説明

歩数計装置

【課題】加速度センサによって測定された加速度の解析によって、歩行に起因しない、歩行による振動の周波数帯の振動が検出される場合、歩数の計測誤差を補正する。
【解決手段】歩数計測部は、加速度センサによって測定された加速度をフーリェ変換してスペクトルを計算し(ステップS21b)、バイブレータが動作中である場合(ステップS21cの「動作中」)、上記計算されたスペクトルから、装置が静止し、かつ、バイブレータが動作中に加速度センサによって測定された加速度をフーリェ変換して計算されたスペクトルを減算して(ステップS21d)、減算されたスペクトルを用いて計測された歩数をカウントアップする(ステップS21f)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などのモバイル機器に内蔵される歩数計装置に係り、特に、歩数の計測誤差の補正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサによって測定された加速度を解析して、例えば、その加速度をサンプリングしてスペクトル、例えば、周波数の分布と、各周波数成分の強さに変換し、得られたスペクトルを解析して、装置を所持している人の歩数を計測する歩数計装置が知られている。また、移動通信装置に組み込まれた歩数計装置が知られている。ここで、移動通信装置は、バイブレータを内蔵し、着信報知のためなどにバイブレータを動作、即ち、振動させる。
【0003】
歩行による装置の振動の周期は長いので、歩行による振動(加速度の変化。)の検出のためには、所定時間あたりの歩数の多少、また、類似した振動から歩行による振動の識別などへ対応するにしても、測定された加速度を低いサンプリング周波数(数十Hz程度。)でサンプリングすれば良い。ここで、よく知られているように、振動を復元するには、その振動周波数の2倍以上のサンプリング周波数でサンプリングする必要があり、多くの場合、最高周波数の2倍のサンプリング周波数でサンプリングする。
【0004】
一方、バイブレータの振動周波数は、100〜200Hz程度である。そこで、バイブレータが動作中に上記低いサンプリング周波数で加速度をサンプリングすると、エイリアスが発生する結果、歩数の計測誤差が生じる可能性がある。
【0005】
エイリアスの発生を防止するには、バイブレータによる振動を復元できる高いサンプリング周波数(数百Hz程度。)で、測定された加速度をサンプリングすれば良い。しかし、常に高いサンプリング周波数でサンプリングすると、歩数計測に使われる消費電力の増大が避けられない。歩数計装置は、当然に電池に蓄えられた電力量によって動作する携帯型の装置であるため、消費電力の増大は好ましくない。
【0006】
そこで、低いサンプリング周波数でサンプリングすることによって、少ない誤差で歩数を計測する方法が知られている。即ち、測定された加速度をサンプリング前にローパスフィルタを通過させ、バイブレータの振動によるエイリアスの発生を防止する方法、また、エイリアスが歩行による振動の周波数と一致しない振動周波数で振動するバイブレータを選択する方法、更に、複数の低いサンプリング周波数でサンプリングし、いずれのサンプリングによっても歩行による振動が検出された場合、歩数を計測する方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−153795号公報(第4、9、17、19頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている方法では、加速度センサによって測定された加速度の解析によって、歩行に起因しない、歩行による振動の周波数帯の振動が検出される場合、歩数の計測誤差を補正することができない問題点があった。
【0008】
この歩行に起因しない振動は、例えば、バイブレータの振動によって、装置の筐体が共鳴することによって発生する。バイブレータの振動の周波数は、理想的な1つの周波数ではないため、また、装置の筐体などは、装置の小型化などの制約の結果、必ずしも共鳴を防ぐ構造とすることを優先できないため、この共鳴は、完全に避けることが困難である。