説明

歩数検出装置、電子機器及びプログラム

【課題】 乗物移動か否かを判定する特徴量に基づいて判定を行い、判定結果に基づいてカウントの留保等を行うことで、乗物移動時の誤カウントを抑止する歩数検出装置、電子機器及びプログラム等を提供すること。
【解決手段】 歩数検出装置は、センサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部120と、継続歩行時間を計測する歩行時間計測部150と、歩数検出に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部160と、特徴量をセンサー信号に基づいて抽出する特徴量抽出部130と、特徴量に基づいて乗物移動の判定を行う判定部140とを含み、歩数カウント部160は、継続歩行時間が所与の有効歩数判定期間より短かった場合に継続歩行時間において検出された歩数のカウントをリセットし、乗物移動していると判定された場合に、有効歩数判定期間を延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩数検出装置、電子機器及びプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサーを用いた歩数計が広く用いられている。歩数計はユーザーの歩行に伴う歩数を計測することを目的とするが、加速度センサーを用いる以上、歩行以外の要因によって生じる加速度の変動も歩数として検出してしまう可能性がある。例えば、歩数計を装着したまま車等の乗物で移動をした場合にも、加速、減速及びその他の要因により加速度センサーは加速度情報の変動を検出し、歩数としてカウントしてしまう。
【0003】
特許文献1には、バイブレータ等の振動による誤カウントを抑える技術が開示されている。特許文献1ではフーリエ変換を行い、周波数の分析を行うことで誤カウントを抑止している。特許文献2では、検出した信号値と過去の検出ピークレベルとの相違に基づいて、歩行によるカウントか、それ以外の要因によるカウントかを区別する技術が開示されている。また特許文献3では、加速度を積分することでエネルギーに関する情報を求め、エネルギー情報を所定の閾値と比較することで歩数検出を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−071779号公報
【特許文献2】特開2009−064136号公報
【特許文献3】特開2008−171347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法では、フーリエ変換を行う必要があるため、処理負荷が重いという問題がある。特許文献2の手法では、歩数計をズボンのポケットに入れた場合等の検出が困難である。なぜなら、歩数計をズボンのポケットに入れた場合には、検出ピークのばらつきが大きくなる。逆に自動車等での移動時の方が検出ピークのばらつきが小さくなることも考えられ、その場合には歩行と乗物移動とを適切に切り分ける閾値を設定することが困難である。また特許文献3の手法では、特許文献2と同様にズボンのポケットに歩数計を入れた場合に判定が困難である。ズボンのポケットに装着した場合などではエネルギーのばらつきが大きくなるため、歩行による検出か乗物移動による検出かの区別が難しいためである。
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、乗物移動か否かを判定する特徴量に基づいて判定を行い、判定結果に基づいてカウントの留保等を行うことで、乗物移動時の誤カウントを抑止する歩数検出装置、電子機器及びプログラム等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、歩行開始からの継続歩行時間を計測する歩行時間計測部と、前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部と、乗物移動をしているか否かを判別するための特徴量を、前記センサー信号に基づいて抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量に基づいて、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行う判定部と、を含み、前記歩数カウント部は、前記継続歩行時間が所与の有効歩数判定期間より短かった場合に、前記継続歩行時間において検出された歩数のカウントをリセットし、前記歩数カウント部は、前記判定部での判定結果に基づいて、ユーザーが乗物移動していると判定された場合に、前記有効歩数判定期間を延長する歩数検出装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様では、特徴量を用いた判定により乗物移動をしていると判定された場合には、有効歩数判定期間を延長する処理を行う。よって、有効歩数判定期間がカウンターの確定及びリセットに関係することに鑑みれば、有効歩数判定期間の延長により乗物移動による誤カウントを抑止すること等が可能になる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記歩数検出部は、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて前記歩行の被評価値を求め、前記判定部は、評価期間における前記被評価値のうちの歩行と判定された被評価値が、所与の閾値よりも大きい場合には、ユーザーが乗物移動していないと判定してもよい。
【0010】
これにより、被評価値が大きい場合には例えば他の特徴量による処理を行わずに、歩行であると判定することが可能になる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記特徴量抽出部は、加速度パワーベクトルの2回積分信号値のゼロクロス回数を前記特徴量として抽出し、前記判定部は、前記評価期間における前記被評価値のうちの歩行と判定された被評価値が、所与の閾値よりも小さいと判定された場合には、前記歩数検出部で検出された歩数と、前記ゼロクロス回数とを比較して、比較結果に基づいてユーザーが乗物移動しているかの判定を行ってもよい。
【0012】
これにより、被評価値が小さい場合には、ゼロクロス回数と検出歩数とを比較することで、歩行と乗物移動とを区別することが可能になる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記特徴量抽出部は、加速度パワーベクトルの2回積分信号値のゼロクロス回数を前記特徴量として抽出し、前記判定部は、前記歩数検出部で検出された歩数と、前記ゼロクロス回数とを比較して、比較結果に基づいてユーザーが乗物移動しているかの判定を行ってもよい。
【0014】
これにより、ゼロクロス回数と検出歩数とを比較することで、歩行と乗物移動とを区別することが可能になる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記歩数検出部は、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて前記歩行の被評価値を求め、前記判定部は、前記被評価値のうちの歩行と判定された被評価値と、歩行ではないと判定された被評価値との関係に基づいて、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行ってもよい。
【0016】
これにより、歩行と判定された被評価値と、歩行ではないと判定された被評価値とに基づいて、乗物移動か否かの判定を行うことが可能になる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記判定部は、評価期間における前記被評価値のうちの、歩行と判定された被評価値の和に基づいて求められる値と、歩行ではないと判定された被評価値の和に基づいて求められる値との比を求め、求められた前記比と所与の閾値の比較を行うことで、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行ってもよい。
【0018】
