説明

歩数計

【課題】 感度設定を適正に行えるようにして、歩数をより正確に測定可能にすること。
【解決手段】 センサ101が歩行を検出して出力した歩行信号は、増幅回路102、フィルタ103、可変利得増幅回路104、2値化回路105を介してCPU106によって計数され、表示部114によって表示される。歩行周期演算部115は歩行信号の周期を算出し、歩行周期比較部116が前記周期と歩行信号の周期を比較することによって歩行検出抜けを生じたと判断した場合、規定外歩数処理部117が前記検出抜けを補う歩数補正を行って正確な歩数算出を行えるようにし、前記歩数補正が生じないように可変利得増幅回路104の利得を制御することによって歩行検出感度を適正化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に装着して使用され、該装着した人の歩数を測定する歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体に装着して使用され、該装着した使用者の歩数を測定する歩数計が開発されている。
【0003】
歩数の測定は、歩行中の人体の上下運動による加速度を検出し、その回数を歩数として計数するのが一般的である。
しかし、実際には歩行以外の生活動作による様々なノイズを拾ってしまい、歩数を正確に測定することが出来ないという問題点が以前から指摘されている。
【0004】
例えば特許文献1記載の歩数計では、腕時計の本体に内蔵した圧電素子が歩行振動を検出し、増幅回路とフィルタ回路により、歩行検出に必要な信号を増幅して、歩数を計数する。フィルタ部からの信号のうちの最新の所定数の信号周期の移動平均Taをとることによって基準歩行周期を算出し、フィルタ部からの信号のうち、第1の基準周期範囲外の信号を規定外歩数処理部に出力する歩行周期比較部 、前記基準歩行周期に基づく第2の基準周期範囲と歩行周期比較部からの信号の周期とを比較して、歩行周期比較部からの信号のうち、前記第2の基準周期範囲内の周期の信号をn歩分の歩数として歩数カウント部に出力して、検出抜けを補正している。
また、特許文献2記載の歩数計では、使用者が設定した運動モード(歩行/エクササイズウォーク/走行)の種別に応じて、歩行センサからの信号を増幅する増幅回路の利得を切り換えるように構成している。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1記載の発明では、携帯者が最初に平地を100歩程度歩行して表示歩数と一致した感度に設定を行うが、携帯者の歩行振動が小さく、測定した歩数の多くが検出レベルの揺らぎによる検出抜け補正による結果であっても、携帯者には最適感度と判断されてしまう。この感度設定でゆっくり歩行といった歩行状態の変化や、ゆるやかな坂道の歩行といった歩行環境の変化によって、検出されるべき歩行信号が検出されずに検出抜けが生じるという問題がある。
【0006】
また、前記特許文献2記載の発明の場合、非歩行時(例えばデスクワーク等)においても手首の動きにより、歩数と誤検出することがあり、歩行時の検出性を重視して感度を高めにすると、誤検出する頻度が高くなるという問題がある。
【特許文献1】特開昭2005−309691号公報(段落[0022]、図1、図2)
【特許文献2】特許第2712269号公報(第3頁左欄第39行〜第4頁右欄第37行、図4〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、感度設定を適正に行えるようにして、歩数をより正確に測定可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、歩行を検出するためのセンサを有し前記センサによって検出した歩行に対応する歩行信号を出力する検出手段と、前記検出手段からの歩行信号に基づいて歩数を算出する際に、前記検出手段が歩行の検出抜けを生じた場合に前記検出抜けを補う歩数補正を行って歩数算出を行うと共に前記検出抜けが生じない場合には前記歩数補正を行わずに歩数算出を行う算出手段とを有する歩数計において、前記歩数補正を行う頻度に基づいて、前記検出手段の歩行検出感度を調整する制御手段を備えて成ることを特徴とする歩数計が提供される。
制御手段は、歩数補正を行う頻度に基づいて、検出手段の歩行検出感度を調整する。
【0009】
ここで、前記制御手段は、前記算出手段による歩数補正の頻度が所定値以下になるように前記検出手段の検出感度を調整するように構成してもよい。
また、前記制御手段は、前記検出手段の検出感度を設定する検出感度設定モードにおいて、前記算出手段によって算出した非補正歩数が所定値以上のとき、前記検出手段の検出感度調整を終了するように構成してもよい。
