説明

歩数計機能を備えた慣性装置及びこの慣性装置を組み込んだポータブル電気器具

【課題】 歩数計機能と歩数計機能以外の機能との衝突を低減することを目的とする。
【解決手段】 ポータブル電子器具に統合可能な慣性装置は、歩数計のユーザのウォーキング及びランニングの動作により生じた加速度に応じて少なくとも1つの生の加速度信号(SX、SY、SZ)を生成する慣性センサ(11)と、慣性センサ(11)に関連付けられ、生の加速度信号(SX、SY、SZ)に基づいて歩数計のユーザのステップ数(NT)をカウントする処理ユニット(12)とを有する。慣性センサ(11)及び処理ユニット(12)は、双方共に集積回路(13)の単一のパッケージにカプセル化され、単一のパッケージは、電子器具(1)の回路基板(9)に結合可能であり、ステップ数(NT)を外部に利用可能にする少なくとも1つの接続端子(13a)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩数計機能を備えた慣性装置に関し、この慣性装置を組み込んだポータブル電気器具に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のように、歩数計は、ユーザにより装着可能であり、結果として対象の距離を評価するために、様々な形式のウォーキング又はランニングの間のステップ数をカウントする機能を有する装置である。提供される指標は、例えば臨床目的で、所定の期間中に個人により実行される運動活動を定量化することに有用であり、スポーツの能力を評価することに有用である。また、単に個人の関心にも有用である。基本的には、歩数計は、ユーザのウォーキングによる動作を検出する動作センサと、行われたステップ数をカウントするために動作センサにより供給される信号を処理する制御ユニットと、重要な情報が表示されるディスプレイとを有する。歩数計を構成する要素は、一般的に基板上に組み立てられ、次に、この基板がケースに収容される。
【0003】
歩数計の高まる関心と、適度の大きさと、比較的控えめな製造コストとは、異なるポータブル電子装置の製造者が歩数計機能を自分の製品に統合することを促進してきた。特に、或るポータブル電子装置は、他の目的でいくつかの基本構成要素を既に有するため、歩数計の統合に非常に良く適している。例えば、携帯電話及びパームトップは、多数の制御機能を実行するマイクロプロセッサを常に備えている。更に、ますます頻繁に、その装置も慣性センサを有する。慣性センサは、とりわけ、外力性のイベント(衝撃及び落下等)を検出して記録する目的で使用可能であり、また、装置がおそらく未使用であり、低消費電力待機状態又はスタンバイモードに設定され得る長期の休止状態を検出する目的で使用可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、歩数計の統合はいくつかの問題を提示する。実際に、ステップをカウントするために使用される手順は徐々に高度になっており、長期間に継続的に実行されなければならないため、更なる処理機能を必要とする。例えば、動作センサから生じる信号は、ウォーキングに関係のないイベントがステップのカウントを誤ることを回避するように、フィルタリングされ、更なる処理を受けなければならない。他方、マイクロプロセッサは、歩数計の制御ユニットとして機能することに加えて、ポータブル装置に想定された多数の機能を実行しなければならない。従って、特にマイクロプロセッサが他の理由(例えば、デジタルフィルムの再生)で集中的に利用されるときに、衝突が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、前述の制約を克服することを可能にする歩数計機能を備えた慣性装置と、ポータブル電子器具とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、それぞれ請求項1及び16に記載の、歩数計機能を備えた慣性装置と、この慣性装置を組み込んだポータブル電気器具とが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施例によれば、歩数計機能と歩数計機能以外の機能との衝突を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の更なる理解のため、単なる非限定的な例として、添付図面を参照していくつかの実施例について説明する。
【0009】
