説明

歩行型田植機

【課題】 走行機体の前部に位置するミッションケース、走行機体の後部に位置する操縦部を備えた歩行型田植機において、ミッションケースを操縦部から容易にかつ軽く操作することができるようにし、かつ、ミッションケースの操作部を操縦部の操作具に連動させる連動機構を構造簡単に得ることができるようにする。
【解決手段】 ミッションケース21の主クラッチ操作部を、走行機体前後向きの連動部材83などを備えた連動機構80を介して操縦部の主クラッチ操作具71に連動させてある。連動部材83を、走行機体の後部に位置する植付けミッションケース24の横側面側に設けたケース凹入部を走行機体前後方向に挿通するように配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに連動されたミッションケースを、走行機体の前部に設け、苗植付け機構、苗載せ台、前記ミッションケースから動力伝達されて前記苗植付け機構及び苗載せ台を駆動する植え付けミッションケースを備えた苗植え作業部を、前記走行機体の後部に設け、操縦ハンドルを備えた操縦部を、前記植え付けミッションケースよりも走行機体後方側に設けた歩行型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記歩行型田植機として、従来、たとえば特許文献1に示されるように、ミッションケース3、植付けミッションケースとしての植付爪駆動用ミッションケース7、苗植付け機構としての植付爪6、苗載せ台5、操縦ハンドル9を備えたものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−231707号公報(段落〔0007〕−〔0008〕、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記歩行型田植機において、ミッションケースの伝動機構の操作を操縦部にて容易に行なうことができるように、ミッションケースの操作部に連動された操作具を操縦部に設けるに当たり、ミッションケースと操縦部の間に植付けミッションケースが存在していることから、ミッションケースの操作部を操縦部の操作具に連動させる連動手段を、植付けミッションケースの横側方や下方を通って植付けミッションケースを迂回するようにして配置すると、その迂回にかかわらず操作力が伝達されるように揺動リンクや、湾曲した連動ロッドを備えさせる必要があり、連動構造が複雑になっていた。また、操作が重くなりやすくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、ミッションケースの操作が操縦部にて容易に行なうことができながら、連動手段の面から構造簡単に得ることができるとともに軽く操作することができる歩行型田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、エンジンに連動されたミッションケースを、走行機体の前部に設け、苗植付け機構、苗載せ台、前記ミッションケースから動力伝達されて前記苗植付け機構及び苗載せ台を駆動する植え付けミッションケースを備えた苗植え作業部を、前記走行機体の後部に設け、操縦ハンドルを備えた操縦部を、前記植え付けミッションケースよりも走行機体後方側に設けた歩行型田植機において、
前記植え付けミッションケースの横側面がわに走行機体横外側に向かって開口したケース凹入部を設けるとともに、前記ミッションケースの操作部を前記操縦部に位置する操作具に連動させる連動部材を、前記ケース凹入部を走行機体前後方向に挿通する状態で配置してある。
【0007】
すなわち、ミッションケースの操作部を操縦部に位置する操作具に連動させたものであるから、操縦部にて操作具を操作することにより、ミッションケースの操作部を作動させてミッションケースの伝動機構を操作することができる。
【0008】
ミッションケースの操作部を前記操作具に連動させる連動部材を、植付けミッションケースの前記ケース凹入部を走行機体前後方向に挿通する状態で配置してあるものだから、植付けミッションケースとの干渉を回避するための湾曲部や揺動リンクを不要にした状態でミッションケースの操作部と、操縦部の操作具とを連動させることができる。
【0009】
また、ミッションケースに凹入部を設けることにより、ミッションケースに入れる潤滑油の量を少なく済ませながら油面高さが所定高さになるようにしてミッションケース内に潤滑油を貯留することができる。
【0010】
