説明

歩行補助具

【課題】車輪を下端において支持すると共に上端において揺動可能に連結された一対のフレームを有する歩行補助具において、車輪をそれぞれ支持する一対のフレームが使用中に不意に閉脚してしまうことがなく且つ閉脚の操作が容易であって快適性と安全性とを向上させることを可能にする。
【解決手段】前後フレーム2,3を開脚させた状態においてアーチ8の揺動可能な両端それぞれの揺動中心8cと8fとを結ぶ線分が後フレーム3の軸心方向に対する垂直方向に対して傾斜し且つ止め部材11によってアーチ8の摺動可能な一端が更に下方に移動することが制限されると共に、前後フレーム2,3を開脚させた状態において前記線分が前記垂直方向に対して傾斜した状態から前記線分が前記垂直方向になり更に反対側に傾斜するまでアーチ8の摺動可能な一端を吊り上げる吊り上げ部材21,22を後フレーム3に有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助具に関する。さらに詳述すると、本発明は、車輪と該車輪を下端において支持すると共に上端において揺動可能に連結された一対のフレームとを有する歩行補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪と該車輪を下端において支持すると共に上端において揺動可能に連結された一対のフレームとを有する従来の歩行補助具としては、例えば、図8(A)に示すように、前輪103を軸支する前フレーム104と後輪105を軸支する後フレーム106とを有すると共に前フレーム104の上端側に取り付けられたブラケット107に左右方向に設けられた揺動軸108を介して前フレーム104と後フレーム106とが揺動可能に連結された歩行補助具100であって、前端がピン軸102bによって前フレーム104の下端側に揺動可能に連結された第一のリンク101aと後端がピン軸102cによって後フレーム106の下端側に揺動可能に連結された第二のリンク101bとを有し、第一のリンク101aの後端と第二のリンク101bの前側とがピン軸102aによって揺動可能に連結されると共に、歩行補助具100を持ち上げて前後輪103,105を地面から離した場合に前後輪103,105の重量や前後フレーム104,106の自重によって前フレーム104と後フレーム106とが閉脚する際の支障(言い換えれば突っ支い)にならず前後フレーム104,106を自然に閉脚させる(即ちたたむ)ことができるように前後フレーム104,106を開脚させた歩行補助具100の使用状態でピン軸102aによる連結部分が少し上に上がって(即ちピン軸102aを頂点として)両リンク101a,101bが山の形をなすようにするものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3057260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の歩行補助具では、歩行補助具100を持ち上げるだけで前後フレーム104,106及び両リンク101a,101bを自然にたたむことができる一方で、凹凸がある場所で使用した場合や例えば単に段差を越えようとして持ち上げた際に前後フレーム104,106が不意に閉脚してしまうという問題がある。したがって、特許文献1の歩行補助具は、快適性や安全性に優れているとは言い難い。
【0005】
また、特許文献1の歩行補助具において、前後フレーム104,106が使用中に不意に閉脚してしまうことがないように前後フレーム104,106を開脚させた歩行補助具100の使用状態においてピン軸102aによる連結部分を少し下に下げて両リンク101a,101bが谷の形をなすようにすると、両リンク101a,101bをたたむ際には歩行補助具100の下部に位置するピン軸102aによる両リンク101a,101bの連結部分を押し上げる操作が必要になり、歩行補助具100の主な利用者として想定される高齢者や身体障害者や怪我人などにとっては特にしゃがんで両リンク101a,101bの連結部分を押し上げる操作は負担が大きい動作であるので適切ではないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、車輪をそれぞれ支持する一対のフレームが使用中に不意に閉脚してしまうことがなく且つ閉脚の操作が容易であって快適性と安全性とを向上させることができる歩行補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の歩行補助具は、車輪と該車輪を下端において支持すると共に上端において揺動可能に連結された一対のフレームとを有する歩行補助具であって、一対のフレームの間に掛け渡されて両端が一対のフレームのそれぞれに対して揺動可能であると共に一端が一対のフレームのうちの一方のフレームに対して摺動可能であるアーチと一方のフレームに設けられてアーチの摺動可能な一端の下方への摺動を制限する止め部材とを有し、一対のフレームを開脚させた状態においてアーチの揺動可能な両端それぞれの揺動中心を結ぶ線分が一方のフレームの軸心方向に対する垂直方向に対して傾斜し且つ止め部材によってアーチの摺動可能な一端が更に下方に移動することが制限されると共に、一対のフレームを開脚させた状態において線分が垂直方向に対して傾斜した状態から線分が垂直方向になり更に反対側に傾斜するまでアーチの摺動可能な一端を吊り上げる吊り上げ部材を一方のフレームに更に有するようにしている。