図1及び2を参照すると、ポータブル電子器具(ここでは携帯電話1)は、マイクロプロセッサ2と、揮発性及び不揮発性メモリバンク3と、受信/送信回路5と、既知の方法で光学素子(図示せず)に結合された画像センサ6と、ディスプレイ8とを有する。前記の構成要素は、回路基板9に実装され(必ずしも回路基板の同一の面に実装される必要はない)、携帯電話の従来の機能を提供するために既知の方法で相互に接続される。縦軸Lを有する回路基板9は、携帯電話1のケース4に収容される。
【0010】
更に、携帯電話1は慣性装置10を組み込み、慣性装置10はまた、マイクロプロセッサ2に接続され、マイクロプロセッサ2により選択的に活性化可能である。活性化のときに、慣性装置10は、(以下に詳細に説明するように)マイクロプロセッサ2自体により直接使用可能な数値フォーマットで、第1の数値加速度信号AXと第2の数値加速度信号AYと第3の数値加速度信号AZとをマイクロプロセッサ2に供給する。更に、慣性装置10は、歩数計として自律的に動作するように構成されており、ユーザのステップ総数NTをカウントし、同様に同じ数値フォーマットでこれをマイクロプロセッサ2に供給する。慣性装置10は、ユーザの歩行に関する他のデータ(例えば、推定速度、対象の合計距離、推定エネルギー消費等)も内部で生成し、マイクロプロセッサ2に供給できることが好ましい。
【0011】
慣性装置10は、慣性センサ11と、処理ユニット12とを有し、図3及び4に示すように、双方は集積回路の単一のパッケージ13にカプセル化される。パッケージ13は、BGA(Ball Grid Array)又はLGA(Land Grid Array)の形式であることが好ましく、ここではバンパ(bumper)を用いて回路基板9に半田付けされる。バンパは、慣性装置10を携帯電話1の他の構成要素(特にマイクロプロセッサ2)に結合する接続端子13aとして機能する。
【0012】
慣性センサ11は、容量性マイクロマシン(又はMEMS:Micro-Electro-Mechanical System)の形式であることが好ましく、第1の検出軸Xと第2の検出軸Yと第3の検出軸Zとを有する。これらの検出軸は相互に直角であり独立している。慣性センサ11が基板2に実装されると、第1の検出軸Xは基板9の縦軸Lに並行になり、第2の検出軸Yは基板9の面に並行になると共に第1の検出軸Xに垂直になり、第3の検出軸Zは他の2つの軸に垂直になる。慣性センサ11は、固定部分に弾力的に拘束される可動部を有するマイクロマシン構造を有する。ここで説明する実施例では、特に、センサ11は、固定本体14bに関して第1軸X及び第2軸Yに沿って移動可能な可動部を有するくし状の電極を備えた2軸線形加速度計(図5a)と、第3の検出軸Zに沿って加速度を検出するために固定本体14dに関して振動するヒンジビーム(hinged beam)14cを備えた単一軸加速時計(図5b参照)とを有する。このように、有利には、慣性センサ11は、単一の第1の半導体チップ16aに提供され得る(図6参照)。
【0013】
図6に関して、慣性センサ11の可動部及び固定部は、それぞれ第1、第2及び第3の検出軸X、Y、Zに沿って慣性センサ11で動作する力及び加速度に応じて可変の静電容量を有する第1の対のコンデンサ11aと、第2の対のコンデンサ11bと、第3の対のコンデンサ11cとを定める。更に、第1、第2及び第3の対のコンデンサ11a、11b、11cの静電容量の変化は異なる形式でもよい。
【0014】
慣性センサ11は、第1、第2及び第3の対のコンデンサ11a、11b、11cの静電容量の変化によりそれぞれ決定され、従って、第1、第2及び第3の検出軸X、Y、Zに沿ってそれぞれ検出された加速度に関連する第1の生の加速度信号SXと、第2の生の加速度信号SYと、第3の生の加速度信号SZとを制御ユニットに供給する。ここで説明する実施例では、第1、第2及び第3の生の加速度信号SX、SY、SZは電荷パケットの形式であり、第1、第2及び第3の対のコンデンサ11a、11b、11cから処理ユニット12の各入力に独立して伝達される。
【0015】
処理ユニット12は、明らかにマイクロプロセッサ2から分離した単一の第2の半導体チップ16bに提供され、以下に説明するように、前に処理された第1、第2及び第3の生の加速度信号SX、SY、SZに基づいてステップのカウント手順を実行するように構成される。
【0016】
詳細には(図6)、処理ユニット12は、マルチプレクサ17と、電荷積分器18と、アナログ・デジタル(A/D)変換器20と、デマルチプレクサ21と、選択回路22と、検出回路23と、第1のバッファレジスタ24a及び第2のバッファレジスタ24bと、通信インタフェース25とを有する。ここで説明する本発明の実施例では、処理ユニット12により実行される全ての機能が完全にハードウェアで(すなわち、それぞれ専用のアナログ又はデジタル回路を用いて)提供される。