従って、本第1発明によれば、操縦部で操作具を操作することによってミッションケースの伝動機構を容易に操作して楽に作業を行なうことができるものでありながら、ミッションケースの操作部を操作具に連動させる連動機構を、前記干渉回避のための湾曲部や揺動リンクが不要な構造簡単なものにして、安価に得ることができるとともに、連動機構に起因する操作抵抗が少なくなって軽く操作することができる。
【0011】
また、ミッションケース内に潤滑油を所定の油面高まで供給して潤滑不良の発生を回避することができながら、ミッションケース及び潤滑油の重量面から軽量化することができる。
【0012】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記植え付けミッションケースが前記苗載せ台の走行機体前方側に位置し、前記植え付けミッションケースの苗載せ台用駆動機構が内部に位置する上部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔が、前記植え付けミッションケースの苗植付け機構用駆動機構が内部に位置する下部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔よりも大になるように前記植え付けミッションケースを形成してある。
【0013】
すなわち、苗載せ台に載置された苗が苗載せ台の下端側において苗載せ台と植付けミッションケースの間に位置して苗植付け機構に供給されるものであり、苗植付け機構を小型化しても、苗植付け機構の植付け爪が苗載せ台の下端部に位置する苗に届いて苗取り出しが行なわれるように植付けミッションケースと苗載せ台とを寄り合った状態にすると、植付けミッションケースの構造によっては、苗載せ台の下端側に位置した苗の葉が植付けミッショケースに接触しやすくなる。本第2発明にあっては、植付けミッションケースの上部ケース部と苗載せ台との間隔が、下部ケース部と苗載せ台との間隔よりも大になるように植付けミッションケースを形成してあるものだから、苗載せ台の下端側に位置した苗の葉が植付けミッションケースの上部ケース部に接触する事態を発生しにくくしながら、植付けミッションケースと苗載せ台とを寄り合った状態にすることができる。
【0014】
従って、本第2発明によれば、苗植付け機構の駆動振動の抑制を図るなど苗植付け機構を小型化しても、植付けミッションケースの上記構造により、苗葉が植付けミッションケースに接触して折れたり千切れたりした損傷苗を発生しにくくしながら植付け作業を行なうことができる。
【0015】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において、前記植え付けミッションケースの前記上部ケース部を、前記下部ケース部と別体に構成して下部ケース部の上端面に載置連結するとともに、前記下部ケース部の前記上端面を、走行機体前方側に至るほど配置高さが低くなる前下がり傾斜面に形成することにより、前記上部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔を前記下部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔よりも大にしてある。
【0016】
すなわち、上部ケース部を機体側面視で矩形のケースに作製しても、下部ケース部の上端面が前下がり傾斜面であることにより、上部ケース部での苗載せ台との走行機体前後方向での間隔が、下部ケース部での苗載せ台との走行機体前後方向の間隔よりも大になった状態に植付けミッションケースを作製することができるものである。これにより、植付けミッションケースを上部ケース部と下部ケース部が一体になったケースに作製して、上部ケース部での苗載せ台との間隔が下部ケース部での苗載せ台との間隔よりも大になった状態を植付けミッションケースに備えさせるに比べ、下部ケース部と上部ケース部を別々の構造簡単なケースに作製して植付けミッションケース全体としては容易に作製しながら、上部ケース部での苗載せ台との間隔が下部ケース部での苗載せ台との間隔よりも大になった状態を植付けミッションケースに備えさせることができる。
【0017】