【0008】
したがって、この歩行補助具によると、アーチの揺動可能な両端それぞれの揺動中心を結ぶ線分が一方のフレームの軸心方向に対する垂直方向に対して傾斜すると共に止め部材によってアーチの摺動可能な一端が更に下方に移動することが制限されるようにしているので、例えば歩行補助具を凹凸がある場所で使用した場合や持ち上げた場合に不意に閉脚してしまうことがない。
【0009】
さらに、この歩行補助具によると、アーチの摺動可能な一端を吊り上げる部材を一方のフレームに有するようにしているので、閉脚の操作を容易に行うことができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームが前フレームと後フレームとからなり、アーチが後フレームに対して摺動可能であると共に止め部材及び吊り上げ部材が後フレームに設けられるようにしている。この場合には、通常の使用状態において使用者に近い側のフレームに吊り上げ部材が設けられことになるので、閉脚の操作を更に容易に行うことができる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、アーチの摺動可能な一端と止め部材との間に一方のフレームに沿って上下移動可能な摺動部材を更に有し、当該摺動部材を吊り上げ部材によって吊り上げることによってアーチの摺動可能な一端を吊り上げるようにしている。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の歩行補助具において、止め部材と摺動部材とを連結するばねを更に有し、当該ばねの働きによって止め部材と摺動部材とが互いに引き付け合う力が発揮されるようにしている。この場合には、摺動部材を一旦操作した後に素早く確実に摺動部材が元の状態に戻る。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームのうちの片方のフレームの他方のフレームと対向する側に軸方向の凹部が形成され、一対のフレームが揺動して閉脚する際に凹部に他方のフレームの少なくとも一部が入り込んで収容されるようにしている。この場合には、一対のフレームが閉じられた状態においては全体として一本のように見える。
【0014】
また、請求項6記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームを揺動可能に連結するための摺動揺動軸を有すると共に該摺動揺動軸を前後方向の長穴で摺動可能に支持するようにしている。この場合には、一対のフレームを連結する揺動軸の位置が前後方向に移動する。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、請求項1記載の歩行補助具において、一対のフレームのうちの片方のフレームの下端に係合爪を有すると共に他方のフレームの下端に係合凹部を有し、一対のフレームが閉脚した状態において係合爪が係合凹部に嵌って引っ掛かるようにしている。この場合には、一対のフレームを閉脚させた状態から不意に開脚してしまうことがない。
【0016】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の歩行補助具において、係合爪が弾性変形する樹脂で形成されているようにしている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の歩行補助具によれば、例えば歩行補助具を凹凸がある場所で使用した場合や持ち上げた場合に不意に閉脚してしまうことを防止することができるので、歩行補助具利用の利便性・快適性や安全性の向上を図ることが可能になる。
【0018】
また、本発明の歩行補助具によれば、閉脚の操作を容易に行うことができるので、歩行補助具利用の利便性や閉脚操作の快適性の向上を図ることが可能になる。
【0019】
また、本発明の歩行補助具によれば、摺動部材を一旦操作した後に素早く確実に摺動部材を元の状態に戻すことができるので、歩行補助具利用の快適性の向上を図ることが可能になる。
【0020】
また、本発明の歩行補助具によれば、一対のフレームが閉じられた状態においては全体として一本のように見えるので、外観をスマートにして見栄えの向上を図ることが可能になる。
【0021】
また、本発明の歩行補助具によれば、一対のフレームを連結する揺動軸の位置を前後方向に移動させることができるので、一対のフレームを開脚した状態から揺動軸を中心として揺動させて閉脚させる際にフレーム間に指などを挟んでしまったとしても揺動軸が後方に移動してフレーム間に隙間を確保しながらフレーム同士を揺動させて閉じることができ、安全性の向上を図ることが可能になる。
【0022】
また、本発明の歩行補助具によれば、一対のフレームを閉脚させた状態から不意に開脚してしまうことを防止することができるので、歩行補助具利用の安全性や快適性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の歩行補助具の実施形態の一例を示す図であって開脚した状態の縦断面図である。
【図2】実施形態の歩行補助具のフレーム閉脚操作補助機構部分の拡大縦断面図である。
【図3】実施形態の歩行補助具のフレーム閉脚操作補助機構の動作を説明する図である。
【図4】実施形態の歩行補助具を閉脚した状態の縦断面図である。
【図5】実施形態の歩行補助具のフレーム連結構造部分の拡大縦断面図である。