これにより、歩行と判定された被評価値と、歩行ではないと判定された被評価値との関係の一例として、2つの値の比を用いること等が可能になる。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記歩数カウント部は、テンポラリカウンターと、最終出力カウンターとを有し、前記歩数カウント部は、前記継続歩行時間が前記有効歩数判定期間よりも短い場合に、前記テンポラリカウンターにおいて前記歩数のカウント処理を行い、前記継続歩行時間が前記有効歩数判定期間を超えた場合に、前記テンポラリカウンターの値を最終出力カウンターの値に加算する処理を行ってもよい。
【0020】
これにより、有効歩数判定期間によりカウンターの確定、リセット処理をテンポラリカウンターと最終出力カウンターを用いて実現すること等が可能になる。
【0021】
また、本発明の一態様では、前記歩数検出部は、歩数の予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて求められた被評価値が、前記閾値よりも大きい場合に前記歩数検出を行ってもよい。
【0022】
これにより、予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間に基づいて閾値を設定すること等が可能になる。
【0023】
また、本発明の他の態様は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部と、を含み、前記歩数検出部は、歩数の予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて求められた被評価値が、前記閾値よりも大きい場合に前記歩数検出を行う歩数検出装置に関係する。
【0024】
また、本発明の一態様では、前記歩数検出部は、前記予測検出周期と、前回の歩数検出からの前記経過時間とより出力値が決定されるルックアップテーブルを有し、前記ルックアップテーブルの前記出力値を前記閾値として設定してもよい。
【0025】
これにより、閾値の設定はルックアップテーブルを用いて行うことが可能になる。
【0026】
また、本発明の一態様では、前記歩数検出部は、第1〜第Nの歩数検出時刻t〜tを検出した場合に、第N+1の歩数検出処理に用いられる第Nの予測検出周期TをT=tN−1−tN−2として求めてもよい。
【0027】
これにより、歩数検出装置がズボンのポケットに装着されているようなケースでも、適切に予測検出周期を設定することが可能になる。
【0028】
また、本発明の他の態様は、請求項1乃至11のいずれかに記載の歩数検出装置を含む電子機器に関係する。
【0029】
また、本発明の他の態様は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、歩行開始からの継続歩行時間を計測する歩行時間計測部と、前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部と、乗物移動をしているか否かを判別するための特徴量を、前記センサー信号に基づいて抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量に基づいて、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行う判定部として、コンピューターを機能させ、前記歩数カウント部は、前記継続歩行時間が所与の有効歩数判定期間より短かった場合に、前記継続歩行時間において検出された歩数のカウントをリセットし、前記歩数カウント部は、前記判定部での判定結果に基づいて、ユーザーが乗物移動していると判定された場合に、前記有効歩数判定期間を延長するプログラムに関係する。
【0030】
また、本発明の他の態様は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部として、コンピューターを機能させ、前記歩数検出部は、歩数の予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて求められた被評価値が、前記閾値よりも大きい場合に前記歩数検出を行うプログラムに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態の歩数検出装置のシステム構成例。
【図2】バンドパスフィルターによるフィルター処理を行うことによる加速度パワーベクトルの変化を説明する図。
【図3】下ピーク値を説明する図。
【図4】第1の被評価値算出処理が適切でない例を説明する図。
【図5】閾値を決定するルックアップテーブル。
【図6】停止状態から歩行を開始する際の閾値を決定するテーブル。
【図7】通常歩行時の歩行周期を説明する図。
【図8】ズボンのポケットに歩数検出装置を装着した場合の歩行周期を説明する図。
【図9】通常歩行時の加速度パワーベクトルと、加速度パワーベクトルの2回積分信号の関係を説明する図。
【図10】乗物移動時の加速度パワーベクトルと、加速度パワーベクトルの2回積分信号の関係を説明する図。
【図11】ズボンのポケットに歩数検出装置を装着した場合の加速度パワーベクトルと、加速度パワーベクトルの2回積分信号の関係を説明する図。
【図12】乗物移動時の振動による歩数の誤検出の状態を説明する図。
【図13】特徴量を用いた判定処理を説明するためのフローチャート。
【図14】歩数カウント処理の詳細を説明するためのフローチャート。
【図15】本実施形態に係る電子機器のシステム構成例。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0033】
1.本実施形態の手法
まず本実施形態の手法について説明する。加速度センサーを用いた歩数検出装置(歩数計)が広く用いられているが、これらの歩数検出装置は加速度の変動に基づいて歩数を検出するため、歩行以外の要因(乗物移動等)による加速度の変動も、歩行による歩数としてカウントしてしまう可能性がある。そのため、上述した特許文献1〜3のように、歩行とそれ以外の要因との区別を行う種々の手法が提案されている。
【0034】
しかし、フーリエ変換を行う手法では当該フーリエ変換処理の処理負荷が重いという問題がある。また、検出ピークレベルと信号レベルの比較や、エネルギーによる比較を行う手法も、ズボンのポケットに歩数検出装置を装着した場合等に問題が生じる。ズボンのポケットに歩数検出装置を装着した場合には、右足による踏みだしと左足による踏みだしとで歩数検出装置の運動状態が大きく異なるため、検出ピークやエネルギーのばらつきが大きくなってしまうためである。
【0035】
そこで本出願人は、乗物移動を行っているか否かを判定する特徴量を求め、当該特徴量に基づいて判定を行うことにより、歩行と乗物移動を区別する手法を提案する。本実施形態では、加速度センサーからの加速度情報(例えば後述するパワーベクトル等)から、被評価値(評価値)を算出し、被評価値に基づいて歩数検出を行う。それとともに、加速度情報或いは被評価値等から特徴量を求め、当該歩数検出が、歩行によるものか乗物移動によるものかの判定を行う。そして、歩数検出が乗物移動によるものであると判定された場合には、歩数のカウントを行う際に、カウントの留保或いはキャンセル等の処理を行う。このようにすることで、乗物移動時の誤カウントを抑止することが可能になる。なお、カウントの留保等の処理は有効歩数判定期間の延長等により行われるが、有効歩数判定期間の詳細については後述する。
【0036】
以下、本実施形態のシステム構成例について説明した後、本実施形態における歩数カウント処理について説明する。歩数カウント処理は具体的には、前処理、歩数検出処理、特徴量の算出及び判定処理、及びカウント処理に分けて説明する。最後に本実施形態の作用、効果について述べる。
【0037】
2.本実施形態のシステム構成例
本実施形態に係る歩数検出装置100を含む歩数計(歩数計測システム)の構成例を、図1を用いて説明する。歩数計は、センサー部10と、前処理部110と、歩数検出装置100と、歩数表示部20とを含む。そして、歩数検出装置100は、歩数検出部120と、特徴量抽出部130と、判定部140と、歩行時間計測部150と、歩数カウント部160と、を含む。ただし、歩数検出装置100や歩数計は図1の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0038】
センサー部10は歩行カウント処理に用いられるセンサーを有する。ここではセンサー部10は加速度センサーを含む。また、加速度センサー以外のセンサーを含んでもよい。
【0039】