従って、本第3発明によれば、苗植付け機構を小型化しても苗損傷を発生しにくくすることができるように上部ケース部での苗載せ台との間隔が下部ケース部での苗載せ台との間隔よりも大になった状態を植付けミッションケースに備えさせるものでありながら、植付けミッションケース全体を容易に作製して安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、左右一対の駆動自在な車輪1によって自走する走行機体の前端部に、前記車輪1などに動力伝達するエンジン2、エンジン用の燃料タンク3を備えた原動部を設け、前記走行機体の後部に、走行機体の機体フレーム20から後方に延出する操縦ハンドル4などを備えた操縦部A、及び、走行機体の横方向に並ぶ四つの苗植付け機構31などを備えた苗植え作業部30を設け、前記走行機体の下方に、左右車輪1,1の間に位置するセンター接地フロート5、左右車輪1,1の両横外側に分かれて位置する左右一対のサイド接地フロート6を設け、左右車輪1,1の上方に位置する予備苗載せ台7を支柱8を介して走行機体に支持させて、4条植え可能な歩行型田植機を構成してある。
【0019】
この田植機は、稲苗の植付け作業を行なうものであり、エンジン2の下方に位置する油圧式の昇降シリンダ9を伸縮操作すると、この昇降シリンダ9が左右車輪1の車輪支持体に兼用の車輪駆動ケース10を走行機体の機体フレーム20に対して上下に揺動操作して左右車輪1,1を機体フレーム20に対して昇降操作することにより、走行機体を各接地フロート5,6が田面に接地した下降作業状態と、各接地フロート5,6が田面から上昇して離れた上昇非作業状態とに昇降操作する。走行機体を前記下降作業状態にして走行させると、各接地フロート5,6が田面上を滑って整地していき、苗植え作業部30が前記四つの苗植付け機構31によって田面の接地フロート5,6による整地箇所に苗植付けを行なっていく。
【0020】
図2に示すように、走行機体の前部の前記エンジン3の後方近くに設けたミッションケース21、このミッションケース21の前部から前方に延出するエンジン搭載フレーム22、前記ミッションケース21の後部から後方に延出する角形鋼管材で成る伝動ケース23、この伝動ケース23の後端部に連結された植付けミッションケース24、この植付けミッションケース24の両横側部から走行機体横外向きに延出する円筒形の伝動ケース25、前記各伝動ケース25の延出端部に連結された植付け駆動ケース26のそれぞれによって前記機体フレーム20を構成し、前記エンジン搭載フレーム22の上面側に前記エンジン2を設け、前記ミッションケース21の両横側に前記車輪駆動ケース10を介して前記車輪1を支持させてある。
【0021】
図1,2に示すように、操縦ハンドル4は、前記植付けミッションケース24の両横側から走行機体後方上方向きに延出された角形鋼管材で成る基部側ハンドル杆4aと、この左右一対の基部側ハンドル杆4aの延出端部に固定されるとともに左右一対の握り部4cを備えた円形鋼管材で成る先端側ハンドル杆4bとによって構成してある。
【0022】
苗植え作業部30について詳述すると、図2,3,4に示すように、苗植え作業部30は、走行機体の横方向での中心部に位置する前記植付けミッションケース24、この植付けミッションケース24の両横側に位置する前記植付け駆動ケース26、前記植付けミッションケース24の下部ケース24aの両横側に駆動自在に装着した前記苗植付け機構31、前記各植付け駆動ケース26の走行機体内方側の横側に駆動自在に装着した前記苗植付け機構31、前記植付けミッションケース24及び前記各植付け駆動ケース26よりも走行機体後方側で、前記操縦ハンドル4の基部側ハンドル杆4aの上端側部分の前方側近くに設けた一つの苗載せ台32を備えて構成してある。
【0023】
図3,4に示すように、各苗植付け機構31は、植付けミッションケース24や植付け駆動ケース26が駆動回動自在に支持する駆動アーム33に中間部が相対回動自在に連結され、植付けミッションケース24や植付け駆動ケース26が往復揺動自在に支持する揺動アーム34に一端側が相対回動自在に連結された植付けアーム35、この植付けアーム35の他端側に位置する植付け爪36に沿って往復摺動するように植え付けアーム35に摺動自在に支持されるとともに植え付けアーム35の内部に位置する押し出し駆動機構(図示せず)によって摺動駆動されるように構成した苗押し出し具37を備えて構成してある。これにより、各苗植付け機構31は、植付けアーム35が揺動アーム34によって支持される一端側を揺動支点にした状態で走行機体上下方向に往復揺動するように駆動アーム33によって駆動されて、植付け爪36の先端側が苗載せ台32の下端側に位置するガイドレール38に設けてある苗取り出し口38aと、田面との間を回動軌跡Tを描きながら上下に往復移動し、苗取り出し口38aにおいて苗載せ台上のマット状苗から一株分のブロック苗を切断するとともに取り出して下降搬送し、田面に下降すると、そのブロック苗を苗押し出し具37によって植付け爪36から田面の泥土に押し出して植え付け、この苗植付けの後、田面から上昇して苗取り出し口38aに戻るという苗植え運動を行なう。