【図6】実施形態の歩行補助具のフレーム横揺動機構部分の拡大縦断面図(側面)である。
【図7】実施形態の歩行補助具のフレーム横揺動機構部分の拡大縦断面図(正面)である。
【図8】従来の歩行補助具を示す側面図である。 (A)は一対のフレームが開脚している状態を示す図である。 (B)は一対のフレームが閉脚している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1から図7に、本発明の歩行補助具の実施形態の一例を示す。なお、本実施形態では、前フレーム2と後フレーム3とを有する歩行補助具1を例に挙げて説明する。ここで、本明細書においては、歩行補助具1を使用している使用者を基準にして上下、前後、左右を定義する。具体的には、図1に示す矢印31の向きを前、反対向きを後、また、矢印32の向きを上、反対向きを下、さらに、これら矢印31及び矢印32に垂直な方向であって図面に対して垂直な方向を左右方向とする。
【0026】
本実施形態の歩行補助具1は、上端部同士が摺動揺動軸2aによって揺動可能に連結された前フレーム2及び後フレーム3と、左右対向配置された一対の前輪タイヤ4a,4aとこれら対向する前輪タイヤ4a,4aの間に設けられた車軸4bとを有し当該車軸4bが前フレーム2の下端に軸回転可能に支持される前輪4と、左右対向配置された一対の後輪タイヤ5a,5aとこれら対向する後輪タイヤ5a,5aの間に設けられた車軸5bとを有し当該車軸5bが後フレーム3の下端部に軸回転可能に支持される後輪5と、前フレーム2の上端に設けられるハンドル6と、前フレーム2と後フレーム3との間に掛け渡されて取り付けられるアーチ8とを備える。
【0027】
本実施形態では、前フレーム2は、軸心方向の貫通孔2bを有する筒部2cと、当該筒部2cの左右両側から対向して後方に延出する後部側壁2d,2dとを有する。そして、これら対向する一対の後部側壁2d,2dによって、前フレーム2の後フレーム3と対向する側即ち後側に後フレーム3に向かって開口する軸心方向の凹部が形成される。
【0028】
前フレーム2の貫通孔2bには、当該貫通孔2aを貫通するパイプ9が挿入される。パイプ9は、軸心方向の貫通孔を有する円筒形状で前フレーム2よりも長く形成され、下端が前フレーム2の下端とほぼ同じ位置にまで達すると共に上端部分が前フレーム2の上端よりも突出する位置に配置される。
【0029】
前輪4の車軸4bの中間部には、中心を通る左右方向の貫通孔18aを有して当該貫通孔18aに車軸4bを摺動可能に貫通させる車軸支持球18が備えられる。
【0030】
そして、前フレーム2の貫通孔2bの下端に、車軸支持球18を摺動可能に保持して前輪4の車軸4bを支持するための車軸支持球ホルダー17が備えられる。なお、本実施形態では、車軸支持球ホルダー17の上端面から突出した円柱形状の突起が貫通孔2b内に設けられたパイプ9の貫通孔に差し込まれて両者がねじ止めされることによって車軸支持球ホルダー17が前フレーム2の下端に備えられる。
【0031】
後フレーム3は軸心方向の貫通孔3dを有する筒状に形成される。また、後フレーム3は、周壁前面が下端から軸心方向上側に向かって切り込まれて形成された細長貫通孔のガイド3bと、周壁後面に設けられた貫通孔3aとを有する。
【0032】
また、後フレーム3の下端部には、後輪5の車軸5bを軸回転可能に支持するための後輪ホルダー5cが取り付けられる。
【0033】
ハンドル6は、握り部6aと、当該握り部6aの前端から連続して形成される主軸6bと、当該主軸6bの下端に設けられ主軸6bに対して後方に張り出す板状の連結ユニットカバー部6cと、当該連結ユニットカバー部6cの下端面から主軸6bと同軸方向に延出して設けられる円筒状の差込部6dとからなる。なお、本実施形態では、握り部6a・主軸6bと連結ユニットカバー部6c・差込部6dとは別体のものとして構成されている。
【0034】
また、主軸6bは下端面に開口を有してパイプ9が差し込まれる軸心方向の凹部を有する。また、連結ユニットカバー部6cはパイプ9を貫通させるための貫通孔を有すると共に差込部6dはパイプ9の外周面に沿う周壁として形成される。
【0035】
ハンドル6は前フレーム2の貫通孔2b内を貫通して設けられるパイプ9の上端に取り付けられる。具体的には、パイプ9を前フレーム2の貫通孔2bに挿入して上端部分を前フレーム2の上端から突出させた状態でパイプ9の外周面と前フレーム2の貫通孔2bの内周面との間の間隙に差込部6dを差し込んで連結ユニットカバー部6cを前フレーム2の上端部に取り付けると共にパイプ9の上端部分に主軸6bを嵌め合わせる。そして、主軸6bの周壁とパイプ9の周壁とを貫通する螺子によってパイプ9の上端部分に主軸6bが固定されてハンドル6が前フレーム2の上端に備えられる。なお、パイプ9は前フレーム2に対して摺動可能であって軸回転可能であり、当該パイプ9の上端に握り部6a・主軸6bが固定され取り付けられると共に下端に車軸支持球ホルダー17・前輪4が固定され取り付けられるので、握り部6aの操作によって前輪4の方向を制御することができる。
【0036】
アーチ8は、前フレーム2と後フレーム3との間に掛け渡され、後フレーム3の下端寄りの位置に設けられた摺動部材としてのスライダブロック7及び止め部材としてのストッパブロック11と共に前後フレーム2,3の開脚の程度を制限すると共に前後フレーム2,3の開脚状態をロックする役目を果たし、さらに、前後フレーム2,3の閉脚動作を補助する役目を果たすものである。
