説明

歩行者保護エアバッグ装置

【課題】インフレータが作動してからエアバッグがフロントピラーの前面に膨張展開するまでの時間を短縮する。
【解決手段】フロントサイドドア210内には、衝突予測時に作動してガスを発生するインフレータ228と、折り畳み状態で格納されてインフレータ228からガスが供給されることによりフロントピラー208の前面208Aの少なくとも下部を覆うように膨張展開されるエアバッグ230と、を含む歩行者保護エアバッグ装置220が配設されている。エアバッグ230は、エアバッグ本体部260とチューブ状の支持部262とから成り、インフレータ228が作動すると先に支持部262が膨張し、エアバッグ本体部260をフロントピラー208の車両幅方向外側位置まで移動させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者との衝突時又は衝突予測時に車外にエアバッグが膨張展開される歩行者保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、歩行者との衝突時にフロントピラーの前面にエアバッグを膨張展開させる技術が開示されている。簡単に説明すると、この先行技術では、ドアフレームの前縁部又はドアミラーベース部にエアバッグモジュールが格納されている。歩行者と衝突すると、インフレータが作動して折り畳み状態のエアバッグ内へガスが供給される。その結果、フロントピラーの前面にエアバッグが膨張展開されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−006957号公報
【特許文献2】特開2009−023600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術に開示された構成による場合、以下に説明する点で改善の余地がある。
【0005】
すなわち、上記エアバッグはドアフレームの前縁部又はドアミラーベース部から膨出してフロントピラーの前面に膨張展開する構造であるため、エアバッグの展開開始位置から展開完了位置まで比較的距離がある。このため、エアバッグがフロントピラーの前面に完全に膨張展開するまでに時間がかかる。従って、上記先行技術は、この点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、インフレータが作動してからエアバッグがフロントピラーの前面に膨張展開するまでの時間を短縮することができる歩行者保護エアバッグ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置は、サイドドア内又はドアミラー装置内に設けられ、衝突時又は衝突予測時に作動してガスを発生するインフレータと、サイドドア内又はドアミラー装置内に折り畳み状態で格納され、前記インフレータからガスが供給されることによりフロントピラーの前面の少なくとも下部を覆うように膨張展開されるエアバッグと、前記衝突時又は衝突予測時に、前記エアバッグを前記サイドドア内又はドアミラー装置内の格納位置からフロントピラーの車両幅方向外側位置まで移動させる移動手段と、を有している。
【0008】
請求項2記載の本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置は、請求項1記載の発明において、前記移動手段は、一端部が前記インフレータに接続されると共に他端部が前記エアバッグの下部と連通され、インフレータからのガスが供給されるとフロントピラーに向って延び上がるチューブ状の押し上げ部を含んで構成されている、ことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置は、請求項1記載の発明において、前記移動手段は、前記衝突予測時に作動される駆動モータと、少なくとも前記エアバッグを含んで構成されたエアバッグモジュールを格納位置から前記フロントピラーの車両幅方向外側位置まで上昇させる持ち上げ機構と、前記駆動モータの駆動力を前記持ち上げ機構に伝達する駆動力伝達機構と、を含んで構成されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、衝突時又は衝突予測時になると、インフレータからガスが発生し、当該ガスはサイドドア内又はドアミラー装置内に折り畳み状態で格納されたエアバッグ内に供給される。これにより、エアバッグによってフロントピラーの前面の少なくとも下部が覆われる。その結果、歩行者が保護される。
【0011】
ここで、本発明では、衝突時又は衝突予測時になると、移動手段によってエアバッグがサイドドア内又はドアミラー装置内の格納位置からフロントピラーの車両幅方向外側位置まで移動される。このため、エアバッグはフロントピラーの前面により近い位置から膨張展開されることになる。従って、サイドドア内又はドアミラー装置内からエアバッグが膨張展開を開始する構成に比し、エアバッグがフロントピラーの前面に膨張展開するまでの時間が短くなる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、移動手段が一端部がインフレータに接続されると共に他端部がエアバッグの下部と連通されたチューブ状の押し上げ部を含んで構成されているため、衝突時又は衝突予測時にインフレータからガスが発生すると、最初に押し上げ部が膨張してフロントピラーに向って延び上がる。そして、チューブがフロントピラーの前面の車両幅方向外側位置まで延び上がると、エアバッグが膨張展開されてフロントピラーの前面の少なくとも下部を覆う。
