説明

歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造

【課題】嵩張るブラケットを機体フレームの側面に取り付ける必要のない車輪保全用スタンド取付構造を提供する。また、取り付けが容易な歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造を提供する。
【解決手段】歩行型作業機の機体フレーム20の側部20Sに形成した挿通孔20Hに横向きに抜き差し自在な差し込みロッド26と、差し込みロッド26に対して歩行型作業機の前後方向に沿った軸心X廻りで枢支されたスタンドバー27と、スタンドバー27を差し込みロッド26に対して歩行型作業機の横外方向に付勢する付勢部材28と、横方向に付勢されたスタンドバー27の先端の接地部29Aの横外方向への突出範囲を制限するように、機体フレーム20とスタンドバー27との間に設けられた制限手段40Bとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型作業機の左右の一方の車輪を地面から浮き上がらせた状態で保持することで、車輪の交換やトレッド調整などのメンテナンスを実施するための歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の耕耘機などを含む歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された歩行型作業機では、下方に開口部を備え、上端を閉じられた箱型のブラケットが機体フレームの側面に取り付けられ、下端に接地部を備えた棒状のスタンドバーの上端を同ブラケットに下方から差し込む形態で車輪保全用スタンドが取り付けられる。ブラケットの上端に形成された小孔からは、スタンドバーの上端から上向きに延びた小径部のみが抜け出るので、小径部の側面に形成された細孔にピンを挿通すれば、スタンドバーの脱落が防止される構成となっている。また、スタンドバーの上端から少し下方に側方に突出した突部を設けてあり、この突部がブラケットの下端部外方側内面に当接するようにスタンドバーの上端を差し込むことによって、スタンドバーが鉛直状に近い姿勢となり、歩行型作業機の傾斜角度(保全の対象となる車輪の上昇高さ)を増加させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平03−044609号公報(第3欄〜第4欄、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記された車輪保全用スタンド取付構造では、比較的嵩張る頑丈なブラケットを機体フレームの側面に取り付けておく必要があった。
また、特許文献1に記された車輪保全用スタンド取付構造では、作業者がスタンドバーの上端を同ブラケットに下方から差し込む際には、スタンドバーの上端がブラケット内に隠れて見えない状態で、同上端の小径部をブラケットの上端に形成された小孔に挿通させる作業内容となるため、取り付け作業に手間取る虞があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、従来技術による車輪保全用スタンド取付構造が与える課題に鑑み、嵩張るブラケットを機体フレームの側面に取り付ける必要のない歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造を提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、従来技術による車輪保全用スタンド取付構造が与える課題に鑑み、取り付けの容易な歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造の特徴構成は、
歩行型作業機の機体フレームの側部に形成した挿通孔に横向きに抜き差し自在な差し込みロッドと、
前記差し込みロッドに対して歩行型作業機の前後方向に沿った軸心廻りで枢支されたスタンドバーと、
前記スタンドバーを前記差し込みロッドに対して歩行型作業機の横外方向に付勢する付勢部材と、
横方向に付勢された前記スタンドバースタンドバーの先端の接地部の横外方向への突出範囲を制限するように、前記機体フレームと前記スタンドバーとの間に設けられた制限手段と、を有する点にある。
【0008】
上記の特徴構成による歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造では、嵩張るブラケットを機体フレームの側部に取り付ける必要がないため、歩行型作業機の軽量化に役立ち、耕作地の土などが付着する箇所が従来に比して少なくなる点でも好都合である。
【0009】