【0010】
また、報知手段を有し、前記制御手段は、前記検出手段の検出感度を設定する検出感度設定モードにおいて前記検出手段の検出感度の調整を終了したとき、前記報知手段によって感度調整終了を報知するように構成してもよい。
また、前記制御手段は、歩数測定を行う歩数測定モードにおいて、前記算出手段が算出した非補正歩数が所定値以上のとき、前記検出手段の検出感度を所定量下げるように構成してもよい。
【0011】
また、前記制御手段は、前記歩数測定モードにおいて歩行測定を開始する際に、前記検出感度設定モードにおいて設定した検出感度を前記検出手段の初期値として設定し、該検出感度を用いて歩数測定を開始するように構成してもよい。
また、前記歩数測定モードにおいて、前記制御手段は前記歩数補正を行う頻度及び非補正歩数に基づいて前記検出手段の検出感度を随時調整し、前記算出手段は歩数算出を行うように構成してもよい。
また、少なくとも前記センサは腕に装着して使用されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感度設定を適切に行うことができ、歩数をより正確に測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る歩数計について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
図1において、歩数計は、歩行を検出して対応する歩行信号を出力するセンサ101、センサ101からの歩行信号を増幅して出力する増幅回路102、増幅回路102からの信号中の歩行信号を通過させるフィルタ103、その利得が可変であると共にフィルタ103からの歩行信号を増幅して出力する可変利得増幅回路104、可変利得増幅回路104からの歩行信号を所定基準信号と比較することによって二値化したデジタル信号に変換し出力する二値化回路105を備えている。
【0014】
また、歩数計は、中央処理装置(CPU)106、所定周波数の信号を生成する発振回路107、発振回路107からの信号を分周して計時動作の基準となる時計信号を出力する分周回路108、CPU106からの制御信号に対応する利得に可変利得増幅回路104の利得を制御する利得制御回路109、キースイッチ等によって構成された操作部110、CPU106が実行するプログラムなどを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)111、歩数データなどを記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)112、CPU106からの表示制御信号に応答して表示部114を駆動する表示駆動回路113、歩数や時刻等を表示する表示部114を備えている。
【0015】
図1では、CPU106内には、CPU106がROM111に記憶したプログラムを実行した場合に実現する機能をブロック図として示している。
CPU106は、2値化回路105からの歩行信号に基づいて(例えば、最新の所定数の歩行信号周期の移動平均Taをとることによって)基準歩行周期Taを算出する歩行周期演算部115、前記基準歩行周期に基づく第1の基準周期範囲(例えば、Ta±10%)と2値化回路105からの信号の周期とを比較して、二値化回路105から出力された信号のうち、前記第1の基準周期範囲内の周期の信号を1歩分の歩行信号として歩数計数部120に出力すると共に、二値化回路105からの信号のうち、前記第1の基準周期範囲外の信号を規定外歩数処理部117に出力する歩行周期比較部116、前記基準歩行周期に基づく第2の基準周期範囲(例えば、nTa±10%(nは正の整数))と歩行周期比較部116からの信号の周期とを比較して、歩行周期比較部116からの信号のうち、前記第2の基準周期範囲内の周期の信号をn歩分の歩数として歩数計数部120に出力すると共に、前記第2の基準周期範囲外の周期の信号の場合にはノイズとして排除する規定外歩数処理部117、歩行周期比較部116及び規定外歩数処理部117から得られた歩数を現在の歩数に加算することによって歩数を計数する歩数計数部120、規定外歩数処理部117が検出抜けした歩数を補うための規定外処理(補正処理)を行った回数(補正回数)を計数する規定外歩数処理計数部118、規定外歩数処理計数部118が計数した前記補正回数に基づいて可変利得増幅回路104の利得を適正な利得に制御するように利得制御回路109に制御信号を出力する利得調整判断部119、歩行周期比較部116を介して入力される二値化回路105からの歩行信号を計数すると共に規定外歩数処理部117が前記規定外処理を行ったときの歩数を計数して補正することにより正確な歩数計数を行う歩数計数部120として機能する。