【0037】
アーチ8は具体的には、軸心方向の貫通孔を有する円筒形状に形成され、前端部が、前フレーム2の両後部側壁2d,2dの間に差し込まれ、前端寄りの位置に形成された左右方向の貫通孔8aを摺動可能に貫通すると共に両後部側壁2d,2dの下端寄りの位置に形成された左右方向の貫通孔を貫通してねじ止めされるボルト8cとナット(図示していない)とによって前フレーム2に対して揺動可能に軸支される。
【0038】
また、アーチ8の後端部には、L字形をなし一方の辺の端部寄りの位置に左右方向の貫通孔8eが形成されると共に他方の辺がアーチ8の貫通孔に差し込まれるジョイント部8bが取り付けられる。そして、ジョイント部8bの貫通孔8eにスライダー軸8fが挿入されると共に、スライダー軸8fの両端部にジョイント部8bを挟んで対向する左右一対のガイドローラー8g,8gが取り付けられる。ジョイント部8bは、スライダー軸8f及び一対のガイドローラー8g,8gの働きによって後フレーム3の貫通孔3d内を上下方向にスムーズに移動することができる。
【0039】
そして、スライダー軸8f及び一対のガイドローラー8g,8gが取り付けられた状態でジョイント部8bが後フレーム3の下端開口から貫通孔3dに挿入される。このとき、L字形をなすジョイント部8bの、スライダー軸8fとガイドローラー8g,8gとが取り付けられた方の辺が貫通孔3d内を下方に張り出し、他方の辺がガイド3bを貫通してアーチ8内を前方に張り出すように配置される。このジョイント部8bを介してアーチ8の後端部が後フレーム3に対して上下方向に摺動可能且つ揺動可能に連結される。
【0040】
また、ジョイント部8bを貫通孔3dに挿入した後、柱状のスライダブロック7とストッパブロック11とが後フレーム3の下端開口から貫通孔3dに挿入される。貫通孔3d内ではスライダブロック7が上側でストッパブロック11が下側になるように配置される。なお、スライダブロック7は貫通孔3d内を摺動可能な大きさに形成される。そして、ストッパブロック11は、後フレーム3の下端部分に、ストッパブロック11と後フレーム3の後面周壁とを貫通して後輪ホルダー5c内に嵌入するボルト5d,5dによって固定される。
【0041】
そして、アーチ8後端のジョイント部8bに取り付けられたガイドローラー8g,8gがスライダブロック7の上端面に当接することによって前フレーム2と後フレーム3との開脚の程度が制限される。このとき、本実施形態では、後フレーム3の軸心方向とアーチ8の軸心方向とが垂直になるように、例えばジョイント部8bの寸法やスライダブロック7の寸法やストッパブロック11の寸法及び取り付け位置などが調整される。
【0042】
上述の構成にすることによって、すなわち、L字形というジョイント部8bの形状と貫通孔8eが形成される位置とアーチ8及び後フレーム3に対するジョイント部8bの配置とによって、貫通孔8eはアーチ8の軸心位置よりも下方に位置することになる。したがって、アーチ8の前端部の揺動中心である貫通孔8a・ボルト8cの中心と後端部の揺動中心である貫通孔8e・スライダー軸8fの中心とを結ぶ線分(以下、揺動軸線と呼ぶ)は後フレーム3の軸心方向に対する垂直方向に対して傾斜することになる。
【0043】
後フレーム3の軸心方向の垂直方向に対する揺動軸線の傾斜は、具体的には、貫通孔8e・スライダー軸8fの中心を頂点として揺動軸線と後フレーム3の軸心方向とがなす角のうち、揺動軸線の上側の角が直角よりも小さくなり、揺動軸線の下側の角が直角よりも大きくなる態様で傾斜する。
【0044】
そして、揺動軸線が後フレーム3軸心方向の垂直方向に対して上述の態様で傾斜するようにアーチ8が取り付けられているので、歩行補助具1を例えば、持ち上げたときに前後輪4,5の重量及び前後フレーム2,3の自重によって前後フレーム2,3を閉じようとする力が働いたり、凹凸がある場所で使用したときに前後フレーム2,3を閉じようとする力が加えられたりする場合に、アーチ8後端のジョイント部8bが後フレーム3の貫通孔3d内を下に移動しようとする。
【0045】
しかしながら、後フレーム3の下端部分に固定されるストッパブロック11及び当該ストッパブロック11によって下への移動が制限されるスライダブロック7があるためにジョイント部8bは後フレーム3内を下に移動することができず、アーチ8の傾動が制限されて前フレーム2と後フレーム3とは閉じることができない(すなわち、前後フレーム2,3の開脚状態がロックされる)。
【0046】
そして、本発明の歩行補助具1は前フレーム2と後フレーム3とを開脚させた状態から自然に(或いは不意に)閉脚しないところ、使用者が歩行補助具1をたたもうとする場合に前後フレーム2,3を閉脚させる操作を補助して当該操作を容易に行えるようにするための機構(以下、フレーム閉脚操作補助機構と呼ぶ)を有する。
【0047】
フレーム閉脚操作補助機構は吊り上げ部材としてのつまみ21と紐22とを有する。紐22は、係止部材22aを介して下端がスライダブロック7の上端部に連結され、中間部分が後フレーム3の貫通孔3d内に配置され、上端が後フレーム3の周壁後面のスライダブロック7よりも上方に設けられた貫通孔3aから後フレーム3の外に出てボール状のつまみ21に結ばれる。
【0048】