前処理部110は、センサー部10からのセンサー情報を取得し、前処理を行う。具体的には、3軸の加速度情報からパワーベクトルを求める処理や、バンドパスフィルター(以下、適宜BPFと記載する)によるフィルター処理を行う。
【0040】
歩数検出部120は、歩数検出処理を行う。ここで歩数検出処理とは例えば、前処理後の信号値に基づいて歩行が行われたと考えられるタイミングを検出する処理のことである。よって一例としては、歩数検出部120から歩行時間計測部150や歩数カウント部160への出力は、歩数検出パルスの形で行われる。
【0041】
歩数検出部120は、ピーク検出部121と、被評価値算出部123と、閾値判定部125とを含む。ピーク検出部121は、前処理後の信号値の中からピーク値を検出する。被評価値算出部123は、ピーク値が検出されたタイミングの信号値から、歩数検出に用いられる被評価値を算出する。閾値判定部125は、適応的に閾値を設定し、設定した閾値と被評価値とを比較することで歩数検出を行う。ピーク検出部121、被評価値算出部123及び閾値判定部125の具体的な処理は後述する。
【0042】
特徴量抽出部130は、乗物移動か否かを判定する特徴量を算出する。特徴量の詳細及び算出手法については後述するが、例えば前処理部110からの前処理後の信号値、被評価値算出部123からの被評価値、或いは、閾値判定部125からの歩数検出パルス等に基づいて算出することが考えられる。
【0043】
判定部140は、特徴量抽出部130で算出された特徴量に基づいて、評価期間に検出された歩数が、乗物移動によるものか否かの判定を行う。評価期間の詳細及び具体的な判定手法については後述する。
【0044】
歩行時間計測部150は、継続歩行時間を計測する。ここで継続歩行時間とは、連続して歩行が検出されている時間のことを表す。
【0045】
歩数カウント部160は、歩数のカウントを行う。歩数検出部120における歩数検出処理においては乗物移動であるかの判定は特に行われていない。歩数検出の結果を、歩数表示部20に表示される歩数に反映させるか否かは、判定部140での判定結果を考慮して歩数カウント部160により決定されることになる。
【0046】
歩数カウント部160は、テンポラリカウンター161と、最終出力カウンター163を含む。静止状態から最初の歩行が検出されたら、まずテンポラリカウンター161においてカウントが行われる。テンポラリカウンター161によるカウントは、継続歩行時間が有効歩数判定期間を超えるまで行われ、有効歩数判定期間を超えたら、テンポラリカウンター161のカウント値が最終出力カウンター163に加算される。最終出力カウンター163のカウント値が、歩数表示部20に送信され、ユーザーに対して提示される。
【0047】
つまり、継続歩行時間が有効歩数判定期間を超えるまでは、歩数を検出しても、あくまで暫定的なカウントであり、有効歩数判定期間を超えて初めてユーザーに対して提示されるカウンターに確定されることになる。本実施形態においては有効歩数判定期間を延長することにより乗物移動による誤カウントを抑止するが、有効歩数判定期間の延長は歩数検出をカウントとして確定するまでの時間の延長につながる。確定までの時間が延長されれば、その間に当該暫定カウントが乗物移動によるものであるか否かの情報を取得する猶予が生まれ、結果としてテンポラリカウンター161をリセットする等のカウント抑圧処理を行う可能性が高まることになる。例えば、有効歩数判定期間が許容値以上になった場合(或いはテンポラリカウンター161の値が許容値以上になった場合)にテンポラリカウンター161をリセットするように動作させれば、乗物移動の疑いがある程度継続する場合に、暫定的なカウントがリセットされ、歩数としては最終的にカウントされないことになる。なお、歩数カウント部160の詳細な処理については後述する。
【0048】
歩数表示部20は、歩数の表示を行う。例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等により実現できる。
【0049】
3.本実施形態における歩数カウント処理
本実施形態における歩数カウント処理について説明する。具体的には、前処理、歩数検出処理、特徴量の算出及び判定処理、及びカウント処理に分けて説明する。
【0050】
3.1 前処理
前処理は、前処理部110において行われ、3軸加速度のベクトル合成処理及びBPFによるノイズ成分とDC成分の除去処理の2ステップにより行われる。
【0051】
まず、3軸加速度のベクトル合成処理について説明する。センサー部10から入力されたセンサー信号としては例えば加速度センサーによる3軸加速度情報が考えられる。ここでは3つの加速度情報をそのまま用いるのではなく、各軸の二乗和を計算してパワーベクトルに変換する。以後の歩数検出等の処理は、このパワーベクトルに基づいて行われる。パワーベクトルの算出手法としては下式(1)及び下式(2)等が考えられる。
【0052】
【数1】

【0053】
【数2】

【0054】
上式(1)では、歩行の上下運動による加速度変化が±1gを超えるようなケースで、合成後の波形が歪む可能性がある。例えば、重力加速度の大半の成分がx軸に集中していて、かつ、その値が正の場合を考える。このとき、激しい上下運動による変動の下ピークが、マイナス側に突き抜けた場合、その成分は二乗によって正に折り返されるため、結果として波形が変形する。
【0055】
上式(2)では、ローパスフィルター(LPF)で抽出した各軸の重力加速度成分の二乗を重み付け係数とした合成で、上下運動成分をより正確にパワーベクトルに反映でき、波形歪も生じない。なお、上式(2)におけるLPF(A)とは信号Aに対してローパスフィルター処理を行った値を表すものとする。ただし、極端にゆっくり歩行した場合やズボンの前ポケットに装着した場合などでは、上下運動だけではなく、前後左右の加速度変化(姿勢変化)も歩数検出に寄与してしまう。
【0056】
本実施形態においては(1)式によるベクトル合成手法を用いるものとするが、上式(1)、上式(2)のどちらを採用してもよい。また、パワーベクトルの算出に別の手法を用いてもよい。
【0057】
次に、BPFによるノイズ成分とDC成分の除去処理について説明する。3軸加速度の合成パワーベクトルをそのまま用いた場合には、図2にPowerとして示した波形のように、高域のノイズ成分やDC成分が含まれており、この後の歩数検出処理を適切に行うことができない。そこでパワーベクトルに対して、BPFによりフィルター処理を行うことで、歩行動作に無関係な高域のノイズ成分及びDC成分を除去する。フィルター処理後の信号値は図2のBPF(Power)に示したように、高域のノイズ及びDC成分が除去され、正弦波に近い波形を得ることができる。
【0058】
3.2 歩数検出処理
次に歩数検出処理について説明する。歩数検出処理は歩数検出部120において行われ、具体的にはピーク検出部121による下ピーク検出処理、被評価値算出部123による被評価値の算出処理、閾値判定部125による閾値判定処理が実行される。
【0059】
3.2.1 下ピーク検出処理
一単位周期の歩行動作においては、鉛直方向の加速度成分は、上ピークが先に現れ、下ピークがそれに続くというペアを成す。大まかに言えば、足を上げたときが上ピークで、接地したときに下ピークとなる。よって、上ピーク或いは下ピークを検出することで歩数検出を行うことができる。
【0060】
本実施形態では、下ピークで歩数検出を行う。下ピークは例えば図3におけるPに対応するものであり、具体的な判定は、下記の(1)、(2)の手法を、過去の歩行ピッチから求めた次の歩数検出までの予測検出周期Tに応じて適応的に切り換えて用いる。
(1)Pi<Pi-2、Pi<Pi-1、Pi<=Pi+1、Pi<Pi+2のとき、Piを下ピークと判定
(2)Pi<Pi-3、Pi<Pi-2、Pi<Pi-1、Pi<=Pi+1、Pi<=Pi+2、Pi<=Pi+3のとき、Piを下ピークと判定
具体的には予測周期Tが短い(概ね7以下)のとき(1)の条件で判定し、長い(7を超える)とき(2)の条件で判定する。
【0061】
3.2.2 歩数検出の被評価値の算出処理