また、上記の特徴構成による歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造では、車輪保全用スタンドを使用する際には、先ず、スタンドバーを両手などで持ったまま、差し込みロッドを機体フレームの側部の挿通孔に差し込み、引き続き、スタンドバーを歩行型作業機の幅方向の中心寄りに揺動させながら、制限手段をスタンドバーの先端の接地部の横外方向への突出範囲を制限する作用状態にして、そこでスタンドバーを持つ手を緩めれば、付勢部材の作用で自然にスタンドバーの一部が制限手段に押付けられて、スタンドバーの姿勢が安定し、車輪保全用スタンドの取り付けが完了する。この取り付けのための一連の操作では、機体フレームの側部の挿通孔と制限手段とはいずれも作業者が若干屈むだけで見える位置にあるので、従来技術に比して取り付け作業は容易となる。
【0010】
また、特許文献1に記された車輪保全用スタンド取付構造では、作業者がスタンドバーの上端を同ブラケットに下方から差し込む作業の最初の段階から、少なくとも保全すべき車輪が地面から浮き上がる程度まで、別の作業者などの手で継続的に歩行型作業機を傾斜させておく必要があった。
しかし、本発明による車輪保全用スタンド取付構造では、差し込みロッドを機体フレームの側部の挿通孔に差し込むという、作業者が最初に行う操作は、歩行型作業機を全く傾斜させない姿勢でも実施でき、挿通孔への差し込み完了後に、別の作業者などの手で歩行型作業機を傾斜させた状態で、制限手段を作用状態にすればよい。この方法をとれば、歩行型作業機を傾斜姿勢に保っておく時間を短くできるため、取り付け作業が更に容易となる。
【0011】
本発明の他の特徴構成は、前記制限手段は、前記スタンドバーを係止可能なように前記機体フレームの一部から側方に延出されたフック状部材からなる点にある。
【0012】
本構成であれば、差し込みロッドを機体フレームの側部の挿通孔に差し込んだ後で、差し込みロッドを同挿通孔の中で回転させながら、スタンドバーの一部をフック状部材の開口部からフック状部材の内部に案内することで、スタンドバーを制限手段としてのフック状部材に容易に係止させることができる。
【0013】
本発明の他の特徴構成は、前記差し込みロッドの長手方向に沿って複数の係止孔が並設されており、前記係止孔の一つに選択的に係入されて、前記機体フレームの前記側部と当接可能なピン状部材が備えられている点にある。
【0014】
本構成であれば、車輪保全用スタンドを使用する際に、最初に先ず、選択した係止孔にピン状部材を係入しておき、後は差し込みロッドをピン状部材が機体フレームの側部に当たるまで側部の挿通孔に差し込み、スタンドバーを制限手段に案内し、付勢部材の作用でスタンドバーの一部が制限手段に押付けられた状態とすれば、選択した係止孔の位置に応じて、スタンドバーの挿通長さと、スタンドバーの機体フレームに対する傾斜角度が調整される。
取り付け完了後の車輪保全用スタンドバーに歩行型作業機の自重を預けた際の歩行型作業機の傾斜角度は、スタンドバーの機体フレームに対する傾斜角度によって決まるので、どの係止孔にピン状部材を係入するかで、保全すべき車輪の地面からの上昇レベルを従来技術に比して細かく調整できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】歩行型作業機の全体左側面図である。
【図2】エンジンフレームに取り付けた車輪保全用スタンドの斜視図である。
【図3】車輪保全用スタンドを取り付けたエンジンフレームの側面図である。
【図4】車輪保全用スタンドを左側に取り付けた歩行型作業機の要部平面図である。
【図5】車輪保全用スタンドによって前傾姿勢とした歩行型作業機の要部正面図である。
【図6】車輪保全用スタンドによって前傾姿勢とした歩行型作業機の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(歩行型作業機の全体構成)
図1及び図2に示すように、歩行型作業機は、駆動源となるエンジン1と、走行機体として兼用される伝動ケースとしてのミッションケース2と、走行装置の一例である左右の車輪3と、ロータリ耕耘装置4と、後方に延出された一対の操縦ハンドル5とを備えて構成されている。尚、図1は歩行型作業機が後述する車輪保全用スタンド25を用いて前傾姿勢に保持された状態を示している。
【0017】
ミッションケース2は、下方に延出された前部ケース2Aと、斜め後方下方に延出された後部ケース2Bとを備えた二股状に構成されている。前部ケース2Aの下部から駆動軸6が左右に延出されており、この駆動軸6の左右両端部に左右の車輪3が装着されている。後部ケース2Bの下部から左右に回転軸7が延出されており、この回転軸7に複数の耕耘爪8が装着されてロータリ耕耘装置4が構成されている。
【0018】
ロータリ耕耘装置4の少なくとも上半分は、上方と外側方からロータリカバー9で覆われている。ロータリカバー9はミッションケース2の後部ケース2Bの前後中間位置の両側部に固定されている。
ロータリカバー9の後端部中央には、角パイプ状の上下に開口したボス部9Cが形成されており、このボス部9Cに上下に長い帯板状の抵抗棒10が上下位置調節可能に取り付けられて、この抵抗棒10によって耕耘爪8の耕耘深さを設定することができる。