【0013】
ここで、本発明では、移動手段をチューブ状の押し上げ部で成立させることができるので、他の機械的な機構を使って移動手段を成立させる場合に比し、構造を簡素にできると共に部品の設置スペースを確保する必要がない。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、衝突予測時になると、移動手段の駆動モータが作動される。駆動モータが作動すると、その駆動力が駆動力伝達機構を介して持ち上げ機構に伝達される。これにより、持ち上げ機構によって、少なくともエアバッグを含んで構成されたエアバッグモジュールが格納位置からフロントピラーの車両幅方向外側位置まで上昇される。そして、エアバッグは、その位置から膨張展開されてフロントピラーの前面の少なくとも下部を覆う。
【0015】
ここで、本発明では、移動手段を駆動モータ、駆動力伝達機構及び持ち上げ機構を含んで構成したので、部品点数が多くなるものの、エアバッグモジュールを機械的な作動でフロントピラーの車両幅方向外側位置まで移動させることができる。このため、エアバッグの展開開始時の位置がずれ難い。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置は、インフレータが作動してからエアバッグがフロントピラーの前面に膨張展開するまでの時間を短縮することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項2記載の本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置は、簡単な構成でインフレータが作動してからエアバッグがフロントピラーの前面に膨張展開するまでの時間を短縮することができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項3記載の本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置は、フロントピラーの前面上におけるエアバッグの膨張展開位置がばらつくのを抑制又は防止することができ、ひいてはエアバッグによる歩行者保護精度を高めることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される歩行者保護エアバッグ装置が作動してエアバッグが膨張展開した状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示される歩行者保護エアバッグ装置の縦断面図である。
【図4】第2実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置の全体構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示される歩行者保護エアバッグ装置が作動してエアバッグが膨張展開した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0021】
図1に示されるように、車両200の前部上面には、エンジンフード202がフードヒンジ回りに開閉可能に配設されている。また、車両200の前部両側面には、左右一対のフロントフェンダパネル204が配設されている。さらに、エンジンフード202の後端側にはウインドシールドガラス206が傾斜した状態で配設されている。ウインドシールドガラス206の両側部には、車体骨格部材である左右一対のフロントピラー208が配設されている。また、車両200のキャビンの両側部には、左右一対のフロントサイドドア210及び図示しないリヤサイドドアが配設されている。
【0022】
フロントサイドドア210は、ドア下部を構成するドア本体部212と、ドア上部を構成する枠状のドアフレーム214と、ドアフレーム214の内側に昇降可能に配設されたドアガラス216と、ドア本体部212の車両幅方向内側に内張りされた図示しないドアトリムと、を含んで構成されている。さらに、ドア本体部212は、車両幅方向外側に配置されてドア外板を構成するドアアウタパネル218と、車両幅方向内側に配置されてドア内板を構成するドアインナパネル219(図3参照)と、を含んで構成されている。
【0023】
上述したドア本体部212の上部前端側には、歩行者保護エアバッグ装置220が配設されている。歩行者保護エアバッグ装置220は、ドア本体部212内に配設されたエアバッグモジュール222と、ドアアウタパネル218における上縁側(ベルトライン側)の前端部に配置されたエアバッグドア224と、によって構成されている。ドアアウタパネル218における上縁側の前端部には、平面視で矩形状の開口部226が形成されており、この開口部226が平面視で矩形状に形成されたエアバッグドア224によって展開可能に閉止されている。
【0024】
