説明

歩行型作業機の日除け装置

【課題】
作業者に直射日光が当たることを防ぐことができる歩行型作業機の日除け装置を提供する。
【解決手段】
機体から後方へ延びたハンドルを設け、作業者が前記ハンドルを握りながら追従して歩行する歩行型の作業機において、前記ハンドルに支持フレームを取付け、この支持フレームに日除け装置を設けることにより、この日除け装置を前記作業者の頭上に配置すると共に、前記日除け装置を、支持フレームと一体的に機体前方へ回動自在に構成すると共に、機体の旋回操作に連動して日除け装置の機体前方への回動操作を行うように構成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者がハンドルを握りながら追従して歩行する歩行型作業機の日除け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機のなかには、作業者が車体に載りながら作業を行う乗用型の作業機や、作業者が徒歩で追従しながら作業を行う歩行型の作業機がある。乗用型の作業機には、作業者を太陽の直射日光などから保護するために車体にルーフを備えたものがあるが、歩行型の作業機には先行技術文献に示すようなルーフを備えたものしかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−136210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、日焼け防止のために常時、ルーフ等の覆いを備えておくことは、この種の歩行型の作業機にあっては、特に、機体の旋回操作において作業者の頭がルーフに当たったり、作業後の納屋等への格納する際に邪魔になったりして都合が悪い面もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、第1は、機体から後方へ延びたハンドルを設け、作業者が前記ハンドルを握りながら追従して歩行する歩行型の作業機において、前記ハンドルに支持フレームを取付け、この支持フレームに日除け装置を設けることにより、この日除け装置を前記作業者の頭上に配置すると共に、前記日除け装置を、支持フレームと一体的に機体前方へ回動自在に構成したことを第一の特徴とする。
【0006】
また、機体の旋回操作に連動して日除け装置の機体前方への回動操作を行うようにしたことを第二の特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】日除け装置を装着した歩行型管理機の全体側面図である。
【図2】(a)日除け装置の脚部の構成で日除け装置を日除け姿勢にロックした状態を示す要部断面図である。(b)日除け装置の脚部の構成で日除け装置のロックを解除した状態を示す要部断面図である。
【図3】(a)サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤとシフターアーム間に設けた連動切換え機構を連動連結した状態を示す要部断面図である。(b)サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤとシフターアーム間に設けた連動切換え機構を非連動連結した状態を示す要部断面図である。
【図4】機体回向時のリフトレバーの要部側面図である。
【図5】サイドクラッチレバー切り操作時の要部側面図である。
【図6】日除け装置の脚部の構成を示す拡大図である。
【図7】ハンドル上方より見た拡大平面図である。
【図8】ミッションケースの一部拡大平面図である。
【図9】シフターアームのディテント装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る歩行型作業機の側面図である。歩行型作業機1は、前部にエンジン2を搭載し、左右車輪3a、3bを軸支するミッションケース4aを備えた機体4の後部に、耕耘部5が設けられていると共に、機体4から後方上方に向かってハンドルポストHPを延設し、このハンドルポストHPの後端へ延びたハンドル6(左右のハンドル6a、6b)を設け、該ハンドル6に歩行型の作業機の日除け装置9を設けた歩行型作業機である。
【0009】
この歩行型作業機1は、エンジン2を駆動することで耕耘軸KGを回転し、耕耘軸KGで耕耘爪(図示せず)を回転することにより、耕耘爪で土壌を耕耘しながら前進する。この際に、作業者は、ハンドル6を握りながら歩行する。
【0010】