【0024】
苗載せ台32は、前記複数の苗植付け機構31に各別に供給する複数枚のマット状苗を走行機体横方向に並べて載置するように構成して、かつ、苗載せ台32の上端側ほど走行機体後方側に位置する状態の傾斜姿勢にして、前記各植付け駆動ケース26から走行機体後方向きに延出する支持フレーム11(図4参照)によって支持される前記ガイドレール38などに走行機体横方向に摺動自在に支持されている。苗載せ台32の走行機体横方向に沿うところの苗載せ台横方向に並ぶ複数の苗載置部それぞれの裏面側の苗載せ台縦方向での二箇所に苗縦送り輪体39を設けてある。苗載せ台縦方向での上方側に位置する全ての苗縦送り輪体39も、苗載せ台縦方向での下方側に位置する全ての苗縦送り輪体39もそれぞれ一本の回転支軸39aによって一体回転自在に支持されている。上方側の苗縦送り輪体39と下方側の苗縦送り輪体39が連動して回転するように、上方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aと、下方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aとが無端チェーン(図示せず)によって連動されている。
【0025】
図3,4に示すように、前記植付けミッションケース24は、前記伝動ケース23,25及び前記苗植付け機構31が連結している下部ケース部24aと、この下部ケース部24aとは別体のケースに製作して前記下部ケース部24aの上端面上に載置して連結ボルトによって脱着自在に連結した上部ケース部24bとによって構成してある。前記植付けミッションケース24に、前記上部ケース部24bを走行機体横方向に摺動自在に貫通した苗横送り軸40を設けるとともに、この苗横送り軸40を、苗載せ台32の下端側の両端部から走行機体前方向きに延出している連結部材41に連結し、前記苗横送り軸40の一端側に一体回動自在に設けた苗縦送りアーム42を、苗載せ台32の前記上方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aに一方向回転クラッチ(図示せず)を介して連結された輪体駆動アーム39bに連動ロッド43を介して連動させてある。植付けミッションケース24の前記下部ケース部24aの内部に、前記伝動ケース23及び前記ミッションケース21を介してエンジン2から伝達される駆動力を入力して駆動されて前記苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動する植付け機構用駆動機構50(図5参照)を設け、前記各植付け駆動ケース26の内部に、前記植付けミッションケース内の植付け機構用駆動機構50から前記伝動ケース25を介して伝達される駆動力を前記苗植付け機構31の駆動アーム33に伝達してこの駆動アーム33を駆動するチェーン利用の伝動機構(図示せず)を設け、植付けミッションケース24の前記上部ケース部24bの内部に、前記下部ケース部内の植付け機構用駆動機構50から駆動力を入力して駆動されて前記苗横送り軸40を往復摺動するように駆動し、かつ、苗載せ台32が左右の横送りストロークエンドに到達する都度に苗横送り軸40を回転駆動して苗縦送りアーム42を駆動する苗載せ台用駆動機構60(図5参照)を設けてある。
【0026】
これにより、植付けミッションケース24は、下部ケース部24aの内部に位置する植付け機構用駆動機構50によって植付けミッションケース24の両横側に位置する苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動することによってその両苗植付け機構31,31を前記苗植え運動を行なうように駆動し、各植付け駆動ケース26は、植付け駆動ケース26の内部に位置する伝動機構によって植え付け駆動ケース26の内側に位置する苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動することによってその苗植付け機構31を前記苗植え運動を行なうように駆動する。また、植付けミッションケース24は、上部ケース部24bの内部に位置する苗載せ台用駆動機構60によって苗横送り軸40を摺動駆動するとともに苗縦送りアーム42を揺動駆動することにより、苗載せ台32を前記各苗植付け機構31の駆動に連動させて前記ガイドレール38に沿って走行機体横方向に往復移動するように横送り駆動し、かつ、苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達する都度、苗載せ台32の全ての苗縦送り輪体39を苗縦送り方向に回動駆動する。