エアバッグモジュール222は、作動することによりガスを発生する円柱形状のインフレータ228と、このインフレータ228の上方に折り畳み状態で格納されたエアバッグ230と、このエアバッグ230が収納されたモジュールケース232と、を含んで構成されている。インフレータ228は車両上下方向を長手方向として配置されており、ドアインナパネル219の前壁部等にブラケットを介して固定されている。インフレータ228の上端部の軸芯位置にはパイプ状のガス噴出部234が同軸上に形成されており、更にガス噴出部234の上端部とエアバッグ230とがチューブ状の接続部材236によって相互に連通されている。また、図1では、エアバッグ230を蛇腹折りによって折り畳んでいるが、これに限らず、ロール折りで折り畳んでもよいし、蛇腹折りとロール折りを組み合わせて折り畳んでもよい。モジュールケース232は、箱体形状を成しており、図示しないブラケットを介してドアインナパネル219に固定されている。なお、図1では、インフレータ228をモジュールケース232の外部に配置しているが、これに限らず、モジュールケース232内にインフレータ228とエアバッグ230の両方を収納するようにしてもよい。
【0025】
上述したドア本体部212の上端部には、支持部240及びドアミラー本体部242から成るドアミラー装置238が配設されている。ドアミラー装置238は、ドア本体部212におけるエアバッグドア224の車両後方側に立設されている。
【0026】
ここで、本実施形態の要部に係るエアバッグ230について詳細に説明する。図2及び図3に示されるように、エアバッグ230は、膨張展開状態において、フロントピラー208の前面208Aに配置されるエアバッグ本体部260と、このエアバッグ本体部260の下部から車両下方側へ延出されたチューブ状の支持部262と、によって構成されている。支持部262は円筒状に形成されている。エアバッグ本体部260の下部には、支持部262の上端部262Aが接続される位置に円形の連通孔264が形成されている。支持部262の上端部262Aは、支持部262の半径方向外側へ折り曲げられて、エアバッグ本体部260の連通孔264の外周部に縫製により取り付けられている。
【0027】
また、支持部262の下端部262Bは閉止されており、モジュールケース232の底部232Aに固定されている。すなわち、エアバッグ本体部260はモジュールケース232に固定されることなく、モジュールケース232内に折り畳み状態で格納されているのみとされ、支持部262の下端部262Bがモジュールケース232の底部232Aに固定されることにより、エアバッグ230がモジュールケース232に支持されている。さらに、支持部262の下端部262Bには、インフレータ228のガス噴出部234と接続された接続部材236が貫通されている。
【0028】
なお、支持部262の下端部262Bのモジュールケース232の底部232Aへの固定の仕方としては、リング状に形成されかつ周方向に所定の間隔でスタッドボルトが立設された固定プレートを、支持部262の下端部262Bの内側に予め装着しておき、スタッドボルトをモジュールケース232の底部232Aに貫通させて、モジュールケース232の底部232Aの裏面側でナット締めする等の構成が適用可能である。なお、その場合、支持部262の下端部262Bは必ずしも閉止しておく必要はなく、下端部262Bを開放形状とし、周縁部を内側に折り曲げて固定プレートで固定するようにしてもよい。また、その場合、インフレータ228のガス噴出部234をモジュールケース232の底部232Aに形成された貫通孔から挿入して支持部262の下端部262Bの内方へ突出させ、かつインフレータ228を固定プレートのスタッドボルトで共締めするようにしてもよい。そのようにすれば、接続部材236は不要になる。
【0029】
また、図1に示されるように、上述した車両200の図示しないフロントバンパの中央部には、衝突予測センサとして機能するプリクラッシュセンサ252が配設されている。プリクラッシュセンサ252は、ミリ波レーダを車両前方側へ照射することにより衝突体との衝突を検知するようになっている。プリクラッシュセンサ252は、車両200のコンソールボックス下方等に配設された制御装置として機能するエアバッグECU254に接続されている。さらに、エアバッグECU254はインフレータ228の軸芯部に配設された図示しない点火装置と接続されている。また、エアバッグECU254には、車両200の走行速度を検出する車速センサ266が接続されている。
【0030】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
車両走行時において、衝突予測時以外の場合には、プリクラッシュセンサ152で衝突体との衝突が検知されることはないので、インフレータ228は作動しない。このため、エアバッグ230は、フロントサイドドア210内に格納された状態を維持する。
【0031】
この状態から、歩行者との衝突予測時になると、即ちプリクラッシュセンサ152によって衝突体として歩行者が検知された場合には、その検出信号がエアバッグECU154に出力される。また、車速センサ266によって、車両200の走行中の速度が検出され、エアバッグECU154に出力されている。エアバッグECU154では、車速センサ266からの検出信号に基づいてそのときの時速を求め、所定の車速(例えば、時速25km)以上でかつプリクラッシュセンサ152によって衝突体との衝突が予測された場合に、インフレータ228の点火装置に点火電流を通電する。
【0032】
これにより、エアバッグモジュール222のインフレータ228が作動してガスを発生する。このガスは折り畳み状態で格納されたエアバッグ230内へ供給される。具体的には、最初にチューブ状の支持部262内へ噴出される。このため、図2及び図3に示されるように、エアバッグ本体部260が膨張する前或いは膨張し始めのときに支持部262が柱状に立設され、エアバッグ本体部260をフロントピラー208の車両幅方向外側に持ち上げる。続いて、エアバッグ本体部260が膨張展開し、フロントピラー208の前面208Aの大半(上端部を除いた範囲)が覆われる。その結果、歩行者が保護される。なお、エアバッグ本体部260に形成された連通孔264を、所定の膨張圧で破断するティアシームで縫製した円形の隔壁で閉塞してもよい。隔壁で連通孔264を閉止しておくと、支持部262の立ち上がりが早くなる効果が得られる。
