説明

正帯電単層型電子写真感光体、及び画像形成装置

【課題】除電部を備えない直接転写方式の画像形成装置において、形成画像での白筋の発生を抑制できる正帯電単層型電子写真感光体を提供すること、及び当該正帯電単層型電子写真感光体を像担持体として備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも帯電部、露光部、現像部、転写部を備え、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、像担持体として使用される正帯電単層型電子写真感光体において、感光層に含まれる正孔輸送剤(A)と電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)を2.2〜5.0とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正帯電単層型電子写真感光体、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に備えられる電子写真感光体としては、セレン、アモルファスシリコン等の無機材料からなる感光層を備える無機感光体と、主に、バインダー樹脂、電荷発生剤、電荷輸送剤等の有機材料からなる感光層を備える有機感光体とがある。そして、これらの感光体のなかでは、無機感光体と比較して製造が容易であり、感光層の材料を幅広い材料から選択でき、設計の自由度が高いことから有機感光体が幅広く使用されている。
【0003】
かかる有機感光体としては、電荷発生剤及び電荷輸送剤を同一層に含む感光層を備える単層型有機感光体が挙げられる。単層型有機感光体は、導電性基体上に少なくとも電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とを積層した積層型有機感光体と比較して、構造が簡単で製造が容易であるためその利用が進んでいる。
【0004】
また、画像形成装置における電子写真感光体の帯電方式として正帯電の帯電方式を採用した場合、帯電時のオゾン等の酸化性ガスの発生が少ないことが知られている。このため、酸化性ガスの放出による感光体寿命やオフィス環境への悪影響を考慮して、画像形成装置の電子写真感光体の帯電方式として正帯電の帯電方式が採用されることが多く、上記単層型の利点と合わせて、正帯電単層型電子写真感光体の利用が進んでいる。
【0005】
さらに、画像形成装置については、画像形成装置の構成を簡素化できることから、除電光により電子写真感光体(像担持体)の表面を除電するための除電部を備えない、いわゆる除電レス型の画像形成装置の使用が検討されており、除電レス型の画像形成装置における正帯電単層型電子写真感光体の使用も提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−113336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、除電レス型の画像形成装置では、転写方式を、感光体ドラム等の像担持体表面に形成されたトナー像を、被記録媒体に直接転写する方式とする場合に、正帯電単層型電子写真感光体を用いると、形成された画像に、画像濃度の低い部分が筋状に発生する、白筋と呼ばれる画像不良が生じやすい問題がある。
【0008】
直接転写方式の画像形成装置では、電子写真感光体(像担持体)と、転写バイアスが印加される転写ローラーとが、被記録媒体を搬送する転写ベルトを介して当接している。そして、転写バイアスが印加された転写ローラーと電子写真感光体(像担持体)との間を、転写ベルトによって被記録媒体が搬送されることによって、電子写真感光体表面に形成されたトナー像が被記録媒体に転写される。
【0009】
しかし、直接転写方式の画像形成装置では、図1に示すように、転写開始時に紙等の被記録媒体が電子写真感光体に接触した際に、僅かな時間、転写ベルトと電子写真感光体との間に隙間が生じてしまい、一瞬、転写ローラーから感光体の表面への電流の流入量が低下してしまう。このため、直接転写方式の画像形成装置では、転写後に、電子写真感光体の表面に、周囲より電位が高い筋状の高電位部分が形成されてしまう。
【0010】
除電部を備える画像形成装置であれば、除電部による除電工程により高電位部分は消去される。しかし、除電レス型の画像形成装置では、高電位部分と周囲との電位差が、転写工程に続く、帯電工程、露光工程でも維持され、このため、画像に白筋が発生してしまう。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、像担持体として使用される、形成画像での白筋の発生を抑制できる正帯電単層型電子写真感光体を提供することを目的とする。また、本発明は前述の正帯電単層型電子写真感光体を像担持体として備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、像担持体の周囲に、少なくとも帯電部、露光部、現像部、転写部を、像担持体の回転方向に対してこの順で備え、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、像担持体として使用される正帯電単層型電子写真感光体において、感光層に含まれる正孔輸送剤(A)と電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)を一定の範囲にすることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
(1) 像担持体の周囲に、少なくとも帯電部、露光部、現像部、及び転写部を前記像担持体の回転方向に対してこの順で備え、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、前記像担持体として使用される正帯電単層型電子写真感光体であって、前記正帯電単層型電子写真感光体が、導電性基体上に、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤(A)、電子輸送剤(B)、及びバインダー樹脂を含む単層構造の感光層が形成されており、前記感光層における、前記正孔輸送剤(A)と前記電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0である、正帯電単層型電子写真感光体。
【0014】
(2) 前記正孔輸送剤(A)のドリフト移動度が、1.0×10−6cm/V・sec以上であり、前記電子輸送剤(B)のドリフト移動度が、2.0×10−8cm/V・sec以上であり、前記ドリフト移動度が、アルミニウム製の基材上に形成された、前記正孔輸送剤(A)、又は前記電子輸送剤(B)30質量%と粘度平均分子量50,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂70質量%とからなるポリカーボネート樹脂組成物の厚さ5μmの膜を試料に用いて、温度23℃、電界強度3.0×10V/cmの条件で測定された値である、(1)記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【0015】
