリジャリした違和感を軽減又は防止する役割を果たす。
保持シート80の素材は、特に限定されず、高吸収性ポリマー54の保持性能を有するものであれば足りる。具体的には、例えば、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。
保持シート80としては、厚みが高吸収性ポリマー粒子の粒径よりも大きいものが好ましい。また、保持シート80の目付けは10〜60g/m2、特に20〜40g/m2であるのが好ましい。
特に、保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
また、抜け出た高吸収性ポリマー54は、保持シート60によって保持され、包被シート58上を移動することがないため、吸収能力の偏在が生じ難くなる。特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布することができる。また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面とすることで、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動を防止するようにしてもよい。このための粗面化又は毛羽立ち手段としては、不織布の製造時におけるネット面でない非ネット面とする、マーブル加工を行う、ニードルパンチにより加工する、ブラシッング加工するなどを挙げることができる。
保持シート80は、図2に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図示しないが、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。
上記例は、吸収体56と包被シート58の裏面側部位との間に保持シート58を設ける例であるが、保持シートは、包被シート58より裏面側であってもよく(その形態は図示していない)、要は、吸収体56に対して裏面側に保持シートを設ければ、製品の裏面から触る場合におけるジャリジャリした違和感を軽減させるあるいは生じさせないものとなる。
【0031】
(ファスニング片)
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材130Cの基部がおむつに接合されており、その先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック要素130Aが設けられている。フック要素130Aはファスニング基材130Cに接着剤により剥離不能に接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック要素130Aに代えて、ファスニング片130の係止部として粘着材層を設けることもできる。
おむつの装着に際しては、背側サイドフラップ部BFを腹側サイドフラップ部FFの外側に重ねた状態で、ファスニング片を腹側F外面の適所に係止する。ファスニング片130の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。通常の場合、係止箇所は、高さ20〜80mm、幅150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁F1との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所には、係止を容易にするためにターゲットテープ74を設けるのが好ましい。ターゲットテープ74は、係止部がフック要素130Aの場合、フック要素の係合突起が絡まるようなループ糸が表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なフィルム状のものを用いることができる。
また、腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニング片130の係止部がフック要素130Aの場合には、ターゲットテープ74を省略し、フック要素130Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。
【0032】
(サイドフラップ部の動摩擦係数について)
本発明では、腹側サイドフラップ部FFの内面(全部が肌に当接する)1における動摩擦係数(以下、μ1とする)が、腹側サイドフラップ部FFの外面2における動摩擦係数(以下、μ2とする)よりも高くされる。そして、より好ましくは、背側サイドフラップ部BFの内面(一部は肌に残部は腹側サイドフラップ部FF外面に当接する)3における動摩擦係数(以下、μ3とする)が、腹側サイドフラップ部FFの外面2における動摩擦係数μ2以上とされる。つまり、好ましい形態における動摩擦係数μ1〜μ3の大小関係を表すと次の式(1)のようになる。
μ1 ≧ μ3 > μ2 ・・・(1)
このような動摩擦係数μ1〜μ3の大小関係は、サイドフラップ部FF,BFの内面および外面の素材(例えば不織布、フィルム等)の選択、素材仕様(例えば不織布の種類、目付け等)の選択の他、エンボス加工や粗面化加工等の表面加工の有無および程度、滑り止め樹脂の有無および数等により設定することができる。
具体的な動摩擦係数μ1〜μ3は適宜定めることができるが、例えば、腹側サイドフラップ部FFの内面1における動摩擦係数μ1は1.0〜2.5とするのが好ましく、腹側サイドフラップ部FFの外面2における動摩擦係数μ2は0.6未満とするのが好ましい。また、背側サイドフラップ部BFの内面3における動摩擦係数μ3は0.6〜1.0とするのが好ましい。
動摩擦係数は、各サイドフラップ部FF,BF内では全体にわたり実質的に共通(つまり素材等が共通)しているのが好ましいが、一部のみ(好ましくはサイドフラップ部の幅方向外側の50%以上の部分)が上記大小関係を満たすようであっても良い。
図示形態では、サイドフラップ部FF,BFの内面が共通の素材であるバリヤーシート64により形成され、サイドフラップ部FF,BFの外面が共通の素材である外装シート12により形成されるとともに、腹側サイドフラップ部FFの内面1および背側サイドフラップ部BFの内面3に滑り止め樹脂Gがそれぞれ同様の形態で固着されている。よって、腹側サイドフラップ部FFの内面1および背側サイドフラップ部BFの内面3の動摩擦係数μ1,μ3は実質的に等しく、かつこれらの動摩擦係数μ1,μ3が腹側サイドフラップ部FFの外面2における動摩擦係数μ2よりも高くなっている。