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、加速度センサによって測定された加速度の解析によって、歩行に起因しない、歩行による振動の周波数帯の振動が検出される場合、歩数の計測誤差を補正する歩数計装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の歩数計装置は、加速度を測定する加速度センサと、歩数を計測する歩数計測手段と、自装置が静止している際に前記加速度センサによって測定される加速度を記憶する加速度記憶手段とを有し、前記歩数計測手段は、前記加速度センサによって測定された加速度から前記加速度記憶手段に記憶された加速度を減算した加速度を解析して歩数を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加速度センサによって測定された加速度の解析によって、歩行に起因しない、歩行による振動の周波数帯の振動が検出される場合、歩数の計測誤差を補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明による歩数計装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係わる歩数計装置が実装された携帯電話機や携帯電話網との通信機能を備えたPDA、小型PCなどの移動通信装置の構成を示すブロック図である。この移動通信装置は、制御部11と、携帯電話網の基地局(図示せず)との間で無線信号の送受信を行うアンテナ12aと、通信部12bと、送受信部13と、スピーカ14aと、マイクロフォン14bと、通話部14cと、表示部15と、入力部16と、メモリ21aを含む歩数計測部21及び加速度センサ22及びバイブレータ振動記憶部23からなる歩数計装置と、バイブレータ24と、音楽再生部25と、音楽コンテンツ記憶部26とを備える。
【0013】
ここで、上記のように構成された、本発明の実施形態に係る移動通信装置の各部の機能について説明する。
【0014】
制御部11は、移動通信装置全体を制御し、例えば、予め入力部16が操作されて着信時にバイブレータ24を振動させる設定がなされている場合、着信信号が受信されると、バイブレータ24を所定の間欠周期、例えば、動作時間T1と静止時間T2を繰り返して動作させて、着信を報知する。
【0015】
通信部12bは、アンテナ12aを介して受信した高周波信号を送受信部13へ出力し、また、送受信部13から出力される高周波信号をアンテナ12aを介して送信する。
【0016】
送受信部13は、通信部12bからの高周波信号を増幅、周波数変換及び復調して得られた信号がデジタル音声信号である場合は通話部14cへ、また、着信信号を含む制御信号である場合は制御部11へ、それぞれ送る。一方、通話部14cから出力されるデジタル音声信号、及び制御部11から出力される制御信号を変調、周波数変換及び増幅することで得た高周波信号を通信部12bに送る。
【0017】
通話部14cは、送受信部13から出力されるデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し、このアナログ信号を増幅してスピーカ14aに送る。また、マイクロフォン14bから出力されるアナログ音声信号を増幅した後にデジタル音声信号に変換して送受信部13に送信する。
【0018】
表示部15は、例えば、LCDや有機ELが用いられ、入力部16が操作されることで入力された文字、数字など、またメールの受信、着呼を示すメッセージ、また電波状態などのインディケータなどを表示する。
【0019】
なお、表示部15がLCDで構成される場合はバックライトを備えており、このバックライトは、所定の時間に渡って、入力部16からの入力、メール着信、または着呼がない場合、制御部11によって消灯または輝度を下げて点灯される。
【0020】
入力部16は、数字や文字を入力するための複数の数字キー、複数の機能キー、電源キーなどで構成される。
【0021】
歩数計測部21は、加速度センサ22によって測定された加速度を所定のサンプリング周波数でサンプリングし、加速度変化の周波数分布と、周波数成分毎の強さとを示すスペクトルを計算する。そして、計算したスペクトルが歩行によるスペクトルであると判定される度に、歩数計測部21内のメモリ21aに記憶された歩数をカウントアップする。
【0022】
ここで、サンプリング周波数は、歩行による加速度変化を検出するための低い周波数(数十Hz程度。以後、単に低い周波数、また、低いサンプリング周波数と称する。)であるが、サンプリング周波数を、バイブレータ24の振動による加速度変化を検出するために高い周波数(数百Hz程度。以後、単に高い周波数、また、高いサンプリング周波数と称する。)に設定することもある。