また、本実施形態では、スライダブロック7とストッパブロック11とはコイルばね15によって連結されている。具体的には、コイルばね15は両端に環状係止部15a,15aを有し、上端の環状係止部15aがスライダブロック7の中間部に設けられたばね係止軸7aに嵌められると共に下端の環状係止部15aがストッパブロック11の中間部にに設けられたばね係止軸11aに嵌められてスライダブロック7とストッパブロック11とは互いに引き付け合う力が発揮されるように連結されている。
【0049】
そして、前フレーム2と後フレーム3とを閉脚させて歩行補助具1をたたむ際には、使用者がつまみ21を持ち上げることによりアーチ8による前後フレーム2,3の開脚状態のロックを解除することができる。
【0050】
具体的には、つまみ21を持ち上げると吊り上げ部材としての紐22を介してスライダブロック7が吊り上げられ、これによりアーチ8前端部の貫通孔8a・ボルト8cを中心としてアーチ8が揺動する。そして、揺動軸線が後フレーム3の軸心方向に対して垂直になり、つまみ21が更に持ち上げられスライダブロック7が吊り上げられてアーチ8が更に揺動すると揺動軸線が後フレーム3の軸心方向の垂直方向に対して傾斜するようになる(図3)。
【0051】
ここで、アーチ8の上方につまみ21が位置する本実施形態の構成によれば、歩行補助具1の使用者がしゃがんでアーチ8を押し上げる操作は必要ないので、特に高齢者や身体障害者や怪我人などにとって負担が大きい動作をすることなく前後フレーム2,3の開脚状態のロックを解除して歩行補助具1をたたむことができる。
【0052】
つまみ21の操作によるスライダブロック7の吊り上げによる、後フレーム3の軸心方向の垂直方向に対する揺動軸線の傾斜は、具体的には、貫通孔8e・スライダー軸8fの中心を頂点として揺動軸線と後フレーム3の軸心方向とがなす角のうち、揺動軸線の上側の角が直角よりも大きくなり、揺動軸線の下側の角が直角よりも小さくなる態様で傾斜する。
【0053】
そして、この場合には、貫通孔8a・ボルト8cを揺動中心としてジョイント部8bが後フレーム3の貫通孔3d内を上に向かって移動しアーチ8が後フレーム3に対して更に傾斜することが容易になり、アーチ8による前後フレーム2,3の開脚状態のロックが解除されることになる。
【0054】
そして、図3に示す状態で歩行補助具1を上方に持ち上げると、前後輪4,5の重量及び前後フレーム2,3の自重によって摺動揺動軸2aを中心として揺動して前後フレーム2,3が閉脚しようとする力が働き、ジョイント部8bは後フレーム3の貫通孔3d内を上に移動してアーチ8が前後フレーム2,3の間で傾斜を増加させる。
【0055】
そしてついには、本実施形態では、前フレーム2の両後部側壁2d,2dによって形成される軸心方向の凹部にアーチ8及び後フレーム3の前側部分が入り込んで収容されると共に、左右対向する一対の前輪タイヤ4a,4aの間に後輪タイヤ5a,5aの前側部分が入り込む(図4)。なお、このとき、アーチ8の働きによって後フレーム3の軸心の方向はぶれることがなく、即ち前フレーム2の軸心位置と後フレーム3の軸心位置とが一致した状態で両フレームが閉脚することになるので、後フレーム3は前フレーム2の軸心方向の凹部に確実に入り込むことになる。さらに、アーチ8の働きによって、揺動連結された前後フレーム2,3の捻れによる変形が防止される。すなわち、アーチ8によって、前後フレーム2,3の閉脚操作の快適性並びに強度の向上が図られる。
【0056】
これによって、本実施形態の歩行補助具1は、前後フレーム2,3を閉脚させたときに全体がより細身になる。また、従来の歩行補助具をたたんだ状態(例えば図8(B))と比べると、前後フレーム2,3の間に隙間がないので全体として一本に見えて見栄えが良好なものになる。なお、前後フレーム2,3を閉脚させた状態でも歩行補助具1は自立する。
【0057】
ここで、図3に示すように揺動軸線が後フレーム3の軸心方向の垂直方向に対して傾斜する状態までつまみ21を持ち上げスライダブロック7を吊り上げて前後フレーム2,3の開脚状態のロックを解除した後はつまみ21を操作する必要はない。そして、本実施形態では、スライダブロック7とストッパブロック11とはコイルばね15によって互いに引き付け合う力が発揮されるように連結されているので、つまみ21を持ち上げる力を緩めるとスライダブロック7がストッパブロック11に引き付けられる。これにより、つまみ21の操作に合わせて後フレーム3の周壁後面の貫通孔3aから外に一旦出た紐22が後フレーム3の貫通孔3d内に引き戻されてつまみ21が貫通孔3aに押し付けられて固定される。
【0058】
さらに、本実施形態の歩行補助具1は、前後フレーム2,3を閉脚させてたたんだ状態から自然には(言い換えれば不意には)前後フレーム2,3が開脚しないようにするためのロック機構を備える。
【0059】
本実施形態のロック機構は、車軸支持球ホルダー17の下部に形成された係合爪19aと後輪ホルダー5c下面に設けられた係合凹部19bとからなる。
【0060】
係合爪19aは、本実施形態では、弾性部材によって形成され、前フレーム2と後フレーム3とが閉脚した状態において後方に向かって張り出し、後縁部に縦断面半円形状の帯状の突起が形成されている。
【0061】
そして、前フレーム2と後フレーム3とが開脚した状態から閉脚する際に係合爪19a後縁部の突起が車軸支持球ホルダー17の前面下端角部に当接すると後端側が押し下げられて係合爪19aが湾曲し、この状態で後縁部の突起が後輪ホルダー5cの下面を摺動し、そして、前後フレーム2,3が完全に閉脚した状態において係合爪19aの後縁部の突起が係合凹部19bに嵌って引っ掛かる。これにより、前後フレーム2,3が自然には開脚しないようになる。