【0033】
このように本実施形態では、エアバッグ本体部260はフロントピラー208の前面208Aにより近い位置から膨張展開されることになる。従って、フロントサイドドア内からエアバッグが膨張展開を開始する構成に比し、エアバッグ230がフロントピラー208の前面208Aに膨張展開するまでの時間が短くなる。すなわち、本実施形態によれば、インフレータ228が作動してからエアバッグ230がフロントピラー208の前面208A上に膨張展開するまでの時間を短縮することができる。
【0034】
また、本実施形態では、エアバッグ本体部260をリフトアップさせる移動手段をチューブ状の支持部262で成立させたので、他の機械的な機構を使って移動手段を成立させる場合に比し、構造を簡素にできると共に部品の設置スペースを確保する必要がない。従って、簡単な構成でインフレータ228が作動してからエアバッグ230がフロントピラー208の前面208Aに膨張展開するまでの時間を短縮することができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
以下、図4及び図5を用いて、本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一の構成部分には同一番号を付してその説明を省略する。
【0036】
図4及び図5に示されるように、この第2実施形態では、移動手段を機械的な構成で成立させた点に特徴がある。
【0037】
具体的に説明すると、エアバッグモジュール222のモジュールケース232の下端部の側面には、車両上下方向に沿って長尺状とされたラックバー270の上端部が固定されている。これに対応して、ラックバー270の車両前方側には、駆動モータ272が配置されている。駆動モータ272は、フロントサイドドア210のドア本体部212のドアインナパネル219に図示しないブラケットを介して固定されている。駆動モータ272の出力軸274の先端部には、ピニオン276が固定されている。ピニオン276はラックバー270と噛み合った状態で配置されている。従って、駆動モータ272が駆動回転すると、ピニオン276を介してラックバー270が上下動する構成である。なお、図4では、ピニオン276をラックバー270に直接噛み合わせているが、ピニオン276とラックバー270との間に複数の減速ギヤから成る減速機構を介在させてもよい。
【0038】
ちなみに、図4に実線で図示されたモジュールケース232の位置がモジュールケース232(エアバッグ230)の格納位置であり、二点鎖線で図示されたモジュールケース232の位置がモジュールケース232(エアバッグ230)の上昇位置(即ち、フロントピラー208の車両幅方向外側位置)である。また、本実施形態では、第1実施形態と異なり、インフレータ228はモジュールケース232の底部から吊り下げられた状態で固定されている。従って、インフレータ228は、ドアインナパネル219には固定されておらず、モジュールケース232と一体的に移動可能とされている。
【0039】
また、上述した構成において、ラックバー270が本発明における「持ち上げ機構」に相当し、ピニオン276(減速機構を配設する場合には、ピニオン276及び減速機構)が本発明における「駆動力伝達機構」に相当する。
【0040】
(作用・効果)
上記構成によれば、エアバッグECU254によって、プリクラッシュセンサ252からの出力信号に基づいて歩行者との衝突が予測されかつ車速センサ266によって走行速度が時速25km以上であると判断されると、エアバッグECU254によって駆動モータ272に駆動信号が出力される。これにより、駆動モータ272が正転駆動され、ピニオン276を介してラックバー270が車両上方側へ移動される。このため、モジュールケース232が格納位置(図4の実線図示位置)から上昇位置(図4の二点鎖線図示位置)まで上昇される。なお、モジュールケース232が上昇位置まで上昇すると、エアバッグECU254から駆動モータ272に停止信号が出力される。続いて、エアバッグECU254によってインフレータ228が作動される。これにより、図5に示されるように、エアバッグ230が膨張し、その膨張圧でエアバッグドア224が車両幅方向外側へ展開される。そして、エアバッグ230によってフロントピラー208の前面208Aの大半(上端部を除いた範囲)が覆われる。その結果、歩行者が保護される。
【0041】
ここで、本実施形態では、移動手段を駆動モータ272、ピニオン276及びラックバー270を含んで構成したので、部品点数が多くなるものの、モジュールケース232を機械的な作動で格納位置から上昇位置(フロントピラー208の車両幅方向外側位置)まで移動(リフトアップ)させることができる。このため、エアバッグ230の展開開始時の位置がずれ難い。その結果、フロントピラー208の前面208A上におけるエアバッグ230の膨張展開位置がばらつくのを抑制又は防止することができ、ひいてはエアバッグ230による歩行者保護精度を高めることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、駆動モータ272が駆動回転すると、エアバッグ230、モジュールケース232、インフレータ228を含むエアバッグモジュール222の全体が上昇するように構成したが、これに限らず、少なくともエアバッグ230が上昇すればよい。例えば、インフレータ228とエアバッグ230との接続を可撓性のあるチューブで余長を持って接続し、インフレータ228をドアインナパネル219にブラケットで固定してもよい。この場合には、インフレータ228は上昇せず、モジュールケース232とその内部に格納されたエアバッグ230が上昇される。