【0023】
そして、歩数計測部21は、入力部16の所定のキー操作に基づく制御部11からの指示により、歩数計測部21内のメモリ21aに記憶された歩数を表示部15に表示し、また、その記憶された歩数を0にリセットする。
【0024】
加速度センサ22は、互いに直交する3軸方向の軸方向加速度を測定する。そして、3つの軸方向加速度のそれぞれを二乗して加算し、この加算結果の平方根を求めることによって加速度を計算し、計算された加速度を歩数計測部21に送る。
【0025】
なお、上記説明では、歩数計測部21は、加速度センサ22によって計算された加速度に基づいて歩数を計測するとした。なぜなら、移動通信装置は、小型であって、装置の所持者が歩数を計測させる際、例えば、その所持者のポケットに入れられ、容易に方向が変化するため、測定された軸方向加速度が装置のどの方向に向かったものかは、正確に歩数を計測する上で、意味が乏しいからである。
【0026】
しかしながら、これに限るものではなく、歩数計測部21は、加速度センサ22によって測定された3軸方向の軸方向加速度を受け取り、これらの3つの軸方向加速度をそれぞれを解析して歩数を計測しても良い。
【0027】
バイブレータ振動記憶部23は、装置が静止状態でバイブレータ24を動作させたときに、加速度センサ22によって測定された加速度に基づいて歩数計測部21によって計算されたスペクトルであるバイブレータ振動情報を記憶する。なお、この計算の際、サンプリング周波数は、低い周波数である。
【0028】
なお、バイブレータ振動記憶部23に記憶されるバイブレータ振動情報は、装置が静止状態にある際に計算されたものであるが、更に、歩数計測部21が歩数を計測する動作をする際に装置が置かれる状態、例えば、装置が所持者のポケットに入れられた状態、また、装置がかばんに入れられた状態で計算されたスペクトルであることが望ましい。歩数計測部21が歩数を計測する際の装置の筐体の共鳴と類似した共鳴が発生する状態で計算されたスペクトルが望ましいからである。
【0029】
ここで、上記バイブレータ振動情報は、低いサンプリング周波数が用いられて計算されたものであるから、バイブレータ24の振動周波数帯の周波数は含まず、バイブレータ24の振動によって、装置の筐体が共鳴することによって発生した振動を示している。また、バイブレータ24の振動周波数のエイリアスを含んでいる。ここで、エイリアスとは、サンプリング周波数を超える周波数の加速度をサンプリングすることによって発生する、実在しないスペクトルである。
【0030】
なお、上記バイブレータ振動情報は、装置の出荷時に記憶されているとしても良く、また、入力部16の所定のキー操作に基づいて、新規に記憶され、又は、更新記憶されるとしても良い。この入力部16の所定のキー操作に基づいて記憶されることによれば、装置の所持者に依存した、例えば、所持者が装置を入れるポケットの位置や、そのポケットの布の属性に依存した加速度から計算されたスペクトルが記憶され、より正確な歩数の計測が可能となる。
【0031】
バイブレータ24は、モータの回転軸に偏芯した重りを固定した部品であって、モータの回転によって振動する。また、バイブレータ24は、可動子を磁力によって所定の周期で往復運動をさせることによって振動する。
【0032】
音楽再生部25は、音楽コンテンツ記憶部26に記憶された音楽コンテンツに含まれる符号化オーディオ信号を復号し、得られたオーディオ信号をスピーカ14aから発生させる。
【0033】
また、音楽再生部25は、音楽コンテンツ記憶部26に記憶された音楽コンテンツ中のバイブレータ24を動作させる制御信号に応じて、制御部11に要求して、バイブレータ24を動作させる。
【0034】
音楽コンテンツ記憶部26に記憶される音楽コンテンツは、音声信号が符号化された信号と、バイブレータ24を動作させる制御信号とからなる。ここで、この制御信号は、音声の発生と同期をとってバイブレータ24を動作させるために、音声発生の時刻を制御するための時刻情報と同じ構成の時刻情報を備える。
【0035】
図2は、バイブレータ振動記憶部23に記憶されるバイブレータ振動情報の一例を示している。このバイブレータ振動情報は、バイブレータ24が振動の際、加速度センサ22によって測定された加速度のスペクトルである周波数23aと、強さ23bとが関連付けられた情報からなり、1組の関連付けられた情報が1つのスペクトル、即ち、周波数成分と、その周波数成分の強さである。この例では、周波数がf1Hzであり、強さがP1であるスペクトルと、周波数がf2であり、強さがP2であるスペクトルとが測定され、記憶されている。
