説明

歩数計

【課題】 歩行検出漏れの発生を抑制しつつ、低消費電力化を可能にすること。
【解決手段】 CPU106の周期演算部115及び周期比較部116によって検出回路100からの歩行信号が所定周期内と判断されると、歩行信号は歩数計数部119によって歩数として計数される。周期比較部116によって所定周期内の歩行信号が所定時間検出されない場合、歩行停止検出部117は歩行停止と判断し、電源制御処理部118は電源制御回路109を制御して、検出回路100を連続駆動から間欠駆動に切り替えた後、所定周期内の歩行信号が所定時間検出されない毎に間欠駆動の休止時間を所定時間ずつ徐々に延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩数を測定する歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被測定者の身体に装着して、あるいは、被測定者の携帯する鞄等に収納して使用され、被測定者の歩数を測定する歩数計が開発されている。
前記歩数計では、電源として電池を使用するため、省電力化対策が施されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、腕時計の本体に内蔵した加速度センサ(圧電素子)が歩行振動を検出して歩行信号を出力し、増幅回路とフィルタ回路によって歩行信号を増幅し、コンパレータ回路で二値化して、歩数を計数するようにした歩数計が開示されている。
前記歩数計では、使用者が睡眠中で非携帯のときや、歩数計を収納した鞄を置いたときに検出動作を停止して低消費電力化するために、歩行を止めて歩行信号が所定時間(休眠移行時間)入力されなくなると、センサ回路は連続動作から、所定時間(休止時間)のオフ動作と所定時間(動作時間)のオン動作を交互に繰り返す間欠動作に切り替えるように構成されている。
省電力化を図るためには前記休止時間を長くする必要があるが、前記休止時間が長い場合には歩行検出漏れを生じる恐れが高くなるという問題がある。その一方、前記休止時間が短い場合、低消費電力化が困難になるという問題がある。
【0004】
特許文献2には、歩行開始検出のために20ミリ秒間隔で加速度センサ出力をサンプリングしてA/D変換を行い、歩行開始を検出したら300ミリ秒オフして歩行後のノイズ検出を削減し、歩行の検出信号が無い状態が続いた場合、省電モードとなり1〜5秒間センサをオフするようにした歩数計が開示されている。
しかしながら、前記歩数計では、サンプリング周波数が低い場合、測定歩数精度が低下するため、サンプリング周波数は一定値以下に下げることができず、低消費電力化が困難という問題がある。
【0005】
特許文献3には、非歩行時と歩行時でサンプリング周期を変えるようにした歩数計が開示されているが、前記特許文献2と同様の問題がある。
また、特許文献4には、非歩行時のサンプリング周期を歩行時のサンプリング周期より長くした歩数計が開示されているが、これに関しても前記特許文献2と同様の問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−267152号公報
【特許文献2】特開2001−143048号公報
【特許文献3】特開2006−293860号公報
【特許文献4】特開2006−293861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、歩行検出漏れの発生を抑制しつつ、低消費電力化を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、歩行を検出するセンサを有し前記センサによって検出した歩行に対応する歩行信号を出力する検出手段と、前記検出手段からの歩行信号に基づいて歩数を算出する算出手段と、前記検出手段から前記歩行信号が所定時間継続して出力されない場合、前記検出手段の動作を、前記歩行を連続的に検出する連続動作から、休止時間において歩行検出を休止する休止動作と検出時間において歩行検出を行う検出動作とを交互に繰り返す間欠動作に移行するように制御する制御手段とを有する歩数計において、前記制御手段は、前記間欠動作時に前記検出手段から歩行信号が出力されない場合、前記休止時間が徐々に長くなるように前記検出手段を制御することを特徴とする歩数計が提供される。
制御手段は、間欠動作時に検出手段から歩行信号が出力されない場合、休止時間が徐々に長くなるように前記検出手段を制御する。
【0009】
ここで、前記制御手段は、前記休止時間の上限が所定時間になるように前記検出手段を制御するように構成してもよい。