【0027】
つまり、苗植え作業部30は、植付けミッションケース24の両横側に装着されている苗植付け機構31を植付けミッションケース24による駆動アーム33の駆動によって前記苗植え運動を行なうように駆動し、各植付け駆動ケース26に装着されている苗植付け機構31を植付け駆動ケース26による駆動アーム33の駆動によって前記苗植え運動を行なうように駆動し、各苗植付け機構31によって苗載せ台32に載置されたマット状苗から一株分のブロック苗を切断して取り出し、田面に下降搬送して泥土部に植え付けるようになっている。
【0028】
そして、植付けミッションケース24による苗横送り軸40の往復駆動によって苗載せ台32を苗植付け機構31の苗植え運動に連動させて走行機体横方向に往復移送し、各苗植付け機構31が苗植付け機構31に供給するべきマット状苗の下端部の横一端側から他端側に向けて順次に一株分のブロック苗を切断して取り出していくように各マット状苗をこのマット状苗に対応する前記苗取り出し口38aに対して走行機体横方向に往復移送するようになっている。また、苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達すると、植え付けミッションケース24による苗縦送りアーム42の駆動によって苗載せ台32の全ての苗縦送り輪体39を回動駆動して、苗載せ台32に載置されている全てのマット状苗を苗植付け機構31による苗載せ台縦方向での取り出し長さに対応した分だけ苗取り出し口38aに向けて縦送りするようになっている。
【0029】
図5,6,7に示すように、植付けミッションケース24の下部ケース部24aの内部に位置する前記植付け機構用駆動機構50は、前記伝動ケース23の伝動軸23aに入力部材51aが連結されたトルクリミッター51、このトルクリミッター51の出力軸51bが一体回転自在に備えている伝動ギヤ52に入力ギヤ53aが噛合った植付けクラッチ53、この植付けクラッチ53の筒軸形の出力部材53bを挿通しているとともにこの出力部材53bに一体回動自在に連結されている植付け駆動軸54、この植付け駆動軸54が一体回転自在に備えている出力スプロケット54aに巻回された伝動チェーン55、この伝動チェーン55に入力スプロケット56aが噛合っている爪側出力軸56、前記伝動チェーン55に入力スプロケット57aが噛合っている苗載せ台側出力軸57を備えて構成してある。
【0030】
すなわち、植付け機構用駆動機構50は、エンジン2から伝動ケース23に伝達された駆動力をトルクリミッター51に入力し、このトルクリミッター51の出力を植え付けクラッチ53を介して植付け駆動軸54に伝達してこの植付け駆動軸54によって植付けミッションケース24の両横側に位置する前記苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動し、前記植付け駆動軸54の駆動力を伝動チェーン55を介して爪側出力軸56に伝達し、この爪側出力軸56の駆動力を爪側出力軸56の一端側から前記伝動ケース25を介して前記一方の植付け駆動ケース26に、爪側出力軸56の他端側から前記伝動ケース25を介して前記他方の植付け駆動ケース26にそれぞれ動力伝達する。
【0031】
図5,7に示すように、植付けミッションケース24の上部ケース部24bの内部に位置する前記苗載せ台用駆動機構60は、下部ケース部24aの前記苗載せ台側出力軸57と一体軸になっている入力軸61、この入力軸61が一体回転自在に備えている伝動ギヤ62に受動ギヤ63で連動している螺旋軸64、この螺旋軸64の螺旋溝64aに爪体65aが係入している横送り体65、前記螺旋軸64の両端部に一体回動自在に連結された駆動爪66、前記横送り体65の両横側に分かれて位置するように配置して前記苗横送り軸40に一体回転自在に連結された操作アーム67を備えて構成してある。
【0032】
すなわち、苗載せ台用駆動機構60は、下部ケース部24aの苗載せ台側出力軸57の駆動力を入力軸61によって入力して受動ギヤ63に伝達して螺旋軸64を駆動し、この螺旋軸64によって横送り体65を螺旋軸64に沿って走行機体横方向に往復移動するように横送り駆動することにより、この横送り体65を介して苗横送り軸40を走行機体横方向に往復移送する。そして、苗横送り軸40が左右の横移動ストロークエンドに到達して苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達した際、そのストロークエンドに対応した側の操作アーム67が駆動爪66の回動範囲に入り、駆動爪66が操作アーム67に当接してこの操作アーム67を揺動操作して苗横送り軸40を所定の回転角だけ回動操作することによって前記苗縦送りアーム42を揺動駆動する。