【0036】
なお、バイブレータ振動情報は、加速度センサ22によって測定された加速度を、歩行による加速度変化を検出するための低いサンプリング周波数でサンプリングして計算されたスペクトルであり、周波数f1と、周波数f2とは、いずれも歩行の振動周波数帯の周波数である。なお、後述するように、周波数f1のスペクトルは筐体の共鳴によるスペクトルであり、周波数f2のスペクトルはバイブレータ24の振動周波数のエイリアスによるスペクトルの例を示している。
【0037】
以下、本発明の実施形態に係わる移動通信端末装置の歩数計測部21によって歩数が計測される動作を説明する。
【0038】
(歩数計測部21が歩数を計測する第1の動作)
図3は、歩数計測部21が歩数を計測する第1の動作のフローチャートを示す。なお、第1の動作とは、歩数計測部21が加速度センサ22によって測定された加速度を、低いサンプリング周波数のみでサンプリングして歩数を計測する動作である。
【0039】
まず、歩数計測部21は、入力部16の所定のキー操作によって歩数を計測する動作を開始し、歩数計測部21内のメモリ21aに記憶された歩数を0にリセットする(ステップS21a)。
【0040】
そして、歩数計測部21は、加速度センサ22によって所定の時間に渡って測定された加速度を低いサンプリング周波数でサンプリングの上、フーリェ変換して、その加速度のスペクトルを計算する(ステップS21b)。
【0041】
歩数計測部21は、バイブレータ24が動作中であるか否かを制御部11に要求して判定する(ステップS21c)。動作中である場合、ステップS21bで計算されたスペクトルからバイブレータ振動記憶部23に記憶されたバイブレータ振動情報を減算し(ステップS21d)、減算されたスペクトルが歩行のスペクトルであるか否かを判定する(ステップS21e)。一方、ステップS21cで動作していない場合、この減算をせず、ステップS21bで計算されたスペクトルが歩行のスペクトルであるか否かを判定する(ステップS21e)。
【0042】
歩行のスペクトルであると判定された場合、歩数計測部21は、計測された歩数を歩数計測部21内のメモリ21aに記憶された歩数をカウントアップし(ステップS21f)、ステップS21bの加速度スペクトルを計算する動作に移る。一方、歩行のスペクトルでないと判定された場合、歩数のカウントアップをせずに、ステップS21bの加速度スペクトルを計算する動作に移る。
【0043】
歩数計測部21は、入力部16の所定のキー操作によって終了指示があった場合、その指示に基づく制御部11からの制御に従い、歩数を計測する第1の動作を終了し、また、歩数計測部21内のメモリ21aに記憶された歩数を表示部15に表示させる(図示せず)。
【0044】
ここで、以上説明した、歩数計測部21が第1の動作中に、歩数計測部21の動作によって計算された、又は、参照されたスペクトルの一例を説明する。図4(a)は、ステップS21bで計算されたスペクトル、図4(b)は、図2に例示したバイブレータ振動記憶部23に記憶されたバイブレータ振動情報、図4(c)は、ステップS21dで減算された後のスペクトルをそれぞれ示している。
【0045】
歩数計測部21は、ステップS21bで、歩行による加速度変化を検出するための低いサンプリング周波数で加速度センサ22によって測定された加速度をサンプリングするため、図4(a)に示されるように、計算されたスペクトルは、歩行の振動周波数帯である低い周波数帯に限られ、バイブレータ24の振動の周波数帯に含まれる高い周波数は含まれていない。計算されたスペクトルには、周波数f1で強さがPxであるスペクトルと、周波数f2で強さがP2であるスペクトルとが含まれている。
【0046】
図4(b)は、バイブレータ振動情報は、周波数f1で強さがP1であるスペクトルと、周波数f2で強さがP2であるスペクトルからなることを示している。そして、図4(c)は、図4(a)に示すスペクトルから図4(b)に示すスペクトルを減算した差のスペクトルを示し、周波数f1のスペクトルの強さは、PxからP1を減算することによって小さくなり、周波数f2のスペクトルの強さは、P2からP2を減算することで0になった例を示している。
【0047】