【0017】
慣性センサ11の読み取りインタフェースとして機能する電荷積分器18は電荷・電圧変換器であり、完全な差動演算増幅器(fully differential operational amplifier)を有する。その入力は、マルチプレクサ17を通じて第1、第2及び第3の対のコンデンサ11a、11b、11cに周期的に接続される。その結果、第1、第2及び第3の生の加速度信号SX、SY、SZをアナログ形式の第1の電圧VX、第2の電圧VY及び第3の電圧VZに周期的に変換するために、時分割で電荷積分器18が使用される。
【0018】
電荷増幅器18の出力は、第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZをそれぞれ生成するために、第1、第2及び第3の電圧VX、VY、VZをサンプリングするA/D変換器20に接続される。A/D変換器20の連続出力はデマルチプレクサ21に接続され、デマルチプレクサ21は、3つの独立のラインで第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZを選択回路22に並列に供給する。第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZは、マイクロプロセッサ2に利用可能になるように、第1のバッファレジスタ24aにロードされる。
【0019】
選択回路22及び検出回路23は、ユーザのステップとして識別可能なイベントを検出し、ステップの総数NTを更新するために、以下に説明するように第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZを処理する。検出回路23の出力は第2のバッファレジスタ24bに接続され、ここでステップNTの総数が一時的に格納され、通信インタフェース25及びパッケージ13の接続端子13aを通じてマイクロプロセッサ2に送信されるように外部に利用可能になる。
【0020】
図7に示すように、選択回路22は、デマルチプレクサ21から第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZを受信し、有効加速度信号AUを生成する。有効加速度信号AUは、第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZの中からの1つのa.c.成分に実質的に対応し、正確には絶対値で最大のd.c.成分を有するものである。詳細には、選択回路22は、第1の処理ライン30aと、第2の処理ライン30bと、第3の処理ライン30cと、第1の論理回路31と、マルチプレクサ32とを有する。第1、第2及び第3の処理ライン30a、30b、30cは、各低域通過フィルタ33と、各減算ノード35とをそれぞれ有する。より正確には、第1、第2及び第3の処理ライン30a、30b、30cの低域通過フィルタ33は、その入力で第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZをそれぞれ受信し、各減算ノード35の負の入力に接続された出力を有し、更に、第1の論理回路31の各入力に接続された出力を有する。低域通過フィルタ33は、第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZのそれぞれd.c.成分AXO、AYO、AZOを実質的に抽出するように構成される。更に、第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZは、第1、第2及び第3の処理ライン30a、30b、30cのそれぞれの減算ノード35の正の入力に直接供給される。従って、減算ノード35の出力には、第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZのそれぞれのa.c.成分AXH、AYH、AZHが存在する(AXH=AX-AXO、AYH=AY-AYO、AZH=AZ-AZO)。更に、減算ノード35の出力は、マルチプレクサ32の各データ入力に接続され、マルチプレクサ32は、第1の制御信号C1を受信するために第1の論理回路31の出力に接続された更なる選択入力を有する。マルチプレクサ32の出力は、有効加速度信号AUを供給する。
【0021】