【0043】
また、本実施形態では、ラックアンドピニオンによってモジュールケース232を持ち上げるようにしたが、これに限らず、他の機構を用いてもよい。例えば、平行リンク機構を用いてモジュールケース232を持ち上げてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、プリクラッシュセンサ252で衝突を予測した場合に、駆動モータ272を駆動させてモジュールケース232を格納位置から上昇位置まで移動させると共にインフレータ228を作動させるように制御したが、これに限らず、衝突予測センサで衝突体との衝突を予測した場合(前面衝突予測時)に駆動モータを駆動させてモジュールケースを格納位置から上昇位置へ強制的に移動させ、衝突予測センサとは別に設けた衝突検知センサによって歩行者との衝突を検知した場合(前面衝突時)にインフレータを作動させ、衝突検知センサによって歩行者との衝突を検知しなかった場合(前面衝突回避時)にはインフレータを作動させることなく、駆動モータを逆転駆動させてモジュールケースを上昇位置から格納位置に自動的に復帰させるように制御してもよい。
【0045】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した実施形態では、歩行者保護エアバッグ装置220がフロントサイドドア210のドア本体部212に配設されていたが、これに限らず、歩行者保護エアバッグ装置がドアミラー装置に配設されるものに対して本発明を適用してもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、エアバッグ230、180がフロントピラー208の前面208Aの少なくとも下部を覆うように構成したが、これに限らず、エアバッグがフロントピラーの前面の全部を覆うように構成してもよい。
【0047】
さらに、上述した第1実施形態では、衝突予測時に歩行者保護エアバッグ装置220を作動させるようにしたが、これに限らず、衝突時に歩行者保護エアバッグ装置を作動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
200 車両
208 フロントピラー
208A 前面
210 フロントサイドドア
220 歩行者保護エアバッグ装置
222 エアバッグモジュール
228 インフレータ
230 エアバッグ
238 ドアミラー装置
252 プリクラッシュセンサ
254 エアバッグECU
260 エアバッグ本体部
262 支持部(押し上げ部、移動手段)
262A 上端部(一端部)
262B 下端部(他端部)
270 ラックバー(持ち上げ機構、移動手段)
272 駆動モータ(移動手段)
274 ピニオン(駆動力伝達機構、移動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドドア内又はドアミラー装置内に設けられ、衝突時又は衝突予測時に作動してガスを発生するインフレータと、
サイドドア内又はドアミラー装置内に折り畳み状態で格納され、前記インフレータからガスが供給されることによりフロントピラーの前面の少なくとも下部を覆うように膨張展開されるエアバッグと、
前記衝突時又は衝突予測時に、前記エアバッグを前記サイドドア内又はドアミラー装置内の格納位置からフロントピラーの車両幅方向外側位置まで移動させる移動手段と、
を有する歩行者保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記移動手段は、一端部が前記インフレータに接続されると共に他端部が前記エアバッグの下部と連通され、インフレータからのガスが供給されるとフロントピラーに向って延び上がるチューブ状の押し上げ部を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の歩行者保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記移動手段は、
前記衝突予測時に作動される駆動モータと、
少なくとも前記エアバッグを含んで構成されたエアバッグモジュールを格納位置から前記フロントピラーの車両幅方向外側位置まで上昇させる持ち上げ機構と、
前記駆動モータの駆動力を前記持ち上げ機構に伝達する駆動力伝達機構と、
を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の歩行者保護エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148457(P2011−148457A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12592(P2010−12592)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)