以上の説明で、歩数計測部21は、ステップS21bで所定の時間に渡る加速度のスペクトルを計算した後で、ステップS21cでバイブレータ24が動作中であるか否かを判定するとした。この処理によれば、ステップS21bのスペクトルは、バイブレータ24が間欠周期で動作している際の、動作時間T1中の加速度と、静止時間T2中の加速度とから計算されたものであることがあり、歩数の計測に誤差が増える可能性がある。
【0048】
そこで、歩数計測部21は、正確に歩数を計測するために、バイブレータ24が動作中であるか否かの判定にあたり、制御部11から動作時間T1に入りバイブレータ24が動作を開始したことと、静止時間T2に入りバイブレータ24が動作を終了したこととの通知を割り込みによって受けても良い。
【0049】
そして、ステップS21bで一度にスペクトルを計算する加速度は、動作時間T1に渡りバイブレータ24が動作中である際の加速度と、静止時間T2に渡りバイブレータ24が動作していない際の加速度とのいずれか一方であるように、測定された加速度を時刻によって分割してスペクトルを計算する。この結果、バイブレータ24の動作開始の際と、動作終了の際に、歩数計測部21は、歩数を計測する。
【0050】
この測定された加速度を時刻によって分割してスペクトルを計算する方法によれば、歩数計測部21は、バイブレータ24が動作を開始したことと、動作を終了したこととの通知を受ける処理が増えるものの、より正確に歩数を計測することができる。
【0051】
(歩数計測部21が歩数を計測する第2の動作)
歩数計測部21が歩数を計測する第2の動作は、上記説明した第1の動作と類似している。そこで、歩数計測部21が歩数を計測する第2の動作で、既に説明した第1の動作と同じ動作ステップには同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
なお、歩数計測部21が歩数を計測する第2の動作と、上記説明した第1の動作との相違点は、加速度センサ22によって測定された加速度をサンプリングする処理にある。即ち、第1の動作では、歩数計測部21は、低いサンプリング周波数でサンプリングするとしたが、この第2の動作では、低いサンプリング周波数でのサンプリングと、高いサンプリング周波数でのサンプリングを使い分けている。そこで、第2の動作では、歩数計測部21の動作は複雑になるものの、より正確に歩数を計測することができる傾向がある。
【0053】
歩数計測部21が第2の動作によって歩数を計測する際、バイブレータ振動記憶部23に記憶されるバイブレータ振動情報は、上記第1の動作で説明した場合と同様に、装置が静止している状態でバイブレータ24が動作している際に、歩数計測部21が加速度センサ22によって測定された加速度をサンプリングすることで計算されたスペクトルである。ただし、この第2の動作では、高いサンプリング周波数でサンプリングされたスペクトルである点で異なっている。
【0054】
図5は、歩数計測部21が第2の動作によって歩数を計測する際の、バイブレータ振動記憶部23に記憶されるバイブレータ振動情報の構成の一例を示している。このバイブレータ振動情報の構成は、図2を参照して説明した構成と同じであり説明を省略する。
【0055】
図5に示すバイブレータ振動情報は、周波数23aと強さ23bの組であるスペクトルとして、f1とP1、f3とP3、及び、f4とP4とが記憶されている。なお、バイブレータ24の振動周波数帯の周波数である周波数23aがf3のスペクトルと周波数23aがf4のスペクトルは、後述するように、バイブレータ振動情報として記憶されないとしても良い。
【0056】
また、図2のバイブレータ振動情報には含まれていた、周波数23aと強さ23bの組がf2とP2であるスペクトルが記憶されていないが、このスペクトルが、バイブレータ24の動作による加速度を低いサンプリング周波数でサンプリングして得たスペクトルに含まれるエイリアスだからである。一方、周波数23aがf1と強さ23bがP1の組であるスペクトルは、装置の筐体などの共鳴によって生じた加速度に基づくものであり、サンプリング周波数の高低に係わらず、計算されるためバイブレータ振動情報として記憶される。
【0057】
図6は、歩数計測部21が歩数を計測する第2の動作のフローチャートを示す。歩数計測部21は、ステップS21aの動作開始ステップの後、バイブレータ24が動作中の可能性があるか否かを制御部11に要求して判定する(ステップS21m)。ここで、バイブレータ24が動作中の可能性があるとは、以下の場合である。
【0058】