第1の論理回路31は、第1の制御信号C1を用いてマルチプレクサ32を制御し、これにより、マルチプレクサ32の出力での有効加速度信号AUは、絶対値でd.c.の最大成分AXO、AYO、AZOを有する第1、第2及び第3の数値加速度信号AX、AY、AZの中のその信号のa.c.成分AXH、AYH、AZHに対応する。このように、実際には、垂直線に最も近い検出軸に対応する加速度信号が常に使用されるため、ユーザのウォーキングにより生じる加速度に最も敏感になる(実際には、一般の慣性センサの検出軸に関連する加速度信号のd.c.成分は、基本的にはその軸に沿った重力の加速度の寄与により決定される)。実際には、マルチプレクサ17、電荷積分器18、A/D変換器20、デマルチプレクサ21及び選択回路22は、第1、第2及び第3の生の加速度信号SX、SY、SZを発端とする有効加速度信号AUを抽出する変換チェーン(conversion chain)を形成する。
【0022】
詳細には、第1の論理回路31は、図8に示す手順を実行する。まず、絶対値で最大のd.c.成分を有する数値加速度信号AX、AY、AZが選択される。このため、第1の数値加速度信号AXのd.c.成分AXOの絶対値が、第2の数値加速度信号AYのd.c.成分AYOの絶対値と比較される(ブロック1000、テスト:“|AXO|>|AYO|?”)。このように、絶対値で最大のd.c.成分AXO、AYOが、第3の数値加速度信号AZのd.c.成分AZOの絶対値と比較される(ブロック1000からの出力YES且つブロック1100、|AXO|>|AYO|の場合にテスト:“|AXO|>|AZO|?”;ブロック1000からの出力NO且つブロック1200、|AXO|<|AYO|の場合にテスト:“|AYO|>|AZO|?”)。
【0023】
第1の数値加速度信号AXのd.c.成分AXOが絶対値で最大であるか、第2の数値加速度信号AYのd.c.成分AYOが絶対値で最大であるか、第3の数値加速度信号AZのd.c.成分AZOが絶対値で最大であるかに従って、第1の値V1(ブロック1300)、第2の値V2(ブロック1400)又は第3の値V3がそれぞれ制御信号C1に割り当てられる(ブロック1500)。第1の場合(C1=V1)、マルチプレクサ32は、その出力を第1の処理ライン30aの減算ノード35に接続するように制御される。この結果、有効加速度信号AUは第1の数値加速度信号AXのa.c.成分AXHに等しくなる(AU=AXH)。第2の場合(C1=V2)、マルチプレクサ32は、その出力を第2の処理ライン30bの減算ノード35に接続するように制御される。この結果、有効加速度信号AUは第2の数値加速度信号AYのa.c.成分AYHに等しくなる(AU=AYH)。第3の場合(C1=V3)、マルチプレクサ32は、その出力を第3の処理ライン30cの減算ノード35に接続するように制御される。この結果、有効加速度信号AUは第3の数値加速度信号AZのa.c.成分AZHに等しくなる(AU=AZH)。
【0024】
図9を参照すると、検出回路23は、ユーザのステップに関連するパターンに対応する波形を特定するために、有効加速度信号AUを使用し、ステップが検出されると常に、ステップの総数NTをインクリメントする。
【0025】
詳細には、検出回路23は、閾値更新回路37と、比較器38と、有効ゲート(enabling gate)40と、マスキング回路41と、出力カウンタレジスタ42とを有する。比較器38は、非反転入力で有効加速度信号AUを受信し、反転入力で閾値THを受信する。閾値THは、その入力に供給される有効加速度信号AUに基づいて閾値更新回路37により生成される。比較器38の出力は、有効ゲート40(ここではAND形式の論理ゲート)の入力に接続され、有効加速度信号AUが閾値THより大きいときに第1の値を有し、そうでない場合に第2の値を有する論理形式の閾値超過信号SOTHを供給する。有効ゲート40は、マスキング回路41の出力に接続された更なる入力と、出力カウンタレジスタ42のカウント入力及びマスキング回路41の入力に接続された出力とを有する。ステップ検出信号DETは有効ゲート40の出力に存在する。出力カウンタレジスタ42は、ステップの総数NTを有し、その出力は検出回路23の出力を形成する。以下に説明するように、マスキング回路41は、ステップ検出信号DETに基づいて第2の信号C2を生成する。第2の制御信号C2は有効ゲート40に供給され、有効ゲート40の出力での閾値超過信号SOTHの伝達を有効にする有効値と、無効ゲート40をブロックする無効値とを有する。
【0026】