(3) 前記感光層中の前記電子輸送剤(B)の質量に対する、前記電荷発生剤の質量の比率が12質量%以下である、(1)又は(2)記載の電子写真感光体。
【0016】
(4) 像担持体と、前記像担持体の表面を帯電するための帯電部と、帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、転写ベルトによって被記録媒体を搬送して前記トナー像を前記像担持体から前記被記録媒体へ転写するための転写部と、を備え、除電光により前記像担持体表面を除電するための除電部を備えず、前記像担持体が、(1)〜(3)何れか記載の正帯電単層型電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【0017】
(5) 前記帯電部が接触帯電方式である、(4)記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくとも帯電部、露光部、現像部、及び定着部を備え、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、像担持体として使用される、形成画像での白筋の発生を抑制できる正帯電単層型電子写真感光体と、形成画像での白筋の発生を抑制できる画像形成装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】直接転写方式の画像形成装置での転写工程の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体の構造を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図4】実施例で、感光体の評価に用いたドラム試験機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、像担持体の周囲に、少なくとも帯電部、露光部、現像部、及び転写部をこの順で備え、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、像担持体として使用される正帯電単層型電子写真感光体に関する。具体的には、第1の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体は、導電性基体上に、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤(A)、電子輸送剤(B)、及びバインダー樹脂を含む単層構造の感光層が形成されており、感光層における、正孔輸送剤(A)と電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0である、正帯電単層型電子写真感光体に関する。
【0022】
本発明の正帯電単層型電子写真感光体10は、図2に示すように、導電性基体12と、導電性基体12上に形成された、電荷発生剤、正孔輸送剤(A)、電子輸送剤(B)、及びバインダー樹脂を含有する単層の感光層14とが備えられたものである。そして、正帯電単層型電子写真感光体10は、導電性基体12と感光層14とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、例えば、図2(a)に示すように、導電性基体12上に感光層14を直接備えていてもよいし、図2(b)に示すように、導電性基体12と感光層14との間に中間層16を備えていてもよい。また、図2(a)や図2(b)に示すように、感光層14が最外層となって露出していてもよいし、図2(c)に示すように、感光層14上に保護層18を備えていてもよい。
【0023】
以下、導電性基体、及び感光層について順に説明する。
【0024】
〔導電性基体〕
導電性基体は、正帯電単層型電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。すなわち、具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆したものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる正帯電単層型電子写真感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
【0025】
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができ、例えば、シート状、ドラム状等の基体が好適に使用できる。
【0026】
〔感光層〕
正帯電単層型電子写真感光体が備える感光層としては、正帯電単層型電子写真感光体の感光層として用いることができ、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤(A)、電子輸送剤(B)、及びバインダー樹脂からなる単層構造の感光層であって、感光層における、正孔輸送剤(A)と電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0であれば特に限定されない。
【0027】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、正帯電単層型電子写真感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、下記式(I)で表されるX型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0028】
【化1】

【0029】
また、電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、前述の各電荷発生剤のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンターやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する正帯電単層型電子写真感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。また、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する正帯電単層型電子写真感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
【0030】
(正孔輸送剤(A))