また、前記制御手段は、前記間欠動作から前記連続動作に戻った後、再び前記間欠動作に移行する場合、前記休止時間を最小値に戻して前記間欠動作を再開するように前記検出手段を制御するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歩行検出漏れの発生を抑制しつつ、低消費電力化を可能にすることを課題としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る歩数計について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
図1において、歩数計は、圧電素子によって構成され歩行(走行も含む)を検出して対応する歩行信号を出力するセンサ101、センサ101からの歩行信号を増幅して出力する増幅回路(アンプ)102、増幅回路102からの信号中の歩行信号を通過させるフィルタ103、フィルタ103からの歩行信号を増幅して出力する増幅回路(アンプ)104、増幅回路104からの歩行信号を所定基準信号と比較することによって二値化したデジタル信号に変換し出力するコンパレータ105を備えている。センサ101、増幅回路102、104、フィルタ103及びコンパレータ105は検出回路100を構成している。
【0012】
また、歩数計は、中央処理装置(CPU)106、所定周波数の信号を生成する発振回路107、発振回路107からの信号を分周して計時動作の基準となる時計信号を出力する分周回路108、CPU106からの制御信号に基づいて検出回路100に駆動電力を連続的又は間欠的に供給して検出回路100を連続動作又は間欠動作(間欠動作の詳細は後述する。)に切り替える電源制御回路109、キースイッチ等によって構成された入力110、CPU106が実行するプログラムなどを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)111、歩数データなどを記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)112、CPU106からの表示制御信号に応答して表示部114を駆動する表示駆動回路113、歩数や時刻等を表示する表示部114を備えている。
【0013】
図1では、CPU106内に、CPU106がROM111に記憶したプログラムを実行した場合に実現する機能をブロック図として示している。
CPU106は、詳細は後述するが、検出回路100からの信号の周期を算出する周期演算部115、検出回路100からの信号の周期を基準値と比較して歩行信号か否かを判断する周期比較部116、周期比較部116によって判断した信号の周期が所定値を超えた場合に歩行停止と判断する歩行停止検出部117、歩行停止検出部117が歩行停止と判断した場合に検出回路を間欠駆動させる電源制御処理部118、周期比較部116からの歩行信号に基づいて歩数を計数する歩数計数部119として機能する。
【0014】
尚、検出回路100は検出手段を構成し又、CPU106、発振回路107及び分周回路08は計時手段を構成している。また、CPU106は算出手段を構成し又、CPU106及び電源制御回路109は制御手段を構成している。また、入力部110は入力手段を構成し、ROM111及びRAM112は記憶手段を構成している。
図2は、本発明の実施の形態に係る歩数計の処理を示すフローチャートである。
以下、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態に係る歩数計の動作を説明する。
【0015】
先ず、被測定者は、自己の腕に歩数計(少なくともセンサ101)を装着した状態で、入力部110によって歩数測定開始操作を行うと、CPU106の電源制御処理部118は検出回路100に駆動電力を供給して電源オンにするように電源制御回路109を制御する(ステップS201)。
電源制御回路109は、電源制御処理部118による制御に応答して、検出回路100の電源をオンする。
【0016】
被測定者が歩行を行うと、加速度センサ101が歩行振動を検出し、歩行に対応する歩行信号を出力する。加速度センサ101からの信号は増幅回路102によって増幅された後、ノイズ成分がフィルタ103によって除去され、歩行信号が増幅回路104に入力される。増幅回路104によって増幅された歩行信号は、コンパレータ105によって所定基準値と比較されて二値化され、デジタル信号としてCPU106に入力される。
【0017】
周期演算部115は、検出回路100からの信号の周期を演算する。周期比較部116は、周期演算部115が算出した周期を基準値と比較して、被測定者の歩行に対応する歩行信号か否かを判断する(ステップS202)。
周期比較部116は、処理ステップS202において所定範囲内の周期の場合には正規の歩行信号と判断し、検出回路100からの信号(歩行信号)を歩数計数部119に出力する。歩数計数部119は前記歩行信号を計数して、歩数計数を行う(ステップS213)。
歩数計数部119が計数した歩数は、表示駆動回路113を介して表示部114によって表示される。
【0018】