【0016】
尚、センサ101、増幅回路102、フィルタ103、可変利得増幅回路104及び2値化回路105は検出手段を構成している。CPU106、発振回路107及び分周回路08は計時手段を構成している。CPU106算出手段を構成し又、CPU106及び利得制御回路109は制御手段を構成している。操作部110は操作手段を構成し、ROM111及びRAM112は記憶手段を構成している。表示駆動回路113及び表示部114は報知手段を構成している。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に係る歩数計の処理を示すフローチャートで、歩数測定を行う前に予め歩行検出感度を設定するための検出感度設定モードの処理を示すフローチャートである。
以下、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態に係る歩数計の検出感度設定モードの動作を説明する。
【0018】
感度設定を行う場合、使用者は、腕に歩数計(少なくともセンサ101)を装着した状態で、操作部110を操作することによって検出感度設定モードにして歩行開始する。
CPU106の利得調整判断部119は、操作部110による検出感度設定モードへの移行操作に応答して、利得制御回路109に対して、可変利得増幅回路104の利得を最低利得(最低感度)にするように制御信号を出力する。利得制御回路109は、前記制御信号に応答して、可変利得増幅回路104の利得を最低利得に制御する。これにより、可変利得増幅回路104の利得が最低となるため、歩行信号の検出感度を最低感度に設定する(ステップS201)。
【0019】
センサ101は使用者の歩行を検出して対応する歩行信号を出力する。増幅回路102はセンサ101からの歩行信号を増幅して出力する。フィルタ103は増幅回路102からの信号中の前記歩行信号を通過させる。可変利得増幅回路104は、前記の如くして設定された最低利得でフィルタ103からの歩行信号を増幅して出力する。二値化回路105は可変利得増幅回路104からの歩行信号を所定基準値と比較することによって二値化したデジタル信号に変換し、CPU106に出力する。
【0020】
歩行周期演算部105が二値化回路105からの歩行信号が入力されたと判断すると(ステップS202)、歩行周期演算部115は歩行信号の周期を算出し、歩行周期比較部116は二値化回路105からの信号が前記第1の基準周期範囲内と判断した場合には、歩行信号と判断して、歩数計数部120に歩行信号を1歩分出力する(ステップS203)。
【0021】
一方、歩行周期比較部116は、処理ステップS203において、二値化回路105からの信号が前記第1の基準周期範囲外と判断した場合は、二値化回路105からの信号を規定外歩数処理部117に出力する。
規定外歩数処理部117は、二値化回路105からの信号と、歩行周期演算部115によって算出された基準歩行周期に基づく第2の基準周期範囲とを比較することにより、二値化回路105からの信号が前記基準歩行周期のn倍(nは正の整数)に類似するか否かを判断し(例えば、前記類似するか否かの判断基準としては、ノイズによる計数誤差を生じることが少なく且つ歩行信号を抜けが少なく計数可能な基準であり、前記第2の基準周期範囲として、前記移動平均Taのn倍(nTa)±10%としており、二値化回路105からの信号が前記第2の基準周期範囲内のときは、前記基準歩行周期のn倍に類似すると判断する。)、規定外歩数処理部117は、二値化回路105からの信号が前記基準歩行周期のn倍に類似すると判断した場合、即ち、二値化回路105からの信号が前記第2の基準周期内と判断した場合には、二値化回路105からの信号がn個の歩行信号(検出が抜けた歩行信号がn個)であるためこれを補うための歩数補正処理が必要と判断する(ステップS204)。
【0022】
規定外歩数処理部117は、処理ステップS204において歩数補正処理が必要と判断した後、規定外歩数処理計数部118に対して歩数補正処理を行う旨通知すると共に、歩数計数部120に歩行信号をn歩分出力して歩数補正処理を行う(ステップS205)。尚、1歩抜けの場合には、n=1である。
歩数計数部120は、規定外歩数処理部117からのn歩分の歩行信号を計数して、今までの歩数計数値にnカウント加算し、表示駆動回路113を介して表示部114に出力する。表示部114には、今まで表示していた計数値にnカウント加算した計数値が累積の歩数として表示される。
規定外歩数処理計数部118は、処理ステップS205において、規定外歩数処理部117から歩数補正処理を行う旨の通知を受けると、現在記憶している補正回数に1回加算し(ステップS206)、処理ステップS207に移行する。