本発明において用いる正孔輸送剤(A)は、従来から正帯電単層型電子写真感光体において使用される正孔輸送剤(A)から適宜選択して使用することができる。従来から正帯電単層型電子写真感光体の感光層において使用される正孔輸送剤(A)としては、例えば、ベンジジン誘導体、オキサジアゾール系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。正孔輸送剤(A)として使用されるこれらの化合物の中では、スチリル系化合物、トリフェニルアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物がより好ましい。
【0031】
本発明において用いる正孔輸送剤(A)は、下記方法に従って測定されるドリフト移動度が、1.0×10−6cm/V・sec以上であるのが好ましく、5.0×10−6cm/V・sec以上であるのがより好ましい。正孔輸送剤(A)のドリフト移動度は以下の方法に従って測定できる。
【0032】
<ドリフト移動度測定方法>
粘度平均分子量50,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂と、試料の全質量に対して30質量%の正孔輸送剤(A)とを、有機溶媒中に加え、ポリカーボネート樹脂及び正孔輸送剤(A)を溶解させて塗布液を調製する。得られた塗布液を、アルミニウムからなる基材上に塗布し、80℃30分間熱所処理を行い、溶媒を除去して厚さ7μmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜上に真空蒸着法にて半透明金電極を形成して測定試料とした。得られた試料を用いて、温度23℃、電界強度3.0×10V/cmの条件で、TOF(Time of Flight)法に従ってドリフト移動度が測定される。
【0033】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[M]は、オストワルド粘度計によって、極限粘度[η]を求め、Schnellの式によって、[η]=1.23×10−40.83より算出できる。なお、[η]は、20℃で、塩化メチレンを溶媒として、濃度が6.0g/dmとなるようにポリカーボネート樹脂を溶解させて得られるポリカーボネート樹脂溶液を用いて測定できる。
【0034】
(電子輸送剤(B))
電子輸送剤(B)としては、正帯電単層型電子写真感光体の感光層に含まれる電子輸送剤(B)として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノン誘導体、アゾキノン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体等のキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。電子輸送剤(B)は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明において用いる電子輸送剤(B)は、下記方法に従って測定されるドリフト移動度が、2.0×10−8cm/V・sec以上であるのが好ましく、1.2×10−7cm/V・sec以上であるのがより好ましい。電子輸送剤(B)のドリフト移動度は正孔輸送剤(A)と同様の方法で測定できる。
【0036】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、正帯電単層型電子写真感光体の感光層に含まれるバインダー樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。バインダー樹脂として好適に使用される樹脂の具体例としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂等の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性、耐摩耗性のバランスに優れた感光層が得られることから、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0038】
(添加剤)
正帯電単層型電子写真感光体の感光層は、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、電荷発生剤、正孔輸送剤(A)、電子輸送剤(B)、及びバインダー樹脂の他に、各種添加剤を含んでいてもよい。感光層に配合できる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。
【0039】
(正帯電単層型電子写真感光体の製造方法)
正帯電単層型電子写真感光体の製造方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電単層型電子写真感光体の製造方法の好適な例としては、感光層用の塗布液を導電性基体上に塗布して感光層を形成する方法が挙げられる。具体的には、電荷発生剤、正孔輸送剤(A)、電子輸送剤(B)、バインダー樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、感光層を製造することができる。塗布方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いる方法が挙げられる。また、導電性基体上に形成された塗膜の乾燥方法としては、例えば、80〜150℃で15〜120分間の条件で熱風乾燥する方法等が挙げられる。
【0040】
正帯電単層型電子写真感光体において、正孔輸送剤(A)と電子輸送剤(B)とは、感光層における前記正孔輸送剤(A)と前記電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0となるように使用される。具体的には、正孔輸送剤(A)の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5〜500質量部であることが好ましく、25〜200質量部であることがより好ましい。電子輸送剤(B)は、正孔輸送剤(A)の使用量に対して上記比率となるように使用される。
【0041】
感光層における電荷発生剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。また、電荷発生剤の使用量は、電子輸送剤(B)の使用量に対して12質量%以下であるのが好ましく、7〜12質量%であるのがより好ましい。電荷発生剤を、電子輸送剤(B)の使用量に対してかかる比率で用いる場合、繰り返し画像を形成した場合も、感光体の表面電位が上昇しにくく、長期間にわたって良好な画像を形成しやすい。
【0042】
さらに、正孔輸送剤(A)と電子輸送剤(B)との総量、すなわち、電荷輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。