【0062】
一方、閉脚された状態から前後フレーム2,3を開脚する場合には、ハンドル6の握り部6aを握って当該握り部6aを押し下げる力を加えると、前フレーム2・パイプ9を介して係合爪19aを押し下げる力が働いて後縁部の突起が係合凹部19bに引っ掛かる力が弱まると共に、ハンドル6の主軸6b並びに前フレーム2の軸心に対して握り部6aが後方に張り出しているために握り部6aの前端部(また、摺動揺動軸2a)を支点とする梃子の働きによって車軸支持球ホルダー17が前方に移動しようとする力が働き、これらの作用によって係合爪19aが係合凹部19bから外れる。
【0063】
このように、本実施形態のロック機構によれば、係合爪19aを係合凹部19bに嵌めて引っ掛けてロックをかけようとするときは前後輪4,5の重量などによる前後フレーム2,3が閉脚しようとする力を利用することによってロックをかけることができ、係合爪19aを係合凹部19bから外してロックを解除しようとするときはハンドル6の握り部6aに押し下げる力を与えることによってロックを解除することができるので、歩行補助具1の下部に設けられたロック機構を直接操作することなくロック及びロック解除を実現することが可能である。
【0064】
また、本実施形態の歩行補助具1は、一対の前後フレーム2,3を揺動可能に連結するための摺動揺動軸2aを有すると共に該摺動揺動軸2aを前後方向の長穴20aで摺動可能に支持する連結構造を有する。
【0065】
本実施形態では、後フレーム3の上端部に、後フレーム3を前フレーム2と連結させるためのジョイント部材3fが取り付けられる。ジョイント部材3fは、後フレーム3の貫通孔3dに差し込まれる差込部3hと、当該差込部3hの上部に縦に立てられた板状に形成されて貫通孔3gを有する連結部3iとからなる。なお、ジョイント部材3fは、差込部3hにねじ穴を有し、当該差込部3hが貫通孔3dの上端部に差し込まれた状態でねじ止めされて後フレーム3に取り付けられる。また、ジョイント部材3fは、板状の連結部3iが前後方向に配置された状態で後フレーム3に取り付けられる(すなわち、貫通孔3gは左右方向になる)。
【0066】
また、本実施形態の歩行補助具1は、摺動揺動軸2aを備えると共に前フレーム2の上端部に取り付けられて前フレーム2と後フレーム3とを揺動可能に、言い換えれば摺動揺動軸2aを中心として揺動開脚及び閉脚自在に連結するフレームジョイント20を有する。
【0067】
フレームジョイント20は、前フレーム2の両後部側壁2d,2dの間に差し込まれる取付部20eと、当該取付部20eの上側部分から後方に延出する保持部20fとからなる。そして、フレームジョイント20は、取付部20e及び保持部20fを前後方向に貫通して設けられる間隙20gを有する。さらに、フレームジョイント20は、取付部20eの下端寄りの位置に左右方向の固定軸貫通孔20bを有し、また、保持部20fの上端から突起した部分に左右方向の固定螺子貫通孔20cを有する。
【0068】
間隙20gには後フレーム3のジョイント部材3fの板状の連結部3iが挿入される。そして、間隙20gは、連結部3iを左右両側から挟んで摺動可能に保持する。
【0069】
また、保持部20fにおける間隙20gを形成する左右両側の側壁には、左右方向に配置される摺動揺動軸2aの両端部を前後方向に摺動可能に支持するための揺動軸支持長穴20aが前後方向に形成される。本実施形態では、揺動軸支持長穴20aは、フレームジョイント20の間隙20gを形成する左右一対の側壁のそれぞれに、取付部20eから保持部20fに亘って対向する前後方向の凹部又は貫通孔として形成される。なお、本実施形態では、揺動軸支持長穴20aは、取付部20eにおいては間隙20gを形成する左右両側の側壁を貫通する孔として形成され、保持部20fにおいては間隙20gを挟んで対向する凹部として形成される。
【0070】
そして、後フレーム3は、ジョイント部材3fの連結部3iがフレームジョイント20の間隙20gに差し込まれ、連結部3iに設けられた貫通孔3gを貫通すると共にフレームジョイント20の揺動軸支持長穴20aに両端部が支持される摺動揺動軸2aを介してフレームジョイント20に対して揺動且つ摺動可能に軸支される。
【0071】
また、フレームジョイント20は、取付部20eが前フレーム2の両後部側壁2d,2dの間に差し込まれると共に取付部20eに形成された固定軸貫通孔20bと両後部側壁2d,2dに形成された左右方向の貫通孔2e,2eとを貫通する貫通固定軸23が挿入されて前フレーム2の上端部に取り付けられる。
【0072】
また、ハンドル6は、主軸6bに対して後方に張り出した板状の連結ユニットカバー部6cの下面に、左右方向の貫通孔が形成された突起部を有する。そして、当該突起部の貫通孔とフレームジョイント20の固定螺子貫通孔20cとを貫通する螺子20dによって連結ユニットカバー部6cとフレームジョイント20とが互いに固定される。
【0073】
以上の構成を有する本発明の歩行補助具によれば、通常の場合には、前フレーム2と後フレーム3とを揺動させて閉脚させる際には前後フレーム2,3を引き寄せ合わせる力が働くので摺動揺動軸2aが揺動軸支持長穴20aの前端に押し付けられながら前後フレーム2,3が閉脚する。
【0074】