【0033】
図3,7に示すように、植付けミッションケース24における前記下部ケース部24aの上端面24cを、走行機体前方側に至るほど配置高さが低くなる状態に傾斜した前下がり傾斜面に形成し、前記上部ケース部24bを走行機体側面視で矩形のケースに形成するとともに、上部ケース部24bをこの上部ケース部24bの底面で下部ケース部24aの前記上端面24cに載置し、上部ケース部24bのフランジ部24dを下部ケース部24aに連結する連結ボルト24eによって上部ケース部24bを下部ケース部24aに締め付け連結することにより、上部ケース部24bのフランジ部24aよりも上方に位置する本体の後端と、苗載せ台32の苗載置面との走行機体前後方向での間隔D1が、下部ケース部24aの後端と、苗載せ台32の苗載置面との間隔D2よりも大になった状態に植え付けミッションケース24を形成してある。
すなわち、苗載せ台32の下端側に位置した苗は、苗葉が植付け爪36に接触しにくくなるように苗葉ステーSTによって苗床土の方に押し操作された状態になるが、苗葉ステーSTから走行機体前方側に突出した葉先側が植付けミッションケース24の上部ケース部24bに接触しくい状態で苗載せ台32に支持されるようになっている。
【0034】
図2に示すように、前記ミッションケース21は、このミッションケース21の入力軸(図示せず)と前記エンジン2の出力軸とを連動させている伝動ベルト2aによってエンジン2に連動されており、ミッションケース21の内部に位置する伝動機構(図示せず)によってエンジン駆動力を前記車輪駆動ケース10を介して左右車輪1,1に、前記伝動ケース23を介して前記植付けミッションケース24にそれぞれ伝達するようになっている。
【0035】
前記ミッションケース21の内部に、左右車輪1,1及び苗植え作業部30に対する伝動を入り切りする主クラッチ70を設けるとともに、この主クラッチ70は、操縦ハンドル4の左右一対の握り部4cの間に設けた主クラッチ操作具71によって操作するように構成してある。
【0036】
すなわち、図11に示す如く主クラッチ70のシフター支軸72に一体回転自在に連結された揺動アームで成るクラッチ操作部73をミッションケース21の前壁部の外面側に設け、このクラッチ操作部73と主クラッチ操作具71とを、図8,9,11に示す主クラッチ連動機構80によって連動させてある。
【0037】
主クラッチ連動機構80は、図11の如く主クラッチ70の前記操作部73に下端部が連結された走行機体上下向きの連動杆81、この連動杆81の上端部に出力リンク部82aが連結された揺動リンク82、この揺動リンク82の入力リンク部82bに前端部が連結された走行機体前後向きの丸棒材で成る連動部材83、図8,9の如くこの連動部材83の後端部に出力リンク部84aが連結された揺動連動体84、この揺動連動体84の入力リンク部84bに下端部が連結された走行機体上下向きの連動ロッド85、この連動ロッド85の上端部に一端側が相対回動自在に連結され、他端側が主クラッチ操作具71の出力アーム部71aに相対回動自在に連結された湾曲リンク86を備えて構成してある。
【0038】
前記揺動リンク82は、ミッションケース21の上部に固定された油圧装置90が有する支軸91の走行機体横向きの軸芯まわりで揺動するように前記支軸91に支持されている。
【0039】
前記揺動連動体84は、偏平な板金部材で成る前記出力リンク部84aと、操縦ハンドル4の基部側ハンドル杆4aを囲繞する平面矩形状態に折り曲げ成形した板金部材で成る前記入力リンク部84bを一体部品に形成することによって構成してある。この揺動連動態4は、操縦ハンドル4の一対の基部側ハンドル杆4aに連結された支軸87に回動自在に装着されており、前記支軸87の走行機体横向きの軸芯まわりで揺動するようになっている。
【0040】
図5に示すように、前記連動部材83は、前記植付けミッションケース24の下部ケース部24aの横側面がわの前記植付け駆動軸54のための支持部24fと、前記爪側出力軸56や前記苗載せ台側出力軸57のための支持部24gとの間に走行機体横外側方に向かって開口する状態に設けたケース凹入部24hを走行機体前後方向に挿通する状態に配置してある。
【0041】