【0023】
一方、歩行信号に検出抜けが無い場合、処理ステップS204において、規定外歩数処理部117が歩数補正処理は不要と判断する。そして、規定外歩数処理部117は規定外歩数処理計数部118に対してその判断の結果を通知する。歩数計数部120は、歩行周期比較部116からの歩行信号を計数して、現在の歩数計数値に1カウント加算する。ここで、歩数表示が必要であれば、表示部114は、今まで表示していた計数値に1カウント加算した計数値が累積の歩数として表示する。規定外歩数処理計数部118は、補正を行わずに計数した歩数を非補正歩数として計数する(ステップS215)。
【0024】
規定外歩数処理計数部118は、処理ステップS215で計数された非補正歩数が所定値以上の場合(ステップS207)、設定感度が適切と判断して検出感度設定モードを終了し、終了の報知を行うように表示駆動回路113を駆動する。これにより表示部114には感度調整終了表示が行われ、感度調整終了の報知が行われる(ステップS216)。
【0025】
規定外歩数処理計数部118が処理ステップS207において非補正歩数が所定値以上でないと判断したとき、補正回数が所定値以上か否かを判断する(ステップS208)。
規定外歩数処理計数部118が処理ステップS208において補正回数が所定回数以上ではないと判断した場合、処理ステップS202に戻って前記処理を繰り返す。
規定外歩数処理計数部118が処理ステップS208において補正回数が所定回数以上と判断した場合、利得調整判断部119は最高感度(可変利得増幅回路104の利得が最高)か否かを判断する(ステップS209)。利得調整判断部119は、処理ステップS209において最高感度ではないと判断すると、検出感度を所定量(例えば1ランク)上げるために、利得調整判断部119は可変利得増幅回路104の利得を複数ランクの利得中の1ランク上のランクに上げるように利得制御回路109に制御信号を出力する(ステップS210)。
【0026】
利得制御回路109は、前記制御信号に応答して、可変利得増幅回路104の利得を1ランク上げるように制御し、可変利得制御回路104は利得を1ランク上げ、これにより、歩行検出感度が1ランク上がる。
処理ステップS209において、利得調整判断部119は、可変利得増幅回路104の利得が最大(最高感度)のときは、これ以上感度を上げられないため、感度調整を終了した旨の表示を行うように、表示駆動回路113を駆動し、表示部114には感度調整終了が表示され、感度調整終了の報知がなされる(ステップS216)。
【0027】
歩行周期演算部115は、処理ステップS202において歩行信号を受信しない状態が継続して所定時間経過していないと判断すると(ステップS211)、処理ステップS202に戻る。
一方、歩行周期演算部115は、処理ステップS211において、歩行信号を受信しない状態が継続し、所定時間経過(タイムアウト)したと判断すると、利得調整判断部119が既に最高感度に設定しているか否かを判断する(ステップS212)。
【0028】
利得調整判断部119は、処理ステップS212において、未だ最高感度に設定していないと判断した場合、前記のようにして検出感度を1ランク上げた後、処理ステップS202に戻る(ステップS213)。
利得調整判断部119は、処理ステップS212において、既に最高感度に設定していると判断した場合、歩行していない状態や何らかの故障が生じている等によって検出感度の設定ができないため、エラー表示を行うように表示駆動回路113及び表示部114を制御してエラー表示を行う(S214)。これにより、表示部114によってエラー報知が行われる。
【0029】
以上のようにして、歩数測定を行う前に歩行検出感度を予め設定する検出感度設定モードにおいて、歩数補正を行う頻度に基づいて検出感度を自動調整している。たとえば、補正歩数を行う頻度が所定値以下になったときに非補正歩数が所定値以上の場合は、適正な感度に設定されたと判断し、補正頻度が所定値以上の場合には感度が不足と判断して、感度を自動的に1ランクずつ上下させながら感度調整を行うので、適正な感度に設定することが可能になり、歩数測定を正確に行うことができる。
【0030】
また、歩行検出感度を最低感度に設定した状態から、検出感度を上げていき、補正頻度が所定値以下になって非補正歩数が所定値以上になったときに適正な感度になったと判断して、感度調整を終了するようにしているため、簡単な処理によって感度調整を行うことが可能である。
尚、前記処理を所定周期で行うため、補正回数は所定時間当たりに生じる回数として計数されるので、その結果として、補正頻度に基づいて、歩行検出感度の調整が行われる。また、非補正歩数とともに補正頻度に基づいて、歩行検出感度の調整が行われる。