一方、前後フレーム2,3を揺動させて閉脚させる際に前後フレーム2,3の間に手の指などが挟まってしまった場合には、摺動揺動軸2aが揺動軸支持長穴20aの後端寄りの位置に移動して前後フレーム2,3の間に隙間を確保しながら後フレーム3は前フレーム2に対して揺動を続けて前後フレーム2,3は間に隙間を確保しながら閉脚する。
【0075】
したがって、以上の構成を有する本発明の歩行補助具によれば、一対のフレーム2,3を連結する揺動軸2aの位置を前後方向に移動させることができるので、一対のフレーム2,3を揺動軸2aを中心として揺動させて閉じた場合に前後フレーム2,3間に指などを挟んでしまったとしても揺動軸2aが後方に移動して前後フレーム2,3間に隙間を生じさせながらフレーム同士を閉じることができ、安全性の向上を図ることができる。
【0076】
また、以上の構成を有する本発明の歩行補助具によれば、安全性を損ねることなく一対のフレームを揺動させて閉じた場合のフレーム間の隙間をなくすようにすることができるので、安全性と共に見栄えの向上を図ることができる。
【0077】
さらに、本実施形態の歩行補助具1は、車輪の車軸方向に影響を与えることなく、言い換えれば車輪の車軸とは独立させてフレームのみを左右に傾斜させることができる機構を有する。
【0078】
本実施形態では、具体的には、中心を通る左右方向の貫通孔18aを有し当該貫通孔18aに前輪4の車軸4bを摺動可能に貫通させて当該車軸4bの中間部に備えられる車軸支持球18と、前フレーム2の下端に備えられて車軸支持球18を摺動可能に保持する車軸支持球ホルダー17とによって、前輪4の車軸4bとは独立させて前フレーム2のみを左右に傾斜させることができる。
【0079】
すなわち、車軸支持球ホルダー17と車軸支持球18とによって前フレーム2と車軸4bとが連結されているので車軸4bに対して前フレーム2は前後左右のいずれの向きにも傾斜可能であり、通常の使用状態においてハンドル6に左右方向の力が与えられた場合には車軸4bとは独立して前フレーム2だけが傾斜することができる(言い換えれば、前フレーム2は車軸支持球18を中心として車軸4bに対して揺動することができる)(図7)。
【0080】
これにより、歩行補助具1の使用者が進行方向を変える場合に一対の車輪4a,4aを両方とも地面に接触させたまま前フレーム2のみを傾斜させることができるので、容易且つ安全・快適に進行方向を変えることが可能になる。
【0081】
なお、本実施形態では、車軸支持球ホルダー17の、車軸支持球18を保持する空間の下方に当該空間と連通するばね収容空間17aが設けられている。また、車軸支持球18の下端面にはばね受け空間17a内に突出するばね受け18bが形成されている。
【0082】
さらに、収容空間17a内のばね受け18bの左右に、当該ばね受け18bの側面と収容空間17aの側壁との間に左右方向に介在させられてコイルばね18c,18cが備えられる。
【0083】
これにより、車軸4bとは独立して前フレーム2のみが左右のいずれかに傾斜した場合には、左右のコイルばね18c,18cの一方が圧縮され、この圧縮の反力によって前フレーム2の左右の傾斜を矯正して前フレーム2が直立する姿勢を保とうとする。
【0084】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、左右対向配置された一対の車輪を前後二箇所に備える歩行補助具を例に挙げて説明したが、これに限られず、一対の車輪を前後二箇所ずつ合計四箇所に備える歩行補助具に対して本発明を適用するようにしても良い。
【0085】
また、本実施形態では、パイプ9が前フレーム2に対して軸回転可能であって握り部6aの操作によって前輪4の方向を制御できるようにしているが、前輪4の方向が前フレーム2に対して可変であることは本発明において必須の構成ではなく、前輪4が前フレーム2に対して固定して取り付けられる構成であっても本発明のフレーム閉脚操作補助機構は適用可能である。
【0086】
また、本実施形態では、スライダブロック7とストッパブロック11とが互いに引き付け合う力が発揮されるようにコイルばね15で連結するようにしているが、両ブロック7,11をコイルばね15で連結することは本発明において必須の構成ではない。すなわち、コイルばね15がなくても、つまみ21を持ち上げて前後フレーム2,3の開脚状態のロックを解除した後につまみ21を持ち上げる力を緩めると自重によってスライダブロック7が後フレーム3の貫通孔3d内を下方に移動して紐22が後フレーム3の貫通孔3d内に引き戻されてつまみ21が貫通孔3aに押し付けられて固定されるので、本発明のフレーム閉脚操作補助機構は作用可能である。
【0087】
また、本実施形態では、吊り上げ部材としての紐22をスライダブロック7に連結させて当該スライダブロック7を吊り上げることによってアーチ8を揺動させるようにしているが、スライダブロック7を用いることは本発明において必須の構成ではない。すなわち、紐22をアーチ8の後端部に直接連結させて紐22を引き上げてアーチ8の後端部を直接吊り上げてアーチ8を揺動させるようにしても良い。
【0088】