日除け装置9は、左右のハンドル6にバンド状の固定具7で支持フレーム8を取付け、この支持フレーム8に日除け装置9を設けることにより、この日除け装置9を作業者(図1参照)の頭部上方に配置したものである。
【0011】
支持フレーム8は、ハンドル6(左右のハンドル6a、6b)に当てる当接部8aと、この当接部8aから上方に延び、内筒8b1と前側が平面断面視U字状に開放された外筒8b2の二重筒で構成される脚部8b(図2参照)と、この脚部8bから作業者の頭上まで延ばしたルーフ部8cとからなる。前記脚部8bは、図2に示すように、外筒8b2に対して内筒8b1が前方へ回動乃至は固定自在になるようにロックピン9で支持されている。ここで、脚部8bの内筒8b1と外筒8b2の連結構成について説明する。図2において、脚部8bの外筒8b2は、内筒8b1の機体前進方向側がU字状に開放されることで外筒8b2内に支持され、内筒8b1の下端は外筒8b2内に設けられたピンMで支持されている。
【0012】
そして、外筒8b2の外周には、圧縮弾機10およびこれに付勢される係止ボール11を内装した切換機構部12が固設されており、該切換機構部12には、貫通孔12aを設け、上記係止ボール11が臨むボール溝13a、13bを外周域に備えたロックピン9を切換機構部12の貫通孔12aを貫通して設けることにより、該ロックピン9の先端に設けた円盤状の係止ピン14を、ボール溝13a、13bで位置決めされる突出位置と縮入位置とに切り換えるようになっている。15はロックピン9の後端に設けられて、ロックピン9を押し引きする連結杆である。したがって、ロックピン9を図2(a)の状態にあっては、日除け装置9の脚部8bである内筒8b1と外筒8b2がロックピン9でロックされることにより、日除け装置9が作業者の頭上を覆うことが可能となる。また、図2(b)の状態にあっては、後述する図3に示すサイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bとシフターアーム17間に設けた連動切換え機構18がワイヤ15aで連結された状態になっているので、機体の旋回操作に連動して、日除け装置9を支持する脚部8bの内筒8b1と外筒8b2とのロックが解除されることにより日除け装置9が内筒8b1と外筒8b2の間に生じた間隙に設けた弾機Dによって機体前方に回動することになる。
尚、再度、日除け装置9を作業者の頭上を覆うようにするには、手動で2つの操作をした後、ロックピン9を再度、貫通孔12aに貫通させることで行うことが出来る。
【0013】
また、ルーフ部8cは左右のルーフパイプと、左右のルーフパイプを連結する連結パイプとからなる。支持フレーム8は、一例としてアルミニウム製パイプなどの軽量材で形成することで軽量化を図った部材である。
【0014】
この支持フレーム8は、ハンドル6(左右のハンドル6a、6b)に取付けるために、当接部(すなわち、左右の当接パイプ)を固定具7で左右のハンドル6a、6bに固定したものである。加えて、支持フレーム8は、作業者の頭部上方に日除け装置9を配置するために、日除け装置9を支持フレーム8のうちの少なくともルーフ8c部(上面、左右、前面を遮光性のビニールシート)に取り付けたものである。
【0015】
さらに、上記車輪3a、3bは、エンジン2の駆動出力を伝達するミッションケース4aのサイドクラッチ機構16と、二次伝動機構17を介して図示しない車軸に軸支されており、左右のハンドル6a、6bにはサイドクラッチレバー18a、18bが設けられている。また、該ハンドル6a、6bの上方位置にはリフトレバー19a、19bと一体に回動するブラケット20a、20bが固定軸21に取付けられており、該ブラケット20a、20bには長孔22a、22bが一体に設けられており、該長孔22a、22bに、サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bの中間係止部24a、24bがそれぞれ揺動自在に設けられ、該ワイヤ24a、24bの他端部は後述するシフターアーム25、26に装着されており、前記レバー19a、19bの回動操作により切換逆転駆動し、機体4の回向を行うように構成されている。また、ワイヤ23a、23bの他端部は上述したロックピン9の一端にロッド15にワイヤ15aを介して連結している。
【0016】