被測定者が歩行を停止すると、検出回路100からの信号が所定範囲内の周期を超えて、周期比較部116が歩行信号ではないと判断する。周期比較部116が歩行信号ではないと判断している状態が所定の歩行停止判定時間(例えば5秒)経過したか否かを歩行停止検出部117が判断する(ステップS203)。
歩行停止検出部117は、処理ステップS203において、歩行信号ではないと判断している状態が所定の歩行停止判定時間を超えたと判断した場合には、歩行信号が前記歩行判定時間の間に継続して検出されないため歩行停止と判断して、間欠動作に移行する。
【0019】
電源制御処理部118は、間欠動作に入る場合、間欠動作において検出動作を休止(休止状態)する所定の休止時間を最小時間(例えば5秒)に初期化した後(ステップS204)、電源制御処理部118は検出回路100をオフするように電源制御回路109に制御信号を出力する(ステップS205)。電源制御回路109は前記制御信号に応答して、検出回路100への電力供給を休止してオフにし、これにより、検出回路100は歩行検出動作を休止する。
【0020】
電源制御処理部118は、前記休止時間が経過するまで休止状態を維持した後(ステップS206)、検出回路100をオンするように電源制御回路109に制御信号を出力する(ステップS207)。電源制御回路109は前記制御信号に応答して、検出回路100へ電力を供給してオンにし、これにより、検出回路100は歩行検出動作を再開する。
【0021】
検出回路100が歩行検出動作を再開して、被測定者の歩行による歩行信号が検出回路100から出力されると、周期演算部115は、検出回路100からの信号の周期を演算する。周期比較部116は、周期演算部115が算出した周期を基準値と比較して、被測定者の歩行に対応する歩行信号か否かを判断する(ステップS208)。
周期比較部116は、処理ステップS208において、所定範囲内の周期の場合には正規の歩行信号と判断し、検出回路100からの歩行信号を歩数計数部119に出力する。歩数計数部119は前記歩行信号を計数して、歩数計数を行った後(ステップS213)、処理ステップS202に戻って連続動作を行う。
連続動作に戻った後、再び間欠動作に入る場合、処理ステップS204によって休止時間を最小値に戻して前記間欠動作を開始することになる。
【0022】
歩行停止検出部117は、検出回路100からの信号は歩行信号ではないと周期比較部116が判断する状態が所定の検出時間経過したか否かを判断する(ステップS209)。
電源制御処理部118は、処理ステップS209において検出時間(例えば5秒)が経過したと判断した場合には、所定時間(例えば1分)経過しているか否かを判断する(ステップS210)。
【0023】
電源制御処理部118は、処理ステップS210において、所定時間経過したと判断した場合には、現在の休止時間が所定の上限値(例えば30秒)か否かを判断する(ステップS211)。前記上限値に達していない場合には、現在の休止時間に所定時間(例えば5秒)を加算する(ステップS212)ことによって現在よりも長い休止時間に設定した後、処理ステップS205に戻る。
【0024】
このように、CPU106の周期演算部115及び周期比較部116によって検出回路100からの歩行信号が所定周期内と判断されると、歩行信号は歩数計数部119によって歩数として計数される。周期比較部116によって所定周期内の歩行信号が所定時間継続して検出されない場合、歩行停止検出部117は歩行停止と判断し、電源制御処理部118は電源制御回路109を制御して、検出回路100を連続駆動から間欠駆動に切り替えた後、所定周期内の歩行信号が所定時間検出されない毎に間欠駆動の休止時間を所定時間ずつ徐々に延長する。したがって、歩行停止時間が長くなるに従って休止時間が長くなるため、低消費電力化が可能になると共に歩行検出漏れの発生を抑制することが可能になる。
【0025】
また、電源制御処理部118は、休止時間を無制限に長くするのではなく、その上限を所定時間に設定しているため、これによっても歩行検出漏れの発生を抑制することが可能になる。
電源制御処理部118は、処理ステップS210において、所定時間経過していないと判断した場合には、処理ステップS205に戻る。また、電源制御処理部118は、処理ステップS209において検出時間経過していないと判断した場合には、処理ステップS208に戻る。
【0026】
歩行停止状態は大きく分けると、(i)信号待ちの様に、歩行停止から短時間で歩行再開する一時的な歩行停止、(ii)オフィスのデスクまで歩行して着席しデスクワークを行う様な定常的な歩行停止、(iii)睡眠中の非携帯等による長時間の歩行停止の3種類に分けられる。