検出回路23は以下に説明するように動作する。通常では、有効加速度信号AUは閾値THより小さく、ユーザがウォーキング又はランニングしているときに足を地面に降ろした時点で閾値を超過する。基本的には、有効加速度信号AUが閾値THを超過したときに、ユーザのステップが検出される。このことが生じると、閾値超過信号SOTHが切り替わり、その値が有効ゲート40の出力に伝達される(通常では第2の制御信号C2は有効値を有する)。また、ステップ検出信号DETは、検出値に切り替わるように有効になり、出力カウンタレジスタの内容(すなわち、ステップの総数NT)をインクリメントする。しかし、ステップ検出信号DETが検出値に切り替わるとすぐに、マスキング回路41は、第2の制御信号C2を無効値に送出し、所定の期間のマスキング間隔の間に有効ゲート40をブロックする。実際には、有効ゲート40及びマスキング回路41は、有効加速度信号AUが閾値THより小さいときに、出力カウンタレジスタ42に含まれるステップの総数NTの更新を選択的に有効にし、有効加速度信号AUによる閾値THの超過に続いて、マスキング間隔の期間に一時的にこれを無効にする。マスキング間隔では、誤ったカウントを回避するために、更なるステップの検出は抑制される。
【0027】
図10は、閾値更新回路37を詳細に示している。閾値更新回路37は、包絡線検出器(envelope detector)45と閾値計算段46とを有する。
【0028】
説明する実施例では、包絡線検出器45は、包絡線レジスタ47と、包絡線比較器48と、第1の選択回路49と、第1の乗算回路50とを有する。包絡線レジスタ47は、クロック信号CKにより既知の方法でタイミング動作し、クロック信号CKの各周期で、有効加速度信号AUの(数値)現在包絡線値(current envelope value)ENVをその出力に供給する。包絡線比較器48は、その入力で有効加速度信号AUと現在包絡線値ENVとを受信し、論理形式の第3の制御信号C3を生成する。第3の制御信号C3は、第1の選択回路49の制御入力に供給される。各データ入力で、第1の選択回路48は有効加速度信号AUと第1の乗算回路50により生成された減衰包絡線値ENV’とを受信する。実際には、第1の乗算回路50は、包絡線レジスタ47から現在包絡線値ENVを受信し、これを減衰係数(1未満)で乗算する。第1の選択回路50の出力は、更新包絡線値ENV’’を供給する。更新包絡線値ENV’’は、クロック信号Cの次の周期で包絡線レジスタ47に格納される。第1の選択回路48は、有効加速度信号AUが現在包絡線値ENVより大きい場合に更新包絡線値ENV’’が有効加速度信号AUに等しくなるように、そうでない場合に減衰包絡線値ENV’に等しくなるように、包絡線比較器48により制御される。
【0029】
閾値計算段46は、包絡線レジスタ47から現在包絡線値ENVを受信して現在包絡線値ENV自体の一部に等しい閾値THを供給する第2の乗算回路52と、最小閾値THMINが格納される最小閾値レジスタ53と、第2の乗算回路52の出力及び最小閾値レジスタ53の出力に接続されたデータ入力を有する第2の選択回路55と、第2の乗算回路52の出力及び最小閾値レジスタ53の出力に接続された入力を有し、第2の選択回路55の制御入力に接続された出力を有する閾値比較器56とを有する。実際には、閾値比較器56は、その出力の閾値が閾値THと最小閾値THMINとの間より高くなるように、第2の選択回路55を制御する。従って、閾値THは、有効加速度信号AUの包絡線に基づいて適合されるが、最小閾値THMINより下にはならない。
【0030】
図11に、マスキング回路41の詳細図が図示されている。本発明の実施例では、マスキング回路41は、マスキングカウンタレジスタ58と、マスキング比較器60と、第3の選択回路61と、加算ノード62とを有する。マスキングカウンタレジスタ58のリセット入力は、ステップ検出信号DETを受信するために有効ゲート40の出力に接続される。その代わりに、タイミング入力はクロック信号CKを受信する。マスキングカウンタレジスタ58の出力は、マスキング比較器60の入力と加算ノード62の入力とに接続される。マスキング比較器60は、更なる入力で、故意に提供されるプログラム可能データレジスタ63から複数のマスキング周期NM(例えば3)を受信し、その出力で第2の制御信号C2を供給する。特に、第2の制御信号C2は、マスキングカウンタレジスタ58の内容がマスキング周期数NM以上である場合に有効値を有し、そうでない場合に無効値を有する。マスキング比較器60の出力は、有効ゲート40の入力と第3の選択回路61の制御入力とに更に接続される。次に、第3の選択回路61は、値“1”及び値“0”が格納される各データレジスタ65、66に接続されたデータ入力と、加算ノード62に接続された出力とを有する。第3の選択回路61は、第2の制御信号C2がそれぞれ有効値及び無効値を有するときに値“0”及び値“1”を加算ノード62に供給するように、第2の制御信号C2でマスキング比較器60により制御される。
