説明

歩行型移動農機のバランスウエイト構造

【課題】バランスウエイトを利用して機体を安定に固定できるようにする。
【解決手段】機体前端部にバランスウエイト11を備える歩行型管理機1において、バランスウエイト11に、機体左右方向に延びる上縁部11aと、機体左右方向に延び、機体に固定される下縁部11bと、上縁部11aと下縁部11bとの間に機体左右方向に長くなるように形成される取っ手穴11cと、を備えるにあたり、バランスウエイト11の上縁部11aの左右中央部に上方に突出する凸部11fを形成すると共に、該凸部11fに取っ手穴11cよりも左右幅が狭いロープ掛け穴11gを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機などの歩行型移動農機のバランスウエイト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歩行型管理機などの歩行型移動農機では、機体後部に作業機を装着して各種の農作業を行う関係上、重量が重いエンジンを機体前部に搭載して機体の前後バランスをとるようにしている。しかしながら、エンジン重量のみで機体の前後バランスをとろうとすると、エンジンをかなり前方に突出させる必要があり、その場合、機体前後長に支障を来すため、機体前部のエンジン近傍にバランスウエイトを搭載することにより、機体の前後バランスを調整するようにしている。
【0003】
ところで、機体を持ち上げて運搬する場合、機体後側は、後方に延びる走行操作用のハンドルを把持して持ち上げることができるものの、機体前側は、特に把持するような部位がないので、機体前側の底部(エンジンフレームなど)を持ち上げることとなり、その結果、オペレータの持ち上げ姿勢が悪くなり、腰を痛める惧れがあった。
【0004】
そこで、本出願人は、機体前部を持ち上げる際に取っ手部(把持部)として機能するバランスウエイトを過去に提案した(特許文献1参照)。このようなバランスウエイトによれば、機体の前後バランスを調整し得るものでありながら、機体を持ち上げる際のオペレータの姿勢を良好にして、腰を痛めるような不都合の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4512552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、歩行型移動農機をトラックなどの車両で輸送する場合、輸送中に機体が移動したり転倒することを防止するために、ロープを用いて機体を固定させることがある。このとき、特許文献1の歩行型移動農機では、バランスウエイトに形成される取っ手穴(貫通穴)を利用して機体前側のロープ掛けを行うことが可能であるが、取っ手穴は、取っ手部を把持する際に手が差し込めるようにする関係上、機体左右方向に長いものとなっているので、取っ手穴にロープ掛けをすると、バランスウエイトとロープが機体左右方向に相対的に動いてしまい、機体を良好に固定することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、機体前端部にバランスウエイトを備える歩行型移動農機において、前記バランスウエイトに、機体左右方向に延びる上縁部と、機体左右方向に延び、機体に固定される下縁部と、上縁部と下縁部との間に機体左右方向に長くなるように形成される取っ手穴と、を備えるにあたり、バランスウエイトの上縁部左右中央部に上方に突出する凸部を形成すると共に、該凸部に取っ手穴よりも左右幅が狭いロープ掛け穴を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、バランスウエイトに取っ手穴よりも左右幅が狭いロープ掛け穴を形成したので、このロープ掛け穴を利用してロープ掛けを行えば、バランスウエイトとロープが機体左右方向に相対的に動くことを抑制して、機体を良好に固定することができる。しかも、ロープ掛け穴は、バランスウエイトの上縁部左右中央部から突出する凸部に形成したので、機体の左右中心にロープ掛けをして機体をバランス良く固定できるだけでなく、バランスウエイトの重心位置が左右いずれか一側方に偏倚してしまうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】歩行型管理機の右側面図である。
【図2】バランスウエイトを右下方から見た斜視図である。
【図3】ボンネットの取付構造を示す要部断面図である。
【図4】ボンネットの取付構造を示す要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は歩行型管理機(歩行型移動農機)であって、該歩行型管理機1は、機体フレームに兼用されるミッションケース2を備えている。
【0011】
ミッションケース2の左右両側方には、図示しない車軸を介して車輪3が取り付けられ、ミッションケース2の後部には、ロータリ式の耕耘部4が構成され、ミッションケース2の前部には、エンジン搭載フレーム5aを介して、エンジン5が搭載されている。
【0012】
エンジン5の動力は、ベルト伝動機構からなる伝動部6を介してミッションケース2に入力され、ミッションケース2内の変速機構で変速された後、車輪3及び耕耘部4に伝動される。
【0013】