本実施の形態に係る歩数計では、歩行停止検出後の所定時間(例えば1分間)は、休止時間を例えば5秒、歩行停止判定時間を例えば5秒として、一時的な歩行停止から歩行再開の検出性を確保する。歩行停止検出後の前記所定時間後も歩行信号が検出されない場合は、一時的な歩行停止ではないと判断し、休止時間を例えば5秒増やして10秒にする。歩行信号が無い状態が継続する場合は、例えば1分毎に休止時間を5秒ずつ徐々に増やして30秒まで休止時間を長くする。途中で歩行信号が検出された場合は、休止時間を最小値である初期値の5秒に戻す。
【0027】
このように、歩行停止判定時間を比較的短時間(例えば5秒)としているため、信号待ちで一時的に歩行停止した場合も検出回路100を停止させることで低消費化が可能となる。
また、デスクワークの場合でも短時間で検出回路100の動作が停止するため、上半身の不規則な動作を検出する確率が下がり、歩行判定処理回数が減るため低消費電力化が可能となる。また、誤検出の確率も下がる。
逆に扉を開けるために一瞬立ち止まってすぐに歩行を再開する場合でも、歩行停止判定時間の5秒間は歩行検出回路100の動作を停止しないため、歩数計測精度が低下しない。
【0028】
始めの1分間は休止時間を5秒としているため、信号待ちの様に短時間で歩行を再開する場合でも、短時間で歩行検出を再開できるため、歩数計測精度が大きく低下しない。
また、歩行信号が無い状態が継続すると休止時間を徐々に伸ばすため、睡眠中で非携帯の場合に検出回路100の動作時間を可能な限り短くでき、低消費電力化が可能となる。
また、休止時間が最大の30秒でも歩行信号が入ると最小値である初期値の5秒に戻すので、歩数計測精度が大きく低下するのは歩行開始時のみとなり、1日単位での歩数計測精度は大きく低下しない等の効果を奏する。
【0029】
尚、本実施の形態では、検出回路100全体を連続駆動と間欠駆動のいずれかに切り替えるように構成したが、増幅回路102、104等の検出回路100の一部を連続駆動と間欠駆動に切り替えるように構成してもよい。
また、腕歩数計の例で説明したが、腰に装着して使用、あるいは、携帯用鞄に収納した状態で使用するような歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
また、歩行センサとして加速度センサを使用したが、機械式センサや靴底に設けた圧力センサ等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
少なくともセンサを腕に装着して使用する腕歩数計をはじめとして、腰に装着して使用、あるいは、携帯用鞄に収納した状態で使用するような歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
100・・・検出回路
101・・・センサ
102、104・・・増幅回路
103・・・フィルタ
105・・・コンパレータ
106・・・CPU
107・・・発振回路
108・・・分周回路
109・・・電源制御回路
110・・・入力部
111・・・ROM
112・・・RAM
113・・・表示駆動回路
114・・・表示手段
115・・・周期演算部
116・・・周期比較部
117・・・歩行停止検出部
118・・・電源制御処理部
119・・・歩数計数部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行を検出するセンサを有し前記センサによって検出した歩行に対応する歩行信号を出力する検出手段と、前記検出手段からの歩行信号に基づいて歩数を算出する算出手段と、前記検出手段から前記歩行信号が所定時間継続して出力されない場合、前記検出手段の動作を、前記歩行を連続的に検出する連続動作から、休止時間において歩行検出を休止する休止動作と検出時間において歩行検出を行う検出動作とを交互に繰り返す間欠動作に移行するように制御する制御手段とを有する歩数計において、
前記制御手段は、前記間欠動作時に前記検出手段から歩行信号が出力されない場合、前記休止時間が徐々に長くなるように前記検出手段を制御することを特徴とする歩数計。
【請求項2】
前記制御手段は、前記休止時間の上限が所定時間になるように前記検出手段を制御することを特徴とする請求項1記載の歩数計。
【請求項3】
前記制御手段は、前記間欠動作から前記連続動作に戻った後、再び前記間欠動作に移行する場合、前記休止時間を最小値に戻して前記間欠動作を再開するように前記検出手段を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の歩数計。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−242608(P2008−242608A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79392(P2007−79392)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】