【0019】
抵抗棒10の下端部には、板状のブラケット11が後方に延出されており、このブラケット11によって抵抗棒10が耕地面に食い込み過ぎることを防止できる。ブラケット11には、非作業時移動用車輪(不図示)が着脱可能に取り付けられており、ブラケット11に非作業時移動用車輪を後方から差し込み装着することで、車輪3と非作業時移動用車輪との協働でロータリ耕耘装置4を浮上させた状態で歩行型作業機を移動できるように構成されている。
【0020】
ミッションケース2を構成する前部ケース2Aの前端部から前方にエンジンフレーム20が延出されており、このエンジンフレーム20にエンジン1が搭載されている。エンジン1とミッションケース2はベルト伝動機構13を介して連動連結されており、テンションクラッチレバー16を操作することによりエンジン1からミッションケース2への動力の伝達の断接操作を行うことができる。
【0021】
ミッションケース2の後部ケース2Bの上部から斜め後方上方に向って、操縦ハンドル5が左右方向の軸心周りに上下位置調節可能に取り付けられており、この操縦ハンドル5の右側にクラッチレバー14及び停止スイッチ15が配設され、さらに操縦ハンドル5の後端側に上下揺動可能にテンションクラッチレバー16が配設されている。クラッチレバー14は、ミッションケース2内のロータリ耕耘装置4用のクラッチ(図示せず)の断接操作用として、ミッションケース2上部の操作アーム(図示せず)に連係されている。停止スイッチ15はエンジン1の停止操作用としてエンジン1に配線されている。
【0022】
ミッションケース2の上部から斜め後方上方に主変速レバー17が延出されており、この主変速レバー17を操作することにより、車輪3の変速操作及び正逆転操作、並びにロータリ耕耘装置4の正逆転操作を行うことができる。
【0023】
エンジン1及びミッションケース2の上部には、燃料タンク30が配設されている。燃料タンク30は燃料タンクカバー31及び開閉カバー32で覆われている。また、燃料タンクカバー31とロータリカバー9とに亘って後部カバー33が装着されており、エンジン1とミッションケース2とに亘って設けられたベルト伝動機構13はベルトカバー34によって覆われている。
【0024】
エンジンフレーム20及びミッションケース2の両側部には、左右の車輪3の上方を覆うフェンダ18が固定されており、歩行型作業機を走行させることによって巻き上げられた土や泥等が、車輪3の上方及び後方に位置する機器や後方で作業する作業者等に飛散しないように構成されている。また、エンジンフレーム20の先端からはガード部材21が斜め上向きに突設されている。ガード部材21はバランスウェイトの役目を兼ねている。
【0025】
(車輪保全用スタンドの構成)
本発明による歩行型作業機では、図1、図5、図6に例示するように、車輪保全用スタンド25を用いて、左右の車輪3の一方を地面から浮き上がらせた傾斜姿勢で保持することができる。この傾斜姿勢では、車輪3をサイズの異なるものと交換する、或いは、左右の車輪3のトレッドを調整するなどのメンテナンス作業を実施可能である。
必要に応じて車輪保全用スタンド25を歩行型作業機に取り付けるための車輪保全用スタンド取付構造は、以下の構成となっている。
【0026】
図5に例示するように、エンジンフレーム20(機体フレームの一例)はコ字状に曲げ加工された鋼板からなり、水平に延出した天井部20Pと、天井部20Pの左右両端から下方に延出した一対の側壁部20S(側部の一例)とを有する。
図2に示すように、エンジンフレーム20の左右の側壁部20Sには車輪保全用スタンド25のための挿通孔20Hが形成されている。また、図4に示すように、エンジンフレーム20の下面には両端にフック状部材40A,40B(制限手段の一例)を備えたロッド部材40が概して水平方向に固定されており、各フック状部材40A,40Bは、平面視でJ字状またはU字状に形成され、フックの開口部が前方向きとなる姿勢で左右一対のエンジンフレーム20の側壁部20Sから左右外向きに延出されている。
【0027】
車輪保全用スタンド25は、挿通孔20Hに横向きに抜き差し自在な差し込みロッド26と、差し込みロッド26に対して歩行型作業機の前後方向に沿った軸心X廻りで枢支されたスタンドバー27と、スタンドバー27を差し込みロッド26に対して歩行型作業機の横方向に付勢する引っ張りコイルバネ28(付勢部材の一例)とを有する。
【0028】
車輪保全用スタンド25を取り付けるための工程の初期の一部は、左右の車輪3及びロータリ耕耘装置4(又はブラケット11に差し込み装着した非作業時移動用車輪)の全てを同時に接地させたままで行うことができる。
取り付けの一般的な手順としては、先ず、保全対象となる車輪3の側(図1では左側)の挿通孔20Hに差し込みロッド26を挿通する(この操作は、左右の車輪3及びロータリ耕耘装置4(又は非作業時移動用車輪)の全てを同時に接地させたままで実施できる)。