滑り止め樹脂Gとしては、天然ゴム系、合成ゴム系、オレフィン系等のホットメルト樹脂を用いることができる。滑り止め樹脂Gの塗布面積は、通気性の観点から、サイドフラップ部FF,BFの面積に対して30%未満、特に10%未満であるのが好ましい。
また滑り止め樹脂Gは、図示形態のように点状の滑り止め樹脂Gを間隔を空けて複数設けたり、図示しないが、線状の滑り止め樹脂を間隔を空けて複数設けたりするのが好ましい。これらの形態で滑り止め樹脂Gを設けることによって、サイドフラップ部FF,BFの柔らかな風合いを損ねずに動摩擦係数を高めることができる。滑り止め樹脂Gを線状に配置する場合、おむつのズレを防止するためにズレ落ち方向に対して垂直な線状とするのが望ましい。さらに、滑り止め樹脂Gを波状のような曲線で配置すると、前後方向のズレに対しても効果を発揮することができる。滑り止め樹脂Gの点の面積及び線の幅は適宜定めれば良いが、点の面積(一点)は0.05〜5mm2であるのが好ましく、線の幅(一本)は0.1〜3mmであるのが好ましい。この場合、滑り止め樹脂Gは、不規則に設けられていても、また規則的に設けられていても良い。特に、滑り止め樹脂Gによってハート形等の幾何学的な図柄やキャラクター等の絵柄が表されるように構成されているのは好ましい。
図示しないが、上記滑り止め樹脂Gに代えて、サイドフラップ部に塩化ビニールフィルムやウレタンフォームを貼り付けることができる。
他方、図示形態では、腹側サイドフラップ部FFの内面および外面を背側と共通の素材で形成しているが、内面及び外面の少なくとも一方において、背側と腹側の素材の種類または仕様を異ならしめることができる。
また、図示形態では、背側および腹側サイドフラップ部BF,FFは、外面側の外装シート12の両側と内面側のバリヤーシート64の両側を延在させて形成しているが、特許文献1に示されるもののように、これらを幅方向において吸収性本体部10の両側部およびその近傍までとし、その端部に、別途サイドフラップ部を形成する部材を連結しても良い(図示せず)。この形態は、各部の素材を異ならしめるのに適している。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、止着式紙おむつに適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】止着式紙おむつの展開状態平面図である。
【図2】図1のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10…吸収性本体部、11…液不透過性シート、12…外装シート、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…繊維、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包被シート、60…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、80…保持シート、G…滑り止め樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向中央に沿って腹側の上縁から股間部を通り背側の上縁まで延在する、排泄物を吸収保持する吸収性本体部と、
腹側の上縁側部分の両側において、それぞれ前記股間部よりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部と、
背側の上縁側部分の両側において、それぞれ前記股間部よりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部と、
前記背側サイドフラップ部に設けられた係止部材とを備え、
前記背側サイドフラップ部を前記腹側サイドフラップ部の外側に重ねた状態で、前記係止部材を腹側の外面に係止することにより装着するように構成された、止着式紙おむつにおいて、
前記腹側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が、前記腹側サイドフラップ部の外面における動摩擦係数よりも高い、
ことを特徴とする、止着式紙おむつ。
【請求項2】
前記腹側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が1.0〜2.5であり、前記腹側サイドフラップ部の外面における動摩擦係数が0.6未満である、請求項1記載の止着式紙おむつ。
【請求項3】
前記腹側サイドフラップ部の内面に、点状または線状の滑り止め樹脂が間隔を空けて複数固着されている、請求項1または2記載の止着式紙おむつ。
【請求項4】
前記背側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が、前記腹側サイドフラップ部の外面における動摩擦係数以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の止着式紙おむつ。
【請求項5】
前記背側サイドフラップ部の内面における動摩擦係数が0.6〜1.0である、請求項4記載の止着式紙おむつ。
【請求項6】
前記背側サイドフラップ部の内面に、点状または線状の滑り止め樹脂が間隔を空けて複数固着されている、請求項4または5記載の止着式紙おむつ。
【請求項7】
前記吸収性本体部は、内面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートシートと、これらの間に介在された吸収要素とを有するものであり、前記腹側サイドフラップ部および背側サイドフラップ部の各々は、内面および外面がそれぞれ不織布により形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の止着式紙おむつ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−55002(P2008−55002A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237021(P2006−237021)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】