【0031】
また、本実施の形態では、歩行検出感度を最低感度に設定した状態から、検出感度を上げていき、歩数補正回数が所定値以下になったときに適正な感度になったと判断して、感度調整を終了するように構成したが、歩行検出感度を最高感度に設定した状態から、検出感度を下げていき、歩数補正回数が所定値以下になったときに適正な感度になったと判断して、感度調整を終了するように構成してもよい。
【0032】
また、前記検出感度設定モードでは、歩数の表示は必ずしも必要ではないため、表示駆動回路113及び表示部114による歩数表示動作は必ずしも必要ではない。
図3は、本発明の実施の形態に係る歩数計の処理を示すフローチャートで、歩数測定を行う歩数測定モードにおいて、歩数測定を行いながら、歩行検出感度を調整する処理を示すフローチャートである。尚、図3において、図2と同一処理を行う部分には同一符号を付している。
【0033】
以下、図1及び図3を用いて、本発明の実施の形態に係る歩数計の歩数測定モードの動作を詳細に説明する。尚、前記検出感度設定モードでは、歩行検出感度の初期設定として最低感度に設定したが、歩行測定モードでは、歩行検出感度の初期状態として、歩行を検出できるような所定大きさの歩行検出感度、例えば、前記検出感度設定モードで設定した検出感度に設定されているものとする。
【0034】
使用者が、腕に歩数計(少なくともセンサ101)を装着した状態で、操作部110を操作することによって歩数測定モードにして歩数測定を開始すると、歩行周期演算部115は二値化回路105からの歩行信号が入力されたか否か判断する(ステップS202)。
歩行周期演算部115は、処理ステップS202において、二値化回路105からの歩行信号が入力されたと判断すると、歩行信号の周期を算出し、歩行周期比較部116は二値化回路105からの信号が前記第1の基準周期範囲内と判断した場合には、歩行信号と判断して、歩数計数部120に歩行信号を1歩分出力する(ステップS203)。
【0035】
歩数計数部120は、歩行周期比較部116からの歩行信号を計数して、今までの歩数計数値に1カウント加算し、表示駆動回路113に出力する。表示部114には、今まで表示していた計数値に1カウント加算した計数値が累積の歩数として表示される。
一方、歩行周期比較部116は、処理ステップS203において、二値化回路105からの信号が前記第1の基準周期範囲外と判断した場合は、二値化回路105からの信号を規定外歩数処理部117に出力する。
【0036】
規定外歩数処理部117は、二値化回路105からの信号と、歩行周期演算部115によって算出された基準歩行周期に基づく第2の基準周期範囲とを比較することにより、二値化回路105からの信号が前記基準歩行周期のn倍(nは正の整数)に類似するか否かを判断し(例えば、前記類似するか否かの判断基準としては、ノイズによる計数誤差を生じることが少なく且つ歩行信号を抜けが少なく計数可能な基準であり、前記第2の基準周期範囲として、前記移動平均Taのn倍(nTa)±10%としており、二値化回路105からの信号が前記第2の基準周期範囲内のときは、前記基準歩行周期のn倍に類似すると判断する。)、規定外歩数処理部117は、二値化回路105からの信号が前記基準歩行周期のn倍に類似すると判断した場合、即ち、二値化回路105からの信号が前記第2の基準周期内と判断した場合には、二値化回路105からの信号がn個の歩行信号(検出が抜けた歩行信号がn個)であるためこれを補うための歩数補正処理が必要と判断する(ステップS204)。
【0037】
規定外歩数処理部117は、処理ステップS204において歩数補正処理が必要と判断した後、規定外歩数処理計数部118に対して歩数補正処理を行う旨通知すると共に、歩数計数部120に歩行信号をn歩分出力して歩数補正処理を行う(ステップS205)。尚、1歩抜けの場合には、n=1である。
歩数計数部120は、規定外歩数処理部117からのn歩分の歩行信号を計数して、今までの歩数計数値にnカウント加算し、表示駆動回路113を介して表示部114に出力する。表示部114には、今まで表示していた計数値にnカウント加算した計数値が累積の歩数として表示される。
【0038】
一方、規定外歩数処理計数部118は、処理ステップS204において、規定外歩数処理部117から歩数補正処理を行う旨の通知を受けると、非補正歩数をクリアし、現在記憶している補正回数に1回加算する(ステップS206)。補正回数が所定値以上と判断した場合(ステップS208)、且つ、利得調整判断部119は最高感度でないと判断したときには(ステップS209)、感度を1ランク上げるために、利得調整判断部119は可変利得増幅回路104の利得を複数ランクの利得の中の1ランク上のランクに上げるように利得制御回路109に制御信号を出力する(ステップS210)。利得制御回路109は、前記制御信号に応答して、可変利得増幅回路104の利得を1ランク上げるように制御し、可変利得制御回路104は利得を1ランク上げ、これにより、歩行信号の検出感度が1ランク上がる。