そして、図9に示すようにミッションケース4aにはボール穴4bが設けられており、該穴4bにはボール4cが設けられており、そして、シフターアーム25、26がサイドクラッチ「切り」位置「B」の時、切欠穴25cに嵌合してサイドクラッチ「切り」位置「B」が認識出来るように構成されている。
【0017】
なお、機体4の方向微調整はハンドル6、6の左右に設けられたサイドクラッチレバー18a、18bの把握操作によって、サイドクラッチ・リフト兼ワイヤ19a、19bを引張操作することによって該ワイヤ23a、23bの係止部24a、24bはブラケット120a、20bの長孔内22a、22bを移動して、サイドクラッチギヤ37、38が伝動ギヤ34のクラッチ噛合部34a、34bから逆転伝動体35、36の逆転クラッチ噛合部35a、36a側に摺動退避させることにより、左右いずれかのサイドクラッチ機構16を「切り」位置にして方向調整を行うことができる。
なお、サイドクラッチレバー18a、18bの操作では、前述した二次伝動機構17を作動や日除け装置9の回動操作をさせる一連の操作を行うことは出来ず、一連の操作を行うためには、必ず、サイドクラッチ・リフト兼ワイヤ19a、19bの操作を行わなければならないようにロッド15に連結されたワイヤ15aのストロークを予め調整している。
【0018】
なお、サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bとシフターアーム25、26間には、図2で示した機構と同様な機構である図3に示す連結機構が設けられている。
すなわち、サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bの先端部とシフターアーム25、26との間に、シフターアーム25、26の外周には、圧縮弾機27およびこれに付勢される係止ボール28を内装した連結機構部29と貫通孔29aが併設されており、上記係止ボール28が臨むボール溝30a、30bを外周域に備えた連結ピン31を連結機構部29が固設されており、該切換機構部29には、貫通孔29aを貫通して設けることにより、該連結ピン31の先端に設けた円盤状の係止ピン32を、ボール溝30a、30bで位置決めされる突出位置と縮入位置とに切り換えるようになっている。33は連結ピン31の後端に設けられて、連結ピン31を押し引きする連結杆である。したがって、連結ピン31を図3(a)の状態にあっては、サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bの先端部とシフターアーム25,26とが連結ピン31で連結されることにより、機体の旋回操作に連動させてシフターアーム25、26を回動させることが可能となる。また、図3(b)の状態にあっては、サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bとロッド15が連結ピン31によっての連結が解除されることにより、機体の旋回操作に連動してのシフターアーム25、26の回動を行うことを不能としている。
【0019】
さらに、機体の旋回操作に関係なく、日除け装置9を任意な時に前方へ折り畳むように図2のロック機構に取付けられたワイヤ15aを外しておくことによって、日除け装置9を日除け装置9の正規姿勢と機体前方へ折り畳んだ状態(図1参照)とに姿勢変更可能に構成することも可能である。
【0020】
上記サイドクラッチ機構16は図8に示す如く、伝動軸33に、クラッチ噛合部34a、34bを形成した伝動ギヤ34と、逆転クラッチ噛合部35a、36aおよび逆転ギヤ部35b、36bを各々形成した逆転伝動体35、36を枢支し、上記伝動ギヤ34と各逆転伝動体35、36との中間部にはサイドクラッチギヤ37、38が常時は付勢弾機37a、38aにより伝動ギヤ34のクラッチ噛合部34a、34b側に噛合され、かつ軸方向摺動自在に枢着されていると共に、上記サイドクラッチギヤ37、38の内周面には、シフト溝39a、40aを周設した切換制御体39、40が嵌装されており、該シフト溝39a、40aに係合するシフター25a、26aを備えたシフターアーム25、26が、シフターアーム軸25b、26bに回動自在に枢着され、サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bを介してサイドクラッチレバー18a、18bに接続され、該クラッチレバー18a、18bの把持操作により、上記サイドクラッチギヤ37、38を軸方向に摺動作動するように構成されている。
【0021】