まず、制御部11によって着信信号が受信され、かつ、通話が行なわれていない場合である。なお、更に、着信報知のためにバイブレータ24を動作させる設定が制御部11内に記憶されている場合に限っても良い。また、着信報知のためにバイブレータ24を動作させる設定が制御部11内に記憶されている場合である。なお、更に、通話が行なわれていない場合に限っても良い。
【0059】
また、音楽再生部25によって、音楽コンテンツが再生されている場合である。なお、更に、再生中の音楽コンテンツがバイブレータ24を動作させることが音楽コンテンツの属性として音楽コンテンツに含まれている場合に限っても良い。また、再生中の音楽コンテンツがバイブレータ24を動作させないことが音楽コンテンツの属性として音楽コンテンツに含まれている場合、バイブレータ24が動作中の可能性がないとしても良い。更に、バイブレータ24が動作している場合である。
【0060】
ここで、ステップS21mで、バイブレータ24が動作中の可能性がないと判定された場合、歩数計測部21は、図3を参照して説明したステップS21b、ステップS21e、及びステップS21fの処理を実行し、歩数の計測を行って、ステップS21mのバイブレータ24が動作中の可能性があるか否かを判定する動作に移る。
【0061】
一方、ステップS21mで、バイブレータ24が動作中の可能性がある場合、歩数計測部21は、加速度センサ22によって所定の時間に渡って測定された加速度を高いサンプリング周波数でサンプリングして、このサンプリングの結果をフーリェ変換してスペクトルを計算する(ステップS21n)。
【0062】
次に、歩数計測部21は、バイブレータ24が動作中であるか否かを判定する(ステップS21o)。この判定は、第1の動作のステップS21cと同じ動作である。バイブレータ24が動作中である場合、歩数計測部21は、ステップS21nで計算されたスペクトルから、図5を参照して説明した、高いサンプリング周波数によるサンプリングによって計算され、バイブレータ振動記憶部23に記憶されたバイブレータ振動情報であるスペクトルを減算する(ステップS21p)。
【0063】
なお、この減算に際し、バイブレータ振動情報がバイブレータ24の振動周波数帯のスペクトルを含まない場合、歩数計測部21は、ステップS21nで計算されたスペクトルから、バイブレータ24の振動周波数帯のスペクトルである、周波数23aが所定の周波数閾値以上であるスペクトルを除く。この周波数帯のスペクトルは、歩数の計測に有効性が低い傾向があるためである。
【0064】
一方、バイブレータ24が動作していない場合、歩数計測部21は、この減算をせずに、ステップS21nで計算されたスペクトルが歩行のスペクトルであるか否かを判定する(ステップS21q)。このステップS21qの判定は、第1の動作のステップS21eの動作と同じである。
【0065】
歩行のスペクトルであると判定された場合、歩数計測部21は、計測された歩数を歩数計測部21内のメモリ21aに記憶されている歩数をカウントアップし(ステップS21r)、ステップS21mのバイブレータ24が動作中の可能性があるか否かを判定する動作に移る。ステップS21rの歩数のカウントアップの動作は、第1の動作のステップS21fの動作と同じである。
【0066】
一方、歩行のスペクトルでないと判定された場合、歩数計測部21は、歩数のカウントアップをせずに、ステップS21mのバイブレータ24が動作中の可能性があるか否かを判定する動作に移る。
【0067】
歩数計測部21は、入力部16の所定のキー操作によって終了指示があった場合、その指示に基づく制御部11からの制御に従い、歩数を計測する第2の動作を終了し、また、歩数計測部21内のメモリ21aに記憶された歩数を表示部15に表示させる(図示せず)。
【0068】
以上説明した、歩数計測部21が第2の動作中に歩数計測部21の動作によって計算された、又は、参照されたスペクトルの一例を説明する。図7(a)は、ステップS21nで計算されたスペクトル、図7(b)は、図5に例示したバイブレータ振動記憶部23に記憶されたバイブレータ振動情報、図7(c)は、ステップS21pで減算された後のスペクトルをそれぞれ示している。
【0069】
歩数計測部21は、ステップS21nで、加速度センサ22によって測定された加速度を、バイブレータ24の振動による加速度変化を検出するための高いサンプリング周波数でサンプリングするため、図7(a)は、計算されたスペクトルは、歩行の振動の周波数帯の周波数に限らず、バイブレータ24の振動の周波数帯の周波数を含むことを示している。また、エイリアスである周波数f2のスペクトルは含まないことを示している。