図8,9に示すように、主クラッチ操作具71は、主クラッチ操作具71の基端側に位置する取り付け筒部71bにおいて、操縦ハンドル4の一対の基部側ハンドル杆4aに連結された支軸92に回動自在に支持されており、支軸92の走行機体横方向の軸芯まわりで揺動するようになっている。
【0042】
つまり、主クラッチ操作具71を支軸92の軸芯まわりで、操縦ハンドル4の先端側ハンドル杆4bに支持された図12の如きレバーガイド93のガイド溝94に沿わせて揺動操作することにより、主クラッチ操作具71の出力アーム部71aが湾曲リンク86、連動ロッド85、揺動連動体84、連動部材83、揺動リンク82を介して連動杆81を押し引き操作してこの連動杆81がクラッチ操作部73を揺動操作し、これによって主クラッチ70が入り状態と切り状態に切り換わるようになっている。主クラッチ70を入り状態に操作した場合、湾曲リンク86の作用により、主クラッチ70が有する切り復元力に抗して主クラッチ70を入り状態に、主クラッチ操作グ71を入り操作位置にそれぞれ維持できるようになっている。
【0043】
図11に示すように、前記油圧装置90に前記昇降シリンダ9の制御弁89を設け、この制御弁89は、操縦ハンドル4の一対の握り部4cの間の前記主クラッチ操作具71の横側付近に設けた昇降レバー95によって操作するように構成してある。
【0044】
すなわち、図11に示すように、制御弁89に走行機体横向きの軸芯96aまわりで揺動自在な制御弁操作部96を設け、この制御弁操作部96に一端側が連結されるとともに前記植え付けミッションケース24の前記ケース凹入部24hを走行機体前後方向に挿通するように配置した丸棒材で成る連動部材101、この連動部材101の後端部に出力リンク部102aが連結されるとともに前記支軸87に揺動自在に支持された揺動リンク102、この揺動リンク102の入力リンク部102bに下端側が連結された走行機体上下向きの連動ロッド103、この連動ロッド103の上端側に一端側が回動自在に連結され、他端側が昇降レバー95の筒形レバー支軸97の昇降用出力アーム97aに回動自在に連結された湾曲リンク104を備えて成る制御弁連動機構100を介し、前記制御弁操作部96と昇降レバー95とを連動させてある。
【0045】
前記筒形レバー支軸97は、前記主クラッチ操作具71を支持している前記支軸92に回動自在に支持されており、かつ、この支軸92の軸芯と非平行な連結ピン8を介して昇降レバー95を揺動自在に支持しており、昇降レバー95は、連結ピン98の軸芯まわりで走行機体横方向に揺動し、支軸92の走行機体横向き軸芯まわりで走行機体上下方向に揺動し、かつ、支軸92の軸芯まわりで揺動操作されると筒形レバー支軸97を回転操作して昇降用出力アーム97aを揺動操作するようになっている。
【0046】
つまり、昇降レバー95を連結ピン98の軸芯まわりで揺動させながら支軸92の軸芯まわりで前記レバーガイド93のガイド溝99に沿わせて揺動操作することにより、昇降用出力アーム97aが揺動操作されて湾曲リンク104、連動ロッド103、揺動リンク102を介して連動部材101を走行機体前後方向に押し引き操作し、この連動部材101が制御弁操作部96を揺動操作して制御弁89を切換え操作し、これにより昇降シリンダ9が伸縮や停止操作されて左右車輪1,1を走行機体に対して昇降及び停止操作し、走行機体が田面に対して昇降したり、走行機体の昇降が停止したりするようになっている。
【0047】
図6に示すように、前記植付けクラッチ53のロッド形の操作部58を、植付けミッションケース24の下部ケース部24aの走行機体後面側に走行機体前後方向に摺動自在に設けてある。図8,10に示すように、クラッチ操作部58に一端側が係止され、中間部が植付けミッションケース24の支軸111に回動自在に支持された揺動体112、この揺動体112の一端側に前端側が回動自在に連結された連動ロッド113、この連動ロッド113の後端側に先端側が回動自在に連結されるとともに前記支軸87に揺動自在に支持された揺動リンク114、この揺動リンク114の基部に下端側が連結された走行機体上下向きの連動ロッド115、この連動ロッド115の上端側に一端側が回動自在に連結され、他端側が前記昇降レバー95の前記筒形レバー支軸97のクラッチ用出力アーム97bに回動自在に連結された湾曲リンク117を備えて成る植付けクラッチ連動機構110によってクラッチ操作部58を昇降レバー95に連動させてある。
【0048】
前記揺動体112のクラッチ操作部58が連結している側とは反対側の端部を、コイル形のスプリング118を介して、前記制御弁連動機構100の前記揺動リンク102の出力リンク部102aに連結してある。
【0049】