【0029】
次に、別の作業者が例えば操縦ハンドル5などを利用して保全対象となる車輪3を地面から所定量だけ持ち上げている間に、差し込みロッド26を挿通孔20H内で回転させながら、スタンドバー27の一部を、前述したフック状部材40B(40A)の開口部からフックの中に前方側から導いて、フック状部材40B(40A)と係合させればよい。
【0030】
フック状部材40B(40A)は、横方向に付勢されたスタンドバー27とこのように係合することで、スタンドバー27の先端に位置する接地部29Aの横方向への突出範囲を制限する働きをする。スタンドバー27をフック状部材40B(40A)と係合させた後は、別の作業者が車輪3を地面から持ち上げる力を次第に緩めることで、スタンドバー27の接地部29Aが接地させることができる。この状態では、歩行型作業機は、右側の車輪3と車輪保全用スタンド25のスタンドバー27とロータリ耕耘装置4(又は非作業時移動用車輪)とで接地されている。
【0031】
スタンドバー27の上端には互いに対向する一対の保持プレート27Aが溶接固定されている。差し込みロッド26とスタンドバー27の間の枢支連結は、これらの保持プレート27Aの上端付近に形成された貫通孔と、差し込みロッド26の基端寄りに形成された貫通孔とに同時に挿通された軸部材27Bによって実現されている。
【0032】
差し込みロッド26は、挿通孔20Hに挿通される第1部位26Aと、第1部位26Aの基端からエンジンフレーム20に対して外側に向かって斜め上方に延出された第2部位26Bとを備える。
引っ張りコイルバネ28の上端は、差し込みロッド26の第2部位26Bの下面に溶接固定された頭付きの第1棒状部材B1に係止されており、引っ張りコイルバネ28の下端は、スタンドバー27の側面から横向きに立設された頭付きの第2棒状部材B2に係止されている。
【0033】
差し込みロッド26の長手方向に沿って複数の係止孔26Hが等間隔で並設されており、係止孔26Hの一つに選択的に挿通されたピン状部材26pが機体フレーム20の側壁部20Sと当接することによって、差し込みロッド26の挿通孔20Hに対する挿通長さが決定される。したがって、どの係止孔26Hにピン状部材26pを挿通するかで、差し込みロッド26の挿通孔20Hに対する挿通長さが決定され、スタンドバー27の機体フレーム21に対する傾斜角度が決定されることになる。
【0034】
スタンドバー27の下端には、筒状のカバー部材29がスタンドバー27に対してスライド自在に外嵌設置されている。カバー部材29の下端は円盤状の接地部29Aによって閉じられている。カバー部材29にはその長手方向に沿って複数の係止孔29Hが等間隔で並設されている。選択した係止孔29Hとスタンドバー27の下端に形成された貫通孔(不図示)とに亘ってピン状部材29pを挿通することで、スタンドバー27とカバー部材29の間の相対位置が決定される。したがって、どの係止孔29Hにピン状部材29pを挿通するかで、カバー部材29を加えたスタンドバー27の実質的な長さを調整することができる。
【0035】
このように、先ず、差し込みロッド26をエンジンフレーム20の左側の挿通孔20Hに挿通し、係止孔26Hに挿通したピン状部材26pがエンジンフレーム20の側壁部20Sに当接させ、引っ張りコイルバネ28の付勢力を利用してスタンドバー27の一部を左側のフック状部材40Bと係合させると、図2及び図3に例示するように、車輪保全用スタンド25の取り付けが完了する。この図2及び図3に示す状態ではスタンドバー27は側面視で上下向きの姿勢となる。
【0036】
この状態から、先端のガード部材21が接地されるまで、一対の操縦ハンドル5を利用して後部を持ち上げていくと、図1に示すように、歩行型作業機が、右側の車輪3と車輪保全用スタンド25のスタンドバー27と、ガード部材21との3点を介して接地され、左側の車輪3が地面から引き上げられた左車輪保全用の前傾姿勢が得られる。この図1に示す状態ではスタンドバー27は側面視で後方下方向きの傾斜姿勢となる。
右側の車輪3を保全する際には、同じ要領で、初めに差し込みロッド26をエンジンフレーム20の右側の挿通孔20Hに挿通し、スタンドバー27の一部を右側のフック状部材40Aと係合させるとよい。
【0037】
図5と図6は、車輪保全用スタンド25によって前傾姿勢とした歩行型作業機の要部正面図である。図5と図6を比較すると、ピン状部材26pを挿通した係止孔26Hによる歩行型作業機の傾斜度合いの違いがわかる。
差し込みロッド26の第1部位26Aには合計で3個の係止孔26Hが形成されており、図5は、最も第2部位26B寄りの係止孔26Hにピン状部材26pを挿通した場合を示し、図6は、最も第2部位26Bから離間した位置の係止孔26Hにピン状部材26pを挿通した場合を示す。
【0038】