判定された下ピークを歩数検出候補として評価し歩数を検出する。歩数検出は、後述する閾値判定により行うが、ここでは、閾値判定のための被評価値の算出方法について説明する。本実施形態では、まず、以下の2種類の手法で被評価値R1,R2を求める。なお、被評価値は1歩の動作に対応する信号値に基づく値である。パワーベクトルは、上述した図2のBPF(Power)に示した波形となるため、1歩の動作は正弦波の1周期に相当する波形の信号となる。被評価値としては、この正弦波の1周期に相当する波形の特徴が得られる値を採用すればよく、例えば、振幅値や面積(積分値)等が考えられる。ここでは、振幅値に対応する値を用いることにするが、これに限定されるものではない。
【0062】
第1の手法では、下ピークを符号反転した値を用いる。BPFによるフィルター処理後は、DC成分が除去されているので、加速度パワーベクトルは基本的に0を中心に上下に振れることになる。したがって、下ピーク値を符号反転した値(-Pi)の2倍を被評価値とする。
R1=-2Pi ・・・・・(3)
【0063】
第2の手法では、下ピーク以前の過去3サンプルの最大値との差分を用いる。下ピーク以前の3サンプル(Pi-2、Pi-3、Pi-4)の最大値を求め、その値から下ピークのサンプル値を引いた値を被評価値とする。なお、直前の3サンプル(Pi-1、Pi-2、Pi-3)を用いないのは、以下の理由による。上述したように、ここではR2として振幅値に相当する値を取得しようとしている。よって、過去3サンプルの最大値は上ピーク値に相当するものを選択しようという意図がある。しかし、連続するタイミングで上ピークと下ピークが現れることは、人の歩行スピード(歩行ピッチ)からは想定しにくい。よって、直前のタイミングPi-1を除いて、より上ピーク値に相当する可能性が高い、その前の3サンプルから被評価値R2を求めている。
R2=max(Pi-2,Pi-3,Pi-4)-Pi ・・・・・(4)
【0064】
基本的に、歩行動作による上下運動が良好に加速度パワーベクトルに反映されている場合は、上式(3)による手法で十分な被評価値が得られる。しかし、歩行ピッチが速い場合や、ズボンの前ポケットに装着したときなど、姿勢変化が激しい場合では、加速度パワーベクトルが歩行動作に同期してゼロクロスしない場合があり、上式(3)の被評価値だけでは歩数検出が不安定になる。例えば図4の波形の丸で示した部分のように、被評価値の値が振幅値に相当する値に比べて極端に小さくなってしまう(ゼロクロスしない場合には被評価値がマイナスになる)。
【0065】
一方、上式(4)の手法による被評価値では、波形が正弦波に近く振幅が小さい場合(例えば、端末を手に持ってゆっくり歩行した場合など)、被評価値が小さくなり歩数検出が不安定になる。そこで、R1とR2を両方求め、下式(5)に示したとおり大きい方を最終的な被評価値Rとする。
R=max(R1,R2) ・・・・・(5)
【0066】
3.2.3 閾値判定
上式(5)で求めた被評価値Rが所定の閾値を越えている場合、歩数として判定する。歩行動作による歩数検出は、通常ある一定の周期で生じるはずである。したがって、乗物乗車時の振動等と極力区別するためにも、判定閾値は固定ではなく、次の歩数検出時刻を予測し、検出する可能性が高い時刻付近で閾値を下げ、それ以外は閾値を高めにする方が望ましい。そこで、過去の歩行ピッチから求めた次の歩数検出までの予測検出周期Tと、前回の歩数検出からの経過時間tをパラメーターとして、判定閾値を変化させる。具体的には、下式(6)に示すような2次元配列によるテーブル・ルックアップで判定閾値Thを求める。BaseThは判定閾値全体をかさ上げする変数で、歩数検出感度を調整するためのパラメーターである。
Th = ThLut[T][t] + BaseTh ・・・・・(6)
【0067】
ThLutは、上述したとおり予測検出周期Tと、経過時間tが近い箇所で閾値が小さく、Tとtの差が大きくなると閾値が大きくなるという特性を持てばよい。ThLutの設定手法は任意であり、例えば、仮設定した判定閾値で適当な数の歩行加速度データを用いて歩数検出を行い、被評価値の最小値の分布に基づいて設定する手法等が考えられる。判定閾値テーブルThLutの例を図5に示す。ここで、図5の例においては上式(6)のBaseThは0.2程度の値に設定されるが、ユーザーにより調整されてもよい。
【0068】
なお例外処理として停止状態(過去1秒を超えて歩数を検出していない状態)からの最初の1歩目及び2歩目について考える必要がある。停止状態から最初の1歩を検出する際は、連続して歩行が行われる場合に比べて経過時間tが非常に大きな値となってしまい、ルックアップテーブルを有効に用いることが難しいため、BaseThを用いて判定する。また、続く2歩目の検出は、予測検出周期Tの情報がないので、図6に示す専用の判定閾値テーブルを用いる。
【0069】
ここで、予測検出周期Tを求める手法について説明する。一般的に予測は時間的に最も近い情報に基づいて行った方が良い。したがって、i番目の歩数検出時刻をtとすると、予測検出周期Tは下式(7)により求めることができる。
【0070】
【数3】

【0071】
しかし、ズボンの前ポケットに装着したときなど、右足ステップと左足ステップでの加速度変化が異なる場合があり、上式(7)による予測では、予測誤差が大きくなる場合がある。図7に胸ポケットに歩数検出装置100を装着して普通に歩いた場合の加速度パワーベクトルと歩数検出の一例を示す。胸ポケット装着では、主にボディーの加速度変化を観測できるため、左右ステップでの加速度波形の相違はほとんどなく、検出された歩数周期もほぼ等間隔であることがわかる。
【0072】
一方、図8は、ズボンの前ポケット装着の例である。ズボンの前ポケットに装着したときは、装着側の足の動きの影響を受け、検出される歩数周期が、右足→左足と左足→右足で大きく異なることがわかる。そこで、予測周期Tは、1歩前の歩数検出時刻ti−1から2歩前の歩数検出時刻であるti−2を引いた値とする(下式(8))。
【0073】
【数4】

【0074】
3.3 特徴量の算出及び判定処理
歩数計測情報は、移動距離や消費カロリー、脂肪燃焼量を求めるだけでなく、ユーザーの状態判別を行うための有力な情報源であり、歩行動作以外の振動による歩数カウントは、極力抑圧しなければならない。ここでは、乗物移動時の振動による誤カウントを抑圧する手法について説明する。なお特徴量は特徴量抽出部130において抽出される。
【0075】
3.3.1 特徴量
本実施形態では、以下の3つの特徴量を求めた上で複合的な評価を行い、乗物移動を判定する。
【0076】
第1の特徴量として、加速度パワーベクトルの2回積分信号(特に2回積分信号のゼロクロスに関する情報)を用いる。一般的な歩行動作時の波形を図9に示す。図9の波形からわかるように、歩行動作時の加速度信号とその2回積分信号は、同じ周期でほぼ逆相の関係になる。
【0077】
続いて、自動車移動時の振動による波形を図10に示す。図10に示すように、自動車移動時では、加速度信号とその2回積分信号の同期は不安定になる。特に、ゼロレベルをクロスする周期に着目すると大きく異なっている。つまり、ゼロクロス周期に基づく比較処理(例えば所定時間内におけるゼロクロス回数等の比較処理等)により、通常歩行時と乗物移動時を識別することができる。
【0078】
しかし、歩行動作であっても歩行ピッチが速いジョギングやランの場合、或いはズボンの前ポケットに装着した場合などでは、自動車移動時のように加速度信号とその2回積分信号のゼロクロス周期が同期しないことがわかっている。図11にズボンのポケットに歩数検出装置100を装着した場合の加速度パワーベクトル及び2階席分信号の波形を示す。しかし、図10及び図11の縦軸のスケールからわかるように、これらの歩行動作では自動車移動時に比べて加速度パワーベクトルの振幅が大きく、上式(5)の被評価値Rの大きさによる判定で、ある程度区別が可能である。
【0079】
以上をまとめると、まずRの大きさが所与の閾値よりも大きいものは乗物移動ではないという判定を行う。Rが所与の閾値よりも小さい場合には、2回積分信号のゼロクロス周期に基づく判定を行い歩行か乗物移動かを区別することになる。
【0080】
第2の特徴量として、歩幅周期のばらつき(分散値)を用いる。歩行動作は周期運動であるので、通常は検出した歩数の周期はほぼ一定になる。一方、乗物移動時の振動は、ランダムな成分が多く周波数の変動が大きい。よって歩行周期の分散を求め、分散が大きい場合には乗物移動、小さい場合には歩行であると判定することができる。ただし、歩行動作でも歩行開始直後などでばらつきが大きくなる場合があり、評価は注意を要する。