叙上の如き構成において、耕耘作業時に機体4の左回向を行う場合には、回向内側のリフトレバー19bを「A」位置から「C」位置に回動操作すると、サイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23bの係止部24bがブラケット20bの長孔22b前方に接当し、該ブラケット20bは固定軸21を中心としてワイヤ23bをさらに引張ることによって、シフターアーム26を回動させ、サイドクラッチギヤ38が伝動ギヤ34のクラッチ嚙合部34bからサイドクラッチギヤ38が逆転ギヤ部36bの逆転クラッチ噛合部36aに噛合し、逆転伝動体36の逆転クラッチ噛合部36aを介して逆転駆動力がサイドクラッチギヤ38に伝動され、二次伝動機構17を介して左車軸が逆回転駆動され、回向内側の左車輪3bが逆転駆動状態となり、耕耘機1は右車輪3aの正回転駆動と運転操作ハンドル6の回向操作により、速やかに左方に回向される。
その際、図2に示す日除け装置9を支持している脚部8bの内筒8b1と外筒8b2とをロックしているロックピン9がワイヤ15aを介してロッド15が引っ張られることにより外れ、外筒8b2に対して内筒8b1が弾機Dで前方へ回動することで、日除け装置9を支持しているルーフ部8c毎一体的に作業者の頭上から外れる。
また、機体の旋回操作に連動して日除け装置9を機体前方へ回動させることを説明したが、別途、図3に示すサイドクラッチ・リフト兼用ワイヤ23a、23bとロッド15間に設けた連動切換え機構を「切り」にしておくことで、機体の旋回操作に関係なく、常時、日除け装置9を作業者の頭上に置くことも可能である。
【0022】
次いで上記機体4の左方回向操作を終了して、作業機1を直進走行状態に復帰させる場合に、回動操作した回向内側のリフトレバー19bを緩めると、クラッチ機構16サイドクラッチギヤ37が伝動ギヤ34のクラッチ噛合部34bに噛合して通常の正回転駆動に復帰し、二次伝動機構17を介して回向内側の左車輪3bは右車輪3aと同様に正回転駆動に復帰し、機体4は直進サイドクラッチ切換操作に伴う、回向内側車輪の正転駆動を円滑かつ確実に行うことができる。
【0023】
これを要するに本発明は、機体から後方へ延びたハンドル6を設け、作業者が前記ハンドル6を握りながら追従して歩行する歩行型の作業機において、前記ハンドル6に支持フレーム8を取付け、この支持フレーム8に日除け装置9を設けることにより、この日除け部9を前記作業者の頭上に配置すると共に、前記日除け装置9を、支持フレーム8と一体的に機体前方へ回動自在に構成したことにより、日除け装置9の必要がなくなった時点、例えば、作業終了後の納屋等での保管時には、日除け装置9を支持する支持フレーム8と一体的に機体前方へ回動させることで、格納時に邪魔になることなく保管することができる。
また、機体の旋回操作に連動して日除け装置9の機体前方への回動操作を行うようにしたことにより、機体旋回時に邪魔になりやすい日除け装置9を旋回操作に併せて機体前方へ回動退避させておくことで、耕耘作業を効率よく行うことが出来るという極めて有用な実用的効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0024】
1 歩行型作業機
6 ハンドル
8 支持フレーム
9 日除け装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体から後方へ延びたハンドルを設け、作業者が前記ハンドルを握りながら追従して歩行する歩行型の作業機において、前記ハンドルに支持フレームを取付け、この支持フレームに日除け装置を設けることにより、この日除け装置を前記作業者の頭上に配置すると共に、前記日除け装置を、支持フレームと一体的に機体前方へ回動自在に構成したことを特徴とする歩行型作業機の日除け装置。
【請求項2】
機体の旋回操作に連動して日除け装置の機体前方への回動操作を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の歩行型作業機の日除け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−41479(P2011−41479A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189923(P2009−189923)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】