【0043】
正帯電単層型電子写真感光体の感光層の厚さは、感光層として充分に作用することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが好ましい。
【0044】
感光層用の塗布液に含有される溶剤としては、感光層を構成する各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性有機溶媒が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
以上説明した、第1実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体は、像担持体の周囲に、少なくとも帯電部、露光部、現像部、及び転写部を、像担持体の回転方向に対してこの順で備え、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、像担持体として使用される。前述の画像形成装置では形成画像に白筋が発生しやすいが、第1の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を像担持体として用いることにより、形成画像での白筋の発生を抑制できる。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、像担持体と、像担持体の表面を帯電するための帯電部と、帯電された像担持体の表面を露光して像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、転写ベルトによって被記録媒体を搬送してトナー像を像担持体から被記録媒体へ転写するための転写部と、を備え、除電光により像担持体表面を除電するための除電部を備えず、像担持体として第1の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を用いる画像形成装置に関する。
【0047】
また、本発明の画像形成装置としては、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置について説明する。
【0048】
なお、本実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各像担持体の表面にそれぞれ供給する、現像ローラーを備えた複数の現像部とを備え、各像担持体として、それぞれ第1の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を用いる。
【0049】
図3は、本発明の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置としては、カラープリンター1を例に挙げて説明する。
【0050】
このカラープリンター1は、図3に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0051】
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124及びレジストローラー125を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図3に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー125は、給紙ローラー123,124によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
【0052】
また、給紙部2は、機器本体1aの図3に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイ、ピックアップローラー、及び給紙ローラーをさらに備えている。このピックアップローラーは、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラーによって取り出された用紙Pは、給紙ローラーによって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
【0053】
画像形成ユニット7は、上流側(図3では左側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての正帯電単層型電子写真感光体37(以下、感光体37)が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、及び不図示のクリーニング部が、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、感光体37としては、第1の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体を用いる。また、第2の実施形態に係る画像形成装置は除電レスの構成であるため、カラープリンター1は、感光体37の周囲に除電部が配置されていない。
【0054】
帯電部39は、矢符方向に回転されている電子写真感光体37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、電子写真感光体37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられ、帯電ローラー、帯電ブラシ等の接触方式の帯電装置がより好ましい。接触方式の帯電部39を使用することにより、帯電部39から発生するオゾンや窒素酸化物等の活性ガスの排出を抑え、活性ガスによる電子写真感光体の感光層の劣化を防止するとともに、オフィス環境等に配慮した設計をすることができる。
【0055】
帯電部39が接触方式の帯電ローラーを備える場合、帯電ローラーは、電子写真感光体37と接触したまま、電子写真感光体37の周面(表面)を帯電させることができれば特に限定されない。帯電ローラーとしては、例えば、電子写真感光体37と接触したまま、電子写真感光体37の回転に従属して回転するもの等が挙げられる。また、帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成されたローラー等が挙げられる。より具体的には、例えば、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備えたもの等が挙げられる。このような帯電ローラーを備えた帯電部は、電圧印加部によって、芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する電子写真感光体37の表面を帯電させることができる。
【0056】