ミッションケース2の後部には、後方斜め上方に向かって突出するハンドル7が取り付けられている。ハンドル7には、クラッチ操作レバー8及びスロットル操作レバー9が設けられており、クラッチ操作レバー8の操作に応じて、伝動部6に設けられるクラッチ機構(図示せず)が入り切りされ、スロットル操作レバー9の操作に応じて、エンジン5の回転数が変更されるようになっている。
【0014】
さらに、ミッションケース2の後部には、後方斜め上方に向かって突出する変速操作レバー10が設けられている。変速操作レバー10は、ミッションケース2内の変速機構を変速操作するための操作具であり、変速操作レバー10の操作に応じて、走行速度(車輪3の駆動速度)や、耕耘部4の駆動速度及び回転方向が変速されるようになっている。
【0015】
エンジン搭載フレーム5aの前端部は、バランスウエイト装着部となっており、ここに、機体の前後バランスを調整するためのバランスウエイト11が装着されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、バランスウエイト11は、上縁部11a、下縁部11b、取っ手穴11c、左側部11d、右側部11e、凸部11f及びロープ掛け穴11gを備えて構成されている。
【0017】
上縁部11aは、機体左右方向に延びるように形成されており、その前後幅は、手で把持できる程度に設定されている。
【0018】
下縁部11bは、機体左右方向に延びるように形成されると共に、機体前後方向に貫通する左右一対のボルト穴11hを有している。そして、これらのボルト穴11hに機体前方から挿通したボルト(図示せず)を、エンジン搭載フレーム5aの前端部に形成される螺子穴(図示せず)に螺込むことにより、バランスウエイト11がエンジン搭載フレーム5aに対して一体的に固定されるようになっている。
【0019】
取っ手穴11cは、上縁部11aと下縁部11bとの間に機体左右方向に長くなるように形成される長穴であり、その左右幅は、少なくとも手の指が4本(人さし指、中指、薬指及び小指)入る程度に設定されている。
【0020】
左側部11dは、上縁部11a及び下縁部11bの左端同士を連結し、さらに、エンジン搭載フレーム5aの左側面に沿って後方に延出するように形成されている。
【0021】
右側部11eは、上縁部11a及び下縁部11bの右端同士を連結し、さらに、エンジン搭載フレーム5aの右側面に沿って後方に延出するように形成されている。
【0022】
凸部11fは、上縁部11aの左右中央部に上方に突出するように形成されており、本実施形態では、その前後幅を上縁部11aの前後幅と略同等とし、左右幅を取っ手穴11cの左右幅と略同等としている。
【0023】
ロープ掛け穴11gは、凸部11fを機体前後方向に貫通するように形成されており、その左右幅は、取っ手穴11cの左右幅よりも狭くなるように設定されている。
【0024】
次に、上記のように構成されたバランスウエイト11の作用について説明する。
【0025】
上記のように構成された歩行型管理機1を用いて耕耘作業を行う場合、オペレータは、エンジン5を始動させた後、機体後方でハンドル7を握りつつ、スロットル操作レバー9によるエンジン回転数設定や、変速操作レバー10による変速操作を行い、クラッチ操作レバー8を入り操作する。歩行型管理機1は、これらの操作に応じて、車輪3及び耕耘部4を駆動させ、圃場における低速走行及び耕耘を開始することになるが、走行中は勿論、停止中においても、機体前端部のバランスウエイト11により機体の前後バランスが良好に調整される。
【0026】
また、歩行型管理機1を手で持ち上げて運搬する場合、機体後側は、後方に延びるハンドル7の基部を把持して持ち上げることができ、また、機体前側は、バランスウエイト11を把持して持ち上げることができる。つまり、バランスウエイト11は、機体左右方向に長い取っ手穴11cを有し、ここに手の指を差し込むことにより、上縁部11aを把持することができるので、機体の前後バランスを良好に調整できるものでありながら、機体前部を持ち上げる際に取っ手として機能させることができる。
【0027】
また、歩行型管理機1をトラックなどの車両で輸送する場合、輸送中に機体が移動したり転倒することを防止するために、ロープを用いて機体を固定させることがある。このとき、歩行型管理機1では、バランスウエイト11を利用して機体前側のロープ掛けを行うことができる。そして、ロープは、機体左右方向に長い取っ手穴11cではなく、取っ手穴11cよりも左右幅が狭いロープ掛け穴11gに掛けることができるので、バランスウエイト11とロープが機体左右方向に相対的に動くことを抑制して、機体を良好に固定することができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る歩行型管理機1のボンネット取付構造について、図3及び図4を参照して説明する。
【0029】
歩行型管理機1の機体前部には、ボンネット12が設けられている。ボンネット12は、機体前端部から燃料タンク13の前端部に至るように設けられ、エンジン5の上方を覆っている。このようなボンネット12は、エンジン5などのメンテナンスを行うために、着脱自在又は開閉自在に構成する必要があるが、従来の歩行型管理機では、ボンネットをネジ等の固定部品で固定していたので、ボンネットの着脱や開閉に手間がかかるという問題があった。