【0039】
利得調整判断部119は、処理ステップS209において可変利得増幅回路104の利得が最高感度のときは、これ以上感度を上げられないため、処理ステップS202に戻って歩数測定処理を行う。また、処理ステップS208において、歩数補正回数が所定回数以上でないと判断した場合、感度調整は不要と判断して処理ステップS202に戻る。
ゆらぎ等による歩数検出抜けが生じた場合の歩数補正(ステップS204)を行う必要が無くなるまで、前記処理ステップS202〜S210を繰り返し、歩数補正回数が所定回数以下となれば、歩行検出感度はそのまま保持される。
【0040】
一方、規定外歩数処理部117は処理ステップS204において歩数補正は不要と判断すると、規定外歩数処理部117は規定外歩数処理計数部118に対してその判断の結果を通知する。歩行周期比較部116は歩数計数部120に歩行信号を1歩分出力し、歩数計数部120は、歩行周期比較部116からの歩行信号を計数して、今までの歩数計数値に1歩加算し、表示駆動回路113に出力する。表示部114には、今まで表示していた計数値に1カウント加算した計数値が累積の歩数として表示される。規定外歩数処理計数部118は、補正を行わずに計数した歩数を非補正数として計数する(ステップS215)。
【0041】
規定外歩数処理計数部118は、処理ステップS215で計数された非補正歩数が所定値以上と判断した場合(ステップS301)、利得調整判断部119は最低感度でないと判断したときには(ステップS302)、感度が高すぎると判断して感度を1ランク下げるために、可変利得増幅回路104の利得を1ランク下に下げるように利得制御回路109に制御信号を出力する(ステップS303)。
【0042】
利得制御回路109は、前記制御信号に応答して、可変利得増幅回路104の利得を1ランク下げるように制御し、可変利得制御回路104は利得を1ランク下げ、これにより、歩行信号の検出感度が1ランク下がる。
規定外歩数処理計数部118は、処理ステップS301において、非補正歩数が所定値以上ではないと判断した場合、処理ステップS202に戻り、又、利得調整判断部119は処理ステップS302において最低感度と判断したときには、現在の感度よりも低い感度に下げられないため、処理ステップS202に戻る。
【0043】
ゆらぎ等で歩数補正が生じ始めるまで、処理ステップS202〜S204、S215〜S303の処理が繰り返される。
歩行周期演算部115は、処理ステップS202において歩行信号を受信しない状態が継続し、所定時間経過してタイムアウトしたと判断すると(ステップS211)、歩行停止と判断して処理を終了する(ステップS304)。
【0044】
CPU106は、歩行測定モードの開始と同時に、分周回路108からの時計信号に基づいて計時開始し、歩行測定モードの終了と同時に計時動作を終了する。操作部110の操作に応答して、測定した歩数の表示、測定した歩数及び時間に基づいて算出したピッチの表示などを表示部114で行う。
【0045】
以上のようにして、歩数測定を行う歩行測定モードにおいても、歩数補正を行う頻度に基づいて随時検出感度を自動調整している。たとえば、補正歩数を行う頻度が所定値以上のときには検出感度を上げ、非補正歩数が所定値以上のときには検出感度を下げ、これによって、適正な感度に設定しながら歩数測定を行うようにしているため、適正な感度で、歩数測定を正確に行うことが可能になる。
また、歩数補正を生じ始める感度まで検出感度を下げるため、感度が高くなりすぎることがなく、少なくともセンサ101を腕に装着して歩数測定を行う腕歩数計においては、腕に装着して手首だけの動作による非歩行時の誤検出頻度を低減することが可能となる。
【0046】
また、歩数測定時に、非補正歩数の値に基づいても感度調整を行っているため、歩行状態等の変化に応じて、ダイナミックに適正な歩行検出感度に自動調整することが可能になり、歩数測定をより正確に行うことが可能になる。
また、感度設定を最適に行うことで、日常使用時の歩数を正確に計数することが可能となる。
【0047】
尚、前記実施の形態では、腕歩数計の例で説明したが、腰に装着して使用、あるいは、携帯用バッグに収納した状態で使用するような歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