また、帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、電子写真感光体37の周面を良好に帯電させることができれば特に限定されない。樹脂層に用いる樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン変性樹脂等が挙げられる。また、樹脂層には、無機充填材を含有させていてもよい。
【0057】
電圧印加部により帯電ローラーに印加される電圧は直流電圧のみであることが好ましい。帯電ローラーにより電子写真感光体に印加する直流電圧は、1000〜2000Vが好ましく、1200〜1800Vがより好ましく、1400〜1600Vが特に好ましい。交流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を帯電ローラーに印加する場合より、帯電ローラーに直流電圧のみを印加する場合のほうが、感光層の磨耗量が少なくなる傾向がある。
【0058】
露光部38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された感光体37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、感光体37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された感光体37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が転写ベルト31により搬送されてきた用紙Pに転写される。クリーニング部は、用紙Pへのトナー像の転写が終了した後、感光体37の周面に残留しているトナーを清掃する。クリーニング部によって清浄化処理された感光体37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
【0059】
転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各電子写真感光体37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、転写ベルト31は、各電子写真感光体37と対向配置された転写ローラー36によって電子写真感光体37に押圧された状態で、複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、ステッピングモーター等の駆動源によって回転駆動し、転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて転写ベルト31を介して従動回転するとともに、転写ベルト31を支持する。レジストローラー125から供給された用紙Pは、吸着ローラー126によって転写ベルト31上に吸着され、転写ベルト上に吸着された用紙Pは、転写ベルト31の回転に伴い各感光体37と転写ローラー36との間を通過する。
【0060】
転写ローラー36は、転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体37上に形成されたトナー像は、各感光体37と転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写される。この後、各感光体37はさらに回転され、次のプロセスに移行する。
【0061】
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
【0062】
そして、画像形成部3で転写ローラー36により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンター1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラー6が配設されている。
【0063】
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0064】
カラープリンター1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のようなタンデム方式の画像形成装置は、像担持体として、第1の実施形態に係る正帯電単層型電子写真感光体が備えられているので、除電レス、且つ直接転写方式という白筋が発生しやすい装置構成であるにもかかわらず、形成画像での白筋の発生を抑制できる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
実施例、及び比較例では、正孔輸送剤(A)として下式で表されるHTM−A、又はHTM−Bを用い、電子輸送剤(B)として下式で表されるETM−a、又はETM−bを用いた。なお、構造式の右下の数値は、ドリフト移動度(単位:cm/V・sec)である。
【0067】
〔正孔輸送剤(A)〕
【化2】

【0068】
〔電子輸送剤(B)〕
【化3】

【0069】
〔実施例1〕
無金属フタロシアニン2質量部、正孔輸送剤(HTM−A)50質量部、電子輸送剤(ETM−a)10質量部、粘度平均分子量50,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂100質量部、及びテトラヒドロフラン800質量部をボールミルに加え、50時間、混合、分散処理し、感光層用の塗布液を調製した。得られた塗布液を導電性基板上にディップコート法により塗布し、100℃で40分間処理して塗膜よりテトラヒドロフランを除去して、膜厚30μmの感光層を備える正帯電単層型電子写真感光体を得た。実施例1で得られた正帯電単層型電子写真感光体を用いて、下記方法に従って、白筋の評価と、連続印字後の感光体の表面電位の測定を行った。実施例1の正帯電単層型電子写真感光体の評価結果を表1に記す。
【0070】
<白筋評価>
除電レス、且つ直接転写方式であり、スコロトロン帯電器を帯電部として備える画像形成装置を用いて、印字濃度約0.8で形成されたA4サイズの画像を目視により観察し、白筋の程度を以下の基準に従って判定した。実用上許容できる判定はLV1である。
【0071】
(判定基準)
レベル1:形成画像に白筋が観察されない。
レベル2:形成画像に極淡い白筋が観察される。
レベル3:形成画像に淡い白筋が観察される。
レベル4:形成画像にはっきりとした白筋が観察される。
【0072】
<感光体の表面電位>
図4に記載のドラム試験機を用いて正帯電単層型電子写真感光体の表面電位の測定を行った。ドラム試験機は、感光体101に正電圧を印加する帯電器102(スコロトロン帯電器)と、感光体に負電圧を印加する転写帯電器105(コロトロン帯電器)とを対向する位置に備える。また、ドラム試験機は、感光体101の回転方向に対して下流方向に、帯電器102に隣接して、感光体101を露光する光源103と、感光体101の表面電位を測定する電位測定プローブ104とをこの順で備える。かかるドラム試験機に、実施例1の正帯電単層型電子写真感光体をセットし、感光体101を所定の方向(図4での右回り)に回転させて、帯電→露光→転写→帯電のサイクルを30分間繰り返して試験を行い、初期の感光体の表面電位から、30分の連続試験後の感光体の表面電位を差し引いた表面電位の変化(ΔV(V))を測定した。なお、ドラム試験機において、帯電工程の印加電圧は800Vであり、露光工程の露光量は1.0μJ・cmであり、転写工程の印加電圧は−1.2kVであり、感光体の周速は、100mm/秒であった。評価結果を表1に記す。ΔVの絶対値が20V未満のものを○と判定し、20V以上のものを△と判定した。