【0031】
実際には、ステップ検出信号DETが検出値に切り替わると、マスキングカウンタレジスタ58はリセットされ、第2の制御信号C2は、更なるステップの検出及びカウントを回避する無効値を仮定する。マスキングカウンタレジスタ58は、加算ノード62と共にカウントループに挿入され、第2の制御信号C2が無効値を維持するまで、クロック信号CKによる周期毎にインクリメントされる(加算ノードは第3の選択回路61から値“1”を受信し、マスキングカウンタレジスタ58の出力の値にこれを加算する)。マスキングカウンタレジスタ58の内容がマスキング周期数NMに到達すると、第2の制御信号C2は無効値に戻り、ステップの検出が再び有効になる。更に、第3の選択回路61は、加算ノード62に値“0”を供給するように制御され、これにより、マスキングカウンタレジスタ58の内容が更にインクリメントされずに一定のままになる。従って、ユーザのステップが検出されると常にマスキング回路41が起動され、クロック信号のNM周期に等しい期間に更なるステップの検出を抑制する。
【0032】
図12に示す本発明の異なる実施例によれば(既に図示した部分が同じ参照番号で示されている)、歩数計100で、慣性センサ11及び処理ユニット12が、同じパッケージ13にカプセル化されることに加えて、単一の半導体チップ101に提供される。
【0033】
本発明による慣性装置は、ポータブル電子装置自体に利用可能な計算リソースを占有することなく、一般的なポータブル電子器具(携帯電話又はパームトップ等)に直ちに統合可能であるという利点を有する。特に、カウントされるステップ数が歩数計により直接検出され得るため、マイクロプロセッサ(又はポータブル電子器具の他の独立の制御ユニット)は如何なる種類の補助処理を受ける必要がない。従って、ポータブル電子器具に関連する機能の実行を遅くすることと、潜在的な衝突及び必要な制御機能の一時的な中断の理由でステップのカウントを誤ることとが回避される。
【0034】
最後に、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を逸脱することなく、ここで説明した慣性装置及びポータブル電子器具に変更及び変形が行われてもよいことが明らかである。特に、歩数計は、記載したものに加えて更なる機能を統合し、少なくとも部分的に異なる方法でステップのカウントを実行してもよい。更に、様々な制御機能(検出、カウント、閾値適応、マスキング等)を実装した回路が記載したものと異なる構造を有してもよく、等価な代替の方式で構成されてもよいことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施例に従って提供される歩数計機能を備えた慣性装置を組み込んだポータブル電子器具の簡単且つ部分的な正面図
【図2】図1のポータブル電子器具のブロック図
【図3】図1の慣性装置の拡大正面図
【図4】図1の慣性装置の拡大右側面図
【図5a】図4の線Va-Vaに沿って更に拡大されて区分された図1の慣性装置の一部の正面図
【図5b】図5aの線Vb-Vbに沿った図1の慣性装置の断面図
【図6】図1の慣性装置の簡略化ブロック図
【図7】図1の慣性装置に含まれる第1の回路の詳細ブロック図
【図8】図7の第1の回路により実行される手順に関するフローチャート
【図9】図1の慣性装置に含まれる第2の回路の詳細ブロック図
【図10】図9の第2の回路の第1の部分の詳細ブロック図
【図11】図9の第2の回路の第2の部分の詳細ブロック図
【図12】本発明の第2の実施例に従って構築された慣性装置の簡略化ブロック図
【符号の説明】
【0036】
1 携帯電話
2 マイクロプロセッサ
3 不揮発性メモリバンク
5 受信/送信回路
6 画像センサ
8 ディスプレイ
9 回路基板
10 慣性装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性装置のユーザのウォーキング及びランニングの動作により生じた加速度に応じて少なくとも1つの生の加速度信号を生成する慣性センサと、
前記慣性センサに関連付けられ、前記生の加速度信号に基づいて歩数計のユーザのステップ数をカウントする処理ユニットと
を有する慣性装置であって、
前記慣性センサ及び前記処理ユニットは、双方共に集積回路の単一のパッケージにカプセル化され、
前記単一のパッケージは、電子器具の回路基板に結合可能であり、前記ステップ数を外部に利用可能にする少なくとも1つの接続端子を有することを特徴とする慣性装置。
【請求項2】