また、前記実施の形態では、歩行センサとして加速度センサを使用したが、機械式センサや靴底に設けた圧力センサ等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
少なくともセンサを腕に装着して使用する腕歩数計をはじめとして、腰に装着して使用、あるいは、携帯用バッグに収納した状態で使用するような歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における検出感度設定モードの処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における歩数測定モードの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
101・・・検出手段を構成するセンサ
102・・・検出手段を構成する増幅回路
103・・・検出手段を構成するフィルタ
104・・・検出手段を構成する可変利得増幅回路
105・・・検出手段を構成する2値化回路
106・・・制御手段、算出手段及び計時手段を構成するCPU
107・・・計時手段を構成する発振回路
108・・・計時手段を構成する分周回路
109・・・制御手段を構成する利得制御回路
110・・・操作手段を構成する操作部
111・・・記憶手段を構成するROM
112・・・記憶手段を構成するRAM
113・・・報知手段を構成する表示駆動回路
114・・・報知手段を構成する表示部
115・・・歩行周期演算部
116・・・歩行周期比較部
117・・・規定外歩数処理部
118・・・規定外歩数処理系数部
119・・・利得調整判断部
120・・・歩数計数部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行を検出するためのセンサを有し前記センサによって検出した歩行に対応する歩行信号を出力する検出手段と、前記検出手段からの歩行信号に基づいて歩数を算出する際に、前記検出手段が歩行の検出抜けを生じた場合に前記検出抜けを補う歩数補正を行って歩数算出を行うと共に前記検出抜けが生じない場合には前記歩数補正を行わずに歩数算出を行う算出手段とを有する歩数計において、
前記歩数補正を行う頻度に基づいて、前記検出手段の歩行検出感度を調整する制御手段を備えて成ることを特徴とする歩数計。
【請求項2】
前記制御手段は、前記算出手段による歩数補正の頻度が所定値以下になるように前記検出手段の検出感度を調整することを特徴とする請求項1記載の歩数計。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出手段の検出感度を設定する検出感度設定モードにおいて、前記算出手段によって算出した非補正歩数が所定値以上のとき、前記検出手段の検出感度調整を終了することを特徴とする請求項1又は2記載の歩数計。
【請求項4】
報知手段を有し、前記制御手段は、前記検出手段の検出感度を設定する検出感度設定モードにおいて前記検出手段の検出感度の調整を終了したとき、前記報知手段によって感度調整終了を報知することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の歩数計。
【請求項5】
前記制御手段は、歩数測定を行う歩数測定モードにおいて、前記算出手段が算出した非補正歩数が所定値以上のとき、前記検出手段の検出感度を所定量下げることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の歩数計。
【請求項6】
前記制御手段は、前記歩数測定モードにおいて歩行測定を開始する際に、前記検出感度設定モードにおいて設定した検出感度を前記検出手段の初期値として設定し、該検出感度を用いて歩数測定を開始することを特徴とする請求項5記載の歩数計。
【請求項7】
前記歩数測定モードにおいて、前記制御手段は前記歩数補正を行う頻度及び非補正歩数に基づいて前記検出手段の検出感度を随時調整し、前記算出手段は歩数算出を行うことを特徴とする請求項6記載の歩数計。
【請求項8】
少なくとも前記センサは腕に装着して使用されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の歩数計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−197732(P2008−197732A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29412(P2007−29412)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】