【0081】
第3の特徴量として、ノイズレベルを用いる。図12に、自動車移動時の振動による歩数の誤検出の状態を示した。被評価値Rで示したパルスは、加速度パワーベクトルの下ピーク検出位置を示しており、パルスの高さはその際の被評価値である。また、歩数検出で示したパルスは、被評価値を閾値判定した結果、歩数として検出した位置を示している。図12の波形が示すように、下ピークとしては検出されたが、最終的に閾値判定で歩数検出から除外された下ピークがいくつか存在する(丸で示したパルス)。この除外された下ピークの割合を、ノイズレベルを図る尺度に利用する。
【0082】
閾値判定により歩数検出から除外された以上、そのタイミングでは歩行は行われなかったということである。にもかかわらずピーク値が検出されるということはノイズの影響が疑われると言うことであり、ここでは、除外されたピークのタイミングにおける被評価値をノイズの尺度に用いる。具体的には例えば、除外されたピークのタイミングにおける被評価値が大きいほどノイズの影響が大きい(乗物移動である可能性が疑われる)ということになる。しかし、信号値の大きさは運動状態により異なるものであり、除外されたピークのタイミングにおける被評価値をそのまま用いることは好ましくない。よって、歩数検出された被評価値と、除外されたピークのタイミングにおける被評価値の比に基づく値を特徴量として用いる等の手法が好ましい。
【0083】
3.3.2 特徴量の具体的な抽出方法
以上述べた3つの特徴量を抽出するために、評価期間の定義が必要である。評価期間における特徴量の値を用いることで、当該評価期間における歩数検出が乗物移動であるか否かの判定を行うことになる。評価期間が長い方が情報の確度は上がる。ただし、現実問題として、有効歩数判定期間(ここでは6秒とする)を超えるような評価サイクルでは、特徴量の評価を行う前に継続歩行時間が有効歩数判定期間を超えてしまい、誤検出の抑圧ができない(暫定的なカウントが判定前に確定してしまうことになる)。したがって、概ね6秒以内で結果を出力しなければならない。一方、評価期間は、時間で定める方法もあるが、本実施形態では、歩数周期の分散を求める際の除算を省ける等の理由から、評価期間を歩数で定めることとする。以上の理由により、本実施形態では評価期間を6歩とする。なお、評価期間が6歩を検出するまでの期間に限定されないことは言うまでもない。
【0084】
第1の特徴量である、加速度パワーベクトルの2回積分信号について説明する。ここでは、6歩の歩数を検出する間の加速度パワーベクトルの2回積分信号の上りのゼロクロス回数Cをカウントする。安定した歩行運動であれば、ゼロクロスも6回となる。
【0085】
第2の特徴量である、歩数周期の分散について説明する。ここでは、6歩の歩数間隔の分散を求める。ただ、数学の定義で言う標本分散を正確に求める必要はない。標本数が固定なので除算は省いた疑似分散を求める。また、予測検出周期Tの説明の箇所で述べたように、右足と左足で歩数を検出する間隔が均等にならない場合がある。そこで、分散も左右の歩数検出で別々に求め、最後に合計する。具体的には、6歩の歩数間隔をT0〜T5としたとき、下式(9)で分散値Sを計算する。
【0086】
【数5】

【0087】
第3の特徴量である、ノイズレベルについて説明する。歩数検出した6歩の被評価値の合計SRと6歩を検出する間に検出した下ピークのすべての被評価値の合計Srを求める。6歩の被評価値をR〜R、閾値判定で除外された被評価値をr〜とすると、ノイズレベルは下式(10)、(11)からSrとして求められる。ただし、実際には上述したようにSRとSrの比等の値が用いられることになる。
【0088】
【数6】

【0089】
【数7】

【0090】
3.3.3 歩数カウントの抑圧判定
6歩検出する毎に上述した3つの特徴量を評価し、乗物移動と判定した場合は、有効歩数判定期間を延長する。但し、無制限に有効歩数判定期間を延長することはできないので、乗物移動と判定した時点で、検出歩数が例えば18歩を超えている場合は、それまでの歩数、歩行時間、歩行距離をゼロクリアする。
【0091】
ここでは、有効歩数判定期間を延長するために、有効歩数判定期間の超過を判定するための計時カウンターを初期化する。例えば有効歩数判定期間の開始から5秒経過後に計時カウンターが初期化されれば、そこからさらに6秒だけ有効歩数判定期間が継続する。つまり有効歩数判定期間は計11秒に延長されることになる。この手法では、1回有効歩数判定期間が延長されたとしても、次の有効歩数判定期間が開始されるときには、その長さは再び設定値(6秒)に戻ることになる。
【0092】
図13に歩数カウントの抑圧判定を行うフローチャートを示した。まず、S11でノイズレベルを確認する。SrがSRに対してTh1倍を超える場合は有効歩数判定期間の計時カウンターを初期化する(S15)。S11の判定は、バイブレータ等の振動振幅が小さく周波数が高い振動に対しての抑圧効果も期待できる。
【0093】
S11でNoと判定された場合には、S12で、SRがTh2より大きいか確認し、以後の抑圧処理はTh2以下の場合のみ行う。乗物移動ではTh2を越えるケースが少なくなるようにTh2を設定する。また、SRの値が大きくなるような歩行運動では、分散値Sや2回積分信号のゼロクロス回数Cも不安定になり、抑圧処理により本来の歩行運動による歩数カウントに影響を与える可能性が高くなる。よってそのような場合も抑圧処理は行わない方がよいことから、SやCが不安定になるか否かという観点からTh2を設定してもよい。
【0094】
S12でNoと判定された場合、まずS13では、ゼロクロス回数Cが6であるかの判定を行う。ここでは評価期間を、6歩を検出した時間に設定していることから、通常Cは6となるはずである。よって、6以外の値になった場合は計時カウンターを初期化する。
【0095】
S13でYesと判定された場合、S14で分散値Sの判定を行う。SがTh3を超えた場合には計時カウンターの初期化を行う。
【0096】
なお、図13のフローチャートにおける各閾値は、既存の自動車、電車移動時の振動加速度データおよび振動試験機で生成した歩行加速度データ等による評価で決定してもよいし、他の手法により決定してもよい。
【0097】
3.4 カウント処理
次に、歩数カウント部160における歩数カウント処理について説明する。歩数カウント処理の詳細を図14のフローチャートに示す。図14の処理が開始されると、まずS21で歩数検出パルスが入力されたかどうかの判定を行う。入力されていない場合は処理を終了し、入力された場合はS22へ進む。S22では、継続歩行時間が0であるか、つまり静止状態からの最初の一歩であるかの判定が行われ、継続歩行時間が0の場合S24に進む。
【0098】
S22において継続歩行時間が0でない場合には、S23で有効歩数判定期間と継続歩行時間の比較を行い、継続歩行時間が有効歩数判定期間を超えている場合にはS27へ進み、そうでない場合にはS25に進む。
【0099】
S25では有効歩数判定期間が有効歩数判定期間の最大許容値以上であり、かつ、テンポラリカウンター161のカウント値が最大許容値以上であるかの判定が行われる。Yesの場合にはS27へ進み、Noの場合にはS26へ進む。
【0100】
S26,S27,S24がテンポラリカウンター161及び最終出力カウンター163の一方或いは両方を変更するカウント処理になる。具体的にはS26では、テンポラリカウンター161のカウント値がインクリメントされる。これは、歩行の開始時ではなく、また有効歩数判定期間もテンポラリカウンター161のカウンター値も最大許容値以下に収まっている場合である。つまり、暫定的なカウント処理の継続に相当する。
【0101】
S27では、最終出力カウンター163のカウント値に対して、テンポラリカウンター161のカウント値が加算される。これは、それまでテンポラリカウンター161を用いて暫定的にカウントしていた歩数を、歩行によるものであると判断し確定させる処理に相当する。そして、S21で入力された歩数検出パルスに相当する歩数に対応させて最終出力カウンター163をインクリメントし、さらにテンポラリカウンター161をリセットする。
【0102】
S24では、有効歩数判定期間を初期値に設定し、テンポラリカウンター161に1をセットする。これは、歩行が開始された場合に相当し、テンポラリカウンター161を用いた暫定的なカウントを開始させる処理となる。
【0103】