【0030】
本実施形態のボンネット取付構造は、上記のような問題を解決するために、ワンタッチ操作によるボンネット12の着脱を可能にするものであり、具体的にはボンネット12の他に、前側ブラケット14、アンダーカバー15、燃料タンクブラケット17、丸棒18及び把持スプリング19を備えて構成されている。
【0031】
前側ブラケット14は、金属板状の部材であり、機体前端部の上面部に固定されている。また、前側ブラケット14の前端部には、アンダーカバー15を取り付けるための取付孔14aが複数形成されている。
【0032】
アンダーカバー15は、ボンネット12と同様、樹脂製の部材であり、ボンネット12の前端部と前側ブラケット14との間隙を覆うために、前側ブラケット14上に取り付けられる。具体的には、左右一対の取付孔15aを有し、該取付孔15a及び前側ブラケット14の取付孔14aを貫通するボルト(図示せず)によって前側ブラケット14に固定される。
【0033】
また、アンダーカバー15は、平面視円弧状の段差部15bを有しており、その前端部には、ボンネット12の前端側を係合状に保持可能な係合穴15cが形成されている。つまり、ボンネット12の前端部には、側面視L字状の取付爪12aが一体的に形成されており、ボンネット12を前低後高状の立て姿勢とし、取付爪12aをアンダーカバー15の係合穴15cに挿通した後、取付爪12aを支点としてボンネット12を後方に回動操作すると、ボンネット12がエンジン5の上方を覆う閉じ姿勢となる。そして、閉じ姿勢においては、取付爪12aがアンダーカバー15の段差部15bに内側から係合し、アンダーカバー15から抜け止めされることにより、ボンネット12の前端側が固定状に取付けられる。
【0034】
尚、ボンネット12の前側内周部には、複数の当接爪12bが突設されており、これらの当接爪12bがアンダーカバー15の段差部15bに側方から当接することにより、閉じ姿勢におけるボンネット12の左右方向のがたつきが規制されるようになっている。
【0035】
燃料タンクブラケット17は、金属板状の部材であり、機体中間部に立設され、燃料タンク13を支持している。燃料タンクブラケット17の上端部前面には、丸棒支持部材18aが一体的に溶着されており、該丸棒支持部材18aに形成される左右一対の突片18b間に丸棒18が一体的に架設されている。
【0036】
把持スプリング19は、丸棒18を上方から把持可能な板ばね部材からなり、ボンネット12の後端部下面に取り付けられている。そして、前述したように、取付爪12aを支点とする回動操作にもとづいてボンネット12を閉じ操作したとき、ボンネット12が閉じ姿勢に到達したタイミングで把持スプリング19が上方から丸棒18を把持する。これにより、ボンネット12の後端側が燃料タンクブラケット17に対して固定状に取付けられる。
【0037】
尚、把持スプリング19による丸棒18の把持は、ボンネット12を開放する際の持ち上げ操作力で解除されるが、機体振動では解除されないように、把持スプリング19の把持力(弾性挟持力)が設定される。
【0038】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、機体前端部にバランスウエイト11を備える歩行型管理機1において、バランスウエイト11に、機体左右方向に延びる上縁部11aと、機体左右方向に延び、機体に固定される下縁部11bと、上縁部11aと下縁部11bとの間に機体左右方向に長くなるように形成される取っ手穴11cと、を備えるにあたり、バランスウエイト11の上縁部11aの左右中央部に上方に突出する凸部11fを形成すると共に、該凸部11fに取っ手穴11cよりも左右幅が狭いロープ掛け穴11gを形成したので、このロープ掛け穴11gを利用してロープ掛けを行えば、バランスウエイト11とロープが機体左右方向に相対的に動くことを抑制して、機体を良好に固定することができる。
【0039】
しかも、ロープ掛け穴11gは、バランスウエイト11の上縁部11aの左右中央部から突出する凸部11fに形成したので、機体の左右中心にロープ掛けをして機体をバランス良く固定できるだけでなく、バランスウエイト11の重心位置が左右いずれか一側方に偏倚してしまうこともない。
【符号の説明】
【0040】
1 歩行型管理機
2 ミッションケース
3 車輪
4 耕耘部
7 ハンドル
11 バランスウエイト
11a 上縁部
11b 下縁部
11c 取っ手穴
11f 凸部
11g ロープ掛け穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前端部にバランスウエイトを備える歩行型移動農機において、
前記バランスウエイトに、
機体左右方向に延びる上縁部と、
機体左右方向に延び、機体に固定される下縁部と、
上縁部と下縁部との間に機体左右方向に長くなるように形成される取っ手穴と、を備えるにあたり、
バランスウエイトの上縁部左右中央部に上方に突出する凸部を形成すると共に、該凸部に取っ手穴よりも左右幅が狭いロープ掛け穴を形成したことを特徴とする歩行型移動農機のバランスウエイト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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