図5と図6から理解されるように、スタンドバー27と係止されるフック状部材40A,40Bの作用によって、差し込みロッド26の先端寄りの係止孔26Hにピン状部材26pを挿通するほど、言い換えれば、挿通孔20Hに対する差し込みロッド26の挿通深さが浅いほど、スタンドバー27の下端部の歩行型作業機側方への張り出しが少なくなるため、車輪保全用スタンド25による前傾姿勢における歩行型作業機の正面視での傾斜度合いが大きくなり、結果として、保全対象となる車輪3の浮き上がり量が増大する。
【0039】
もちろん、スタンドバー27の下端からのカバー部材29の延出量を変更する操作によっても、車輪保全用スタンド25による歩行型作業機の傾斜度合いと、保全対象となる車輪3の浮き上がり量とを調整することができる。
【0040】
〔別実施形態〕
〈1〉端部にフック状部材40A,40Bを備えたロッド部材40をエンジンフレーム20の下面に取り付ける代わりに、エンジンフレーム20の一部を側方に折り曲げ、同折り曲げ部の一部にフック状の部位を切り欠き形成することで、横方向に付勢されたスタンドバー27と係合することで、スタンドバー27の先端の接地部29Aの横方向への突出範囲を制限する制限手段としてもよい。
【0041】
〈2〉また、フック状部材をエンジンフレーム20に対して揺動自在に支持させておき、車輪保全用スタンド25を用いない場合には、エンジンフレーム20の内側などに畳み込むように収納できる構成としてもよい。
【0042】
〈3〉スタンドバー27の一部にリンクまたはワイヤなどを介してフック状部材(制限手段の一例)を吊架させ、エンジンフレーム20に形成したU字環や貫通孔(いずれも制限手段の一例)に対して、このようなフック状部材を必要に応じて係止させる形態で実施してもよい。
【0043】
〈4〉引っ張りコイルバネ28の代わりに、スタンドバー27を差し込みロッド26に対して揺動付勢するネジリコイルバネを軸部材27Bに設けてもよい。
【0044】
〈5〉スタンドバー27が軸部材27Bなどで差し込みロッド26に枢支された構成を略し、スタンドバー27と差し込みロッド26とを、スタンドバー27を差し込みロッド26に対して揺動付勢する板バネ部材によって連結した構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
歩行型作業機の左右の一方の車輪を地面から浮き上がらせた状態で保持することで、車輪の交換やメンテナンスを実施するための歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造として利用できる。
【符号の説明】
【0046】
3 車輪
5 操縦ハンドル
20 エンジンフレーム(機体フレーム)
20H 挿通孔
20S 側壁部(側部の一例)
21 ガード部材
26 差し込みロッド
26A 第1部位
26B 第2部位
26H 係止孔
26p ピン状部材
27 スタンドバー
27A 保持プレート
27B 軸部材
28 引っ張りコイルバネ(付勢部材)
29 カバー部材
29A 接地部
29H 係止孔
29p ピン状部材
40 ロッド部材
40A フック状部材(制限手段)
40B フック状部材(制限手段)
B1 第1棒状部材
B2 第2棒状部材
X 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行型作業機の機体フレームの側部に形成した挿通孔に横向きに抜き差し自在な差し込みロッドと、
前記差し込みロッドに対して歩行型作業機の前後方向に沿った軸心廻りで枢支されたスタンドバーと、
前記スタンドバーを前記差し込みロッドに対して歩行型作業機の横外方向に付勢する付勢部材と、
横外方向に付勢された前記スタンドバーの先端の接地部の横方向への突出範囲を制限するように、前記機体フレームと前記スタンドバーとの間に設けられた制限手段と、を有する歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造。
【請求項2】
前記制限手段は、前記スタンドバーを係止可能なように前記機体フレームの一部から側方に延出されたフック状部材からなる請求項1に記載の歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造。
【請求項3】
前記差し込みロッドの長手方向に沿って複数の係止孔が並設されており、前記係止孔の一つに選択的に係入されて、前記機体フレームの前記側部と当接可能なピン状部材が備えられている請求項1または2に記載の歩行型作業機の車輪保全用スタンド取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191888(P2012−191888A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58212(P2011−58212)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】