S24,S26,S27による処理のいずれかが終了場合には、S28で有効歩数判定期間が最大許容値よりも小さく、かつ、有効歩数判定期間の計時カウンターリセット指令が入力されているかの判定を行う。ここで計時カウンターリセット指令は、上述したように、判定部140による判定の結果、歩数カウント部160に入力されるものである。Yesの場合には、S29で計時カウンターのリセットが行われる。S28でNoと判定された場合、或いはS29の処理が終了した場合には、この処理が終了する。
【0104】
以上の本実施形態では、図1に示したように歩数検出装置100は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部120と、歩行開始からの継続歩行時間を計測する歩行時間計測部150と、歩数検出部120での歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部160と、乗物移動をしているか否かの判定を行うための特徴量を、センサー信号に基づいて抽出する特徴量抽出部130と、抽出された特徴量に基づいてユーザーが乗物移動しているかの判定を行う判定部140と、を含む。そして歩数カウント部160は、継続歩行時間が所与の有効歩数判定期間より短かった場合に、継続歩行時間に置いて検出された歩数のカウントをリセットする。それとともに歩数カウント部160は、判定部140での判定結果に基づいて、ユーザーが乗物移動していると判定された場合に、有効歩数判定期間を延長する処理を行う。
【0105】
ここで、継続歩行時間とは連続して歩行が行われている時間のことである。連続して歩行とは前回の歩数検出から所与の時間の間に次に歩数検出が行われる状態を表すものとする。また、有効歩数判定期間とは、システム構成の箇所で説明したとおり、テンポラリカウンター161にカウントされた値を最終出力カウンター163に加算するのか、破棄するのかを判定するための期間のことであり、延長することでカウントの留保が行われる。
【0106】
なお、加速度センサーを有するセンサー部10と、歩数検出部120、特徴量抽出部130との関係は、例えば図1のようになる。センサー部10は前処理部110に接続され、前処理を行うことでDC成分等の除去が行われる。なお、図1ではセンサー部10と前処理部110が別であるものとして記載したが、前処理部110がセンサー部10に含まれてもよい。この場合、センサー部10においてセンサー信号に対する処理が行われることになるため、センサー部10からの出力はセンサー信号そのものではなく、処理後の信号となる。前処理部110は、歩数検出部120と特徴量抽出部130に接続される。特徴量抽出部130での特徴量の抽出は、前処理部110からの信号(加速度パワーベクトル)から行われる他、被評価値算出部123で算出された被評価値や、閾値判定部125での閾値判定の結果取得される歩数検出パルス等も用いられる。図1では歩数検出部120と特徴量抽出部130の接続は、簡単のため1本の矢印で記載したが、上述のように複数の種類の信号が出力されている。
【0107】
これにより、ユーザーが乗物移動していると判定された場合には、有効歩数判定期間が延長されることになるため、乗物移動と判定された際に検出された歩数のカウント留保或いは破棄が行われることになり、乗物移動による誤カウントを抑止することが可能になる。有効歩数判定期間の延長により誤カウントを抑止できる理由については、上述してきたとおりである。
【0108】
また、歩数検出部120は、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでのセンサー信号に基づいて、歩行の被評価値を求める。そして判定部140は、評価期間における被評価値のうちの歩行と判定されたタイミングでの被評価値が、所与の閾値よりも大きい場合には、ユーザーが乗物移動していないと判定する。
【0109】
ここで、ピーク値の検出は歩数検出部120のピーク検出部121により行われ、実際の処理は、上述した式(3)〜(5)を求めることになる。本実施形態においては、ピークが検出されたタイミングで被評価値を計算するが、その他のタイミングにおいて被評価値を算出してもかまわない。被評価値の算出後、閾値判定部125により閾値判定が行われ、その結果歩行ではないとして除かれる被評価値が存在しうる。よって、被評価値には歩行と判定された被評価値と、歩行と判定されなかった被評価値とがある。また、評価期間とは特徴量に基づいて、検出された歩数が乗物移動によるものか否かを判定する期間のことである。上述したように継続歩行時間が有効歩数判定期間を超える前に判定を行う必要があることから、評価期間は有効歩数判定期間よりも短い時間が設定され、本実施形態では例えば6回歩数を検出する期間とする。よって評価期間における歩行と判定された被評価値は通常6タイミング分(6個)だけ存在する。これと閾値との比較を行う場合には、例えば6個の被評価値の和を用いてもよいし、平均を用いてもよい。
【0110】
これにより、歩行と判定された被評価値に基づいて、その値が所与の閾値よりも大きい場合には、歩行であると考えることが可能になる。よって、その他の特徴量を用いた判定は行わなくてもよく、簡単に乗物移動か否かの判定を行うことができる。これは図10及び図11に示したように、ある程度以上の信号値の大きさの運動は乗物移動とは考えにくいためである。もちろん信号値の小さい歩行運動もあり得るが、その場合にはその他の特徴量を用いて判定を行えばよい。
【0111】
また、特徴量抽出部130は、加速度パワーベクトルの2回積分信号値のゼロクロス回数を特徴量として抽出してもよい。そして判定部140は、評価期間における歩行と判定された被評価値が、所与の閾値よりも小さいと判定された場合には、歩数検出部120で検出された歩数と、ゼロクロス回数とを比較して乗物移動か否かの判定を行う。
【0112】
ここでゼロクロス回数とは、所与の期間に信号値がゼロになる回数を指す。
【0113】
これにより、被評価値の大きさだけでは歩行と判定できない場合にも、歩行と乗物移動とを区別することが可能になる。これは図9に示したように、歩行の場合には加速度パワーベクトルと、その2回積分信号値は逆相で同じ周期になるのに対し、乗物移動ではそのような特性が表れないことによる。具体的には評価期間を6歩を検出する時間としていれば、歩数検出部120で検出される歩数は6となるため、ゼロクロス回数が6になるかどうかの判定を行うことになる。
【0114】
また、特徴量抽出部130は、加速度パワーベクトルの2回積分信号値のゼロクロス回数を特徴量として抽出してもよい。そして判定部140は、歩数検出部120で検出された歩数と、ゼロクロス回数とを比較して乗物移動か否かの判定を行う。
【0115】
これにより、図9に示した通常の歩行と、図10の乗物移動とを区別することが可能になる。ただし他の特徴量を用いて歩数検出装置100をズボンのポケットに装着した場合等(図11)を乗物移動と区別する必要がある点には注意が必要である。
【0116】
また、歩数検出部120は、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでのセンサー信号に基づいて歩行の被評価値を求めてもよい。そして判定部140は、歩行と判定された被評価値と、歩行ではないと判定された被評価値との関係に基づいて、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行ってもよい。具体的には、歩行と判定された被評価値の和に基づいて求められる値と、歩行ではないと判定された被評価値の和に基づいて求められる値の比を算出してもよい。そして算出した比と所与の閾値との比較を行う。
【0117】
これにより、ノイズレベルの判定を行って乗物移動か否かを判定することが可能となる。図12に示したように、被評価値には歩行と判定された被評価値と、歩行ではないと判定された被評価値とが存在しうる。本来ならばピーク値の検出は歩行の時だけ行われ、歩行以外の所では検出されないはずである。それにもかかわらず、ピーク値が検出されてしまったのはノイズ等、他の要因を疑う必要がある。ここでは、歩行ではないと判定された被評価値の値が大きい場合(値そのままではなく比を用いることが望ましいのは上述したとおりである)に、ノイズの影響が大きいと考える。ノイズの影響が大きい場合には、カウントの留保処理を行うことになる。