前記処理ユニットは、前記生の加速度信号から有効加速度信号を抽出する変換チェーンを有する請求項1に記載の慣性装置。
【請求項3】
前記処理ユニットは、前記変換チェーンに関連付けられ、前記有効加速度信号に基づいてユーザのステップを検出し、前記ステップ数を更新する検出回路を有する請求項2に記載の慣性装置。
【請求項4】
前記慣性センサは、容量性マイクロマシンの形式であり、第1、第2及び第3の検出軸に従って、それぞれユーザのウォーキングの動作により生じる加速度に応じて第1、第2及び第3の生の加速度信号を供給する相互に独立した第1、第2及び第3の検出軸を有する請求項3に記載の慣性装置。
【請求項5】
前記変換チェーンは、前記慣性センサに接続可能であり、前記第1、第2及び第3の生の加速度信号を、それぞれ周期的に時分割で第1、第2及び第3のアナログ加速度信号に変換する読み取りインタフェースを有する請求項4に記載の慣性装置。
【請求項6】
前記変換チェーンは、前記第1、第2及び第3のアナログ加速度信号を、それぞれ第1、第2及び第3の数値加速度信号に変換するアナログ・デジタル変換器を有する請求項5に記載の慣性装置。
【請求項7】
前記変換チェーンは、前記第1、第2及び第3の数値加速度信号を受信し、前記第1、第2及び第3の数値加速度信号のd.c.成分及びa.c.成分に基づいて前記有効加速度信号を生成するように構成された選択回路を有する請求項6に記載の慣性装置。
【請求項8】
前記有効加速度信号は、前記第1、第2及び第3の数値加速度信号の中から、選択的に絶対値で最大のd.c.成分を有する1つのa.c.成分に実質的に対応する請求項7に記載の慣性装置。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3の数値加速度信号を外部に利用可能にするように構成された請求項5ないし8のうちいずれか1項に記載の慣性装置。
【請求項10】
前記検出回路は、
前記ステップ数を格納するカウンタレジスタと、
前記有効加速度信号と閾値とを比較するように構成され、前記カウンタレジスタに接続されて、前記有効加速度信号が前記閾値を超過することに応じて前記ステップ数をインクリメントするように構成された第1の比較器と、
前記有効加速度信号が前記閾値より小さいときに前記ステップ数のインクリメントを有効にし、前記有効加速度信号が前記閾値を超過した後の所定の期間に前記ステップ数のインクリメントを無効にする選択有効回路と
を有する請求項3ないし9のうちいずれか1項に記載の慣性装置。
【請求項11】
前記期間はプログラム可能である請求項10に記載の慣性装置。
【請求項12】
前記選択有効回路は、
前記カウンタレジスタに接続された出力を有する有効論理ゲートと、
前記有効論理ゲートの前記出力の切り替えに応じて、前記期間に前記有効論理ゲートをブロックするマスキング回路と
を有する請求項10又は11に記載の慣性装置。
【請求項13】
前記検出回路は、前記有効加速度信号に基づいて前記閾値を生成する閾値更新回路を有する請求項10ないし12のうちいずれか1項に記載の慣性装置。
【請求項14】
前記閾値更新回路は、
前記有効加速度信号の包絡線値を供給する包絡線検出器と、
前記包絡線検出器に結合され、前記包絡線値に基づいて前記閾値を生成する閾値計算段と
を有する請求項13に記載の慣性装置。
【請求項15】
前記変換チェーン及び前記検出回路は、それぞれ専用の電子回路で構成される請求項3ないし14のうちいずれか1項に記載の慣性装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のうちいずれか1項に記載の慣性装置を有するポータブル電子器具。
【請求項17】
前記歩数計の前記処理ユニットから分離しており、前記ステップ数を受信するために前記接続端子を通じて前記慣性装置に結合された制御ユニットを有する請求項16に記載の電子器具。
【請求項18】
前記歩数計の前記慣性センサから分離した更なる慣性センサを有する請求項16又は17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−226779(P2007−226779A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−17827(P2007−17827)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(505424561)エスティマイクロエレクトロニクス ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (5)
【Fターム(参考)】