【0070】
図7(b)は、バイブレータ振動情報は、周波数f1、周波数f3及び周波数f4のスペクトルからなることを示す。そして、図7(c)は、図7(a)に示すスペクトルから図7(b)に示すスペクトルを減算した差のスペクトルを示し、減算の結果、周波数f1のスペクトルの強さが小さくなり、また、バイブレータ24の振動の周波数帯に含まれる周波数f3及び周波数f4のスペクトルの強さが0になったことを示す。
【0071】
この図7(c)に示すスペクトルは、第1の動作によって得られる図4(c)に示すスペクトルと同じである。しかし、歩数計測部21の第2の動作によれば、上記説明したように、第1の動作に比較して、より正確に歩数を計測することができる可能性がある。
【0072】
また、ステップS21oのバイブレータ24が動作中であるか否かの判定に誤りがあった場合、また、バイブレータ24が動作中である際の加速度と、バイブレータ24が動作していない際の加速度とを同時に変換してスペクトルを求めた場合、ステップS21nで計算されたスペクトルにはエイリアスが含まれないので、歩数計測部21の第2の動作によれば、第1の動作に比較して、より正確に歩数を計測することができる。
【0073】
以上の説明で、加速度の解析によって、歩行に起因しない、かつ、歩行による振動の周波数帯の振動が検出される要因は、バイブレータ24の振動であるとしたが、これに限るものではない。例えば、移動通信装置が正常状態であることを報知する所定の振動や、報知音に基づく振動であっても良い。また、移動通信装置の周囲の所定の振動や、周囲の雑音に基づく振動や、乗り物の振動であっても良い。
【0074】
これらの振動が、例えば、移動通信装置が正常状態であることを報知する所定の振動や、移動通信装置の周囲の所定の振動である場合、この振動は常に検出される。そこで、歩数計測部21は、例えば、第1の動作のステップS21cのバイブレータ24が動作中か否かを判定する動作を行う必要はなく、常に、ステップS21dのバイブレータ振動情報を減算する動作を行えば良い。
【0075】
以上の説明で、バイブレータ24は、着信報知のため、また、音楽コンテンツの再生に伴って動作するとしたが、これに限るものではない。例えば、バイブレータ24は、装置の所持者への適切な歩行を支援するために、歩数計測部21の指示によって動作するとしても良い。
【0076】
歩数計測部21がバイブレータ24を動作させる場合、歩数計測部21は、制御部11に要求することなく、第2の動作のステップS21mのバイブレータ24が動作中の可能性があるか否かの判定が可能である。即ち、バイブレータ24を動作させる要求を行った以降は、動作中の可能性があると判定する。
【0077】
また、歩数計測部21のみがバイブレータ24を動作させる場合、歩数計測部21は、バイブレータ24の動作を停止させた後は、動作中の可能性がないと判定する。同様に、例えば、第1の動作のステップS21cのバイブレータ24が動作中か否かの判定が可能である。
【0078】
以上の説明は、音楽再生部25は、音楽コンテンツ記憶部26に記憶された音楽コンテンツを再生するとしたが、これに限るものではない。例えば、映像コンテンツを再生し、画像を表示部15に表示させ、音声をスピーカから発生させても良い。
【0079】
以上の説明は、歩数計装置が移動通信装置に実装された例を用いて行ったが、本発明は、歩数を計測するあらゆる装置に適用が可能である。また、歩数計測部21の実装は、CPUと、そのCPUによって実行されるプログラムとによっても良く、専用のプロセッサと、専用のROMに記憶されたその専用のプロセッサによって実行されるプログラムとによっても良い。本発明は以上の構成に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係る移動通信装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るバイブレータ振動情報の構成の一例を示す図(第1の例)。
【図3】本発明の実施形態に係る歩数計測部の第1の動作のフローチャート。
【図4】本発明の実施形態に係る歩数計測部の第1の動作中に計算された、又は、参照されるスペクトルの一例を示す図。
【図5】本発明の実施形態に係るバイブレータ振動情報の構成の一例を示す図(第2の例)。