【0118】
また、歩数カウント部160は、テンポラリカウンター161と、最終出力カウンター163とを有する。そして、継続歩行時間が有効歩数判定期間を超えるまでは、テンポラリカウンター161をインクリメントすることで歩数のカウント処理を行い、継続歩行時間が有効歩数判定期間を超えた場合に、テンポラリカウンター161の値を最終出力カウンター163に加算する。
【0119】
ここで、ユーザーに対して提示される歩数は最終出力カウンター163のカウント値であり、テンポラリカウンター161の値はユーザーに対して提示されないものとする。ただし、特定の操作によりユーザーがテンポラリカウンターを参照することを妨げるものではない。
【0120】
これにより、テンポラリカウンター161と最終出力カウンター163の2つのカウンターを用いたカウント処理を行うことが可能になる。上述した、継続歩行時間が有効歩数判定期間よりも短かった場合のリセット処理は、テンポラリカウンター161の値を最終出力カウンター163に加算することなくリセットする処理に対応する。
【0121】
また、歩数検出部120は、予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、被評価値が閾値よりも大きい場合に歩数検出処理を行ってもよい。具体的には、予測検出周期と前回の歩数検出からの経過時間により出力値が決定されるルックアップテーブルを有し、ルックアップテーブルの出力値を閾値として設定してもよい。
【0122】
これにより、予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間に応じて適応的に閾値を設定することが可能になる。具体的には図5に示したルックアップテーブルを用いる手法等が考えられる。人が歩行する際には、歩行周期はほぼ一定であるか、緩やかに変化することが通常であるため、予測検出周期が設定できたら、次の歩数は前回の歩数検出から予測検出周期だけ時間がたったときに検出される可能性が高い。よって、そのようなタイミング(ルックアップテーブルの対角成分)では閾値を低く設定し、急激に周期が変化するようなタイミングでは閾値を高く設定する。
【0123】
また、以上の本実施形態は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部120と、歩数検出部120での歩数検出の結果に基づいて歩数カウント処理を行う歩数カウント部160とを含む歩数検出装置100に関係する。歩数検出部120は、予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、被評価値が閾値よりも大きい場合に歩数検出処理を行う。また、この歩数検出装置100においても、予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間に基づいて出力値が決まるルックアップテーブルを用いてもよい。
【0124】
これにより、閾値を適応的に設定する歩数検出装置を実現することが可能になる。
【0125】
また、歩数検出部120は、第1〜第Nの歩数検出時刻t〜tを検出した場合に、第N+1の歩数検出処理に用いられる第Nの予測検出周期TをT=tN−1−tN−2として求めてもよい。
【0126】
これにより、歩数検出装置100をズボンのポケットに装着した場合等にも、適切な予測検出周期を設定することが可能になる。ズボンのポケットに装着した場合には、図8に示したように右足を出すタイミングと左足を出すタイミングとで、長い周期と短い周期が交互に現れる。よって、式(7)に示したように直前2つの歩数検出時刻を用いるのではなく、式(8)に示したようにその1つ前のタイミングを用いるとよい。
【0127】
また、以上の本実施形態は、上述してきた歩数検出装置100を含む電子機器に関係する。
【0128】
これにより、歩数検出装置100を内蔵する電子機器を実現することが可能になる。具体的には図15に示したように、携帯電話等の携帯電子機器に内蔵することが想定される。携帯電子機器は、センサー部10と、歩数検出装置100と、通信部210と、処理部220と、表示部230と、I/F部240と、情報記憶媒体250を含む。ただし、携帯電子機器は図15の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、携帯電子機器が表示部230を持つため、図1の歩数計に示した歩数表示部20を持たなくてもよい。また、歩数検出装置100と処理部220を別のものとしたが、歩数検出部120、歩数カウント部160等で行われる処理を、携帯電子機器の処理部220で行ってもよい。例えば歩数検出装置100がソフトウェア的に実現される場合には、図1の歩数検出装置100の各部の処理を実行するプログラムとして電子機器に実装されることが考えられる。具体的には図15に示した情報記憶媒体250に当該プログラムを記憶させ、I/F部240を介して電子機器に接続する。そして処理部220は、情報記憶媒体250からプログラムを読み出して、当該プログラムに記述された処理を実行することで歩数検出処理を行う。その場合、図15に示した歩数検出装置100のブロックでは歩数検出処理を行う必要はないため、当該ブロックはなくてもよい。
【0129】
また、以上の本実施形態は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部120と、歩行開始からの継続歩行時間を計測する歩行時間計測部150と、歩数検出部120での歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部160と、乗物移動をしているか否かの判定を行うための特徴量を、センサー信号に基づいて抽出する特徴量抽出部130と、抽出された特徴量に基づいてユーザーが乗物移動しているかの判定を行う判定部140として、コンピューターを機能させるプログラムに関係する。そして歩数カウント部160は、継続歩行時間が所与の有効歩数判定期間より短かった場合に、継続歩行時間に置いて検出された歩数のカウントをリセットする。それとともに歩数カウント部160は、判定部140での判定結果に基づいて、ユーザーが乗物移動していると判定された場合に、有効歩数判定期間を延長する処理を行う。
【0130】
また、以上の本実施形態は、加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部120と、歩数検出部120での歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部160として、コンピューターを機能させ屡プログラムに関係する。そして歩数検出部120は、歩数の予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでのセンサー信号に基づいて求められた被評価値が、閾値よりも大きい場合に歩数検出を行う。
【0131】
これにより、ハードウェア的にではなく、ソフトウェア的に歩数をカウントする処理を行うプログラムを実現することが可能になる。そして、上記プログラムは、情報記憶媒体に記録される。ここで、情報記録媒体としては、DVDやCD等の光ディスク、光磁気ディスク、ハードディスク(HDD)、不揮発性メモリーやRAM等のメモリーなど、歩数検出装置100及び電子機器等によって読み取り可能な種々の記録媒体を想定できる。例えば、図15を用いて上述したように携帯電子機器の情報記憶媒体250にプログラムが記憶され、処理部220において実行されるケースが考えられる。さらに具体的には、携帯電話のアプリケーションとして実現されることが想定される。近年の携帯電話は、自身の姿勢検出等を行うために3軸の加速度センサーを搭載しているものが存在する。よって、ネットワークから通信部210を介して歩数計アプリケーションのダウンロード等を行ってプログラムを取得し、取得したプログラムをインストールすることにより、携帯電話に歩数検出処理を行わせることが可能になる。その場合、処理部220とは具体的には携帯電話のCPUを指す。また情報記憶媒体250は、携帯電話の内部に搭載されたチップ上のメモリーであってもよいし、携帯電話に設けられたスロットに挿入して用いるカード型のメモリーであってもよい。
【0132】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また歩数検出装置、電子機器等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0133】