すなわち、前記昇降レバー95が植付け位置Sに操作され、左右車輪1,1が走行機体に対して上昇操作されて走行機体が下降作業状態になると、この操作に連係して植付けクラッチ53が入り状態に操作されるようになっている。昇降レバー95が下降位置Dに操作され、左右車輪1,1が走行機体に対して上昇操作されて走行機体が対地下降した場合、及び、昇降レバー95が固定位置Nに操作され、左右車輪1,1が走行機体に対する所定の取り付け高さになって走行機体が下降作業状態と上昇非作業状態の間の高さに操作された場合、昇降レバー95が上昇位置Uに操作され、左右車輪1,1が走行機体に対して下降操作されて走行機体が上昇非作業状態になった場合のそれぞれにおいて、その操作に連係して植付けクラッチ53が切り状態に操作されるようになっている。
【0050】
図6,9に示すように、植付けクラッチ53の前記操作部58にゴム製の蛇腹カバー59を装着してある。この蛇腹カバー59は、操作部58に泥土が付着することを防止するものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】歩行型田植機全体の側面図
【図2】機体フレームの平面図
【図3】植付け作業部の機体中央部での側面図
【図4】植付け作業部の機体横外側での側面図
【図5】植付け機構用駆動機構、苗載せ台用駆動機構の正面図
【図6】植付け機構用駆動機構の平面図
【図7】植付け機構用駆動機構の側面図、
【図8】操縦部の後面図
【図9】主クラッチレバー配設部の側面図
【図10】昇降レバー配設部の側面図
【図11】制御弁及び主クラッチ配設部の側面図
【図12】レバーガイドの平面図
【符号の説明】
【0052】
2 エンジン
4 操縦ハンドル
21 ミッションケース
24 植付けミッションケース
24a 植付けミッションケースの下部ケース部
24b 植付けミッションケースの上部ケース部
24c 下部ケース部の上端面
30 苗植え作業部
31 苗植付け機構
32 苗載せ台
50 植付け機構用駆動機構
60 苗載せ台用駆動機構
71 操作具
73 ミッションケースの操作部
83 連動部材
A 操縦部
D1 上部ケース部と苗載せ台との間隔
D2 下部ケース部と苗載せ台との間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに連動されたミッションケースを、走行機体の前部に設け、苗植付け機構、苗載せ台、前記ミッションケースから動力伝達されて前記苗植付け機構及び苗載せ台を駆動する植え付けミッションケースを備えた苗植え作業部を、前記走行機体の後部に設け、操縦ハンドルを備えた操縦部を、前記植え付けミッションケースよりも走行機体後方側に設けた歩行型田植機であって、
前記植え付けミッションケースの横側面がわに走行機体横外側に向かって開口したケース凹入部を設けるとともに、前記ミッションケースの操作部を前記操縦部に位置する操作具に連動させる連動部材を、前記ケース凹入部を走行機体前後方向に挿通する状態で配置してある歩行型田植機。
【請求項2】
前記植え付けミッションケースが前記苗載せ台の走行機体前方側に位置し、前記植え付けミッションケースの苗載せ台用駆動機構が内部に位置する上部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔が、前記植え付けミッションケースの苗植付け機構用駆動機構が内部に位置する下部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔よりも大になるように前記植え付けミッションケースを形成してある請求項1記載の歩行型田植機。
【請求項3】
前記植え付けミッションケースの前記上部ケース部を、前記下部ケース部と別体に構成して下部ケース部の上端面に載置連結するとともに、前記下部ケース部の前記上端面を、走行機体前方側に至るほど配置高さが低くなる前下がり傾斜面に形成することにより、前記上部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔を前記下部ケース部と前記苗載せ台との走行機体前後方向での間隔よりも大にしてある請求項2記載の歩行型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−238824(P2006−238824A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60776(P2005−60776)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】