また、本実施形態では、後フレーム3の軸心方向とアーチ8の軸心方向とが垂直をなすようにすると共にL字形のジョイント部8bを用いることによって、アーチ8の前端部の揺動中心と後端部の揺動中心とを結ぶ線分である揺動軸線が後フレーム3の軸心方向に対する垂直方向に対して傾斜するようにしているが、後フレーム3の軸心方向とアーチ8の軸心方向とが垂直をなすようにすることは本発明において必須の構成ではなく、本発明において必須の構成は揺動軸線が後フレーム3の軸心方向の垂直方向に対して傾斜することである。したがって、例えば、L字形のジョイント部8bを用いる場合には、アーチ8の軸心方向が後フレーム3の軸心方向とどのような関係にあったとしても、後フレーム3の軸心方向の垂直方向に対して揺動軸線が傾斜していれば本発明のフレーム閉脚操作補助機構は作用する。さらに、L字形のジョイント部8bを用いることなく、アーチ8の前端部と後端部とに揺動中心を設けて、すなわち、アーチ8の軸心方向と揺動軸線の方向とが同一になるようにして、アーチ8の軸心方向が後フレーム3の軸心方向の垂直方向に対して傾斜するようにしても本発明のフレーム閉脚操作補助機構は作用する。
【0089】
また、本実施形態では、前後フレーム2,3が閉脚してたたまれた状態から自然には開脚しないようにするためのロック機構を備えるようにしているが、当該ロック機構は本発明において必須の構成ではなく、当該ロック機構を備えていない場合であっても本発明のフレーム閉脚操作補助機構は作用可能である。
【0090】
また、本実施形態では、前後フレーム2,3を連結させるものとして摺動揺動軸2aを備え、前後フレーム2,3が摺動揺動軸2aを中心として揺動可能であると共に摺動揺動軸2aが前フレーム2に対して後方に摺動可能であるようにしているが、摺動揺動軸2aを用いることは本発明において必須の構成ではない。すなわち、前後フレーム2,3を単に揺動可能に連結する揺動軸を用い、当該揺動軸が前フレーム2に対して後方に摺動することができないとしても本発明のフレーム閉脚操作補助機構は作用する。
【0091】
また、本実施形態では、スライダブロック7とストッパブロック11とを後フレーム3に設けるようにしているが、場合によっては前フレーム2に設けるようにしても構わない。さらに、本実施形態では、スライダブロック7とストッパブロック11とをフレームの貫通孔内に設けるようにしているが、フレームの外周面を取り巻くようにして設けられても構わない。
【符号の説明】
【0092】
1 歩行補助具
2 前フレーム
2a 摺動揺動軸
3 後フレーム
4 前輪
5 後輪
8 アーチ
20 フレームジョイント
20a 揺動軸支持長穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と該車輪を下端において支持すると共に上端において揺動可能に連結された一対のフレームとを有する歩行補助具であって、前記一対のフレームの間に掛け渡されて両端が前記一対のフレームのそれぞれに対して揺動可能であると共に一端が前記一対のフレームのうちの一方のフレームに対して摺動可能であるアーチと前記一方のフレームに設けられて前記アーチの摺動可能な一端の下方への摺動を制限する止め部材とを有し、前記一対のフレームを開脚させた状態において前記アーチの揺動可能な両端それぞれの揺動中心を結ぶ線分が前記一方のフレームの軸心方向に対する垂直方向に対して傾斜し且つ前記止め部材によって前記アーチの摺動可能な一端が更に下方に移動することが制限されると共に、前記一対のフレームを開脚させた状態において前記線分が前記垂直方向に対して傾斜した状態から前記線分が前記垂直方向になり更に反対側に傾斜するまで前記アーチの摺動可能な一端を吊り上げる吊り上げ部材を前記一方のフレームに更に有することを特徴とする歩行補助具。
【請求項2】
前記一対のフレームが前フレームと後フレームとからなり、前記アーチが前記後フレームに対して摺動可能であると共に前記止め部材及び前記吊り上げ部材が前記後フレームに設けられることを特徴とする請求項1記載の歩行補助具。
【請求項3】
前記アーチの摺動可能な一端と前記止め部材との間に前記一方のフレームに沿って上下移動可能な摺動部材を更に有し、当該摺動部材を前記吊り上げ部材によって吊り上げることによって前記アーチの摺動可能な一端を吊り上げることを特徴とする請求項1記載の歩行補助具。
【請求項4】
前記止め部材と前記摺動部材とを連結するばねを更に有し、当該ばねの働きによって前記止め部材と前記摺動部材とが互いに引き付け合う力が発揮されることを特徴とする請求項3記載の歩行補助具。
【請求項5】
前記一対のフレームのうちの片方のフレームの他方のフレームと対向する側に軸方向の凹部が形成され、前記一対のフレームが揺動して閉脚する際に前記凹部に前記他方のフレームの少なくとも一部が入り込んで収容されることを特徴とする請求項1記載の歩行補助具。
【請求項6】
前記一対のフレームを揺動可能に連結するための摺動揺動軸を有すると共に該摺動揺動軸を前後方向の長穴で摺動可能に支持することを特徴とする請求項1記載の歩行補助具。
【請求項7】
前記一対のフレームのうちの片方のフレームの下端に係合爪を有すると共に他方のフレームの下端に係合凹部を有し、前記一対のフレームが閉脚した状態において前記係合爪が前記係合凹部に嵌って引っ掛かることを特徴とする請求項1記載の歩行補助具。
【請求項8】
前記係合爪が弾性変形する樹脂で形成されていることを特徴とする請求項7記載の歩行補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−246649(P2010−246649A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97327(P2009−97327)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)