10 センサー部、20 歩数表示部、110 前処理部、120 歩数検出部、
121 ピーク検出部、123 被評価値算出部、125 閾値判定部、
130 特徴量抽出部、140 判定部、150 歩行時間計測部、
160 歩数カウント部、161 テンポラリカウンター、
163 最終出力カウンター、210 通信部、220 処理部、230 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、
歩行開始からの継続歩行時間を計測する歩行時間計測部と、
前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部と、
乗物移動をしているか否かを判別するための特徴量を、前記センサー信号に基づいて抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量に基づいて、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行う判定部と、
を含み、
前記歩数カウント部は、
前記継続歩行時間が所与の有効歩数判定期間より短かった場合に、前記継続歩行時間において検出された歩数のカウントをリセットし、
前記歩数カウント部は、
前記判定部での判定結果に基づいて、ユーザーが乗物移動していると判定された場合に、前記有効歩数判定期間を延長することを特徴とする歩数検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記歩数検出部は、
ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて前記歩行の被評価値を求め、
前記判定部は、
評価期間における前記被評価値のうちの歩行と判定された被評価値が、所与の閾値よりも大きい場合には、ユーザーが乗物移動していないと判定することを特徴とする歩数検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記特徴量抽出部は、
加速度パワーベクトルの2回積分信号値のゼロクロス回数を前記特徴量として抽出し、
前記判定部は、
前記評価期間における前記被評価値のうちの歩行と判定された被評価値が、所与の閾値よりも小さいと判定された場合には、前記歩数検出部で検出された歩数と、前記ゼロクロス回数とを比較して、比較結果に基づいてユーザーが乗物移動しているかの判定を行うことを特徴とする歩数検出装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記特徴量抽出部は、
加速度パワーベクトルの2回積分信号値のゼロクロス回数を前記特徴量として抽出し、
前記判定部は、
前記歩数検出部で検出された歩数と、前記ゼロクロス回数とを比較して、比較結果に基づいてユーザーが乗物移動しているかの判定を行うことを特徴とする歩数検出装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記歩数検出部は、
ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて前記歩行の被評価値を求め、
前記判定部は、
前記被評価値のうちの歩行と判定された被評価値と、歩行ではないと判定された被評価値との関係に基づいて、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行うことを特徴とする歩数検出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記判定部は、
評価期間における前記被評価値のうちの、歩行と判定された被評価値の和に基づいて求められる値と、歩行ではないと判定された被評価値の和に基づいて求められる値との比を求め、求められた前記比と所与の閾値の比較を行うことで、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行うことを特徴とする歩数検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記歩数カウント部は、テンポラリカウンターと、最終出力カウンターとを有し、
前記歩数カウント部は、
前記継続歩行時間が前記有効歩数判定期間よりも短い場合に、前記テンポラリカウンターにおいて前記歩数のカウント処理を行い、前記継続歩行時間が前記有効歩数判定期間を超えた場合に、前記テンポラリカウンターの値を最終出力カウンターの値に加算する処理を行うことを特徴とする歩数検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記歩数検出部は、
歩数の予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて求められた被評価値が、前記閾値よりも大きい場合に前記歩数検出を行うことを特徴とする歩数検出装置。
【請求項9】
加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、
前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部と、
を含み、
前記歩数検出部は、
歩数の予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて求められた被評価値が、前記閾値よりも大きい場合に前記歩数検出を行うことを特徴とする歩数検出装置。
【請求項10】
請求項8又は9において、
前記歩数検出部は、
前記予測検出周期と、前回の歩数検出からの前記経過時間とより出力値が決定されるルックアップテーブルを有し、前記ルックアップテーブルの前記出力値を前記閾値として設定することを特徴とする歩数検出装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかにおいて、
前記歩数検出部は、
第1〜第Nの歩数検出時刻t〜tを検出した場合に、第N+1の歩数検出処理に用いられる第Nの予測検出周期TをT=tN−1−tN−2として求めることを特徴とする歩数検出装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の歩数検出装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、
歩行開始からの継続歩行時間を計測する歩行時間計測部と、
前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部と、
乗物移動をしているか否かを判別するための特徴量を、前記センサー信号に基づいて抽出する特徴量抽出部と、
前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量に基づいて、ユーザーが乗物移動しているかの判定を行う判定部として、
コンピューターを機能させ、
前記歩数カウント部は、
前記継続歩行時間が所与の有効歩数判定期間より短かった場合に、前記継続歩行時間において検出された歩数のカウントをリセットし、
前記歩数カウント部は、
前記判定部での判定結果に基づいて、ユーザーが乗物移動していると判定された場合に、前記有効歩数判定期間を延長することを特徴とするプログラム。
【請求項14】
加速度センサーからのセンサー信号に基づいて歩数検出を行う歩数検出部と、
前記歩数検出部での前記歩数検出の結果に基づいて歩数のカウント処理を行う歩数カウント部として、
コンピューターを機能させ、
前記歩数検出部は、
歩数の予測検出周期と、前回の歩数検出からの経過時間とに基づいて閾値を設定し、ピーク値が検出されたタイミングにより特定されるタイミングでの前記センサー信号に基づいて求められた被評価値が、前記閾値よりも大きい場合に前記歩数検出を行うことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−198663(P2012−198663A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61385(P2011−61385)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】