【図6】本発明の実施形態に係る歩数計測部の第2の動作のフローチャート。
【図7】本発明の実施形態に係る歩数計測部の第2の動作中に計算された、又は、参照されるスペクトルの一例を示す図。
【符号の説明】
【0081】
11 制御部
14a スピーカ
15 表示部
16 入力部
21 歩数計測部
21a メモリ
22 加速度センサ
23 バイブレータ振動記憶部
23a 周波数
23b 強さ
24 バイブレータ
25 音楽再生部
26 音楽コンテンツ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度を測定する加速度センサと、
歩数を計測する歩数計測手段と、
自装置が静止している際に前記加速度センサによって測定される加速度を記憶する加速度記憶手段とを有し、
前記歩数計測手段は、前記加速度センサによって測定された加速度から前記加速度記憶手段に記憶された加速度を減算した加速度を解析して歩数を計測する
ことを特徴とする歩数計装置。
【請求項2】
前記加速度記憶手段は、自装置が静止している際に前記加速度センサによって測定される加速度のスペクトルを記憶し、
前記歩数計測手段は、前記加速度センサによって測定された加速度のスペクトルから前記加速度記憶手段に記憶された加速度のスペクトルを減算したスペクトルを解析して歩数を計測する
ことを特徴とする請求項1に記載の歩数計装置。
【請求項3】
振動発生装置の動作によって発生した加速度を含む加速度を測定する加速度センサと、
歩数を計測する歩数計測手段と、
前記振動発生装置が動作し、かつ、自装置が静止している際に前記加速度センサによって測定される加速度を記憶する加速度記憶手段とを有し、
前記歩数計測手段は、前記加速度センサによって測定された加速度から前記加速度記憶手段に記憶された加速度を減算した加速度を解析して歩数を計測する
ことを特徴とする歩数計装置。
【請求項4】
前記加速度記憶手段は、前記振動発生装置が動作し、かつ、自装置が静止している際に前記加速度センサによって測定される加速度のスペクトルを記憶し、
前記歩数計測手段は、前記加速度センサによって測定された加速度のスペクトルから前記加速度記憶手段に記憶された加速度のスペクトルを減算したスペクトルを解析して歩数を計測する
ことを特徴とする請求項3に記載の歩数計装置。
【請求項5】
前記歩数計測手段は、前記振動発生装置が動作している場合、前記加速度センサによって測定された加速度から前記加速度記憶手段に記憶された加速度を減算した加速度を解析して歩数を計測し、前記振動発生装置が動作していない場合、前記加速度センサによって測定された加速度を解析して歩数を計測する
ことを特徴とする請求項3に記載の歩数計装置。
【請求項6】
振動発生装置の動作によって発生した加速度を含む加速度を測定する加速度センサと、
歩数を計測する歩数計測手段と、
前記振動発生装置が動作し、かつ、自装置が静止している際に前記加速度センサによって測定される加速度を第1のサンプリング周波数でサンプリングして計算されたスペクトルを記憶する加速度記憶手段とを有し、
前記歩数計測手段は、前記振動発生装置が動作している場合、前記加速度センサによって測定された加速度を前記第1のサンプリング周波数でサンプリングして計算されたスペクトルから前記加速度記憶手段に記憶されたスペクトルを減算したスペクトルを解析して歩数を計測し、前記振動発生装置が動作していない場合、前記加速度センサによって測定された加速度を前記第1のサンプリング周波数より低い第2のサンプリング周波数でサンプリングして計算されたスペクトルを解析して歩数を計測し、
前記第1のサンプリング周波数は、前記振動発生装置の振動を復元できるスペクトルを計算するサンプリング周波数であり、
前記第2のサンプリング周波数は、歩行の振動を復元できるスペクトルを計算するサンプリング周波数である
ことを特徴とする歩数計装置。
【請求項7】
前記振動発生装置は、バイブレータである
ことを特徴とする請求項3又は請求項6に記載の歩数計装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−71779(P2010−71779A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239047(P2008−239047)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】