【0073】
〔実施例2〜13、及び比較例1〜8〕
正孔輸送剤、及び電子輸送剤の種類、及び使用量を表1に記載の種類、及び量に変更することの他は、実施例1と同様に正帯電単層型電子写真感光体を得た。得られた感光体を用いて、実施例1と同様に、白筋評価と、白筋の評価と、連続印字後の感光体の表面電位の測定を行った。実施例2〜13、及び比較例1〜8の正帯電単層型電子写真感光体の評価結果を表1に記す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1によれば、感光層における、正孔輸送剤(A)と前記電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0である、実施例1〜13の電子写真感光体を用いて、除電レス、且つ直接転写方式である画像形成装置により画像を形成する場合、何れも白筋の評価がLV1であり、白筋の発生が良好に抑制されることが分かる。また、実施例1〜13によれば、前記正孔輸送剤(A)のドリフト移動度が、1.0×10−6cm/V・sec以上の正孔輸送剤(A)と、ドリフト移動度が、2.0×10−8cm/V・sec以上である電子輸送剤(B)とを所定の比率で用いることにより、白筋の発生が良好に抑制される正帯電単層型電子写真感光体が得られることが分かる。
【0076】
他方、感光層における、正孔輸送剤(A)と前記電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0の範囲から外れる、比較例1〜8の電子写真感光体を用いて、除電レス、且つ直接転写方式である画像形成装置により画像を形成する場合、白筋の評価はLV2〜LV4となり、白筋の発生を抑制できないことが分かる。
【0077】
また、例えば、実施例1、及び2と、実施例3、及び4との比較によれば、感光層における電子輸送剤(B)の質量に対する、電荷発生剤の質量の比率が12質量%以下であれば、帯電、転写、及び露光のサイクルを繰り返しても、帯電後の表面電位が変化しにくい電子写真感光体が得られることが分かる。
【0078】
〔実施例14〜17、比較例9〜14〕
表2に記載の量の正孔輸送剤(HTM−A)と電子輸送剤(ETM−a)とを用いることの他は、実施例1と同様にして正帯電単層型電子写真感光体を得た。得られた正帯電単層型感光体の白筋を、帯電部をスコロトロン帯電器から帯電ローラーに換装された画像形成装置を用いることの他は、実施例1と同様に評価した。白筋の評価結果を表2に記す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2によれば、感光層における、正孔輸送剤(A)と前記電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0である、実施例14〜17の電子写真感光体であれば、接触帯電方式の帯電部を備える画像形成装置であっても、白筋の発生が良好に抑制されることが分かる。
【0081】
他方、感光層における、正孔輸送剤(A)と前記電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0から外れる、比較例9〜15の電子写真感光体では、接触帯電方式の帯電部を備える画像形成装置であっても、白筋の発生を抑制できないことが分かる。
【符号の説明】
【0082】
10 正帯電単層型電子写真感光体
12 導電性基体
14 感光層
16 中間層
18 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の周囲に、帯電部、露光部、現像部、及び転写部を、前記像担持体の回転方向に対してこの順で備え、除電部を備えない、直接転写方式の画像形成装置において、前記像担持体として使用される正帯電単層型電子写真感光体であって、前記正帯電単層型電子写真感光体が、導電性基体上に、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤(A)、電子輸送剤(B)、及びバインダー樹脂を含む単層構造の感光層が形成されており、前記感光層における、前記正孔輸送剤(A)と前記電子輸送剤(B)との質量比(A)/(B)が2.2〜5.0である、正帯電単層型電子写真感光体。
【請求項2】
前記正孔輸送剤(A)のドリフト移動度が、1.0×10−6cm/V・sec以上であり、前記電子輸送剤(B)のドリフト移動度が、2.0×10−8cm/V・sec以上であり、前記ドリフト移動度が、アルミニウム製の基材上に形成された、前記正孔輸送剤(A)30質量%、又は前記電子輸送剤(B)30質量%と、粘度平均分子量50,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂70質量%とからなるポリカーボネート樹脂組成物の厚さ5μmの膜を試料に用いて、温度23℃、電界強度3.0×10V/cmの条件で測定された値である、請求項1記載の正帯電単層型電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層中の前記電子輸送剤(B)の質量に対する、前記電荷発生剤の質量の比率が12質量%以下である、請求項1又は2記載の電子写真感光体。
【請求項4】
像担持体と、前記像担持体の表面を帯電するための帯電部と、帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、転写ベルトによって被記録媒体を搬送して前記トナー像を前記像担持体から前記被記録媒体へ転写するための転写部と、を備え、除電光により前記像担持体表面を除電するための除電部を備えず、前記像担持体が、請求項1〜3何れか記載の正帯電単層型電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電部が接触帯電方式である、請求項4記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79991(P2013−79991A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218462(P2011−218462)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】